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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W14 審判 全部申立て 登録を維持 W14 審判 全部申立て 登録を維持 W14 |
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管理番号 | 1329342 |
異議申立番号 | 異議2016-685021 |
総通号数 | 211 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2017-07-28 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2016-09-21 |
確定日 | 2017-03-28 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 国際登録第1279757号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 |
結論 | 国際登録第1279757号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
第1 本件商標 本件国際登録第1279757号商標(以下「本件商標」という。)は,「Tick different」の欧文字を横書きしてなり,2015年7月16日にSwitzerlandにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し,2015年(平成27年)11月2日に国際商標登録出願,平成28年5月30日に登録査定,第14類「Precious metals and their alloys and goods made of these materials or coated therewith included in this class,namely figurines,trophies;jewelry,namely rings,earrings,cufflinks,bracelets,charms,brooches,chains,necklaces,tie pins,tie clips,jewelry caskets,jewelry cases;precious stones,semi-precious stones;timepieces and chronometric instruments,namely chronometers,chronographs,clocks,watches,wristwatches,wall clocks,alarm clocks as well as parts and accessories for the aforesaid goods,namely hands,anchors,pendulums,barrels,watch cases,watch straps,watch dials,clockworks,watch chains,movements for timepieces,watch springs,watch glasses,presentation cases for timepieces,cases for timepieces.」を指定商品として,同年7月15日に設定登録されたものである。 第2 引用商標 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が,本件登録異議の申立ての理由として引用する商標は,「Think different」の文字(以下「引用商標」という。)からなり,申立人がパーソナルコンピュータ,多機能携帯電話機,デジタルオーディオプレーヤー,腕時計型コンピュータ,音楽・映像配信サービス等に使用しているものである。 第3 登録異議の申立ての理由 申立人は,本件商標は,商標法第4条第1項第7号,同項第15号及び同項第19号に該当するから,同法第43条の2第1号により,その登録は取り消されるべきであると申し立て,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第23号証を提出した。 1 引用商標の周知著名性 申立人は,iMac,MacBook等のパーソナルコンピュータ,多機能携帯電話機iPhone,デジタルオーディオプレーヤーiPod,タブレット型コンピュータiPad,腕時計型コンピュータApple Watch,音楽・映像配信サービスiTunes等を製造・販売・提供することで全世界において広く知られた米国の法人である。申立人は,「世界の最も価値あるブランドランキング」で首位を獲得するなど(甲2),全世界で最も高い知名度を有し,申立人の動向や,申立人がリリースする新製品・新サービスに全世界の消費者・メディアが注目しているといっても過言ではない。 申立人は,魅力的かつインパクトある広告宣伝で有名であるところ,引用商標「Think different」は,1997年に開始された広告キャンペーンのスローガンとして使用されたものである(甲3,甲4)。そのテレビCMは,パブロ・ピカソ,アルベルト・アインシュタイン,マーティン・ルーサー・キング・ジュニア,ジョン・レノン,トーマス・エジソン,モハメド・アリなど著名人が登場するなど(甲3),人々に強い印象を与え,魅了し,その高い芸術性とともに,現在でも高い評価を得ている。なお,これらの著名人は,「Think different」の表示とともに宣伝用ポスターにも起用されている。 