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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W232425
審判 全部申立て  登録を維持 W232425
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審判 全部申立て  登録を維持 W232425
管理番号 1327167 
異議申立番号 異議2016-900290 
総通号数 209 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2017-05-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-09-12 
確定日 2017-04-06 
異議申立件数
事件の表示 登録第5857620号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5857620号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第5857620号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成27年12月22日に登録出願され、第23類「アルゼンチン国パタゴニア地方産のウールを主原料とする糸」、第24類「アルゼンチン国パタゴニア地方産のウールを用いた織物,アルゼンチン国パタゴニア地方産のウールを用いたメリヤス生地,アルゼンチン国パタゴニア地方産のウール製の布製身の回り品,アルゼンチン国パタゴニア地方産のウール製の敷布,アルゼンチン国パタゴニア地方産のウール製の布団,アルゼンチン国パタゴニア地方産のウール製の布団カバー,アルゼンチン国パタゴニア地方産のウール製の布団側,アルゼンチン国パタゴニア地方産のウール製のまくらカバー,アルゼンチン国パタゴニア地方産のウール製の毛布」及び第25類「アルゼンチン国パタゴニア地方産のウール製の被服,アルゼンチン国パタゴニア地方産のウール製のガーター,アルゼンチン国パタゴニア地方産のウール製の靴下止め,アルゼンチン国パタゴニア地方産のウール製のズボンつり,アルゼンチン国パタゴニア地方産のウール製のバンド,アルゼンチン国パタゴニア地方産のウール製のベルト,アルゼンチン国パタゴニア地方産のウール製の履物,アルゼンチン国パタゴニア地方産のウール製の仮装用衣服」を指定商品として、同28年5月6日に登録査定,同年6月10日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が本件登録異議の申立てに引用する登録商標は、以下のとおりであり、現に有効に存続しているものである。
1 登録第2229244号商標(以下「引用商標1」という。)は、「PATAGONIA」の欧文字を横書きしてなり、昭和55年6月10日に登録出願、第17類に属する商標登録原簿に記載されたとおりの商品を指定商品として、同2年5月31日に設定登録され、その後、2回にわたり商標権の存続期間の更新登録がされ、また、同22年2月24日に指定商品を第24類「布製身の回り品,毛布」及び第25類「被服」とする指定商品の書換登録がなされたものである。
2 登録第2420993号商標(以下「引用商標2」という。)は、「PATAGONIA」の欧文字を横書きしてなり、平成2年5月8日に登録出願、第24類に属する商標登録原簿に記載されたとおりの商品を指定商品として、同4年6月30日に設定登録され、その後、2回にわたり商標権の存続期間の更新登録がされ、また、同15年12月24日に指定商品を第9類「家庭用テレビゲームおもちゃ,レコード,メトロノーム,ウエイトベル ト,ウエットスーツ,浮袋,エアタンク,水泳用浮き板,レギュレーター」、第18類「乗馬用具」、第25類「運動用特殊衣服,運動用特殊靴」及び第28類 「おもちゃ,人形,さいころ,ダイスカップ,ダイヤモンドゲーム,チェス用具,手品用具,トランプ,遊戯用器具,ビリヤード用具,運動用具,釣り具」とする指定商品の書換登録がなされたものである。
3 登録第2519526号商標(以下「引用商標3」という。)は、「PATAGONIA」の欧文字を横書きしてなり、平成2年5月8日に登録出願、第21類に属する商標登録原簿に記載されたとおりの商品を指定商品として、同5年3月31日に設定登録され、その後、2回にわたり商標権の存続期間の更新登録がされ、また、同16年7月28日に指定商品を第6類「金属製のバックル」、第8類「ひげそり用具入れ,ペディキュアセット,マニキュアセット」、第14類「身飾品,カフスボタン,貴金属製のがま口及び財布,宝玉及びその模造品,貴金属製コンパクト」、第18類「かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ」、第21類「化粧用具(電気式歯ブラシを除く)」、第25類「ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト」及び第26類「腕止め,頭飾品,衣服用バックル,ワッペン,腕章」とする指定商品の書換登録がなされたものである。
