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審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) W3541
管理番号 1327177 
異議申立番号 異議2015-900398 
総通号数 209 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2017-05-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2015-12-25 
確定日 2017-03-27 
異議申立件数
事件の表示 登録第5807347号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5807347号商標の商標登録を取り消す。
理由 第1 本件商標
本件登録第5807347号商標(以下「本件商標」という。)は、「乙女フラペチーノ」の文字を標準文字で表してなり、平成26年4月21日に登録出願、第35類「広告業,経営の診断又は経営に関する助言,市場調査又は分析,商品の販売に関する情報の提供,ホテルの事業の管理,文書又は磁気テープのファイリング,コンピュータデータベースへの情報編集,広告用具の貸与,求人情報の提供,織物及び寝具類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,ティーシャツの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,被服の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,おむつの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,履物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,かばん類及び袋物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,身の回り品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,スマートフォン用のケース又はカバーの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,スマートフォン用ストラップの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,電気機械器具類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,印刷物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,紙類及び文房具類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,運動具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,おもちゃ・人形及び娯楽用具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,ダウンロード可能な音楽又は音声の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,録音済み記録媒体の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,楽器及びレコードの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,写真の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,ダウンロード可能な映像又は画像の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,録画済み記録媒体の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,電子出版物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」及び第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授,電子出版物の提供,図書及び記録の供覧,図書の貸与,映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,通信を用いて行う映像又は画像の提供,映画の上映・制作又は配給,通信を用いて行う音楽又は音声の提供,演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽の演奏,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。)」を指定役務として、同27年10月22日に登録査定、同年11月20日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する使用商標は、同人のコーヒー等の飲料の提供に係る業務において使用する商標であって、「フラペチーノ」の片仮名、及び「FRAPPUCCINO」の欧文字からなる商標である。
なお、該「フラペチーノ」の片仮名を、以下「引用商標」という。

