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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成22行ケ10339審決取消請求事件 判例 商標

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審決分類 審判 判定 その他 属さない(申立て不成立) W30
管理番号 1331500 
判定請求番号 判定2017-600012 
総通号数 213 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標判定公報 
発行日 2017-09-29 
種別 判定 
2017-02-22 
確定日 2017-08-03 
事件の表示 上記当事者間の登録第5868813号商標の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 商品「茶飲料」について使用するイ号標章は、登録第5868813号商標の商標権の効力の範囲に属しない。
理由 第1 本件商標
本件登録第5868813号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成28年5月20日に登録出願、第30類「茶,茶飲料」を指定商品として、同年7月22日に設定登録されたものであり、その商標権は、現に有効に存続しているものである。

第2 イ号標章
被請求人が商品「茶飲料」について使用する標章(以下「イ号標章」という。)は、別掲2のとおりの構成からなるものである。

第3 請求人の主張
請求人は、被請求人が商品「茶飲料」について使用するイ号標章は、本件商標の商標権の効力の範囲に属する、との判定を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証を提出した。
1 請求の理由
(1)判定請求の必要性
請求人は、本件商標の商標権者であるが、被請求人が商品「茶飲料」にイ号標章の使用をした場合、取引者、需要者が、実際の取引の場において、被請求人の商品をあたかも請求人の商品であると誤認し、出所の混同を生ずるおそれがあるものである。
そこで、請求人は、イ号標章が本件商標の商標権の効力の範囲に属しているか否かについての本件判定を求める。
(2)イ号標章の説明
イ号標章は、別掲2のとおりの構成からなるところ、栓部を除いた本体部分は、上下から中央に向かって黄緑色から緑色が濃くなるように濃淡のある彩色が施され、左下には赤色の遠目から見ると長方形と思しき図形を有し、また、「京都」、「福寿園」、「伊右衛門」、「茶」、「KYOTO」、「FUKUJUEN」、「SINCE1790」の文字要素を有している。
そして、イ号標章は、上下の張り出た部分から中央のくびれた部分にかけて緑色が濃くなるように濃淡が施された色彩から、全体として見ると、竹筒を連想させ、赤色の図形がワンポイントとして配された外観構成であると看取される。
被請求人は、平成29年(2017年)1月23日付けにて、自己のウェブサイトにおいて、イ号標章が付された「茶飲料」の発売を発表しているところ(甲1)、該被請求人の行為は、商品「茶飲料」に関する広告等を内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為であり、商標法第2条第3項第8号にいう標章の「使用」に該当する。
また、被請求人は、平成29年(2017年)3月7日から全国でイ号標章を付した「茶飲料」を販売する予定であるところ、該被請求人の行為は、商品「茶飲料」の包装に標章を付し、該商品を譲渡する行為であるため、商標法第2条第3項第1号及び同項第2号にいう標章の「使用」に該当する。
(3)イ号標章が商標権の効力の範囲に属するとの説明
ア 商標の類否は、対比される両商標が同一又は類似の商品に使用された場合に、商品の出所につき誤認、混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが、それには、そのような商品に使用された商標が、その外観、観念、称呼等によって取引者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべく、しかも、その商品の取引の実情を明らかにし得る限り、その具体的な取引状況に基づいて判断するのを相当とする(昭和39年(行ツ)第110号)。
イ 本件商標は、竹模様を連想させる横縞を施した緑色の地模様の略中央寄りに、やや左右の辺が上下の辺に比して長い赤色の長方形が配置された構成からなるものである。
他方、イ号標章は、大部分を占める背景部分において、上下の張り出た部分から中央のくびれた部分にかけて緑色が濃くなるように濃淡のある配色が施され、その一部に赤色の図形を有することから、全体として見ると、赤色の図形がワンポイントとして配された緑色の竹筒を連想させる外観構成であると看取されるものであり、実際、被請求人自身、イ号標章は、竹をモチーフにしたデザインであると明言している(甲1)。
