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審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) W11
管理番号 1327156 
異議申立番号 異議2015-900154 
総通号数 209 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2017-05-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2015-05-14 
確定日 2016-09-16 
異議申立件数
事件の表示 登録第5740919号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5740919号商標の商標登録を取り消す。
理由 第1 本件商標
本件登録第5740919号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1に示すとおりの構成からなり、平成26年10月17日に登録出願され、第11類「LED照明用器具,乗物用照明器具,家庭用電気式パン焼き機,冷蔵庫,フリーザー,換気フード,蓄熱器,給水栓,上水用浄水設備,空気浄化用殺菌灯」を指定商品として、同27年2月2日に登録査定、同月13日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標は商標法第4条第1項第7号及び第19号に該当するとして引用する商標(以下「引用商標」という。)は、別掲2に示すとおりの構成からなり(申立人が提出した証拠方法である甲第3号証、甲第7号証の1、甲第15号証の1ほかに表示されているもの。)、申立人が、商品「屋外用照明装置、屋内用照明装置、産業用LED照明装置」に使用していると主張しているものである。

第3 登録異議の申立ての理由(要旨)
申立人は、本件商標の登録は、商標法第43条の2第1号により取り消されるべきものであると申立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第29号証(枝番号を含む。)を提出している。
1 商標法第4条第1項第19号該当性
本件商標は、他人の業務に係る商品を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に周知な引用商標と同一又は類似の商標であって、不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を与える目的、その他不正の目的をいう。)をもって使用するものであるから、商標法第4条第1項第19号の規定に違反して登録されたものである。
2 商標法第4条第1項第7号該当性
本件商標の登録出願の経緯には、社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号の「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当する。
3 商標法第3条第1項柱書該当性
商標法第3条第1項柱書により商標登録を受けることができる商標は、現在使用しているもの又は近い将来使用をするものと解される。しかしながら、商標権者が本件商標を使用する意思がないことは、現在においてはおろか、将来においても明らかである。