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は,本件商標は商標法第4条第1項第11号,同第15号及び同第19号に該当するから,同法第43条の2第1号により,その登録は取り消されるべきであると申立て,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第10号証(枝番を含む。)を提出した。
1 商標法第4条第1項第11号の該当性について
(1)引用各商標
ア 引用商標1(商標登録第4577358号)
商標 「FRAPPUCCINO」(標準文字)
指定商品 第18類「かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ,傘」、第25類「洋服,コート,セーター類・・・他」
イ 引用商標2(商標登録第5232552号)
商標 「FRAPPUCCINO」(標準文字)
指定役務 第35類「被服の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,かばん類及び袋物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供・・・他」
ウ 引用商標3(商標登録第5735653号)
商標 「フラペチーノ\FRAPPUCCINO」
指定商品・役務 第9類「音楽・ダンス又はアーティスティックパフォーマンスを内容とする録音済みオーディオその他の録音済み記録媒体・・・他」、第16類「本,フォトアルバム・・・他」、第41類「娯楽イベントの手配・企画・運営又は開催・・・他」
(2)詳細な理由
本件商標は、「乙女」の語と、「フラペチーノ」の語とから構成される「乙女フラペチーノ」の語を一連に書してなる標準文字よりなるところ、このような結合商標の類否の判断にあっては、「つつみのおひなっこや事件」(最高裁 平成19年(行ヒ)第223号 平成20年9月8日第二小法廷判決)に判断基準が示されている。
この判決から、複数の構成部分を組み合わせた結合商標について、商標の構成部分の一部分が「取引者、需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合」や、当該一部分以外の部分から「出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められる場合」には、分離して判断することが許されるということになる。
「乙女」の漢字の部分は、「年若い女性」を意味することは証明を要しない事実である。そして「乙女」は、その意味から商品、役務の対象を示す場合や乙女のようにかわいらしいといった意味合いから商標選択において頻繁に使用される語である。
その一方で、「フラペチーノ」の片仮名部分は造語であって役務の質を具体的に表示する語ではなく、また、「フラペチーノ」は申立人著名商標であるから、いずれにせよ「乙女」の漢字部分よりも遙かに強い自他役務識別力を発揮する商標の要部である。
したがって、本件商標からは、「オトメフラペチーノ」の一連の称呼のほか、識別力の弱い「乙女」の部分を省略し、強く支配的な印象を与える「フラペチーノ」の部分に相応して「フラペチーノ」の称呼も生ずるものと解される。
一方、各引用商標1?3は、「フラペチーノ」及び/又は「FRAPPUCCINO」の文字を有するものであるから、「フラペチーノ」の称呼を生ずることは明らかである。
よって、本件商標と各引用商標1?3とは、「フラペチーノ」の同一の称呼を生ずる相類似する商標である。
また、本件商標の指定役務は、各引用商標1?3の指定商品又は役務と同一又は類似するものが含まれている。
さらに、各引用商標1?3の出願日は、本件商標の出願日以前である。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。
2 商標法第4条第1項第15号の該当性について
(1)申立人著名商標
前述のように、「フラペチーノ」の片仮名及び/又は「FRAPPUCCINO」の欧文字からなる申立人著名商標は、申立人が日本国内に1000店舗以上を展開するチェーン店で製造販売される持ち帰り可能な飲料、及び店内における飲料の提供について、永年に亘って盛大に使用された結果、該商標は申立人の業務に係る商品及び役務を表すものとして周知・著名になっている。
(2)申立人著名商標の著名性を証する事実
ア 実際に使用している商標並びに商品又は役務
甲第3号証の1に紹介されているほか、「フラペチーノ」は毎年、特に夏期を中心に新たに開発された限定商品が発売されている。「フラペチーノ」は、申立人の主力人気商品であり、どのような商品がいつ発売になるか需要者の関心が高いため、申立人が発表すると必ず新聞やネット記事に取り上げられる(甲5の1及び甲5の2等)。
なお「フラペチーノ」の商品名は、「原材料+フラペチーノ」の態様が常である。
イ 使用開始時期、使用期間、使用地域
申立人著名商標は、米国では1995年、日本では1996年に使用開始され、現在まで継続して使用されている。
ウ 営業の規模
申立人は、日本のみならず世界的にもカフェチェーン最大手であり、「フラペチーノ」はその主力人気商品である。日本に初出店してからわずか17年で店舗数が1,000を超え、カフェチェーン店として売上第1位に至るには、「フラペチーノ」の存在なくしてはあり得なかったものと推測される。
エ 広告宣伝・広報活動
雑誌での特集記事によると、申立人は、テレビCMのような派手なマス広告はほとんど打たず、申立人と顧客相互及び顧客同士が一体となり、都会感覚のライフスタイルに店舗の空間やサービスが自然に組み入れられて溶け込むような特殊なロイヤリティを醸成する方向を目指した広告宣伝や広報活動を採用しているとされており、これが成功の一因であると評価されている。
この結果、顧客と申立人との結びつきは非常に強固なもので好ましい関係を築き上げている。
(3)混同を生ずるおそれ
ア 申立人著名商標の周知・著名度
