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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W35
審判 全部申立て  登録を維持 W35
審判 全部申立て  登録を維持 W35
審判 全部申立て  登録を維持 W35
管理番号 1326091 
異議申立番号 異議2016-900299 
総通号数 208 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2017-04-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-09-20 
確定日 2017-03-02 
異議申立件数
事件の表示 登録第5859851号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 
結論 登録第5859851号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第5859851号商標(以下「本件商標」という。)は,「おにぎらず」の平仮名を標準文字で表してなり,平成27年10月30日に登録出願,第35類「広告業,通信ネットワークの利用促進のためのポイントの蓄積及び精算,トレーディングスタンプの発行,顧客の取引記録の集計・管理,顧客に関する情報の収集・分析及び提供,顧客情報の管理に関するコンサルティング,経営の診断又は経営に関する助言,市場調査又は分析,商品の販売に関する情報の提供,ホテルの事業の管理,メールアドレス等顧客データベースへの情報編集,コンピュータデータベースへの情報編集,広告スペースの貸与又は提供,広告用具の貸与」を指定役務として,同28年5月24日に登録査定,同年6月17日に設定登録されたものである。

第2 登録異議の申立ての理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は,本件商標は商標法第3条第1項第3号,同第6号,同法第4条第1項第7号及び同第16号に該当するものであるから,同法第43条の2第1号により,その登録は取り消されるべきであると申立て,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第19号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 「おにぎらず」の意味について
「おにぎらず」は,漫画週刊誌「モーニング」(講談社刊)に連載されている人気漫画「クッキングパパ」(うえやまとち著)において,「のりの上にごはんをのせて広げ,具を置き,のりの四隅から包む」おにぎりとして発表されたものである(甲1)。
近年,食品「おにぎらず」は人気を博しており,株式会社ジャストシステムの調査によれば,2015年4月の時点で20代?40代の女性の7割に認知されている(甲2)。
また,毎年流行語について全国的な注目を集める「ユーキャン新語・流行語大賞」の2015年の候補語に選出され(甲3),国内最大規模の料理レシピサイトを運営する株式会社クックパッドが主催する「クックパッドアワード2015」の大賞に選出され(甲4),食に関するシンクタンクである株式会社ぐるなび総研は「日本の食文化を後世に遺す『2015年今年の一皿』」を「おにぎらず」に決定する(甲5)など,話題となっている。
そして,辞書等によれば,「ご飯をにぎらず海苔に載せて包むだけの料理」(自由国民社「2016現代用語の基礎知識」:甲6),「おにぎり(握り飯)を作る際に、『握り固める』過程を、ご飯と具を海苔で包む要領に置き換えた料理」(実用日本語表現辞典:甲7)「ご飯を手で握らず、大判の海苔で風呂敷包みのように包むだけのおにぎりの一種。『おにぎりとは違って手でギュッとは握らない』ため、おにぎらずと呼ばれている」(Wikipedia:甲8)など,「にぎらないおにぎり」を意味するものとして,査定時において普通に使用されるに至っている。
2 商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号について
本件商標は,「おにぎらず」に関連する商品・役務の広告・キャンペーンに使用されている(甲9?甲13)。また,「おにぎらず用の調理器具の情報,おにぎらず用ののりその他食品の情報,おにぎらずに関連するレシピ本」などが各種媒体から提供されている(甲14?甲19)。
これらは「おにぎらず」に関連する広告及び商品の販売・市況等の情報の提供とみることができる。
そうすると,にぎらないおにぎりたる食品「おにぎらず」を表示するものとして普通に使用される語「おにぎらず」を掲げて「おにぎらずに関連する広告」及び「おにぎらずに関連する商品の販売に関する情報の提供」の役務が提供された場合,需要者,取引者は,その役務が,商品「おにぎらず」又は食品「おにぎらず」に関連する商品若しくは役務に係る広告及び商品の販売に関する情報の提供であること,すなわち広告の目的,内容及び商品の販売に関する情報の提供の対象,内容を認識するものと考えられる。
したがって,本件商標は,その指定役務中「おにぎらずに関連する広告」及び「おにぎらずに関する商品の販売に関する情報の提供」に使用しても,これに接する取引者,需要者は,役務の質又は用途を表示した語と認識するにすぎず,自他役務識別標識として機能を果たしえない。また,上記役務以外の役務に使用するときは,役務の質の誤認を生じさせるおそれがあるから,商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当する。
3 商標法第3条第1項第6号について
「おにぎらず」の語は,食品「おにぎらず」及びそれに関連する商品・役務(例えば,おにぎらず,のりその他の食品,台所用品,飲食物の提供,料理の教授など)に係る業界においては,誰もが使用したい状況下にある普通名詞である(甲9?甲19)。
そして,「おにぎらず」の語は,業界において自由に使用することが保証されるべき公益性の高い語であり,その業界に密接に関連する商品・役務の事業に密接に関連する指定役務「広告業,経営の診断又は経営に関する助言,市場調査又は分析,商品の販売に関する情報の提供,広告スペースの貸与又は提供,広告用具の貸与」においては,独占適応性がない。
また,本件商標は,上記2で述べたとおり自他役務識別標識として機能を果たし得ない。
したがって,本件商標は,その指定役務中,「広告業,経営の診断又は経営に関する助言,市場調査又は分析,商品の販売に関する情報の提供,広告スペースの貸与又は提供,広告用具の貸与」に使用するときは,商標法第3条第1項第6号に該当する。
4 商標法第4条第1項第7号について
本件商標「おにぎらず」は,漫画家うえやまとち氏(以下「うえやま氏」という。)の作品「クッキングパパ」が初出の食品を表示するものであることは広く知られている(甲1,甲5,甲7,甲8)。
そして,「おにぎらず」は,普通名詞化した語であるが,未だ当該食品を漫画作品で紹介したうえやま氏への連想が残存している。この状況下においては,本件商標に接した需要者,取引者は,商標権者がうえやま氏との関係があるものと想起する。ところが,本件商標は,うえやま氏とは全く無関係の第三者が商標権者になっていることから,取引者,需要者に出所について誤認・混同を生じさせるおそれがあるほか,うえやま氏に損害を及ぼすおそれがあり,公序良俗に反する。
したがって,商標法第4条第1項第7号に該当する。

