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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X30
管理番号 1325015 
審判番号 取消2015-300789 
総通号数 207 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2017-03-31 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2015-11-05 
確定日 2017-02-10 
事件の表示 上記当事者間の登録第1376408号の1商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第1376408号の1商標の商標登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第1376408号の1商標(以下「本件商標」という。)は、「BREAK」の欧文字と「ブレーク」の片仮名を二段に横書きしてなり、昭和48年3月12日に登録出願、同54年3月23日に設定登録された登録第1376408号商標について、平成11年8月23日に商標権の分割移転の登録がされ、その後、同21年4月8日に指定商品を第30類「茶,ココア,氷」とする指定商品の書換登録がされ、現に有効に存続しているものである。
そして、本件審判の請求の登録日は、平成27年11月17日である。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第33号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品について、継続して3年以上日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)社会通念上の同一性について
被請求人が、本件商標と社会通念上同一であると主張する乙第1号証ないし乙第4号証に記載された「Tea Break」(以下「使用商標」という場合がある。)は、外観上、同書、同大、等間隔で、まとまりよく一体に書されているばかりでなく、当該構成文字に相応して生ずる「ティーブレーク」の称呼も、淀みなく一気一連に称呼し得るものである。また、「Tea Break」は、「休憩時間」といった意味合いを生じるものとして辞書にも掲載されている用語であり(甲3、甲4)、観念的結合関係、一体性は極めて強いといえる。
してみれば、被請求人の使用商標は、「Tea」が「茶」の意味を有するとしても、常に「Tea Break」の文字全体をもって一体不可分のものとして認識されるべき商標とみるのが相当である。
そうとすれば、使用商標は、「BREAK」の欧文字と、「ブレーク」の仮名文字を上下二段に併記してなる本件商標とは、外観上同一でないばかりでなく、同一の称呼及び観念を生ずることもないため、商標法第50条第1項括弧書きに規定される類型のいずれにも該当せず、これを社会通念上同一と認定できる根拠は存在しない。
よって、被請求人の使用商標は、本件商標と社会通念上同一とはいい得ないものである。
(2)特許庁における審決例
使用に係る商標が、登録商標と他の語を結合したことにより、登録商標と外観、称呼及び観念の全てあるいはいずれかにおいて相違するため、結合した状態で一体のものと認識され、登録商標と社会通念上同一とはいえないと認定された審決が散見される(甲8?甲12)。
(3)被請求人が提出した答弁書の内容について
被請求人が答弁書に記載した審決は、実際に使用していた商標が登録商標と他の文字との結合商標であった場合において、登録商標に付加された他の文字と登録商標との観念的結合関係が希薄であり、使用態様全体として一体不可分の特定の観念が生じないからこそ、登録商標と社会通念上同一と認められた事案である。これに対し、本件は、実際の使用態様「Tea Break」が全体として一体不可分かつ登録商標とは異なる特定の観念を容易に認識させることから、本件と上記審決は明らかに事案を異にするものである。
3 口頭審理陳述要領書
(1)社会通念上の同一性欠如について
ア 「tea」(ティー)の用法について
