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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W10
審判 全部申立て  登録を維持 W10
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審判 全部申立て  登録を維持 W10
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審判 全部申立て  登録を維持 W10
管理番号 1330329 
異議申立番号 異議2016-900220 
総通号数 212 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2017-08-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-08-05 
確定日 2017-02-17 
異議申立件数
事件の表示 登録第5845563号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5845563号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第5845563号商標(以下「本件商標」という。)は、「PERIBORN」の欧文字を標準文字により表してなり、平成27年11月10日に登録出願され、第10類「コラーゲンを主成分として製造し手術切開部位を保護するための覆布,豚の心膜を主成分として製造し手術切開部位を保護するための覆布,牛の心膜を主成分として製造し手術切開部位を保護するための覆布,心膜補填用パッチ,脳硬膜欠損部補填用パッチ,血管手術後に血管手術部位を保護するための覆布,脳硬膜手術後に血管手術部位を保護するための覆布,医療用ステント,超音波治療機械器具,人工心臓弁,医療用カテーテル・ガイドワイヤ・ステント並びにその部品及び附属品,カテーテル」を指定商品として、同28年3月4日に登録査定、同年4月28日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する商標は次の5件(以下、それらをまとめて「引用商標」という。)であり、いずれの商標権も現に有効に存続しているものである。
(1)登録第4614097号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の態様 PERIMOUNT (標準文字)
指定商品 第10類に属する商標登録原簿に記載の商品
出願日 平成13年5月22日
設定登録日 平成14年10月18日
(2)登録第4603587号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の態様 PERIMOUNT MAGNA (標準文字)
指定商品 第10類に属する商標登録原簿に記載の商品
出願日 平成14年4月3日(優先日:2001年10月9日)
設定登録日 平成14年9月13日
(3)登録第4614098号商標(以下「引用商標3」という。)
商標の態様 PERIMOUNT PLUS (標準文字)
指定商品 第10類に属する商標登録原簿に記載の商品
出願日 平成13年5月22日
設定登録日 平成14年10月18日
(4)登録第5113728号商標(以下「引用商標4」という。)
商標の態様 PERIMOUNT THEON
指定商品 第10類に属する商標登録原簿に記載の商品
出願日 平成19年9月7日(優先日:2007年3月9日)
設定登録日 平成20年2月22日
(5)登録第5774124号商標(以下「引用商標5」という。)
商標の態様 PERI (標準文字)
指定商品 第10類に属する商標登録原簿に記載の商品
出願日 平成27年1月13日
設定登録日 平成27年6月26日

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第10号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号に該当するから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであると申し立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として第1号証ないし第73号証(枝番を含む。)を提出した。
1 引用商標の著名性
(1)申立人について
申立人は、1958年に創業者が、米国カリフォルニア州で立ち上げた企業である。日本では「エドワーズライフサイエンス株式会社」の商号の下で事業を営んでいる。