提出した証拠は、「フラペチーノ」の人気の高さが伺える新聞やネット記事である。
なお、近年は、申立人の「フラペチーノ」の人気にあやかり、他社が「フラペチーノ」に類似した内容の商品を発売し始めており、普通名称化を避けるために申立人著名商標には必ず登録商標であることを示す丸の中に「R」を表示した記号を付し、記事内でも付けさせるように努めている。
イ 創造標章であるかどうか
「Frappuccino」は「frappe」(フラッペ)と「cappuccino」(カプチーノ)との混成語であり、「フラペチーノ」はその発音の日本語表記である。
ウ 申立人の多角経営や他社とのコラボレーション
通販サイトamazonの検索結果には、主として申立人が製造・販売している商品が掲載されている。これには、コーヒー豆、インスタントコーヒーの他、Tシャツ、ジビッツ(靴飾り)、トートバッグ、ピアス、スマートフォンケース、マウスパッド、書籍、コースター、ステッカー、カード、タンブラー、ステンレスボトル、スプーンなど、多種多様な商品が含まれている。
したがって、申立人自身が飲料関係の商品に留まらない事業展開をしていることは明らかである。
これらの事業は「多角経営」というよりは、申立人のイメージ戦略や申立人の各商品のイメージ作りのための宣伝広告活動の一端と捉える見方もあるかもしれないが、いずれにしても申立人の商標が飲食料品を超えた複数の分野で使用されているという事実は存在している。
また、このほか、申立人が他社と組んで活動するコラボレーション企画も多数実行されている。
(4)本件商標の指定役務と申立人の商品・役務との関連性
需要者層でいえば、申立人著名商標は、商品「飲料」または役務「飲料の提供」について使用されており、需要者は特定の層に限定されないので、本件商標の需要者と引用商標の需要者層とは重なるといえる。
また、本件商標の指定役務中、第35類の広告業及び販売促進に関する役務は、申立人が特殊なビジネスモデルとして日本国内で大成功を収めていることから、その経営方法や広告、広報の手法が注目を集めており、甲第4号証の3にも含まれているように、関連書籍も多数出版されている事実がある。
よって、取引の実情を鑑みると、これらの役務と申立人著名商標とは深い関連性を有する。
第35類の各小売業についても、甲第4号証の3のように申立人は多種多様なグッズを製造販売したり、コラボレーション企画で製造したりした実績があり、関連性は否定し得ない。
第41類の知識の教授については、申立人がセミナーに力を注いでいる事実がある。その他の娯楽関連役務については、申立人はたびたびイベントを開催したりコラボレーション企画でキャンペーンを展開したりしているので、関連性は十分に認められるところである。
よって、深浅はあるが本件商標の指定役務はいずれも申立人の業務との関わりがあり、両者間に誤認混同を生ずるおそれがある。
(5)混同が生ずる具体的理由
特徴的な申立人著名商標の使用方法に起因して、本件商標を付した役務が申立人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある。
申立人著名商標「フラペチーノ」は、これまでの各種証拠により示したように、飲料の「種類」としても認識されており、「食材+フラペチーノ」のような態様で使用されいる。例えば、「コーヒージェリーフラペチーノ」「ストロベリーチーズケーキフラペチーノ」「キャラメルフラペチーノ」の如くである。定番の商品に加えて、これらの商品のように期間限定で、新たに次々に新商品が投入されている。
一方、本件商標は「乙女フラペチーノ」の文字よりなるところ、「乙女」または「おとめ」の文字は、日本産の果物の品種名に汎用されている事実がある。
甲第9号証によると、以下のようなフルーツの存在する事実が明らかになった。
・なつおとめ(桃)・さつまおとめ(イチゴ)・おとめ心(イチゴ)・栃乙女(イチゴ)・星乙女(フルーツトマト)・ゆふおとめ(イチゴ)・紅乙女(スイカ)・華おとめ(フルーツトマト)・アルプス乙女(ぶどう)・乙女の涙(フルーツトマト)・甲斐乙女(ぶどう)・はつおとめ(桃)
このような状況の下、「乙女」の文字を品種名に含むフルーツを少なくとも1つは知っており、かつ、「フラペチーノ」の使用の特殊性をある程度知悉した需要者が本件商標に接すると、本件商標が、現在は販売されていないが、過去に限定販売された、またはこれから新規に発売される、「『乙女』の文字を品種名に含むフルーツを原材料とするフラペチーノ」を指すものと誤認し、申立人の業務と混同を生じる。
そして、申立人はこれまで述べたとおり多角経営や他社とのコラボレーションにより第35類や第41類の役務を実際に行っているという実情がある。
したがって、本件商標を第35類と第41類の役務の商標に使用した場合の混同の可能性は極めて高いものといわざるを得ない。
(6)ポリューション
申立人と需要者との結びつきは非常に強固なもので好ましい関係を築き上げており、申立人の清爽な企業イメージの維持は申立人の生命線といっても良い最重要課題である。
本件商標は、甲第10号証の1及び2に示すように商標権者によってすでに使用されている。すなわち、「乙女フラペチーノ」とは若い女性2人組であり、歌手として畑中葉子の大ヒット曲「後から前から」をカヴァーしており、グループ名と同名の写真集を発売している。メンバーの「小島みなみ」と「紗倉まな」はいずれもいわゆる「AV女優」で、現役AV女優として非常に高い人気があるため、このような音楽活動や写真集の発売に至ったものと思われる。カヴァー曲である「後から前から」は歌詞の内容がきわどく、プロモーションビデオもほとんど下着かビザールファッションのような露出度の高い衣装で踊っており、写真集はもちろん無修正である。
