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審決分類 |
審判 全部取消 商53条の2正当な権利者以外の代理人又は代表者による登録の取消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W25 |
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管理番号 | 1323572 |
審判番号 | 取消2016-300047 |
総通号数 | 206 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2017-02-24 |
種別 | 商標取消の審決 |
審判請求日 | 2016-01-28 |
確定日 | 2016-12-05 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第5593980号商標の登録取消審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第5593980号商標の商標登録は取り消す。 審判費用は,被請求人の負担とする。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第5593980号商標(以下「本件商標」という。)は,「MASNADA」の欧文字を標準文字で表してなり,平成25年1月24日に登録出願,第25類「被服,帽子,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として,同年6月28日に設定登録され,その商標権は,現に有効に存続しているものである。 2 請求人の主張 請求人は,「商標法第53条の2の規定により,本件商標の登録を取り消す。審判請求費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めると申し立て,その理由を次のように述べ,証拠方法として,甲第1号証ないし甲第14号証を提出した(以下,証拠の表記について,「甲1」のように表記する。)。 (1)本件商標は,パリ条約の同盟国等において商標に関する権利を有する者の当該権利に係る商標又はこれに類似する商標であって,当該権利に係る商品又はこれに類似する商品を指定商品とするものである。 ア パリ条約の同盟国等において商標に関する権利を有することについて 請求人は,パリ条約の同盟国の一つであるイタリア国において,本件商標の出願前に出願して商標登録された,別掲のとおりの構成からなる商標に係る商標権(以下,当該商標権に係る商標を「イタリア国登録商標」という。)を有している。 イタリア国登録商標は,1995年11月24日に最初の出願がされ(甲3),1998年3月10日に登録第741085号として登録された後,2005年9月16日に更新出願及び2009年1月20日に登録第1165978号として登録され(甲4),そして,2015年7月6日に更新出願がされた(甲5)ものであり,現在,有効に存続している商標権である。 イ 本件商標とイタリア国登録商標の類否について 本件商標は,「MASNADA」の欧文字を横書きしてなる文字商標であり,その構成態様から「マスナダ」又は「マズナーダ」の称呼が生じるものである。 一方,イタリア国登録商標は,「mas」の欧文字と「N」の欧文字と「ada」の欧文字とを「N」を中心に上下にずらして横一列に配置してなる商標であり,全体として「masnada」の構成文字を有し,請求人の名称が「MASNADA S.R.L.」であることから,当該商標から請求人の名称が想起されることもあいまって,イタリア国登録商標からは「マスナダ」又は「マスナーダ」の称呼が生じるものである。 よって,本件商標とイタリア国登録商標は,同一の称呼が生じる類似の商標である。 ウ 本件商標の指定商品とイタリア国登録商標の指定商品の類否について (ア)イタリア国登録商標に係る指定商品は,「第25類 セーター,パンツ,スカート,被服,スーツ」であり,これらの指定商品は,本件商標の指定商品「第25類 被服,帽子」と同一又は類似の商品である。 (イ)本件商標の指定商品中の「ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」と,イタリア国登録商標に係る指定商品との類似関係について検討する。 