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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W25
審判 全部申立て  登録を維持 W25
管理番号 1331469 
異議申立番号 異議2016-900177 
総通号数 213 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2017-09-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-07-11 
確定日 2017-06-08 
異議申立件数
事件の表示 登録第5836660号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5836660号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第5836660号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲1に示すとおりの構成よりなり,平成27年10月14日に登録出願,平成28年2月25日に登録査定がされ,第25類「被服」を指定商品として,同年4月1日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が登録異議の申立ての理由において引用する商標は,以下の4件の登録商標(以下,これらの商標をまとめて「引用商標」という。)であり,いずれも現に有効に存続しているものである。
1 登録第653278号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の構成:別掲2のとおり
登録出願日:昭和35年5月24日
設定登録日:昭和39年9月16日
指定商品 :第9類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品
2 登録第1261190号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の構成:別掲3のとおり
登録出願日:昭和46年2月18日
設定登録日:昭和52年4月1日
指定商品 :第9類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品
3 登録第4748211号商標(以下「引用商標3」という。)
商標の構成:別掲4のとおり
優先権主張:2003年2月28日 シンガポール共和国
登録出願日:平成15年4月4日
設定登録日:平成16年2月20日
指定商品 :第7類,第9類及び第11類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品
4 登録第4933841号商標(以下「引用商標4」という。)
商標の構成:「AKAI」(標準文字)
登録出願日:平成17年7月7日
設定登録日:平成18年3月3日
指定商品 :第9類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は,本件商標は,商標法第4条第1項第15号又は同項第19号に該当するものであるから,同法第43条の2第1号により,その登録は取り消されるべきであると申立て,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第68号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 引用商標の周知著名性について
申立人は,赤井電機株式会社(以下「赤井電機」という。)が使用する周知著名商標「AKAI」の商標権者であり,引用商標1から4のほか,日本及び世界100カ国以上で,その商標登録を所有している(甲6)。
赤井電機は,昭和4年に設立,昭和29年からテープレコーダーの生産を開始,昭和31年から輸出を開始し,昭和47年頃には約130カ国に販売網を確立するようになり,輸出開始当初から,自社ブランド「AKAI」(引用商標1)を使用した結果,テープレコーダーのAKAI(アカイ)として,世界的な名声を有するようになり,商標「AKAI」は,日本及び外国における需要者の間に広く認識されるようになった(甲9?12)。赤井電機は,2000年に経営破たんしたが,世界各国でAV機器や家電製品などの製造,販売を継続して行っており,今でも音響機器関係者やオーディオ愛好家の間では,「AKAI」ブランドの信用と名声は根強く存在し続けている(甲13)。
商標「AKAI」の使用実績として,赤井電機による国内外におけるイベントなどにおけるスポンサー活動実績(甲14?29),宣伝,広告の実績(甲30?66)があり,その周知著名性を示す文献もある(甲7?8,67)。また,各国での裁判・審決においても,商標「AKAI」の周知・著名性が認められている(甲68)。
2 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)本件商標と引用商標の比較
本件商標は,「AKAI」の欧文字を赤字で表し,これを長方形状の黒色太枠で囲った表示形態の外観としたものであるところ,太枠部分は識別作用を発揮することはなく,需要者が本件商標に接して印象に残すのは,「AKAI」の文字部分であり,当該文字部分が本件商標の要部となる。これより本件商標からは「アカイ」の称呼が生じ,特定の観念は生じない。
他方,引用商標1は,「AKAI」の文字を表してなるため,これより「アカイ」の称呼が生じ,特定の観念は生じない。
そうすると,本件商標の要部「AKAI」の文字部分は,引用商標1(引用商標2ないし4も同様。)と称呼及び外観が同じである。
(2)出所の混同について
引用商標「AKAI」は,日本及び世界各国で,「オーディオ機器」の商標として周知著名であるところ,本件商標の要部は,称呼及び外観の共通性から同一のものと認識されるため,たとえその商品と非類似の商品であっても,赤井電機の関連会社あるいはグループ会社等何らかの関係のある事業者の商品に係るものとの誤認が生じるおそれがある。特に,本件商標の指定商品「被服」との間においては,スポンサー活動において,シャツ,ユニフォームや帽子などに引用商標を表示することも多いため,出所混同の可能性は極めて高い。
そのため,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。
3 商標法第4条第1項第19号該当性について
(1)不正の目的について
本件商標の要部である「AKAI」の文字部分は,数多くの書体があるにも関わらず,引用商標の書体と同一と認識されるほど共通しており,これは故意に,周知著名商標である引用商標「AKAI」を模倣したとしか思われない。このような本件商標の構成には,引用商標の名声にただ乗りし,その顧客吸引力を利用しようとする意図が看取される。本件商標の黒枠部分にしても,差異を主張するために意図的に加えてあると受け止めることが可能である。
また,本件商標の権利者は,本件商標に係る事業を行っている所在地が不明で,その登録原簿に記載の住所には営業所は存在しないと推測され,商標の使用権も設定されていないことから,当該権利者は,本願商標に係る事業を行っておらず,出願登録には不正の目的があるのではないかと思われる。
(2)結論
上記1,2及び3(1)に記載の実情を踏まえると,引用商標は,日本国内及び外国において需要者の間に広く知られた商標であり,本件商標の要部と引用商標は概ね同一であり,関連会社等何らかの関係のある事業者の商品に係るものであるとの誤認を生じさせやすく,商品の出所につき混同を生じさせることになり得るため,不正の目的を有するものとみることができる。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1号第19号に該当する。

