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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W03
審判 全部申立て  登録を維持 W03
審判 全部申立て  登録を維持 W03
審判 全部申立て  登録を維持 W03
管理番号 1327181 
異議申立番号 異議2016-685023 
総通号数 209 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2017-05-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-09-26 
確定日 2017-03-08 
異議申立件数
事件の表示 国際登録第1243375号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 国際登録第1243375号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件国際登録第1243375号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、2014年9月1日にFranceにおいてした商標の登録出願に基づくパリ条約第4条による優先権を主張して、2015年(平成27年)2月13日に国際商標登録出願、第3類「Perfumes,toilet waters;bath and shower gels and salts for non-medical use;toilet soaps;body deodorants;cosmetics,particularly face,body and hand creams,milks,lotions,gels and powders;tanning and after-sun milks,gels and oils(cosmetics);make-up products;shampoos;gels,foams,balms and aerosol products for hair care and hair styling;hair sprays;hair dyes and bleaching products;hair waving and setting products;essential oils.」を指定商品として、平成28年5月31日に登録査定がされ、同年7月29日に設定登録されたものである。
第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が本件商標の登録異議の申立ての理由において引用する商標は、以下の1ないし5に示すとおりのものであり、いずれも現に有効に存続しているもので ある。
1 登録第1138863号商標(以下「引用商標1」という。)は、「エリクシール」の文字を横書きしてなり、昭和47年11月16日に登録出願、第4類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同50年7月31日に設定登録され、その後、4回にわたり商標権の存続期間の更新登録がされ、さらに、平成17年4月20日に、その指定商品を第3類「せっけん類,歯磨き,化粧品,植物性天然香料,動物性天然香料,合成香料,調合香料,精油からなる食品香料,薫料」とする指定商品の書換登録がされたものである。
2 登録第1822150号商標(以下「引用商標2」という。)は、「エリクシール」の文字と「ELIXIR」の文字とを上下二段に書してなり、昭和57年3月26日に登録出願、第4類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同60年11月29日に設定登録され、その後、3回にわたり商標権の存続期間の更新登録がされ、さらに、平成18年1月18日に、その指定商品を第3類「せっけん類,歯磨き,化粧品,香料類」とする指定商品の書換登録がされたものである。
3 登録第1881500号商標(以下「引用商標3」という。)は、別掲2のとおりの構成からなり、昭和58年3月2日に登録出願、第4類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同61年8月28日に設定登録され、その後、3回にわたり商標権の存続期間の更新登録がされ、さらに、平成18年6月14日に、その指定商品を第3類「せっけん類,歯磨き,化粧品,植物性天然香料,動物性天然香料,合成香料,調合香料,精油からなる食品香料,薫料」とする指定商品の書換登録がされたものである。