近年,身に着けるもの全てを同一のブランドとすることを提案する企業が多く,マネキンに洋服,ベルト,帽子及び靴を全て着せてトータルコーディネートを提案する店舗が多くある。 具体的には,例えば,株式会社ファーストリテイリングのブランドの一つであるユニクロは,帽子やセーター等の被服に加えて,靴やベルトも製造しており,これらは全て同一の商標が付されて同一の店舗で販売している(甲6)。 グッチオ・グッチが1921年に創業したイタリアのファッションブランド,及び同ブランドを展開する企業であるGucci社は,被服に加えて,ベルト及び靴も製造し,全てに同社の商標を付して販売している(甲7)。 商品の企画・生産から流通,販売に至るまでを完全に自社プロデュースを行う株式会社コナカは,同一店舗内で,スーツ等の被服に加えて,ベルト及び靴も販売している(甲8)。 上記したように,現在は,多くの企業が,被服に加えて,ベルト及び靴の製造販売も同時に行い,それらに同一の商標を付して同一店舗内で販売をしている。このため,需要者は,洋服を製造販売しているブランドと同じ商標が付されたベルトや靴を見た場合には,そのベルトや靴が洋服を製造販売しているブランドが製造販売しているものと考え,逆の場合も同様である。このような取引の実情及び商品の関連性を考慮すると,その取扱い業者,生産及び流通経路並びに主たる需要者も共通し,これらの商品に同一又は類似の商標を使用すると,これに接する取引者及び需要者が,同一営業主の製造又は販売に係る商品であると誤認混同されるおそれが高いため,これらの商品は,互いに類似の商品に該当する。同時に「ガーター,靴下止め」は,ベルト等に類似する商品であるため,同様に,これらの商品に同一又は類似の商標を使用すると,これに接する取引者及び需要者が,同一営業主の製造又は販売に係る商品であると誤認混同されるおそれがある。 上記のとおり,イタリア国登録商標に係る指定商品「第25類 セーター,パンツ,スカート,被服,スーツ」と,本件商標の指定商品中の「ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物」は類似する商品である。 (ウ)次に,イタリア国登録商標に係る指定商品「第25類 セーター,パンツ,スカート,被服,スーツ」と,本件商標の指定商品中の「運動用特殊衣服,運動用特殊靴」との関係について検討する。 近年,我が国において大型総合スポーツ専門店が多数出現しており,この大型総合スポーツ専門店では,運動専用に作られた,いわゆる,運動用特殊靴及び運動用特殊衣服と一緒に,Tシャツやトレーナー等の衣服に加えて,ブリーフ等の下着類,帽子及びベルト等も同時に販売しており,近年では,サッカーや野球の専門のユニフォームを普段着として着用する人も多い。 また,サッカーや野球の専門のユニフォーム等のような運動用特殊衣服を普段着として取り入れる人が多くなる中,近年は,従来,運動用特殊靴及び運動用特殊衣服のみを製造販売していた企業が,運動用でない被服や履物の製造も行い,これらに運動用特殊靴及び運動用特殊衣服に付した商標と同じ商標を付して同一店舗で販売する傾向にある。 全国に展開する総合スポーツ専門店であるゼビオホールディングス株式会社は,スパイクや各種スポーツのユニフォーム等の「運動用特殊衣服,運動用特殊靴」と,Tシャツやスウェット等の「被服」とを同一の店舗内で販売している(甲9)。 アディダスジャパン株式会社は,スパイクや各種スポーツのユニフォーム等の「運動用特殊衣服,運動用特殊靴」と同時に,Tシャツ,靴下,ベルト,靴等も製造販売しており,これらの商品は同一の店舗で販売している(甲10)。 株式会社アシックスは,スパイクや各種スポーツのユニフォーム等の「運動用特殊衣服,運動用特殊靴」と同時に,Tシャツ,靴下,ベルト,帽子,靴等も製造販売している(甲11)。 このような取引の実情及び商品の関連性を考慮すると,その取扱い業者,生産及び流通経路並びに主たる需要者も共通にし,これらの商品に同一又は類似の商標を使用すると,これに接する取引者及び需要者が,同一営業主の製造又は販売に係る商品であると誤認混同されるおそれがあるため,これらの商品は,互いに類似の商品に該当する。 (エ)さらにまた,ファッションが多様化し,個性的なファッションが流行する中で,例えば,東京の秋葉原や原宿等に代表される様々な場所で「仮装用の衣服」を普段着として着用する者も増え,被服等を販売する洋服屋や大型量販店の洋服売り場において,仮装用の衣服が販売されているという実情もある。 