「tea(ティー)」の文字が商品の普通名称として用いられる場合は、「茶の種類・品質・原材料を表す文字」の末尾に付されることが一般的である(例、ストレートティー、レモンティー、ミルクティー、アップルティー、ジャスミンティーなど)。現に、被請求人が提出したカタログにおいて、「ジャスミンティー」や「アップルティー」が、「ジャスミン」、「アップル」のように「ティー」の文字が省略されて記載されているが、これは語尾に付された「ティー」の文字が「茶」の普通名称であることを表している例といえる(乙1?乙4、乙26)。
一方、語頭に「tea(ティー)」の文字を有する成語(例、ティーカップ、ティースプーン、ティータイム、ティーパーティー、ティーバッグなど)は、構成全体として特定の意味を有する(甲13)。
これらの語は、「tea+〇〇」全体が一体として特定の意味で広く親しまれた成語であるため、「tea(ティー)」の語を捨象するとその意味を成さなくなる。また、語頭に付される「tea(ティー)」の文字は、「お茶の」、「お茶用の」、あるいは「お茶を飲むための」程の形容詞的な意味合いで用いられており、普通名称としての「茶」それ自体を表すものではない。よって、これら「tea+〇〇」の成語において「tea」の文字が省略されて、その意味が理解、認識されることはありえない。
イ 「Tea Break」の語の辞書の記載及び使用例
「Tea Break」の語は、「お茶の休憩時間」程の意味合いで多数の辞書にも掲載されている(甲14?甲20)。
また、「Tea Break」(ティーブレイク)の語は、需要者・取引者の間において「お茶の休憩時間」程の意味合いで広く使用されている例も多数見受けられる(甲21?甲27)。
「Tea Break」(ティーブレイク)の語が、茶を取り扱う取引者の間において「お茶の休憩時間」程の意味合いで広く一般的に使用されている取引の実情に照らすと、被請求人のカタログに記載された「Tea Break」の語に接した取引者・需要者は、「Tea Break」の語を一体として看取し、「お茶の休憩時間」との意味合いを感得すると考えるのが自然である。
ウ 「BREAK\ブレーク」と「Tea Break」の対比
本件商標と、被請求人の使用商標は、「Tea」の有無という顕著な差異を有するため、両者がそれぞれ外観上同一のものでないことは明らかである。
また、本件商標からは、その構成文字に相応して「ブレーク」の称呼のみが生じるのに対し、被請求人の使用商標からは、その構成文字に相応して、「ティーブレーク」の称呼のみが生じるから、同一の称呼を生じるものではない。
さらに、本件商標からは、「お茶の休憩時間」という観念は生じないため、本件商標と、被請求人の使用商標は、観念上も相違する。
したがって、被請求人の使用商標は、商標法第50条第1項括弧書に規定される類型のいずれにも該当せず、本件商標と社会通念上同一の商標とはいえない。
(2)カタログが頒布等された事実について
被請求人により平成28年6月9日付で提出された口頭審理陳述要領書中、「5.陳述の要領(2)カタログが頒布・展示、インターネットホームページに掲載された事実の追加証拠について」及び「(3)各書類に係る被請求人と取引者との取引及び当該書類の受け渡しの流れ」については、不知とする。
仮にカタログ(乙1?乙4、乙26)が頒布された事実があったとしても、本件商標又はこれと社会通念上同一の商標が、平成24年(2012年)11月17日から平成27年(2015年)11月16日までの期間(以下「要証期間」という。)に使用された事実は、被請求人提出の証拠のいずれからも確認できない。
4 平成28年7月14日付け上申書
(1)被請求人の使用商標中、「Tea」の文字が「茶」の普通名称には該当しないこと
被請求人提出のカタログ(乙1?乙4、乙26)には、「茶」以外の多数の種類の飲料や粉末タイプの商品についても掲載されていることから、当該カタログは、被請求人が販売する業務用飲料の総合カタログであると認められる。そして、かかる態様の総合カタログの表紙にのみ記載された「Tea Break」の文字は、当該総合カタログに掲載された商品全体の代表的標識というべきである。
このため、当該総合カタログの表紙にのみ記載された「Tea Break」の文字に接した取引者、需要者が、殊更「Tea」の文字を「茶」の普通名称であると認識し、「Tea」の文字を捨象して、「Break」の文字のみを出所識別標識として認識するとは認められない。
(2)社会通念上の同一性が否定された裁判例
請求人は、追加証拠として、社会通念上の同一性が否定された裁判例を挙げる(甲29、甲30)。
(3)商標的使用態様に該当しないこと
