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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X41
管理番号 1333320 
審判番号 取消2015-300801 
総通号数 215 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2017-11-24 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2015-11-09 
確定日 2017-09-11 
事件の表示 上記当事者間の登録第5190385号商標の登録取消審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 登録第5190385号商標の指定商品及び指定役務中,第41類「全指定役務」については,その登録は取り消す。 審判費用は,被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5190385号商標(以下「本件商標」という。)は,「らくらく合格」の文字を標準文字で現してなり,平成19年8月31日に登録出願,第41類「技芸・スポーツ及び知識の教授,資格認定試験・資格検定試験・就職試験その他認定・検定試験に関する講座の実施及びそれらの講座に関する情報の提供,資格認定試験・資格検定試験・就職試験その他認定・検定試験及びそれらの模擬試験の実施,資格認定試験・資格検定試験・就職試験その他認定・検定試験及びそれらの模擬試験の取り次ぎ,資格認定試験・資格検定試験・就職試験その他認定・検定試験及びそれらの模擬試験その他教育に関する情報の提供,学力試験・資格適性試験・性格判断試験の実施及びそれらに関する情報の提供,企業における法務・税務・金融研修その他の研修の企画・運営又は開催,実地教育,職業訓練,幼児教育,資格試験受験相談会・セミナーの企画・運営又は開催,講演会の企画・運営または開催,研修会・討論会・シンポジウムの企画・運営又は開催,会議・議会の手配及び運営,海外における教育実習・実務研修・語学研修・留学及び滞在のためのセミナーの企画・運営又は開催,海外における教育実習・実務研修・語学研修・留学及び滞在のためのセミナーの企画・運営又は開催に関する情報の提供,留学のための受け入れ学校に関する情報の提供,図書及び記録の供覧及びそれらに関する情報提供,電子出版物の提供,映画の上映・制作又は配給及びこれらに関する情報の提供,演芸の上演及びこれに関する情報の提供,演劇の演出又は上演及びこれらに関する情報の提供,音楽の演奏及びこれに関する情報の提供,コンピュータネットワークによる音楽・音声・画像・映像の提供(ストリーミング方式により提供するものを含む。),教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの企画・制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),コンピュータデータを使用した国家資格取得講座及び法務・税務・金融研修その他の講座・研修のための文字・画像・音声を兼ね備えた教材用のビデオテープ・ビデオディスク・CD-ROM・DVDその他の記録媒体の制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),受託による文章の執筆(広告文を除く。),録音済み磁気テープ・録音済み磁気ディスク又は録音済みCDの貸与,録画済み磁気テープ・録画済み磁気ディスク・録画済みCD-ROM・録画済みDVDの貸与」,並びに,第9類及び第16類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品及び指定役務として,同20年12月19日に設定登録されたものである。
なお,本件審判の請求の登録は,平成27年11月24日である(以下,同登録前3年以内の期間を「要証期間」という場合がある。)。

第2 請求人の主張
請求人は,結論同旨の審決を求め,その理由を要旨次のように述べた。
1 請求の理由
請求人の調査によれば,被請求人は,本件商標を,その指定商品及び指定役務のうち第41類のいずれの指定役務について,少なくとも過去3年に,日本国内において使用をしていない。
また,本件商標について専用使用権者は存在せず,通常使用権者として本件商標を使用している者も存在しない。
したがって,本件商標は,継続して3年以上日本国内において,商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても,その第41類の全指定役務につき使用されていないものである。
2 弁駁の理由
(1)結合商標における類否判断
複数の構成要素からなる結合商標については,その特定の要素が強く支配的な印象を与える場合,若しくは,その一部がいわゆる付記的部分で略称できるものでない限り,原則として,全体としてひとつのまとまった商標として把握されるべきである(最高裁昭和37年(オ)第953号,最高裁平成3年(行ツ)第103号)。
(2)本件商標について
本件商標は,「らくらく合格」であり,「ラクラクゴウカク」の称呼が生じ,「楽に試験に受かる」といった一体不可分の観念を生じる。
すなわち,本件商標は,特定の要素が強く支配的な印象を与える場合でもなく,若しくは,その一部がいわゆる付記的部分で略称できるものでないため,全体として一つのまとまった商標として把握できる。
(3)使用商標について
被請求人が提出したすべての証拠を精査する限り,使用されている商標は,以下のス「らくらく」を除き,以下のように複数の語句からなる,いわゆる結合商標である。
ア 「LEC流らくらく合格術」(「LEC流」+「らくらく」+「合格術」:乙2,乙5及び乙6)
称呼:「レックリュウラクラクゴウカクジュツ」
観念:「LECの方式により楽に試験に受かるための術」
イ 「簿記3級LEC流らくらく合格術」(「簿記」+「3級」+「LEC流」+「らくらく」+「合格術」:乙3及び乙4)
称呼:「ボキサンキュウレックリュウラクラクゴウカクジュツ」
観念:「簿記の3級の試験にLECの方式により楽に受かるための術」
ウ 「らくらく合格」(「らくらく」+「合格」:乙6)
称呼:「ラクラクゴウカク」
観念:「楽に試験に受かる」
エ 「3級LEC流らくらく合格術」(「3級」+「LEC流」+「らくらく」+「合格術」:乙6)
称呼:「サンキュウレックリュウラクラクゴウカクジュツ」
観念:「試験の3級にLECの方式により楽に受かるための術」
オ 「LEC式宅建らくらく合格法」(「LEC式」+「宅建」+「らくらく」+「合格法」:乙6)
称呼:「レックシキタッケンラクラクゴウカクホウ」
観念:「LECの方式により宅建の試験に楽に受がるための方法」
カ 「中小企業診断士らくらく合格!」(「中小企業診断士」+「らくらく」+「合格!」:乙6)
称呼:「チュウショウキギョウシンダンシラクラクゴウカク」
観念:「中小企業診断士の試験に楽に受かる!」
キ 「宅建らくらく合格学習法」(「宅建」+「らくらく」+「合格」+「学習法」:乙8)
称呼:「タッケンラクラクゴウカクガクシュウホウ」
観念:「宅建の試験に楽に受かる勉強方法」
ク 「らくらくWeb合格講座」(「らくらく」+「Web」+「合格」+「講座」:乙9ないし乙14)
称呼:「ラクラクウェブゴウカクコウザ」
観念:「インターネットの文書閲覧システムを用いて楽に合格する講座」
ケ 「行政書士らくらくWeb合格講座」(「行政書士」+「らくらく」+「Web」+「合格」+「講座」:乙9ないし乙11)
称呼:「ギョウセイショシラクラクウェブゴウカクコウザ」
観念:「インターネットの文書閲覧システムを用いて行政書士の試験に楽に合格する講座」
コ 「らくらく合格シリーズ」(「らくらく」+「合格」+「シリーズ」:乙9ないし乙14)
称呼:「ラクラクゴウカクシリーズ」
観念:「楽に試験に受かるための(テキストや講座の)一続きのまとまり」
サ 「らくらくWeb合格講座司法試験ベーシック」(「らくらく」+「Web」+「合格」+「講座」+「司法試験」+「ベーシック」:乙13)
称呼:「ラクラクウェブゴウカクコウザシホウシケンベーシック」
観念:「インターネットの文書閲覧システムを用いて楽に司法試験に合格する講座の基礎編」
シ 「らくらくWeb宅建合格講座」(「らくらく」+「Web」+「宅建」+「合格」+「講座」:乙14)
称呼:「ラクラクウェブタッケンゴウカクコウザ」
観念:「インターネットの文書閲覧システムを用いて宅建の試験に楽に合格する講座」
ス 「らくらく」(乙9ないし乙11,乙14)
