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審決分類 審判 判定 その他 属さない(申立て不成立) W36
管理番号 1328085 
判定請求番号 判定2016-600098 
総通号数 210 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標判定公報 
発行日 2017-06-30 
種別 判定 
2016-12-07 
確定日 2017-05-12 
事件の表示 上記当事者間の登録第5813476号商標の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 被請求人が、「建築検査技術者を認定するための講習会の開催及びその資格者称号の認定・付与」の役務について使用するイ号標章は、登録第5813476号商標の商標権の効力の範囲に属しない。
理由 第1 本件商標
本件登録第5813476号商標(以下「本件商標」という。)は、「ハウスインスペクター」の文字を標準文字で表してなり、平成27年6月18日に登録出願され、第36類「建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介,建物又は土地の鑑定評価,土地の管理,土地の貸借の代理又は媒介,土地の貸与,土地の売買,土地の売買の代理又は媒介,建物又は土地の情報の提供」、第37類「建築工事,改修工事,建築一式工事,建築物の工事監理,建築物の保守及び点検,建設工事・建築工事に関する助言,建築設備の運転・点検・整備」及び第42類「住宅の性能に関する調査及び評価,建築物の設計,建築物の耐震性・劣化・害虫被害の調査及び診断,他人による建築工事の適切性の調査及び診断,地質・地盤の調査,建築又は都市計画に関する研究」を指定役務として、同年12月18日に設定登録されたものである。

第2 イ号標章
被請求人が、「建築検査技術者を認定するための講習会の開催及びその資格者称号の認定・付与」の役務について使用するイ号標章は、「ハウスインスペクタースペシャリスト」の文字からなるものである。
注:なお、上記役務については、合議体が後記「第3」の「3 イ号標章の説明」をもとに特定した。

第3 請求人の主張
請求人は、被請求人が、「建築検査技術者を認定するための講習会の開催及びその資格者称号の認定・付与」の役務について使用するイ号標章は、本件商標の商標権の効力の範囲に属する、との判定を求め、その理由を次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第3号証を提出した。
1 判定請求の理由の要旨
本件商標は、「ハウスインスペクター」の文字よりなるものであるから、イ号標章は、本件商標を含む文字列から成り立っている。また「スペシャリスト」は和訳で専門家であり、観念的な違いはない。本件商標にかかる指定役務中、第36類、第37類及び第42類とイ号標章の使用役務とは類似の役務である。
2 判定請求の必要性
請求人は、本件商標の商標権者であるが、被請求人が役務にイ号標章の使用をしていること(甲1)について、平成28年11月24日、被請求人に対し本件商標の商標権を侵害するものであり、使用の中止を行うよう申し入れを行った(甲2)。その後、被請求人は、本件商標は認容できず、また請求人の行う役務も「まやかし的」な可能性があり、状況によって社会に告発する旨の回答を郵送により受け取った(甲3)。
以上により、請求人は、被請求人と話し合いによる解決は困難と判断し、本件商標の商標権の効力の範囲について専門的知識をもって中立的立場から判断される判定を求め、その判定結果を訴訟及び警察への告訴資料にすることとした。
3 イ号標章の説明
被請求人は、同人所有のホームページ上に「ハウスインスペクタースペシャリスト認定制度」を告知し、同認定講習会を開講するとともに受講者を募り「ハウスインスペクタースペシャリスト」の資格者称号の認定及び付与を行っている。同資格のあらましは、「既存住宅等に関わる検査業務に携わる検査技術者が契約関係書類・設計図書関係図面・基礎工事・躯体工事・防水工事・断熱工事・設備工事に関して、正しい知識や設計、正しい施工方法を習熟し、適切な検査、問題点の指摘、是正指導を行える建築検査技術者を認定する制度です。」となっている。
イ号標章の使用開始時期は、請求人の知り得るところでないが、被請求人の法人設立に関する記述によると平成22年5月6日頃と推定される。