このような強力かつインパクトある「Think different」キャンペーンは,人々を強く魅了し,現在でも,「名作コピー」「不朽の名作CM」「格好よすぎる」「心揺さぶられる」「名作CM」などと高い評価を受けている(甲5?甲9)。また,そのCM動画(甲10)は多くの人々に視聴され称賛されているだけでなく,第三者によって執筆された申立人の「Think different」に関係する記事も多数公開されており(甲11?甲14),「Think different」は,申立人の業務に係る表示として広く知られている。すなわち,引用商標「Think different」に蓄積した業務上の信用,出所表示力,顧客吸引力は,申立人に極めて強く結びついており,その周知著名性は,現在においても維持されていることは明らかである。 2 本件商標権者の行為 本件商標権者は,腕時計の製造・販売を業とするスイス国の法人である。 申立人は,腕時計型コンピュータ「Apple Watch」を製造・販売しているところ(甲15),本件商標権者と申立人とは,「腕時計」の商品分野において競合関係にある。本件商標権者は,申立人が腕時計市場に参入したことを快く考えておらず,過去に「もし製品名がiWatchだったら,世界各地でアップルを訴える」とまで表明していた(甲16)。 このような競合関係や,本件商標権者から申立人に対しての攻撃的な発言などに加え,引用商標が申立人の商標として周知著名であったことから,本件商標権者が本件商標を国際出願することについては,各種メディアが指摘している(甲16?甲19)。 また,申立人はニュージーランド国においても,本件商標権者の商標「Tick different」に対し異議申立てを行っているところ,本件商標権者は,宣誓供述書において,本件商標と引用商標が非類似であると主張した(甲22)。他方,モナコ国においては,本件商標権者が申立人を相手方として訴訟を提起しているところ,当該訴訟の裁判所出頭召喚状において,本件商標権者は,本件商標と引用商標とが類似し,需要者の混同を生じさせるおそれがある旨を主張している(甲23)。これらの本件商標権者の商標の類否についての主張は明らかに論理一貫性がなく矛盾するものであり,このように主張を変えている事実は,申立人に攻撃を加える目的のみに利用していることの現れである。 さらに,本件商標の構成は,「Tick differently」ではなく,引用商標と同じく不正確な文法に基づく「Tick differnt」である。 これらの事情を総合考慮すると,本件商標権者は,本件商標「Tick different」を自己の商品に使用する目的ではなく,申立人の業務を妨害,阻止,嫌がらせ等することのみを目的として登録出願したことは明らかである。 3 本件商標と引用商標との類似性 (1)外観 本件商標は欧文字「Tick different」からなるのに対し,引用商標は「Think different」の文字からなる。これらは共に2つの英単語で構成されているところ,2語目の「different」の文字は同一であり,語頭の「T」並びに「i」及び「k」の各文字も共通し,外観上の共通点が極めて多い。 すなわち,本件商標は,引用商標と外観上類似の商標である。 (2)称呼 本件商標は全体として「ティックディファレント」と称呼されるのに対し,引用商標の称呼は「シンクディファレント」であり,称呼の大部分である「クディファレント」が共通し,全体の語調・語感も近似する。 したがって,本件商標と引用商標とは,称呼上も相紛らわしい類似の商標である。 (3)観念 本件商標も引用商標も,辞書等に掲載された言葉ではなく,特定の観念は生じない。したがって,誤認混同されることが明らかな外観及び称呼に比べ,類否判断に与える影響は極めて限定的である。 (4)出所の混同のおそれ 引用商標が申立人の商標として周知著名であること,本件商標の指定商品には単価の低いものも含まれること,需要者は性別・年齢を問わず幅広い層に存在し,取引において常に高い注意力が払われるとはいえないことなどの取引状況を総合的に考察すれば,本件商標と引用商標とは,商品の出所の混同を生じるおそれがある類似の商標である。 4 異議申立理由該当性 (1)商標法第4条第1項第7号について 上記2のとおり,本件商標権者は,申立人が引用商標を使用していることを知りながら,申立人が,本件商標の指定商品について商標登録を取得していないことを奇貨として,申立人の業務を妨害,阻止,嫌がらせ等するという不正の目的をもって,引用商標を剽窃して登録出願したものであり,これは,本件商標が,引用商標と文字の大部分を共通にして構成されていることからも明白である。本件商標権者は本件商標を正当な目的で使用する意思がないから,商標法第1条に照らせば,本件商標には,保護すべき業務上の信用が蓄積し得ないものである。このような不正の目的に基づく商標が使用されれば,出所の混同だけでなく,著名商標の識別力の希釈化・汚染化が起こり,さらに,引用商標に依拠して登録出願された本件商標が公然と使用され,登録による保護が与えられれば,引用商標への信頼が損なわれるだけでなく,需要者の利益保護を目的とする商標法の趣旨に反するといわざるを得ない。 すなわち,本件商標の出願・登録は,著しく社会的妥当性を欠き,商標法の趣旨にもとり,本件商標の登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものであるから,本件商標は,公序良俗に反するおそれのある商標であり,商標法第4条第1項第7号に該当する。 (2)商標法第4条第1項第15号について 本件商標と引用商標とは類似の商標であり,また,引用商標は本件商標の出願時及び査定時において周知著名となっていたことから,本件商標は,需要者・取引者が出所を混同するおそれが極めて高いうえ,引用商標の希釈化・汚染化を生じさせるおそれがある。 