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審決分類 審判 全部取消 商53条の2正当な権利者以外の代理人又は代表者による登録の取消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X21
管理番号 1327105 
審判番号 取消2014-300059 
総通号数 209 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2017-05-26 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2014-01-29 
確定日 2017-03-21 
事件の表示 上記当事者間の登録第5201750号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5201750号商標の商標登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5201750号商標(以下「本件商標」という。)は、「ルクエ・スチームケース」の片仮名を標準文字で表してなり、平成20年6月12日に登録出願、第21類「シリコン製の電子レンジ調理用容器,その他の電子レンジ調理用容器,シリコン製食品保存用容器,電子レンジ用の食料用容器」を指定商品として、同21年1月30日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲1号証ないし甲21号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 請求人について
請求人は、シリコン製の調理器具をはじめとする台所用品や家庭用品の製造及び販売を業とするスペイン法人である。1996年にラバー ボス エス エルとして設立された後、2006年8月28日にスペイン法人ルクエ エス エルを吸収合併することによってその事業を包括的に承継したものである(甲11)。なお、前記吸収合併に伴い、請求人はその名称をラバー ボス エス エルからルクエ エス エルに変更したものである(以下、吸収合併前のルクエ エス エルを「旧ルクエ社」という。)。
旧ルクエ社は1986年に設立されて以降、「Lekue」(2文字目及び5文字目の「e」にはアクセント記号が付されている。以下同じ。)(ルクエ)ブランドのもとで、繊細な金型成形加工技術に基づき家庭用品を手がけてきたが、その後、1999年頃に素材をプラチナシリコンに変え、耐熱特性に優れた型抜きしやすいケーキ型の販売の成功が、プラチナシリコンを使った調理器具ならスペインのルクエ社という評判を得る結果となった(甲10)。それ以来、プラチナシリコンを使ったさまざまな調理器具が開発され、優れた機能性及びカラフルでデザイン性にあふれた請求人商品は、我が国はもちろんのこと、世界中で人気のある商品となっている。
請求人は、旧ルクエ社が設立された1986年以来本件商標の出願以前より、請求人商品について引用商標を使用しており、引用商標は、請求人が製造販売する商品を表示する商標として、スペイン本国はもちろんのこと、わが国においても、調理器具の需要者・取引者の間において、周知著名になっている。
2 請求人が、パリ条約の同盟国において商標に関する権利を有する者であることについて
請求人は、パリ条約の同盟国において、以下の商標に関する権利を有する(以下、これらをまとめて「引用商標」という。)。
(1)欧州共同体商標登録第4490561号(以下「引用商標1」という。)(甲3)
出願日:平成17年7月13日
登録日:平成18年8月7日
商標権者:ルクエ エス エル
商標:別掲1のとおり
指定商品:第10類「マッサージ機器、美容用マッサージ器、振動マッサージ器、魚の目用ナイフ、腹帯、温風治療装置、不眠症用催眠まくら」、第21類「家庭用又は台所用の器具及び容器(貴金属製のもの又はコーティング加工したものを除く)、ガラス製品、磁器製及び陶器製品(他の類に該当するものを除く)、ブラシ(絵筆及び塗装用ブラシを除く。)、くし及びスポンジ、電気式歯ブラシ、テーブルリネン以外のコースター及びマット(食卓用器具)(紙製のものを除く。)、電気式くし、ろうそく消し(貴金属製のものを除く)」及び第27類「カーペット、バスマット、滑止めマット、マット、敷物、ドアマット」
(2)欧州共同体商標登録第572271号(以下「引用商標2」という。)(甲4)
出願日:平成9年7月2日
登録日:平成10年12月7日
商標権者:ルクエ エス エル
商標:別掲2のとおり
指定商品:第21類「家庭用又は台所用の器具及び容器」
なお、引用商標2については、登録時においては、Jose Maria Llorente Hompanera氏の名義となっているが、平成17年6月1日付けで旧ルクエ社へ移転登録がなされている(甲5)。その後、平成18年に請求人が旧ルクエ社を吸収合併したから、請求人は、本件商標の出願日である平成20年6月12日において、引用商標2の権利者であったといえる。
(3)スペイン国商標登録第2077329号(以下「引用商標3」という。)(甲6)
出願日:平成9年2月28日
登録日:平成10年4月20日
商標権者:ルクエ エス エル
商標:別掲2のとおり
指定商品:第21類「台所用の器具及び容器」
引用商標3についても、登録時においては、Jose Maria Llorente Hompanera氏名義となっているが、平成17年6月3日付けで旧ルクエ社へ移転登録がなされている(甲7)。その後、平成18年に請求人が旧ルクエ社を吸収合併したから、請求人は、本件商標の出願日である平成20年6月12日において、引用商標3の権利者であったといえる。
よって、請求人は、パリ条約の同盟国において引用商標1ないし3に関する権利を有する者である。
3 商標の同一又は類似について
(1)本件商標について
本件商標は、片仮名で「ルクエ・スチームケース」の文字を書してなる商標である。
本件商標中は、その構成語である「ルクエ」と「スチームケース」の間に、「・」(中黒)が表記されていることから、必ずしも構成上一体的なものとはいえず、「ルクエスチームケース」の称呼が全10音と比較的に長い称呼であることも相俟って、「ルクエ」と「スチームケース」がそれぞれ独立したものとして看取されるものである。
特に、本件商標を構成する「ルクエ」の語は、スペインの台所用品や家庭用品のメーカーである出願人のブランド名を示すものであり、我が国においても雑誌等に取り上げられ、本件指定商品の取引者、需要者の間において広く知られている(甲8)。