(以下,これらを「使用商標」という場合がある。)。
使用商標のうち,上記アないしシは,それぞれまとまった意味をもち,一つの観念を生じるものであるから,特定の要素が強く支配的な印象を与える場合でもなく,若しくは,その一部がいわゆる付記的部分で略称できるものとはいえず,全体として一つのまとまった商標として把握されるべきである。
(4)本件商標と使用商標との非類似性
ア 本件商標と使用商標のうちの上記(3)ア,イ及びエないしシとの非類似性について
本件商標は,「らくらく合格」であり,「ラクラクゴウカク(審決注:「ニュウモン」は誤記と認められる。)」の称呼を生じ,「楽に試験に受かること」という程の観念を生じる。
一方,使用商標のうちの上記(3)ア,イ及びエないしシについては,それぞれ,上記(3)ア,イ及びエないしシに示したとおりの称呼及び観念を生じ,本件商標の称呼,観念及び外観と異なる。
よって,本件商標と使用商標のうちの上記(3)ア,イ及びエないしシは,非類似であり,社会通念上同一の商標ではない。
イ 本件商標と使用商標のうちの上記(3)ス「らくらく」との非類似性について
使用商標のうちの上記(3)ス「らくらく」は,「ラクラク」の称呼を生じ,「楽な」,「容易な」といった観念を生じる。
本件商標は「らくらく合格」である一方,使用商標のうちの上記(3)スは「らくらく」であるから,両商標の外観は,明らかに異なる。
また,両商標は,称呼についても音数に大きく差があることから,異なる。
さらに,観念については,本件商標が「楽に試験に受かること」というものであるのに対し,使用商標のうちの上記(3)ス「らくらく」は,単に「楽な」,「容易な」というものであり,両商標は,大きく異なる。
よって,本件商標と使用商標のうちの上記(3)ス「らくらく」とは,非類似であり,社会通念上同一の商標ではない。
ウ 使用商標のうちの上記(3)ウ「らくらく合格」が商標法上の商標に該当しない点について
被請求人は,「被請求人の発信するTwitterのうち,本件商標『らくらく合格』に関するもの」として,乙第6号証を提出している。そして,請求人が確認したところによれば,同号証の第1頁の上部には,確かに本件商標と同一の「らくらく合格」が記載されている。
しかし,乙第6号証は,Twitterの検索ページであり,その第1頁の上部に記載されている「らくらく合格」の文字は,単なるTwitterの検索ワードであって,商標法上の商標(商標法第2条第1項)には該当しない。
すなわち,商標法上の商標に該当するには,「標章」(商標法第2条第1項かっこ書)であって,「業として商品を生産し,証明し,又は譲渡する者がその商品について使用をするもの」(同項第1号)又は「業として役務を提供し,又は証明する者がその役務について使用をするもの(前号に掲げるものを除く。)」(同項第2号)との要件を満たす必要があるところ,乙第6号証は,単にTwitterの検索ページであるため,使用商標のうちの上記(3)ウ「らくらく合格」の文字が同ページに表示されているとしても,当該使用商標は,被請求人が「その商品について使用をするもの」(同項第1号)でもなく,「その役務について使用をするもの」(同項第2号)でもない。
よって,使用商標のうちの上記(3)ウ「らくらく合格」の表示は,商標法上の商標(商標法第2条第1項)に該当しない。
エ 要証期間の使用が立証されていない点について
(ア)被請求人は,答弁書の「第8 証拠方法」の欄において,乙第2号証ないし乙第4号証については,「被請求人のWEBサイト上で公開された(中略)ガイダンス・イベント予定表」であると説明する。
また,乙第5号証については,「被請求人のWEBサイト上で公開された,『LEC仙台本校(2014年)8月の資格説明会・無料公開講座』予定表」と,乙第7号証については,「被請求人佐世保駅前校の運営するブログ中,2013年7月17日付の記事」と,乙第8号証については,「被請求人が実施したガイダンス(中略)への参加者に配布された資料」と,乙第9号証ないし乙第14号証については,「被請求人のWEBサイト上のオンラインショップ(中略)紹介ページ」と,それぞれ説明する。
これら乙第2号証ないし乙第5号証及び乙第7号証ないし乙第14号証は,被請求人の役務に係る広告又は価格表に該当すると考えられるところ(商標法第2条第3項第8号),被請求人による本件商標の使用が,同号における使用に該当するためには,「商品若しくは役務に関する広告,価格表若しくは取引書類に標章を付して展示し,若しくは頒布し,又はこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」の要件を満たす必要がある。すなわち,要証期間に現実に展示し,若しくは頒布し,又はこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供されたことが必要である。
しかし,被請求人が提出した上記乙各号証には,確かに日付の記載があるものの,要証期間に,それらが現実に配布され,又はウェブサイト上に表示されていたことは不明である。
また,乙第7号証の各頁の右下には,「2016/02/10」の日付の表示があり,乙第9号証ないし乙第11号証の各頁の右下には,「2016/02/03」の日付の表示があり,乙第12号証ないし乙第14号証の各頁の右下には,「2016/02/04」の日付の表示があるが,これらは,いずれも要証期間の日付ではない。
すなわち,被請求人提出の上記乙各号証のいずれによっても,被請求人の役務に係る広告又は価格表が,要証期間に現実に展示され,若しくは頒布され,又はこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供された事実は何ら立証されていない。
(イ)被請求人は,乙第6号証については,「被請求人の発信するTwitterのうち,本件商標『らくらく合格』に関するもの」と説明するが,これは,被請求人の広告又は価格表等取引書類に該当するものではない。
また,上記(ア)において述べたことと同様,乙第6号証が,要証期間に現実に展示され,若しくは頒布され,又はこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供された事実も何ら立証されていない。
なお,乙第6号証の各頁の右下には,「2016/02/17」の日付の表示があるが,これは,要証期間の日付ではない。
3 口頭審理陳述要領書(平成28年10月19日付け)
(1)本件商標と使用商標の非同一性について
被請求人は,「法」,「術」のような単語を付記しても,また,試験種名や流派名,担当講師名を付記しても,さらに,「Web」のように受講形態を表す語を,登録商標を構成する文字の間に加えても,商標の同一性は失われない旨主張する。
しかし,上記のような変更をすれば,商標の外観は,当然に変更されるのであり,それに加えて,商標の称呼や観念も変更される。
まして,本件商標のように自他商品又は役務の識別力が弱い商標は,他に文字が結合されることによって,もとの商標の部分が要部として認識され難くなっていく。
そうすれば,もとの商標と他の文字を付加した後の商標の同一性が失われていくことは明らかであり,被請求人の主張は,失当といわざるを得ない。
(2)要証期間の使用が立証されていない点について(乙2ないし乙15)
被請求人は,「乙第2号証ないし乙第15号証にはいずれも,要証期間の日付の記載がなされている。被請求人は,現時点において,過去の要証期間の使用の立証を尽くしており,請求人の主張は,『過去の事実の立証』方法において,無理難題を要求するものにすぎない。」旨主張する。
しかし,インターネットのウェブサイトにおけるページを証拠として提出する際,その内容は,修正・改変しようと思えばできるものであることを鑑みれば,そのウェブページが実際に要証期間にインターネットに掲載されていた客観的事実の立証を求めるのは当然である。
そして,被請求人は,商標法第2条第3項に定義される「使用」をさらに証明することは無理であると認めているのであるから,被請求人が商標法第50条第2項に定める要証期間の本件商標の使用を証明できなかったことは明らかである。
また,乙第15号証について,被請求人は,「平成25年12月10日に発行し,配布した。」と主張する。
確かに,乙第15号証にて提出されているチラシには,「平成25年12月10日」の日付はあるが,このチラシが実際に発行され,配布された客観的事実は何ら立証されていない。
(3)商標の使用をしている役務について
被請求人は,本件審判の請求に係る指定役務中,「技芸・スポーツ及び知識の教授」,「資格認定試験・資格検定試験・就職試験その他認定・検定試験に関する講座の実施及びそれらの講座に関する情報の提供,資格認定試験・資格検定試験・就職試験その他認定・検定試験及びそれらの模擬試験その他教育に関する情報の提供,資格試験受験相談会・セミナーの企画・運営又は開催」等について,本件商標の使用をしていると主張している。