4 登録第4671440号商標(以下「引用商標4」という。)は、「ELIXIR」の文字を標準文字で表してなり、平成14年7月15日に登録出願、第3類「化粧品,せっけん類,香料類,歯磨き」を指定商品として、同15年5月16日に設定登録され、その後、同25年3月12日に、商標権の存続期間の更新登録がされたものである。
5 登録第5768709号商標(以下「引用商標5」という。)は、「ELIXIR」の文字を横書きしてなり、平成26年12月4日に登録出願、第3類「せっけん類,化粧品,香料,薫料,歯磨き」、第5類「サプリメント」、第21類「化粧用具,家庭用手動式美容マッサージローラー」、第30類「菓子,茶,紅茶飲料,コーヒー,ココア,コーヒー豆,調味料」、第32類「清涼飲料,果実飲料,飲料用野菜ジュース,乳清飲料」及び第44類「美容,理容,あん摩・マッサージ及び指圧,美容情報の提供,化粧品の使用法に関する情報の提供,栄養の指導,健康診断」を指定商品及び指定役務として、同27年6月5日に設定登録されたものである。
以下、上記引用商標1ないし引用商標5をまとめて「引用商標」という場合がある。
第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、取り消されるべきであると申し立て、その理由を要旨以下のとおり述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第38号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、別掲1のとおり、「L’ELIXIR D’ORIENT」の文字を横書きしてなるところ、その構成中、「L’ELIXIR」の文字と「D’ORIENT」の文字との間にはスペースが配されており、また、その構成全体が冗長である上、当該「D’ORIENT」の文字が、「東洋」程度を意味する極めて平易なフランス語であって、本件商標の指定商品との関係では、その商品の産地、販売地等を示すにすぎないものであることをも考慮すると、「L’ELIXIR」の文字と「D’ORIENT」の文字とを常に一体のものとして把握しなければならないとする特段の事由は存在しない。
このような状況において、商標法第4条第1項第11号に係る商標審査基準では、需要者の間に広く認識された他人の登録商標と他の文字等を結合した商標は、たとえ、それが構成上まとまりよく一体に表されていたとしても、当該他人の登録商標と類似するのが原則である旨明示されている。
そして、後述するように、引用商標が、本件商標の国際商標登録出願の日前に需要者の間に広く認識されていたことは疑いようのない事実である。
そうすると、申立人の使用に係る引用商標にフランス語の定冠詞「Le」の縮約形である「L’」と商品の産地、販売地を表示するにすぎない「D’ORIENT」の文字とを付加した本件商標は、取引者、需要者をして、その構成中の「ELIXIR」の文字部分のみが抽出されやすく、その構成中に引用商標と称呼を同一にする「ELIXIR」の文字が含まれているという事実が容易に理解できる以上、引用商標と全体として同一又は類似する商標である。
また、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品とは、同一又は類似のものである。
したがって、本件商標は、引用商標との関係において、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたといえるものである。
2 商標法第4条第1項第15号について
(1)申立人について
申立人は、1872年に創業された我が国初の洋風調剤薬局を前身とし、1927年に株式会社として設立された、我が国の最大手かつ世界有数の化粧品メーカーである(甲7)。
申立人の事業内容は、多岐にわたるものであるが、その中でも化粧品、化粧用具、トイレタリー製品、理美容製品、食品及び医薬部外品の製造、販売が中心となっており、百貨店、ドラッグストア、薬局、コンビニエンスストア、各種量販店、インターネット等の多様なチャネルを介して提供され、需要者に購入されている(甲8)。
(2)「ELIXIR/エリクシール」の著名性について
ア 申立人は、需要者の年齢や使用目的に適合させた多数のブランドを保有し、そのブランドの下に事業を展開しており(甲9)、その中でも代表的なブランドである「ELIXIR/エリクシール」(以下「ELIXIRブランド」という。)は、長年にわたり、申立人の主力ブランドの一つとして確固たる地位を築いている。