イ号標章の周知の度合いに関しては、被請求人が同法人のホームページ(http://www.ajia.or.jp/)によりインターネット上に周知を行っているものの正会員リスト、賛助会員リストともに「ただいま準備中です。」(甲1)としており、被請求人の業務を鑑みれば登録者を需要者に知らしめるべきところ、現状において登録者の公表は無く需要者にイ号標章の周知はされていなかったものと解される。
請求人は、本件商標を一般社団法人全日本ハウスインスペクター協会に貸与し、同協会は平成28年9月23日に国土交通省の外郭団体である国立建築開発法人建築研究所長期優良住宅化リフォーム評価室より、国土交通省既存住宅インスペクションガイドラインに基づく長期優良住宅化リフォーム推進事業におけるインスペクション講習団体として、同協会の講習修了者に本件商標である「ハウスインスペクター」の認定をおこなっている。一般社団法人全日本ハウスインスペクター協会においては、今後、さらに本件商標資格者の育成に努めるとしており、需要者にとってイ号標章は本件商標とさらに混同される状況である。
4 イ号標章が商標権の効力の範囲に属するとの説明
本件商標は、「ハウスインスペクター」の文字からなるものであるから、「ハウスインスペクタースペシャリスト」は、本件商標に「スペシャリスト」の文字列を加えたものである。「スペシャリスト」は和訳が専門家であるから、本件商標と観念的な違いはない。また、本件商標にかかる指定役務は、第36類、第37類及び第42類であるから、前記3のイ号標章の説明より、本件商標を侵害しているものといえる。
5 むすび
以上のとおり、被請求人が「ハウスインスペクタースペシャリスト」に使用するイ号標章は、本件商標の商標権の効力の範囲に属するものである。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、上記第3の請求人の主張に対して、何ら答弁するところがない。

第5 当審の判断
1 本件商標とイ号標章の類似性について
本件商標は、「ハウスインスペクター」の文字からなるところ、該文字に相応し、「ハウスインスペクター」の称呼を生じ、該文字は、辞書等に載録されている成語ではないから、これより特定の観念を生じないものである。
他方、イ号標章は、「ハウスインスペクタースペシャリスト」の文字からなるところ、該文字に相応し、「ハウスインスペクタースペシャリスト」の称呼を生じ、該文字は、辞書等に載録されている成語ではないから、これより特定の観念を生じないものである。
また、イ号標章の「スペシャリスト」の文字部分は、「専門家」等の意味を有する語であり(株式会社岩波書店「広辞苑第六版」)、「スペシャリスト」の文字は、「専門の知識を有する者」程の意味を表すものとして一般的に使用されているものであるから、該文字部分は、自他役務識別標識としての機能がないか非常に弱いものである。
そうすると、その構成中の、「ハウスインスペクター」の文字部分は、自他役務識別標識としての機能を有する部分であるといえるものであって、これより、「ハウスインスペクター」の称呼をも生じるものである。また、該文字部分は、辞書等に載録されている成語ではないから、これよりは、特定の観念を生じないものである。
そこで、本件商標とイ号標章の類否について検討してみれば、外観においては,両者は、「スペシャリスト」の文字の有無に差異を有するものであるが、「ハウスインスペクター」の文字を共通にするから、外観上、両者は近似するものである。
また、称呼においては、両者は、共に「ハウスインスペクター」の称呼を生じるものであるから、称呼上、同一である。
さらに、観念においては、両者は、共に特定の観念を生じないものであるから、観念上、両者を比較することができない。
してみれば、両者は、観念において比較できないとしても、外観が近似し、称呼が同一であるから、類似の商標というべきである。
2 本件商標の指定役務とイ号標章の使用役務の類似性について
(1)本件商標の指定役務について
本件商標の指定役務は、前記第1に記載のとおり、第36類、第37類及び第42類に属する役務であって、主に、建物の管理、貸与及び売買、土地の管理、貸与及び売買、建物又は土地の情報の提供並びに建築工事、建築物の工事監理及び保守及び点検並びに住宅の性能に関する調査及び評価、建築物の設計、建築物の耐震性・劣化・害虫被害の調査及び診断等の役務である。
(2)イ号標章の使用役務について
請求人が提出した証拠によれば、イ号標章を使用している役務は、以下のとおりである。
