• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W113537
審判 全部申立て  登録を維持 W113537
審判 全部申立て  登録を維持 W113537
審判 全部申立て  登録を維持 W113537
管理番号 1333424 
異議申立番号 異議2017-900161 
総通号数 215 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2017-11-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-05-19 
確定日 2017-09-16 
異議申立件数
事件の表示 登録第5922742号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 
結論 登録第5922742号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第5922742号商標(以下「本件商標」という。)は,「スウィングフロー」の文字を標準文字で表してなり,平成28年5月20日に登録出願,第11類「水ろ過器及び飲料水用濾過式浄水器」,第35類「水ろ過器及び飲料水用濾過式浄水器並びにその付属品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」及び第37類「業務用浄水器の清掃及び家庭用浄水器の修理,清掃又は保守」を指定商品及び指定役務として,同年12月28日に登録査定,同29年2月17日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が登録異議の申立ての理由において引用する商標は,以下の2件であり,いずれも登録商標として現に有効に存続しているものである。以下,これら2件の商標をまとめていうときは「引用商標」という。
1 登録第5457784号商標(以下「引用商標1」という。)は,別掲のとおりの構成よりなり,平成22年12月10日に登録出願,第1類「水処理用化学品,その他の化学品」及び第11類「下水処理装置並びにその部品及び附属品,排水処理装置並びにその部品及び附属品,廃水処理装置並びにその部品及び附属品,浄水装置並びにその部品及び附属品,水処理装置並びにその部品及び附属品」を指定商品として,同23年12月16日に設定登録されたものである。
2 登録第5646333号商標(以下「引用商標2」という。)は,「SWING」の文字を標準文字で表してなり,平成25年1月24日に登録出願,第1類「水処理用化学品,その他の化学品」,第7類「土木機械器具,化学機械器具,繊維機械器具,遠心機,凝縮装置(化学機械器具),粉砕機(化学機械器具),業務用の生ごみ(廃棄物)処理機,給水調整器,フィルタープレス,ろ過機,ろ過用機械,減圧器(機械部品),圧力調整器(機械部品),下水汚物粉砕機,蒸気・油分離器(化学機械器具),遠心分離式脱水機(化学機械器具),廃棄物処理用の業務用遠心分離式脱水機,業務用の廃棄物圧縮機械,業務用の廃棄物処理機,有機性廃棄物処理装置」及び第11類「下水処理装置並びにその部品及び附属品,排水処理装置並びにその部品及び附属品,廃水処理装置並びにその部品及び附属品,浄水装置並びにその部品及び附属品,業務用の水処理装置並びにその部品及び附属品,バイオガス製造用のメタン発酵槽」を指定商品として,同26年1月31日に設定登録されたものである。

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は,本件商標は,商標法第4条第1項第11号及び同第15号に該当するものであるから,同法第43条の2第1号により,その登録は取り消されるべきであると申立て,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第22号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 商標法第4条第1項第11号について
(1)引用商標の周知性
申立人は,1931年(昭和6年)に国産初の水道用急速ろ過装置を納入した荏原製作所を前身とし,1977年に同社の子会社として設立され,2009年にグループの水処理部門を統合し,2010年には三菱商事株式会社及び日揮株式会社の資本参加を受け,2011年に「水ing株式会社」に商号を変更し現在に至り(甲4),80余年の歴史を有し,従業員数3,650名(2016年4月),資本金55億円,売上高800億円(2015年度:甲5)という,わが国の水処理業界をリードする企業であり,世間でも「水処理大手」として紹介されており(甲6?甲8),実際,水処理建設で国内1位,上下水道運転管理で国内2位となっている(甲8)。
また,申立人は,水処理技術に長けた荏原製作所,海外でのプラント建設の実績が豊富な日揮,情報収集力・営業力が高い三菱商事の3社の出資でできた会社であり,アジア最大の水ビジネス事業会社となる可能性を秘めているとして業界でも注目されている(甲9)。
