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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W1825
審判 全部申立て  登録を維持 W1825
審判 全部申立て  登録を維持 W1825
審判 全部申立て  登録を維持 W1825
管理番号 1334555 
異議申立番号 異議2017-900104 
総通号数 216 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2017-12-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-03-31 
確定日 2017-10-26 
異議申立件数
事件の表示 登録第5907411号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 
結論 登録第5907411号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第5907411号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲に示すとおりの構成からなり,平成28年6月19日に登録出願,同年11月8日に登録査定がされ,第18類「愛玩動物用被服類,かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ,傘」及び第25類「被服,ベルト,履物,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として,同年12月22日に設定登録されたものである。

2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が登録異議の申立ての理由において引用する商標は,以下の登録商標(以下,これらの商標をまとめて「引用商標」という場合がある。)であり,いずれも現に有効に存続しているものである。
(1)登録第5186000号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の構成:THE HOBBIT(標準文字)
登録出願日:平成19年8月15日
設定登録日:平成20年12月5日
指定商品及び指定役務:第25類「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,アイマスク,エプロン,えり巻き,靴下,ゲートル,毛皮製ストール,ショール,スカーフ,手袋,布製幼児用おしめ,ネクタイ,ネッカチーフ,バンダナ,保湿用サポーター,マフラー,耳覆い,ずきん,すげがさ,ナイトキャップ,帽子,防暑用ヘルメット,靴類(「靴合わせくぎ・靴くぎ・靴の引き手・靴びょう・靴保護金具」を除く。),仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴(「乗馬靴」を除く。)」のほか,第9類,第20類,第28類及び第41類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品及び役務
(2)登録第5489920号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の構成:HOBBITON
登録出願日:平成23年11月25日(優先権主張 2011年7月11日,アメリカ合衆国)
設定登録日:平成24年4月27日
指定商品及び指定役務:第18類「皮革及び皮革の模造品,皮革及び皮革の模造品で作られたトランク・旅行カバン及びスーツケース,スポーツバッグ,ダッフルバッグ,ガーメントバッグ,リュックサック,書類入れかばん,ファニー・パック(腰回りに付けるバッグ),ハンドバッグ,トートバッグ,がま口,財布,クレジットカード入れ,ジム用バッグ,スクールバッグ,メッセンジャーバッグ,その他のかばん類,袋物,傘,かばん用タグ」及び第25類「被服,帽子,ジャケット,スエットシャツ,Tシャツ,シャツ,ズボン,ドレス,スカート,靴下,ネクタイ,パジャマ,幼児用被服,ハロウィンの仮装用衣服,ロール・プレーイング用の仮装用衣装,その他の仮装用衣服,履物,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」のほか,第9類,第14類,第16類,第20類,第21類,第24類,第28類及び第41類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品及び役務

3 登録異議の申立ての理由
申立人は,本件商標は,商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するものであるから,同法第43条の2第1号により,その登録は取り消されるべきであると申立て,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第18号証を提出した。