しかし,商標法上の役務とは,「他人のために行う労務又は便益であって,独立して商取引の目的たりうべきものをいう。」(「工業所有権法(産業財産権法)逐条解説〔第19版〕」)であるところ,乙各号証をみるに,講座の受講の申込みや料金の記述はあっても,「資格認定試験・資格検定試験・就職試験その他認定・検定試験及びそれらの模擬試験その他教育に関する情報の提供」や「資格試験受験相談会・セミナーの企画・運営又は開催」などの役務の申込みや料金の記述はなされていない。
そして,資格試験の講座においては,講座の実施に当たって,付帯的に受講生に資格試験の情報を提供したり,相談に応じたりするのは普通に行われているといえる。
そうすると,上記請求に係る指定役務中,「資格認定試験・資格検定試験に関する講座の実施」以外の役務にあっては,商標法上の役務として実施していることが乙各号証をもっては証明されていない。
4 上申書(平成28年12月15日付け)
(1)乙第16号証について
被請求人は,「要証期間に確かに同講座が開設されており,同講座の受講申込みがあった」と主張し,その主張を裏付ける証拠として乙第16号証を提出して,これを「被請求人の保有する社内データベース管理システム(LEX)で検索した結果が表示された画面を印刷したものである」と説明している。
しかし,乙第16号証のようにパソコン画面の表示を印刷したと称されるものは,作成しようと思えば作成が可能なものであり,証拠として信憑性に乏しいといわざるを得ない。
仮に,乙第16号証が,講座の申込み状況を示す受講者名簿であったとしても,実際に要証期間に講座が開設され,受講生が講座を受講した事実は証明されていない。
また,乙第16号証に表示されている商標は,いずれも「らくらくWEB合格講座 司法試験超初級」であり,本件商標と社会通念上同一の商標ではない。
(2)乙第17号証について
被請求人は,乙第17号証は,「らくらくWEB講座 司法試験超初級」講座の法学入門編での使用テキストと説明する。
しかし,上記使用テキストが,要証期間に実際に受講生に配布された事実は立証されていない。
よって,乙第17号証をもってしては,本件商標が要証期間に,本件審判の請求に係る第41類の指定役務について使用(商標法第2条第3項第3号及び同項第4号)されたとはいえない。
また,乙第17号証においても,そこに付されている商標は,いずれも「らくらくWeb合格講座」であり,本件商標と社会通念上同一の商標ではない。

第3 被請求人の主張
被請求人は,本件審判の請求は成り立たない,審判費用は請求人の負担とする,との審決を求めると答弁し,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として,乙第1号証ないし乙第17号証を提出した。
1 答弁の理由
本件商標権者である被請求人は,要証期間に我が国において,本件審判の請求に係る指定役務中,「技芸・スポーツ及び知識の教授,資格認定試験・資格検定試験・就職試験その他認定・検定試験に関する講座の実施及びそれらの講座に関する情報の提供,資格認定試験・資格検定試験・就職試験その他認定・検定試験及びそれらの模擬試験その他教育に関する情報の提供,資格試験受験相談会・セミナーの企画・運営又は開催」等(以下「使用に係る役務」という場合がある。)について,本件商標を使用している。
(1)本件商標の使用者
ア 被請求人(通称LEC)がウェブサイトにおいて公開した平成26年の「8月ガイダンス・イベント予定表」(乙2)には,「簿記3級 LEC流らくらく合格術」との記載があり,被請求人の開催する簿記検定試験対策講座及び簿記3級の学習方法について情報を提供するためのガイダンスとして,被請求人の山口本校において,平成26年8月9日及び24日に「簿記3級 LEC流らくらく合格術」が実施されたことが分かる(乙2には「2015年向け」,「2014年・・・解答速報」の文字があること,予定表の日付と曜日が平成26年8月のカレンダーと一致することから,2014年のガイダンス予定表であることが分かる。乙3ないし乙5も同様)。
同様に,平成26年11月10日,19日及び28日(乙3),同年12月11日(乙4)に,被請求人の山口本校において,同年8月19日に,被請求人の仙台本校においても(乙5),それぞれ「簿記3級 LEC流らくらく合格術」が実施されたことが分かる。
さらに,被請求人の発信するTwitterにおいては,平成26年6月8日における「【簿記】3級LEC流らくらく合格術」の実施が告知されており,被請求人が,長崎本校において,上記のガイダンスを実施したことが分かる(乙6)。
同様に,平成26年6月18日,7月5日,7月12日,7月14日,7月24日,7月29日,8月4日,8月11日,8月27日,9月9日,9月12日,9月18日,11月15日,11月28日,12月2日,12月6日,12月10日,12月13日及び12月20日にも,被請求人の長崎本校にてガイダンスが行われたこと,同年12月17日には被請求人の千葉本校にてガイダンスが行われたことが分かる(乙6)。
イ 被請求人の佐世保駅前校が運営するブログの平成25年7月17日付けの記事において,「LEC式 宅建らくらく合格学習法の秘密」と題するガイダンスの実施が告知されており(乙7),ガイダンスにおいては,乙第8号証の資料が参加者に配布された。
ウ 被請求人(通称LEC)のウェブサイトにおけるオンラインショップ(E学習センター)のページには,行政書士試験合格対策講座として,「行政書士らくらくWeb合格講座 Step1」,「行政書士らくらくWeb合格講座 Step2」,「行政書士らくらくWeb合格講座 Step3」の各講座が紹介されている(乙9ないし乙11)。
Step1は,1回当たり30分の講義が全15回,Step2は,1回当たり45分の講義が全60回,Step3は,1回当たり60分の講義が全80回という内容で,いずれもWeb動画を視聴するという受講形態をとり,専任講師が講義を担当していたこと,被請求人によって,Step1は,2012年8月28日から,Step2は,2012年10月12日から,Step3は,2012年10月26日から,それぞれ2013年10月31日まで販売され,2013年11月9日まで配信(提供)されたことが分かる。
エ 被請求人のウェブサイトにおけるオンラインショップのページに,法学検定試験ベーシック<基礎>コースへの合格対策講座として,「らくらくWeb合格講座 司法試験超初級」と「らくらくWeb合格講座 司法試験ベーシック」が紹介されている(乙12及び乙13)。
前者は,1コマ20分の講義が全35回,後者は,1コマ30分の講義が全58回という内容で,いずれの講座も,被請求人によって,2013年6月28日から2015年1月22日まで販売され,2015年4月30日まで配信(提供)されたことが分かる。
オ 被請求人のウェブサイトにおけるオンラインショップのページに,宅地建物取引士試験への合格対策講座として,「らくらくWeb宅建合格講座」が紹介されている(乙14)。
上記講座は,3級コース(15分×62回),2級コース(15分×70回),1級コース(15分×48回)で構成され,コース別申込み又は一括申込みのいずれも可能であること,被請求人によって,2012年9月28日から2013年10月10日まで販売され,Web動画は,2013年10月31日まで配信(提供)されたことが分かる。
(2)使用に係る役務
被請求人は,行政書士・宅建士・司法試験という国家資格の認定試験や日商簿記・法学検定試験という各種資格検定試験への合格を目指す受験生に対し,相応の知識を教授する講座を実施する際の講座名として,あるいは,それらの講座又は資格試験そのものに関する情報の提供を目的とする説明会やガイダンスを開催する際の広告として,「らくらく合格」を使用しているものであり,使用に係る役務に本件商標を使用しているといえる。
(3)使用に係る商標
ア 乙第2号証ないし乙第8号証には,本件商標が記載されている。
イ 「行政書士らくらくWeb合格講座」(乙9ないし乙11),「らくらくWeb合格講座 司法試験超初級」(乙12),「らくらくWeb合格講座 司法試験ベーシック」(乙13)といった講座名は,本件商標と厳密な意味での同一商標を使用したものとはいえないかもしれない。
しかし,インターネットが目覚しく普及した今日,資格試験受験生による予備校講座の受講形態は,かつての主流であった「生講義」(予備校に通学し教室内で直接講師の講義を聴く形態)や「ビデオ」(生講義を録画したものを予備校に通学して視聴する形態)から「DVD」(生講義を録画したものを自宅等で視聴する形態),さらには「Web」(インターネット上で配信される講義動画をパソコンやスマホで視聴する形態)へと移行し,Web講座の需要は,飛躍的に高まっている。