このような中,申立人は商号変更当初より,展示会等への出展,広告掲載などの販促活動を行い「水ing」及び「Swing」の商標を使用しており,また,申立人に関する記事が業界紙,一般紙,雑誌に掲載され,申立人を特集するウェブ上の特別番組の配信がされており,これらの中でも「水ing」及び「Swing」の商標が使用されている。
ア 展示会等への出展
申立人は,国内だけでなく海外も含めて,毎年2?9回の展示会等に出展し営業活動を行っている(甲10)。これら展示会等での出展における「下水道展名古屋’16」(2016年7月にポートメッセ名古屋において開催)のブースの写真(甲11),最優秀賞受賞記念パネルの写真(甲12),「第10回水道技術国際シンポジウム・展示会」に参加した際の報告書(甲13)から,展示会等において「水ing」,「Swing」の商標が目立つような態様で使用されている。
イ 広告
申立人は,2011年に「水ing株式会社」に商号を変更した際に,各媒体に社名変更のお知らせの広告を掲載している(甲14,甲16,甲17)。また,一般紙3紙(朝日新聞,読売新聞,河北新聞)に毎月1回,一面の題字近くに「水ing」のロゴを目立つように表した広告を掲載している(甲15)。さらに,業界紙においても,「水ing」の文字及びロゴを目立つように表した広告を掲載している(甲16,甲17)。
ウ 業界紙記事
申立人は,水処理業界で注目を浴びている会社であることから,業界紙で特集されることも多い。2011年の「荏原エンジニアリングサービス株式会社」から「水ing株式会社」への商号変更に関して,前年から紹介記事が掲載され(甲16),また,水道事業などについて,申立人の自治体からの受注やこれまでの実績などを特集する記事が多数掲載されている(甲17)。当然のことながら,これらの記事において,「水ing」商標が記載されている(甲18)。
エ 一般紙記事(一部業界紙,電子新聞を含む)
上述の業界紙記事の他にも,一般紙などの新聞においても多くの申立人に関する記事が掲載されている(甲19)。これらの記事において,「水ing」商標が記載されている(甲20)。
オ 雑誌記事
申立人の事業に関しては,水処理業界だけではなく,より広く世間一般から注目を浴びており,「Pen+」や「日経MOOK」といった雑誌においても,申立人に関する記事が掲載されており,これらの記事において「水ing」商標が記載されている(甲21)。
カ 特別番組
2013年9月4日?2014年9月1日まで,日経チャンネルのWEBサイトで申立人を紹介する番組「水の未来が変わる?水ingの挑戦?」が配信されていた。この番組は,申立人の事業などを紹介するものであるが,その中で,「水ing」が複数回登場している(甲22)。
以上より,申立人は,わが国の水処理業界における大手企業であり,申立人が使用する商標「水ing」及び「Swing」は,少なくとも水処理業界においては,「スイング」と呼ばれて広く知られており周知性を獲得している。
(2)本件商標と引用商標の類否
本件商標は,「スウィング」(swing)と「フロー」(flow)を結合した構成からなると認識するのが自然である。
複数の語の結合からなる商標の類否判断については,「複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるものについて,商標の構成部分の一部を抽出し,この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは,その部分が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合などを除き,許されないというべきである」(最判昭和38年12月5日判決)との最高裁判例がある。
これを本件商標「スウィングフロー」について当てはめてみると,同書・同大・同間隔で横一連に表されているので,「スウィング」又は「フロー」を抽出して類否判断することは,これらが出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合などを除き,許されないということになる。換言すれば,「スウィング」又は「フロー」が,出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や,いずれかの語が出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合には,「スウィング」又は「フロー」を抽出して類否判断することが許されるということになる。
上述のように,申立人は,水処理業界における大手企業で,「スイング」と呼ばれて広く知られているから,少なくとも,同業界における需要者及び取引者が「スイング」を含む商標を見るとき,申立人との関係において強く支配的な印象を持つのが自然である。
また,水処理業界の需要者及び取引者であれば,「フロー」を「(液体などの)流れ」を意味する英単語「flow」との関係で認識するのが自然であるので,識別力が弱い語であるといえる。