ア 甲第1号証は、被請求人のホームページである。
これには、1葉目に、「AJIAとは」の見出しの下、「ハウスインスペクションに関する技術や手法などの標準化、指導並びに普及、及び人材の育成、認証、評価などの事業、並びに住宅履歴情報システムの普及活動を行うことにより、国民住生活の安心・安全の確保と、地域社会の健全な発展に寄与することを目的として」の記載がある。
また、「ハウスインスペクタースペシャリストの育成・養成」の項に、「新築住宅、及び既存住宅などの建築検査業務に関わる高度な専門知識を有し、適正な問題点の指摘、是正指導ができる建築検査技術者を育成・認定します。」の記載がある。
3葉目に、「ハウスインスペクタースペシャリスト」の見出しの下、「ハウスインスペクタースペシャリスト認定制度について」の項に、「住生活者の期待に応えた住宅・建築物(以下「住宅等」という)並びに既存住宅・既存建築物(以下「既存住宅等」という)の普及を図り、もって安心安全な住宅等・既存住宅の推進に寄与し、住生活水準の向上と住宅産業の振興に資する一環として、住宅等の新築・増築・改築(以下、「建築」という)・改修、並びに既存住宅等に関わる検査業務に携わる検査技術者が、契約関係書類・設計図書関係図面・基礎工事・躯体工事・防水工事・断熱工事・設備工事に関して、正しい知識や設計、正しい施工方法を習熟し、適切な検査、問題点の指摘、是正指導を行える建築検査技術者を認定する制度です。」の記載、また、「HISとは、ハウスインスペクタースペシャリスト(House Inspector Specialist)の略語で建築検査施術者のことです。HISの資格には、次の2種類があり、HISとHIS-Mは、その認定講習の内容が異なります。」の記載がある。
さらに、3葉目の上部には、イ号標章が表示されている。
4葉目に、「HIS認定登録のための養成講習会(申請期間、講習時期と講習期間)の見出しの下、「養成講習会」の項に「HIS認定講習のための養成講習会を開催します。受験される方は、受講をお勧めします(任意)。」の記載がある。
イ 上記アの内容、例えば「建築検査技術者を育成・認定します。」、「建築検査技術者を認定する制度です。」及び「HIS認定講習のための養成講習会を開催します。」等の記載によれば、被請求人がイ号標章を使用して提供している役務は、「建築検査技術者を認定するための講習会の開催及びその資格者称号の認定・付与」であると認められる。
(3)本件商標の指定役務とイ号標章の使用役務の類否
本件商標の指定役務は、建物の管理、貸与及び売買、土地の管理、貸与及び売買、建物又は土地の情報の提供並びに建築工事、建築物の工事監理及び保守及び点検並びに住宅の性能に関する調査及び評価、建築物の設計、建築物の耐震性・劣化・害虫被害の調査及び診断等の役務であるところ、イ号標章の使用に係る役務は、「建築検査技術者を認定するための講習会の開催及びその資格者称号の認定・付与」であるから、両役務は、取引者、需要者の範囲が異なり、同一の事業者が提供する役務ではないものである。
さらに、業種、業務や事業者を規制する法令等を比較して、総合的に考慮しても、類似するものということはできないものである。
3 イ号標章が本件商標の商標権の範囲に属するかについて
前記1のとおり、本件商標とイ号標章とは類似する商標というべきものである。
しかしながら、イ号標章の使用に係る役務と本件商標の指定役務とは、上記2に記載のとおり、類似しない役務であるから、イ号標章が本件商標の商標権の効力の範囲に属するものということはできない。
4 むすび
以上のとおり、被請求人がイ号標章を使用する役務は「建築検査技術者を認定するための講習会の開催及びその資格者称号の認定・付与」であり、本件商標の指定役務とは非類似の役務であるから、被請求人が使用するイ号標章は、本件商標権の効力の範囲に属しないものである。
よって、結論のとおり判定する。
判定日 2017-05-02 
出願番号 商願2015-62644(T2015-62644) 
審決分類 T 1 2・ 9- ZB (W36)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 安達 輝幸 
特許庁審判長 井出 英一郎
特許庁審判官 山田 正樹
榎本 政実
登録日 2015-12-18 
登録番号 商標登録第5813476号(T5813476) 
商標の称呼 ハウスインスペクター 

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