イ 申立人がELIXIRブランドによる事業展開を開始したのは1983年であり、同ブランドは、化粧水、乳液、クリーム、ジェル、洗顔料、化粧用マスク、おしろい、ファンデーション、アイシャドー、アイブローペンシル、ほほ紅、口紅、アイライナー、マスカラ等、化粧品全般の商品群から構成されるものであった(甲10の1ないし甲11の19)。
その後、ELIXIRブランドは、瞬く間に申立人の主力ブランドに成長し、現在に至るまで、申立人の事業戦略上、中核をなす最も重要なブランドの一つに位置付けられており、同ブランドに係る各製品には、引用商標が付されている(甲2の1ないし甲6の2、甲10の1ないし甲11の19)。
ウ 申立人は、ELIXIRブランドの市場投入前から、多額の宣伝広告費及び販売促進費を投じて、積極的な宣伝活動を行っている(甲12ないし甲14、甲21)。
具体的には、街頭や店頭での試供品の提供及びチラシの配布、一般日刊新聞紙及びファッション雑誌への広告掲載、街頭の広告スペースへのポスター掲載、有名女優を起用したテレビコマーシャル等であり、これら各種媒体を介した申立人の宣伝広告により、ELIXIRブランド及び同ブランドに係る製品は、需要者のみならず、一般の公衆にも強く印象付けることに成功しているといえる(甲15ないし甲21)。
エ 引用商標が付されたELIXIRブランドに係る製品の総販売額は、市場投入した1983年から2010年度までの27年間で9,900億円を超え、その総販売数量も5億個以上となっている(甲13、甲22ないし甲25)。
なお、上記総販売額及び総販売数量のうち、2006年度から2010年度までのものについては、ELIXIRブランドを基幹とする派生ブランドである「ELIXIR SUPERIEUR/エリクシール シュペリエル」、「ELIXIR PRIOR/エリクシール プリオール」及び「ELIXIR WHITE/エリクシール ホワイト」なるブランドに係る製品の販売額及び販売数量を含んでいる。
オ 上記したELIXIRブランドに係る製品の総販売数量によれば、当該製品の市場占有率は、当然に高いものであると推測されるところ、現に1980年代後半から2000年代までの間、スキンケアやメイクアップを中心とする化粧品の幅広いカテゴリーにおいて、上位ブランドとしての水準を保ち続け、定番的なロングセラーブランドとしての地位を確立している(甲26の1ないし甲26の13)。
また、申立人が、1990年代後半から2010年度までの間に、調査会社に依頼して行った、15歳から59歳までの女性を対象とした市場調査では、保湿や美白のスキンケアの分野において、ELIXIRブランドに係る製品の多数が、販売金額及び販売数量で高いシェアを占めているとの結果が示されている(甲27の1ないし甲27の3)。
カ 上述したとおり、申立人が、宣伝広告等により、ELIXIRブランドのイメージの普及、定着及びその周知に努めた結果、同ブランドは、申立人に係る事業のみならず、化粧品業界全体を牽引する代表的なブランドとして認知されているといえるものであり、化粧品分野で確固たる地位を築いていることは、各種媒体における紹介内容(甲28の1ないし甲28の3)からもうかがい知れる。
さらに、引用商標、特に、引用商標4は、申立人が「化粧品」について現在まで継続的に使用しており、取引者、需要者の間に広く認識されていることが明らかである(甲29)。
したがって、ELIXIRブランドは、化粧品業界における著名ブランドの一つであり、また、同ブランドに係る製品に付される引用商標も、同ブランドの著名性とあいまって、申立人の業務に係る商品「化粧品」を表示する著名な商標として認識されるに至っているものである。
(3)ELIXIRブランドの派生ブランドについて
申立人は、自己の著名なELIXIRブランドの更なる発展を図るべく、「ELIXIR」の文字を含む多数の商標について、登録出願をし、商標権を取得している。
そして、申立人が、いわゆるメガブランド戦略の一環として、2006年に「ELIXIR SUPERIEUR/エリクシール シュペリエル」ブランドを投入し、その後、2008年11月に「ELIXIR PRIOR/エリクシール プリオール」ブランドを、2010年2月に「ELIXIR WHITE/エリクシール ホワイト」ブランドを、それぞれ立ち上げ、新聞、雑誌、テレビ、インターネットを介した積極的かつ効果的な宣伝広告を行ったことにより、これらのブランドは、それぞれのブランドに係る製品に付される商標とともに、十分な認知が図られた(甲30の1ないし甲35の5)。
(4)出所の混同のおそれについて