また、「スチームケース」の語は、英語の「STEAM(ふかす、蒸す)」及び「CASE(容器、入れ物)」の音訳を表記したものと思われる(甲9)。
これに対して、需要者・取引者の注意を惹きやすい語頭部分に位置し、特定の意味を有しない特異な造語と認識される「ルクエ」の文字部分は、圧倒的に強く支配的な印象を与えるものである。そうすると、本件商標の構成中、自他商品識別標識として機能する部分は、「ルクエ」の文字部分となり、本件商標からは「ルクエ」の称呼も生じる。
してみれば、本件商標は、「ルクエ」の文字部分が本件商標に接する需要者・取引者に独立した要部と認識されるため、簡易迅速を尊ぶ取引市場においては、「ルクエ」の文字部分をもって商取引に資される場合も少なくないといい得るところである。
したがって、本件商標からは、「ルクエスチームケース」の称呼のほか、「ルクエ」の称呼をも生じる。
(2)引用商標について
引用商標1は、別掲1のとおりであって(甲3)、スペイン語の「Lekue」の文字とその下に配された波線図からなる商標である。引用商標1からはその構成文字に応じて「レクエ」の称呼が生じる他、請求人のブランド「Lekue」は、我が国において「ルクエ」との呼び名で広く知られているから、引用商標1からは「ルクエ」又は「レクエ」の称呼が生じ、「スペインの台所用品や家庭用品のメーカーであるルクエ」の観念が生じる。
引用商標2及び3については、別掲2のとおりであって(甲4、甲7)、欧文字の「L」をロゴ化した6角形の図形に、白抜きの「EKUE」(1文字目及び4文字目の「E」にはアクセント記号が付されている。)の文字が横一連に表記されてなる商標である。引用商標2及び3も、引用商標1と同様に請求人ブランドの我が国における周知性より「ルクエ」又は「レクエ」の称呼が生じる。そして「スペインの台所用品や家庭用品のメーカーであるルクエ」の観念が生じる。
(3)本件商標と引用商標との対比
そこで、本件商標を引用商標と対比するに、本件商標と引用商標からは、ともに「スペインの台所用品や家庭用品のメーカーであるルクエ」と共通の観念が生じる。また、本件商標と引用商標とは、「ルクエ」の称呼を共通にする。
(4)まとめ
以上のとおり、本件商標と引用商標からは同一の観念が生じ、称呼も同一であり、両商標の外観も類似するというべきである。これらを総合すれば、本件商標と引用商標は、同一の商品・役務に使用した場合には、需要者・取引者において出所の混同を生じるほどに相紛らわしく、引用商標に類似するというべきである。
4 商品の同一又は類似について
本件商標の指定商品と、引用商標1の指定商品のうち第21類の指定商品及び引用商標2の指定商品並びに引用商標3の指定商品とを対比すると、その生産部門、販売部門、原材料及び品質、用途、需要者の範囲が完全に一致するものである。よって、本件商標は、引用商標に関する請求人の権利に係る商品と同一又は類似する商品を指定商品とするものである。
5 請求人及び被請求人の関係について
(1)請求人の業務に係る商品の販売金額
請求人は、平成13年に被請求人との取引を開始し、平成15年以降は、平成18年の請求人による旧ルクエ社の吸収合併を経て現在に至るまで、我が国においては専ら被請求人に対し請求人の業務に係る商品である調理用具(以下「請求人商品」という。)を販売してきた。甲第11号証は、上記の販売事実が真正であることを請求人が宣誓した書面であり、スペインにおいて公証人認証を受けたものである。甲第11号証の宣誓書16頁目に添付された売上高を示す書類によれば、平成13年から本件商標が出願された平成20年までの被請求人への請求人商品の販売額が約2億5千万円を超えるまでになったことが窺い知れる。この売上高は決して小額ではなく、単なる得意先又は顧客の範囲を超えた売上高であるといえる。
また、甲第12号証は、平成17年から平成20年における請求人商品の被請求人への請求書である。さらに、甲第13号証は、平成19年から平成20年に前記請求書に対する支払いが請求人宛に送金されたことを示すスペインのSabadell Atlantico銀行の送金確認書の一部である。甲第13号証に記載された請求書番号及び合計金額は、甲第12号証に記載されたものとそれぞれ一致している。なお、甲第13号証によれば、送金者が「コラム インターナショナル ビー ブイ」と記載されているが、当会社は被請求人の親会社であり(甲21)、全ての子会社の支払いをこの親会社が行っているという事情による。
以上より、請求人と被請求人との間には、本件商標の出願日より前の約8年間にわたって継続的な取引関係が存在したこと、かかる取引を通じて請求人と被請求人との間には取引上の信頼関係が形成され、被請求人は、請求人商品の販売体系に組み込まれていたということができる。
(2)上記のとおり、請求人は、我が国においては、平成15年以降請求人商品についての販売を専ら被請求人に行ってきた。また、被請求人以外の者から日本における販売代理店を希望する旨の問い合わせに対し、請求人は、「被請求人が長年の間日本における販売代理店である」との回答をしている(甲14)。
(3)わが国における広告・報道記事
請求人商品は、我が国における多くの雑誌記事等で紹介されている。
甲第8号証の1ないし16(審決注:15の誤記と認める。)は、平成19年に我が国において出版された雑誌記事である。これらには、いずれにも引用商標の請求人商標又はその呼び名として広く知られている「ルクエ」の表示と共に、問い合わせ先として被請求人の名称及び電話番号等の連絡先が表示されている。
したがって、当該雑誌記事等に接した需要者・取引者は、そこに「販売代理店」の明示がなくとも、そこに問い合わせ先として表示された会社が我が国における請求人の唯一の輸入代理店であることを認識するというのが自然である。
(4)被請求人による自認
被請求人は、「欧米家庭用品・キッチンウェア・リビングウェアなどの輸入及び販売」を主な事業内容とする、昭和51年10月15日に設立された日本法人である(甲15)。
被請求人のHP上で、引用商標はトップページに表示されており、請求人商品の販売店、レシピ、オンラインショップなどが紹介されている(甲16)。また、同HP上で、「コラムジャパン株式会社(当社)は、スペイン、ルクエ社の日本における総輸入代理店として、同社商品を輸入・販売しています。」との記載があることから、被請求人が、自ら日本国内における請求人商品の販売代理店であることを自認しているということができる(甲17)。