創業者は、1960年に、世界で初めて人工心臓弁の製品化に成功し、同年に最初の憎帽弁置換術に成功している。現在は弁膜症治療製品のリーディングカンパニーとして世界中の医師から信頼を得て、必要とされている。申立人は、今日までに、本国である米国の他に欧州、アジア太平洋地域、中南米に拠点を置き、弁膜症治療、経カテーテル弁膜症治療、クリティカルケア、血管治療の分野で事業を展開してきた。日本では、札幌、仙台、東京、横浜、名古屋、大阪、岡山、広島、福岡といった主要都市に営業所及び支店等を設けている。取扱製品は、弁膜症治療関連、血行動態モニタリング関連、カニューレ・血管治療・血管鉗子・低侵襲心臓手術関連と多岐にわたっている。
現在、全世界における申立人の従業員数は約9100名であり、日本の従業員数は約380名である。
申立人は、その事業活動に関するニュース記事の多くにおいて「人工心臓弁と血行動態モニタリング技術の世界的リーダー」と称され、上場審査基準が世界一厳しいと言われるニューヨーク証券取引所に上場している企業でもある。
申立人は、日本国内において医療関係の集会に積極的に携わっているほか、オンラインによるセミナーも開催している。こうした事実から、これまでに不特定多数の需要者が申立人関係者と接し、申立人のことを知るようになってきた。
申立人は、純粋な営利活動のみならず、非営利活動を含む社会的な取り組みにも積極的に携わっている。その一環として、「エドワーズライフサイエンス基金」を2004年に設立し、循環器疾患分野における知識の発展と生活の質の向上を図り、自社が拠点を置く地域に貢献する事業への支援等を行っている。これらの活動は、その規模の大きさと対象者数の多さを考慮すれば、申立人がその事業分野において著名性を獲得することに寄与していると言える。また、社員によるボランティア活動、途上国や災害被災地において開発支援や緊急支援活動を行なう国際NPO「ADARA JAPAN」による派遣事業に寄付しており、こうした一連の取り組みが行われていることと、それに関する情報がインターネット上に多く掲載されていることを考慮すると、国内外の需要者が申立人の存在及びその事業内容を知る機会はこれまで無数にあり、今後も増え続けるものと考えられる。
申立人は、「PRアワードグランプリ」(開催者:公益社団法人日本パブリックリレーションズ協会)において、日本国内のご当地食材を生かし、心臓の健康に対する関心を高め、心疾患予防を図った「ご当地『ハートレシピ』プロジェクト」について「ソーシャルコミュニケーション部門」で優秀賞を受賞している。
他にも、申立人の事業活動及び製品に関する記事は数多く存在する。第27号証は、申立人が人工心臓弁の製造販売について厚生労働省から承認を得たことを報じるニュース記事である。第28号証は、申立人の人工弁輪の新商品を紹介する業界向け専門サイトに掲載された記事である。第29号証は、申立人の経カテーテル大動脈弁植え込み術を紹介する大学のウェブサイトである。このような記事は、申立人やその製品に関連する話題は需要者の間で情報としての価値が高いことを示しており、申立人が医療の分野において確固たる地位を確立させていることを物語っている。
上記の各事実を総合的に勘案すれば、申立人が需要者の間で既に著名になっていることは明らかである。
(2)引用商標を使用した申立人製品等の普及状況及び事業実績
ア 引用商標1に係る「PERIMOUNT生体弁」については、1981年に臨床使用を開始し、これまでに50万人以上の患者が当該生体弁を使った弁置換術を受けている。このうち、1984年7月から2008年12月の間に373人の患者が大動脈弁置換術を受けている。当該生体弁による手術を受ける患者数は2013年当時においても毎年数千人おり、その累積数は今後も増え続けると考えられる。
全世界では、人工弁を使用する開胸術による弁置換術が毎年30万件以上行われているところ、「PERIMOUNT牛心のう膜生体弁」は30年以上にわたって世界で最も使用される弁となっている。
「PERIMOUNT牛心のう膜生体弁プラットフォーム」については、公表された研究で25年以上にわたり長期耐久性が実証されている。
「PERIMOUNT生体弁」のモデルを継承する「カーペンターエドワーズPERIMOUNT牛心のう膜生体弁TFX」も販売されている。
これらの商品名に共通して「PERIMOUNT」の文字が含まれていることは、「PERIMOUNT」シリーズの製品が、申立人の長年の企業努力によって非常に優れた製品として認識されるようになっていることを裏付けている。
イ 引用商標2に係る「PERIMOUNT MAGNA憎帽弁」については、遅くとも2005年に引用商標4に係る「PERIMOUNT THEON憎帽弁置換システム」とともに日本で紹介されているところ、複数の研究結果において長期の耐久性が実証されている。市場調査によると、2008年の時点で、米国では毎年3万5千人から4万人が「PERIMOUNT MAGNA憎帽弁」による憎帽弁置換術を受けていると言われている。この憎帽弁は「Edwards PERIMOUNT憎帽弁」のデザインが基になっている。このことからも、引用商標1又はこれを含む商標を使用した製品が同様に優れたものとして認識されていることが裏付けられる。
