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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W43
審判 全部申立て  登録を維持 W43
管理番号 1331481 
異議申立番号 異議2017-900016 
総通号数 213 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2017-09-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-01-23 
確定日 2017-08-18 
異議申立件数
事件の表示 登録第5892192号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5892192号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第5892192号商標(以下「本件商標」という。)は,「BEER MONSTER」の欧文字を標準文字で表してなり,平成28年4月5日に登録出願され,第43類「飲食物の提供」を指定役務として,同年10月7日に登録査定,同月28日に設定登録されたものである。

第2 使用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が,エネルギー補給飲料(エナジードリンク)に使用する標章は,「MONSTER」の文字からなるものである。

第3 引用商標
申立人は,以下の45件の登録商標を,引用商標として挙げている(以下,45件をまとめて「引用商標」という場合がある。)。
また,これらの指定商品及び指定役務,登録出願日並びに設定登録日は商標登録原簿又は国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載のとおりであって,いずれの商標権も現に有効に存続しているものである。
1 登録第5379390号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の構成:MONSTER(標準文字)
2 登録第5057229号商標(以下,項番2ないし項番4をまとめて「引用商標2」という。)
商標の構成:別掲1のとおり
3 国際登録第1048069号商標
商標の構成:別掲1のとおり
4 登録第5689430号商標
商標の構成:別掲1のとおり
5 登録第5730813号商標(以下「引用商標3」という。)
商標の構成:別掲2のとおり
6 登録第5010968号商標(以下「引用商標4」という。)
商標の構成:M MONSTER ENERGY(標準文字)
7 登録第5431413号商標(以下,項番7及び項番8をまとめて「引用商標5」という。)
商標の構成:別掲3のとおり
8 登録第5788675号商標
商標の構成:別掲3のとおり
9 登録第5393681号商標(以下「引用商標6」という。)
商標の構成:MONSTER ENERGY(標準文字)
10 登録第5788676号商標(以下「引用商標7」という。)
商標の構成:MONSTER ENERGY(標準文字)
11 登録第5844119号商標(以下「引用商標8」という。)
商標の構成:MONSTER ENERGY(標準文字)
12 登録第5495941号商標(以下「引用商標9」という。)
商標の構成:MONSTER KHAOS ENERGY + JUICE(標準文字)
13 登録第5769176号商標(以下「引用商標10」という。)
商標の構成:MONSTER ENERGY ABSOLUTELY ZERO(標準文字)
14 登録第5419513号商標(以下「引用商標11」という。)
商標の構成:別掲4のとおり
15 登録第5757485号商標(以下「引用商標12」という。)
商標の構成:COFFEE MONSTER(標準文字)
16 登録第5715016号商標(以下「引用商標13」という。)
商標の構成:MONSTER ENERGY ULTRA(標準文字)