以上のとおり、平成15年から平成20年6月までの間、被請求人は、事実上請求人の日本における輸入総代理店として事業を行い、対外的にもそのように自認すると共に、報道機関や需要者・取引者等の第三者にとっても請求人の日本における輸入総代理店であると認識されていた。
6 被請求人が、本件商標の登録出願の日前1年以内に、請求人の日本における代理人と実質的に同一視できる者であったことについて
商標法第53条の2は、商標に関する権利を有する者の代理人もしくは代表者が、その権利者との間に存する信頼関係に違背して正当な理由がないのに同一又は類似の商標登録をした場合に、その取り消しについて審判を請求できる旨の規定である。したがって、商標法第53条の2にいう「商標に関する権利を有する者の代理人又は代表者」は、商標権者から何らかの代理権を授与された者或いは法人である商標所有者の代表者のように狭く解釈すべきではなく、広く商標権者の商品を輸入し販売する者を指し「契約に基づき継続的な法的関係があるか、少なくても、継続的な取引から慣行的な信頼関係が形成され、外国の商標権者の販売体系に組み込まれている者であることを要する」と解するべきであり、かつ、それをもって足りるというべきである(甲18)。
特許庁における審決例においても、「商標法第53条の2の規定は、パリ条約6条の7の規定を受けて昭和40年法律第81号により追加された規定であって、該条約の規定の趣旨よりすれば、本条の代理人、代表者の地位にある者の範囲は、特約店、輸入総代理店等外国商標権者との間に、その商品の販売について特別の契約上、慣行上の関係を有する者が含まれると解されるとみるのが相当である」のように述べられており、商標法第53条の2の規定による取消審判の被請求人が同条にいう「代理人又は代表者」に該当するか否かは、単に請求人と被請求人との間に直接書面による取引契約が存在するか否かに囚われることなく、両者間の取引の内容や信頼関係の程度等に照らして実質的に「代理人」と同一視することができるか否かに基づいて判断されている(甲19)。
本件においては上記5において詳述したとおり、被請求人は、平成13年には請求人と取引を開始していて、平成15年からは請求人商品の日本における輸入総代理店として事実上、事業活動を開始していた。そして、請求人と被請求人の継続的関係は、現在も続いている。
してみれば、被請求人は、平成15年から現在に至るまでの期間、請求人の輸入販売総代理店若しくは輸入販売総代理店に準ずる地位にあったのであり、被請求人においてもそのことを自認し、対外的にもそのように表明していた(甲8、甲11、甲14)。
このように、請求人が本件商標の出願の日(平成20年6月12日)より起算して一年以内の時期に、請求人が製造販売する請求人の当該権利にかかる商品について日本の輸入元となり、本件商標の出願に先立つ約8年の期間にわたって継続的に請求人商品を販売していたことからすれば、被請求人は実質的に請求人の日本国内における輸入販売総代理店を任ずる者であったということができ、被請求人は本件商標の登録出願の日前1年以内において請求人の事実上の輸入販売総代理店として、我が国における「代理人または代表者」の地位にあったとみるべきである。
7 承諾及び正当な理由について
旧ルクエ社と被請求人の間において、平成13年12月18日付けでAUTHORIZATION TO THE APPLICATION OF TRADE MARK REGISTER(商標登録出願に係る承諾書)(以下「本承諾書」という。)が締結されている(甲20)。
第1段落「ルクエはコラムジャパンに対し、ルクエの名義及びルクエの利益において、日本において且つ当該国に影響を有する範囲においてのみ、上記セクション1に規定する『本件商標』を『本件商品』について登録するために必要な手続きを取る権限を与える。」
第2段落「この権限付与は、以下に規定する事項を条件とする。1.コラムジャパンの義務は、日本特許庁における商標登録原簿上、ルクエが商標を有する者として表示されるようにするための全ての手続を取る義務を含むものとする。」
第2段落の4.a)「コラムジャパンとルクエは、商標の使用に関する契約書を締結する。かかる商標の使用に関する契約書が本承諾書の署名の日から15日以内に締結されない場合には、商標登録出願に係るこの権限の付与は、いかなる効力も有しないものとして終了するものとする。」
これによれば、旧ルクエ社が商標出願について被請求人に与えた承諾は、あくまでも旧ルクエ社の名義において商標を出願・登録することについて承諾を与えたのに過ぎず、かつ、被請求人は、出願した商標が商標登録原簿上旧ルクエ社の名義で登録されるように手続きを取る義務を負っていたのであるから、旧ルクエ社が被請求人の名義で本件商標を出願、登録することについて承諾したものとみる余地はない。また、第2段落の4.a)で規定される「商標の使用に関する契約書」は本承諾書が署名された日から15日以内には締結されておらず、それ以後も同内容の契約書が締結された事実はない。よって、本承諾書は第2段落の4.a)の規定により終了している。したがって、請求人が被請求人に対して引用商標に類似する本件商標を出願することについて、承諾を与えたことはない。
また、被請求人が、請求人の承諾を得ないで本件商標の登録出願をしたことについて何ら正当な理由はない。
したがって、本件商標は、正当な理由がないのに、請求人の承諾を得ることなく、被請求人によって商標登録出願がなされ、登録されたものである。
8 結語
以上の次第で、本件商標は、パリ条約の同盟国である欧州共同体商標意匠庁及びスペインにおいて請求人が有する商標に関する権利に係る商標に類似する商標であって、当該権利に係る商品及び役務に類似する商品を指定商品とするものであり、かつ、その商標登録出願は、正当な理由がないのに請求人の承諾を得ることなく、本件商標の出願の日前1年以内に請求人の代理人の立場にあった被請求人によってされたものであるから、その登録は商標法第53条の2の規定により取り消されるべきである。
よって、請求の趣旨に記載のとおりの審決を求める。

第3 被請求人の主張
被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙1号証ないし乙4号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 引用商標について
本件審判請求書において請求人がパリ条約の同盟国において商標に関する権利を有する者であることにつき、引用された商標は以下のとおりである。
