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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない Y17
管理番号 1322387 
審判番号 取消2013-300258 
総通号数 205 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2017-01-27 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2013-03-29 
確定日 2016-11-08 
事件の表示 上記当事者間の登録第5041167号商標の商標登録取消審判事件についてされた平成27年3月31日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消しの判決(平成27年(行ケ)第10086号、平成27年9月30日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5041167号商標(以下「本件商標」という。)は、「ハイガード」の片仮名と「HIGUARD」の欧文字を上下二段に表してなり、平成18年5月22日に登録出願、平成19年4月13日に設定登録され、第17類「繊維布地を合成樹脂で挟んでなる積層シート,繊維と貼り合わせたプラスチックシート,シート状・フィルム状・フォイル状・テープ状のプラスチック基礎製品,その他のプラスチック基礎製品,農業用プラスチックフィルム,岩石繊維製防音材(建築用のものを除く。),石綿の板,石綿の粉,化学繊維(織物用のものを除く。),石綿,岩石繊維,鉱さい綿,糸ゴム及び被覆ゴム糸(織物用のものを除く。),化学繊維糸(織物用のものを除く。),石綿糸,石綿織物,石綿製フェルト,石綿網,ゴム製包装用容器,コンデンサーペーパー,石綿紙,バルカンファイバー,ゴム」を指定商品とするものである。
なお、本件審判の予告登録は平成25年4月12日にされている。

第2 請求人の主張
請求人は、商標法第50条第1項の規定により、本件商標の指定商品中、第17類「繊維布地を合成樹脂で挟んでなる積層シート,繊維と貼り合わせたプラスチックシート,シート状・フィルム状・フォイル状・テープ状のプラスチック基礎製品,その他のプラスチック基礎製品」についての登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁並びに口頭審理における陳述を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第5号証を提出した。
1 請求の理由
請求人の調査によれば、本件商標登録原簿には専用使用権及び通常使用権の登録はなく、本件審判の請求の登録前に、継続して3年以上日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても本件商標が取消請求に係る指定商品について一度も使用された事実が存在しない。 したがって、本件商標の登録は、商標法第50条第1項の規定に基づき、取り消されるべきである。
2 答弁に対する弁駁
(1)商標権者の使用する商標について
ア 登録商標の不使用による取消審判に関する審判便覧によれば、登録商標が二段併記等の構成からなる場合に、その一方の使用が登録商標の使用と認められるのは、上段及び下段等の各部が観念を同一とするときである。
イ 乙第3号証ないし乙第5号証には、「ハイガード」の表示がある。「ハイガード」からは、造語である「HIGUARD」よりも、むしろ、『高度な(高次の)防御』ほどの意味を生じる既成の英単語の組み合わせ「High-guard」を想起し得るものである。実際に「ハイガード」又は「High-guard」の語は格闘技の防御姿勢などを指すものとして使われている。よって、「ハイガード」又は「High-guard」の文字を使用しただけでは、本件商標と社会通念上同一の範囲にある商標を使用したものということはできない。
ウ 乙第5号証には、「High-guard」の表示がある。「High」も「guard」も、我が国でもよく知られた英単語であり、「高度な(高次の)防御」ほどの意味を生じるのに対して、本件商標の構成中「HIGUARD」は特定の観念を有さない造語と認められ、両者は観念において相違するものであるから、「High-guard」の文字を使用しただけでは、本件商標と社会通念上同一の範囲にある商標を使用したものということはできない。
エ 被請求人は、口頭審理陳述要領書において、本件商標は上段「ハイガード」、下段「HIGUARD」ともに英単語の「high」及び「guard」に由来するため、「ハイガード」「HIGUARD」「Hi-guard」は全て意味を同じくし、乙号証にみられる使用商標「ハイガード」及び「High-guard」は本件商標と同視できる旨主張する。
商標の由来にしろ、意味づけにしろ、商標採択者の意図と取引者、需要者との認識とは大きく乖離し得る。「ハイガード」が「High-guard」と同義とみるのは自然なこととしても、「HIGUARD」は事情を異にする。「HIGUARD」中の「HI」は、商品の品番・型式等を表示する記号としても使用され、様々な語の略語ともなり得るものであって、よく知られるところでは呼び掛けを表す間投詞であり、人名でもある(甲5)。「High」の略語として用いられるのは、多義的な「HI」の一つの側面に過ぎない。一義的に意味の定まらない「HI」を含む「HIGUARD」については、やはり造語とみるほかない。