そこで,当該講座がWebに特化した講座(受講形態が原則としてWeb動画のみの講座)であることを需要者に端的に示し印象付けるために,「Web」の3文字を本件商標のあえて中途に滑り込ませて講座名としたのが「らくらくWeb合格」である。
すなわち,「らくらくWeb合格」は,「Web」の文字部分から役務提供方法がWebに限定されることを注意喚起させられこそすれ,もともとの本件商標が有していた外観及び観念を依然保持し続け,そのいずれをも微塵も変更させるものではない。
よって,「らくらくWeb合格」は,本件商標と社会通念上同一の商標である。
ウ 以上の理は,「らくらくWeb宅建合格講座」(乙14)についても妥当する。
「らくらくWeb宅建合格」の場合,本件商標の中途に「Web」の3文字の他に「宅建」の2文字が割り込んでいるが,「Web」については前述したとおりであるし,「宅建」についても,その文字部分から提供される役務の種類が宅建士試験関係に限定されることを注意喚起させられこそすれ,もともとの本件商標が有していた外観及び観念を依然保持し続け,そのいずれをも微塵も変更させるものではないため,「らくらくWeb宅建合格」は,本件商標と社会通念上同一の商標である。
(4)使用時期
乙第2号証には(2014年)8月9日及び24日,乙第3号証には(2014年)11月10日,19日及び28日,乙第4号証には(2014年)12月11日,乙第5号証には(2014年)8月19日,乙第6号証には(2014年)6月8日,6月18日,7月5日,7月12日,7月14日,7月24日,7月29日,8月4日,8月11日,8月27日,9月9日,9月12日,9月18日,11月15日,11月28日,12月2日,12月6日,12月10日,12月13日,12月17日及び12月20日,乙第7号証には(2013年)7月17日と明記されている。
また,乙第8号証は,その記載内容から2012年の宅建試験終了後かつ2013年の宅建試験日(10月20日)よりも前のものであることが分かる。
さらに,乙第9号証には,「販売開始日 2012年8月28日 AM0:00」及び「販売終了日 2013年11月1日 AM0:00」,乙第10号証には,「販売開始日 2012年10月12日 AM0:00」及び「販売終了日 2013年11月1日 AM0:00」,乙第11号証には,「販売開始日 2012年10月26日 AM0:00」及び「販売終了日 2013年11月1日 AM0:00」,乙第12号証及び乙第13号証には,「販売開始日 2013年6月28日 AM0:00」及び「販売終了日 2015年1月23日 AM0:00」,乙第14号証には,「販売開始日 2012年9月28日 AM0:00」及び「販売終了目2013年10月11日 AM0:00」と明記されている。
2 口頭審理陳述要領書(平成28年10月5日付け)
(1)本件商標の使用について
被請求人が平成25年12月10日に発行し,配布した「リーガルフェスタ」チラシには,「リーガル王子横溝が語る らくらく合格法」との記載があり,被請求人の開催する行政書士試験対策講座及び行政書士試験の学習方法について情報を提供するためのガイダンスとして,被請求人の渋谷駅前本校において,平成25年12月23日(月・祝)14時45分から15時30分まで「リーガル王子横溝が語る らくらく合格法」が実施された(乙15)。
上記「リーガル王子横溝が語る らくらく合格法」は,被請求人の販売提供する行政書士試験対策講座や行政書士の試験概要・合格のための学習方法に関する情報を受験生に提供するという役務について使用する標章であるから,第41類の指定役務中の「知識の教授」,「資格認定試験に関する・・・講座に関する情報の提供」,「資格認定試験・・・に関する情報の提供」の各指定役務について使用するものといえる。また,上記ガイダンスの内容は,資格への興味ないし受験への意欲を持ち始めた人々が参加する場所でなされる説明会ないし初歩的講習会であるから,そのガイダンスの題名に「リーガル王子横溝が語る らくらく合格法」の標章を付したことは,第41類の指定役務中の「資格試験受験相談会・セミナーの・・運営又は開催」について使用するものといえる。
(2)商標法第2条第3項(使用)の該当性について
ア 被請求人は,使用に係る役務に関して,被請求人のウェブサイト上の 「(平成26年)8月ガイダンス・イベント予定表」,「(平成26年)11月ガイダンス・イベント予定表」,「(平成26年)12月ガイダンス・イベント予定表」(乙2ないし乙4)において,当該役務の内容をなすガイダンスとして,「簿記3級 LEC流らくらく合格術」を「広告」するとともに「参加無料」と表示し,万人が閲覧できる状態に置いている。
よって,被請求人の行為は,「役務に関する広告,価格表・・・に標章を付して展示し,若しくは頒布し,又はこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」(商標法第2条第3項第8号)に該当する。
イ 被請求人は,ウェブサイト上の「LEC仙台本校(平成26年)8月ガイダンス・イベント予定表」(乙5)において,使用に係る役務の内容をなすガイダンス「簿記3級 LEC流らくらく合格術」を「広告」し,万人が閲覧できる状態に置いている。また,Twitterを発信することにより,被請求人の長崎本校及び千葉本校にて無料ガイダンス「LEC流らくらく合格術」が実施されることを「広告」し(乙6),万人が閲覧できる状態に置いている。
よって,被請求人の行為は,「役務に関する広告・・に標章を付して展示し,若しくは頒布し,又はこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」(商標法第2条第3項第8号)に該当する。
ウ 被請求人は,使用に係る役務に関して,被請求人の佐世保駅前校の運営するブログ記事(乙7)において,当該役務の内容をなすガイダンス「LEC式 宅建らくらく合格学習法の秘密」の実施を「広告」し,万人が閲覧できる状態に置いている。
よって,被請求人の行為は,「役務に関する広告・・・に標章を付して展示し,若しくは頒布し,又はこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」(商標法第2条第3項第8号)に該当する。
エ 被請求人は,ガイダンスにおいて,資料(乙8)を参加者に配布した。同資料は,当該ガイダンスの概要を記したものであり,参加者は,聴講に当たり,同資料を使用するから,「役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物」(商標法第2条第3項第3号及び同項第4号)に該当する。
そして,上記資料にガイダンスのテーマ「LEC式 宅建らくらく合格学習法の秘密」が付されている以上,被請求人の行為は,「役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に標章を付する行為」(商標法第2条第3項第3号),及び,「役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に標章を付したものを用いて役務を提供する行為」(同項第4号)に該当する。
オ 被請求人は,使用に係る役務に関して,平成25年12月10日に発行し,配布した「リーガルフェスタ」チラシ(乙15)において,当該役務の内容をなすガイダンスとして「リーガル王子横溝が語る らくらく合格法」を「広告」するとともに「参加無料」と表示し,パンフラックへの設置や掲示板への掲示,不特定多数の人への配布をしている。
よって,被請求人の行為は,「役務に関する広告,価格表・・・に標章を付して展示し,若しくは頒布・・・する行為」(商標法第2条第3項第8号)に該当する。
カ 被請求人は,使用に係る役務に関して,被請求人のウェブサイト上のオンラインショップ紹介ページ(乙9ないし乙11)において,当該役務の内容をなす提供講座として,「行政書士らくらくWeb合格講座 Step1」,「行政書士らくらくWeb合格講座 Step2」,「行政書士らくらくWeb合格講座 Step3」の各講座の概要を「広告」するとともに講座の受講料を「価格表」で表示し,万人が閲覧できる状態に置いている。
よって,被請求人の行為は,「役務に関する広告,価格表若しくは取引書類に標章を付して展示し,若しくは頒布し,又はこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」(商標法第2条第3項第8号)に該当する。