(1)商標法第4条第1項第11号について
ア 指定商品の類否
本件商標の第18類の指定商品は,引用商標2の指定商品と抵触し,本件商標の第25類の指定商品は,引用商標1及び引用商標2の指定商品と抵触する。
イ 本件商標と引用商標の類否
(ア)本件商標は,第2文字が欧文字「o」を図形化してはいるものの,全体としては一連に左横書きした「Hobbitly」からなる文字商標であると理解することができる。
(イ)引用商標1は,標準文字「THE HOBBIT」からなる文字商標であり,前半の「THE」は,「その,例の」を意味する英語のごく基本的な定冠詞であることから(甲8),英語を義務教育の必須科目としている我が国においては,誰でもその意味合いを容易に理解することができる。したがって,引用商標1の要部は,後半部「HOBBIT」となる。
(ウ)本件商標と引用商標1を外観において比較すると,引用商標1の要部である「HOBBIT」は,本件商標にそっくりそのまま含まれており,相違点は本件商標の接尾部「ly」のみであるから,両者は外観において近接している。ここで,本件商標の接尾部「ly」は,英語を義務教育の必須科目としている我が国において広く親しまれている基本的な接尾語である(甲9)。
また,両商標を称呼において比較すると,引用商標1からは「ザ ホビット」又は「ホビット」の称呼が,本件商標からは「ホビットリー」又は「ホビトリー」の称呼が生じるところ,「ホビット」と「ホビットリー」の称呼は,4音対5音構成中,4音が同一であり,最後の「リー」音の有無という相違しかないから,簡易迅速な取引が求められる現実の商取引の現場では,聞き誤らせるおそれがある。
(エ)本件商標と引用商標2を比較すると,引用商標2は,一連に左横書きした「HOBBITON」からなる文字商標であるところ,「ホビットン」又は「ホビトン」の称呼を生ずるため,本件商標の称呼である「ホビットリー」又は「ホビトリー」の称呼とは,聴取において軽視されることが多い語尾音が「ン」と「リ」の音で相違するのみで,他の4音は一致しているから,簡易迅速な取引が求められる現実の商取引の現場では,聞き誤らせるおそれがある。
ウ 以上のとおり,本件商標と引用商標とは,指定商品において同一又は類似であるばかりでなく,商標においても称呼及び外観において類似する。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第15号について
申立人は,著名な映画プロデューサーであった故人「ソウル ゼインツ」(Saul Zaentz)が設立した独立系の映画製作会社である(甲10及び甲11)。
2001年から2003年にかけて「ロード・オブ・ザ・リング」(The Lord of the Rings)として,「旅の仲間」「二つの塔」「王の帰還」の三部作の映画が国内でも公開され大きな反響を呼んだが,同作品は,英国の作家であるジョン・ロナルド・ロウエル・トールキン(John Ronald Reuel Tolkien)が執筆した世界的に有名なファンタジー小説「指輪物語」を実写により映画化したものであり,申立人は製作会社の一つである(甲12及び甲13)。
この「指輪物語」は,1937年に出版された「ホビットの冒険」(原題:The Hobbit,or There and Back Again.)の続編であり,「ホビットの冒険」も実写映画3部作として2012年から2014年にかけて公開された(甲14)。
「指輪物語」と「ホビットの冒険」を実写化した映画においては,そのいわば主役として登場しているキャラクターが「HOBBIT」(ホビット)という架空の種族である(甲15)。本件商標は,この名称と明らかな関連性を有するものである。
申立人は,前述の小説「ロード・オブ・ザ・リング」(The Lord of the Rings)と「ホビットの冒険」(原題:The Hobbit)の映画化権と商品化権を所有していることから,「HOBBIT」(ホビット)について,既に多くの商標登録を国内でも取得している(甲16)。
人気映画の公開に伴って,オフィシャルサイトが設置され,更に,その映画に関連した各種の商品が販売され,映画のタイトルや登場するキャラクターが商標として使用されることは,ハリウッド映画産業界ではごく一般的なビジネスモデルとなっている。申立人も,その事業部門である「ミドル アース エンタープライズ」(Middle-Earth Enterprise)を通じて,各種商品について商品化権に基づくライセンス業務を行っている。書籍やDVDのみならず,申立人よりライセンスを受けた各種の「HOBBIT」(ホビット)商品が日本国内でも実際に流通している(甲17)。
前述のように,接尾語「ly」は,我が国において広く親しまれている英語の基本的な接尾語であるため,前述の実写映画において登場している架空の種族として知られている「HOBBIT」(ホビット)に接尾語「ly」を付けると,この接尾語が名詞につけて形容詞を作るという役割を果たすことから,これに接する需要者,消費者に対して「HOBBITの,ホビット風の,HOBBITのような,ホビットの」という意味合いを想起させる。