ア 引用商標が著名商標といい得ることは、上記(2)のとおりであり、また、異議決定(異議2009-900115)においては、引用商標と同一の商標について「申立人の使用する著名商標」との認定がされており(甲36の2)、さらに、「日本有名商標集」等においては、我が国の有名・周知商標として紹介されている(甲37の1ないし甲37の3)。
イ 本件商標のように、他人の著名な商標と完全に同一の文字列を構成中に含んでいることが明らかな商標については、商標法第4条第1項第15号に係る商標審査基準に照らせば、出所の混同が生ずるおそれがあることを前提として、このような前提が覆されるべき例外的な事由が存在するか否かという観点から、同号の該当性を判断すべきといえる。
そこで、本件商標について、引用商標との関係において、上記例外的な事由があるか否か検討すると、引用商標を構成する「ELIXIR」の文字及び「エリクシール」の文字が既成の語の一部となっているという事実が存在しないことは、明らかである。
また、本件商標は、冗長な構成であるから、その構成上、「L’ELIXIR」の文字と「D’ORIENT」の文字とに分離して認識され得るものである上、当該「L’ELIXIR」の文字中の「ELIXIR」の文字列の前に「’」の記号が配されていることをも考慮すると、簡易迅速を尊ぶ取引の場においては、「L」のアルファベットとの結合性が否定され、「ELIXIR」の文字列のみが印象付けられやすいものである。
さらに、本件商標の実際の使用態様は、本件商標の語頭部にある「L’」をあえて除いた「ELIXIR D’ORIENT」であり(甲38)、「ELIXIR」の文字が取引者、需要者に着目されやすい態様での表記となっているところ、これは、本件商標権者においても、「ELIXIR」の文字を一つの独立した構成要素として、又は、「L’」が本件商標の識別性に何ら影響を与えることのない要素として捉え、本件商標の構成中の「L’ELIXIR」の文字が「L」と「ELIXIR(Elixir)」の2要素からなると自覚していることを示すにほかならない。
そうすると、実際の取引において、著名商標たる「ELIXIR」を構成中に含んでいると一見して容易に把握され、かつ、その使用者もその事実を自覚している本件商標について、その指定商品との関係で出所の混同のおそれがないことが明白であると認められる特段の事由が存在しないことは、明らかである。
加えて、申立人が、上記(3)のとおり、ELIXIRブランドの派生ブランドとして、「ELIXIR SUPERIEUR」、「ELIXIR PRIOR」及び「ELIXIR WHITE」といった、「ELIXIR」の文字の後部に何らかの文字を配してなる標章を採択していたことからすれば、本件商標をその指定商品に使用した場合、申立人の業務に係る商品又は申立人の著名なELIXIRブランドを基幹とする新たな派生ブランドであるかのように、その出所について混同を生じさせるおそれがあることは、明らかである。
ウ 上記ア及びイによれば、本件商標は、その構成態様及び実際の使用態様から、著名商標たる引用商標と同一の文字列を含んでいることが瞬時に認識されるものであるから、本件商標をその指定商品に使用した場合、その商品が申立人の業務に係るもの、あるいは、申立人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その出所について混同を生じさせるおそれがあることは、明らかである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。
3 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当し、商標登録を受けることができないものであるから、その登録は、同法第43条の2第1号により、取り消されるべきものである。
第4 当審の判断
1 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標
ア 本件商標は、別掲1のとおり、「L’ELIXIR」の文字と「D’ORIENT」の文字とを組み合わせて横書きしてなるものであるところ、本件商標を構成する各文字は、同じ大きさ及び書体の全角で、等間隔に表されているものであり、上記「L’ELIXIR」の文字と「D’ORIENT」の文字との間に存する間隙も、半角程度にすぎないものであるから、本件商標は、外観上、その構成全体がまとまりよく一体的なものとして表されているものであって、上記両文字のいずれかが独立して看者の注意を強くひくように表されているものということはできない。
また、本件商標を構成する「L’ELIXIR」及び「D’ORIENT」の各文字は、いずれも特定の意味合いを想起させる既成の語とは認められず、その構成全体から生じると認められる「レリクシールドリエント」の称呼も、よどみなく一連に称呼し得るものである。