キ 被請求人は,使用に係る役務に関して,被請求人のウェブサイト上のオンラインショップ紹介ページ(乙12及び乙13)において,当該役務の内容をなす提供講座として,「らくらくWeb合格講座 司法試験超初級」と「らくらくWeb合格講座 司法試験ベーシック」の各講座の概要を「広告」するとともに講座の受講料を「価格表」で表示し,万人が閲覧できる状態に置いている。
よって,被請求人の行為は,「役務に関する広告,価格表若しくは取引書類に標章を付して展示し,若しくは頒布し,又はこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」(商標法第2条第3項第8号)に該当する。
ク 被請求人は,使用に係る役務に関して,被請求人のウェブサイト上のオンラインショップ紹介ページ(乙14)において,当該役務の内容をなす提供講座として,「らくらくWeb宅建合格講座」の概要を「広告」するとともに講座の受講料を「価格表」で表示し,万人が閲覧できる状態に置いている。
よって,被請求人の行為は,「役務に関する広告,価格表若しくは取引書類に標章を付して展示し,若しくは頒布し,又はこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」(商標法第2条第3項第8号)に該当する。
(3)請求人の主張に対する反論
ア 本件商標と使用に係る商標の同一性について
(ア)「簿記3級 LEC流らくらく合格術」(乙2ないし乙6),「LEC式 宅建らくらく合格学習法の秘密」(乙7及び乙8),「リーガル王子横溝が語る らくらく合格法」(乙15)について
本件商標を基本に据えつつ,楽に試験に受かるための手段・方法を重視・強調する場合には,「法」,「術」といった端的な単語を付記して「らくらく合格法」,「らくらく合格術」というように使用できる。楽に試験に受かるための普段の勉強方法に重点を置く場合には,「らくらく合格学習法」となる。また,試験種名(簿記3級・宅建)や流派名(○○流・○○式),担当講師の名前等を付記して使用したからといって,もとの商標との同一性が失われることがないことは当然である。
この点,請求人の弁駁によれば,「らくらく合格術」を「らくらく+合格術」,「らくらく合格法」を「らくらく+合格法」,「らくらく合格学習法」を「らくらく+合格+学習法」などと恣意的かつ不自然に分断し,「らくらく合格」の不可分一体的結合を何が何でも解こうとしている。
しかし,そもそも,本件商標権者である被請求人は,「らくらく合格」を商標登録したのであるから,「らくらく合格」を出所識別の標識になるように使用するのは当然のことであり,わざわざ「らくらく」と「合格」を分離して使用しようとは考えない。
請求人の弁駁は,自己に有利な主張をする上で一大障害となる「らくらく合格」の不可分一体性を否定するために考案された脆弁にすぎない。
しかも,請求人の論法によれば,商標権者は,登録商標と寸分違わぬものを使用するのでなければ商標権の保護を受け得なくなることになる。その結果,商標登録の意義は激減し,商標権者は,将来のあらゆる使用の組合せを考えて,何百通り・何千通りもの類似商標を一挙に登録しなければならなくなり,商標登録事務を渋滞させる。
(イ)「行政書士らくらくWeb合格講座」(乙9ないし乙11),「らくらくWeb合格講座 司法試験超初級」,「らくらくWeb合格講座 司法試験ベーシック」(乙12及び乙13)について
ここでの争点は,「らくらくWeb合格」という使用が,本件商標を使用したことになるかである。
確かに,厳密な意味で同一商標を使用したものとはいえないかもしれない。
しかし,インターネットが目覚しく普及した今日,講座がWebに特化した講座(受講形態が原則としてWeb動画のみの講座)であることを需要者に端的に示し印象付けるために,「Web」の3文字(ただし発音上は短い1音)を本件商標の中途に滑り込ませて役務(講座)名としたのが「らくらくWeb合格」である。
もちろん,Web講座であれば「らくらく合格Web講座」とするのがオーソドックスな方法であろうが,「Web」という軽快な響きをもつ単音節を「らくらく合格」のあえて中途に滑り込ませる方が語呂良く印象付けることができるし,「らくらく合格」が被請求人を想起させる商標として既に定着していることにも鑑みれば,「らくらくWeb合格」は,役務提供方法がWebに限定されることを注意喚起させられるだけで,もともとの本件商標が有する外観・称呼・観念を損なうことなく,依然保持し続けるものである。
よって,「らくらくWeb合格」は,本件商標と社会通念上同一の商標である。
(ウ)「らくらくWeb宅建合格講座」(乙14)について
ここでの争点は,「らくらくWeb宅建合格」という使用が,本件商標を使用したことになるかである。
上記(イ)の理は,ここでも妥当する。「らくらくWeb宅建合格」の場合,本件商標の中途に「Web」の他に「宅建」が割り込んでいるが,「Web」については前述したとおりであるし,「宅建」についてもその文字部分から,提供される役務の種類が宅建試験関係に限定されることを注意喚起させられるだけで,もともとの本件商標が有する外観・称呼・観念を損なうことなく,依然保持し続けるものである。
よって,「らくらくWeb宅建合格」は,本件商標と社会通念上同一の商標である。
イ 要証期間の使用の立証について
乙第2号証ないし乙第15号証にはいずれも,要証期間の日付の記載がなされている。被請求人は,現時点において,過去の要証期間の使用の立証を尽くしており,請求人の主張は,「過去の事実の立証」方法において,無理難題を要求するものにすぎない。
3 上申書(平成28年11月24日付け)
(1)要証期間に受講申込みがあったこと等
被請求人が実施した「らくらくWeb合格講座 司法試験超初級」(乙12)の受講申込み状況は,乙第16号証のとおりである。
乙第16号証は,被請求人の保有する社内データベース管理システム(LEX)で検索した結果が表示された画面を印刷したものである(個人情報保護のため,申込者の氏名の一部と電話番号の一部をマスキングしてある。)。
そして,上記検索結果によれば,Web(Windows)+音声ダウンロードクラスには5名,Web(Windows)+音声ダウンロード+テキスト発送ありクラスには6名の受講申込みがあったことが分かる。 したがって,要証期間に確かに同講座が開設されており,同講座の受講申込みがあったのである。
(2)使用テキスト
被請求人が実施した「らくらくWeb合格講座 司法試験超初級」(乙12)における使用テキストとされている「LECオリジナルテキスト」の一部を提出する(乙17)。
乙第17号証は,上記講座の法学入門編での使用テキストであり,その表紙部分及び各頁のヘッダーに,本件商標と社会通念上同一である「らくらくWeb合格講座」という商標が付されている。
なお,オンラインショップでの講座名は「らくらくWeb合格講座・・・超初級」(乙12)であるのに対し,使用テキストにおける表示は「らくらくWeb合格講座 イントロダクション」(乙17)となっているが,これは,もともと「超初級」という名称で企画されたものであるので,「超初級」が正しいところ,被請求人内部の担当者間の連絡ミスにより,使用テキストの表示が「イントロダクション」となってしまったものである。
「らくらくWeb合格講座・・・ベーシック」(乙13)の使用テキストにおける表示は,「ベーシック」であり,オンラインショップでの講座名と齟齬がない。
(3)使用に係る商標の「らくらくWeb合格講座」について
「らくらくWeb合格講座」は,被請求人が提供する講座の名称である。 すなわち,被請求人は,「らくらくWeb合格講座」を講座という役務を提供する際の標識として使用しているのである。受講生は,あくまで,対価を払って講座を購入しているのが実態であって,使用テキストのような個々の「商品」を購入しているのではない(使用テキスト自体は非売品である)。使用テキストは,同講座において使用される教材の一部をなすにすぎない。
したがって,被請求人が「らくらくWeb合格講座」をテキスト等の「商品」の商標として使用していると請求人が指摘するのであれば,その指摘は当たらない。
以上述べてきたように,被請求人において「らくらくWeb合格講座」が要証期間に確かに存在し,この講座が確かに開設されていたこと,そして,被請求人は,商品ではなくて役務(知識の教授,講座の実施,講座や資格試験に関する情報の提供等)に関して「らくらく合格」の商標を使用していたことが分かる。

第4 当審の判断
1 本件商標の使用について,被請求人が提出した証拠によれば,以下のとおりである。
(1)乙第9号証ないし乙第11号証について