第4 当審の判断
1 引用商標「AKAI」の周知著名性について
(1)週刊日本経済(昭和44年4月24日号),東邦経済(昭和47年8月1日発行),投資経済(昭和50年9月15日発行),「別冊ステレオサウンド」(昭和61年11月30日発行,株式会社ステレオサウンド発行)によれば,赤井電機は,昭和4年に設立,昭和29年からテープレコーダーの生産を開始し,同時期に国産初の「オープンリールテープレコーダーキット」を発売し,昭和40年から50年代には,その業務に係る「AKAI」の商標は,商品「オーディオ機器(テープレコーダー)」に使用する商標として,世界110か国を超える外国を中心として,日本国内においても,ある程度知られていたものであり,少なくとも昭和60年頃まで事業が継続していた状況がうかがえる(甲8?甲12)。
しかしながら,申立人が提出した全証拠をみても,申立人のいう平成12年(2000年)の赤井電機の経営破たん前又はそれ以降は,赤井電機又は申立人による,日本国内又は外国における営業規模や広告実績を客観的かつ具体的に把握することができない。
また,申立人は,海外におけるスポーツイベントのスポンサー実績や広告実績(甲14?甲65)を提出しているが,これらの証拠によって,商標「AKAI」についての我が国の需要者の認識を評価することはできない。
そして,上記スポンサー実績(甲14?29)は,主に1980年から1990年代のものが中心であり,上記広告実績(甲14?65)にしても,南アフリカ,イスラエル,シンガポール,オマーン,イスラエル,サウジアラビア,UAE,中国,インドなどの国での広告例を示すにすぎず,それぞれの国における広告宣伝の量的規模を,客観的かつ具体的に把握することができない。さらに,ロシアにおける市場調査(甲67)は,調査の具体的手法や設問設定など,同調査が客観性を保った信用に足る調査であることが示されていないため,これが直ちにロシアにおける引用商標の著名性を示すものということはできない。そして,各国(バングラディシュ,チェコ,イタリア,ラトビア,オーストラリア)における判決例(甲68)について,これら判断に当審が拘束されるものではないことは明らかであって,これらの判決の基礎となった事実は,当審において示されておらず,引用商標の著名性を認定することはできない。
そうすると,申立人が提出した甲各号証によっては,引用商標は,赤井電機の商品「オーディオ機器(テープレコーダー)」を表示する商標として過去にある程度知られていたといえるとしても,本件商標の登録出願の時及び登録査定時において,我が国又は外国において,申立人の業務に係る商品を表すものとして,需要者の間に広く認識されているものと認めることができない。
2 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)本件商標と引用商標の比較
本件商標は,別掲1のとおり,長方形状の黒色太枠の図形内に「AKAI」の欧文字を顕著に赤色で表してなるものであるから,該文字部分が,本件商標に接する需要者,取引者に,商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものといえ,これより「アカイ」の称呼を生じるが,特定の意味合いを有する語を表示したものと直ちに理解することはできないため,特定の観念を生じない。
他方,引用商標は,それぞれ「AKAI」の欧文字を書してなるものであるから,その構成文字部分に相応して「アカイ」の称呼を生じ,特定の観念を生じない。