本件商標とイ号標章とを対比すると、本件商標の大半を占める領域に彩色された緑色とイ号標章中の本体部分の約8割程度を占める範囲において着色された緑色とは、いずれも近似した色合いであり、また、両者は、竹を連想させる色彩ないし模様であり、赤色の図形を一部に有する構成においても共通する。
ウ 本件商標の指定商品中の「茶飲料」とイ号標章が付される「茶飲料」とは、共に全国のスーパーマーケット、コンビニエンスストア、ドラッグストア又は自動販売機等を主な販売場所として、100円ないし300円程度の価格帯で販売される商品であり、また、需要者の範囲は、いずれも全国の一般消費者であるため、同一の商品であることに疑いの余地はない。
上記のような「茶飲料」は、全国どこでも廉価な価格で購入でき、個々の需要者の日常生活において、様々な契機で購入されるものであるが、その購入の主な目的は、止渇である。
ここで、我々の日常経験によれば、一般の取引者、需要者は、必ずしも商標の構成を細部にまでわたり正確に記憶し、想起するものとは限らず、商標全体の主たる印象によって商品の出所を識別する場合も少なくない(東京高裁昭和51年(行ケ)第139号)。「茶飲料」が、廉価な価格で販売される日用飲料品であり、需要者は、主に止渇を目的として、日常生活において気軽に購入するものであることを考慮すれば、本件商標とイ号標章とは、文字の有無において差異を有するとしても、本件商標の大半を占める領域に彩色された緑色とイ号標章の大部分を占める背景部分において着色された緑色とは、いずれも近似した色合いであり、また、両者は、竹を連想させる色彩ないし模様であり、赤色の図形を一部に有する構成においても共通するため、需要者は、その共通点に最も強く印象付けられ、文字要素の有無といった相違点にはそれほど注意をひかれず、両者の全体の印象は、極めて近似するというべきである。
してみれば、本件商標とイ号標章とが同一の商品「茶飲料」に使用された場合には、商品の出所につき誤認、混同を生ずるおそれがあるから、両者は、類似する。
2 むすび
以上のとおり、イ号標章は、本件商標と類似する標章であり、その使用商品と本件商標の指定商品とは同一の商品である。
したがって、被請求人が商品「茶飲料」について使用するイ号標章は、本件商標の商標権の効力の範囲に属するものである。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の判定を求めると答弁し、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第7号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 答弁の理由
(1)イ号標章における使用態様について
請求人は、請求の理由において、「本件商標とイ号標章とは、文字の有無において差異を有するとしても、本件商標の大半を占める領域に彩色された緑色とイ号標章の大部分を占める背景部分において着色された緑色とは、いずれも近似した色合いであり、また、両者は、竹を連想させる色彩ないし模様であり、赤色の図形を一部に有する構成においても共通するため、需要者は、その共通点に最も強く印象付けられ、文字要素の有無といった相違点にはそれほど注意をひかれず、両者の全体の印象は、極めて近似するというべきである」と主張している。
しかしながら、商品選択の場においては、何よりも先に商品名により自他商品を識別するのが一般的であり、イ号標章に係る商品において需要者の注意をひく部分は、パッケージ表面に付された背景模様ではなく、商品の正面中央に白色の大きな文字で表記されている「伊右衛門」であり、「福寿園」であり、「FUKUJUEN」である。特に、商標「伊右衛門」は、防護標章が登録されており(乙1)、需要者の間に広く認識されている著名な商標であるから、イ号標章に係る商品において、最も需要者に印象付けられ、注意をひく部分は、「伊右衛門」と考えるのが至極当然であり、該文字部分について需要者が注意をひかれないことなどあり得ない。
そもそも、イ号標章において、商標として機能しているのは、文字部分のみであり、背景模様の部分は、いわゆるパッケージデザインにすぎず、自他商品の識別標識として機能する部分ではない。商標法第3条第1項第6号に係る「商標審査基準」においても、「商標が、模様的に連続反復する図形等により構成されているため、単なる地模様として認識される場合には、本号に該当する。」とされ、地模様からなる商標については、「需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない」とされている(乙2)。