ウ 引用商標1は、申立人の会社ウェブサイトにおいて、弁膜症治療関連の製品一覧のページから個別製品を掲載したページ、当該ページに掲載された製品カタログ及び医療機器添付文書に至るまで幅広く使用されている。これらのカタログ等においては、引用商標2及び3も使用されている。
エ 引用商標2又はこれを含む生体弁の名称は、多くの病院のウェブサイトにも掲載されている。これらの病院の中には慶應大学や北海道大学といった有名大学の大学病院が含まれている。
引用商標1及び2又はこれらを含む生体弁の名称は、論文及び学会誌といった学術文献等に幅広く掲載されている。これらの文献の著者の中には、京都大学や長崎大学といった名立たる国立大学の関係者も含まれている。
オ 「PERIMOUNT」製品に関する記載は、申立人企業を分析する企業分析レポート等においても見られる。第62号証は、引用商標2を使用した製品が、申立人がグローバル市場で展開する製品群に含まれている旨記載している。第63号証は、「PERIMOUNT MAGNA」を含む商標を使用した製品を世界の人工心臓弁市場における重要製品の一つとして列挙している。
「PERIMOUNT」製品に関する記載は業界誌や医療に関する書籍においても見られる。第64号証は、生体弁「PERIMOUNT」が30年以上販売されている旨記載している。第65号証は、医学書の販売サイトである。このサイトで販売されている書籍については、「PERIMOUNT」生体弁に関する文献を参考文献として列挙している。
カ このような種々の刊行物が出回っている事実を考慮すると、「PERIMOUNT」を含む名称の製品が、産業界のみならず教育機関においても広く知られていることが窺える。
キ 上記に加え、「PERIMOUNT」製品に関する記載は、官公庁や独立行政法人が発行する様々な文書であって一般に公開されているものにおいても見られる。第67号証は、厚生労働省が「PERIMOUNT」製品に保険が適用される旨を記載した通知である。第68号証は、申立人に関する有価証券報告書(2012年)であり、「PERIMOUNT」製品が世界で最も多く使用されている生体弁である旨とともに、当該製品を含む外科治療用心臓弁製品が申立人の2009年?2011年の純利益の40%以上を占めていた旨記載している。第69号証の「PERIMOUNT」製品に関する情報を記載した有価証券報告書は2006年以降定期的に公表されている。第70号証は、「PERIMOUNT」製品に関して記載した特許文献である。
ク したがって、申立人が製造販売する生体弁が数十年の間に優に50万人を超える患者に使用されているものや、世界で最も使用されているものを含んでいることを考慮すれば、当該生体弁が著名になっていることは明らかである。また、人工心臓弁の分野における申立人の実績と著名性を考慮すれば、不特定多数の需要者が申立人ウェブサイト等にアクセスし、引用商標1ないし4に接してきたと考えるのが自然である。このことから、少なくとも引用商標1及び2は申立人の製品について使用するものとして既に著名になっていることも明らかである。
(3)まとめ
上記(1)及び(2)に示した各事実から、引用商標1及び2が、本件商標の出願日及び登録査定日において、日本を含む世界各国にて広く認識されていたことが理解できる。
2 商標の類似について
(1)本件商標は、「PERIBORN」の欧文字を標準文字で書してなる商標である。一方、引用商標1ないし3及び5は、それぞれ「PERIMOUNT」、「PERIMOUNT MAGNA」、「PERIMOUNT PLUS」及び「PERI」の欧文字を、標準文字で横書きしてなる商標である。引用商標4は欧文字「PERIMOUNT THEON」の欧文字をシンプルな書体で横書きしてなる商標である。
(2)観念について検討する。本件商標、引用商標1及び5は、いずれも全体として特定の意味を有しない造語からなる商標である。引用商標2ないし4については、それぞれ構成中の「MAGNA」、「PLUS」及び「THEON」の部分は既成語であり、「偉大な」、「付け加えること」及び「テオン(人名)」といった意味合いを生じるが、いずれも商標全体としては特定の意味を有しない造語である。したがって、本件商標と引用商標とは、観念上比較できず、観念は類否判断に影響を与えない。
(3)両商標の称呼について検討する。本件商標からは、ローマ字や通常の英単語の読み方を考慮すると、「ペリボーン」の称呼が生じる。一方、引用商標からは、「ペリマウント」、「ペリマウントマグナ」、「ペリマウントプラス」、「ペリマウントテ(セ)オン」及び「ペリ」の称呼が生じる。