乙第9号証ないし乙第11号証は,いずれも2016年2月3日に印刷された被請求人のWEBサイト上のオンラインショップの紹介ページとするものであり,それらの1葉目には,本件商標権者を示す「東京リーガルマインド」の表示の下,「行政書士」のほか,「らくらく:行政書士らくらくWeb合格講座 Step1」(乙9),「らくらく:行政書士らくらくWeb合格講座 Step2」(乙10)又は「らくらく:行政書士らくらくWeb合格講座 Step3」(乙11)の表示があり,いずれの講座についても「Web動画」の受講形態である旨の記載がある。
そして,上記各講座のうち,「Step1」については,「販売開始日」が「2012年8月28日 AM0:00」,「販売終了日」が「2013年11月1日 AM0:00」であること,「Step2」については,「販売開始日」が「2012年10月12日 AM0:00」,「販売終了日」が「2013年11月1日 AM0:00」であること,「Step3」については,「販売開始日」が「2012年10月26日 AM0:00」,「販売終了日」が「2013年11月1日 AM0:00」であることの記載があり,上記各講座のいずれについても,「お申込み」には「この商品は販売を終了しました」の記載がある。
そうすると,上記各証拠は,「らくらく」及び「らくらくWeb合格講座」の表示の下,本件審判の請求に係る指定役務中の「知識の教授,資格認定試験・資格検定試験・就職試験その他認定・検定試験に関する講座の実施及びそれらの講座に関する情報の提供」に含まれる,Web動画による「行政書士」の講座に関する本件商標権者の広告といえるものであり,当該講座の販売期間は,2012年8月28日ないし2013年10月31日(Step1),2012年10月12日ないし2013年10月31日(Step2)及び2012年10月26日ないし2013年10月31日(Step3)である。
ア 使用に係る商標について
(ア)上記各証拠における「行政書士」に関する講座の広告に使用された「らくらく」の文字は,「らくらく合格」の文字からなる本件商標と,同一の文字からなるものということができない。
また,「らくらく」の文字からは,「ラクラク」の称呼を生じ,「たやすく」程の意味合いを認識させるのに対し,本件商標からは,「ラクラクゴウカク」の称呼を生じ,「たやすく合格」程の意味合いを認識させるから,「らくらく」の文字は,本件商標と同一の称呼及び観念を生じるものということもできない。
したがって,上記広告に使用された「らくらく」の文字は,本件商標と同一の商標(社会通念上同一と認められる商標を含む。)ということができない。
(イ)上記各証拠における「行政書士」に関する講座の広告に使用された「らくらくWeb合格講座」の文字は,その構成中の「講座」部分が「学部・学科を構成する単位」程の意味合いを表す文字であることから,本件審判の請求に係る指定役務中,「知識の教授,資格認定試験・資格検定試験・就職試験その他認定・検定試験に関する講座の実施及びそれらの講座に関する情報の提供」との関係においては,役務の質を表すものとして一般に用いられる語といえるものである。
そして,その構成中の自他役務の識別標識としての要部として看取される「らくらくWeb合格」の文字は,「らくらく合格」の文字からなる本件商標と,同一の文字からなるものということができない。
また,「らくらくWeb合格」の文字からは,「ラクラクウェブゴウカク」の称呼を生じ,「たやすくWebで合格」程の意味合いを認識させるのに対し,本件商標からは,「ラクラクゴウカク」の称呼を生じ,「たやすく合格」程の意味合いを認識させるから,「らくらくWeb合格」の文字は,本件商標と同一の称呼及び観念を生じるものということもできない。
したがって,上記広告に使用された「らくらくWeb合格講座」の文字は,本件商標と同一の商標(社会通念上同一と認められる商標を含む。)ということができない。
なお,被請求人は,「らくらくWeb合格講座」について,「当該講座がWebに特化した講座(受講形態が原則としてWeb動画のみの講座)であることを需要者に端的に示し印象付けるために,『Web』の3文字を本件商標のあえて中途に滑り込ませて講座名とした」旨主張する。
しかしながら,上記講座名として使用する商標は,「らくらくWeb合格講座」であって,その構成中の「講座」の文字部分は,役務の質を表すものであるから,これが捨象されて把握される場合があるとしても,「らくらくWeb合格」の文字部分において,その中間に表された「Web」が捨象され,「らくらく合格」とのみ把握,認識されるものとすべき特段の事情は見受けられない。
そうすると,上記使用に係る商標「らくらくWeb合格講座」については,当該文字全体又は「らくらくWeb合格」の文字が,本件商標と同一の商標(社会通念上同一と認められる商標を含む。)と認められるか否かを検討するものというべきである。
よって,被請求人の上記主張は,採用できない。
イ 使用時期について
被請求人は,「使用に係る役務に関して,被請求人のウェブサイト上のオンラインショップ紹介ページ(乙9ないし乙11)において,当該役務の内容をなす提供講座として,『行政書士らくらくWeb合格講座・・・』,・・・の各講座の概要を『広告』するとともに講座の受講料を『価格表』で表示し,万人が閲覧できる状態に置いている。」とし,その行為は,商標法第2条第3項第8号にいう使用行為に該当する旨主張する。
しかしながら,乙第9号証ないし乙第11号証は,いずれもその印刷日である2016年2月3日の情報であるから,要証期間に本件商標権者のウェブサイトに掲載されていたことを証するものということができない。
また,上記各講座の販売期間が,2012年8月28日ないし2013年10月31日(Step1),2012年10月12日ないし2013年10月31日(Step2)及び2012年10月26日ないし2013年10月31日(Step3)であることがうかがえるとしても,乙第9号証ないし乙第11号証に示す「行政書士らくらくWeb合格講座」のStep1ないしStep3が販売された事実は証明されていないから,その販売期間に,当該講座に関する広告が,本件商標権者のウェブサイトに掲載されていたと推認することもできない。
(2)乙第12号証及び乙第16号証について
乙第12号証は,2016年2月4日に印刷された被請求人のWEBサイト上のオンラインショップの紹介ページとするものであり,その1葉目には,本件商標権者を示す「東京リーガルマインド」の表示の下,「法科大学院・司法試験共通」のほか,「らくらくWeb合格講座 司法試験超初級」の表示があり,当該講座について,「Web動画」及び「DVD」の受講形態である旨の記載がある。
そして,上記講座については,「販売開始日」が「2013年6月28日 AM0:00」,「販売終了日」が「2015年1月23日 AM0:00」であることの記載があり,「お申込み」には「この商品は販売を終了しました」の記載がある。
また,乙第12号証の2葉目には,「受講価格(税込)」が記載されており,「受講形態」が「Web(Windowsのみ)+音声DL テキスト発送なし(PDF)」については,「一般価格」として「6690円」及び「講座コード」として「LC76401」の記載があり,「受講形態」が「Web(Windowsのみ)+音声DL テキスト発送あり」については,「一般価格」として「10,290円」及び「講座コード」として「LE76401」の記載がある。
さらに,乙第16号証は,本件商標権者の保有する社内データベース管理システムの検索結果とされるものであり,「らくらくWeb合格講座 司法試験超初級(WIN+音声ダウンロードクラス)」(講座コード LC76401)については,2013年8月11日から12月2日までの間に5名から,「らくらくWeb合格講座 司法試験超初級(WIN+音声ダウンロード+テキスト発送ありクラス)」(物品コード LE76401)については,2013年7月25日から2014年11月19日の間に6名から,それぞれウェブサイトを介して申込みを受け付けた旨の記載がある。
そうすると,乙第12号証は,「らくらくWeb合格講座」の表示の下,本件審判の請求に係る指定役務中の「知識の教授,資格認定試験・資格検定試験・就職試験その他認定・検定試験に関する講座の実施及びそれらの講座に関する情報の提供」に含まれる,Web動画による「法科大学院・司法試験共通」の「司法試験超初級」の講座に関する本件商標権者の広告といえるものであり,当該講座の販売期間は,2013年6月28日から2015年1月22日であり,また,2013年7月25日から2014年12月2日までの間に11名から申込みを受け付けたものである。
ア 使用に係る商標について