17 登録第5844163号商標(以下「引用商標14」という。)
商標の構成:別掲5のとおり
18 登録第5394526号商標(以下「引用商標15」という。)
商標の構成:別掲6のとおり
19 登録第5442171号商標(以下「引用商標16」という。)
商標の構成:MONSTER ENERGY PINK(標準文字)
20 登録第5417815号商標(以下「引用商標17」という。)
商標の構成:MONSTER ENERGY AGENT ORANGE(標準文字)
21 登録第5527566号商標(以下「引用商標18」という。)
商標の構成:MONSTER DETOX(標準文字)
22 登録第5476620号商標(以下「引用商標19」という。)
商標の構成:MONSTER REHAB(標準文字)
23 登録第5490798号商標(以下「引用商標20」という。)
商標の構成:MONSTER RECOVERY(標準文字)
24 登録第5497766号商標(以下「引用商標21」という。)
商標の構成:MONSTER UNLEADED(標準文字)
25 登録第5451361号商標(以下「引用商標22」という。)
商標の構成:MONSTER PUMPED(標準文字)
26 登録第5480373号商標(以下「引用商標23」という。)
商標の構成:MONSTER BIOACTIVATED(標準文字)
27 登録第5527567号商標(以下「引用商標24」という。)
商標の構成:MONSTER REHABITUATE(標準文字)
28 登録第5417770号商標(以下「引用商標25」という。)
商標の構成:MONSTER LO-CARB(標準文字)
29 登録第5375090号商標(以下「引用商標26」という。)
商標の構成:PROTEIN MONSTER(標準文字)
30 登録第5327467号商標(以下「引用商標27」という。)
商標の構成:MUSCLE MONSTER(標準文字)
31 登録第5409580号商標(以下「引用商標28」という。)
商標の構成:MONSTER RIPPER(標準文字)
32 登録第5409582号商標(以下「引用商標29」という。)
商標の構成:MONSTER BLACK(標準文字)
33 登録第5419507号商標(以下「引用商標30」という。)
商標の構成:MONSTER DOUBLE BLACK(標準文字)
34 登録第5409583号商標(以下「引用商標31」という。)
商標の構成:MONSTER GIRL(標準文字)
35 登録第5542584号商標(以下「引用商標32」という。)
商標の構成:MONSTER CUBA-LIMA(標準文字)
36 登録第5043703号商標(以下「引用商標33」という。)
商標の構成:JAVA MONSTER(標準文字)
37 登録第5431412号商標(以下「引用商標34」という。)
商標の構成:JAVA MONSTER(標準文字)
38 登録第5741128号商標(以下「引用商標35」という。)
商標の構成:JAVA MONSTER
39 登録第5644854号商標(以下「引用商標36」という。) 商標の構成:MONSTER SUPERNATURAL(標準文字)
40 登録第5423080号商標(以下「引用商標37」という。)
商標の構成:LOCA MOCA JAVA MONSTER(標準文字)
41 登録第5389881号商標(以下「引用商標38」という。)
商標の構成:X-PRESSO MONSTER(標準文字)
42 登録第5657923号商標(以下「引用商標39」という。)
商標の構成:MONSTER ENERGY ULTRA RED(標準文字)
43 登録第5562023号商標(以下「引用商標40」という。)
商標の構成:JAVA MONSTER GREEN BEANS(標準文字)
44 登録第5613400号商標(以下「引用商標41」という。)
商標の構成:MONSTER THRILLER(標準文字)
45 登録第5644852号商標(以下「引用商標42」という。)
商標の構成:KONA CAPPUCCINO M JAVA MONSTER(標準文字)

