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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W071129303235394043
審判 全部申立て  登録を維持 W071129303235394043
管理番号 1331483 
異議申立番号 異議2017-900037 
総通号数 213 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2017-09-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-02-09 
確定日 2017-08-25 
異議申立件数
事件の表示 登録第5895421号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5895421号商標の商標登録を維持する。
理由 理 由
第1 本件商標
本件登録第5895421号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲1に示すとおりの構成からなり,平成28年4月7日に登録出願され,第7類「自動販売機」,第11類「冷凍機械器具」,第29類「食用油脂,乳製品,食肉,食用魚介類(生きているものを除く。),冷凍野菜,冷凍果実,加工野菜及び加工果実」,第30類「アイスクリーム用凝固剤,家庭用食肉軟化剤,ホイップクリーム用安定剤,茶,コーヒー,ココア,氷,菓子,パン,サンドイッチ,中華まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ,アイスクリームのもと,シャーベットのもと,コーヒー豆」,第32類「ビール,清涼飲料,果実飲料,飲料用野菜ジュース,ビール製造用ホップエキス,乳清飲料」,第35類「菓子及びパンの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,牛乳の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,清涼飲料及び果実飲料の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,茶・コーヒー及びココアの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,通信販売による商品の販売に関する情報の提供,通信販売の注文・受付・発注・配送に関する事務処理の代理又は代行」,第39類「鉄道による輸送,倉庫の提供」,第40類「食料品の加工,太陽光または風力による発電又は電力の生産」及び43類「飲食物の提供」を指定商品及び指定役務として,同28年10月5日に登録査定,同年11月11日に設定登録されたものである。

第2 使用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が,エネルギー補給飲料(エナジードリンク)に使用する標章は,別掲2及び別掲3に示す図形からなるものである。

第3 引用商標
申立人は,以下の14件の登録商標を,引用商標として挙げている(以下,14件をまとめて「引用商標」という場合がある。)。
また,これらの指定商品及び指定役務,登録出願日並びに設定登録日は,商標登録原簿又は国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載のとおりであって,いずれの商標権も現に有効に存続しているものである。
1 登録第5431413号商標(以下,項番1ないし項番3をまとめて「引用商標1」という。)
商標の構成:別掲2のとおり
2 登録第5044896号商標
商標の構成:別掲2のとおり
3 登録第5788675号商標
商標の構成:別掲2のとおり
4 登録第5868986号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の構成:別掲3のとおり
5 登録第5057229号商標(以下,項番5ないし項番7をまとめて「引用商標3」という。)
商標の構成:別掲4のとおり
6 国際登録第1048069号商標
商標の構成:別掲4のとおり
7 登録第5689430号商標
商標の構成:別掲4のとおり
8 登録第5939477号商標(以下「引用商標4」という。)
商標の構成:別掲5のとおり
9 登録第5730813号商標(以下「引用商標5」という。)
商標の構成:別掲6のとおり
10 登録第5419513号商標(以下「引用商標6」という。)
商標の構成:別掲7のとおり
11 登録第5427070号商標(以下「引用商標7」という。)
商標の構成:別掲8のとおり
12 登録第5844163号商標(以下「引用商標8」という。)
商標の構成:別掲9のとおり
13 登録第5912248号商標(以下「引用商標9」という。)
商標の構成:別掲10のとおり
14 登録第5912249号商標(以下「引用商標10」という。)
商標の構成:別掲11のとおり