そうすると,水処理業界の需要者及び取引者が本件商標「スウィングフロー」を見ると,「スウィング」部分のみ抽出して商標の要部と認識すると考えるのが自然である。
そこで,「スウィング」と「水ing」及び「SWING」を比較すると,いずれも「スウィング」又は「スイング」というほぼ同一の称呼を生じ,また,英単語「Swing」から想起される「揺れ,スイング」を認識するので,称呼及び観念が同一又は類似すると考えるのが相当である。
したがって,本件商標は引用商標に類似する。
(3)本件商標と引用商標の指定商品及び指定役務の類否
本件商標の指定商品及び指定役務は,引用商標の指定商品に類似するものと考えられる。具体的には,本件商標の第11類「水ろ過器及び飲料水用濾過式浄水器」及び第35類「水ろ過器及び飲料水用濾過式浄水器並びにその付属品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」は,引用商標の第11類「浄水装置並びにその部品及び附属品」と類似する関係にある。
(4)小括
以上より,本件商標は,引用商標に類似し,本件商標の指定商品及び指定役務は引用商標の指定商品に類似するので,本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当する。
2 商標法第4条第1項第15号について
(1)申立人は,わが国の水処理業界における大手企業であり,会社名「水ing」及び「Swing」は,少なくとも水処理業界においては,周知商標となっている。
本件商標「スウィングフロー」は,「スウィング」のみが類否判断の要部となると考えられるべきであるが,たとえ分離されず一連一体にのみ認識されるとしても,水処理業界の需要者及び取引者が本件商標「スウィングフロー」を見ると,周知商標「スウィング」が含まれることは容易に認識できるので,申立人と経済的又は組織的に何らかの関連を有する者の出所に係る商品又は役務ではないかという混同を生ずるおそれは否定できない。
(2)本件商標の指定役務中,第37類「業務用浄水器の清掃及び家庭用浄水器の修理,清掃又は保守」は,引用商標の指定商品と同一又は類似の関係にはないが,これらの役務は水処理業界に属するものでもあるので,これらの役務に本件商標「スウィングフロー」が使用されているのを見ると,水処理業界の需要者及び取引者であれば,周知商標「スウィング」が含まれることを自然に認識し,申立人と経済的又は組織的に何らかの関連を有する者の出所に係る商品又は役務ではないかという混同を生ずるおそれは否定できない。
(3)以上を総合して勘案すると,本件商標は,申立人の周知商標「水ing」,「Swing」及び「スイング」との関係において出所の混同を生ずるおそれがあるので,商標法第4条第1項第15号に該当する。

第4 当審の判断
1 引用商標の周知性について
(1)申立人提出の甲各号証及び同人の主張について
ア 申立人は,1931年(昭和6年)に荏原製作所を前身とし,1977年に同社の子会社として設立され,2009年にグループの水処理部門を統合し,2010年には三菱商事株式会社及び日揮株式会社の2社の資本出資を受けた会社で,2011年に「水ing株式会社」に商号を変更し現在に至っている。そして,申立人は80余年の歴史を有し,従業員数3,650名(2016年4月),資本金55億円,売上高800億円(2015年度)という,業界でも「水処理大手」として紹介されており,実際,水処理建設で国内1位,上下水道運転管理で国内2位となっていることが記載されている(甲4?甲9)。
イ 申立人は,「下水道展名古屋’16」(2016年7月にポートメッセ名古屋において開催),最優秀賞受賞記念パネル及び「第10回水道技術国際シンポジウム・展示会」(2015年7月に神戸国際展示場で開催)等に参加し,国内だけでなく海外も含めて,毎年2?9回の展示会等に出展し営業活動を行っていることが記載され,これらの展示会等において「水ing」,「Swing Crporation」の商標が使用されていることが認められる(甲10?甲13)。
ウ 申立人は,2011年に「水ing株式会社」に商号を変更した際に,各媒体に社名変更のお知らせの広告を掲載し,朝日新聞,読売新聞及び河北新聞の3紙に一面の題字近くに「水ing」のロゴを表示した広告を掲載し,また,水道産業新聞,日本水道新聞及び日本下水道新聞の業界紙においても,「水ing」のロゴを表示した広告を掲載している(甲14?甲17)。
エ 2011年の商号変更に関する紹介記事,水道事業などについて,申立人の自治体からの受注やこれまでの実績などを特集する記事等が多数掲載され,一般紙などの新聞においても多くの申立人に関する記事が掲載され,これらの記事において,「水ing」の文字が記載されている(甲16,甲17,甲19)。
オ 申立人の事業に関して,「Pen+」,「日経MOOK」などの雑誌において,申立人に関する記事が掲載され,これらの記事において「水ing」の文字が記載されている(甲21)。