第4 登録異議の申立ての理由
申立人は,本件商標は,商標法第4条第1項第15号及び同第7号に該当するから,同法第43条の2第1号により,その登録は取り消されるべきであると申立て,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第327号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 商標法第4条第1項第15号について
(1)申立人の使用に係る商標「MONSTER」の著名性
ア 申立人の使用に係る「MONSTER」は,申立人が2002年に創設したエナジードリンク(エネルギー補給飲料)事業のブランド「MONSTER ENERGY」の基軸商標として,2002年から現在に至るまでの長年に亘り継続して使用されているものであり,同ブランドのエナジードリンクは,2002年に米国で最初に販売を開始後,日本では2012年5月から販売を開始し,現在では日本を含む世界100以上の国及び地域で販売中である。申立人は2002年以降,現在まで継続して,当該ブランドから発売された数多くの異なる種類のドリンクの個別名称(例えば,「MONSTER ENERGY」,「MONSTER ASSAULT」等)のすべてに「MONSTER」の文字を採択しており,当該各種ドリンクの缶の正面に「MONSTER」の文字を特徴的なデザインの太字を用いて大きく目立つ態様で表示して使用している。「MONSTER」を基調とする商標を用いた申立人のエナジードリンク事業の成功は経済界でも高い評価を受けている(甲2?甲33,甲51?甲58)。
国内市場でも,2012年5月から現在までに,2012年5月8日発売の「MONSTER ENERGY」(モンスターエナジー缶355ml)(甲5,甲7,甲12),2012年5月8日発売の「MONSTER KHAOS」(モンスターカオス缶355ml)(甲6,甲7,甲14),2013年5月7日発売の「MONSTER ABSOLUTELY ZERO」(モンスターアブソリュートリーゼロ缶355ml)(甲10,甲13,甲15),2014年8月19日発売の「MONSTER ENERGY M3」(モンスターエナジーM3ワンウェイびん150ml)(甲59,甲61,甲101),2014年10月7日発売の「MONSTER COFFEE」(モンスターコーヒー缶250ml)(甲60,甲62),2015年7月21日発売の「MONSTER ENERGY ULTRA」(モンスターウルトラ缶355ml)(甲101?甲103,甲118)の異なる6種の味わいのエナジードリンクが販売展開されている。また,2016年4月12日に「MONSTER ENERGY M3」(モンスターエナジーM3ワンウェイびん150ml)がリニューアル発売(甲127,甲129,甲131),2016年5月17日に「MONSTER KHAOS」(モンスターカオス缶355ml)がリニューアル発売(甲128,甲130,甲131)された。
イ 申立人による当該エナジードリンクの広告及び販売促進活動は,世界の有名アスリート,レーシングチーム,スポーツ競技会,アマチュアスポーツ選手,音楽祭及びミュージシャンに対するスポンサー提供,スポーツ,音楽,コンピュータゲーム(eスポーツ)などの娯楽イベントの開催,米国ラスベガスの公共交通機関モノレールの「モンスター列車」の走行,これらのイベント開催などと関連して頻繁に実施されるエナジードリンク販売キャンペーン,各イベント会場におけるサンプリング(サンプル配布),2013年2月から2017年2月までの約4年間に国内で実施された販売プロモーションキャンペーンにおける懸賞応募及び当選者に対する様々な「モンスター限定グッズ」(Tシャツ,帽子等)の提供,「MONSTER」の文字を付したポスター・商品ネームプレート・チラシ・陳列棚・冷蔵庫などの店舗用什器の使用及び展示,遅くとも2013年から現在に至るまで約1?2月の頻度で定期的に発行されている新商品発売・懸賞キャンペーン・イベント開催情報などを掲載したプレスリリース,申立人ウェブサイト並びにソーシャルメディアを通じた情報発信を介して,2002年から現在まで世界規模で継続的に実施されており,当該広告物及び販売促進物に「MONSTER」及びその音訳「モンスター」の文字が使用されてきた(甲7?甲17,甲34?甲91,甲101?甲133,甲136?甲168,甲225?甲251)。
また,申立人は,2002年から,ブレスレット,ラペルピン,キーホルダー,Tシャツ,スウェットシャツ,帽子,レーシングジャケット,手袋などのアパレル製品,運動用ヘルメット,バッグ類,ステッカー,傘,ビデオゲームなどの「MONSTER」ライセンス商品の製造販売を第三者に使用許諾している。当該ライセンス商品のカタログやオンラインショッピングサイトは,ブランド名及び個別商品名として「MONSTER」「Monster」の文字を表示して販売及び宣伝広告している。これらのライセンス商品は,国内の実店舗のほか,オンラインショップや通信販売を介して国内の一般消費者にも販売されている(甲47,甲48,甲58,甲92?甲100,甲134,甲135)。
また,需要者における当該ライセンス商品の人気の高さに便乗して,海外で製造された模倣品が日本の税関で輸入差止される事案が遅くとも平成25年7月から現在に至るまで継続して度々発生している(甲169?甲224)。