第4 登録異議の申立ての理由
申立人は,本件商標は,商標法第4条第1項第15号及び同第7号に該当するから,同法第43条の2第1号により,その登録は取り消されるべきであると申立て,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第296号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 商標法第4条第1項第15号について
(1)申立人の使用に係る商標「爪の図柄」の著名性
ア 申立人の使用に係る爪の図柄は,申立人会社及び申立人が2002年に創設したエナジードリンク(エネルギー補給飲料)事業のブランド「MONSTER ENERGY」を代表する出所識別標識として,当該ブランドが創設された2002年から現在に至るまでの長年にわたり継続して使用されているものである。同ブランドのエナジードリンクは,2002年に米国で最初に販売を開始後,日本では2012年5月から販売を開始し,現在では日本を含む世界100以上の国及び地域で販売中である。2002年以降,現在まで継続して,申立人の上記ブランドから発売されるエナジードリンクには,「MONSTER」の文字を基調とする個別商品名(例えば,「MONSTER ENERGY」「MONSTER ASSAULT」等)に加えて,常に爪の図柄がドリンク缶の中央に最も大きく目立つ態様で付されている。この爪の図柄と「MONSTER」の文字を用いた申立人のエナジードリンク事業の成功は経済界でも高い評価を受けている(甲2?33,甲51?甲58)。
国内市場でも,2012年5月から現在までに,2012年5月8日発売の「MONSTER ENERGY」(モンスターエナジー缶355ml)(甲5,甲7,甲12),2012年5月8日発売の「MONSTER KHAOS」(モンスターカオス缶355ml)(甲6,甲7,甲14),2013年5月7日発売の「MONSTER ABSOLUTELY ZERO」(モンスターアブソリュートリーゼロ缶355ml)(甲10,甲13,甲15),2014年8月19日発売の「MONSTER ENERGY M3」(モンスターエナジーM3ワンウェイびん150ml)(甲59,甲61),2014年10月7日発売の「MONSTER COFFEE」(モンスターコーヒー缶250ml)(甲60,甲62),2015年7月21日発売の「MONSTER ENERGY ULTRA」(モンスターウルトラ缶355ml)(甲101?甲103,甲118)の異なる6種の味わいのエナジードリンクが販売展開されている。また,2016年4月12日に「MONSTER ENERGY M3」(モンスターエナジーM3ワンウェイびん150ml)がリニューアル発売(甲127,甲129,甲131),2016年5月17日に「MONSTER KHAOS」(モンスターカオス缶355ml)がリニューアル発売(甲128,甲130)され,これらのすべてに爪の図柄が付されている。
イ 申立人による当該エナジードリンクの広告及び販売促進活動は,世界の有名アスリート,レーシングチーム,スポーツ競技会,アマチュアスポーツ選手,音楽祭及びミュージシャンに対するスポンサー提供,スポーツ,音楽,ゲームなどの娯楽イベントの開催,米国ラスベガスの公共交通機関モノレールの「モンスター列車」の走行,これらのイベント開催などと関連して頻繁に実施されるエナジードリンク販売キャンペーン,各イベント会場におけるサンプリング(サンプル配布),2013年2月から2017年2月までの約4年間に国内で実施された販売プロモーションキャンペーンの応募当選者に対する様々な「モンスター限定グッズ」(爪の図柄を付したTシャツ,帽子,キーホルダー,ステッカー,ギター,バッグパック,エナジードリンク,クーラーボックス,冷蔵庫,自動車など総計61万点を超えるアイテム)の提供,爪の図柄を付した広告宣伝用ポスター・商品ネームプレート・チラシ・陳列棚・冷蔵庫などの店舗用什器の使用及び展示,遅くとも2013年から現在に至るまで約1?2月の頻度で定期的に発行されている新商品発売・懸賞キャンペーン・イベント開催情報などを掲載したプレスリリース,申立人ウェブサイト並びにソーシャルメディアを通じた情報発信を介して,2002年から現在まで世界規模で継続的に実施されており,これらの広告物及び販売促進物には極めて顕著な表示態様で爪の図柄が継続的に使用されてきた(甲7?17,甲34?甲91,甲101?甲133,甲136?甲168,甲225?甲251)。
また,申立人は,2002年から,ブレスレット,ラペルピン,キーホルダー,Tシャツ,スウェットシャツ,帽子,レーシングジャケット,手袋などのアパレル製品,運動用ヘルメット,バッグ類,ステッカー等の文房具,傘,ビデオゲームソフトといった「MONSTER」ライセンス商品の製造販売を第三者に使用許諾している。当該ライセンス商品のカタログやオンラインショッピングサイトは,ブランド名及び個別商品名として「MONSTER」「Monster」の文字の表示に加えて,爪の図柄を大きく表示して販売及び宣伝広告している。これらのライセンス商品は,国内の実店舗のほか,オンラインショップや通信販売を介して国内の一般消費者にも販売されている(甲47,甲48,甲58,甲92?甲100,甲134,甲135)。
また,国内の需要者における当該ライセンス商品の人気の高さに便乗して,海外で製造された申立人の商標権侵害物品が日本の税関で輸入差止される事案が遅くとも2013年(平成25年)7月から現在に至るまで継続して度々発生している(甲169?甲224)。