ここで、本件商標は、引用商標1ないし4と最初の4文字が共通し、引用商標5全体を最初の4文字として包含している。「PERIMOUNT」は上述のとおり特定の意味を生じない造語であるが、引用商標2ないし4における欧文字「MAGNA」、「PLUS」及び「THEON」の部分は、それぞれ「偉大な」、「付け加えること」及び「テオン(人名)」といった意味を有するため、それ自体は「PERIMOUNT」の部分と比べて自他商品識別力が弱いと言える。そのため、「PERIMOUNT」が引用商標2ないし4の要部となる。そして、引用商標2ないし4は、「PERIMOUNT」と後続の欧文字の間にスペースがあるため、「PERIMOUNT」の部分が分離して認識される可能性は高いといえる。
また、上述のとおり、少なくとも引用商標1及び2は申立人が製造販売する商品のうち少なくとも人工心臓弁について世界的に著名である。さらに、「PERI」の文字は、申立人自身が引用商標1の略称として用いたことによって、需要者の間でも既に浸透していると考えられる。このことから、引用商標5は引用商標のうち特に引用商標1の著名な略称として既に需要者の間で広く認識されていると考えられる。
一般的に、人間の記憶は曖昧なことが多いため、商標の一部のみを明確に記憶し、残りの部分については記憶があやふやになることは日常的な事象と考えられる。そのため、引用商標1に接した需要者が、これを「PERI○○」と記憶する可能性は大いにあると言える。
そうすると、需要者は、人工心臓弁等の医療用品との関係においては、本件商標の構成文字「PERI」と「BORN」の間に目立ったスペースがなくても、「PERI」の文字が語頭に位置していることも相俟って、「PERI」の部分のみを捉え、「ペリ」の称呼をもって取り扱う可能性は十分にあると考えられる。
したがって、本件商標は、引用商標5と商標全体として類似する。
3 商品の類否及び関連性について
本件商標の指定商品は、申立人の業務に係る商品「人工心臓弁」等の医療用機械器具と同一又は類似である。特に、本件商標の指定商品「人工心臓弁」は、引用商標の指定商品「人工心臓弁」又は「心臓弁」と同一又は類似である。
4 出所の混同のおそれについて
上記1(3)で述べたように、本件商標の指定商品の分野において少なくとも引用商標1及び2は、その出願日及び登録査定日に我が国の需要者の間に広く認識されていた。これに加えて、3(2)の商標の類似性及び3(3)の商品の類似性及び関連性を考慮すれば、本件商標に接する需要者が、本件商標は申立人の出所表示であるとして誤認するおそれ(狭義の混同)、若しくは、申立人商品のシリーズ商品等のように、申立人の業務と何らかの関係があると認識して出所を混同するおそれがある(広義の混同)。
本件商標と引用商標が使用される商品分野「(人工)心臓弁」は、取り扱っている企業自体が少なく、当該企業はわざわざ他社の「(人工)心臓弁」に似通った商品名を選択しないと考えられる。また、「(人工)心臓弁」は、衣服類等の日用品とは異なり、手術によって人間の体内に取り付けられるため、健康や生命に直接的な影響をもたらす特殊な商品である。もし、需要者又は取引者が商品を取り違えて使用した場合には、患者の健康・生命に極めて重大な影響を与えかねない。この意味で、心臓弁等を含む本件商標の指定商品はいずれも決して取り違えることが許されない。すなわち誤認・混同を生じることが決して許されない特別な商品分野であると言える。
このような「(人工)心臓弁」等の特殊性を考慮すると、医療用機器等の分野については、誤認・混同の生じるおそれの範囲は、需要者・取引者の保護のためにも、他の商品分野よりも広く解釈するべきである。
5 不正の目的について
上記1で述べたように、本件商標の指定商品の分野において少なくとも引用商標1及び2は、その出願日に既に日本又は外国の需要者の間で広く認識されていた。また、上記2及び上記3で述べたとおり、本件商標は引用商標1の著名な略称である引用商標5と類似する商標であり、本件商標の指定商品は申立人の商品と同一又は類似する商品である。そうすると、本件商標が既成語でないこと及び「(人工)心臓弁」という商品を取り扱う企業自体が少ないことも相まって、本件商標の商標権者が、このような本件商標を共通する商品分野について偶然採用したとは考え難い。したがって、本件商標の商標権者が、引用商標の著名性にフリーライドするという不正の目的をもって本件商標の出願をしたことが自然と推認できる。
6 申立理由の該当性
(1)商標法第4条第1項第10号について
引用商標5は、日本国内の需要者の間に広く認識された商標である。また、本件商標は引用商標5と類似する商標であり、本件商標の指定商品は、申立人の業務に係る商品と同一又は類似する。したがって、本件商標は商標法第4条第1項第10号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第11号について