引用商標1:欧州共同体商標意匠庁の商標主登録原簿上の商標登録第4490561号
引用商標2:欧州共同体商標意匠庁の商標主登録原簿上の商標登録第572271号
引用商標3:スペインの商標登録原簿上の商標登録第2077329号
審判請求書には、引用商標1は、吸収合併前の旧ルクエ社が2005年(平成17年)7月13日に出願し、2006年(平成18年)8月7日に登録され、その後、2006年(平成18年)8月28日にラバー ボス エス エルが旧ルクエ社を吸収合併したのち、その名称をLEKUE,S.L.(請求人)に変更したため、請求人はパリ条約の同盟国において引用商標1に関する権利を有する者である旨が記載されている。
引用商標2については、1998年(平成10年)12月7日にJose Maria Llorente Hompanera氏名義で登録され、その後、2005年(平成17年)6月1日付で旧ルクエ社に商標権が譲渡されて移転登録がなされ、更にその後、2006年(平成18年)8月28日にラバー ボス エス エルが旧ルクエ社を吸収合併したのち、その名称をLEKUE,S.L.(請求人)に変更したため、請求人はパリ条約の同盟国において引用商標2に関する権利を有する者であるとの趣旨と推測される。
引用商標3については、1998年(平成10年)4月20日にJose Maria Llorente Hompanera氏名義で登録され、その後、2005年(平成17年)6月3日付で旧ルクエ社に商標権が譲渡されて移転登録がなされ、更にその後、2006年(平成18年)8月28日にラバー ボス エス エルが旧ルクエ社を吸収合併したのち、その名称をLEKUE,S.L.(請求人)に変更したため、請求人はパリ条約の同盟国において引用商標3に関する権利を有する者であるとの趣旨と推測される。
そうすると、本件商標の出願日である2008年(平成20年)6月12日よりも前の2006年(平成18年)8月28日に、請求人が、現に旧ルクエ社を吸収合併し名称変更等することで引用商標1ないし3を取得していたかが確認されなければならない。そのための証拠として、請求人の代表取締役社長が上記吸収合併・名称変更等を宣言した宣誓書(甲11)が提出されているが、同宣誓書は内容の真実性がどの程度担保されるか明らかでない。同宣誓書において言及され、本件の事実関係を直接示すと考えられる「the notary deed dated 20 February 1996, Granted by the Notary Public of Barcelona, Mr. Juan Jose Lopez Burniol, with the notary protocol number 438」(「バルセロナの公証人であるジュアン ホゼ ロペス ブルニオ(公証人番号438)により認められた1996年2月20日の公正証書」)及び「the merger public deed granted on August 28, 2006 by the undersigned Notary Public under the notarial protocol number 3072」(「2006年8月28日に承認された合併に関する公正証書(公証人議定書第3072号)」)又はそれらの法的効力ある写しの提出を求める。
2 商標の同一又は類似について
(1)引用商標1との類否について
ア 本件商標は「ルクエ・スチームケース」の片仮名文字を同書体・同大・等間隔をもって横書きに書してなる。「ルクエ」と「スチームケース」の間には「・」(中黒)が存するものの、その前後に特に余白等が設けられているわけでもなく、構成上一体不可分の商標である。なお、商標の構成に「・」(中黒)が存していても商標全体は一体不可分となり得る(乙1)。
また、本件商標はその構成文字に即して「ルクエスチームケース」と淀みなく一気に称呼できる。この称呼は中間の長音を含めても全10音程度であり、格別冗長でもない(乙2)。
したがって、本件商標は、取引者・需要者において全体が一体不可分の「ルクエ・スチームケース」とのみ認識・把握され、上記「ルクエスチームケース」との称呼のみ生じる。
一方、本件商標は造語であり、特定の観念は直ちに生じない。この点については更に下記エで詳述する。
イ これに対し、引用商標1は、「Lekue」の文字の下に波線を結合させた構成の商標である。
この引用商標1からは、「Lekue」の文字を英語風・ローマ字風に称呼した「レクエ」の称呼が生じる一方、特定の観念は直ちに生じない。
これらの点については更に下記エで詳述する。
ウ 本件商標と引用商標1とを対比する。
本件商標と引用商標1の外観が大きく異なることは一見して明らかである。
また本件商標からも引用商標1からも特定の観念は生じず、両者は観念上比較すべくもなく非類似である。
本件商標から生じる称呼「ルクエスチームケース」と引用商標1から生じる称呼「レクエ」では、称呼上重要な地位を占める語頭の「ル」と「レ」が相違するのみならず、「スチームケース」の称呼の有無により、音数・語調・語感が全く異なるため、類似しないことが明らかである。
よって、両商標は、外観、観念及び称呼のいずれの点においても類似せず、これらをいかに総合的に考察しても相互に非類似の商標である。
エ ところで、請求人は、雑誌等(甲8)を提出し、本件商標を構成する「ルクエ」の語がスペインの台所用品や家庭用品のメーカーである請求人のブランド名を示すものとして本件指定商品の取引者、需要者の間において広く知られていたとし(審判請求書第6頁)、本件商標及び引用商標1から「ルクエ」の称呼が生じ、ともに「スペインの台所用品や家庭用品のメーカーであるルクエ」の観念を生じるとしている。
しかしながら、そもそも「ルクエ」なる語は、被請求人が商標の選択にあたり語調や語感の良さから独自に創出したものであり、被請求人固有の造語である。仮に「Lekue」を片仮名表記にするならば、日本においては、例えば欧文字からなる単語「lemon」が「レモン」、「lesson」が「レッスン」、「leg」が「レッグ」、「less」が「レス」、[lens」が「レンズ」、「letter」が「レター」などと称呼されているのと同様に、英語風・ローマ字風に「レクエ」とするのが自然であり、「ルクエ」とは表記されない。請求人が日本において当初から引用商標1ないし3を「ルクエ」と表記していたこともなく、「Lekue」から「ルクエ」の称呼等は当然には生じない。