上記証拠における「法科大学院・司法試験共通」の「司法試験超初級」の講座に関する広告に使用された「らくらくWeb合格講座」の文字は,上記(1)ア(イ)の記載と同様の理由により,本件商標と同一の商標(社会通念上同一と認められる商標を含む。)ということができない。
イ 使用時期について
被請求人は,乙第9号証ないし乙第11号証について述べたことと同様に、上記講座に係るオンラインショップ紹介ページ(乙12)について,商標法第2条第3項第8号にいう使用行為に該当する旨主張するが,乙第12号証は,その印刷日である2016年2月4日の情報であるから,要証期間に本件商標権者のウェブサイトに掲載されていたことを証するものということができない。
また,上記講座の販売期間が,2013年6月28日ないし2015年1月22日であることがうかがえるとしても,2013年7月25日から2014年12月2日までの間に申込みを受け付けた11名が,乙第12号証の1葉目にある「お申込み」を利用して申込みをした事実を示す書面が提出されていないから,乙第12号証に示されたウェブサイトを介して「法科大学院・司法試験共通」の「司法試験超初級」の受講を申し込んだものということもできない。
よって,上記講座の販売期間に,当該講座に関する広告が,本件商標権者のウェブサイトに掲載されていたと推認することもできない。
(3)乙第13号証について
乙第13号証は,2016年2月4日に印刷された被請求人のWEBサイト上のオンラインショップの紹介ページとするものであり,その1葉目には,本件商標権者を示す「東京リーガルマインド」の表示の下,「法科大学院・司法試験共通」のほか,「らくらくWeb合格講座 司法試験ベーシック」の表示があり,当該講座について,「Web動画」又は「DVD」の受講形態である旨の記載がある。
そして,当該講座については,「販売開始日」が「2013年6月28日 AM0:00」,「販売終了日」が「2015年1月23日 AM0:00」であることの記載があり,「お申込み」には「この商品は販売を終了しました」の記載がある。
そうすると,上記証拠は,「らくらくWeb合格講座」の表示の下,本件審判の請求に係る指定役務中の「知識の教授,資格認定試験・資格検定試験・就職試験その他認定・検定試験に関する講座の実施及びそれらの講座に関する情報の提供」に含まれる,Web動画による「法科大学院・司法試験共通」の「司法試験ベーシック」の講座に関する本件商標権者の広告といえるものであり,当該講座の販売期間は,2013年6月28日ないし2015年1月22日である。
ア 使用に係る商標について
上記証拠における「法科大学院・司法試験共通」の「司法試験ベーシック」の講座に関する広告に使用された「らくらくWeb合格講座」の文字は,上記(1)ア(イ)の記載と同様の理由により,本件商標と同一の商標(社会通念上同一と認められる商標を含む。)ということができない。
イ 使用時期について
被請求人は,乙第9号証ないし乙第11号証について述べたことと同様に,上記講座に係るオンラインショップ紹介ページ(乙13)について,商標法第2条第3項第8号にいう使用行為に該当する旨主張するが,乙第13号証は,その印刷日である2016年2月4日の情報であるから,要証期間に本件商標権者のウェブサイトに掲載されていたことを証するものということができない。
また,上記講座の販売期間が,2013年6月28日ないし2015年1月22日であることがうかがえるとしても,乙第13号証に示す「法科大学院・司法試験共通」の「らくらくWeb合格講座 司法試験ベーシック」が販売された事実は証明されていないから,その販売期間に,当該講座に関する広告が,本件商標権者のウェブサイトに掲載されていたと推認することもできない。
(4)乙第14号証について
乙第14号証は,2016年2月4日に印刷された被請求人のWEBサイト上のオンラインショップの紹介ページとするものであり,その1葉目には,本件商標権者を示す「東京リーガルマインド」の表示の下,「宅地建物取引士」のほか,「らくらく:らくらくWeb宅建合格講座」の表示があり,当該講座について,「Web動画」又は「DVD」の受講形態である旨の記載がある。
そして,当該講座については,「販売開始日」が「2012年9月28日 AM0:00」,「販売終了日」が「2013年10月11日 AM0:00」であることの記載があり,「お申込み」には「この商品は販売を終了しました」の記載がある。
そうすると,上記証拠は,「らくらく」及び「らくらくWeb宅建合格講座」の表示の下,本件審判の請求に係る指定役務中の「知識の教授,資格認定試験・資格検定試験・就職試験その他認定・検定試験に関する講座の実施及びそれらの講座に関する情報の提供」に含まれる,Web動画による「宅地建物取引士」の講座に関する本件商標権者の広告といえるものであり,当該講座の販売期間は,2012年9月28日から2013年10月10日である。
ア 使用に係る商標について
(ア)上記証拠における「宅地建物取引士」に関する講座の広告に使用された「らくらく」の文字は,上記(1)ア(ア)と同様の理由により,本件商標と同一の商標(社会通念上同一と認められる商標を含む。)ということができない。
(イ)上記証拠における「宅地建物取引士」に関する講座の広告に使用された「らくらくWeb宅建合格講座」の文字は,その構成中の「講座」部分が「学部・学科を構成する単位」程の意味合いを表す文字であることから,本件審判の請求に係る指定役務中,「知識の教授,資格認定試験・資格検定試験・就職試験その他認定・検定試験に関する講座の実施及びそれらの講座に関する情報の提供」との関係においては,役務の質を表すものとして一般に用いられる語といえるものである。
そして,その構成中の自他役務の識別標識としての要部として看取される「らくらくWeb宅建合格」の文字は,「らくらく合格」の文字からなる本件商標と同一の文字からなるものということができない。
また,「らくらくWeb宅建合格」の文字からは,「ラクラクウェブタッケンゴウカク」の称呼を生じ,「たやすくWebで宅建に合格」程の意味合いを認識させるのに対し,本件商標からは,「ラクラクゴウカク」の称呼を生じ,「たやすく合格」程の意味合いを認識させるものであるから,「らくらくWeb宅建合格」の文字は,本件商標と同一の称呼及び観念を生じるものということもできない。
したがって,上記広告に使用された「らくらくWeb宅建合格講座」の文字は,本件商標と同一の商標(社会通念上同一と認められる商標を含む。)ということができない。
なお,被請求人は,「らくらくWeb宅建合格」について,「『らくらくWeb宅建合格』の場合,本件商標の中途に『Web』の他に『宅建』が割り込んでいるが,『Web』については前述したとおり(前記第3の2(3)ア(イ))であるし,『宅建』についてもその文字部分から,提供される役務の種類が宅建試験関係に限定されることを注意喚起させられるだけで,もともとの本件商標が有する外観・称呼・観念を損なうことなく,依然保持し続けるものである。」旨主張する。
しかしながら,上記講座名として使用する商標は,「らくらくWeb宅建合格講座」であって,その構成中の「講座」の文字部分は,役務の質を表すものであるから,これが捨象されて把握される場合があるとしても,「らくらくWeb宅建合格」の文字部分において,その中間に表された「Web宅建」の文字が捨象され,「らくらく合格」とのみ把握,認識されるものとすべき特段の事情は見受けられない。
そうすると,上記使用に係る商標「らくらくWeb宅建合格講座」については,当該文字全体又は「らくらくWeb宅建合格」の文字が,本件商標と同一の商標(社会通念上同一と認められる商標を含む。)と認められるか否かを検討するものというべきである。
よって,被請求人の上記主張は,採用できない。
イ 使用時期について
被請求人は,乙第9号証ないし乙第11号証について述べたことと同様に,上記講座に係るオンラインショップ紹介ページ(乙14)について,商標法第2条第3項第8号にいう使用行為に該当する旨主張するが,乙第14号証は,その印刷日である2016年2月4日の情報であるから,要証期間に本件商標権者のウェブサイトに掲載されたことを証するものということができない。
また,上記講座の販売期間が,2012年9月28日から2013年10月10日であることがうかがえるとしても,乙第14号証に示す「宅地建物取引士」の「らくらくWeb宅建合格講座」が販売された事実は証明されていないから,その販売期間に,当該講座に関する広告が,本件商標権者のウェブサイトに掲載されていたと推認することもできない。
(5)その他の証拠について
ア 乙第2号証は2014年8月,乙第3号証は同年11月及び乙第4号証は同年12月の「ガイダンス・イベント予定表」であり,乙第5号証は,2014年の「LEC仙台本校 8月の資格説明会・無料公開講座」,乙第6号証は,2014年6月から12月の「らくらく合格 LEC」をキーワードとした「Twitter検索」の結果とするところ,これらには「LEC流らくらく合格術」の文字が記載されている。