本件商標は引用商標5と類似する商標であり、本件商標の指定商品は、引用商標5に係る商品と同一又は類似する。また、引用商標5は申立人所有の先願先登録商標である。したがって、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第15号について
仮に、本件商標が商標法第4条第1項第10号及び同項第11号に該当しなかった場合においても、引用商標の著名性のため、本件商標に接する需要者は申立人の業務と何らかの関係があると認識して出所を混同するおそれがある。よって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当する。
(4)商標法第4条第1項第19号について
仮に、本件商標が商標法第4条第1項第10号、同項第11号及び同項第15号に該当しなかった場合においても、引用商標は、外国又は日本国内の需要者の間に広く認識された商標である。また、本件商標は引用商標5と類似する商標であり、かつ、本件商標は不正の目的をもって出願されたことが容易に推認出来る。したがって、本件商標は商標法第4条第1項第19号に該当する。
7 むすび
本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号のいずれかに該当し、商標登録を受けることができないものであるから、その登録は商標法第43条の2第1号の規定により取り消されるべきである。

第4 当審の判断
1 引用商標1の周知、著名性について
証拠及び申立人の主張によれば、以下のとおり認めることができる。
(1)申立人は、米国において1958年に創業され、1960年に世界で初めて人工心臓弁の製品化に成功し(2号証)、現在は全世界において弁膜症治療製品を取り扱う企業である(5号証)。
(2)引用商標1を使用した商品「人工心臓弁」(以下「申立人商品」という。)は、1981年に臨床使用を開始し、これまでに50万人以上の患者が当該人工心臓弁を使った弁置換術を受けており(30号証)、30年以上にわたって世界で使用されている(31号証)。また、申立人商品は、25年以上の長期耐久性が実証されている(32号証)。
(3)申立人商品は、シリーズ化した商品も存在し、これらの商品名に共通して引用商標1の構成文字である「PERIMOUNT」の欧文字が含まれている。そして、その中には引用商標2ないし4に係る商品も含まれている(33?42号証)。
(4)引用商標1は、本件商標の出願前より継続して、申立人の会社ウェブサイト、多くの病院のウェブサイト、論文及び学会誌といった学術文献等に幅広く使用し、掲載されている(37?61、64?66号証)。
(5)申立人による2010年12月9日出願案件の米国特許公報(72号証)及び「The Heart Valve Society」と題したウェブサイトの2016年3月17日から19日に開催された「HVS Scientific Meeting」の記事中(73号証)には、それぞれ「“PERI,”short for “PERIMOUNT,”」及び「Perimount(○の中に「R」を有する記号)Magna Ease,PERI,」の記載が確認できる。
(6)まとめ
以上によれば、「PERIMOUNT」の欧文字からなる引用商標1は、申立人により「人工心臓弁」について1981年より継続的に使用された結果、本件商標の出願日には既に、我が国及び外国において、申立人の業務に係る商品「人工心臓弁」を表すものとして、需要者の間で広く認識されていたと認められる。
なお、申立人は、引用商標5を構成する「PERI」の欧文字は、申立人自身が引用商標1の略称として用いたことによって、引用商標1の著名な略称として既に需要者の間で広く認識されている旨主張するが、請求人がこれを立証するために提出した資料は、第72号証及び第73号証のみであり、これらの資料においては、「PERI」の欧文字を「PERIMOUNT」の略語とするとの注意書として使用されているばかりでなく、第73号証については本件商標の登録査定後の記事であることからすれば、これら資料をもっては、引用商標5がそれ単独で、本件商標の出願日に既に、引用商標1の著名な略称として需要者の間に広く認識されていたと認めることはできない。
2 商標法第4条第1項第11号について
(1)本件商標について
本件商標は、上記第1のとおり、「PERIBORN」の欧文字を標準文字により表してなるものであることころ、全体として特定の観念を有しない一種の造語とみるのが相当であるから、本件商標は、その構成文字に相応して「ペリボーン」の称呼が生じ、また、特定の観念は生じないものである。
(2)引用商標について
ア 引用商標1について