上記の点は、請求人がその保有する登録意匠(登録第1319414号等)、登録商標(登録第5503064号)などに関し、自己の名称である「Lekue,S.L.」を「レクエ、エス.エル.」と表記していることからも明らかである(乙3)。
「ルクエ」の語の周知・著名性については、仮にこの語が現在日本国内において一般に知られるに至ったとしても、過去にそうであったかは別であり、現在より5年以上前の著名性につき、甲第8号証の雑誌等での紹介記事のみをもって「ルクエ」の語(及び引用商標1)がスペインの台所用品や家庭用品のメーカーである出願人のブランド名を示すものとして本件指定商品の取引者、需要者の間において日本国内で広く知られていたということはできず、本件において周知・著名性等を根拠として両商標の観念類似や称呼類似を導くことができない。
なお、甲第8号証の13、14及び15はウェブサイトの画面をプリントアウトしたものであるが、2014年1月26日の画面のプリントアウトであり、有効な証拠となり得ない。
(2)引用商標2及び3との類否について
引用商標2及び3は、商標構成、特に6角形の図形と白抜きの「EKUE」の文字を組み合わせている点に大きな特徴を有しているもので、本件商標との対比においては、引用商標1にも増して、外観、観念及び称呼のいずれの点においても非類似であることが明らかである。そもそも引用商標2及び3の構成では、6角形の図形中白抜き部分につき、取引者、需要者がこれを「L」と認識し、商標全体から「LEKUE」の文字を認識することは困難である。
3 請求人及び被請求人の関係について
(1)請求人商品の販売額について
ア 請求人は、「平成15年以降は、平成18年の請求人による旧ルクエ社の吸収合併を経て現在に至るまで、我が国においては専ら被請求人に対し請求人商品を販売してきた」と述べ、これを裏付けるための証拠として甲第11号証(宣誓書)を引用している。しかしながら、甲第11号証は証拠力が不明であるのみならず、そもそも甲第11号証において、この点は宣誓されていない。
イ 更に、審判請求書においては、「甲11の宣誓書16頁目に添付された売上高を示す書類によれば、平成13年から本件商標が出願された平成20年までの被請求人への請求人商品の販売額が約2億5千万円を超えるまでになったことが窺い知れる。この売上高は決して少額ではなく、単なる得意先又は顧客の範囲を超えた売上高であるといえる。」と記載されている。
しかしながら、第一に、この宣誓書において宣誓されているのは、被請求人への売上高ではなく、「日本への売上高」である。すなわち、本宣誓書では被請求人への請求人商品の売上高は立証されない。
第二に、被請求人への請求人商品の販売額として2001年(平成13年)から2008年(平成20年)末までの販売総額が引用されている点で失当である。本件商標の出願日は2008年6月12日であるから、2008年(平成20年)の販売額につき少なくとも2008年6月12日以後の販売額を含めることはできない。なお、仮に甲第12号証によるならば、2008年(平成20年)1月1日から同年6月12日までの被請求人への請求人商品の販売額は84,188.21ユーロであり、2001年(平成13年)から2008年6月12日までの約7年半の累計販売額で、1,500,113.04ユーロである(甲12の62?72)。
第三に、審判請求書において「この売上高は決して少額ではなく、単なる得意先又は顧客の範囲を超えた売上高であるといえる。」と述べられているが、これを少額でないとする根拠及び基準が明らかでない。むしろ、もし甲第11号証(第16頁目に添付された売上高を示す書類)によるのであれば、例えば2009年における日本への販売額は1,629,000ユーロとあり、2001年(平成13年)から2008年6月12日までの約7年半の上記累計販売額(1,500,113.04ユーロ)は2009年単年での販売額にも到達しておらず、本件商標の出願日である2008年6月12日時点までの販売額をもって得意先又は顧客の範囲を超えた関係といえるか不明である。
(2)請求人の日本での販売先について
上記のとおり、甲第11号証の宣誓書においては、本件商標の出願日である2008年6月12日までに専ら被請求人に対し請求人商品を販売してきたということが宣誓されていない。
甲第14号証の1及び2としてe-mail写しが提出されているが、前者においては「a distributor」と述べられているにとどまり、後者においては(被請求人を含め)特定の販売代理店の名称には触れられていない。
その他、この点を立証する証拠は何ら提出されていない。
(3)日本国内における広告・報道記事について
甲第8号証として平成19年(2007年)に日本国内で出版された雑誌記事等が提出されている。そして、これらの雑誌記事等には「ルクエ」の表示と共に問い合わせ先として被請求人の名称等が表示されているから、これら雑誌記事等に接した取引者・需要者は被請求人が日本における請求人の唯一の輸入代理店であると認識するのが自然とされている。しかしながら、雑誌記事等において商品取扱店が記載されるのはごく普通に行われることであるとともに、唯一の輸入代理店でなくても取扱店として記載されることは通常行われることであり、上記雑誌記事等に接した取引者・需要者が、被請求人を日本における請求人の唯一の輸入代理店と認識するというのは困難である。
なお、甲第8号証の13ないし15は証拠として不適切である。
(4)被請求人のホームページについて
甲第17号証として被請求人のホームページの画面をプリントアウトしたと推測されるものが提出されているが、そもそもこれは本件商標の出願日である2008年(平成20年)6月12日よりも5年半以上経過した2014年1月27日の画面をプリントアウトしたものである。甲第17号証からは、2014年1月27日において被請求人が事実上総輸入代理店の地位を有していたかはともかく、少なくとも本件商標の出願の日(2008年(平成20年)6月12日)前1年以内に被請求人が請求人の代理人の立場にあったことを示すものでないことは明らかである。
4 被請求人が本件商標の登録出願の日前1年以内に請求人の日本における代理人と実質的に同一視できる者であったかについて
商標法第53条の2にいう「商標に関する権利を有する者の代理人又は代表者」を広く解すべきとしているが、むしろ、「『代表者』は、法人である商標所有者の代表者、『代理人』は、自然人であると法人であるとを問わず商標所有者からなんらかの代理権を授与されたものを指す。」との解釈が有力である(特許庁編「工業所有権法(産業財産権法)逐条解説」(第19版)、乙4)。