イ号標章の背景模様の場合、模様的に連続する図形ではないものの、地模様そのものであり、自他商品識別機能を発揮し得るものではない。本件商標は、商標法第3条第1項第6号の拒絶理由通知を受けることなく登録されているが、これは、すなわち、本件商標が地模様として登録されたのではなく、「緑色の縦長の長方形の形をした図形商標」として登録されたことを示すものと考えられ、このような商標を包装用容器の表面全体にあしらったとしても、そのような使用態様は、商標法第2条第3項第1号、同項第2号又は同項第8号にいう標章の使用ではない。
上記のとおり、イ号標章における緑色の背景模様部分は、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができる態様により使用されているものではなく、このようなパッケージデザインにおける背景模様に対して、図形商標である本件商標の商標権が及ぶものではない。
(2)イ号標章と本件商標との類否
仮に、イ号標章における背景模様の部分が自他商品の識別標識として機能し得るとしても、以下のとおり、イ号標章と本件商標とが互いに非類似であることは明らかである。
ア 商標の類否は、対比される両商標が同一又は類似の商品に使用された場合に、商品の出所につき誤認、混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが、それには、そのような商品に使用された商標が、その外観、観念、称呼等によって取引者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべく、しかも、その商品の取引の実情を明らかにし得る限り、その具体的な取引状況に基づいて判断するのを相当とする(最高裁昭和39年(行ツ)第110号、同43年2月27日第三小法廷判決。乙3)。
イ 本件商標は、別掲1のとおり、緑色の縦長長方形からなり、濃緑や薄緑などの複数の同系色の細い横縞が全体に施され、さらに、中央左寄りに赤色で縦長の小さい略長方形が配置されているものであり、その構成態様から特定の称呼及び観念を生じないものとみるのが相当である。
ウ イ号標章は、別掲2のとおり、蓋部を有し、中央部がくびれた縦長のボトル状の包装用容器の形状からなり、容器の中央部に白色の明朝体で「伊右衛門」と大きく表記され、その下に「茶」の文字が表記された白色の大きめの円が、「伊右衛門」の右脇には「京都」の文字が表記された小さい赤色の縦長長方形が、その下には白色の「福寿園」の文字が、さらに、容器最下部には、欧文字で「KYOTO/FUKUJUEN/since 1790」と三段書きで表記され、その左斜め上方には、「嘉壽」の文字が表記された赤色のひょうたん図形が配されている。そして、その容器全体は、くびれ部上方の張り出し部分から中央部のくびれにかけて、薄緑色から緑色のグラデーションが施され、また、中央部のくびれからくびれ部上方の張り出し部分にかけて、緑色から薄緑色のグラデーションが施されており、イ号標章は、透明なフィルム上に印刷されているため、透過性が高く、薄緑色から緑色のグラデーション部分において、容器内の茶が透けて見えている(乙4)。
上記のような構成態様からは、「伊右衛門(いえもん)」、「福寿園(ふくじゅえん)」、「嘉壽(かじゅ)」といった称呼が生じ得る。
また、「伊右衛門」については、「著名な茶飲料の銘柄」として、「福寿園」については、「京都の老舗の製茶会社」として、それぞれ認識され(乙5)、「嘉壽」については、「長生きして喜ばしい;新年になって歳を重ねたことを祝って発する語」といった観念が生じ得る。
エ 本件商標とイ号標章とを比較すると、称呼及び観念においては、明らかに異なっており、相紛れるおそれはない。
また、外観においては、緑色の地模様上に小さい赤色の長方形が配されている点で共通するものの、本件商標が緑色の縦長の長方形であるのに対し、イ号標章は中央部がくびれた縦長のボトル状であり、その外形は、全く異なるものである上、本件商標には横縞が施されているのに対し、イ号標章にはそのような横縞は存在せず、逆に、イ号標章にはグラデーション模様が施されているに対し、本件商標にはそのような模様は存在しない。
本件商標とイ号標章とは、その構成要素の形状において上記のような顕著な差異を有していることからすれば、外観全体から受ける視覚的印象が大きく異なり、時と所を異にして離隔観察しても、相紛れるおそれはない。
オ 請求人は、請求の理由において、「本件商標とイ号標章とは、文字の有無において差異を有するとしても、本件商標の大半を占める領域に彩色された緑色とイ号標章の大部分を占める背景部分において着色された緑色とは、いずれも近似した色合いであり、また、両者は、竹を連想させる色彩ないし模様であり、赤色の図形を一部に有する構成においても共通するため、需要者は、その共通点に最も強く印象付けられ」と主張するが、パッケージを緑色とし、赤色の図形を一部に配置する構成態様は、イ号標章以外にも存在しており、この種のペットボトル入りの茶飲料においては珍しいものではない(乙6の1、乙6の2)。