そのため,本件商標をその指定商品に使用すると,申立人と経済的又は組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品等であると誤認し,あたかも申立人からライセンスを許諾された商品であるかの如き誤信を招いてしまい,その商品等の需要者が商品等の出所について混同するおそれがある。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。

4 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 本件商標について
本件商標は,別掲のとおり,「Hobbitly」(「o」を丸い木の実を模した形状に図案化してなる。)の欧文字を横書きしてなるところ,当該語は,辞書等に掲載のない,特定の意味を有さない造語と理解されるものであるから,その構成文字に相応して「ホビットリー」又は「ホビトリー」の称呼を生じるが,特定の観念は生じない。
イ 引用商標について
(ア)引用商標1について
引用商標1は,「THE HOBBIT」の欧文字を標準文字で横書きしてなるところ,「THE」は英語の定冠詞であり,「HOBBIT」は「ホビット:J.R.R. Tolkienの物語The Hobbit『ホビットの冒険』(1937)の小人族The Hobbitsの一員;身長2-6フィートで鮮やかな色を好む優しい穴居民。」(「小学館ランダムハウス英和大辞典 特装版」小学館発行)の意味を有する語として英和辞典に掲載があり,また,前記意味合いに相応する架空の種族が登場する映画「ホビット」(The Hobbit)が,日本においても2012年から2014年にかけて公開されているとしても(甲14,15),当該物語及び映画の認知度や,それらに登場する種族名の我が国における認知度の程度を客観的に示す証拠もなく,「THE HOBBIT」又は「HOBBIT」の語が我が国において親しまれていることを示す具体的な根拠がないため,通常はその意味内容が直ちに認識できない造語と理解されるというべきである。
そして,引用商標1の構成中,英語の定冠詞である「THE」の文字部分は,それ自体に格段の意味はないことから,出所識別標識としての称呼,観念は生じないため,引用商標1に接する需要者,取引者は,定冠詞に続く「HOBBIT」の文字部分を出所識別標識としての機能を有する要部として認識するというのが相当である。
そうすると,引用商標1は,その構成文字全体に相応して「ザ・ホビット」の称呼を生じ,その要部に相応して「ホビット」の称呼をも生じるが,いずれからも特定の観念は生じない。
(イ)引用商標2について
引用商標2は,「HOBBITON」の欧文字を横書きしてなるところ,当該語は,辞書等に掲載のない,特定の意味を有さない造語と理解できるため,その構成文字に相応して「ホビットン」の称呼を生じるが,特定の観念は生じない。
ウ 本件商標と引用商標の類否について
(ア)本件商標と引用商標1の比較
a 本件商標と引用商標1の外観を比較すると,本件商標及び引用商標1の要部である「Hobbitly」と「HOBBIT」の構成文字のつづりは,「H」及び「bbit」(BBIT)の文字部分において共通し,語尾の「ly」の文字の有無に差異があるばかりか,2文字目の「o」の文字の図案化の有無,及び語頭以外の小文字と大文字の差異もあるため,両者は外観上一見して異なる。また,本件商標と引用商標1の「THE HOBBIT」との比較においては,前記差異に加えて語頭の「THE」の文字の有無の差異もあることから,両商標の外観は一見して異なるものとなる。
b 本件商標と引用商標1の称呼を比較すると,本件商標の「ホビットリー」の称呼は,引用商標1の「ホビット」の称呼とは,それぞれ全6音及び全4音の構成中,4音を共通にするものの,語尾の「リー」の音の有無に差異があるもので,また,引用商標1の「ザ・ホビット」の称呼とは,前記と同様の差異に加えて,語頭の「ザ」の音の有無にも差異があるから,いずれの比較においても,比較的短い音構成の中ではこれら差異音及び音数の相違により,互いに聴別できる。
また,本件商標の「ホビトリー」の称呼は,引用商標1の「ホビット」の称呼とは,それぞれ全5音及び全4音の構成中,3音を共通にするものの,第2音の「ビ」に続く促音の有無,及び語尾の「リー」の音の有無に差異があるもので,さらに,引用商標1の「ザ・ホビット」の称呼とは,前記と同様の差異に加えて,語頭の「ザ」の音の有無にも差異があるから,いずれの比較においても,比較的短い音構成の中ではこれら差異音及び音数の相違により,互いに聴別できる。
c 本件商標と引用商標1の観念については,いずれからも特定の観念は生じないため,比較することができない。
(イ)本件商標と引用商標2の比較
a 本件商標と引用商標2の外観を比較すると,本件商標及び引用商標2の「Hobbitly」と「HOBBITON」の構成文字のつづりは,「H」及び「bbit」(BBIT)の文字部分において共通し,語尾の「ly」と「ON」の文字の有無に差異があるばかりか,2文字目の「o」の文字の図案化の有無,及び語頭以外の小文字の大文字の差異もあることから,両商標の外観は一見して異なるものとなる。