しかしながら、本件においては、上記「代理人又は代表者」をいずれと解そうとも、上記3で述べたとおり、少なくとも本件商標の出願の日前1年以内に被請求人が請求人の日本における「代理人」の地位にあったかが不明であり、「代表者」でなかったことも自明である。
5 承諾について
(1)甲第20号証(本承諾書)について
本承諾書によると、この書面の両当事者の署名日は、2001年(平成13年)12月18日である。しかるに、請求人によれば、引用商標1は上記署名日より後の2005年(平成17年)7月13日に出願され2006年(平成18年)8月7日に登録され、引用商標2及び3もそれぞれ上記署名日より後の2005年(平成17年)6月1日付及び同年6月3日に旧ルクエ社がJose Maria Llorente Hompanera氏から譲渡を受けたものである(上記1参照)。つまり、2001年(平成13年)12月18日において旧ルクエ社は、商標登録により生じた権利及びこれらに相当する権利を保有しておらず、実際には日本国においても外国においても商標に関する権利を何ら有していなかった。
すなわち、本承諾書は、そもそも旧ルクエ社が商標に関する権利につき承諾を与え得る法的地位にあったか不明な状況にもかかわらず所定の「権限を与える」ことを内容としており、しかも、原則としてその15日後にこの承諾書自体が失効するというものである。なお、この承諾書全体は終了し、失効した。
要するに、本承諾書は、規定内容の有効性に疑義があるとともに、仮に有効だったとしても、本承諾書自体の失効により法的状況は両当事者が本承諾書に署名する以前の状態(旧ルクエ社は商標に関する権利を有しておらず、かつ両当事者間に取り決めもない状態)に復帰しており、もはや本件においては法的意味が乏しい。
(2)事後の黙示の承諾について
本件には以下の事情が存する。日本国内での請求人商品の販売数が急増したことに伴い、日本国内に海賊品等が出回る事態が生じた。これに対し、被請求人は請求人と共に対策を検討する等対処した。例えば2010年9月30日には、請求人の代表取締役社長シャビエ コスタ ロンチ氏が、当時被請求人の親会社であったコラム インターナショナル ビー ブイのアルノ・デ・ワイ(Arnoud de Waij)氏とともに来日し、請求人代理人(弁理士)、被請求人の当時の代表取締役、被請求人代理人ら(弁護士、弁理士)と共に協議を行っている。上記対策の一環として、本件商標等の商標権に基づく第三者に対する商標権侵害等の警告書の送付、税関における知的財産侵害物品の差止(いわゆる水際阻止)などが行われた。海賊品の水際阻止は、請求人認識のもと現在も被請求人が費用を負担して行っている。なお、本件水際阻止の成果は財務省における「平成25年の税関における知的財産侵害物品の差止状況(詳細)」などでも取り上げられている。
このように、請求人は被請求人保有の本件商標に基づく海賊品等への対策を認識し協働して対処しており、仮に本件商標に関する権利を請求人が有すると仮定したとしても、少なくとも請求人の事後的な黙示の承諾がなされていると解さざるを得ない。
6 正当な理由について
上述のとおり、本件商標は被請求人が独自に創出した固有の語を選択し出願したものであり、もとよりその出願及び登録は正当である。
7 むすび
以上、本件商標の登録が商標法第53条の2の規定により取り消されるべきでないことは明らかである。

第4 当審の判断
1 商標法第53条の2は、「登録商標がパリ条約の同盟国、世界貿易機関の加盟国若しくは商標法条約の締結国において商標に関する権利(商標権に相当する権利に限る。)を有する者の当該権利に係る商標又はこれに類似する商標であって、当該権利に係る商品若しくは役務又はこれらに類似する商品若しくは役務を指定商品又は指定役務とするものであり、かつ、その商標登録出願が、正当な理由がないのに、その商標に関する権利を有する者の承諾を得ないでその代理人若しくは代表者又は当該商標登録出願の日前1年以内に代理人若しくは代表者であった者によってされたものであるときは、その商標に関する権利を有する者は、当該商標登録を取り消すことについて審判を請求することができる。」と規定し、パリ条約6条の7の規定を実施するため、すなわち、他の同盟国等で商標に関する権利を有する者の保護を強化し、公正な国際的取引を確保するために設けられた規定と解される。
そこで、本件商標の登録が上記条項の要件を満たすものであるか否かについて、以下検討する。
2 本件商標がパリ条約の同盟国、世界貿易機関の加盟国若しくは商標法条約の締結国において商標に関する権利(商標権に相当する権利に限る。)を有する者の当該権利に係る商標又はこれに類似する商標であって、当該権利に係る商品又はこれらに類似する商品を指定商品とするものであるか否かについて
(1)パリ条約の同盟国等において商標に関する権利を有する者
請求人は、パリ条約の加盟国であるスペインに所在する法人と認められ、上記第2、2のとおりパリ条約の同盟国等である域内市場における調和のための官庁(商標及び意匠)において、平成17年7月13日に登録出願し、平成18年8月7日に設定登録された引用商標1、平成9年7月2日に登録出願し、平成10年12月7日に設定登録された引用商標2及びスペイン国において、平成9年2月28日に登録出願し、平成10年4月20日に設定登録された引用商標3の商標権に関する権利を有する者である。
(2)商標及び指定商品についての同一又は類似
ア 本件商標について
本件商標は、前記第1のとおり、「ルクエ・スチームケース」の片仮名を標準文字により表してなるところ、その構成上、中点「・」を介することにより、「ルクエ」及び「スチームケース」の文字部分が、外観上、明確に分離して看取され得るものである。
そして、その構成中の「スチームケース」の文字部分は、「蒸気、蒸す」の意味を有する英語の「steam」及び「容器」の意味を有する英語の「case」を語源とし、同様の意味の片仮名語として広く知られた「スチーム」及び「ケース」を結合させたものと容易に理解されることから、該文字部分は「蒸す容器」程の意味合いを想起させ、本件商標の指定商品との関係においては、商品の品質、用途等認識させるものであり、自他商品の識別標識としての機能が極めて弱いものというのが相当である。
そうすると、本件商標は「ルクエ」の文字部分が出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものというべきであるから、本件商標からは、構成全体から生じる称呼のほか、要部である「ルクエ」の文字部分から「ルクエ」の称呼をも生じるものである。そして、構成全体として特定の語義を有しない造語よりなるものと認めることができる。
