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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない Y25
管理番号 1329270 
審判番号 取消2015-300245 
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2015-04-03 
確定日 2017-05-16 
事件の表示 上記当事者間の登録第971820号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第971820号商標(以下「本件商標」という。)は、「LE MANS」の欧文字を横書きしてなり、昭和42年1月25日に登録出願、第17類に属する商標登録原簿記載の商品を指定商品として同47年7月13日に設定登録され、その後、4回にわたり商標権の存続期間の更新登録がされ、また、平成15年8月27日に指定商品を第24類「布製身の回り品,かや,敷布,布団,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布」及び第25類「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,エプロン,襟巻き,靴下,ショール,スカーフ,手袋,ネクタイ,ネッカチーフ,バンダナ,保温用サポーター,マフラー,耳覆い,ずきん,すげがさ,ナイトキャップ,ヘルメット,帽子」とする指定商品の書換登録がされているものである。
なお、本件審判の請求の登録は、平成27年4月22日である。

第2 請求人の主張の要点
請求人は、本件商標の指定商品中、第25類「寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,エプロン,襟巻き,ショール,スカーフ,手袋,ネッカチーフ,バンダナ,保温用サポーター,マフラー,耳覆い,ずきん,すげがさ,ナイトキャップ,ヘルメット,帽子」についての登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁の理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第11号証を提出している。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品中、上記の商品について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、商標法第50条第1項の規定により、その登録を取り消すべきものである。
2 弁駁の理由
被請求人は、「審判事件答弁書」において、本件商標権者(被請求人)から使用許諾を受けた通常使用権者である「株式会社フィールドハウス」は、請求に係る指定商品中、「マフラー」について本件商標を使用しているとし、証拠方法として乙第1号証ないし乙第16号証を提出している。
(1)被請求人の提出した上記の乙各号証によっては、本件商標を本件審判請求の予告登録前3年以内に、日本国内において、請求に係る指定商品中の何れについても使用していたものとは認められない主な理由は、ア 調査会社を通じて事前に使用状況を調査したが、過去3年間使用の事実を発見できなかった。イ 乙第3号証ないし乙第5号証及び乙第7号証は、単に販売商品の発注、受注を示す商取引前の資料であって、実際に商品が商取引の場に供された事実が証明されていない。ウ 乙第2号証、乙第11号証ないし乙第16号証の信憑性は、疑わしく、その他の各号証によっても、本件商標が予告登録前に使用されていたことの証明にはならない、の3点である。
(2)以下、上記アないしウについて、詳述する。
ア 本件審判の請求前の事前調査について
請求人は、調査会社を通じて被請求人(本件商標権者)ケントジャパン株式会社のほか、株式会社ヴァンヂャケット、その他関連会社に対し、過去3年内に本件商標「LE MANS」が本件審判の請求商品に使用されていたか否かの調査を行った。
その調査内容及び調査結果の概要は、以下のとおりである。(甲3、9、10)
(ア)2014年10月9日及び10月22日におけるケントジャパン株式会社(台東区蔵前)の対応者、S氏は、次のとおり見解を述べている。
a [LE MANS」は、当社が保有するブランドである。
b 以前は、衣服類に使用していたが、今は衣服類では使用していない。
c 衣服類には使用していないが、雑貨類等で例えば、イトーヨーカ堂の店舗で「LE MANS」の物を販売している。