そうすると、本件商標は、その構成全体をもって、一種の造語を表したものと看取、理解されるものであり、「レリクシールドリエント」の称呼のみを生じるものであって、特定の観念を生じないものである。
イ 申立人は、本件商標について、「L’ELIXIR」の文字と「D’ORIENT」の文字との間にスペースがあり、かつ、その構成全体が冗長である上、当該「D’ORIENT」の文字が、本件商標の指定商品との関係において、商品の産地、販売地を示すにすぎないから、上記両文字を常に一体のものとして把握しなければならない特段の事由は存在しない旨主張する。
しかしながら、本件商標は、上記アのとおり、外観上、その構成全体がまとまりよく一体的なものとして表されているものであるし、その構成中の「D’ORIENT」の文字が商品の産地、販売地を表したものと認識されるとみるべき事実も見当たらない(商品の産地、販売地を示すにすぎないとすることにつき、申立人は、何ら証左を提出していない。)。
また、申立人は、申立人の使用に係る引用商標にフランス語の定冠詞「Le」の縮約形である「L’」と商品の産地、販売地を表示するにすぎない「D’ORIENT」の文字とを付加した本件商標は、取引者、需要者をして、その構成中の「ELIXIR」の文字部分のみが抽出されやすく、その構成中に引用商標と称呼を同一にする「ELIXIR」の文字が含まれているという事実が容易に理解できる旨主張する。
しかしながら、上記「L’ELIXIR」の文字中にある「L’」は、フランス語の文法上、冠詞「Le」の母音字「e」を省略して代わりに「’」(アポストロフ)を表示し、後ろに来る語と結び付けて1つの単語として称呼するもの(エリズィオン)であるから、フランス語の文法を理解している者であれば、当該「L’ELIXIR」の文字から「L’」を分離して「ELIXIR」の文字部分のみを1つの単語として認識するということはないというべきであるし、また、フランス語の文法を理解していない者であっても、当該「L’ELIXIR」の文字は、上記アのとおり、それを構成する各文字が、同じ大きさ及び書体の全角で、等間隔に表されているものであるから、たとえ、「L」と「E」との間に「’」(アポストロフ)があるからといって、そのことをもって、「L’」と「ELIXIR」とを分離して看取するとはいい難く、まして、「ELIXIR」の文字部分のみに着目し、それを抽出するとはいうことができない。
そして、本件商標の構成中の「D’ORIENT」の文字が商品の産地、販売地を表したものとして認識されないことは、既述のとおりである。
してみれば、申立人による上記各主張は、いずれも採用することができない。
(2)引用商標
ア 引用商標1
引用商標1は、前記第2の1のとおり、「エリクシール」の文字を横書きしてなるところ、該文字は、辞書類に載録された既成の語ではないことからすれば、一種の造語として看取、理解されるものである。
してみれば、引用商標1は、「エリクシール」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
イ 引用商標2
引用商標2は、前記第2の2のとおり、「エリクシール」の文字と「ELIXIR」の文字とを上下二段に書してなるところ、その構成中、上段に位置する「エリクシール」の文字は、引用商標1における場合と同様に、一種の造語として看取、理解されるものである。
また、引用商標2の構成中、下段に位置する「ELIXIR」の文字は、「不老長寿の薬、万能薬」などといった意味を有する英語(「グランドセンチュリー英和辞典 第2版」(第9刷)、2008年12月20日発行)ではあるものの、我が国においてなじみがあるとまではいい難いものであるから、一種の造語として看取、理解されるとみるのが相当である。
さらに、引用商標2は、上記のとおり、「エリクシール」の文字と「ELIXIR」の文字とを上下二段に書してなるものであり、その構成態様上、上段に位置する「エリクシール」の文字が、下段に位置する「ELIXIR」の文字の読みを表したものとして認識されるといえる。
してみれば、引用商標2は、「エリクシール」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
ウ 引用商標3