イ 引用商標について
(ア)引用商標1について
引用商標1は、別掲1のとおり、波状の下線を伴う「Lekue」(2文字目及び5文字目の「e」にはアクセント記号が付されている。以下同じ。)の文字からなるところ、その構成文字に相応し「レクエ」の称呼が生じ、また、後述の3(1)のとおり、引用商標1の指定商品の需要者において、請求人が使用する「Lekue」の標章が「ルクエ」と称呼されることがある程度知られていたことが認められることから、引用商標1からは「ルクエ」の称呼も生じるものであり、特定の観念は生じない。
(イ)引用商標2及び3について
引用商標2及び3は、別掲2のとおり、中心に黒色線を有する白抜きの「L」の文字を黒色六角形の内側に配し、その右側に「EKUE」(「E」にはアクセント記号が付されている。以下同じ。)の欧文字とを一連に書してなるところ、全体として「LEKUE」の文字からなるものと看取しうるものであり、その構成文字に相応し「レクエ」の称呼が生じ、また、引用商標1と同様に「ルクエ」の称呼も生じるものであり、特定の観念は生じない。
エ 商標の類否
本件商標の要部と引用商標の文字部分とを比較すると、称呼については両者「ルクエ」の称呼を共通とする。外観については片仮名と欧文字の違いを有するものの、我が国の商取引においては欧文字からなる商標を片仮名で表記することが普通に行われていることから、この片仮名と欧文字の外観上の違いが、称呼の同一性を凌駕するほどの相違となるとは認められない。また、観念については共に特定の観念を有しないのであるから、観念において区別することはできない。
これより、本件商標と引用商標とは、その称呼、外観及び観念を総合的に考察すれば、お互いに類似する商標というべきである。
これに対して、被請求人は、「Lekue」の文字からは「レクエ」の称呼のみが生じる旨、本件商標中の「ルクエ」の文字部分は被請求人が独自に創出した造語である旨主張する。
しかしながら、本件商標の出願以前に発行された多数の雑誌に掲載された、請求人商品の広告において、「Lakue(ルクエ)」等の記載があり、その請求人商品の問い合わせ先として被請求人の名称等が記載されていることよりすれば、被請求人は、請求人が「Lekue」の商標を使用し、その商標が「ルクエ」と称呼されることを知っていたというべきであるから、被請求人のこの主張は採用できない(甲8の1?12)。
オ 商品の類否
本件商標と引用商標は、その指定商品において、互いに同一又は類似の商品を含むことが明らかである。
カ 小括
したがって、本件商標の「ルクエ」の文字部分と引用商標の外観、観念、称呼等によって取引者・需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのある類似の商標と判断するのが相当であり、かつ、本件商標の指定商品は、引用商標の指定商品と同一又は類似する商品である。
(3)まとめ
前記(1)及び(2)によれば、本件商標は、パリ条約の同盟国等において商標に関する権利を有する者の当該権利に係る商標と類似する商標であって、その指定商品は、当該権利に係る商品と同一又は類似の商品というべきである。
3 請求人と被請求人との関係
(1)証拠及び請求人の主張によれば、以下の事実を認めることができる。
ア 本件商標の出願前である2007年に5月号から8月号として発行された「mono」、「オレンジページ」、「eyeco」、「Oggi」、「GoodsPress」、「ELLE a table」、「特種!簡単育成!お家で育てて、お家でたべる 安全野菜完全BOOK」、「ゆうゆう」、「Tarzan」、「CAR&LIFE STYLE Daytona」、「NHKテレビテテキスト 今日の料理」「NHK 今日の料理 ビギナーズ」等の雑誌に、請求人商品である調理用具の写真とともに「Lekue(ルクエ)」、「Lekue」、「ルクエ」の標章や商品の説明欄に「ルクエ社」、「スペインのキッチンメーカー『ルクエ』から」、「ルクエ社のキッチン用品は、」、「新感覚のキッチンツールを数々世に送り出している、スペインのLEKUE(ルクエ)社」等の記載があり、何れの記事にも日本の問い合わせ先、販売会社、輸入販売元として、被請求人の名称が記載されている(甲8の1?12)。
これより、少なくとも本件商標の登録出願の1年ほど前の2007年(平成19年)5月から8月において、「ルクエ」と称呼される「Lekue」の標章を使用した請求人商品は、様々な雑誌等で紹介されたことが確認でき、このことから、請求人商品は、我が国の調理用具の需要者において「ルクエ」と称呼される「Lekue」の標章とともに、ある程度知られていたと認められる。そして、その当時、被請求人は請求人商品について日本の問い合わせ先、販売会社、輸入販売元であったといえる。
イ 2014年1月21日付の請求人代表者による宣誓書(甲11)によれば、請求人は、被請求人と取引を開始し、キッチン用品、入浴用品、その他のルクエブランドの家庭用品を2001年(平成13年)から供給し、2003年(平成15年)以降、旧ルクエ社の吸収合併を経て現在に至るまで全てのルクエブランド商品を被請求人に販売してきた。そして、2001年(平成13年)?2008年(平成20年)までの被請求人への請求人商品の販売額が、約2億5千万円を超えている。
ウ 請求人から被請求人宛の請求書(甲12)及び被請求人の親会社と認められる「CORAM INTERNATIONAL BV」(甲21)から請求人宛に送金されたことを示す送金確認書(甲13)によれば、2005年(平成17年)?2008年(平成20年)の間において、両者間に継続的に商取引関係があったことが認められる。
エ 請求人が2007年(平成19年)3月26日付けで送信したメールによれば、請求人は、被請求人以外の者からの日本における販売代理店を希望する旨の問合せに対し、請求人は長年の間日本において販売代理店を有している旨回答するとともに、被請求人の名称、住所、電話番号等を提示している(甲14)。
(2)前記(1)で認定した事実によれば、以下のとおり判断するのが相当である。
ア 請求人によって製造・販売された請求人商品は、少なくとも2001年(平成13年)?2008年(平成20年)迄の間、日本における輸入代理店である被請求人に輸出され、被請求人は請求人商品を日本において販売したことが認められる。
イ 請求人及び被請求人との間で、日本における独占販売代理店契約の締結等をしていた事実を立証する資料等の提出はない。