このような活動に「フラペチーノ」の文字を含む「乙女フラペチーノ」の文字を使用した場合には、申立人著名商標に化体された名声を極めて容易、かつ、致命的に毀損し、申立人の清爽なイメージを汚濁させることは明らかである。
そして、この活動に対し申立人が手をこまねいていることは、結果として特に若い女性の多い申立人の需要者、特に利用頻度が高く申立人と強く結びついた需要者の利益をも著しく損なうものである。
(7)小括
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。
3 商標法第4条第1項第19号の該当性について
本件商標が使用されると申立人の業務と出所の混同を生ずるおそれがあり、さらに商標権者は本件商標を不正の目的をもって使用するものである。
申立人は、商標権者やその関連するものが「乙女フラペチーノ」の商標を本格的に使用するという情報を入手して、引用商標3(商願2014-27686)の出願をした。
本件商標は、この後に出願されたものであるが、商標権者が引用商標3の存在を把握している可能性は皆無である。
つまり、商標権者は、申立人が少なくとも第41類の音楽等の娯楽に関連する役務について「フラペチーノ」関連の商標を取得していないことを奇貨として本件商標を出願したといえる。
そうすると、商標権者は、申立人に本件商標の名義を買い取らせたり放棄させる対価として、あるいは本件商標の使用を中止するために必要な費用や将来得られたであろう利益の補償として、何がしかの金銭をせしめようという商標権者の不正の目的が客観的に認められる。
したがって、本件商標は、引用著名商標との関係で、商標法第4条第1項第19号に該当する。

第4 本件商標に対する取消理由
本件商標権者に対して,平成28年11月24日付けで通知した本件商標の取消理由(要旨)は,以下のとおりである。
1 申立人の引用商標の周知著名性について
(1)申立人の提出した証拠及び申立ての理由を総合すると、以下のとおりである。
ア 申立人は、1987年に米国で創業し、エスプレッソを主体にした本格的コーヒーチェーン店の事業を行ってきた。そして、申立人は、1995年(平成7年)に「スターバックス コーヒー ジャパン」(以下「スターバックスジャパン」という。)の設立により、日本においてコーヒー等の飲料を提供する事業の展開を開始した(甲5の2の5・17)。
2012年度のコーヒーチェーンの国内売上高は3,006億円で、2009年にドトールコーヒーを抜いて首位に立ったスターバックスジャパンは、順調にシェアを上げており、2012年度は、その2社で7割近いシェアを占めた(甲5の2の1)。また、スターバックスジャパンに係る店舗数は、2013年(平成25年)9月には、1,000店舗となった(甲5の2の82)。
イ スターバックスジャパンが提供する飲料の「フラペチーノ」は、コーヒーと牛乳などを氷とともに混ぜた商品であり、1999年に初めて、日本独自の夏季限定商品として「コーヒージェリー フラペチーノ」が発売された(甲5の2の4)。その後、果物、コーヒーゼリーなどを使用した期間限定商品の商品メニューにも「フラペチーノ」の文字を結合した商品名として使用されている(甲5の1の1?5)。
ウ そして、申立人の主張及びフリー百科事典「ウィキペディア」等によれば、「フラペチーノ」は、スターバックスジャパンで販売されている冷たいドリンクの種類と商品名であり、コーヒーとミルク・クリームなどを氷と攪拌したコーヒー飲料として、同社において販売されるようになったものである。現在は、コーヒーを使った商品に加え、果汁と氷を攪拌したものなどのコーヒーを使わない商品も販売されている。そして、「FRAPPUCCINO/フラペチーノ」という名前の由来は、「フラッペ」(かき氷にリキュール類又はシロップなどをそそいだ飲物。また、かき氷・果物・アイスクリームなどを盛り合わせた冷たい菓子。「広辞苑第六版」)と「カプチーノ」(エスプレッソコーヒーに、蒸気で温めて泡立てた牛乳を加えたもの。「広辞苑第六版」)から造った造語である(甲4の1)。
エ スターバックスジャパンの「フラペチーノ」と呼ばれる商品の種類は、大きく分けて、コーヒーベースのもの(コーヒーフラペチーノ、モカフラペチーノ、キャラメルフラペチーノ等)、クリームベースのもの(バニラクリームフラペチーノ、抹茶クリームフラペチーノ等)、ティーベースのもの(マンゴーパッションティーフラペチーノ)の3つがあり、季節限定販売のものもあるが、その年のプロモーション(期間に合わせた商品ラインナップ)によって変化するため、同じ季節でも毎年発売されるとは限らない(甲4の1等)。
また、スターバックスジャパンのホームページには、「米スターバックスが中心となって開発されたフラペチーノだが、世界で一番トレンドや味に厳しいと言われる日本市場に合わせて、近年では日本で開発した商品の方が多くなっている。」と記載されており(甲3の2)、その商品には、プリン、バナナ、いちご、桃といった果実(又は果汁)等を使用したものも販売されている(甲5の1の1・4、甲5の2の87等)。
オ スターバックスジャパンは、上記したとおり、2013年(平成25年)9月の時点で、日本において1,000店を出店し、本件商標の登録出願時(平成26年4月21日)までに、スターバックスジャパンの業績が好調であることを報道する新聞等の記事が多数に上り、その中には、「フラペチーノ」の売上高が伸び、業績好調に貢献していることを報道するものが多く、さらに、「フラペチーノ」の新商品が発売されることを報道する新聞等の記事も多数あり、スターバックスジャパンが商品に使用する「フラペチーノ」は、同社の看板商品名となっている(甲5の2の中に多数あり。)。