引用商標1は、上記第2(1)のとおり、「PERIMOUNT」の欧文字を標準文字により表してなるものであることころ、全体として特定の観念を有しない一種の造語とみるのが相当であるから、引用商標1は、その構成文字に相応して「ペリマウント」の称呼が生じ、また、特定の観念は生じないものである。
イ 引用商標2ないし4について
引用商標2ないし4は、上記第2(2)ないし(4)のとおり、それぞれ「PERIMOUNT MAGNA」、「PERIMOUNT PLUS」及び「PERIMOUNT THEON」の欧文字を標準文字又は普通に用いられる態様により表してなるものであることころ、全体として特定の観念を有しない一種の造語とみるのが相当であるから、それぞれの構成文字に相応して引用商標2は「ペリマウントマグナ」の、引用商標3は「ペリマウントプラス」の、引用商標4は「ペリマウントテオン」又は「ペリマウントセオン」の称呼が生じ、また、いずれも特定の観念は生じないものである。
また、引用商標2ないし4の構成文字中「PERIMOUNT」の文字部分は、上記1(6)のとおり、その指定商品との関係において申立人の業務に係る商品を表すものとして、需要者の間で広く認識されていたと認められるから、当該文字部分が商品の出所を識別する標識として強く支配的な印象を与えるものというべきである。
したがって、引用商標2ないし4は、その構成中の「PERIMOUNT」の文字部分を要部として抽出し、この部分のみを他人の商標(本件商標)と比較して商標の類否を判断することができるものであるから、引用商標2ないし4は、上記全体から生じる称呼、観念のほかに、その構成中、要部である「PERIMOUNT」の文字部分から、引用商標1と同様に「ペリマウント」の称呼をも生じ、特定の観念は生じないものであると認められる。
ウ 引用商標5について
引用商標5は、上記第2(5)のとおり、「PERI」の欧文字を標準文字により表してなるものであることころ、全体として特定の観念を有しない一種の造語とみるのが相当であるから、引用商標5は、その構成文字に相応して「ペリ」の称呼が生じ、また、特定の観念は生じないものである。
(3)両商標の類否について
ア 本件商標と引用商標1との比較
本件商標は「PERIBORN」の欧文字よりなるのに対し、引用商標1は「PERIMOUNT」の欧文字よりなるところ、両者は前半の「PERI」の4文字及び6文字目の「O」を共通とするものの、それ以外の文字を異にすることから、それぞれ8文字構成及び9文字構成と、それほど多くない文字数からすれば、その差異が全体に及ぼす影響は小さいとはいえず、これより両者は、外観上、明確に区別できるものである。
次に、本件商標から生じる「ペリボーン」の称呼と、引用商標1から生じる「ペリマウント」の称呼とは、構成音数及び語頭音の「ペリ」以外の音の差異を有することから、明確に聴別可能であり、両者は、称呼上、類似しない。
また、本件商標と引用商標1とは、観念において比較することはできないから、相紛れるおそれはなく、両商標は、観念上、類似するとはいえない。
そうすると、本願商標と引用商標1とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても,互いに紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
イ 本件商標と引用商標2ないし4との比較
本件商標は「PERIBORN」の欧文字よりなるのに対し、引用商標2ないし4は、それぞれ「PERIMOUNT MAGNA」、「PERIMOUNT PLUS」及び「PERIMOUNT THEON」の欧文字よりなるところ、両者は前半の「PERI」の4文字及び6文字目の「O」を共通とするものの、それ以外の文字を異にすること及び構成文字数に明確な差異を有することから、両者は、外観上、明確に区別できるものである。
称呼についてみるに、本件商標から生じる「ペリボーン」の称呼と、引用商標2ないし4から生じる「ペリマウントマグナ」、「ペリマウントプラス」及び「ペリマウントテオン」又は「ペリマウントセオン」の称呼とは、構成音数及び語頭音の「ペリ」以外の音の差異を有することから、明確に聴別可能であり、両者は、称呼上、類似しない。
また、本件商標と引用商標2ないし4とは、観念において比較することはできないから、相紛れるおそれはなく、両商標は、観念上、類似するとはいえない。
次に、本件商標と引用商標2ないし4の要部である「PERIMOUNT」の文字部分とについて比較するに、引用商標2ないし4の要部である「PERIMOUNT」の文字部分は、その構成文字を引用商標1と同じくすることから、両者は上記アと同様に外観、称呼及び観念いずれについても区別可能である。