ウ しかしながら、請求人商品について、2007年(平成19年)発行の雑誌等による広告宣伝において、そこには、日本の問い合わせ先、販売会社、輸入代理元として被請求人の名称等の記載があることから、その当時すでに被請求人は請求人の日本における代理店であったことを伺うことができる。
(3)以上によれば、請求人商品は、被請求人を介して日本に輸入され、被請求人によって日本国内で販売された。2001年から2008年までの期間には、請求人と被請求人との間に継続的に取引があり、日本に輸入された請求人商品のほとんどが被請求人に納品され、その取引高は、単なる得意先又は顧客の範囲を超えるものといえること、そして、2007年(平成19年)5月から8月の当時における請求人商品を紹介する雑誌の広告にも、「販売会社:コラムジャパン」、「日本の問い合わせ先:コラムジャパン」、「輸入販売元 コラムジャパン株式会社」といった表示及び電話番号等が記載され、被請求人が請求人商品の総販売代理店であることを窺わせるような記載があることなどを勘案すると、請求人との間で、日本における独占販売代理店等の契約の締結をしていたとの事実を認めることはできないものの、請求人と被請求人との間には、継続的な取引により慣行上の信頼関係が形成され、少なくとも本件商標の出願前1年である2007年(平成19年)6月当時には、被請求人は、日本国内における請求人商品の販売体系に組み込まれるような立場にあった者とみることができる。
そして、商標法第53条の2が、他の同盟国等で商標に関する権利を有する者の代理人若しくは代表者又は代理人若しくは代表者であった者がその権利者との間に存する信頼関係に違背して正当な理由がないのに同一又は類似の商標登録をした場合にその取消について審判を請求できる旨の規定であることにかんがみれば、同条項に規定する「代理人若しくは代表者」は、必ずしも他の同盟国等の商標権者と代理店契約を締結した者など契約上特別な関係、あるいは、法的関係にある者に限定されることなく、広く他の同盟国等の商標権者の商品を継続的に輸入し販売する又は販売していた者など、継続的な取引により慣行上の信頼関係が形成されていた関係にあった者をも指すと解すべきである。
したがって、被請求人は、商標法第53条の2にいう「当該商標登録出願の日前1年以内に代理人若しくは代表者であった者」に該当するというべきである。
4 正当な理由の有無について
(1)旧ルクエ社と被請求人との間において、2001年12月18日付けで「AUTHORIZATION TO THE APPLICATION OF TRADE MARK REGISTER」(商標登録出願に係る承諾書)が締結されている(甲20)。
しかしながら、これは、あくまでも旧ルクエ社が旧ルクエ社の名義において商標を出願・登録することについて被請求人に承諾を与えるといった内容のものであり、かつ、被請求人は、出願した商標の名義を旧ルクエ社の名義で日本特許庁における商標登録原簿に表示されるよう手続きする義務を負っていたのであるから、旧ルクエ社が被請求人の名義で日本特許庁に商標を出願・登録することを承諾したものではない。
さらに、被請求人と旧ルクエ社は、本件商標の商標登録出願がされた場合、商標の使用に関する契約書を締結することとしていたが、「当該契約書が本承諾書の署名の日から15日以内に締結されない場合には、商標登録出願に係るこの権限の付与は、いかなる効力も有しないものとして終了するものとする。」とあり、現に当該契約書は締結されておらず、商標登録出願に係る被請求人の権限は、効力を有することはなく、それ以後も同内容の契約書が締結された事実はない。
(2)被請求人は、「日本国内に請求人商品の海賊品等が出回る事態が生じたことに対し、被請求人は請求人と共に対策を検討する等対処した。仮に本件商標に関する権利を請求人が有すると仮定したとしても、少なくとも請求人の事後的な黙示の承諾がなされていることは明らかである。」旨主張するが、上記(1)の「商標登録出願に係る承諾書」(甲20)によれば、請求人は、旧ルクエ社時代より、一貫して、被請求人名義での商標登録や知的財産に関する出願や登録を認めない立場を取っており、事後的な合意、承諾の存在を推認し得る事情もない。
そして、被請求人が本件商標の登録出願を行うことについても同様に、請求人の承諾等があったと推認できる証拠の提出はない。
したがって、被請求人が、本件商標の出願をすることに関して、請求人の承諾を得ていた、又は、事後承諾を得ていたと認めることはできない。
(3)正当な理由
両当事者の提出に係る全証拠に徴してみても、本件商標の出願に関して、請求人の承諾を得ないで、これを被請求人が行うことについて、正当な理由があったとすべき事情等を示す的確な証左は見出せない。
(4)まとめ
前記(1)ないし(3)によれば、本件商標の登録出願が、正当な理由がないのに、請求人の承諾を得ないで本件商標の登録出願の日前1年以内に代理人若しくは代表者であった者と同等の地位にあった商標権者によってされたものと認めることができる。
5 むすび
以上のとおり、本件商標は、パリ条約の同盟国において商標に関する権利を有する者の当該権利に係る商標と類似する商標であって、当該権利に係る商品又はこれに類似する商品を指定商品とするものであり、かつ、正当な理由もないのに当該権利を有する者の承諾を得ないでその代理人によって出願されたものと認めざるを得ないから、本件商標の登録は、商標法第53条の2に規定する要件をすべて満たしているものと認められ、同規定により、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲1(引用商標1)(色彩は原本参照)


別掲2(引用商標2,引用商標3)




審理終結日 2017-01-11 
結審通知日 2017-01-16 
審決日 2017-02-06 
出願番号 商願2008-46075(T2008-46075) 
審決分類 T 1 31・ 6- Z (X21)
最終処分 成立 
前審関与審査官 金子 尚人 
特許庁審判長 今田 三男
特許庁審判官 小松 里美
田中 幸一
登録日 2009-01-30 
登録番号 商標登録第5201750号(T5201750) 
商標の称呼 ルクエスチームケース、ルクエ、スチームケース 
代理人 五十嵐 敦 
代理人 春田 まり子 
代理人 田中 克郎 
代理人 飯田 和彦 
代理人 飯田 伸行 
代理人 廣中 健 
代理人 井上 祐子 
代理人 稲葉 良幸 
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