なお、スターバックスジャパンは、商品の販売促進のための各種イベント等を開催し、このことがインターネットや新聞、雑誌等で報道されており、また、申立人は、音楽関連の商品、役務を取り扱う企業等とコラボレーション活動等を行っている(甲6の1の1・2・4?8、甲6の2の1?18、甲7の1の2・4?12、甲7の2の1・2)。
(2)上記(1)によれば、「フラペチーノ」の文字よりなる引用商標は、本件商標の登録出願時には既に、申立人の業務に係る商品「コーヒー・果汁等と氷を攪拌した飲料」及び役務「コーヒー・果汁等と氷を攪拌した飲料の提供」を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることができる。そして、その著名性は、本件商標の登録査定時(平成27年10月22日)においても継続していたものと認められる。
2 本件商標と引用商標との類似性について
(1)本件商標
本件商標は、「乙女フラペチーノ」の文字を標準文字で表してなるところ、該文字は、「年若い女子」などを意味する語として、我が国でよく知られている「乙女」の漢字と特定の意味合いを有しない造語と認められる「フラペチーノ」の片仮名を結合したものであって、その構成文字全体として、特段の意味合いを想起し得ないものである。
そうすると、本件商標は、外観及び観念において、「乙女」の文字部分と「フラペチーノ」の文字部分とに分離して把握されやすいものであり、また、このことから、本件商標より生ずると認められる「オトメフラペチーノ」の称呼を全体として称呼するときは、自然に「オトメ」と「フラペチーノ」との間に称呼上の段落が生じるものといえる。
さらに、「フラペチーノ」の文字よりなる引用商標は、上記1のとおり、本件商標の登録出願時には既に、申立人の業務に係る商品「コーヒー・果汁等と氷を攪拌した飲料」及び役務「コーヒー・果汁等と氷を攪拌した飲料の提供」を表示するものとして、需要者の間に広く認識されていたことを考慮すると、本件商標に接する需要者は、その構成中の「フラペチーノ」の文字部分に注意を強く惹かれ、印象付けられるとみるのが相当である。
してみると、本件商標は、その構成文字に相応して、「オトメフラペチーノ」の称呼を生じるほか、出所識別標識として強く支配的な印象を与える「フラペチーノ」の文字部分より、単に「フラペチーノ」の称呼をも生じるものであって、特定の観念を生じないものである。
(2)引用商標について
引用商標は、「フラペチーノ」の片仮名よりなるところ、これは、特定の意味合いを有しない造語と認められるものであるから、その構成文字に相応して、「フラペチーノ」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。(3)本件商標と引用商標との類否について
本件商標と引用商標との類否について検討するに、外観においては、本件商標と引用商標は、その構成全体を比較すれば、構成を異にするものの、本件商標の要部である「フラペチーノ」の文字部分と引用商標とは、その綴りを共通にするものであるから、外観において、類似するものといえる。
そして、称呼においては、本件商標と引用商標からは、共に「フラペチーノ」の称呼が生じ、両者は、その称呼を同一にするものである。
また、観念においては、本件商標と引用商標からは、共に特定の観念を生じないから、比較することができないものである。
そうすれば、本件商標と引用商標とは、観念において比較できないとしても、外観において類似し、称呼を同一にするものであるから、これらを総合的に勘案すれば、両商標は、類似の商標というべきである。
3 取引の実情について
申立人は、前記1のとおり、コーヒーを主体にした各種飲料の提供、販売を行っている企業であって、我が国において、1,000店舗を展開するなど、コーヒーチェーン店として広く認識されていることは顕著な事実であるところ、申立人に係る商品の「フラペチーノ」などの飲料が、人気を博していることを考慮すると、申立人の店舗に足を運ぶ需要者は、コーヒーの愛飲家のみならず、広く老若男女を問わない一般的な消費者であると認められる。
一方、本件商標の指定役務は、前記第1のとおり、被服・履物・かばん類・身の回り品・電気機械器具類・印刷物・運動具・おもちゃ・人形・娯楽用具・楽器及びレコード等の小売や技芸・スポーツ又は知識の教授,電子出版物の提供,映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営等の多種多様な役務であるところ、その多くの役務は、一般的な消費者を主たる需要者とするものである。そして、当該需要者は、申立人商品の需要者ともなり得るというべきである。
4 引用商標の独創性について
引用商標は、前記1のとおり、「フラッペ」と「カプチーノ」の各語からとった申立人の創作に係る造語であって、その独創性は相当程度高いといえるものである。
5 フリーライド・ダイリューションの意図について
申立人は、甲第10号証の1・2を提出し、「本件商標は、・・・商標権者によってすでに使用されている。すなわち「乙女フラペチーノ」とは若い女性2人組であり、歌手として畑中葉子の大ヒット曲『後から前から』をカヴァーしており、グループ名と同名の写真集を発売している。メンバーの『小島みなみ』と『紗倉まな』はいずれもいわゆる『AV女優』で、現役AV女優として非常に高い人気があるため、このような音楽活動や写真集の発売に至ったものと思われる。カヴァー曲である『後から前から』は歌詞の内容がきわどく、プロモーションビデオもほとんど下着かビザールファッションのような露出度の高い衣装で踊っており、写真集はもちろん無修正である。このような活動に『フラペチーノ』の文字を含む『乙女フラペチーノ』の文字を使用した場合には、申立人著名商標に化体された名声を極めて容易且つ致命的に毀損し、申立人の清爽なイメージを汚濁させることは明らかである。」旨を主張している。