そうすると,本件商標と引用商標とは,観念においては比較することはできないとしても,「アカイ」の称呼を共通にし,構成中の「AKAI」の綴り字が同一であるから,外観上の類似性が認められるため,両商標は類似しているといえる。
(2)本件商標と引用商標との指定商品の比較
本件商標の指定商品「被服」と,商品「オーディオ機器(テープレコーダー)」を含む,第7類,第9類及び第11類に属する商標登録原簿記載のとおりの引用商標の指定商品については,その原材料,生産者,用途,販売場所,取引系統等を著しく異にするばかりでなく,その需要者も明らかに相違する商品というべきであるから,両者の関連性は低いものといわざるを得ない。
(3)小括
本件商標は,上記1のとおり,その登録出願の時及び登録査定時において,我が国又は外国における周知,著名性を認めることができず,上記(2)のとおり,本件商標の指定商品と引用商標の指定商品とは関連性を有するものとはいえないから,上記(1)のとおり,本件商標と引用商標が類似するとしても,本件商標をその指定商品について使用した場合,これに接する取引者,需要者が引用商標ないしは申立人を連想,想起するようなことはないというべきであり,該商品が申立人又は申立人と経済的,組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く,その出所について混同を生ずるおそれはないものと判断するのが相当である。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第19号該当性について
申立人は,本件商標と引用商標の書体の近似さ,本件商標の権利者が本件商標に関する事業を行っていないことなどから,その出願に不正の目的があったことが推察できる旨を主張するが,綴りが共通する商標を採択することや,現在その商標を使用していないことが,直ちに商標権者の不正の目的と結びつくものではない。その他,申立人の提出する証拠によっては,本件商標が不正の利益を得る目的,他人たる申立人に損害を加える目的その他の不正の目的をもって使用するものであることを認めるに足る具体的な証拠は見いだすことができない。
そうすると,本件商標は,上記1のとおり,その登録出願の時及び登録査定時において,我が国又は外国における周知,著名性を認めることができないものであり,上記のとおり不正の目的をもって使用するものであるとも認めることはできない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に該当しない。
4 まとめ
以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第15号及び同項第19号に違反してされたものではないから,同法第43条の3第4項の規定に基づき,その登録を維持すべきものである。
よって,結論のとおり決定する。
別掲 別掲1(本件商標) 色彩は原本を参照



別掲2(引用商標1)



別掲3(引用商標2)



別掲4(引用商標3)



異議決定日 2017-02-08 
出願番号 商願2015-103126(T2015-103126) 
審決分類 T 1 651・ 222- Y (W25)
T 1 651・ 271- Y (W25)
最終処分 維持  
前審関与審査官 吉野 晃弘 
特許庁審判長 堀内 仁子
特許庁審判官 阿曾 裕樹
田村 正明
登録日 2016-04-01 
登録番号 商標登録第5836660号(T5836660) 
権利者 上村 祐樹
商標の称呼 アカイ 
代理人 特許業務法人竹内・市澤国際特許事務所 

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