オ 乙第8号証ないし乙第11号証は、いずれも上段及び下段等の各部から特定の観念を生じないために観念上での変動はないとされるケースであり、本件とは事案を異にする。
カ 乙第12号証ないし乙第16号証は、「HIGUARD」が「High-guard」と同じ意味を生じ得る可能性を示唆するものではあるが、両者の意味が完全に一致することを示すものではない。ましてや、「HIGUARD」ひいては本件商標全体と「High-guard」とが同視し得ることを示すものでもない。
キ 被請求人は、「ハイガード」の使用をもって本件商標全体の使用と同視できると強調しているが、「ハイガード」の使用が「High-guard」との関連でなされ、「High-guard」が本件商標と到底同視できない以上、被請求人の主張は当たらないといわざるを得ない。
(2)本件商標の使用時期について
ア 被請求人は、乙第3号証の「05.02.3000M」の記載によって、2005年2月の作成時期を主張しているが、該記載から一義的に2005年2月と解することはできない。例え、2005年2月に作成したものであったとしても、要証期間外に作成されたものである。
イ 被請求人は、乙第4号証の「220-3IT1010」の記載によって、2010年10月の作成時期を、また、乙第5号証の「228-1HT1207」の記載によって、2012年7月の作成時期を主張しているが、10桁の英数字の記載から4桁の数字のみを抽出して、一義的にこれらの作成時期であると主張するためには、十分な証明がなされるべきである。
ウ 被請求人は、乙第6号証を提出して乙第5号証のカタログの作成時期を説明しているが、この注文書の品名の記載は「ウェーブロック、テクミラー、ボンガード短冊型カタログ」であり、肝心の「ハイガード」が欠落していて、乙第5号証のカタログの表題とは明らかに異なるのであって、乙第6号証からは乙第5号証のカタログとは別のカタログの注文書であるとの印象を受ける。
エ 被請求人は、乙第7号証の「12.04.25」の表示から、「2012年4月25日」に発行されたものとしているが、「平成12年4月25日」ともとり得る表示である。
仮に「2012年4月25日」に発行されたものであるとしても、実質的な商標の使用を示すものではない。
(3)被請求人の商品について
ア 被請求人は、本件取消請求に係る指定商品中、第17類「繊維布地を合成樹脂で挟んでなる積層シート、繊維と貼り合わせたプラスチックシート、シート状・フィルム状・フォイル状・テープ状のプラスチック基礎製品」(類似群コード:34A01)の使用証拠として乙第3号証ないし乙第5号証掲載の「ポリエステルターポリン」を示しているが、「ターポリン」は第22類の「雨覆い」や「天幕」のカテゴリーに属する商品であって、類似群コードは「20D01」である(甲3)。
イ 乙第3号証にも「産業用強力ポリエステル平織り基布に、特別設計のPVC樹脂をコーティングし」との説明があるとおり、ターポリンは織物であって、プラスチック基礎製品ではない(甲4)。被請求人は、ターポリンがロール状で取引され、取引先により最終製品に加工されることをもって半加工品であると述べているが、織物がロール状原反で販売され、加工されることはごく自然なことであって、それをもってターポリンが最終製品ではない、すなわちプラスチックの半加工品であるとする主張も当たらない。
ウ 以上のことから、請求人は、被請求人は本件商標の使用を示す適切な証拠を提出していないものと考える。よって、本件商標権は取り消されるべきである。

第3 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第31号証を提出した(審決注:なお、乙第21号証ないし乙第31号証は、平成27年(行ケ)第10086号事件において知的財産高等裁判所に提出した甲各号証である。)。
1 答弁の要旨
(1)本件商標は、商標権者により、本件審判請求前3年以内に日本国内において指定商品「繊維布地を合成樹脂で挟んでなる積層シート、繊維と貼り合わせたプラスチックシート、シート状・フィルム状・フォイル状・テープ状のプラスチック基礎製品」について使用されていることは明らかである。(2)商標権者について
商標権者は、プラスチックとファイバーの複合素材メーカーとして1964年(昭和39年)に創業され、現在では、塩ピ、EVA(エチレンビニールアセテート)、PP(ポリプロピレン)、PS(ポリスチレン)等の合成樹脂を使用した加工シートやフィルム及びそれらの成形品を、建設仮設資材、農業資材、工業材料から、食品包材をはじめとする一般雑貨用として製造、加工及び販売を行っている(乙1)。
商標権者は、2005年(平成17年)に、商号を「ウェーブロックホールディングス株式会社」と改め、純粋持株会社となったのと同時に、新会社「日本ウェーブロック株式会社」を設立した。現在の日本ウェーブロック株式会社は、ウェーブロックホールディングス株式会社の100%子会社である(乙1)。
ウェーブロックホールディングス株式会社には、日本ウェーブロック株式会社以外にも、4つの子会社があり、全6社でグループを形成している(乙2)。本件商標に係る商品の販売元である「ダイオ化成株式会社」もその一つであり、日本ウェーブロック株式会社同様、ウェーブロックホールディングスの100%子会社であるが、日本ウェーブロック株式会社とダイオ化成株式会社は完全に独立した別会社として存在している。