「MONSTER」の文字を世界規模での継続的使用に基づき,申立人は,エナジードリンク等の飲料製品及び上記ライセンス商品等について,引用各商標をはじめ,「MONSTER」の文字を基調とする様々な構成の商標について日本を含む世界115以上の国及び地域で商標出願し,登録を取得している(甲58,甲252?甲321)。
ウ 以上の事柄に照らせば,「MONSTER」は,本件商標の登録出願時及び登録査定時には,申立人の業務に係る商品及び役務の出所識別標識として国内外の取引者,需要者の間で広く認識されていたことが明らかである。
(2)本件商標と使用商標との類似性
本件商標は,標準文字で「BEER MONSTER」と横書きしてなり,当該構成文字はスペース1文字を含む12文字からなり,外観が冗長な印象を与えることに加え,「BEER」と「MONSTER」は視覚上も分断されている。また,「BEER MONSTER」の文字全体は,辞書等に掲載されている成語ではなく,何ら既成の熟語的な観念を生じさせるものではないから,観念的にも不可分一体の自他商品識別標識として看取されない。
そして,「BEER」の文字部分は,英語で「ビール」を意味し(甲324),その音訳「ビヤ」「ビア」も「ビール」を意味する外来語として「広辞苑」等に掲載される程度まで広く一般に親しまれている(甲325?甲327)。
本件商標の指定役務は「第43類 飲食物の提供」であるから,「ビール」を直観させる「BEER」の文字部分は,当該指定役務の提供を受ける者の利用に供する物(譲渡する物)の普通名称を表示したものとして認識されるにとどまり,出所識別標識として機能しない。一方,「MONSTER」の文字部分は,本件商標の指定役務の質,特徴等と何ら関連せず,強い出所識別力を発揮する。また,「MONSTER」は,その音訳「モンスター」が外来語の「モンスター」として国民一般に広く親しまれている(甲322,甲323)ことも斟酌すれば,本件商標に接した取引者,需要者は,「MONSTER」の文字部分に注目して,当該商標が使用される役務の出所を認識,理解するとみるのが自然である。
したがって,本件商標がその指定役務に使用される場合,「BEER」の文字部分と比べて圧倒的に自他商品役務の識別力の程度が強い「MONSTER」の文字部分が当該指定役務の出所識別標識として強く支配的な印象を取引者,需要者に与えることが明らかである。
よって,本件商標と申立人の使用に係る商標「MONSTER」は,それぞれ「MONSTER」の文字が出所識別標識として看者を強く印象づけるものであるから,その類似性の程度は極めて高い。
本件商標が使用される指定役務「第43類 飲食物の提供」と申立人が「MONSTER」を使用しているエナジードリンク(第32類 アルコール分を含まない飲料)は,同一事業者によってその提供及び販売が同一店舗内で行われることが多いものであり,その用途,提供場所及び販売場所,並びに需要者の範囲が一致する互いに類似のものである。
また,申立人は,「MONSTER」エナジードリンクの販売促進キャンペーンにおいて,申立人が主催又は協賛するスポーツ・音楽・ゲームなどのイベント会場や街頭広告のために屋外に設置されたブースや仮設テント等で,「MONSTER」エナジードリンク及びMONSTERシリーズのエナジードリンクの大規模なサンプル配布(サンプリング)を2012年5月の国内発売以降,継続的に実施している(甲58,甲75,甲76,甲78,甲80,甲88,甲120,甲138,甲154,甲227,甲233,甲235)。
(3)小括
本件商標の指定役務の需要者は一般の消費者であるから,通常の需要者の注意力の程度は高いものとはいえない。
そして,上記のとおり,本件商標の登録出願時及び査定時には,「MONSTER」は申立人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして取引者,需要者の間で広く認識されていた。
したがって,本件商標がその指定役務に使用された場合,これに接した取引者,需要者は,申立人の使用に係る商標「MONSTER」及び申立人会社を想起連想し,当該役務が申立人又は申立人と経済的又は組織的関係を有する者の取り扱いに係るものであると誤信し,その出所について混同を生じるおそれが高い。
さらに,本件商標の使用は,申立人の商品及び役務の出所識別標識として広く認識されている「MONSTER」の出所識別力希釈化するものであり,また,その名声,顧客吸引力にフリーライドするものといわざるを得ない。
よって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。
2 商標法第4条第1項第7号について
本件商標が使用された場合,申立人の商品及び役務の出所識別標識として広く認識されている「MONSTER」の出所表示力が希釈化するおそれが高いものであり,また,本件商標の使用は,申立人が当該商標について獲得した信用力,顧客吸引力にフリーライドするものといわざるを得ず,申立人に経済的および精神的損害を与える。
したがって,本件商標は,社会一般道徳及び公正な取引秩序の維持を旨とする商標法の精神並びに国際信義に反するものであり,公の秩序を害するおそれがあるものといわざるを得ない。
よって,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に該当する。