b 本件商標と引用商標2の称呼を比較すると,本件商標の「ホビットリー」の称呼は,引用商標2の「ホビットン」の称呼とは,それぞれ全6音及び全5音の構成中,4音を共通にするものの,語尾の「リー」及び「ン」の音に差異があるから,比較的短い音構成の中ではこれら差異音及び音数の相違により,互いに聴別できる。
また,本件商標の「ホビトリー」の称呼は,引用商標2の「ホビットン」の称呼とは,それぞれ全5音の構成中,3音を共通にするものの,第2音「ビ」に続く促音の有無及び語尾の「リー」と「ン」の音に差異があるから,比較的短い音構成の中では,これら差異音及び音数の相違により,互いに聴別できる。
c 本件商標と引用商標2の観念については,いずれからも特定の観念は生じないため,比較することができない。
(ウ)本件商標と引用商標1及び2の類否
以上のとおり,本件商標は,引用商標1及び2とは,外観,称呼及び観念のいずれにおいても類似するものではないため,これらを同一又は類似の商品に使用したとしても,誤認混同するおそれのない,非類似の商標というべきである。
エ 小括
以上のとおり,本件商標は,引用商標とは類似する商標ではないから,その指定商品の同一又は類似について検討するまでもなく,商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(2)商標法第4条第1項第15号該当性について
ア 「HOBBIT」(以下「申立人使用商標」という。)の著名性
(ア)申立人が提出した証拠によれば,以下の事実が認められる。
a 「Wikipedia」のウェブサイトにおいて,「ホビット(映画)」の項において,「『ホビット』(The Hobbit)は,2012年から2014年にかけて公開されたニュージーランドのファンタージー映画。J・R・R・トールキンによる児童小説『ホビットの冒険』を原作とし,第1部『ホビット 思いがけない冒険』・・・第2部『ホビット 竜に奪われた王国』・・・第3部『ホビット 決戦のゆくえ』・・・の3部作として公開された。」との記載がある(甲14)。
b 「Wikipedia」のウェブサイトにおいて,「ホビット」の項において,「ホビット(Hobbit)は,J・R・R・トールキンの創作した架空世界中つ国の種族。『ホビットの冒険』で初めて登場し,『指輪物語』でも重要な役割を果たした。」との記載がある(甲15)。
c 甲第17号証の中で,本件商標の登録出願日前からの掲載が確認できるインターネット上の情報には,以下のような商品が掲載されている。
(a)「Amazon」のウェブサイトにおいて,「The Hobbit/The Hobbit SHIRT メンズ」を商品名として表示する商品が,Tシャツの写真とともに掲載されており,「Amazon.co.jpでの取り扱い開始日:2016/7/28」との記載がある。
(b)「Amazon」のウェブサイトにおいて,「bbit-T-Shirt & Bifur Balin Kili & M) by Codi[並行輸入品]」を商品名として表示する商品が,「HOBBIT」の文字を顕著に表示したTシャツの写真とともに掲載されており,「Amazon.co.jpでの取り扱い開始日:2016/1/2」との記載がある。
(イ)上記(ア)a及びbの認定事実並びに申立人の主張によれば,「ホビット」(Hobbit)は,J・R・R・トールキンの創作した小説「ホビットの冒険」及び「指輪物語」に登場する,同作家の創作した種族の名称である。その種族は,それら小説を原作とする映画「ホビット」(The Hobbit)及び申立人が制作に関与した映画「ロード・オブ・ザ・リング」にも登場しており,前者の映画は,2012年から2014年にかけて,日本においても3部作で公開され,それぞれの邦題の中には「ホビット」の文字が含まれており,後者の映画も,2001年から2003年にかけて,日本において3部作で公開された。
しかし,上記のように,申立人使用商標である「HOBBIT」の語が,特定の小説又は映画における架空の種族の名称や,映画のタイトルを示すものとして表示された事実があるとしても,それら事実が,申立人の業務に係る商品又は役務の出所識別標識としての使用実績として,申立人使用商標の周知,著名性の向上に直接的に寄与するものとは,直ちに理解し難い。加えて,申立人が,前記小説の創作に関与した証拠は見いだせず,映画「ホビット」の制作に関与した程度も明らかではなく,「HOBBIT」の語が申立人の業務に係る商品又は役務の出所識別標識として使用されていたかどうかも定かではない。
また,上記(ア)cの認定事実及び申立人の主張によれば,前記映画の書籍,DVDが販売されており,本件商標の登録出願日前から,映画の関連商品として「The Hobbit」を商品名に含むTシャツ及び「HOBBIT」の文字を表示するTシャツが,インターネット上で紹介されていることがうかがわれるが,これら商品の販売額や販売規模,広告宣伝の規模などは明らかではないばかりか,これら商品の販売が申立人の業務に係る商品であると同視できるような具体的な関係性が明らかではないため,これら事実が,申立人使用商標の周知,著名性の確立に寄与する程度は非常に限定的なものである。