特に,本件商標は,引用商標と文字の大部分を共通にして構成されており,引用商標に依拠し,剽窃等を目的として登録出願されたものであり,しかも,本件商標権者が「もし製品名がiWatchだったら,世界各地でアップルを訴える」と表明していた(甲16)ことをも考慮すれば,本件商標権者が本件商標を使用する場合には,申立人に損害を与える態様によって行われ,引用商標との誤認混同が生ずる蓋然性が極めて高い。 また,申立人が腕時計型コンピュータを製造・販売していることから,商品「watches(腕時計)」等を含む本件商標の指定商品について,常に高い注意力を持って取引に当たるとはいえない取引者・需要者は,申立人との関連性を想起し,出所について誤認混同を生じるおそれがある。 よって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。 (3)商標法第4条第1項第19号について 上記のとおり,本件商標と引用商標とは類似の商標であり,本件商標権者が,申立人の著名商標に依拠する意図をもって本件商標を登録出願したことは明らかである。 つまり,引用商標が著名であり強大な顧客吸引力を有する事実を考慮すれば,本件商標は,引用商標の顧客吸引力・名声への只乗りによって不正の利益を得る目的を有するか,引用商標の有する強い識別力・表示力・顧客吸引力を希釈化することにより申立人に損害を加える目的を有するかのいずれかの不正の目的をもって使用するものである。 よって,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に該当する。 5 むすび 以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第7号,同項第15号及び同項第19号に該当し,商標登録を受けることができないものであるから,同法第43条の2第1号の規定により取り消されるべきである。 第4 当審の判断 1 商標法第4条第1項第15号該当性について (1)引用商標の周知著名性について ア 申立人の主張及び提出した証拠によれば,以下の事実を認めることができる。 (ア)申立人は,1997年から2002年にかけて,アインシュタインやピカソ,ガンジーといった著名な人物を起用した,テレビコマーシャル,印刷広告や宣伝用ポスターの形式の広告キャンペーンを行い,「Think different」の文字からなる引用商標を,当該広告キャンペーンのスローガンとして使用した(甲3,甲4)。 (イ)上記広告キャンペーン終了後,現在においても,当該広告キャンペーンを賞賛する記事が掲載されたり,当該広告キャンペーンのCM動画を配信するウェブサイトが存在し,当該広告キャンペーンを表すものとして引用商標が使用されている(甲5?甲14)。 イ 上記アの事実からすれば,申立人が1997年から2002年にかけて引用商標を広告キャンペーンについて使用し,また,現在においても,一部のインターネットの記事において引用商標が当該広告キャンペーンのスローガンとして紹介されていることはうかがえる。 しかしながら,上記広告キャンペーンが終了した2002年以降,申立人自身が引用商標を使用している事実は見いだせない。 そうすると,一部のインターネットの記事において引用商標が取り上げられていることのみをもって,本件商標の登録出願時及び査定時において,引用商標が申立人の業務に係るものとして,我が国及び外国の取引者及び需要者の間において広く知られていたものと認めることはできない。 (2)本件商標と引用商標の類似性の程度について ア 本件商標について 本件商標は,上記第1のとおり「Tick different」の欧文字を横書きしてなるところ,これらの構成文字は同じ大きさ,同じ書体でまとまりよく表されているものであり,これより生じる「ティックディファレント」の称呼も,よどみなく一連に称呼し得るものである。 そして,本件商標構成中の「Tick」の欧文字は,「(時計などの)カチカチいう音」の意味を有し,「different」の欧文字は,「?とは違った」の意味を有する語であるが,これらの文字に識別力についての軽重の差を見いだせず,いずれかの文字部分が本件の指定商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるとみるべき特別な理由及び事情は認められない。 してみれば,本件商標はその構成全体をもって一体的に看取,把握され,「ティックディファレント」の称呼のみが生じ,特定の観念は生じないというのが相当である。 イ 引用商標について 引用商標は,上記第2のとおり,「Think different」の欧文字よりなるものであり,これより生じる「シンクディファレント」の称呼も一連に称呼できるものである。 そして,引用商標構成中の「Think」の欧文字は,「考える」を意味し,「different」の欧文字は,「?とは違った」の意味を有する語であるが,これらの文字に識別力についての軽重の差を見いだせず,いずれかの文字部分が本件の指定商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるとみるべき特別な理由及び事情は認められないことからすれば,引用商標は,全体として一体のものと理解され,「シンクディファレント」の一連の称呼のみが生じ,特定の観念は生じないというのが相当である。 ウ 本件商標と引用商標との類否について 本件商標と引用商標との類否についてみるに,本件商標と引用商標とは,上述のとおり,それらの構成態様に照らせば,一語目において「Tick」と「Think」の語が相違するものであるから,外観上,互いに紛れるおそれはない。 