ア 商標的使用態様についての判断基準
商標の本質は、当該商標が使用された結果、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるものとして機能すること、すなわち、商品又は役務の出所を表示し、識別する標識として機能することにあると解されるから、商標がこのような出所表示機能・出所識別機能を果たす態様で用いられているといえない場合には、形式的には商標法第2条第3項各号に掲げる行為に該当するとしても、当該行為は、商標の「使用」に当たらないと解するのが相当である(取消2010-301233審決において引用された東京地裁、平成20年(ワ)第34852号、平成22年11月25日判決)。
イ 「Tea Break」がキャッチフレーズに該当すること
他方、被請求人のカタログ1頁目において、「くつろぎのひとときを演出してくれる、一杯のお茶」と記載されている(乙1?乙4、乙26)。この記載は、当該カタログに接した取引者、需要者に、当該カタログに掲載されている被請求人の商品群が「くつろぎのひとときを演出するための飲料」といった当該商品イメージを端的に想起させるための、広告宣伝における被請求人の主義・主張そのものであり、それを簡潔に表現したのが、まさに取引者、需要者の注意を引くように表紙に大きく記載された「Tea Break」の文字であると容易に推察される。
すなわち、カタログ全編を通して統一的に用いられている「WHITE NOBLE」の文字が商品の出所表示機能を発揮していることからすれば、表紙にのみ目立つように大きく記載された「Tea Break」の文字は、商標としての使用というよりは、むしろ「くつろぎのひとときを演出するための飲料」といった、被請求人の商品イメージを簡潔に表したにすぎない、いわばキャッチフレーズとしての使用であると認識できるものである。
ウ 小括
よって、使用商標は、出所表示機能・出所識別機能を果たす態様で用いられているというよりも、被請求人の使用態様においては、むしろキャッチフレーズとしての使用と見るのが自然であり、商品を特定する機能ないし出所を表示する機能を果たす態様で用いられているものではないから、商標的な使用には当たらないと解するのが相当である。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、「本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第39号証を提出した。
1 答弁の理由
本件商標と社会通念上同一の商標が、本件商標権者により、要証期間に、少なくとも指定商品中の「茶(紅茶),ココア」について使用されていた。
(1)使用に係る商標
本件商標は、「BREAK」の欧文字と「ブレーク」の仮名文字を併記してなる商標であり、「BREAK」の欧文字は、休憩等の意味を有する英単語として我が国でもよく用いられ、「ブレーク」の仮名文字はその表音を表すと無理なく理解できるものであり、「BREAK」と「ブレーク」は称呼・観念が同一ということができる。
本件商標権者は、「Break」という商標を、同社の販売する紅茶を中心とする業務用商品について、2012年、2013年、2014年、2015年の各年9月に発行のカタログ(乙1?乙4)の表紙に付して、これを展示・頒布し、さらに、インターネットホームページに掲載して、そのカタログに掲載の商品中の少なくとも「紅茶,ココア」を販売した。
かかる商標「Break」は、本件商標の構成中の「BREAK」と同じ語であり、その称呼・観念は、表音である「ブレーク」と同一であることから、当該商標「Break」は、本件商標と社会通念上同一の商標に該当する。
カタログ(乙1?乙4)の表紙では、「Tea」の欧文字が、「Break」の欧文字の左横に表されているが、かかる「Tea」の文字は、少なくとも商品「紅茶」との関係では、自他商品識別機能を有する文字とはいえず、「Tea Break」の文字中、商品「茶(紅茶)」との関係では、「Break」の文字が自他商品識別力を有する部分である。
この点、「Tea Break」全体では、「お茶の休憩」又は単に「休憩」との観念が生じ得るが、商品「茶(紅茶)」との関係では、「Break」の文字のみが自他商品識別機能を果たし得る点に変わりはない。
過去の審決においても、使用商標の構成中の要部が、登録商標と対応する場合に、両商標の同一性を認めている例は複数ある(取消2014-300379ほか2件)。