4 登録第4025558号商標(以下「引用商標4」という。)は、別掲2のとおりの構成よりなり、平成7年12月4日に登録出願、第25類「被服」を指定商品として、同9年7月11日に設定登録され、その後、2回にわたり商標権の存続期間の更新登録がされたものである。
5 登録第4271034号商標(以下「引用商標5」という。)は、別掲3のとおりの構成よりなり、1996年6月24日にアメリカ合衆国においてした商標登録出願に基づきパリ条約第4条による優先権を主張して、平成8年12月24日に登録出願、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として、同11年5月14日に設定登録され、その後、同20年12月2日に商標権の存続期間の更新登録がされたものである。
6 登録第4761479号商標(以下「引用商標6」という。)は、「PATAGONIA」の欧文字を標準文字で表してなり、平成15年9月2日に登録出願、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として、同16年4月2日に設定登録され、その後、同26年1月21日に商標権の存続期間の更新登録がされたものである。
7 登録第5121414号商標(以下「引用商標7」という。)は、「PATAGONIA」の欧文字を標準文字で表してなり、平成19年4月2日に登録出願、第35類「被服及びかばん類の小売り又は卸売りの業務において行われる顧客に対する便益の提供」を指定役務として、同20年3月21日に設定登録されたものである。
8 登録第5292841号商標(以下「引用商標8」という。)は、「パタゴニア」の文字を標準文字で表してなり、平成21年4月23日に登録出願、第18類「かばん類」、第25類「被服,ベルト,履物,運動用特殊衣服」及び第28類「運動用具」を指定商品として、同22年1月8日に設定登録されたものである。
9 登録第5334983号商標(以下「引用商標9」という。)は、別掲4のとおりの構成よりなり、平成22年2月4日に登録出願、第18類「かばん類,袋物」及び第25類「被服,履物」を指定商品として、同22年7月2日に設定登録されたものである。
10 登録第5849063号商標(以下「引用商標10」という。)は、別掲5のとおりの構成よりなり、平成27年12月14日に登録出願、第18類「旅行かばん,リュックサック,バッグ,スポーツバッグ」及び第35類「被服の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,オンラインによる被服の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,カタログを利用した通信販売による被服の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,身の回り品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,オンラインによる身の回り品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,カタログを利用した通信販売による身の回り品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を指定商品及び指定役務として、同28年5月13日に設定登録されたものである。
なお、引用商標1ないし引用商標10をまとめていうときは、以下「引用商標」という。

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第11号、同第15号並びに同法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に違反して登録されたものであるから、その登録は、同法第43条の2第1号により取り消されるべきであると申立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第46号証を提出した。
1 商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、上段の「PROVINCIA DE SANTA CRUZ」は、アルゼンチンの「サンタ・クルス州」を意味する単語であり、下段の「NON-MULESING WOOL」は、「ミュール手術を施していない羊毛」という意味の熟語である。中段は、上段及び下段の文字より数倍の大きさの「patagonia」と「Wool」とを二段に併記してなるもので「パタゴニアウール」と称呼されるものである。しかしながら、指定商品において「?ウール製の」と記載されているように「Wool」の部分は商品の品質表示であって、その要部となるのは「Patagonia」の部分にあるといえる。