引用商標3は、別掲2に示すとおりの構成態様からなるものであるところ、申立人の主張及び同人の提出に係る証拠方法によれば、申立人は、自己の製造、販売に係る「ELIXIR/エリクシール」と称する化粧品について、少なくとも1984年から1999年までの間、引用商標3と同一と認められる商標を使用していたことが認められる。また、申立人は、同期間において、多額の費用を投入して、当該化粧品についての宣伝広告を行っており、その売上げに係る金額及び数量も相当数に及んでいたことが認められる。
そうすると、引用商標3は、化粧品の取引者、需要者においては、申立人の製造、販売に係る「ELIXIR/エリクシール」と称する化粧品について使用される商標として、一定程度認識されていたと推認される。
これを踏まえて、引用商標3をみるに、その構成中の「X」の文字の前後には、等間隔の位置に同一形態の「I」の文字が配されているといえ、かつ、当該「X」の文字の後ろに位置する「I」の文字は、これに続く「R」の文字の縦線部をも兼ねているとみることができるから、その構成全体をもって、「ELIXIR」の欧文字をロゴ化したものと認識されるとみるのが相当である。
そして、「ELIXIR」の文字は、上記イにおいて述べたとおり、一種の造語として看取、理解されるものである。
してみれば、引用商標3は、「ELIXIR」の欧文字をロゴ化したものであって、「エリクシール」の称呼を生じるものであり、また、申立人の業務に係る化粧品に使用される商標として一定程度認識されていたものではあるが、特定の観念を生じるとまではいい難いものである。
エ 引用商標4及び引用商標5
引用商標4及び引用商標5は、それぞれ、前記第2の4及び5のとおり、前者が「ELIXIR」の文字を標準文字で表してなるもの、後者が「ELIXIR」の文字を横書きしてなるものであるところ、両者に共通する「ELIXIR」の文字は、上記イにおいて述べたとおり、一種の造語として看取、理解されるものである。
してみれば、引用商標4及び引用商標5は、いずれも「エリクシール」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
(3)本件商標と引用商標との類否
本件商標は、上記(1)のとおり、「L’ELIXIR」の文字と「D’ORIENT」の文字との組合せからなるものであるのに対し、引用商標は、上記(2)のとおり、「エリクシール」の文字、「ELIXIR」の文字若しくはこれらの文字を二段に書してなるもの又は「ELIXIR」の欧文字をロゴ化したものであるから、両商標は、外観上、明らかに区別できるものである。
また、本件商標から生じる「レクシールドリエント」の称呼と引用商標から生じる「エリクシール」の称呼とは、音の構成及び音数において明らかな差異があるから、明瞭に聴別できるものである。
さらに、本件商標と引用商標とは、いずれも特定の観念を生じないものであるから、観念上、相紛れるおそれはない。
してみれば、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点からみても相紛れるおそれのないものであり、ほかに両商標を類似するとみるべき特段の事情も見いだし得ないから、これらを総合勘案すれば、両商標は、非類似の商標である。
(4)小括
以上によれば、本件商標と引用商標とは、非類似の商標であるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものではない。
2 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)申立人の主張及び同人の提出に係る証拠方法によれば、申立人は、自己の製造、販売に係る「ELIXIR/エリクシール」と称する化粧品について、1983年から2016年までの間、その時期によって実際に使用する商標に差異があるものの、概ね引用商標(特に、引用商標1、引用商標4及び引用商標5)を使用していたことが認められ、また、少なくとも1983年度から2010年度までの間、多額の費用を投入した当該化粧品についての宣伝広告がされ、その売上げに係る金額及び個数も相当数に及んでいたことが認められる。
そうすると、引用商標(特に、引用商標1、引用商標4及び引用商標5)は、遅くとも2010年(平成22年)頃までには、申立人の製造、販売する化粧品を表示する商標として、化粧品の取引者、需要者の間で広く認識されるに至っていたといえ、そのような認識は、本件商標に係る優先権主張の基礎となった商標の登録出願の日(2014年(平成26年)9月1日)及び本件商標の登録査定の日(平成28年5月31日)の時点においても、継続していたと推認される。