爪の図柄は,申立人の創作に係る独創的構成からなる創造標章である。申立人は,爪の図柄の世界的規模での継続的使用に基づき,エナジードリンク等の飲料製品及び上記ライセンス商品等について,引用各商標をはじめ,爪の図柄を基調とする様々な構成の商標を日本を含む諸外国で商標出願し,登録を取得している(甲252?甲294)。また,米国では,爪の図柄の図案画の作品について著作権登録も行っている(甲295,甲296)。
ウ 以上の事柄に照らせば,申立人の使用に係る爪の図柄は,本件商標の登録出願時及び査定時には,申立人の製造販売に係る商品及び役務の代表的出所識別標識として国内外の取引者,需要者の間で広く認識されていたことが明らかである。
(2)本件商標と使用商標との類似性
本件商標は,緑色の四角形の中に白抜きで描いた図形(以下,「本件商標の図形部分」という。)と,その下に配置された活字体の英文字「MATSUMURA」及び「GROUP」を上下二段に書した文字(以下,「本件商標の文字部分」という。)から構成されるものであり,当該構成に照らせば,本件商標の図形部分と同文字部分は,それぞれが独立の自他商品識別標識として機能し得るものである。
本件商標の図形部分は,緑色で塗りつぶした四角形の中央に,左向きに尖った小さな突起部を有する上端部から下方向に向かい同幅で延び,左端が尖った下端部を有する長さが等しい細長帯様図形3本を互いに平行に均等間隔で並べた図形を白抜きで表示したものであり,英文字の小文字「m」の字形を想起連想させる。
申立人の使用に係る爪の図柄(引用商標1及び引用商標2)は,左向きに尖った小さな突起部を有する上端部から下方向に向かい徐々に幅がやや狭くなって尖った下端部を有する輪郭がやや不規則で長さが略等しい細長帯様図形3本を概ね互いに平行に均等間隔で並べた図形からなり,英文字の小文字「m」の字形を想起連想させる。
両者は,縦方向に細長い帯様図形3本を並べた図形として把握され,当該帯様図形3本の其々が左向きに尖った小さな突起部と尖った下端部を有する点,また,当該帯様図形3本が概ね等しい長さで互いに平行かつ均等間隔で並べたものとして看取される点において共通の特徴を備えており,また,英文字の「m」の字形を容易に想起連想させる点でもその図形印象が酷似する。
加えて,本件商標の図形部分は,爪の図柄に似た図形と緑の色彩の組み合わせで構成されている点でも申立人の現実の使用に係る爪の図柄と一致する。引用商標2及び引用商標4並びに上記米国著作権登録証(甲295,甲296)に示されているように,申立人は,2002年の「MONSTER ENERGY」ブランドの創設以来,爪の図柄と共に,緑色をシンボルカラーとして採択,使用している。2002年発売のオリジナルの「MONSTER」エナジードリンクの缶に付されている緑色で表示した爪の図柄(甲58)をはじめとして,申立人ウェブサイト,商品のラベル,パンフレット,販売小売店用什器などの販売促進物,広告,ポスター,スポンサー契約アスリート及びチームのユニフォーム・ヘルメット・スノーボードなどの運動用具・バイクや自動車の車体,プロモーションイベント会場の施設,販売キャンペーンの懸賞賞品「MONSTER」グッズ,申立人商標のライセンス商品及びそのカタログなどの至るところには,爪の図柄に加えてブランドカラーの緑が継続的に使用されており,爪の図柄と緑色の組み合わせは,申立人の業務に係る商品及び役務の出所識別標識並びに申立人会社を直観させるものといえる(甲2,甲4?甲107,甲109?甲168,甲225?甲251)。
したがって,本件商標の図形部分と申立人の使用に係る爪の図柄は,類似性の程度が極めて高いものであることが明らかである。
本件商標の指定商品及び指定役務は上記のとおりであり,申立人が爪の図柄を使用しているエナジードリンクと同一又は類似の商品及び役務を含むことが明らかである。また,これらは,エナジードリンクと製造部門,販売部門,原材料,用途,効能,需要者の範囲が一致ないし重複するその他の飲料製品及び加工食品並びにこれらの小売等役務,飲食物の提供などの役務を多く含み,申立人の取り扱いに係る商品と密接に関連する。
(3)小括
本件商標の指定商品及び指定役務の最終的な需要者は,一般消費者を多く含むから,通常の需要者の注意力の程度は高いものとはいえない。
したがって,本件商標がその指定商品及び指定役務に使用された場合,これに接した取引者,需要者は,申立人の使用に係る爪の図柄及び申立人会社を想起連想し,申立人又は申立人と経済的又は組織的関係を有する者の取り扱いに係るものであると誤信し,その出所について混同を生じるおそれが高いことが明らかである。
さらに,本件商標の使用は,申立人の商品役務の出所識別標識として広く認識されている爪の図柄の出所識別力希釈化するものであり,また,その名声,顧客吸引力にフリーライドするものといわざるを得ない。
よって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。
2 商標法第4条第1項第7号について
本件商標が使用された場合,申立人の商品及び役務の出所識別標識として広く認識されている爪の図柄の出所表示力が希釈化するおそれが高いものであり,また,本件商標の使用は,申立人がこれらの商標について獲得した信用力,顧客吸引力にフリーライドするものといわざるを得ず,申立人に経済的および精神的損害を与える。
したがって,本件商標は,社会一般道徳及び公正な取引秩序の維持を旨とする商標法の精神並びに国際信義に反するものであり,公の秩序を害するおそれがあるものといわざるを得ない。
よって,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に該当する。