他方、申立人は前記第2に示すように「パタゴニア」と称呼される登録商標を複数区分に多数所有している。
したがって、第23類の指定商品「アルゼンチン国パタゴニア地方産のウールを主原料とする糸」、第24類の指定商品「アルゼンチン国パタゴニア地方産のウールを用いた織物,アルゼンチン国パタゴニア地方産のウールを用いたメリヤス生地」及び第25類の指定商品「アルゼンチン国パタゴニア地方産のウール製の仮装用衣服」以外の指定商品に関しては、前記第2の登録商標にかかる指定商品と同一又は類似関係にあり、総合的に商標法第4条第1項第11号に違反するものである。
2 商標法第4条第1項第16号について
本件商標は、前述したような構成態様となっている。そして商標権者は、「Patagonia/Wool」の部分を取り出して第23類、第24類及び第25類の指定商品に「アルゼンチン国パタゴニア地方産のウール」というように限定している。しかし、上段の「PROVINCIA DE SANTA CRUZ」は、コンサイス外国地名事典(甲14)及びWikipediaに掲載されているようにアルゼンチンの「サンタ・クルス州」を意味する英語であり(甲15)、下段の「NON-MULESING WOOL」は、三省堂の「グランドコンサイス英和辞典」に「mulesing」の意味として「ミュールズ手術」と紹介されているように「ミュール手術を施していない羊毛」という意味の英語である(甲16)。
したがって、かかる記載から「アルゼンチン国サンタ・クルス州産のミュール手術を施していない羊毛」というような品質を有する商品となり、「パタゴニア」はコンサイス外国地名事典に「南アメリカ南部の地域」(チリ・アルゼンチンからなり)」と記載されているように産地表示として使用されるものではなく、むしろパタゴニア地域に含まれるアルゼンチン国サンタ・クルス州で地域が限定されているといえる(甲16)。
しかし、現在の指定商品は表示との関係で商品の品質の誤認を生じるおそれがあり商標法第4条第1項第16号との関係では「アルゼンチン国サンタ・クルス州産のミュール手術を施していない羊毛」というように限定されるべきである。
3 商標法第第4条第1項第15号について
商標法第4条第1項第15号によれば、「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある場合」には、商標登録を認めないものとされる。
申立人の有する「パタゴニア」あるいは「patagonia」の文字からなる各商標(以下、併せて「申立人ブランド」という。)は、本件商標出願時にすでに申立人の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして日本国内において十分に著名であり、本件商標は、申立人と経済的又は組織的に何等かの関係がある者の業務に係る商品又は役務であると誤認し、その商品又は役務の需要者が商品又は役務の出所について混同するおそれがある商標である。さらにいえば、本件商標は、著名な申立人ブランドである「patagonia」と他の文字や図形が結合した商標であり、原則どおり、商品又は役務の出所の混同を生ずるおそれがあるものと推認される。
よって、本件商標は、申立人の業務に係る商品又は役務であると誤認し、その商品又は役務の需要者が商品又は役務の出所について混同するおそれがあるものにあたる。
(1)日本国周知・著名商標リストについて
申立人が所有する引用商標4は、日本国周知・著名商標リスト(甲17)にも掲載されている商標であり、被服関連分野において継続的に使用されていることから商標「パタゴニア」、「patagonia」は、日本国内において申立人を示す商標として広く知られた周知商標である。
(2)販売高・販売数について
申立人ブランドについて、日本国内の年間売上高は、2011年度から2016年度までの6年間、毎年約100億円(1ドルを100円として換算。)を計上しており、全世界では、6年間で合計約37億ドルを売り上げている(甲18)。また、国内における申立人ブランドの販売点数は増加しており、2011年度に80万点だったものが、2016年度は約150万点となっている。さらに、インターネットサイト検索サービスである「グーグル」の検索エンジンにて「patagonia」もしくは「パタゴニア」を入れると、トップページの記事は、右欄の第2候補の単語とwikipediaの紹介記事1件を除き、すべて「patagonia」もしくは「パタゴニア」の文字は申立人を示すものとなっている(甲19、甲20)。そして、申立人の「patagonia」の店名を冠する国内の直営店舗22店において、その来店者数は、直近5年間、毎年約200万人に上る。また、申立人ブランドのインターネットサイトのヴュー数について、2016年度は1,000万ヴューを超えている(甲21)。