第4 本件商標登録の取消し理由
当審において、商標権者に対して、平成27年12月21日付け取消理由通知書で通知した本件商標の取消理由は、要旨次のとおりである。
1 引用商標の周知性について
(1)証拠及び申立ての全趣旨によれば以下のことが認められる。
ア 申立人「アドバンスド オプトロニック ディバイシズ(アジア) カンパニー リミテッド」は香港の法人であり、「Advanced Optronic Devices (China) Co., Ltd.」、「AOD Japan Co., Ltd.」、「Advanced Optronic Devices (International) Inc.」、「Advanced Optronic Devices (Philippines) Inc.」、「AOD Malaysia Sdn Bhd」、「Thaixin Resources Co., Ltd (AOD Tailand)」らとともに企業グループ(以下「AOD企業グループ」という。)を形成していること(甲2及び申立ての趣旨)。
イ AOD企業グループは、2004年11月に設立の「Advanced Optronic Devices (China) Co., Ltd.」(以下「AOD(中国)」という。)を生産拠点として、LED製品の開発・製造・販売を行っていること(甲3(枝番を含む。)、甲7(枝番を含む。)及び申立ての趣旨)。その製品には、屋外用照明装置、屋内用照明装置、産業用LED照明装置などがあること(甲3ないし甲12)。
ウ AOD企業グループは、米国、香港、日本、フィリピン、マレーシア、タイ、インドネシア、カタール、UAE(ドバイ)、オマーン、オーストラリア、ニュージーランド、英国、オランダ、スペイン、ラトビア、ブラジル、メキシコの世界各国に営業拠点を有すること(甲2及び甲3の1の6枚目、7枚目)。
エ 我が国の営業拠点は、平成22年に設立された、株式会社AODジャパンであること(甲2及び甲13)。
オ AOD企業グループのLED照明装置は、街路灯、トンネル照明灯、屋内用照明灯などとして中国各地に設置されていること(甲14の1(2014年8月浙江省)、甲14の2(2009年6月浙江省)、甲14の3(2009年9月安徽省)、甲14の6(2014年5月山東省)、甲14の10(2013年山東省)、甲14の11(2007年山東省)、甲14の12(2013年山東省)、甲14の14(2010年山東省)、甲14の15及び甲14の16(2010年上海市)並びに甲14の17(2012年山東省))。
カ AOD企業グループのLED照明装置は、街路灯などの屋外用照明灯、屋内用照明灯、などとして中国以外の各国にも設置されていること(甲14の4(2014年10月タイ)、甲14の5(2013年マレーシア)、甲14の7(2012年日本)、甲14の8(2011年4月マレーシア)、甲14の9(2010年12月グアテマラ)及び甲14の13(2010年ラトビア))。
キ AOD企業グループの製品は、我が国に向けて、遅くとも2009年11月13日から継続して輸出販売されていること(甲15ないし甲20(枝番を含む。))。
ク 引用商標は、遅くとも2009年11月13日から現在に至るまで、取引書類(甲15ないし甲20(枝番を含む。))、英語及び中国語の製品カタログ(甲3ないし甲6)、企業パンフレット(英語)(甲7)、各製品の仕様書・工事図面・製品図面(甲8ないし甲12)、AOD企業グループのホームページ等に、同企業グループ及びその商品を表示するものとして使用されていること(甲2及び甲14(枝番を含む。))。
ケ AOD企業グループの事業は、2009年に中国国家科学技術部の国家プロジェクト「10都市、数万LED街路灯」計画(山東省イ坊市)に採用されたこと(甲7の1の19ページないし21ページ、甲7の2)。
コ AOD企業グループの手がけたイ坊市街の照明の様子は、中国の業界誌「照明技術と設計」の表紙に採用されたこと(甲25ないし甲28(枝番を含む。))。
サ AOD企業グループは、2012年までに世界の6都市(都市名不詳)においてLED照明設置事業に取り組んできたとの主張がされていること(甲7の1の5ページ、22ページないし25ページ、甲7の2及び申立ての趣旨)。
シ AOD企業グループは、中国発展改革委員会主催のLED省エネプロジェクトを担当し、フォーブス中国ベスト中小企業に選ばれ、中国住宅都市農村建設部の「LED街路灯基準」編纂の単独編集長に指名されるなど、様々な国家プロジェクト、地方のプロジェクトを担当してきたとの主張がされていること(甲7の1の4ページ、5ページ、10ページ、11ページ、甲7の2及び申立ての趣旨)。
ス AOD企業グループの事業は、2014年末までに中国及びその他外国において、50万個以上の屋外用LED照明、5百万個以上の屋内用LED照明として採用されたこと(甲3(枝番を含む。))。
セ AOD企業グループの事業は、2006年には「中国山東省ハイテク企業」に選出され、2010年には「高効率LED照明プログラム」が山東省の科学進歩賞を受賞し、2011年には、フォーブス中国ベスト中小企業に選ばれたこと(甲7の1の4ページ、5ページ、10ページ、11ページ、甲7の2)。