第5 当審の判断
1 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)使用商標の著名性について
ア 申立人が提出した証拠及びその主張によれば,以下のとおりである。(ア)申立人は,米国において2002年にエナジードリンク事業のブランド「MONSTER ENERGY」を創設し,米国で同年4月から製造販売を開始し,日本では2012年5月から販売を開始,以降,諸外国及び我が国において,エナジードリンクの販売を行ってきた。そして,申立人のエナジードリンクは,我が国において,2012年5月8日からアサヒ飲料株式会社を通じて,引用商標1及び引用商標2に示すとおりの態様からなる特徴的な図形,(引用商標1と引用商標2は,色彩が異なる同一の構成態様からなるものであり,以下これらをまとめて「使用商標」という。なお,申立人は,「爪の図柄」と表記している。)と,使用商標の下部に,太字で大きく表記した「MONSTER」の文字,及びその下部に細字で小さく「ENERGY」の文字を組み合わせてなるものからなる,主に引用商標3が使用されて,継続して販売されてきたものであって,発売当初から100万箱を突破する売上げで,2012年(平成24年)5月ないし12月における販売実績の157万箱である(甲7?甲9)。なお,2015年6月30日までの期間に,約2億3,600万缶が販売され,この期間の総販売額は,日本円で170億円以上であるとの主張がされている(甲58)。
また,アサヒ飲料株式会社のニュースリリースにおいては異なる色彩の引用商標2が表示されている(甲7,甲8,甲10)。
(イ)使用商標が,インターネットショッピングサイトにおいて取り扱われているTシャツ,帽子,ステッカー等に使用されていること(甲47,甲48等)及びスポーツイベントやキャンペーン等に使用されていることが認められる(甲58,甲73?甲91,甲104,甲105,甲107,甲109?甲113等)。
さらに,イベント会場等においてサンプル配布された申立人のエナジードリンク,スポーツイベント等での出場選手のユニフォーム等に使用商標又は引用商標3が使用されていることが認められる。また,申立人は,我が国において申立人のエナジードリンクのサンプル配付等が,2012年及び2013年にかけて,渋谷やモータースポーツ,マリンスポーツ等のイベント会場において行われたと陳述している(甲58)。
イ 著名性についての判断
上記アによれば,申立人は,我が国において2012年5月の発売以降,申立人のエナジードリンクについて,主に,引用商標3を継続して使用してきたことが認められる。
そして,引用商標3は,その構成及び上述の取引の実情に照らすと,使用商標である図形部分と文字部分とは分離して観察されるものであり,申立人のエナジードリンクは,「MONSTER ENERGY(モンスターエナジー)」と称され,継続して販売,宣伝広告されていたことが認められるものであるが,そのキャンペーン等が,比較的若い世代が集まる繁華街やイベント会場等において申立人のエナジードリンクのサンプル配布,スポーツイベント等での出場選手のユニフォーム等に使用商標又は引用商標3が表示されたことからすると,使用商標は,本件商標の登録出願日前までには,我が国の若い世代を中心とした消費者の間では,ある程度知られていたものと認めることができる。
しかしながら,申立人の提出した証拠においては,同人のエナジードリンクの販売に関する期間及び地域等における限定的なキャンペーン,該商品に関するニュースリリース(甲7?甲10,甲59,甲60,甲129,甲130,甲132等)のほかには,申立人が,我が国において,新聞,雑誌等において,広く当該商品の広告を積極的に行ったものと認められる事実を確認できる証拠はない。
さらに,申立人のエナジードリンクの我が国の飲料市場におけるシェアは明らかでなく,国内販売実績として確認できる,2012年(平成24年)5月ないし12月における販売実績の157万箱は,日本国内で申立人のエナジードリンクを販売する,アサヒ飲料株式会社が販売している他の飲料の2012年の販売実績,例えば,「ワンダ」4,048万箱,「三ツ矢」3,908万箱,「十六茶」2,010万箱(甲9)と比べ,販売期間が異なることを考慮しても,その差は極めて大きく,販売数量自体からは使用商標の周知性を裏付けることはできない。