また、請求人は、取引の実情に関し、「本件商標の指定商品中の『茶飲料』とイ号標章が付される『茶飲料』とは、共に全国のスーパーマーケット、コンビニエンスストア、ドラッグストア又は自動販売機等を主な販売場所として、100円ないし300円程度の価格帯で販売される商品であり、(中略)上記のような『茶飲料』は、全国どこでも廉価な価格で購入でき」と主張するが、請求人が本件商標の審査段階において提出した「早期審査に関する事情説明書」に係る資料(乙7)によれば、請求人は、本件商標を完全受注生産で希望小売価格1,000円という高額の茶飲料に使用していることがうかがえる。
そうすると、上記資料の内容は、請求人による上記主張と相矛盾するものであり、その主張は、具体的な根拠を欠いているといわざるを得ない。
カ 上述のとおり、本件商標とイ号標章とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似のものであって、別異のものというべきである。
2 むすび
以上のとおり、イ号標章における背景模様は、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができる態様により使用されているものではなく、仮に、そうであるとしても、本件商標とイ号標章とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似のものである。
したがって、被請求人が商品「茶飲料」に使用するイ号標章は、本件商標の商標権の効力の範囲に属するものではない。

第5 当審の判断
1 本件商標について
本件商標は、別掲1のとおり、縦横比を約2対1とする緑色の縦長長方形と、その内側中央のやや左側の位置に縦横比を約3対2とする赤色の小さな縦長長方形を配してなる図形であって、該緑色の縦長長方形には、凝視したときに横縞のように視認される濃淡が付けられているところ、その構成態様からは、特定の称呼及び観念を生じるものとは認められない。
2 イ号標章について
イ号標章は、別掲2のとおり、緑の栓部を有するペットボトル様の容器(その縦方向の略中央部は、内側にややくびれている。)であって、その胴部に付された緑色のラベル正面(その上下端部の着色は、いずれもグラデーションが施されている。)には、その中央部に緑色の「茶」の文字を内包する白色の円形が配され、また、その上方に、白色の「京都」の文字を内包する赤色の小さな縦長長方形及び白色の「福寿園」の文字を縦一列に表してなるもの並びに縦書きで大書された白色の「伊右衛門」の文字が配されており、さらに、被請求人の提出に係る上記容器全体が大きく現された画像(乙4)を併せ見ると、それらの下方には、緑色の「嘉壽」の文字を内包する赤色の小さなひょうたん様の図形並びに白色の「KYOTO」、「FUKUJUEN」及び「SINCE1790」の各文字を三段に表してなるものが配されている。
そして、イ号標章は、商品「茶飲料」について使用するものであるところ、上記緑色のラベル正面にある文字及び図形のうち、緑色の「茶」の文字を内包する白色の円形、白色の「京都」の文字を内包する赤色の小さな縦長長方形並びに白色の「KYOTO」及び「SINCE1790」の文字は、その商品との関係においては、いずれも自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものか、又はその機能が極めて弱いものとみるのが相当である。
また、商品「茶飲料」、とりわけ「緑茶飲料」を取り扱う業界においては、商品容器に付すラベルの地色を緑色とし、かつ、そのラベル上に赤色の小さな図形を配することが、しばしば見受けられるところであり、このことは、被請求人の提出した乙第6号証の1及び乙第6号証の2によっても裏付けられる。
そうすると、イ号標章は、略中央部に僅かなくびれのある商品「茶飲料」のペットボトル様の容器であって、その胴部に、各種の文字や図形が配された上下端部にグラデーションが施された地色を緑色とするラベルが付されているものであり、その構成中、該ラベル正面にある縦書きで大書された白色の「伊右衛門」の文字、白色の「福寿園」及び「FUKUJUEN」の文字、緑色の「嘉壽」の文字を内包する赤色の小さなひょうたん様の図形が、取引者、需要者に対し、強く支配的な印象を与え、自他商品の識別標識として認識されるといえ、緑色のラベル正面及びそのラベル正面にある緑色の「嘉壽」の文字を内包する赤色の小さなひょうたん様の図形部分のみが分離、抽出されて取引者、需要者の注意をひくことはないというべきである。
してみれば、イ号標章は、その構成中の「伊右衛門」の文字から「イエモン」の称呼を生じ、「福寿園」及び「FUKUJUEN」の文字から「フクジュエン」の称呼を生じ、「嘉壽」の文字を内包する赤色の小さなひょうたん様の図形から「カジュ」の称呼を生じるものであり、また、これらのいずれからも直ちに特定の観念を生じないものである。
3 本件商標とイ号標章との類否について