(2)商標が使用された商品
本件商標と社会通念上同一の商標が、商品「紅茶,ココア」に使用され、これらの商品は、本件審判の請求に係る指定商品に含まれるものである(乙1?乙13)。
(3)使用行為
本件商標と社会通念上同一の商標をカタログに付して展示・頒布した本件商標権者の行為は、商品に関する広告・価格表若しくは取引書類に標章を付して展示し、頒布する行為に当たり、商標法第2条第3項第8号の使用行為に該当する。
また、本件商標と社会通念上同一の商標をカタログに付してこれをインターネットホームページに掲載した行為は、商品に関する広告・価格表若しくは取引書類を内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為に当たり、商標法第2条第3項第8号の使用行為に該当する。
なお、企業が多種多様に亘る商品を取り扱う場合、一般的に各種商品の総合カタログに掲載される商品群にあって、それに使用される標章は、代表的標識ないしは個別的標識などが混在して表示されるものである。
そうとすると、本件商標権者が使用する商標「Break」は、前記カタログ(乙1?乙4)に掲載された一群の商品である「紅茶,ココア」等に使用される総括的商標とみるべきであって、独立して機能しているというべきである。
(4)使用時期
取引書類(乙5?乙13)で示されるとおり、少なくとも、2012年12月13日から2015年10月19日の間に商品引渡しに関する取引書類が発行され、当該取引書類で示される商品を掲載し、かつ、本件商標を表示したカタログが、2012年、2013年、2014年、2015年の各年9月に発行されていることから(乙1?乙4)、当該取引等において、前記カタログを展示・頒布等したことは明らかということができる。
また、2015年9月発行のカタログ(乙1)が、本件商標権者のホームページにも掲載されている。
2 口頭審理陳述要領書
(1)弁駁に対する反論
「30類 茶」との関係では、「Break」の文字が自他商品識別機能を発揮し、当該文字を本件商標と比較すると、大文字・小文字の有無の相違、及び、欧文字と同一の自然な称呼及び同一の観念が生じる仮名文字を併記している点の相違があるが、かかる相違は、商標の識別性に影響を与えるものではない。
よって、本件商標と本件商標権者が使用した商標は、社会通念上同一の商標というべきものである。
(2)カタログが頒布・展示、インターネットホームページに掲載された事実の追加証拠について
ア 乙第5号証ないし乙第11号証の納品受領書等に対応する注文書等
乙第5号証ないし乙第11号証の納品受領書等は、乙第14号証ないし乙第20号証の注文書類に基づいて取引された商品に関するものであり、対応するアイテムは、その数量も一致している。
乙第14号証ないし乙第20号証(注文書類)は、本件商標権者以外の他人が作成した書類であり、このうち乙第14号証、乙第18号証、乙第20号証には、カタログ掲載内容に対応する商品名が、また、乙第15号証ないし乙第17号証、乙第19号証には、カタログ掲載内容に対応する商品名及び商品コードが表示されている。
イ 取引者によるカタログの認識をより直接的に示す証拠書類等について
取引者が、カタログ(乙2)を認識していたことを、より直接的に示す証拠として、取引者が、「Tea Break」の文字が表示されたカタログに関し本件商標権者に問合せを行った事実を示す証拠、及び、その後に当該取引者と本件商標権者との間で商品の取引があったことを示す証拠を、乙第21号証ないし乙第25号証として提出する。
ウ カタログがインターネットホームページに掲載された事実の追加証拠
2011年9月発行のカタログ(2012年総合版)(乙26)が、インターネットウェブサイト「食材カタログ.com」において2013年2月19日更新時点で掲載されていた事実を示す当該ウェブサイトの写しを提出する(乙27)。
(3)各書類に係る本件商標権者と取引者との取引及び当該書類の受け渡しの流れ
注文書類(乙14?乙20、乙22、乙25)に示すとおり、商品(茶、等)の注文は、受注管理会社(商品注文者から本件商標権者への注文の受注管理会社)を通じ、FAX又はEOS/Electronic Ordering System(電子発注システム)を使用して、本件商標権者に送られてくる。
本件商標権者は、かかる注文に基づき、運輸会社を利用して、前記乙号証の納品受領書等に基づいて、商品注文者に商品を届けるといった方法により、取引者との取引が行われる(例、乙5、乙8、乙10、乙11、乙23)。