カ 日経チャンネルのWEBサイトで申立人を紹介する番組「水の未来が変わる?水ingの挑戦?」が配信され,その中で,「水ing」の文字が表示されている(甲22)。
(2)上記(1)からすれば,引用商標についての周知性については,以下のとおりである。
ア 引用商標1について
引用商標1は,2011年の商号変更以来,申立人又は申立人の業務に使用され,新聞及び雑誌などのマスコミにおいて宣伝広告が継続的に行われている。
そして,2015年度の売上額では800億円を超える売上げがあり,その市場占有率も,水処理建設が国内1位,上下水道運転管理が国内2位など,上位を維持していることを総合して勘案すれば,引用商標1は,申立人又は申立人の業務を表示する商標として,水処理業界における取引者,需要者の間に一定程度認識されているものと推認できる。
しかしながら,これらの証拠は,業界新聞又は日刊紙に掲載された関連記事及び申立人(企業)に係るいわゆるインターネット情報や特集記事を掲載した出版物や水処理業界における展示会であって,その周知性の度合いを客観的に判断するための資料,すなわち,該商品を広告・宣伝した時期,回数及びその方法,あるいは,該商品をどの時期に,どの地域で,どの位の数量を販売したものか等その取引状況を具体的に示す取引書類等の提出はなく,提出された証拠によっては,引用商標1が申立人又は申立人の業務を表示するものとして需要者の間に広く認識されていたことを認めるに足りる証拠の提出がない。
したがって,引用商標1は,申立人又は申立人の業務を表示するものとして我が国の需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
イ 引用商標2について
引用商標2は,展示会におけるブースの申立人の英語の商号(甲11?甲13)及び申立人の会社カタログや会社概要(甲4,甲5)においてその使用が見られるが,「SWING」の文字は,上記展示会のブースや会社カタログ等において,例えば,商標の「水ing」を顕著に表示した写真等とともに「Swing Corporation」のように英語の商号名として使用されているにすぎず,これらの少ない証拠によっては,引用商標2が,申立人又は申立人の業務を表示するものとして需要者の間に広く認識されていたものとは認められない。
その他,引用商標2が単独で使用され,申立人又は申立人の業務を表示する商標として本件商標の登録出願の時に需要者の間に広く認識されていたことを認めるに足りる証拠の提出がない。
したがって,引用商標2は,申立人又は申立人の業務を表示するものとして,我が国の需要者の間に広く認識されているものと認めることができない。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標について
本件商標は,「スウィングフロー」の文字からなるところ,その構成各文字は,同書,同大,同間隔で視覚上まとまりよく一連に書された構成からなるものであり,これより生じる「スウィングフロー」の称呼もよどみなく一連に称呼するものである。
そして,かかる構成においては,本件商標を「スウィング」の文字部分と「フロー」の文字部分とに分離して看取すべき特段の理由も見出せない。
なお,この点に関し,申立人は,「水処理業界における大手企業で,『スイング』と呼ばれて広く知られているから,少なくとも,同業界における需要者及び取引者が『スイング』を含む商標を見るとき,申立人との関係において強く支配的な印象を持つのが自然である。・・・水処理業界の需要者及び取引者が本件商標『スウィングフロー』を見ると,『スウィング』の文字部分のみ抽出して商標の要部と認識すると考えるのが自然である。」旨を主張している。
しかしながら,本件商標は,その構成中の「フロー」の文字が,「(液体などの)流れ」を意味する語として知られているとしても,本件商標の指定商品及び指定役務との関係において,該文字が商品の品質及び役務の質等を表示するものとして普通に用いられている事実も認められないし,他に本件商標から上記文字部分を捨象して考察しなければならない特段の理由も見出せない。
そうすると,本件商標は,その構成全体の外観上の一体性が極めて強く,かつ,いずれかの文字部分が商品及び役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものとはいえず,「スウィングフロー」の片仮名が一体不可分のものとして認識,把握されるとみるのが相当であるから,申立人の主張は採用することができない。
してみれば,本件商標の「スウィングフロー」の文字は,一体不可分のものであり,該語は,辞書類に載録されていないから,全体をもって,一種の造語として認識されるのが相当である。
したがって,本件商標は,その構成文字に相応して,「スウィングフロー」の一連の称呼のみを生じ,特定の観念を生じないものである。
(2)引用商標について
ア 引用商標1について