d ライセンシーは言えない。
e 先行き、「雑貨類」やその他の商品も復活させる用意がある。
(イ)2014年10月23日におけるKentイトーヨーカドー木場店(東京都江東区本場)の対応者、E氏は、「過去3年間の仕入れ台帳、販売台帳を精査した結果、『LE MANS』の文字を使用したブランド、名称として使用した商品の取り扱いはない。」と見解を述べている。
(ウ)2014年10月23日におけるKentイトーヨーカドー湘南台店(神奈川県藤沢市石川)の対応者、S氏は、E氏と同様に「過去3年間の仕入れ台帳、販売台帳を精査した結果、『LE MANS』の文字を使用したブランド、名称として使用した商品の取り扱いはない。」と見解を述べている。
(エ)2014年10月15日における株式会社ヴァンヂャケット(台東区蔵前)の対応者、K氏は、「確かに何十年も前に『ルマン』、『LE MANS』ブランドの衣服類を取り扱っていたが、当社のラインアップからはずれ、何十年も前から、このブランドは取り扱っていない。」との見解であった。
なお、K氏は、旧(株)ヴァンヂャケットの取締役であった人物であり、現在は、新(株)ヴァンヂャケットの取締役からは外れているが、隆盛を極めたヴァンジャケット及びヴァンヂャケットが保有していたブランドに精通している人物であり、現在のVANオンラインストアの責任者ともなっていて、昔からのヴァンヂャケットが保有していたブランドに詳しい人物である。
(オ)過去に「LE MANS」ブランドの商品を取り扱ったことのある企業4社についても調査を行ったところ、何れも過去3年間に使用したことはない、と述べている。
(カ)その他、株式会社ケントジャパンの公式ホームページ、株式会社ヴァンヂャケットのホームページ、オンラインストア、及び一般サイト検索によっても、本件商標の使用は認められなかった。
(キ)以上のとおり、本件審判請求前及び請求後の使用状況調査によれば、本件商標「LEMANS」商標は、その取消しに係る指定商品の何れについても過去3年間使用されていた事実は、発見できなかったのである。
よって、上記審判請求前の使用状況調査の内容と著しく異なる答弁書の内容は極めて信憑性に欠けるものである。
イ 被請求人の提出した乙各号証のうち、乙第3号証、4号証、5号証及び7号証は、単に販売商品の発注、受注を示す商取引前の資料であって、実際に商品が商取引の場に供された事実が証明されていないことについて
商標法第50条第1項及び同法第2条第3項第1号、第2号及び第8号の規定における「商品」とは、現に流通している商品を意味し、現に流通していない商品は、これらの規定における「商品」には該当しないものというべきである。
したがって、単に商品の販売の準備を行っていたことを窺わせる証拠等を提出したとしても、これらが登録商標を現実に使用したことを立証するものではないことはいうまでもない(甲5ないし甲7)。
そこで、被請求人の提出した乙各号証によれば、これらの多くは何れも商品販売のための準備行為に係る書類であるから、当該商品が市場において独立して商取引の対象として流通に供され、かつ、商標法第2条第3項、第4項所定の行為がなされていたことを何ら立証したものではない。
ウ 被請求人提出の乙各号証のうち、乙第2号証、乙第11号ないし乙第16号証の信憑性は、極めて疑わしいものである。また、その他の各号証によっても、本件商標が予告登録前に使用されていたことの証明にはならない。
被請求人の提出した乙各号証は、以下のとおり、それ自体、本件商標を予告登録前3年以内に使用していたことを証明するものではないし、また、その信憑性についても極めて疑わしいものである。
(ア)乙第2号証「商標使用権契約書」
乙第2号証は、2013年12月1日付けで締結された本件商標権者と株式会社フィールドハウスとの「商標使用権契約書」であり、上記契約の期間は、2013年12月1日?2014年11月30日となっている。
一方、請求人は、本件商標について本審判請求前の平成26年11月7日付けでほぼ同じ商品についての取消審判を請求した(取消2014-300902)。
そして、上記取消審判の答弁書において提出された「商標使用権契約書」と本件取消審判の答弁書において提出された「商標使用権契約書」とは、その内容がほぼ同一である。(甲8)
すなわち、上記2件の「商標使用権契約書」は、前者は「ネクタイ」について、後者は「マフラー」についてと商品は異なるものの、その「契約当事者」(ケントジャパン株式会社と株式会社フィールドハウス)、「契約日」(2013年12月1日)、「契約期間」(2013年12月1日から2014年11月30日)は、全で同じである。