そして,乙第7号証は,「2013年7月17日」の記載がある「【宅建】資格説明会ご案内★:LEC佐世保駅前校【提携校】」に関する本件商標権者の佐世保駅前校が運営するブログであり,乙第8号証は,「LEC東京リーガルマインド 2013 資格説明会(無料)」とする書面であり,これらには,「LEC式 宅建らくらく合格学習法」の文字が記載されている。
また,乙第15号証は,「リーガルフェスタ LEGAL/FESTA」の表題の書面であり,これには,「らくらく合格法」の文字が記載されている。
(ア)上記乙第2号証ないし乙第8号証及び乙第15号証において表示された「LEC流らくらく合格術」,「LEC式 宅建らくらく合格学習法」及び「らくらく合格法」の文字は,「らくらく合格」の文字からなる本件商標と同一の文字からなるものということができない。
また,「LEC流らくらく合格術」の文字からは,「レックリュウラクラクゴウカクジュツ」の称呼を生じ,「LEC流でたやすく合格するわざ」程の意味合いを認識させ,「LEC式 宅建らくらく合格学習法」の文字からは,「レックシキタッケンラクラクゴウカクガクシュウホウ」の称呼を生じ,「LEC式で宅建にたやすく合格する学習の仕方」程の意味合いを認識させ,「らくらく合格法」の文字からは,「ラクラクゴウカクホウ」の称呼を生じ,「たやすく合格する法」程の意味合いを認識させるのに対し,本件商標からは,「ラクラクゴウカク」の称呼を生じ,「たやすく合格」程の意味合いを認識させるものであるから,本件商標と同一の称呼及び観念を生じるものということもできない。
したがって,上記「LEC流らくらく合格術」,「LEC式 宅建らくらく合格学習法」及び「らくらく合格法」の文字は,本件商標と同一の商標(社会通念上同一と認められる商標を含む。)ということができない。
(イ)被請求人は,乙第2号証ないし乙第6号証について,「当該役務の内容をなすガイダンスとして,・・・『広告』するとともに,・・・万人が閲覧できる状態に置いている。」旨述べ,また,乙第7号証については,「佐世保駅前校の運営するブログ記事において,当該役務の内容をなすガイダンス・・・の実施を『広告』し,万人が閲覧できる状態に置いている。」旨述べて,「よって,被請求人の行為は,『役務に関する広告・・・に標章を付して展示し,若しくは頒布し,又はこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為』(商標法第2条第3項第8号)に該当する。」旨主張する。
しかしながら,乙第2号証ないし乙第4号証の「ガイダンス・イベント予定表」は,いずれもいかなる者の作成に係るものであるか不明であり,また,乙第5号証が本件商標権者による「資格説明会・無料公開講座」に関する広告であるとしても,これらの書面が,要証期間に,本件商標権者により頒布された事実は示されていない。
また,乙第6号証は,「Twitter検索」において「らくらく合格 LEC」を検索した結果を表示したものにすぎず,乙第7号証が,2013年7月17日付けの本件商標権者の佐世保駅前校の「【宅建】資格説明会の案内」に関する記事であるとしても,要証期間に,本件商標権者が「【宅建】資格説明会」を開催した事実は示されていないから,当該説明会に関する広告に標章を付して電磁的方法により提供されたもの(商標法第2条第3項第8号)ということができない。
(ウ)被請求人は,乙第8号証について,「ガイダンスにおいて,資料(乙8)を参加者に配布した。同資料は,当該ガイダンスの概要を記したものであり,参加者は,聴講に当たり,同資料を使用するから,『役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物』(商標法第2条第3項第3号及び同項第4号)に該当する。」旨主張する。
そこで,乙第8号証をみるに,同号証は,本件商標権者が作成した「2013 資格説明会(無料)」との表題の4枚からなる書面(資料)であって,「LEC式 宅建らくらく合格学習法」の表示とともに,宅地建物取引主任者資格試験(宅建試験)に合格するための学習法等について記載されている。
しかしながら,被請求人が提出した証拠からは,本件商標権者が「2013 資格説明会(無料)」を開催した事実,その説明会において上記資料(乙8)を参加者に配布して使用した事実は示されていないから,要証期間に,本件商標権者により,役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に標章を付する行為,又は,その利用に供する物に標章を付したものを用いて役務を提供する行為(商標法第2条第3項第3号又は同項第4号)がされたとはいうことができない。
そして,上記資料に表示された「LEC式 宅建らくらく合格学習法」の文字は,「らくらく合格」の文字からなる本件商標と同一の文字からなるものということができない。
また,「LEC式 宅建らくらく合格学習法」の文字からは,「レックシキタッケンラクラクゴウカクガクシュウホウ」の称呼を生じ,「LEC式で宅建にたやすく合格する学習の仕方」程の意味合いを認識させるのに対し,本件商標からは,「ラクラクゴウカク」の称呼を生じ,「たやすく合格」程の意味合いを認識させるものであるから,本件商標と同一の称呼及び観念を生じるものということもできない。
したがって,上記「LEC式 宅建らくらく合格学習法」の文字は,本件商標と同一の商標(社会通念上同一と認められる商標を含む。)ということができない。
(エ)被請求人は,乙第15号証について,「使用に係る役務に関して,平成25年12月10日に発行し,配布した『リーガルフェスタ』チラシ(乙15)において,当該役務の内容をなすガイダンスとして・・・『広告』するとともに・・・,パンフラックへの設置や掲示板への掲示,不特定多数の人への配布をしている。」旨主張する。
しかしながら,上記チラシ(乙15)が,本件商標権者により,要証期間に含まれる2013年(平成25年)12月10日発行されたことがうかがえるとしても,要証期間に,本件商標権者により,「行政書士ガイダンス」を含む「リーガルフェスタ LEGAL FESTA」が開催され,当該チラシがパンフラックに設置され,掲示板に掲示され,又は,頒布された事実は示されていない。
イ 乙第17号証は,「らくらくWeb合格講座 イントロダクション 法学入門」と表示された司法試験のためのオリジナルテキストとするものであり,その裏表紙には,著作権者といえる本件商標権者を示す「株式会社東京リーガルマインド」及び最初の発行年を示す「2012」の表示がある。
そして,被請求人は,上記テキスト(乙17)について,「らくらくWeb合格講座」の法学入門編での使用テキストである旨主張する。
しかしながら,上記テキスト(乙17)が,本件商標権者により,2012年に発行されたことがうかがえるとしても,当該テキストに表示された「らくらくWeb合格講座」の文字は,上記(1)ア(イ)の記載と同様の理由により,本件商標と同一の商標(社会通念上同一と認められる商標を含む。)ということができず,また,当該テキストが,要証期間に,本件商標権者により,本件審判の請求に係る指定役務について使用された事実は示されていない。
2 まとめ
以上のとおり,被請求人は,本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において,本件商標権者が,その請求に係る指定役務について,本件商標と同一の商標(社会通念上同一と認められる商標を含む。)を使用していたことを証明したものということができない。
したがって,本件商標の登録は,その指定商品及び指定役務中,結論掲記の指定役務について,商標法第50条の規定により,取り消すべきである。
よって,結論のとおり審決する。
審理終結日 2017-07-13 
結審通知日 2017-07-18 
審決日 2017-08-02 
出願番号 商願2007-93267(T2007-93267) 
審決分類 T 1 32・ 1- Z (X41)
最終処分 成立  
特許庁審判長 青木 博文
特許庁審判官 田中 亨子
田中 敬規
登録日 2008-12-19 
登録番号 商標登録第5190385号(T5190385) 
商標の称呼 ラクラクゴーカク、ラクラク、ゴーカク 
代理人 正林 真之 
代理人 三浦 大 
代理人 大友 温子 
代理人 庄野 功章 
代理人 林 栄二 
代理人 東谷 幸浩 

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