第3 当審の判断
1 商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号該当性について
本件商標は,「おにぎらず」の文字からなるところ,該文字は,「ご飯をにぎらず海苔に載せて包むだけの料理」等を意味する語として,辞書等(甲6ないし甲8)に掲載されている実情からすると,需要者は,該文字から料理名の一つである「おにぎらず」と認識するのが自然である。
ところで,申立人が提出した証拠(甲9ないし甲19)は,いずれも料理名を表示する語として,「おにぎらず」の文字がその料理に関連する商品(食材,調理器具,書籍)に使用されているものであって,本件商標の指定役務について使用されているものではない。
したがって,これらの証拠をもって,「おにぎらず」の文字が,本件商標の指定役務との関係において具体的な質を表示するものとみることはできない。
また,職権をもって調査するも,本件商標の指定役務を取り扱う業界において,「おにぎらず」の文字が役務の質を表すものとして,使用されている事実及び取引者,需要者が,役務の質を表すものと認識し得るという特段の事情も見いだせない。
してみれば,本件商標をその指定役務について使用した場合,これに接する取引者,需要者が,一つの料理名を想起するとしても,本件商標の指定役務の具体的な質等を表示するものとして認識するとはいえず,本件商標は,その指定役務について,自他役務の識別標識として十分機能し得るとみるのが相当である。
また,本件商標は,上記のとおり,何ら,具体的な役務の質を表示するものではないから,役務の質について誤認を生じさせるおそれもない。
したがって,本件商標は,商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当しない。
2 商標法第3条第1項第6号該当性について
本件商標は,上記1のとおり,「おにぎらず」の文字からなるところ,「ご飯をにぎらず海苔に載せて包むだけの料理」等を意味する語として,需要者に認識されるとしても,本件商標の指定役務との関係においては,十分に自他役務の識別標識としての機能を果たし得るものである。
してみれば,本件商標をその指定役務に使用しても,需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができない商標であるとはいえない。
したがって,本件商標は,商標法第3条第1項第6号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第7号該当性について
商標法第4条第1項第7号は,「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当する商標について,商標登録を受けることができないと規定しているところ,これに該当する商標は,「(a)その構成自体が非道徳的,卑わい,差別的,矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合,(b)当該商標の構成自体がそのようなものでなくとも,指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し,社会の一般的道徳観念に反する場合,(c)他の法律によって,当該商標の使用等が禁止されている場合,(d)特定の国若しくはその国民を侮辱し,又は一般に国際信義に反する場合,(e)当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり,登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合,などが含まれるというべきである。」と判示されているところである(知財高裁平成17年(行ケ)第10349号 平成18年9月20日判決参照)。
しかしながら,本件商標は,「おにぎらず」の平仮名からなるものであり,その構成自体が非道徳的,卑わい,差別的,矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような構成態様ではないことは明らかである。
また,本件商標をその指定役務について使用することが社会公共の利益に反し,社会の一般的道徳観念に反するということもできず,他の法律によってその使用が禁止されているものでもない。
さらに,申立人が提出した証拠及び主張からは,特定の国若しくはその国民を侮辱し,又は一般に国際信義に反する場合に当たるということもできない。
加えて,申立人が提出した証拠及び主張を考慮しても,本件商標の登録出願の経緯が,社会的相当性を欠くものがあり,登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合に当たるということもできない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に該当しない。
4 申立人の主張について
申立人は,「本件商標は,うえやま氏とは全く無関係の第三者が商標権者になっていることから,取引者,需要者に出所について誤認・混同を生じさせるおそれがあるほか,うえやま氏に損害を及ぼすおそれがあり,公序良俗に反する。」旨を主張している。
しかしながら,申立人は,上記のとおり主張するのみで,同氏に,どのような損害を及ぼす蓋然性があるのか具体的な主張及び証拠の提出はない。
したがって,申立人の上記主張は,採用することができない。
5 まとめ
以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第3条第1項第3号,同第6号,同法第4条第1項第7号及び同第16号に違反してされたものではないから,同法第43条の3第4項の規定に基づき,その登録を維持すべきでものである。
よって,結論のとおり決定する。
異議決定日 2017-02-20 
出願番号 商願2015-105842(T2015-105842) 
審決分類 T 1 651・ 13- Y (W35)
T 1 651・ 16- Y (W35)
T 1 651・ 272- Y (W35)
T 1 651・ 22- Y (W35)
最終処分 維持  
前審関与審査官 大森 友子 
特許庁審判長 山田 正樹
特許庁審判官 榎本 政実
大井手 正雄
登録日 2016-06-17 
登録番号 商標登録第5859851号(T5859851) 
権利者 株式会社ぐるなび
商標の称呼 オニギラズ 

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