通常、同じ契約者が同日の日付で、同一の契約期間について、単品ごとに「商標権使用契約書」を取り交わすことは考えにくく、よって上記契約書の信憑性は極めて疑わしいものである。
(イ)乙第3号証「発注書」
乙第3号証は、2014年5月15日付けの株式会社フィールドハウス(以下「フィールドハウス社」という。)から株式会社中南海トレーディングコーポレーション(以下「中南海トレーディング社」という。)宛の「発注書」であるが、これは、単にフィールドハウス社が商品の製造を発注したことを証明するにすぎないものである。
(ウ)乙第4号証「納品書」
乙第4号証は、中南海トレーディング社が「フィールドハウス社へ商品を納品したことを示す取引書類にすぎないものである。
(エ)乙第5号証「受注証明書」
乙第5号証は、中南海トレーディング社がフィールドハウス社からマフラーの生産を受注したことを証明するものである。
(オ)乙第6号証「マフラーの写真」
乙第6号証は、「LE MANS」のタグのついたマフラーの写真であるが、撮影日は、2015年6月19日であるから、予告登録日後のものであり、予告登録前に本件商標「LE MANS」の付された「マフラー」が販売されたことの証明にはならない。
(カ)乙第7号証「請求書」
乙第7号証は、平成26年10月10日付けの中南海トレーディング社からフィールドハウス社宛の代金請求書である。
(キ)乙第8号証「受入伝票」
乙第8号証は、2014年10月20日付けヴァンヂャケット社からフィールドハウス社宛の商品の「受入伝票」である。
(ク)乙第9号証「ヴァンヂャケット社のHPの店舗(プリントアウト)」
乙第9号証は、ヴァンヂャケット社のHPの店舗をプリントアウトしたものであるが、本件商標「LE MANS」の付された「マフラー」が販売されたことを示す事実は一切見当たらないし、作成日付も予告登録日後の2015年6月19日であるから、何ら証拠価値はない。
(ケ)乙第10号証「VAN Base」店舗写真
乙第10号証は、2015年6月16日撮影の「VAN Base」店舗写真であるが、本件商標「LE MANS」の付された「マフラー」が販売されたことを示す事実は一切、見当たらないし、そもそも撮影日は2015年6月19日であるから、予告登録日後のものであり、本件商標の使用の証明となるものではない。
(コ)乙第11号証「移動伝票」
乙第11号証は、ヴァンヂャケット社が自社の販売店であるVAN Baseへ2014年10月20日に移動した伝票である。移動したといっても、ヴァンヂャケット社とVAN Baseとは、同じビル内のそれぞれ6階と4階で業務を行っているのであるから、単に場所を移動したとする書類にすぎない。
よって、これをもって本件商標が使用されたとは言えないばかりでなく、また、上記移動伝票に記載された商標も「LSCLeMans」であるから、本件商標の使用ではない。
(サ)乙第12号証「倉庫別一覧表」(2014年10月)
乙第12号証は、「2014年10月」時点の在庫状況を示すリストと思われるが、「処理日」は予告登録日後の2015年5月25日となっている。
また、後述の、乙第14号証の「倉庫別在庫一覧表」の2014年11月、12月、2015年1月、2月の「処理日」も、全て2015年5月25日の同一の日付となっている。
そうすると、このような一覧表はパソコンで簡単に作成できるものであるから、これらは全て本年5月25日に作成された可能性が高いものである。
(シ)乙第13号証「請求書」(控)
乙第13号証は、平成26年10月31日付のフィールドハウス社からヴァンヂャケット社宛の「請求書(控)」であるが、これは、ヴァンヂャケット社に商品を納品し、その代金を請求したことを示すにすぎないものである。
つまり、商品販売をするに当たり、単に商品の仕入先からの仕入代金の請求があったことを証明するにすぎず、また、該請求書(控)には、本件商標の記載もないから、これをもって、実際の商取引上において本件商標が「マフラー」に使用されたことを証明したことにはならない。
(ス)乙第14号証「倉庫別在庫一覧表」
乙第14号証は、2014年11月から2015年2月まで4か月間の「倉庫別在庫一覧表」である。
上記4か月間の一覧表ではあるが、前述のとおり、「処理日」は、何れも予告登録日後の2015年5月25日となっている。
このような一覧表は、だれでも簡単にパソコンで作成できるものであって、実際に商品が販売された結果、その在庫数が減じていることを表すものであるか否かは極めて疑わしく、よって、本件商標を付した商品が販売された事実を証明する証拠とはなり得ない。
(セ)乙第15号証「移動伝票」