そうすると、本願商標と引用商標2ないし4とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても,互いに紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
ウ 本件商標と引用商標5との比較
本件商標は「PERIBORN」の欧文字よりなるのに対し、引用商標5は「PERI」の欧文字よりなるところ、両者は「PERI」までの文字を共通とするものの、それぞれ8文字構成及び4文字構成と、その構成文字数が全く異なることから、両者は、外観上、明確に区別できるものである。
次に、本件商標から生じる「ペリボーン」の称呼と、引用商標5から生じる「ペリ」の称呼とは、構成音数及び後半の「ボーン」の音の有無の差異を有することから、明確に聴別可能であり、両者は、称呼上、類似しない。
また、本件商標と引用商標5とは、観念において比較することはできないから、相紛れるおそれはなく、両商標は、観念上、類似するとはいえない。
そうすると、本願商標と引用商標5とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても,互いに紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
(4) まとめ
上記(3)のとおり、本件商標と引用商標とは、その外観、称呼及び観念のいずれの点からみても相紛れるおそれはなく、非類似の商標と認められる。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第10号及び同項第19号について
上記2のとおり、本件商標と引用商標とは、相紛れるおそれのない非類似の商標と認められるものであるから、その余の点について判断するまでもなく、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同項第19号に該当する商標とは認められない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同項第19号に該当しない。
4 商標法第4条第1項第15号について
上記2のとおり、本件商標と引用商標とは、相紛れるおそれのない非類似の商標と認められるものであるから、需要者の注意力の程度や本件商標の指定商品と引用商標の指定商品との共通性を考慮しても、本件商標が、出所混同のおそれがある商標であるとはいえない。これに反する取引の実情を認めるに足りる証拠もない。
そうすると、本件商標は、これをその指定商品について使用しても、その商品が申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、商品の出所について混同を生じさせるおそれはない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
5 なお、申立人は、引用商標5は引用商標1の著名な略称として既に需要者の間で広く認識されている旨述べ、これより本件商標に接した需要者が、人工心臓弁等の医療用品との関係において、本件商標の構成文字中「PERI」の欧文字部分のみを捉え、称呼し、これをもって取引に資する場合がある旨主張する。
しかしながら、引用商標5が引用商標1の著名な略称として需要者の間に広く認識されていたと認めることができないことは上記1(6)のとおりであって、他に本件商標の構成文字中「PERI」の欧文字部分が抽出され、この部分をもって取引に資する事情は見いだせないことから、申立人の主張は採用できない。
6 まとめ
以上のとおり、本件の商標登録は、商標法第4条第1項第10号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号に該当するとは認められないから、同法第43条の3第4項に基づき、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2017-02-10 
出願番号 商願2015-110455(T2015-110455) 
審決分類 T 1 651・ 271- Y (W10)
T 1 651・ 25- Y (W10)
T 1 651・ 261- Y (W10)
T 1 651・ 222- Y (W10)
T 1 651・ 263- Y (W10)
T 1 651・ 262- Y (W10)
最終処分 維持  
前審関与審査官 箕輪 秀人太野垣 卓 
特許庁審判長 今田 三男
特許庁審判官 冨澤 武志
田中 幸一
登録日 2016-04-28 
登録番号 商標登録第5845563号(T5845563) 
権利者 テウン メディカル カンパニー リミテッド
商標の称呼 ペリボーン 
代理人 小暮 理恵子 
代理人 久保 怜子 
代理人 行田 朋弘 

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