なお、職権調査によれば、商標権者である「株式会社ファーストインプレッション」に係るホームページとして、以下のURLのウェブページがあり、「小島みなみ」と「紗倉まな」をユニットとするグループ名として「乙女フラペチーノ」の名称が使用されていることが認められる。
(ウェブページのURL)
(1)商標権者に係るトップページ:
http://www.sexy-j.jp/index.html
(2)ロゴマーク表記のページ:
http://www.sexy-j.jp/common/member/memSexy.html
他のロゴマークについてであるが、株式会社ファーストインプレッションが商標登録を管理している状況が見て取れる。
(3)ホームページにおける「MEMBER」のページ:
http://www.sexy-j.jp/common/member.html
(4)「乙女フラペチーノ」のページ:
http://www.sexy-j.jp/common/member/memOtome.html
(5)株式会社ファーストインプレッションのページ:
http://www.1st-imp.jp/
このページは、上記(1)のトップページの下部に表示されている「FIRST IMPRESSION」のロゴマークボタンからリンクしている。
以上によれば、本件商標は、「小島みなみ」と「紗倉まな」をユニットとするグループ名として「乙女フラペチーノ」の名称が使用されているところであるが、その構成中には、申立人の業務に係る飲料の商品名を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されている「フラペチーノ」の文字を含むものである。
しかしながら、グループ名としての名称を採択するに当たり、独創的な他人の著名商標と同じ文字をその構成中に使用すべき必然性はなく、引用商標の周知著名性に照らせば、その構成態様は、偶然の一致ということはできないものであって、本件商標は,申立人が長年提供してきた飲料に係るブランドとしての「フラペチーノ」の存在を承知の上で,それと近似した商標を登録出願したものと優に推認されるものである。
そうすれば、本件商標の上記構成態様は、引用商標にただ乗り(フリーライド)し、引用商標に化体した顧客吸引力、信用、評判等を不正に利用するものといわざるを得ない。
しかも、申立人の主張からは、本件商標の使用に係る商品中には、卑猥なイメージを与える商品が販売されていることが推認されることからすると、申立人が長年提供してきたコーヒーチェーン店として、その提供する商品の「フラペチーノ」などの飲料に係るブランドイメージを希釈化(ダイリューション)又は汚染するおそれもある。
そして、商標法第4条第1項第15号は、周知表示又は著名表示へのただ乗り(いわゆるフリーライド)及び当該表示の希釈化(いわゆるダイリューション)を防止し、商標の自他識別機能を保護することによって、商標を使用する者の業務上の信用の維持を図り,需要者の利益を保護することを目的とするものである(平成12年7月11日 最高裁平成10年(行ヒ)第85号参考)。
6 まとめ
以上を総合すると、本件商標中には、申立人の創作に係る造語であって、著名な「フラペチーノ」の文字を含むものであるから、これをその指定役務に使用した場合には、これに接する取引者、需要者は、周知著名となっている引用商標ないしは申立人を連想、想起し、該商品が申立人又は申立人と経済的、組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかの如く、その出所について混同を生ずるおそれがあるものというべきである。
また、上記5のとおり、本件商標をその指定役務に使用することは、周知著名となっている引用商標の名声へのただ乗りであって、その希釈化のおそれがあるといわざるを得ない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
7 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものと認める。

第5 商標権者の意見
1 本件商標と引用商標との類否判断
本件商標は、「乙女フラペチーノ」の標準文字により構成されている。
一方、引用商標は、「フラペチーノ」の片仮名により構成されている。
よって、本件商標と引用商標は外観上著しく相違するものであり、外観上相紛れるおそれは全くないといえる。
ついで、本件商標と引用商標の観念について、本件商標及び引用商標ともに特定の観念を生じないため、比較することはできないといえる。
さらに、本件商標と引用商標とを称呼について比較すると、本件商標からは「オトメフラペチーノ」との称呼が生じる。
一方、引用商標からは「フラペチーノ」との称呼が生じる。
ここで、本件商標から「フラペチーノ」との称呼が生じるかについて検討するに、最高裁の判決において、「法4条1項11号に係る商標の類否は、同一又は類似の商品又は役務に使用された商標が、その外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して、その商品又は役務に係る取引の実情を踏まえつつ全体的に考察すべきものであり」(昭和43年2月27日最高裁昭和39年(行ツ)第110号)、「複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるものについて、商標の構成部分の一部を抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは、その部分が取引者、需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や、それ以外の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められる場合などを除き、許されないというべきである」(昭和38年12月5日最高裁昭和37年(オ)第953号)とある。