しかしながら、本件商標と引用商標とは、上記1(3)のとおり、外観、称呼及び観念のいずれの点からみても相紛れるおそれのないものであり、ほかに両商標を類似するとみるべき特段の事情も見いだし得ない非類似の商標であるから、たとえ、引用商標(特に、引用商標1、引用商標4及び引用商標5)が、上述のとおり、申立人の製造、販売する化粧品を表示する商標として、化粧品の取引者、需要者の間で広く認識されていたとしても、本件商標は、引用商標とは十分に識別できるものとみるのが相当である。
(2)申立人は、商標法第4条第1項第15号に係る商標審査基準を挙げて、本件商標のように、他人の著名な商標と完全に同一の文字列を構成中に含んでいることが明らかな商標については、出所の混同を生ずるおそれがあることを前提として、このような前提が覆されるべき例外的な事由が存在するか否かという観点から、同号の該当性を判断すべきである旨主張する。
しかしながら、本件商標は、上記1(1)のとおり、その構成全体をもって、一種の造語を表したものと看取、理解されるものであり、その構成中の「ELIXIR」の文字部分のみが着目され、抽出されるとはいえないものであるから、たとえ、引用商標が、申立人の製造、販売する化粧品を表示する商標として、化粧品の取引者、需要者の間で広く認識されていたとしても、本件商標に接する取引者、需要者が、本件商標の構成中にある「ELIXIR」の文字部分から引用商標を連想、想起することはないというべきである。
また、申立人は、本件商標の実際の使用態様は、本件商標の語頭部にある「L’」をあえて除いた「ELIXIR D’ORIENT」であって、「ELIXIR」の文字が取引者、需要者に着目されやすい態様で表記されているから、本件商標権者においても、本件商標の構成中の「L’ELIXIR」の文字が「L」と「ELIXIR(Elixir)」の2要素からなると自覚している旨主張する。
しかしながら、申立人が挙げる事例には、その主張どおり、「ELIXIR D’ORIENT」の文字が確認できるが、その標章は、本件商標とは異なるものであるから、その使用をもって、本件商標の実際の使用ということはできず、申立人の主張は、その前提において失当である。
さらに、申立人は、引用商標の使用に係るELIXIRブランドの派生ブランドとして、「ELIXIR」の文字の後部に何らかの文字を配してなる標章を採択していたことからすれば、本件商標をその指定商品に使用した場合、申立人の業務に係る商品又は申立人の著名なELIXIRブランドを基幹とする新たな派生ブランドであるかのように、その出所について混同を生じさせるおそれがある旨主張する。
しかしながら、本件商標は、既述のとおり、その構成中の「ELIXIR」の文字部分のみが着目され、抽出されるとはいえないものであって、当該文字部分から引用商標を連想、想起することのないものであるから、たとえ、申立人が、「ELIXIR」の文字の後に他の文字を配してなる標章を用いた商品を派生的に展開しているとしても、そのことをもって、本件商標をその指定商品に使用した場合に、引用商標との関係において、商品の出所の混同を生ずるおそれがあるとはいえない。
してみれば、申立人による上記各主張は、いずれも採用することができない。
(3)以上によれば、本件商標をその指定商品について使用しても、これに接する取引者、需要者が、引用商標を連想、想起して、該商品が申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように認識することはなく、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものではない。
3 まとめ
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号のいずれにも違反してされたものではないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 【別記】


異議決定日 2017-03-03 
審決分類 T 1 651・ 271- Y (W03)
T 1 651・ 261- Y (W03)
T 1 651・ 263- Y (W03)
T 1 651・ 262- Y (W03)
最終処分 維持  
前審関与審査官 浦崎 直之 
特許庁審判長 青木 博文
特許庁審判官 松浦 裕紀子
田中 敬規
登録日 2015-02-13 
権利者 LANCOME PARFUMS ET BEAUTE & CIE
商標の称呼 レリクシールドリヤン、レリクシールドリアン、レリクシール、エリクシール、ドリヤン、ドリアン、オリヤン、オリアン、オリエント 
代理人 太田 雅苗子 
代理人 廣中 健 
代理人 岡部 讓 
代理人 田中 尚文 

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