このような取引の実情及び商品の関連性を考慮すると,その取扱い業者,生産及び流通経路並びに主たる需要者も共通し,これらの商品に同一又は類似の商標を使用すると,これに接する取引者及び需要者が,同一営業主の製造又は販売に係る商品であると誤認混同されるおそれがあるため,これらの商品(被服と仮装用衣装)は,互いに類似の商品に該当する。 (オ)上記したように,イタリア国登録商標に係る指定商品と,本件商標の指定商品とは,取引の実情及び商品の関連性を考慮すると,その用途において相違がなくなってきており,その取扱い業者,生産及び流通経路並びに主たる需要者も共通し,これらの商品に同一又は類似の商標を使用すると,これに接する取引者及び需要者が,同一営業主の製造又は販売に係る商品であると誤認混同される可能性が高いため,これらの商品は,互いに類似の商品に該当する。 したがって,上記したように,本件商標の指定商品とイタリア国登録商標の指定商品とは,同一又は類似する商品である。 エ 小括 以上のとおり,請求人は,本件商標の出願前に,パリ条約の同盟国であるイタリア国においてイタリア国登録商標に係る商標権を所有しており,また,本件商標とイタリア国登録商標とは同一又は類似しており,本件商標はイタリア国登録商標に係る指定商品と同一又は類似する商品を指定商品とするものである。 (2)本件商標に係る出願は,正当な理由がないのに,その出願に関する権利を有する者の承諾を得ないで,当該商標登録出願の日前1年以内にその代理人又は代表者であった者によってされたものである。 ア 甲12は,公証人による認証付きの2011年12月21日付けの会社会議議事録の写しであり,甲13は,イタリア国におけるプラト商工業,貿易及び農業会議所の会社登記所にて発行された履歴会社登録証の写しであり,甲14は,請求人の代表取締役である「エレーナ スキロ」による宣誓書である。 「エレーナ スキロ」は,甲12及び甲13に代表取締役として表示されており,これらの証拠により「エレーナ スキロ」が請求人の代表取締役であることを立証する。 甲12ないし甲14に示すように,本件商標の出願人である「クリスチーナ ビニ」(以下「本件出願人」という。)は,2012年3月4日まで請求人の代表取締役としての地位におり,2012年3月5日にこの地位から退いた身である。そして,請求人は,本件出願人が本件商標を出願することを許可しておらず,かつ,請求人は,本件出願人の名義で商標「MASNADA」を登録することの目的を本件出願人から何ら知らされていない。 イ 代理人又は代表者であったこと 上記のように,被請求人「クリスチーナ ビニ」(本件出願人)は,2012年3月4日付けで請求人の代表取締役を退任するまでは,請求人の代表取締役であった。そして,本件商標は,平成25年(2013年)1月24日に出願されたものであるから,被請求人(本件出願人)は,本件商標の出願の日前1年以内に,請求人の代表者に該当するものであった。 ウ 「正当な理由」がなく,「その出願に関する権利を有する者の承諾」を得ていないこと 上記のように,請求人は,本件出願人が本件商標を出願することを許可していないから,被請求人(本件出願人)は,「その出願に関する権利を有する者の承諾」を得ていない。 商標法第53条の2における「正当な理由」とは,商標に関する権利を有する者が,その代理店等に対しその国において商標を放棄したこと,又はその商標の権利を取得する関心がないことを信じさせた場合等が挙げられるものと解されるところ,両者の間にこのような事情は全くない。したがって,本件商標の出願には正当な理由はない。 エ 小括 以上のとおり,本件商標に係る商標出願は,正当な理由がないのに請求人の承諾を得ないで,本件商標の出願の日前1年以内に代表者の地位にあった被請求人によってなされたものである。 (3)むすび 上記のとおり,本件商標「MASNADA」は,請求人である「マズナーダ ソチエタ レスポンサビリタ リミタータ」が,パリ条約の同盟国であるイタリア国において所有するイタリア国登録商標と同一又は類似しており,その指定商品と同一又は類似する商品を指定商品とするものであり,本件商標に係る出願は,正当な理由がないのに,その出願に関する権利を有する請求人の承諾を得ないで,当該商標登録出願の日前1年以内に請求人の代表取締役であった被請求人「クリスチーナ ビニ」(本件出願人)によってされたものである。 