(エ)以上のとおり,申立人使用商標は,提出された証拠によっては,申立人の業務に係る商品又は役務について,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,我が国の需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
イ 本件商標と申立人使用商標の比較
本件商標「Hobbitly」(「o」を丸い木の実を模した形状に図案化してなる。)と申立人使用商標「HOBBIT」を比較すると,上記(1)ウにおいて本件商標と「HOBBIT」の文字の外観,称呼及び観念について比較したのと同様に,両者の外観は一見して異なり,称呼においては容易に聴別でき,観念においては比較できない。
したがって,本件商標と申立人使用商標とは,外観,称呼及び観念のいずれにおいても類似するものではないため,互いの類似性の程度は低いというべきである。
ウ 本件商標の指定商品と申立人の業務に係る役務の比較
本件商標の指定商品は,第18類「愛玩動物用被服類,かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ,傘」及び第25類「被服,ベルト,履物,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」であり,これらは主にペット用品事業者,ファッション用品事業者,衣料品事業者,スポーツ用品事業者などにより製造,販売されるものである。
他方,申立人は,映画プロデューサーが設立した映画製作会社であることから(申立人の主張,甲10),その業務としては「映画の制作」の役務に関与しているものと理解できる。そして,当該役務は,映画館で上映又は配給するために,映像の撮影,編集などを行い,映画を制作するものであり,主に映画会社により提供されている。
そうすると,本件商標の指定商品と,申立人の業務に係る役務は,一般的には,その商品の製造,販売と役務の提供が同一事業者によって行われているものでもなく,その役務の内容,提供に関連する物品やその用途,業種,需要者の範囲も,重複又は密接に関連しているものとはいえず,相互に密接に関連した商品又は役務ではない。
なお,申立人は,映画と関連した各種商品が販売され,そのタイトルや登場するキャラクターが商標として使用されることは一般的であり,申立人も,映画の商品化権に基づくライセンス業務を通じて,書籍やDVD,その他関連商品を取り扱う旨主張するが(申立人の主張,甲17),前述のとおり,一般的には本件商標の指定商品と申立人の業務に係る役務は,相互に密接に関連した商品又は役務とはいい難いばかりか,申立人の固有の実情としても,それら映画の関連商品の販売が,申立人の業務に係る商品であると同視できるような具体的な関係性を把握できないため,本件において参酌する余地は非常に限られる。
エ 出所の誤認混同について
以上のとおり,申立人使用商標は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,我が国の需要者,取引者の間において周知,著名な商標でもなく,本件商標は,申立人使用商標とは類似性の程度は低く,その指定商品も申立人の業務に係る役務とは密接な関連性はないのだから,本件商標は,これをその指定商品について使用しても,その取引者及び需要者をして,当該商品が申立人の商品に係るものであると誤信させるおそれがある商標でもなく,当該商品が申立人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品であると誤信させるおそれがあるものとはいえず,申立人の業務に係る役務と混同を生じるおそれがある商標ではない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(3)まとめ
以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第11号及び同項第15号のいずれの規定にも違反してされたものではないから,同法第43条の3第4項の規定に基づき,その登録を維持すべきものである。
よって,結論のとおり決定する。
別掲 別掲 (本件商標)


異議決定日 2017-10-18 
出願番号 商願2016-71091(T2016-71091) 
審決分類 T 1 651・ 262- Y (W1825)
T 1 651・ 261- Y (W1825)
T 1 651・ 263- Y (W1825)
T 1 651・ 271- Y (W1825)
最終処分 維持  
前審関与審査官 泉田 智宏 
特許庁審判長 早川 文宏
特許庁審判官 田村 正明
阿曾 裕樹
登録日 2016-12-22 
登録番号 商標登録第5907411号(T5907411) 
権利者 伊藤 義明
商標の称呼 ホビットリー、ホビトリー、ホビトリ 
代理人 特許業務法人浅村特許事務所 

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