本件商標は、上記の構成を有しており、これを構成する文字は同じ書体、同じ大きさ、等間隔で書されていることから、一体に把握されうるものと考えられる。また、本件商標の構成全体から生じる「オトメフラペチーノ」との称呼も冗長であるとはいえず、一気一連に称呼しうるものである。
したがって、本件商標に限っては本件商標全体が一体不可分のものとして認識、把握されるとみるのが自然であり、本件商標から「フラペチーノ」の部分のみを抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判定すべき特段の事情は見いだせない。
なお、申立人は、本件商標中「乙女」の部分は自他商品等識別力が発揮されるような語ではなく、「フラペチーノ」の部分こそが要部である旨を主張している。
しかし、「乙女」若しくは「おとめ」と「乙女」の二段併記のみの登録商標がある以上、「乙女」の部分も十分に自他商品等識別力が発揮される語であることは明らかである。その上、本件商標は、あくまでも一体不可分の「乙女フラペチーノ」であって、その一部分にすぎない「フラペチーノ」の部分を要部とする認定には首肯しかねる。
さらに、申立人は、本件商標が申立人の登録商標に類似するため商標法第4条第1項第11号に規定する登録商標に該当する旨を主張しているが、取消理由通知においては、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に規定する登録商標に該当するものとの認定のみを受けており、同第11号に該当するとの主張は認められていない。
そうすれば、本件商標と引用商標とは外観、称呼及び観念のいずれにおいても相紛れるおそれは全くなく、本件商標と引用商標は類似しないということができる。
商標の類否判断は、商標の有する外観、称呼及び観念のそれぞれの判断要素を総合的に考察しなければならないものであるところ、本件商標は引用商標と外観、称呼及び観念について全く相紛れるものではなく、本件商標は総合的に考察した場合、引用商標と類似するものではないと考える。
ところで、商標の類否判断は一般に「対比される両商標が同一または類似の商品に使用された場合に、商品の出所につき混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきものであり、その類否判断をするに当たっては、両商標の外観、称呼、観念を観察し、それらが取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべきであって、上記3要素のうちその1において類似するものでも、他の2点において著しく相違すること、その他取引の実情等によって、なんら商品の出所に誤認混同を来すおそれの認め難いものについては、これを類似の商標とすべきでないと解するのが相当である」(不服2009-3883審決)との認定があるところ、本件商標は引用商標に対して、上記のとおり、外観及び観念について著しく相違するものであり、仮に本件商標が引用商標と称呼において相紛らわしいとした場合でも、総合的に観察した場合には、類似するものではないと解する。
また、最高裁の判決においても「商標の外観、観念または称呼の類似は、その商標を使用した商品につき出所の誤認混同のおそれを推測させる一応の基準にすぎず、従って、右三点のうちその一において類似するものでも、他の二点において著しく相違することその他取引の実情等によって、なんら商品の出所に誤認混同をきたすおそれの認めがたいものについては、これを類似商標と解すべきものではない。」(昭和43年2月27日最高裁昭和39年(行ツ)第110号)とある。
そして、商標審査基準の解説(社団法人発明協会)は、「商標審査基準」の「商標の類否の判断は、商標の有する外観、称呼及び観念のそれぞれの判断要素を総合的に考察しなければならない。」における「総合的な考察」について「商標の類否は、商標の有する外観、称呼又は観念により判断し、それらの一以上で相紛らわしいときは両商標は類似すると判断するのが原則ではあるが一般的に見て称呼は相紛らわしいが両商標の外観及び観念が相違しそれらの相違により、全体として相紛らわしくない場合があり、このような場合には、称呼の面だけから見て類似の商標と判断するのではなくて、外観及び観念上をも含めて総合的に考察して、両商標の類否を判断すべきである、との趣旨であろう。」と記載されており、これは上記の審決及び判決と同趣旨と解される。
2 フリーライド・ダイリューションの意図について
本件商標をその指定役務について使用した場合には、出所の混同を生ずるおそれがあり、また、引用商標の名声へのただ乗りであって、その希釈化のおそれがあるとあるが、商標権者にはフリーライド・ダイリューションの意図は全くない。
本件商標はあくまで「乙女フラペチーノ」である。そして、「小島みなみ」と「紗倉まな」をユニットとするグループ名であり、これを「フラペチーノ」と省略して使用している事実はない。
また、申立人は、その申立の中で「フラペチーノ」の商品名は「原材料+フラペチーノ」の態様が常であると述べ、さらに、「乙女」「おとめ」の文字を含む日本産の果物の品種を列挙している。
しかし、本件商標中の「乙女」は、「年若い女子」などを意味する語であって、決して原材料になり得るものではない。そして、「乙女」「おとめ」の文字が日本産の果物の品種に汎用されているとしても、申立人の列挙した品種名は「乙女」「おとめ」の文字を含むものではあるが、「乙女」「おとめ」のみではない。
そのため、本件商標を目にした一般需要者が「『乙女』の文字を品種名に含むフルーツを原材料とするフラペチーノ」を指すものと誤認するとは断じていえない。