乙第15号証は、2015年2月28日付けの移動伝票であるが、ヴァンヂャケット社からヴァンヂャケット社への自社間の移動にすぎず、また、伝票に使用された商標も本件商標と異なる「LSCLeMans」であるから、このような書類は、本件商標の使用とはならない。
(ソ)乙第16号証「返品伝票」
乙第16号証は、2015年2月28日付けのヴァンヂャケット社からフィールドハウス社への「返品伝票」(商品数120)であるが、これは、単に、商品が返品されたことを証明するにすぎず、「返品されたこと」をもって、本件商標が使用されたことの証明にならないことは、審決例等からも明らかである。
よって、乙第16号証は、本件商標を「マフラー」について使用したことの証拠とはなり得ない。
3 まとめ
以上のとおり、乙第3号証ないし乙第5号証及び乙第7号証は、何れも商品販売のための準備行為に係る書類であり、当該商品が市場において独立して商取引の対象として流通に供され、かつ、商標法第2条3項、第4項所定の行為がなされていたことを何ら立証したものではない。
また、乙第6号証の写真は本件審判の予告登録後の撮影のものであるし、乙第9号証の「ヴァンヂャケットのHPの店舗(プリントアウト)、及び乙第10号証のVAN Baseの店舗写真にしても、何れも予告登録後の撮影又は作成のものであって、かつ、本件商標や「マフラー」が示されたものは一切ないから、何れも予告登録前3年以内に本件商標を「マフラー」について使用したことの証拠とはならない。
さらに、乙第11号証ないし乙第16号証は、販売先(ヴァンヂャケット社)の在庫一覧表や、販売委託者(フィールドハウス社)間の取引書類であるが、何れも実際に本件商標が付された商品が譲渡等されたことの事実を直接的に証明するものではなく、そのような在庫一覧表(リスト)は、誰でも簡単にパソコンで作成できるであるから、その信憑性は極めて疑わしいものである。(なお、被請求人も述べているとおり、本件商標の権利者であるケントジャパン社、ヴァンヂャケット社及びフィールドハウス社の三社は、何れも関連会社である。)
よって、これらをもって、本件商標を予告登録前3年以内に「マフラー」について使用さていたことを証明したことにはなり得ない。
以上のとおり、本件の商標権者又は使用権者は、本件審判請求の予告登録前3年以内に日本国内において、本件商標を本件審判請求の取消しに係る何れの指定商品についても使用していたものと認めることはできない。

第3 被請求人の主張の要点
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第16号証を提出した。
1 本審判請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者である被請求人から通常使用権の許諾を受けた株式会社フィールドハウスが、その請求に係る指定商品のうち、「マフラー」についての本件商標を使用している事実を立証する。
2 詳細説明
(1)株式会社フィールドハウスは、被請求人であるケントジャパン株式会社から2013年12月1日に本件商標の指定商品中「マフラー」について通常使用権の許諾を受けた(乙2)。なお、株式会社フィールドハウスは、ケントジャパン株式会社の関連会社である。
(2)そして、株式会社フィールドハウスは、株式会社中南海トレーディングコーポレーションに対し本件商標に係る「LE MANS」ブランドのマフラー200枚についての生産を依頼した。詳しくは、株式会社フィールドハウスの藤原氏は、株式会社中南海トレーディングコーポレーションの武石氏に対し「LE MANS」ブランドのマフラー200枚についての発注書を2014年5月15日に発行した(乙3及び乙5)。
(3)株式会社中南海トレーディングコーポレーションは、「LE MANS」ブランドのマフラー200枚を生産し、株式会社フィールドハウスに2014年10月10日付で納品した(乙4及び乙5)。
なお、当該マフラーは、乙第6号証に示す通りであり、当該マフラーには、本件商標に係る「LE MANS」ブランドの織ネームと下げ札が付されている。また、株式会社中南海トレーディングコーポレーションは、2014年10月10日付で株式会社フィールドハウスに対し請求書を発行した(乙7)。
(4)そして、株式会社フィールドハウスは、自社と同様にケントジャパン株式会社の関連会社である株式会社ヴァンヂャケットの店舗で当該マフラーを販売させるべく、当該マフラー200枚を2014年10月20日付で株式会社ヴァンヂャケットに納品した、株式会社ヴァンヂャケットの杉本氏は株式会社フィールドハウスに対し受入伝票を発行した(乙8)。