第5 当審の判断
1 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)使用商標の著名性について
ア 申立人が提出した証拠及びその主張によれば,以下のとおりである。
(ア)申立人は,米国において2002年にエナジードリンク事業のブランド「MONSTER ENERGY」を創設し,米国で同年4月から製造販売を開始し,日本では2012年5月から販売を開始,以降,諸外国及び我が国において,エナジードリンクの販売を行ってきた。そして,申立人のエナジードリンクは,我が国において,2012年5月8日からアサヒ飲料株式会社を通じて,引用商標5に示すとおりの態様からなる特徴的な図形,(以下,この図形を「申立人図形」という。なお,申立人は,「爪の図柄」と表記している。)と,該申立人図形の下部に,太字で大きく表記した「MONSTER」の文字,及びその下部に細字で小さく「ENERGY」の文字を組み合わせてなるものからなる,主に引用商標2が使用されて,継続して販売されてきたものであって,発売当初から100万箱を突破する売上げで,2012年(平成24年)5月ないし12月における販売実績の157万箱である(甲7?甲9)。なお,2015年6月30日までの期間に,約2億3,600万缶が販売され,この期間の総販売額は,日本円で170億円以上であるとの主張がされている(甲58)。
また,アサヒ飲料株式会社のニュースリリースにおいては異なる色彩の引用商標2が表示されている(甲7,甲8,甲10)。
(イ)申立人図形が,インターネットショッピングサイトにおいて取り扱われているTシャツ,帽子,ステッカー等に使用されていること(甲47,甲48等)及びスポーツイベントやキャンペーン等に使用されていることが認められる(甲58,甲73?甲91,甲104,甲105,甲107,甲109?甲113等)。
さらに,イベント会場等においてサンプル配布された申立人のエナジードリンク,スポーツイベント等での出場選手のユニフォーム等に申立人図形又は引用商標2が使用されていることが認められる。また,申立人は,我が国において申立人のエナジードリンクのサンプル配付等が,2012年及び2013年にかけて,渋谷やモータースポーツ,マリンスポーツ等のイベント会場において行われたと陳述している(甲58)。
イ 著名性についての判断
上記アによれば,申立人は,我が国において2012年5月の発売以降,申立人のエナジードリンクについて,主に引用商標2を継続して使用してきたことが認められる。
そして,引用商標2は,その構成及び上述の取引の実情に照らすと,申立人図形と引用商標2の文字部分とは分離して観察されるものであるが,構成中間部の「MONSTER」の文字部分が更に分離抽出され取引に資されることはないというべきであり,申立人もそのことを示す証拠を示していないことから,むしろ,申立人のエナジードリンクは,「MONSTER ENERGY(モンスターエナジー)」と称され,継続して販売,そのキャンペーン等の宣伝広告がされていたことが認められるものである。
その他,客観的に使用商標が申立人の業務に係る商品に使用されて需要者の間に広く認識されるものと認め得る証拠の提出はない。
なお,申立人は,スポンサー提供,娯楽イベントの開催,販売キャンペーン等の申立人の商品の広告及び販売促進活動ににおいて,「MONSTER」の及びその音訳「モンスター」の文字を使用し(甲7?甲17,甲34?甲91,甲101?甲133,甲136?甲168,甲225?甲251),また,アパレル製品,運動用ヘルメット,バッグ類などのライセンス商品のカタログやオンラインショッピングサイトに,ブランド名及び個別商品名として「MONSTER」,「Monster」の文字を表示して販売及び宣伝広告をしている(甲47,甲48,甲58,甲92?甲100,甲134,甲135)旨主張する。
しかしながら,これらの各証拠において,「MONSTER」,「Monster」の欧文字,又は「モンスター」の片仮名は,申立人図形と共に「MONSTER ENERGY」,「Monster Energy」又は「モンスターエナジー」の表示で使用されているものがほとんであり,これらの文字が単独で申立人の業務に係る商品に使用されて需要者の間に広く認識されているものと認め得る事実はない。
以上を総合勘案すると,使用商標「MONSTER」は,申立人のエナジードリンクを表示するものとして,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,我が国の需要者の間に広く認識されるに至っていたものとは認めることができない。
(2)本件商標と使用商標の類似性について
ア 本件商標について
本件商標は,上記第1のとおり,「BEER MONSTER」の欧文字を標準文字で表してなるものであり,その構成文字は,同書,同大で外観上まとまりよく一体的に表されているものであり,いずれかの文字部分が,殊更,取引者,需要者に対し役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるとはいい難いものである。
また,構成文字全体から生じる「ビールモンスター」又は「ビアモンスター」の称呼も特別冗長でもなく,無理なく一連に称呼されるものである。