引用商標1は,別掲のとおりの構成からなり,大きく書された「水」の漢字とそれに比べてやや小さく書された「ing」の欧文字からなるところ,「水」の漢字は,漢和辞典によれば,「ミズ」又は「スイ」の読みを有しており,「ing」の欧文字は,「英和辞典」によれば,現在分詞や動名詞を造る接尾辞であって,英語の「going」や「doing」などの語が「ゴーイング」や「ドゥーイング」と発音されるから,「ing」の文字部分は「イング」と発音されるものであり,その構成文字全体に相応して「ミズイング」又は「スイイング」の称呼を生じるものとみるのが相当である。
そして,引用商標1は,その構成文字全体から特段の観念を有さないものであるから造語とみるのが相当である。
したがって,引用商標1は,「ミズイング」又は「スイイング」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものである。
イ 引用商標2について
引用商標2は,「SWING」の文字からなるところ,該文字は,「振り動かすこと。大きく揺れ動くこと。」等(株式会社岩波書店 広辞苑第六版)の意味を有する我が国で親しまれた英単語である。
したがって,引用商標2は,その構成文字に相応して「スイング」の称呼を生じ,「揺り動かすこと」の観念を生じるものである。
(3)本件商標と引用商標との類否について
本件商標と引用商標との類否について検討すると,外観においては,本件商標と引用商標とは,上記(1)及び(2)のとおりの構成からなり,その構成態様が相違するものであるから,両者は,外観上,判然と区別し得るものである。
また,称呼においては,本件商標から生じる「スウィングフロー」の称呼と引用商標から生じる「ミズイング」,「スイイング」又は「スイング」の称呼とは,音構成及び音数において差異を有するばかりでなく,「フロー」の音の有無という差異により,これらをそれぞれ一連に称呼しても,全体の語調,語感が相違し,称呼上,明瞭に聴別することができるものである。
さらに,観念においては,本件商標と引用商標1は,共に特定の観念を生じないものであるから,観念上,比較することができない。また,引用商標2は,「振り動かすこと」の観念を生じるから,本件商標と引用商標2とは,観念上,相違するものである。
そうすると,本件商標と引用商標1とは,観念において比較することができないとしても,外観及び称呼において,明らかに相違するものであり,また,本件商標と引用商標2とは,外観,称呼及び観念のいずれの点においても,明らかに相違するものであるから,本件商標と引用商標とは,非類似の商標というべきである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第15号該当性について
引用商標は,上記1(2)のとおり申立人又は申立人の業務を表示するものとして,本件商標の登録出願日前より,我が国の取引者,需要者の間に広く認識されていたものと認められないものである。
また,上記2のとおり,本件商標は,一体不可分の文字として認識されるものであって,引用商標とは非類似の商標であり,全体として異なる視覚的印象や記憶を与え,看者に全く別異のものとして認識されるものであるから,引用商標1が申立人又は申立人の業務を表示する商標として,水処理業界の取引者,需要者の間に一定程度認識されているとしても,本件商標をその指定商品及び指定役務について使用した場合に,これに接する取引者,需要者は申立人を連想,想起するようなことはないというべきである。
してみれば,該商品及び役務が申立人又は同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品及び役務であるかのように,商品及び役務の出所について混同を生じさせるおそれはないものと判断するのが相当である。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しない。
4 むすび
以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第11号及び同第15号のいずれにも違反してされたものとはいえないから,同法第43条の3第4項の規定により,その登録を維持すべきである。
よって,結論のとおり決定する。
別掲 別掲(引用商標1)



異議決定日 2017-09-08 
出願番号 商願2016-60286(T2016-60286) 
審決分類 T 1 651・ 262- Y (W113537)
T 1 651・ 271- Y (W113537)
T 1 651・ 261- Y (W113537)
T 1 651・ 263- Y (W113537)
最終処分 維持  
前審関与審査官 佐藤 松江 
特許庁審判長 井出 英一郎
特許庁審判官 榎本 政実
山田 正樹
登録日 2017-02-17 
登録番号 商標登録第5922742号(T5922742) 
権利者 大協株式会社
商標の称呼 スウイングフロー 
代理人 中村 仁 
代理人 土生 真之 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