(5)また、株式会社ヴァンヂャケットは、2014年10月20日付で当該マフラー200枚を、自身の店舗である「VAN Base」(乙第9及び10号証参照)に移動した(乙11及び乙12)。そして、株式会社フィールドハウスは、2014年10月31日付で、当該マフラー200枚に係る請求書を株式会社ヴァンヂャケットに送付した(乙13)。
(6)また株式会社株式会社ヴァンヂャケットは、2014年11月に、店舗「VAN Base」で、「LE MANS」ブランドのマフラー22枚を販売した。また株式会社株式会社ヴァンヂャケットは、2014年12月に、店舗「VAN Base」で、「LE MANS」ブランドのマフラー26枚を販売した。また株式会社株式会社ヴァンヂャケットは、2015年1月に、店舗「VAN Base」で、「LE MANS」ブランドのマフラー18枚を販売した。また株式会社株式会社ヴァンヂャケットは、2015年2月に、店舗「VAN Base」で、「LE MANS」ブランドのマフラー14枚を販売した(乙14)。
(7)そして、株式会社ヴァンヂャケットの細野氏は、2015年2月28日に、その時点で残っていたマフラー120枚を店舗「VAN Base」から移動させ(乙15)、株式会社フィールドハウスに返品した(乙16)。
なお、株式会社フィールドハウスは、引き取ったマフラー120枚を、2015年の秋冬に催事場でセール販売するつもりである。
2 以上のとおり、本件商標の商標権者である被請求人から許諾を受けた通常使用権者であるフィールドハウスが、本審判請求の登録前3年以内に日本国内において、その請求に係る指定商品のうち、マフラーについて本件商標を使用している。

第4 当審の判断
1 被請求人の提出に係る乙各号証及び同人の主張によれば、以下の事実を認めることができる。
(1)乙第2号証は、「商標使用権契約書」とされるものであり、2013年12月1日付けで、ケントジャパン株式会社(本件商標権者)を甲、株式会社フィールドハウス(以下「使用者」という。)を乙とし、甲より乙に対し通常使用権を許諾するとの記載があり、期間(第1条)として2013年12月1日?2014年11月30日、本件商標として「LE MANS」、指定商品 第25類「マフラー」、商標登録番号971820号及び本件通常使用権の範囲として日本国とするものである。
(2)乙第3号証は、使用者が株式会社中南海トレーディングコーポレーションに対して2014年5月15日付けで発行した設定納品日を2014年10月10日とする「発注書」であり、客先として、会社名に「(株)ヴァンヂャケット」、ブランド名に「LE MANS」の記載、品番として「LSC-05459」、品名「ルマンラッセルマフラー」、生地「ラッセル、リバーシブル」、ネーム及び下げ札には共に「有」に丸印が付されており、カラー「ネイビー」、発注数欄に「200」、工場単価「920」及び合計単価「184000」の記載があることから、使用者が株式会社中南海トレーディングコーポレーションに対しネーム及び下げ札を有する「LE MANS」ブランドのラッセルマフラーを200本の製作を発注したことが認められる。
(3)乙第4号証及び乙第7号証は、株式会社中南海トレーディングコーポレーションが使用者に平成26年10月10日付けで発行した「納品書」と「請求書」であり、両者とも品名欄に「LSC-05459(LE MANS) ルマンラッセルマフラー」の記載、数量欄に「200」、単価欄に「920」及び金額(税抜・税込)欄に「184000」の記載があり、品名、品番及び数量が使用者が発行した発注書(乙3)と一致する。
(4)乙第5号証は、株式会社中南海トレーディングコーポレーションが使用者あてに発行した2015年5月26日付けの「受注証明書」であるところ、証明内容として「下記の通り、貴社からマフラーの生産を受注しましたことを、証明致します。」の記載の下に、「ブランド名:LE MANS(ルマン)マフラー」、「本数:200本」、「単価:@920円」、「受注日:2014年5月15日」及び「納品日:2014年10月10日」と記載されていることが認められる。
(5)乙第6号証は、撮影日を2015年6月19日に撮影したとするマフラーの写真で有り、該マフラーには「LE MANS」の商標が表示された下げ札及び織りネームが付されていることが認められるところ、この下げ札及び織りネームの表示は、乙第3号証において「ブランド名」として記載された「LE MANS」と同一の文字構成からなるものと認められる。