したがって,本件商標の登録は,商標法第53条の2の規定に該当するものであって,取り消されるべきものである。 3 被請求人の答弁 被請求人は,何ら答弁していない。 4 当審の判断 (1)商標法第53条の2は,「登録商標がパリ条約の同盟国,世界貿易機関の加盟国若しくは商標法条約の締結国において商標に関する権利(商標権に相当する権利に限る。)を有する者の当該権利に係る商標又はこれに類似する商標であつて当該権利に係る商品若しくは役務又はこれらに類似する商品若しくは役務を指定商品又は指定役務とするものであり,かつ,その商標登録出願が,正当な理由がないのに,その商標に関する権利を有する者の承諾を得ないでその代理人若しくは代表者又は当該商標登録出願の日前1年以内に代理人若しくは代表者であつた者によつてされたものであるときは,その商標に関する権利を有する者は,当該商標登録を取り消すことについて審判を請求することができる。」と規定し,パリ条約第6条の7の規定を実施するため,他の同盟国等で商標に関する権利を有する者の保護を強化することを目的としたものであって,他の同盟国等における商標に関する権利を有する者の承認なしに,その代理人又は代表者等が我が国に当該商標と同一又は類似範囲にある商標について出願した場合であって,それが登録されたときは,商標に関する権利を有する者がその登録を取り消すことについて審判を請求することができる旨を定めたものである。 そこで,本件商標の登録が上記条項の要件を満たすものであるか否かについて,以下検討する。 (2)本件商標がパリ条約の同盟国,世界貿易機関の加盟国若しくは商標法条約の締結国において商標に関する権利(商標権に相当する権利に限る。)を有する者の当該権利に係る商標又はこれに類似する商標であって,当該権利に係る商品又はこれらに類似する商品を指定商品とするものであるか否かについて ア パリ条約の同盟国等において商標に関する権利を有する者 甲3ないし甲5及び請求の理由によれば,請求人は,パリ条約の同盟国であるイタリア国において,1995年11月24日に登録出願し,1998年3月10日に設定登録(登録第741085号)し,2009年1月20日に更新登録(登録第1165978号)及び2015年7月6日に更新出願手続した,別掲のとおりの構成からなる商標(イタリア国登録商標)について,第25類「セーター,パンツ,スカート,被服,スーツ」を指定商品とする商標権を有する者と認めることができる。 イ 商標及び商品の類否 (ア)本件商標について 本件商標は,前記1のとおり,「MASNADA」の欧文字を標準文字で表してなるものであり,その指定商品を第25類「被服,帽子,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」とするものである。そして,商標登録原簿及び職権で調査した事項によれば,本件商標の登録出願は,「クリスチーナ ビニ」(被請求人)によって平成25年1月24日にされ,同年6月28日に同人を権利者として設定登録されたことが認められる。 (イ)イタリア国登録商標について イタリア国登録商標は,別掲のとおり,「mas」の欧文字と「N」の欧文字と「ada」の欧文字とを「N」を中心に上下にずらして横一列に配してなるものであり,構成全体として「masNada」の欧文字を表したものと認識される。また,イタリア国登録商標は,上記アのとおり,第25類「セーター,パンツ,スカート,被服,スーツ」を指定商品とするものである。 (ウ)商品の類否 本件商標の指定商品中,第25類「被服,帽子」は,イタリア国登録商標の指定商品(第25類「セーター,パンツ,スカート,被服,スーツ」)と同一又は類似の商品と認めることができる。 したがって,本件商標の指定商品には,イタリア国登録商標の指定商品と同一又は類似のものが含まれる。 (エ)商標の類否 本件商標を構成する「MASNADA」の欧文字とイタリア国登録商標を構成する「masNada」の欧文字とは,書体及び配置等において相違するものの,そのつづり字を同じくするものであり,いずれの商標も,その構成文字全体に相応して「マスナダ」の称呼が生じるものであって,特定の語義を有しない造語よりなるものと認めることができる。 そうすると,本件商標とイタリア国登録商標は,観念上比較することができないものであるとしても,同一の称呼を生じる上,外観上も一定の共通性を有するものであるから,これらが同一又は類似の商品に使用された場合には,本件商標を付した商品とイタリア国登録商標を付した商品との間で,商品の出所について誤認混同を生じるおそれがあるものであって,両商標は類似する商標というべきである。 