(3)商標の認知度、広告・宣伝等の程度について
日本国内における雑誌、新聞等の申立人ブランドの露出は甲第22号証からわかるように、きわめて多いものである。該証拠は、申立人の年間スケジュールデータを抜粋して日本語に翻訳したもので、表紙に記載されているデータは、月間の申立人ブランド商品の紹介又は申立人の紹介に関する記事・広告が掲載された雑誌、インターネットサイト、テレビ等を含む媒体数であり、年間延べ400媒体を超えており、本年度は上半期10月の時点ですでに360媒体に上る。該証拠のうち、「メディア掲載スケジュール」は、無償にて掲載されている申立人ブランド商品(シャツ、ニット、ベスト、スカート、ジャケット、ズボン、帽子、靴下、バッグ、ポンチョ、ウエットスーツ、手袋など)や申立人自身の記事等の月別掲載スケジュール、平成26年5月?平成28年10月までを発売日・放映日とするものの一覧である。ここで取り上げられている製品数についても、延べ製品数に示すように、2015年度2016年度ともに年間1,000点を超えており、本年度も半年で500点を超えている。
また、「パタゴニア日本国内有料広告掲載予定表」は、申立人が力を入れている製品を広告する有料掲載の雑誌等媒体の一覧であり、発売予定日を平成26年5月?平成28年10月までとする範囲の情報が記載されている。月別の合計掲載数をみると、申立人ブランドについて平均すると毎月10前後の雑誌やインターネットサイト媒体に有料広告を掲載し、その掲載されたものの数例を示す(甲23ないし甲30)。実際に、申立人が日本国内で申立人ブランドを広告、宣伝するために、5年間で日本において支出した額はここ3年で年間合計4億円を超えている(甲21)。
具体的には、カタログについては昨年度、印刷・送付代を合わせると2億円にのぼり、雑誌等における広告費用は3,000万円程度支出している。さらに、スポーツ衣料がメインである商品特性から、申立人は、有望なクライマー、スキーヤー、スノーボーダー、サーファー及びトレイルランナーの各分野のエキスパートを広告塔(甲31)とし、彼らをサポートする申立人ブランドを付した製品・契約金の提供をしているが、この費用を中心とする販促費用は年間2億円に迫る勢いである。各種商品サンプル代も年間2,000万円を超え、増加傾向にある。さらに、申立人は、地球環境を保護するということを最大の命題として経営されており、地球環境保護という観点からの色々な取り組みがなされている。このことは、申立人を単なる利益追求の企業としてではなく、環境配慮型の企業として、需要者の間でも広く認知されるに至らしめている(甲32ないし甲37)。
(4)取扱商品等について
「Patagonia」は、申立人のハウスマークであり、申立人ブランドが取り扱っている商品は、ウェッブページでのオンライン販売ページ(甲38)からわかるように、ファッション全般から食品(甲23、甲34)にかかわる様々な商品に広がっており、多角経営を行っている。もともと、被服が申立人ブランドの最も強い分野であるが、環境保護・エコロジーを大切にしている社風からリサイクルを重視している(甲39ないし甲46)。そして、申立人は原料への取り組み、あるいは申立人の多角経営の観点からすれば、本件商標の指定商品・役務のすべてにわたって申立人の商品との混同の可能性があるというべきである。
4 まとめ
以上のとおり、本件商標は、その指定商品全てについて商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に違反するものであり、第24類及び第25類の指定商品の一部については申立人の所有する登録商標と称呼・観念及び外観において共通し商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであり、第23類、第24類及び第25類の商品に関して、日本国内において広く知られた申立人の商標「PATAGONIA」と商品の出所について混同を生じるおそれがあることから商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。

第4 当審の判断
1 商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号該当性について
本件商標は、別掲1のとおり、装飾的な輪郭図形中に、羊の顔とおぼしき図形があり、この図形を左右から円弧状に内側に湾曲した葉の着いた枝が囲むように配されているものであって、その左側には、装飾的な上下の線に挟まれた「PROVINCIA DE」の文字、及び右側には、同様の上下の線に挟まれた「SANTA CRUZ」の文字が書され、これらの下に上段に「Patagonia」の文字、下段に「Wool」の文字を筆記体で二重になるように書し、さらに、その下にリボンとおぼしき図形中に「NON?MULESING WOOL」の文字を書したものなどを配してなるものである。