(6)乙第8号証は、2014年10月20日を発行日とする「受入伝票(受領書)」であり、右上に「No.063929」の記載、右下に「VAN JACKET INC.」の記載、仕入れ先として「(株)フィールドハウス」の記載があり、年式「14」、期「下」、チョップ名「LE MANS」、品目「LSC」、品番「05459」及び計として「200」の記載があり、「左記のとおり受領いたしました。」の表示の下に「10/20 杉本」の署名があることから、株式会社ヴァンヂャケットが使用者から「LE MANS」ブランドの、品目及び品番を「LSC」「05459」とする商品を200個受け入れたことを示すものであり、ブランド名、品目、品番及び数量からすれば、乙第4号証及び乙第7号証の記載とも一致し、また、乙第13号証の「請求書(控)」の専用伝票No.「063929」及び商品名(品目・品番)等とも一致していることが認められる。
(7)乙第9号証は、「VAN JACKET INC.」の「SHOP LIST」を紹介したホームページを打ちだした(2015/06/19)ものであるところ、「SHOP LIST」の記載直下に東京都台東区蔵前所在の「VAN Base」が写真と共に紹介されており、該「VAN Base」が株式会社ヴァンヂャケットの販売店であることが認められる。
(8)乙第11号証は、株式会社ヴァンヂャケットが自社の販売店である「VAN Base」に対し2014年10月20日付けで発行した「移動伝票」であり、FAX番号の横に「000060」、「商品/カラー/サイズコード」の欄に「05459 29 0 LSCLeMans マフラー」及び数量欄に「200」の記載があることから、乙第8号証で受け入れた商品を自社内で移動した記録として、また、乙第12号証は、株式会社ヴァンヂャケットの「倉庫別在庫一覧表」とするもので、倉庫コード/名称に「000060 VANBase」、右上の対象年月に「2014年10月?2014年10月」、倉庫コード範囲に「000060?000060」、商品コード範囲に「05459?05459」及び処理日に「2015/05/25」の記載がある。またその下に表形式により、商品コード/名称の欄に「05459 LSC LeMans マフラー」の記載、前月末在庫の欄に「0」、当月入庫の欄に「200」、当月出庫の欄に「0」及び在庫数の欄に「200」の記載があることから、「VANBase」に自社内で移動した商品の2014年10月における在庫状況の記録と認められる。
(9) 乙第14号証は、乙第12号証と同じ様式による「倉庫別在庫一覧表」4枚からなり、それぞれ対象年月を「2014年11月?2014年11月」、「2014年12月?2014年12月」、「2015年101月?2015年01月」及び「2015年102月?2015年02月」とするものであり、当月出庫及び在庫数の欄において、2014年11月の当月出庫「22」及び在庫数「178」、2014年12月の当月出庫「26」及び在庫数「152」、2015年01月の当月出庫「18」及び在庫数「134」並びに2015年02月の当月出庫「14」及び在庫数「120」と記載されている、他の記載は処理日を含め乙第12号証と同じ記載であることから、乙第12号証と同様に、その後の在庫状況の記録と認められる。
2 上記1及び被請求人の主張を総合すれば、次のとおり認めることができる。
(1)本件商標の通常使用権者について
2013年12月1日付けで、本件商標権者は、使用者に対し、商品「マフラー」について、期間を2013年12月1日ないし2014年11月30日とする本件商標の通常使用権を許諾したことが認められるから、2013年12月1日以降の本件審判の要証期間において、使用者は、本件商標の通常使用権者であるということができる(乙2)。
(2)使用商標、使用商品及び使用時期について
ア 使用者は、株式会社中南海トレーディングコーポレーションに対し2014年5月15日を発注日、2014年10月10を設定納品日とする発注書(乙3)をもって、株式会社ヴァンヂャケットを客先とし「LE MANS」をブランド名とするマフラーを200本発注した。
イ 株式会社中南海トレーディングコーポレーションは、発注書において指定された品番をLSC-05459とする「LE MANS」ブランドのマフラー200本を2014年10月10日に使用者に納品し(乙4及び乙5)、使用者はその10日後の2014年10月20日に株式会社ヴァンヂャケットに納品し(乙8)、その代金を平成26年10月31日に10月20日に専用伝票No.063929(乙8記載の数字に対応)で納品された商品名「LSC05459」とする商品200個の代金を請求(乙13)したことが認められる。