本件商標は、上記1のとおり、緑色の縦長長方形と、その内側中央のやや左側の位置に赤色の小さな縦長長方形を配してなる図形であって、該緑色の縦長長方形には、凝視したときに横縞のように視認される濃淡が付けられているものであり、特定の称呼及び観念を生じないものである。
他方、イ号標章は、上記2のとおり、略中央部に僅かなくびれのある商品「茶飲料」のペットボトル様の容器であって、その胴部に、各種の文字や図形が配された上下端部にグラデーションが施された地色を緑色とするラベルが付されているものであり、そのラベル正面にある「伊右衛門」の文字から「イエモン」の称呼を生じ、「福寿園」及び「FUKUJUEN」の文字から「フクジュエン」の称呼を生じ、「嘉壽」の文字を内包する赤色の小さなひょうたん様の図形から「カジュ」の称呼を生じるものであり、特定の観念を生じないものである。
そこで、本件商標とイ号標章とを比較すると、前者は、図形からなるものであるのに対し、後者は、商品容器からなるものであるから、その構成全体において、外観上、容易に区別し得るものであるし、また、本件商標とイ号標章の構成中の緑色のラベル正面とを比較しても、取引者、需要者に対して強く支配的な印象を与える「伊右衛門」の文字や「福寿園」の文字の有無などといった明らかな差異があるから、外観上、相紛れるおそれはない。
また、本件商標は、上記のとおり、特定の称呼を生じないものであるから、上記のとおりの称呼を生じるイ号標章と比較しても、称呼上、相紛れるおそれはない。
さらに、本件商標とイ号標章とは、いずれも特定の観念を生じないものであるから、観念上、相紛れるおそれはない。
してみれば、本件商標とイ号標章とは、外観、称呼及び観念のいずれの点からみても相紛れるおそれのない非類似のものというべきである。
4 請求人の主張について
請求人は、本件商標は、竹模様を連想させる横縞を施した緑色の地模様の略中央寄りに、やや左右の辺が上下の辺に比して長い赤色の長方形が配置された構成からなるものであるのに対し、イ号標章は、大部分を占める背景部分において、上下の張り出た部分から中央のくびれた部分にかけて緑色が濃くなるように濃淡のある配色が施され、その一部に赤色の図形を有することから、全体として見ると、赤色の図形がワンポイントとして配された緑色の竹筒を連想させる外観構成であると看取されるものであり、両者は、本件商標の大半を占める領域に彩色された緑色とイ号標章中の本体部分の約8割程度を占める範囲において着色された緑色とは、いずれも近似した色合いであり、また、両者は、竹を連想させる色彩ないし模様であり、赤色の図形を一部に有する構成においても共通する旨主張する。
しかしながら、本件商標とイ号標章とは、上述のとおり、いずれも特定の観念を生じないものであり、また、請求人がイ号標章について指摘する「本体部分の約8割程度を占める範囲において着色された緑色」及び「赤色の図形」とは、イ号標章の構成中、緑の栓部を有し、かつ、略中央部に僅かなくびれのあるペットボトル様の容器の胴部に付された上下端部にグラデーションが施された緑色のラベル正面と、そのラベル正面にある文字及び図形のうち、緑色の「嘉壽」の文字を内包する赤色の小さなひょうたん様の図形とを指すものと解されるところ、イ号標章は、上記2において述べたとおり、その使用に係る商品「茶飲料」及びその商品の取引の実情に鑑みれば、その構成中の緑色のラベル正面及びそのラベル正面にある緑色の「嘉壽」の文字を内包する赤色の小さなひょうたん様の図形部分のみが分離、抽出されて取引者、需要者の注意をひくことはないものである。
してみれば、イ号標章の構成から上記緑色のラベル正面と赤色の小さなひょうたん様の図形のみを分離、抽出して本件商標とイ号標章とが類似するとする請求人の主張は、その前提において失当であり、採用することはできない。
5 むすび
以上のとおり、本件商標とイ号標章とは非類似のものであるから、イ号標章は、本件商標の効力の範囲に属しないものである。
よって、結論のとおり判定する。
別掲 (別掲)
1 本件商標(登録第5868813号商標)


2 イ号標章


(上記1及び2のいずれも、色彩については原本参照のこと。)
判定日 2017-07-26 
出願番号 商願2016-54725(T2016-54725) 
審決分類 T 1 2・ 9- ZB (W30)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大島 康浩 
特許庁審判長 青木 博文
特許庁審判官 豊泉 弘貴
田中 敬規
登録日 2016-07-22 
登録番号 商標登録第5868813号(T5868813) 
代理人 青木 博通 
代理人 特許業務法人RIN IP Partners 
代理人 片山 礼介 
代理人 中田 和博 
代理人 柳生 征男 

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