そして、上記の構成態様の中で、最も大きく書されているのは「Patagonia」及び「Wool」の文字であるが、該「Patagonia」の文字は、「南アメリカ大陸南部の地域。主にアルゼンチン領のコロラド川から南をいう。」(デジタル大辞泉)の意味を有する語であり、該「Wool」の文字は、「羊毛、毛糸、毛織物」等の意味を有する語であるから、その「Patagonia Wool」の文字部分は、「アルゼンチン国パタゴニア地方産のウール」程の意味合いを有するものである。
そうすると、該文字部分は、本件商標の指定商品の関係においては、その商品の原材料を表すものとして需要者に理解されるものというのが相当である。
また、下部の「NON?MULESING WOOL」の文字部分は、「MULESING」の文字が「ミュールズ手術(綿羊の尻にウジがわくのを防ぐために行うひだ部分の切除)」(甲16)の意味を有する英語であることから、「ミュールズ手術をしていない羊の羊毛」程の意味合いを理解させる場合があるとしても、該文字部分が商品の品質及び原材料を表しているとする証左は見当たらないものであり、これが本件商標の指定商品の品質であるとは、直ちに認めることができない。
さらに、上部の「PROVINCIA DE SANTA CRUZ」の文字は、スペイン語であり、該文字部分が「サンタクルス州」程の意味合いを有するものであるとしても、我が国の取引者、需要者には、一般に知られていないなじみのない語であるから、該文字部分は、特定の州名を想起し得ない一種の造語として認識されるというのが相当である。
してみれば、本件商標は、輪郭図形及び羊の顔とおぼしき図形部分及び「PROVINCIA DE SANTA CRUZ」の文字部分において自他商品の識別標識としての機能を有するものであるというのが相当である。
また、「NON?MULESING WOOL」の文字は、直ちに本件商標の指定商品の品質を直接的又は具体的に表示するものとして、一般に理解されるものとはいい難いものである。
そうすると、本件商標は、これを「アルゼンチン国パタゴニア地方産のウール」に係る指定商品について使用しても、商品の品質について誤認を生じるおそれがないというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当しない。
2 引用商標の周知性について
申立人の提出に係る証拠及びその主張によれば、以下のとおりである。
(1)日本国周知・著名商標リストについて
申立人が所有する引用商標4は、日本国周知・著名商標リストに掲載されている商標である(甲17)。
(2)取扱商品等について
申立人は、「日経トレンディ」(2016年7月号)、「PEAKS」(2016年11月号)及び「AERA/STYLE/MAGAZINE」(2016年6月1号)に、「アウトドアジャケット、レフュジティブパンツ、ヘッドバンド、アロハシャツ」等の商品を掲載している(甲24、甲25、甲27)。
また、申立人は、アウトドアウェアを中心にファッション全般から食品に至るまで様々な商品を取り扱っており、多角経営を行っている(甲23ないし甲25、甲27、甲34)。
(3)販売高・販売数について
申立人の作成した証拠「パタゴニア 売上高/販売数 一覧(2011年度?2016年度)」(甲18)によれば、申立人ブランドについて、日本国内の年間売上高は、2011年度から2016年度までの6年間で、毎年約100億円(1ドルを100円として換算。)を計上し、国内における申立人ブランドの販売点数は増加しており、2011年度に80万点だったものが、2016年度は約150万点となっている(甲18)。
さらに、申立人の「patagonia」の店名を冠する国内の直営店舗22店において、その入店者数は、直近3年間、毎年約200万人に上るとされている(甲21)。
(4)広告・宣伝等の程度について
申立人の作成した証拠によれば、日本国内で申立人ブランドを広告、販促のために、3年間(2014年度から2016年度)で日本において支出した額は、毎年年間合計で4億円を超えている(甲21)。
また、申立人は、有望なクライマー、スキーヤー、スノーボーダー、サーファー等の各分野のエキスパートを広告塔(甲31)とし、彼らをサポートする申立人ブランドを付した製品・契約金の提供をしている。
(5)小括
以上によれば、申立人ブランドである「patagonia」又は「パタゴニア」の文字は、本件商標の登録出願時及び登録査定時には、申立人の業務に係る商品「アウトドアウェア」等を表示するものとして、需要者の間において広く認識されていたものと認めることができる。
3 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標について
本件商標は、上記1のとおりの構成態様からなるところ、二段で大きく書されている「Patagonia Wool」(以下、同じ。)の文字部分は、上記1のとおり、「アルゼンチン国パタゴニア地方産のウール」程の意味合いを有するものであるから、該文字部分は、本件商標の指定商品との関係において、商品の原材料を表すものとして、取引者、需要者に理解、認識されるというのが相当である。