そして,その構成中の「BEER」の文字は,「ビール」の意味を,「MONSTER」の文字は,「怪物」の意味を有する語(いずれも,「研究社 新英和大辞典第6版」(株)研究社)であるものの,これらの語を組み合わせてなる本件商標は,全体として特定の意味合いを想起させるとはいえないものである。
そうすると,本件商標は,上記の構成からすれば,その構成文字全体をもって,一体のものとして認識し,把握されるものとみるのが相当であるから,その構成文字に相応して「ビールモンスター」又は「ビアモンスター」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものである。
イ 使用商標について
申立人が,本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当すると主張する使用商標は,「MONSTER」の欧文字を横書きしてなるものであり,その構成文字に相応して,「モンスター」の称呼を生じ,「怪物」の観念を生じるものである。
ウ 本件商標と使用商標との類否について
そこで,本件商標と使用商標との類否についてみるに,外観においては,上記ア及びイのとおりの構成からなる本件商標と使用商標とは,その構成文字に照らせば,明らかに相違するものである。
また,称呼においては,本件商標から生じる「ビールモンスター」又は「ビアモンスター」の称呼と使用商標から生じる「モンスター」の称呼とは,前半部の「ビール」又は「ビア」の音の有無に明らかな差異を有するから,両称呼は,明確に聴別し得るものである。
さらに,観念においては,本件商標は特定の観念を生じない造語であるから,「怪物」の観念を生じる使用商標とは,観念においても共通するところがない。
そうとすれば,両商標は,その外観,称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標である。
(3)出所の混同のおそれ
上記(1)のとおり,使用商標「MONSTER」は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,申立人の商品(エナジードリンク)を表示するものとして,我が国の取引者,需要者の間に広く認識されていた商標とは認められないものであり,さらに,上記(2)のとおり,本件商標と使用商標とは,別異の商標として認識されるものである。
そうすると,本件商標は,商標権者がこれをその指定役務に使用しても,これに接する需要者が使用商標を連想又は想起するものとは認められず,その役務が申立人又は同人と経済的,組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように,その役務の出所について混同を生じるおそれはないものといわなければならない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しない。
2 商標法第4条第1項第7号該当性について
本件商標は,上記1のとおり,商標権者がこれをその指定役務について使用しても,取引者,需要者をして申立人の使用商標を連想又は想起させることのないものである。
そうすると,本件商標は,申立人の使用商標の信用力,顧客吸引力にフリーライドするものとはいえず,また,他に商標権者が本件商標をその指定役務に使用することが社会一般の道徳に反し公正な取引秩序を乱す,あるいは国際信義に反するなど,公序良俗に反するものというべき事情も見いだせない。
そして,提出された証拠からは,本件商標が,社会一般道徳及び公正な取引秩序の維持を旨とする商標法の精神並びに国際信義に反し,公の秩序を害するおそれがあることを認めるに足りる証拠はない。
また,申立人は,本件商標の採択の経緯等に不正の目的が存することを示す証拠を提出していない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に該当しない。
3 まとめ
以上,本件商標は,商標法第4条第1項第15号及び同第7号に該当するとは認められないから,同法第43条の3第4項に基づき,申立てに係る指定役務について,その登録を維持すべきである。
よって,結論のとおり決定する。
別掲 別掲1(引用商標2)


別掲2(引用商標3)


別掲3(引用商標5)


別掲4(引用商標11)


別掲5(引用商標14)(色彩は原本参照)


別掲6(引用商標15)



異議決定日 2017-08-08 
出願番号 商願2016-39430(T2016-39430) 
審決分類 T 1 651・ 271- Y (W43)
T 1 651・ 22- Y (W43)
最終処分 維持  
前審関与審査官 鈴木 斎 
特許庁審判長 井出 英一郎
特許庁審判官 木住野 勝也
中束 としえ
登録日 2016-10-28 
登録番号 商標登録第5892192号(T5892192) 
権利者 株式会社ダイニングファクトリー
商標の称呼 ビアモンスター、ビールモンスター、モンスター 
代理人 柳田 征史 

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