また,本件商標から生じる「ティックディファレント」の称呼と,引用商標から生じる「シンクディファレント」の称呼とは,後半部の「ディファレント」の称呼を共通にするものの,語頭を含む前半部において「ティック」と「シンク」という明らかな差異を有するから,その構成音の差異により,明瞭に聴別し得るものである。 さらに,本件商標と引用商標は,いずれも特定の観念を生じないものであるから,観念上,両商標を比較することはできず,観念において相紛れるおそれのないものである。 してみれば,本件商標と引用商標とは,外観,称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標というべきものである。 (3)出所の混同のおそれ 上記(1)のとおり,引用商標は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,申立人の業務に係る商品を表示するものとして,我が国の需要者の間に広く認識されていたとはいえない。また,上記(2)のとおり,本件商標は,引用商標とは相紛れるおそれのない非類似の商標である。 よって,本件商標は,商標権者がこれをその指定商品に使用しても,これに接する需要者が,申立人が主に使用する引用商標を連想又は想起するものとは認められず,その商品が申立人又は同人と経済的,組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように,その商品の出所について混同を生じるおそれはないというべきである。 (4)小括 したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しない。 2 商標法第4条第1項第7号該当性について 本件商標は,上記1(3)のとおり,商標権者がこれをその指定商品について使用しても,取引者,需要者をして申立人の引用商標を連想又は想起させることのないものである。 また,申立人は,インターネット記事(甲16?甲19)を挙げて,本件商標権者が,申立人の業務を妨害,阻止,嫌がらせ等するという不正の目的をもって,本件商標の登録出願を行った旨主張するが,一部のインターネット記事のみをもって,本件商標の出願に不正な目的があったということはできず,しかも,これらのインターネット記事は,本件商標とは別の申立人の使用する商標を,本件商標権者が登録したことを伝える記事であって,推測にすぎないものである上,これらの記事において本件商標に関する言及がなされている部分はごくわずかである。 さらに,申立人は,証拠として,本件商標権者が本件商標と引用商標との類否について,諸外国において異なる主張をしている(甲23,甲24)ことも挙げているが,そのことをもって,本件商標が引用商標を剽窃して登録出願したものとまではいえない。 その他,本件商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くという主張を裏付ける具体的な証拠の提出はない。 そうすると,本件商標は不正の目的をもって出願,登録されたと認めるに足りる的確な証拠は見いだし得ないから,引用商標を剽窃したものとは認めがたく,本件商標の登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くと認めるべき事情があるものということはできない。 また,他に本件商標が公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標とみるべき事情も見いだせない。 したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に該当しない。 3 商標法第4条第1項第19号該当性について 上記1(1)のとおり,引用商標は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,申立人の業務に係る商品を表示するものとして,我が国又は外国の需要者の間において広く認識されていたとはいえず,また,上記1(2)のとおり,本件商標は,引用商標とは相紛れるおそれのない非類似の商標である。 さらに,上記2のとおり,本件商標は,不正の目的をもって出願,登録されたものとはいえないものである。 してみれば,本件商標は商標法第4条第1項第19号に該当しない。 4 まとめ 以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第7号,同項第15号及び同項第19号のいずれにも違反して登録されたものとはいえないから,同法第43条の3第4項の規定に基づき,その登録を維持すべきである。 よって,結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2017-03-23 |
審決分類 |
T
1
651・
271-
Y
(W14)
T 1 651・ 22- Y (W14) T 1 651・ 222- Y (W14) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 鈴木 駿也、阿曾 裕樹 |
特許庁審判長 |
早川 文宏 |
特許庁審判官 |
平澤 芳行 小林 裕子 |
登録日 | 2015-11-02 |
権利者 | SWATCH AG (SWATCH SA)(SWATCH LTD.) |
商標の称呼 | ティックディファレント、チックディファレント、ティック、チック、ディファレント |
代理人 | 杉村 憲司 |
代理人 | 特許業務法人大島・西村・宮永商標特許事務所 |
代理人 | 中山 健一 |