ウ 株式会社ヴァンヂャケットは、使用者から2014年10月20日にチョップ(ブランド)名「LE MANS」、品目「LSC」及び品番「05459」とする商品「ラッセルマフラー」を受け入れ(乙4、乙7及び乙8)、自社のショップである「VAN Vase」に商品コード「05459」、商品名「LSCLeMans マフラー」として200本の商品を移動(搬入)させており(乙9及び乙11)、乙第12号証及び乙第14号証の入庫、出庫及び在庫数の欄からすれば、株式会社ヴァンヂャケットのショップである「VAN Vase」において、2014年10月ないし2015年2月の間、チョップ(ブランド)名を「LE MANS」とするマフラーが販売のために店頭に展示されていたことが推認できる。
エ また、使用者から株式会社中南海トレーディングコーポレーションへの発注書(乙3)におけるブランド名「LE MANS」の記載、ネーム及び下げ札の欄の「有」に丸印が共に付されていたこと、商品名を「(LE MANS)」の「ルマンラッセルマフラー」とする納品書等(乙4、乙5及び乙7)、チョップ名を「LE MANS」とする受入伝票及び要証期間外ではあるが「LE MANS」の商標が付されたマフラーの写真(乙6)を併せみれば、使用者は株式会社ヴァンヂャケットに対し「LE MANS」の商標を付した商品「マフラー」を販売したことが推認されるところ、該商標は、その文字構成に照らし、本件商標と社会通念上同一の商標と認められる。
オ 以上によれば、被請求人が提出した証拠によって、通常使用権者である使用者は、要証期間内である平成26年10月20日に、本件審判の請求に係る指定商品中、「マフラー」に本件商標と社会通念上同一の商標を付して譲渡したといえ、これは、商標法第2条第3項第2号にいう行為に該当するものと認められる。
3 請求人の主張について
請求人は、本件審判請求前の使用調査の内容から、また、乙第2号証の「商標使用権契約書」の記載内容が、他の契約書とほぼ同じであることから、その信憑性は疑わしく、他の乙号証からも「マフラー」の取引がされたことを意味するのみで、本件商標が「マフラー」に使用された証拠とはならず、商標権者、使用者及び株式会社ヴァンヂャケットが関連会社であることも含め、その信憑性は疑わしく本件商標を使用していたものとは認められない旨の主張をしている。
しかしながら、「商標使用権契約書」の内容が他の契約書とほぼ同じことをもって真性のものではないとする証拠にはならないし、調査会社による報告書の存在や、請求人指摘の3者が関連会社であるとしても、関連会社間での取引自体、通常あり得るものであり、その他具体的な証拠が無い限り、そのことのみもって提出された乙各号証の信憑性がないとはいえなし、提出された乙号証を併せみれば、使用者と株式会社ヴァンヂャケットにおいて、商品「マフラー」に本件商標と社会通念上同一の商標を使用していたと推認できることは、上記2のとおりであるから、請求人の主張は採用することができない。
この点について、請求人は、証拠の内容をほぼ共通にし、争点を同じくする関連事件(平成28年(行ケ)10086(取消2014-300901)の判決をまって判断すべきであると述べ、甲第9号証ないし甲第11号証を提出しているが、該関連事件の判決においても、商標法第50条所定の使用の事実が認められるとして、事件が確定していることからすれば、本件審判の結論に影響するものではなく、請求人の主張は採用することができない。
4 まとめ
以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、通常使用権者がその請求に係る指定商品中の「マフラー」について、本件商標と社会通念上同一の商標を使用していたことを証明したものということができる。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2016-12-16 
結審通知日 2016-12-21 
審決日 2017-01-05 
出願番号 商願昭42-4237 
審決分類 T 1 32・ 1- Y (Y25)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 酒井 福造
特許庁審判官 堀内 仁子
今田 三男
登録日 1972-07-13 
登録番号 商標登録第971820号(T971820) 
商標の称呼 ルマン、レマンス、マン 
代理人 特許業務法人はなぶさ特許商標事務所 
代理人 藤沢 昭太郎 
代理人 藤沢 則昭 

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