したがって、「Patagonia Wool」の文字部分は、本件商標において大きく表示されている部分であるが、これは、商品の原材料を表示するものであるから、これより自他商品の識別標識としての称呼及び観念は生じないものといえる。
また、「PROVINCIA DE SANTA CRUZ」の文字部分からは、その構成文字に相応して、「プロビンチャデサンタクルス」の称呼を生じ、特定の観念は生じないものである。
(2)引用商標について
引用商標は、「PATAGONIA」の文字又は「パタゴニア」の文字並びに、「patagonia」の文字と山を連ねたような図形等を結合したものからなるところ、該文字からは、「パタゴニア」の称呼及び広大な範囲の地名としての「パタゴニア」の観念を生じるものである。
(3)本件商標と引用商標との類否について
本件商標と引用商標とを比較すると、外観においては、本件商標は、輪郭図形及び羊の顔とおぼしき図形等を有するものであり、引用商標は、「PATAGONIA」、「パタゴニア」の文字及び、「patagonia」の文字と山を連ねたような図形を結合したもの等からなるものであるから、外観上、明確に区別できるものである。
また、称呼においては、本件商標は、「プロビンチャデサンタクルス」の称呼を生じ、引用商標は、「パタゴニア」の称呼を生じるものであるから、その構成音及び構成音数が明らかに相違するものであって、称呼上、相紛れることはないものである。
さらに、観念においては、本件商標の文字部分からは、観念は生じないものであり、引用商標からは、「パタゴニア」の観念を生じるものであるから、観念上、相紛れることはないものである。
なお、請求人は、本件商標から「パタゴニア」の称呼を生じ、引用商標からも「パタゴニア」の称呼を生じるから、両者は類似するものである旨を主張している。
しかしながら、本件商標から「パタゴニア」の称呼は生じないものであり、「Patagonia Wool」の文字部分は、本件商標の指定商品との関係においては、商品の原材料を表すものであるから、該文字部分は、自他商品の識別標識としての機能しないか非常に弱い部分であって、自他商品の識別標識としての称呼は生じない。
よって、請求人のかかる主張は、その前提において理由がない。
してみれば、本件商標と引用商標は、外観、称呼及び観念のいずれの点からみても相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標といわなければならない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
4 商標法第4条第1項第15号該当性について
引用商標は、上記2のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、需要者の間に広く知られている申立人の商標である。
しかし、本件商標と引用商標とは、上記3のとおり、明らかに非類似の商標であって別異の商標である。
してみれば、本件商標をその指定商品について使用しても、これに接する取引者、需要者をして引用商標を連想し、又は想起させることはなく、その商品が申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
5 まとめ
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第3条第1項第3号及び同法4条第1項第16号並びに同法第4条第1項第11号及び同第15号に違反してされたものでないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 別掲1(本件商標)


別掲2(引用商標4)


別掲3(引用商標5)


別掲4(引用商標9)


別掲5(引用商標10)


異議決定日 2017-03-27 
出願番号 商願2015-126304(T2015-126304) 
審決分類 T 1 651・ 262- Y (W232425)
T 1 651・ 272- Y (W232425)
T 1 651・ 263- Y (W232425)
T 1 651・ 13- Y (W232425)
T 1 651・ 261- Y (W232425)
T 1 651・ 271- Y (W232425)
最終処分 維持  
前審関与審査官 山田 啓之 
特許庁審判長 井出 英一郎
特許庁審判官 木住野 勝也
榎本 政実
登録日 2016-06-10 
登録番号 商標登録第5857620号(T5857620) 
権利者 豊島株式会社
商標の称呼 プロビンチャデサンタクルス、パタゴニアウール、ノンミュールシングウール、ノンミュールシング 
代理人 名古屋国際特許業務法人 
代理人 窪田 英一郎 

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