このように、本件商標をその指定役務について使用しても、出所の混同を生ずるおそれもなければ、引用商標の名声へのただ乗りであって、その希釈化のおそれがあるものでもない。

第6 当審の判断
1 商標法第4条第1項第15号該当性について
本件商標についてした前記第4の取消理由は、妥当なものであって、本件商標は、その指定商品について、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものというのが相当である。
2 本件商標権者の意見について
(1)商標権者は、意見書において、本件商標と引用商標との類否判断を述べ、「本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するとの主張は認められていない。そうすれば、本件商標と引用商標とは外観、称呼及び観念のいずれにおいても相紛れるおそれは全くなく、本件商標と引用商標は類似しないということができる。商標の類否判断は、商標の有する外観、称呼及び観念のそれぞれの判断要素を総合的に考察しなければならないものであるところ、本件商標は引用商標と外観、称呼及び観念について全く相紛れるものではなく、本件商標は総合的に考察した場合、引用商標と類似するものではない。」旨を主張している。
しかしながら、本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当するとした理由において、本件商標と引用商標の類似性については、その前提として、申立人の使用する商標「フラペチーノ」の著名性を認めたうえで、本件商標の構成部分の一部を抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは、その部分が取引者、需要者に対しその役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合にあたると判断したものである。
そして、本件商標中には、申立人の創作に係る造語で著名な該「フラペチーノ」の文字を含むものであるから、これをその指定役務に使用した場合には、これに接する取引者、需要者は、周知著名となっている引用商標ないしは申立人を連想、想起し、該商品が申立人又は同人と経済的、組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかの如く、その出所について混同を生ずるおそれがあるものと判断したのであって、単に、本件商標と引用商標との類否のみをもって、同第15号該当の判断をしたのではない。
(2)商標権者は、意見書において、「商標権者にはフリーライド・ダイリューションの意図は全くない。本件商標はあくまで『乙女フラペチーノ』である。そして、『小島みなみ』と『紗倉まな』をユニットとするグループ名であり、これを『フラペチーノ』と省略して使用している事実はない。・・・このように、本件商標をその指定役務について使用しても、出所の混同を生ずるおそれもなければ、引用商標の名声へのただ乗りであって、その希釈化のおそれがあるものでもない。」旨を主張している。
しかしながら、本件商標をグループ名として使用しているとしても、取消理由通知書に示した理由のとおり、その構成中には、申立人の業務に係る飲料の商品名を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されている「フラペチーノ」の文字を含むものであり、そのグループ名としての名称を採択するに当たり、独創的な他人の著名商標と同じ文字をその構成中に使用すべき必然性はなく、引用商標の周知著名性に照らせば、その構成態様は、偶然の一致ということはできないものであって、本件商標は,申立人が長年提供してきた飲料に係るブランドとしての「フラペチーノ」の存在を承知の上で,それと近似した商標を登録出願したものと優に推認されるものである。
そうすれば、本件商標の上記構成態様は、引用商標にただ乗り(フリーライド)し、引用商標に化体した顧客吸引力、信用、評判等を不正に利用するものといわざるを得ない。
しかも、申立人の主張からは、本件商標の使用に係る商品中には、卑猥なイメージを与える商品が販売されていることが推認される。
してみれば、本件商標の使用によって、申立人が長年提供してきたコーヒーチェーン店として、その提供する商品の「フラペチーノ」などの飲料に係るブランドイメージを希釈化(ダイリューション)又は汚染するおそれもあるというべきである。
よって、本件商標権者の主張は、いずれも採用することができない。
3 まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第43条の3第2項の規定に基づき、その登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲
異議決定日 2017-02-13 
出願番号 商願2014-31110(T2014-31110) 
審決分類 T 1 651・ 271- Z (W3541)
最終処分 取消  
前審関与審査官 小川 敏齋藤 貴博 
特許庁審判長 山田 正樹
特許庁審判官 井出 英一郎
榎本 政実
登録日 2015-11-20 
登録番号 商標登録第5807347号(T5807347) 
権利者 株式会社ファーストインプレッション
商標の称呼 オトメフラペチーノ、オトメ、フラペチーノ 
代理人 山田 朋彦 
代理人 ▲高▼見 良貴 
代理人 西浦 ▲嗣▼晴 
代理人 平野 泰弘 
代理人 杉本 明子 
代理人 都築 健太郎 
代理人 出山 匡 

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