3 平成28年7月21日付け上申書
(1)商標構成中に特定の飲食料品名が含まれる商標が、他の商品にも使用される場合でも、商標構成中に含まれる特定の飲食料品との関係では、当該飲食料品名を表す文字が出所識別標識として機能しないこと
具体例として、1)商標「プリマハム」が表された業務用総合カタログにおいて、商品「ハム」に加えて商品「ウインナー、揚げ物」等を掲載、2)商標「ひかり味噌」が表された業務用総合カタログにおいて、商品「味噌」に加えて、「商品春雨スープ」を掲載、3)商標「浦島海苔」が表された業務用商品一覧において、商品「のり」に加えて、「ふりかけ、お茶漬けのもと」を掲載、4)商標「KEY COFFEE」が使用されたギフトセット商品中に、「コーヒー」に加えて「果実飲料」をセットで併せて販売、5)商標「UCC COFFEE」が使用されたギフトセット商品中に、「コーヒー」に加えて「紅茶、果実飲料」をセットで併せて販売、という例を挙げる(乙28?乙32)。
上記の事実があっても、1)商標「プリマハム」が商品「ハム」に使用された場合には商標構成中の「ハム」の文字に識別力がなく、2)商標「ひかり味噌」が商品「味噌」に使用された場合には商標構成中の「味噌」の文字に識別力がなく、3)商標「浦島海苔」が商品「のり」に使用された場合には商標構成中の「海苔」の文字に識別力がなく、4)商標「KEY COFFEE」が商品「コーヒー」に使用された場合には商標構成中の「COFFEE」の文字に識別力がなく、5)商標「UCC COFFEE」が商品「コーヒー」に使用された場合には商標構成中の「COFFEE」の文字に識別力がないというべきであり、上記以外の商品が、それぞれのカタログに掲載されている事実や、これらの商標がそれぞれのカタログ掲載商品の代表的標識であっても、この点に変わりはないというべきである。
上記の例で示した「ハム」、「味噌」、「海苔」、「COFFEE」の文字は、需要者にとって見れば、その製造販売者が取り扱う主要商品を示す文字であるとみるのがむしろ自然である。
そして、本件商標権者のカタログ(乙1?乙4、乙26)は、「茶」を中心とするものであることは一目瞭然であり、需要者もこれに使用される商標を、「茶」との関係を中心に認識するというべきであり、これにかんがみれば、前記乙各号証のカタログに表された「Tea」の文字は、本件商標権者が取り扱う主要商品を示す文字であるとみるのがむしろ自然である。
(2)請求人が、社会通念上の同一性が否定された裁判例として挙げたもの(甲29、甲30)は、本件とは商標構成が異なり、事案が異なること
請求人が使用商標と本件商標との社会通念上同一性を有しない根拠として指摘したカタログ表示上の文字は「Tea」であり、これは指定商品「茶」の普通名称、つまり、取引における茶の一般的な名称ということができる。
甲第29号証で示した裁判例では、使用商標は「Cream Magic」(若しくは「Cosmetics Magic」)のように、当該商品の取引における一般的名称を表す「Cream」、「Cosmetics」といった文字との結合での対比例でなければ、また、甲第30号証で示した裁判例では、当該商品の取引における一般的名称を表す「Footwear」、「Shoes」といった文字との結合での対比例でなければ、共に事案が異なるといわざるを得ない。
取消審判事件(乙33?乙37)において、商標の社会通念上同一性が認められていて、本件と同様に、使用に係る商標と登録商標との間で相違する文字が、対象商品の取引における一般的名称を表す文字である事案においては、当該文字以外の部分を、出所識別標識として機能する部分と認める場合が多いというべきである。
(3)本件商標の使用は、商標的使用に該当すること
カタログ(乙1?乙4、乙26)において、「Tea Break」の文字は、カタログの上段部分で、「WHITE NOBLE」や他の文字と比較しても目立つように大きな文字で表され、その構成態様から、一般的に付記的に表示されるキャッチフレーズとして認識、把握されるとはいい難いというべきである。
そして、答弁書で既に述べたとおり、企業が多種多様に亘る商品を取り扱う場合、一般的に各種商品の総合カタログに掲載される商品群にあって、それに使用される標章は、代表的標識ないしは個別的標識などが混在して表示されるものであって、商標「Break」は、商品識別標識として、他の個々商品の標章「WHITE NOBLE」、「日東紅茶」、「NITTOH」等と独立して機能しているというべきであるから、その使用に係る標章は、取引上実質的な使用と認められる商標に該当するというべきである。