ウ 小括 上記ア及びイによれば,本件商標は,パリ条約の同盟国において商標権に相当する権利を有する者の当該権利に係るイタリア国登録商標と類似する商標であって,その指定商品は,当該権利に係る指定商品と同一又は類似の商品というのが相当である。 (3)本件商標の登録出願が,正当な理由がないのに,その商標に関する権利を有する者の承諾を得ないでその代理人若しくは代表者又は当該商標登録出願の日前1年以内に代理人若しくは代表者であった者によってされたものであるか否かについて ア 甲12ないし甲14及び請求の理由によれば,以下の事実を認めることができる。 (ア)2011年12月21日に開催された請求人の全体通常会議に,請求人の代表取締役及びパートナーとして,本件出願人(「クリスチーナ ビニ」)及び「エレーナ スキロ」が出席したことを証する公証人による認証付の会社会議議事録(写し)がある(甲12)。 (イ)請求人の最高経営責任者(CEO)について,2012年(平成24年)3月5日付けで本件出願人(「クリスチーナ ビニ」)の職務が満了し,2013年(平成25年)1月7付けで「エレーナ スキロ」(代表取締役)が選任されたことを証するイタリア国におけるプラト商工業,貿易及び農業会議所の会社登記所発行の2015年(平成27年)11月19日付け履歴会社登録証(写し)がある(甲13)。 (ウ)本件出願人であるイタリア国,59100 プラト,ヴィア エス.トリニータ,36在の「クリスチーナ ビニ」が,2012年(平成24年)3月4日まで,請求人の代表取締役としての地位におり,同月5日をもってその地位から退き,以来,請求人の経営には一切かかわっていないこと,請求人は,本件出願人に対し,本件商標の使用及び本件出願人の名義でその登録出願を許可しておらず,本件出願人の名義で商標登録することの目的も知らされていない旨が述べられた,請求人の代表取締役である「エレーナ スキロ」の2015年10月15日付け宣誓書がある(甲14)。 イ 上記アで認定した事実によれば,以下のとおり判断するのが相当である。 (ア)本件出願人である「クリスチーナ ビニ」は,本件商標の出願の日(2013年(平成25年)1月24日)前1年以内である2012年(平成24年)3月4日まで,請求人の代表取締役の地位にあった。 (イ)本件出願人は,前記3のとおり,本件商標を登録出願することについて請求人の承諾を得ていたこと,本件商標の登録出願をする行為に正当な理由があったことについて,いずれも何ら主張及び立証をしておらず,当該承諾及び正当な理由があったことを推認することはできない。 ウ 小括 上記ア及びイによれば,本件商標の登録出願は,正当な理由がないのに,請求人の承諾を得ないで本件商標の登録出願の日前1年以内に請求人の代表者であった者によってされたものと認めることができる。 (4)むすび 以上のとおり,本件商標は,パリ条約の同盟国において商標権に相当する権利を有する者である請求人の当該権利に係るイタリア国登録商標と類似する商標であって,その指定商品は,当該権利に係る指定商品と同一又は類似の商品であり,かつ,本件商標の登録出願は,正当な理由がないのに,請求人の承諾を得ないで本件商標の登録出願の日前1年以内に請求人の代表者であった者によってされたものと認めることができる。 したがって,本件商標の登録は,商標法第53条の2に規定する要件をすべて満たしているものと認められるから,同規定により,取り消すべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
別掲 イタリア国登録商標 |
審理終結日 | 2016-06-28 |
結審通知日 | 2016-07-01 |
審決日 | 2016-07-28 |
出願番号 | 商願2013-3918(T2013-3918) |
審決分類 |
T
1
31・
6-
Z
(W25)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 佐藤 淳 |
特許庁審判長 |
早川 文宏 |
特許庁審判官 |
根岸 克弘 田村 正明 |
登録日 | 2013-06-28 |
登録番号 | 商標登録第5593980号(T5593980) |
商標の称呼 | マスナダ |
代理人 | 浜野 孝雄 |
代理人 | 八木田 智 |