その他,客観的に使用商標が申立人の業務に係る商品に使用されて需要者の間に広く認識されるものと認め得る証拠の提出はない。
なお,申立人は,スポンサー提供,娯楽イベントの開催,販売キャンペーン等の申立人の商品の広告及び販売促進活動において,使用商標を使用し(甲7?甲17,甲34?甲91,甲101?甲133,甲136?甲168,甲225?甲251),また,アパレル製品,運動用ヘルメット,バッグ類などのライセンス商品のカタログやオンラインショッピングサイトに,ブランド名及び個別商品名として「MONSTER」,「Monster」の文字の表示に加えて使用商標を大きく表示して販売及び宣伝広告をしている(甲47,甲48,甲58,甲92?甲100,甲134,甲135)旨主張する。
しかしながら,これらの主張を裏付ける証拠については,例えば,ライセンス商品の売上高に関する証拠の提出はなく,また,ユニフォームや車体等のステッカー及びビデオゲーム等の娯楽イベントに関する広告媒体への使用は,これらに興味を有する限られた者しか接する機会のないものであり,その他,客観的に使用商標が申立人の業務に係る商品に使用されて需要者の間に広く認識されるものと認め得る証拠の提出はない。
以上を総合勘案すると,使用商標は,申立人のエナジードリンクを表示するものとして,幅広い需要者層を有する清涼飲料の分野一般においては,我が国の取引者,需要者の間に申立人のエナジードリンクを表示するものとして,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,広く認識されるに至っていたとまでは認めることができない。
(2)本件商標と使用商標の類似性について
ア 本件商標について
本件商標は,別掲1のとおり,緑色の四角形内に,上部左側に,尖った小さな突起部を有し,下部は斜めに切り取られた左側が尖った先端部となっている縦長の白抜きの棒状の図形を並行に3本並べた構成からなる図形を有し,その下部に「MATSUMURA」及び「GROUP」の文字を二段に横書きしてなるものである。
そして,上記構成からなる本件商標は,図形部分と文字部分とが分離して看取されるものであり,これを常に一体のものとして捉えられなければならない構成ということはできないものであるから,それぞれの部分が自他商品役務の識別標識としての機能を有するものというのが相当である。
してみれば,本件商標は,その文字部分に相応して「マツムラグループ」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものであり,また,上記構成からなる図形部分は,特定の称呼及び観念を生じないものである。
イ 使用商標について
使用商標は,別掲2及び別掲3に示したとおり,上端部に左向きに細く尖らせた端部を有し,その上端から下端に向かって徐々に幅が収斂し細くなる不規則な凸凹を有する形状の図形を,3本縦方向に平行に配置し,このうちの中央の図形は左右のそれに比べてやや長く描いてなる図形からなるものである。
そして,これら使用商標からは,特定の称呼及び観念を生じないものである。
ウ 本件商標と使用商標との類否について
上記ア及びイのとおりの構成からなる本件商標と使用商標とは,その構成態様を全く別にする別異の商標として看取されるものである。
また,本件商標は,外観上,図形部分と文字部分が分離して看取されるものであるところ,本件商標の図形部分と使用商標とを比較してみても,本件商標の図形部分は,緑色の四角形内に,上部左側に,尖った小さな突起部を有し,下部は斜めに切り取られた左側が尖った先端部となっている縦長の白抜きの棒状の図形を並行に3本並べた構成からなるものであり,他方,使用商標は,上端部に左向きに細く尖らせた端部を有し,その上端から下端に向かって徐々に幅が収斂し細くなる不規則な凸凹を有する形状の図形を,3本縦方向に平行に配置し,このうちの中央の図形は左右のそれに比べてやや長く描いてなるものであるから,両者は互いに,その構成態様を全く異にする別異の図形商標というべきものである。