第4 当審の判断
被請求人は、本件商標権者が本件商標を請求に係る指定商品中の「茶(紅茶),ココア」に使用していると主張しているので、以下検討する。
1 被請求人の提出した証拠によれば、以下の事実を認めることができる。
(1)カタログについて
ア 乙第1号証ないし乙第4号証及び乙第26号証は、商品カタログであり、それらの表紙の上部に「Tea Break」、「MITSUI NORIN CO.,LTD.」、裏表紙に「三井農林株式会社」、「本社 ・・・東京都港区西新橋1-2-9」と記載され、各号証順にそれぞれ「2015.9」、「2014.9」、「2013.9」、「2012.9」、「2011.9」と記載されている。
そして、例えば、乙第2号証の19頁には、「NITTOH ミルクココア」、「商品コード:30551」及び「内容量:500g/荷姿:(24)×1」の記載がある。また、乙第4号証の9頁には、「手軽に素早く、本物の味と香りをご提供する『メッシュ・ティーバッグ』シリーズ。お茶本来の、ピュアな味覚を追求。原産国から直輸入した茶葉をたっぷりと使用した、本物志向の逸品です。」の記載の下に、「Black Tea」、「WN 三角メッシュ ダージリン 3.0g」、「商品コード:20316」及び「内容量:150g(50袋)/荷姿:(10)×1」、並びに、「WN 三角メッシュ セイロン 3.0g」、「商品コード:20315」及び「内容量:150g(50袋)/荷姿:(10)×1」の記載がある。
イ 乙第27号証は、「食材カタログ.com」と称するウェブサイトの写しであり、「食材カタログ 三井農林株式会社」の見出しのもと、「[主な商品]紅茶・マテリアルティー」、「2013年2月19日更新」の記載と共に、乙第26号証と同じカタログ表紙が表示されており、「Tea Break」の文字がみられ、その下に「三井農林 2012年総合」、「カタログを見る」の記載がある。
(2)発注及び納品等について
乙第15号証は、名古屋市在の発注者から「三井農林(株)名古屋支店」にあてた12年12月11日付けの「発注書」であり、「商品コード、商品名、入数、発注数、着日」の各項目下には、「20316、WNLFメッシュ三角TB♯50ダージリン、(50*10)、24、12月18日」と「20315、WNLFメッシュ三角TB♯50セイロン、(50*10)、24、〃」の記載がある。
乙第6号証は、納入先を愛知県在の者とする本件商標権者の「出荷指図書・納品書(控)」であり、「年月日 2012.12.17」、「三井農林株式会社」、「納入日 2012.12.18」の記載があり、「コードNo、商品名、荷姿、数量、単位」の各項目下には、「20316、WNLFメッシュ三角TB♯50DJ、10×1、24、ケース」と「20315、WNLFメッシュ三角TB♯50セイロン、10×1、24、ケース」の記載がある。
2 前記1で認定した事実によれば、当審の判断は、以下のとおりである。
(1)本件商標の使用者、使用商品及び使用時期について
本件商標権者は、同人の取扱いに係る、茶の範疇に含まれる「紅茶」や、「ココア」等の商品カタログに、「Tea Break」の欧文字を横書きした商標(使用商標)を表示したことが認められる(乙1?乙4、乙26)。
そして、各カタログに記載された商品番号に対応する各種商品が、要証期間内に発注・納品されていたことが認められるから、要証期間内に上記カタログが頒布されていたと推認することができる。
また、2011年9月発行の商品カタログ(乙26)が少なくとも2013年2月19日時点でインターネットにより提供(乙27)されたことが認められる。
(2)使用商標について
商品カタログ(乙1?乙4、乙26)において、その表紙の上部に「Tea Break」の欧文字が横書きされており、これは、当該カタログに掲載された商品である「紅茶、ココア」等に関する広告に使用される商標とみることができ、当該カタログに表示された他の商標とは別に、独立して出所識別標識として機能しているというべきである。
(3)本件商標と使用商標の同一性について
使用商標は、「Tea Break」の欧文字からなるものであり、該文字は、本件商標にはない「Tea」の欧文字を有し、本件商標の構成中の「ブレーク」の片仮名を有しないものであるから、本件商標の書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標ということができない。