(2)以上によれば、AOD企業グループは、申立人を含めて7つの企業によりグループを形成しており、同企業グループは、AOD(中国)を生産拠点として、屋外用照明装置、屋内用照明装置、産業用LED照明装置などのLED製品の開発・製造・販売を行っており、米国、香港、日本ほかの世界各国に営業拠点を有していること、AOD企業グループのLED照明装置は、街路灯、トンネル照明灯、屋内用照明灯などとして中国各地及び中国以外の各国に導入・設置され、我が国に向けても2009年11月から継続して輸出販売されていること、引用商標は、遅くとも2009年11月から現在に至るまで、取引書類、製品カタログ、パンフレット、各製品の仕様書・工事図面・製品図面、AOD企業グループのホームページ等に、同企業グループ及びその商品を表示するものとして使用されていること、AOD企業グループの事業は、2009年に中国国家科学技術部の国家プロジェクト「10都市、数万LED街路灯」計画に採用され、同企業グループは、中国発展改革委員会主催のLED省エネプロジェクトなどの国家プロジェクトや地方のプロジェクトを担当するとともに、「中国山東省ハイテク企業」に選出され、同企業グループの事業が山東省の科学進歩賞を受賞し、フォーブス中国ベスト中小企業に選ばれていること、AOD企業グループの事業は、現在までに中国及びその他外国において、50万個以上の屋外用LED照明、5百万個以上の屋内用LED照明として採用されたことが確認できるものである。
してみれば、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、中国の、屋外用照明装置、屋内用照明装置、産業用LED照明装置などのLED製品の取引者、需要者の間において広く認識されていたということができる。
2 商標法第4条第1項第7号該当性
(1)本件商標と引用商標との対比
本件商標は、前記したように、その構成を別掲1に示すものであるところ、右底辺部分に切れ目を有する二等辺三角形を描き、その右下端部に重なるように下部が開いた電気記号の「Ω」のような図形を描き、その上部に4つの点状図形を、点灯する電球を表すように配置し、該Ω状の図形の右下端部の直線を右水平方向に延ばし、そこからさらに反時計回りの円弧を描き、その上部が水平になったところから左方向に水平線を描き、そこからさらにΩ状図形の右下端部の上部に向けて、そこに接する寸前まで垂直の直線を配してなる構成のものである。
この図形は、申立人が主張するように、「AOD」の文字を図案化してなるものと看取されるというのが相当と判断され、識別標識として強い印象を与える極めて特徴のある図形というべきである。
そして、引用商標は、色彩こそ異なるものの、その形状は本件商標とほぼ同一といえる程酷似した構成のものである。
(2)商標権者について
本件商標権者の居所は、中国山東省青島市であるところ、これは、AOD(中国)のある山東省イ坊市の隣の市であって(甲2及び甲29)、かつ、本件商標権者は、その名称及び本件商標を登録出願したことよりすれば、電気関連機器に関わる商品を取り扱っているといえ、その事業は、申立人らが行っているLED照明に関する事業と密接に関連するものである。
(3)本件商標の登録出願と採択の蓋然性
そして、証拠(甲15の1)によれば、引用商標は、遅くとも、本件商標登録出願日である平成26年10月17日の前である2009年11月13日には使用されていたものであり、本件商標は引用商標の使用が開始されていた時期より後れて登録出願されたものである。
そして、前記したように、本件商標は引用商標と、ほぼ同一といえるほど酷似した構成のものであり、本件商標を本件商標権者が独自に採択したとみるべき蓋然性は限りなく低いというのが相当である。
(4)判断
前記1で認定判断したように、引用商標は、本件商標の出願時及び査定時において、中国の、屋外用照明装置、屋内用照明装置、産業用LED照明装置などのLED製品の取引者、需要者の間において広く認識されていたといえるところ、本件商標権者の居所は、AOD(中国)のある山東省イ坊市の隣の市である山東省青島市であり、本件商標権者は、AOD(中国)の業務であるLED照明に関する事業を行う者であるといえることから、本件商標権者は、本件商標登録出願前において、AOD企業グループがLED製品に使用している引用商標を知悉していたと優に推認できるものである。
そうとすれば、本件商標の出願は、中国で広く知られていた引用商標について、これが、やがて我が国においても出願されるとの推測のもと、引用商標が我が国で登録されていないことを奇貨として、これを、先回りして、申立人やAOD企業グループに無断で剽窃的に出願した不正な目的を有するものというのが相当である。
してみれば、先願登録主義を旨とする我が国の商標登録制度を前提としても、そのような経緯に基づく本件商標登録出願行為は、条理上許されないというべきであり、また、商標法の目的(商標法1条)にも反し、公正な商標秩序を乱すものというべきであって、本件商標は「公の秩序又は善良な風俗を害するおそれがある商標」に該当するというべきである。
(5)結語
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものというべきである。

第5 商標権者の意見
商標権者は、前記第4の取消理由の通知に対し、指定した期間を経過するも何ら意見を述べていない。

第6 当審の判断
本件商標は、前記第1の構成からなるものである。
そして、本件商標について通知した前記第3の取消理由は、妥当なものと認められる。
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号に違反してされたものであるから、他の申立の理由について判断するまでもなく、同法第43条の3第2項の規定により、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 別掲
1 本件商標


2 引用商標(色彩は、原本を参照。)




異議決定日 2016-05-12 
出願番号 商願2014-87446(T2014-87446) 
審決分類 T 1 651・ 22- Z (W11)
最終処分 取消  
前審関与審査官 岩崎 安子 
特許庁審判長 堀内 仁子
特許庁審判官 今田 三男
小松 里美
登録日 2015-02-13 
登録番号 商標登録第5740919号(T5740919) 
権利者 青島九龍徳電気安装有限公司
商標の称呼 エイオオデイ 
代理人 ▲吉▼川 俊雄 

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