してみれば,本件商標と,使用商標は,外観上,非類似の商標というべきである。
さらに,本件商標からは,「マツムラグループ」の称呼を生じ,特定の観念は生じないものである。
他方,使用商標からは,特定の称呼及び観念は生じないものであり,本件商標と使用商標とは,称呼及び観念においても,互いに類似するということはできないものである。
したがって,本件商標と引用商標とは,外観,称呼及び観念のいずれの点から見ても何等相紛れるおそれのない非類似の商標である。
(3)出所の混同について
前記(1)認定のとおり,使用商標は,申立人の商品(エナジードリンク)を表示するものとして,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,我が国の取引者,需要者の間に広く認識されていた商標とは認められないものであり,さらに,上記(2)認定のとおり,本件商標と使用商標とは,別異の商標として認識されるものである。
そうすると,本件商標は,商標権者がこれをその指定商品及び指定役務に使用しても,これに接する取引者,需要者が使用商標を連想又は想起させるものとは認められず,その商品及び役務が申立人又は同人と経済的,組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのごとく,その商品及び役務の出所について混同を生じさせるおそれはないものといわなければならない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しない。
2 商標法第4条第1項第7号該当性について
本件商標は,上記1のとおり,商標権者がこれをその指定商品及び指定役務について使用しても,取引者,需要者をして申立人の使用商標を連想又は想起させることのないものである。
そうすると,本件商標は,申立人の使用商標の信用力,顧客吸引力にフリーライドするものとはいえず,また,他に商標権者が本件商標をその指定商品及び指定役務に使用することが社会一般の道徳に反し公正な取引秩序を乱す,あるいは国際信義に反するなど,公序良俗に反するものというべき事情も見いだせない。
そして,提出された証拠からは,本件商標が,社会一般道徳及び公正な取引秩序の維持を旨とする商標法の精神並びに国際信義に反し,公の秩序を害するおそれがあることを認めるに足りる証拠はない。
また,申立人は,本件商標の採択の経緯等に不正の目的が存することを示す証拠を提出していない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に該当しない。
3 まとめ
以上,本件商標は,商標法第4条第1項第15号及び同第7号に該当するとは認められないから,同法第43条の3第4項に基づき,その登録を維持すべきである。
よって,結論のとおり決定する。
別掲 別掲1(本件商標)(色彩については原本参照。)



別掲2(引用商標1)



別掲3(引用商標2)(色彩については原本参照。)



別掲4(引用商標3)



別掲5(引用商標4)(色彩については原本参照。)



別掲6(引用商標5)



別掲7(引用商標6)



別掲8(引用商標7)



別掲9(引用商標8)(色彩については原本参照。)



別掲10(引用商標9)



別掲11(引用商標10)



異議決定日 2017-08-17 
出願番号 商願2016-40182(T2016-40182) 
審決分類 T 1 651・ 271- Y (W071129303235394043)
T 1 651・ 22- Y (W071129303235394043)
最終処分 維持  
前審関与審査官 寺澤 鞠子谷村 浩幸馬場 秀敏 
特許庁審判長 井出 英一郎
特許庁審判官 木住野 勝也
中束 としえ
登録日 2016-11-11 
登録番号 商標登録第5895421号(T5895421) 
権利者 株式会社松村乳業
商標の称呼 マツムラグループ、マツムラ 
代理人 柳田 征史 

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