そして、本件商標は、その構成各文字から「ブレーク」の称呼を生じ、「BREAK」の欧文字は、「壊れる。休憩。」等の意味を有する英語であるから、かかる観念を生じるのに対し、使用商標は、その構成文字から「ティーブレーク」の称呼を生じ、「Tea Break」の文字は、「ティーブレーク。お茶の休憩時間。」程の意味を有する英語であるから、かかる観念を生じるものである。
そうすると、使用商標は、本件商標と同一の称呼及び観念を生じる商標ということもできない。
したがって、使用商標は、本件商標と社会通念上同一の商標と認めることができない。
その他、被請求人提出の乙各号証には、本件商標と社会通念上同一と認められる商標の表示は見あたらない。
被請求人は、「『Tea Break』の文字中、商品『茶(紅茶)』との関係では、『Tea』の文字は、指定商品『茶』の普通名称であって、自他商品識別機能を有する文字とはいえず、『Break』の文字が自他商品識別機能を発揮する部分である」旨主張している。
確かに、「Tea」の文字は、「茶」を意味する語であるから、商品「茶」との関係において、その語自体が自他商品識別機能を有するものといえないことは否定しない。
しかしながら、本件商標権者の商品カタログ(乙1ないし乙4、乙26、乙27)には、各種の茶が掲載されているほか、ストレートジュース、シロップ(炭酸系シロップ、フルーティシロップ)、ミルクココア、コーヒー等も掲載されているものであるから、使用商標は、これら商品群全体の識別標識として使用され認識されるものとみるのが相当であって、使用商標の構成中の「Tea」の欧文字部分が自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものということはできない。
また、使用商標は「Tea Break」の文字であって、上記のとおり「ティーブレーク。お茶の休憩時間。」程の観念を認識させるものであるところ、「Tea Break」の語は、当該意味合いで広く一般に認識されているものである(甲3、甲4、甲14?甲17)ことからも、取引者、需要者は、これを一連一体の商標として認識し、把握するものであって、「Break」の文字のみを分離して認識、把握するものとはいえない。
以上からすると、使用商標は、その構成全体をもって、本件商標と社会通念上同一と認められるか否かについて判断すべきものである。
よって、被請求人の主張を採用することはできない。
(4)小括
以上によれば、本件商標の商標権者が、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、使用商標「Tea Break」を、その請求に係る指定商品「茶,ココア」に使用したことは認められるものの、使用商標は、本件商標と社会通念上同一の商標と認めることはできない。
その他、本件商標が本件審判の請求の登録前3年以内に請求に係る指定商品について使用されたことを認めるに足る証拠はない。
3 むすび
以上のとおりであるから、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、本件商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品「茶,ココア,氷」のいずれかについて、本件商標の使用をした事実を証明したものということができない。
また、被請求人は、本件商標を請求に係る指定商品に使用していなかったことについて、正当な理由があることも明らかにしていない。
したがって、本件商標は、商標法第50条第1項の規定に基づき、その登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2016-12-09 
結審通知日 2016-12-13 
審決日 2016-12-28 
出願番号 商願昭48-42047 
審決分類 T 1 31・ 1- Z (X30)
最終処分 成立  
特許庁審判長 青木 博文
特許庁審判官 板谷 玲子
田中 亨子
登録日 1979-03-23 
登録番号 商標登録第1376408号の1(T1376408-1) 
商標の称呼 ブレーク 
代理人 特許業務法人RIN IP Partners 
代理人 特許業務法人浅村特許事務所 

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