(3)本件商標の使用について
商標を宣伝用チラシやカタログに掲載し配布する行為は、商標法第2条第3項第8号の「商品に関する広告に商標を付して頒布」することにあたり、商標の使用に該当する。
乙第3号証は、「ハイガード(R)」(「(R)」の部分は、「○」の中に「R」の文字を配してなる表示。以下同じ。)宣伝用チラシ、乙第4号証は、「ウェーブロック(R) GTシリーズ」カタログ、乙第5号証は、「ウェーブロック、テクミラー、ハイガード、ポンガード短冊カタログ」であり、これらは、すべて本件商標が付された宣伝用チラシ及びカタログである。これら宣伝用チラシやカタログに記載された内容等によって、本件商標の使用を以下に証明する。
ア 本件商標について
乙第3号証では、表面及び裏面の最上段に「ハイガード(R)」(以下「本件使用商標1」という。)が記載されている。また、裏面中断の「製品」の項目においても、品名「ハイガード(R)(ZT2600D)」のように、本件商標及び品番が横並びで書されている。
乙第4号証では、カタログ表紙右下と見開き中央下部に「ハイガード(R)」(以下「本件使用商標2」という。)や「ZT2600D」の文字が記載されている。
乙第5号証では、カタログ表紙中ほどに「ハイガード(R)」(以下「本件使用商標3」という。)が記載され、目次の2及びカタログNo.15に「ハイガードZT2600D」との記載がある。これらチラシやカタログに共通する「ZT2600D」部分は、「ハイガード」の品番である。
これらすべての宣伝用チラシ及びカタログには、商標権者の記載がある。商標権者は、乙第3号証では裏面右下に製造者の表示として、乙第4号証及び乙第5号証ではカタログ裏面には製造元として記載されている。
また、乙第4号証及び乙第5号証では、製造元である商標権者の記載とともに、発売元としてダイオ化成株式会社が記載されているが、これは、商標権者が「ハイガード」に係る商品を製造し、これをダイオ化成株式会社に一括販売し、ダイオ化成株式会社から取引者や需要者に販売していることを示している。商標権者が製造元として記載されていることから、「ハイガード」を含むカタログに係る商品の出所は商標権者であることが理解される。
このように、本件商標が宣伝用チラシ及びカタログに記載されていること、及び、本件商標の使用者が商標権者であり、同社の出所を表示していることが理解される。
イ 本件商標に係る指定商品について
本件商標が本件指定商品中の商品「繊維布地を合成樹脂で挟んでなる積層シート、繊維と貼り合わせたプラスチックシート、シート状・フィルム状・フォイル状・テープ状のプラスチック基礎製品」について使用されていることを以下に説明する。
乙第3号証のチラシ表面には、「長期的に汚れ、ホコリがつきにくいターポリン。」の記載があり、裏面ではさらに詳しく、「ハイガード(R)は、産業用強力ポリエステル平織基布に、特別設計のPVC樹脂をコーティングし、強度はもちろん耐候性、耐寒、耐薬品性、防水性、加工性に優れるボンガード(R)の性能に加え、より長期的に使用するため、汚れ防止処理を施し、汚れ、ホコリがつきにくくしました。」との記載がある。
乙第4号証のカタログの見開き中央下の「ハイガード(R)」の横に、「ポリエステルターポリン」との記載がある。
乙第5号証のカタログの表紙の本件商標「ハイガード」左横に「防汚・ポリエステルターポリンシート」及び目次の2の最上段に「防汚ターポリンシート<ハイガード/ニュー・ホワイトガード>」の記載がある。また、乙第5号証のカタログNo.15部分には「構成:PVC/ポリエステル織布/PVC」との記載があり、これは、「ハイガード」に係る商品が2枚のポリ塩化ビニル(polyvinyl chloride、PVC)でポリエステル織布を挟んでラミネート加工されたポリエステルターポリンであることを示している。
乙第3号証ないし乙第5号証の商品説明に記載されているポリエステルターポリンやポリエステルターポリンシートとは、ポリエステル織布をPVCでサンドイッチした多重及び積層構造からなるプラスチックシートで、防火特性を持つPVCでポリエステル織布を挟み込むことにより、耐久性及び防火性を強化したビニールシートのことを意味している。ポリエステルターポリンやポリエステルターポリンシートは業界で一般的に使用されている商品名である。
乙第3号証ないし乙第5号証の宣伝用チラシやカタログによると、「ハイガード」に係る商品であるポリエステルターポリンの用途は、ガレージ、農機具倉庫やパイプ倉庫の覆い、トラックの荷台カバー、鶏舎や畜舎の仕切り幕、風よけ用カーテンや各種カバー類であり、汎用性の高い商品であることがわかる。乙第3号証のチラシや乙第5号証の目次の2によると、「ハイガード」商品の規格は幅185センチ、長さ50mのシートであり、それが巻物(ロール)になった状態で取引される。すなわち、そのロール状の半加工品が、製造元である被請求人日本ウェーブロック株式会社からダイオ化成株式会社を経由して取引先へ納入され、取引先によりガレージ用等の覆いやトラックの荷台カバーのような最終製品に加工されたのち、最終需要者へ販売される。
このように、乙第3号証ないし乙第5号証から、「ハイガード」に係る商標が「繊維布地を合成樹脂で挟んでなる積層シート、繊維と貼り合わせたプラスチックシート、シート状・フィルム状・フォイル状・テープ状のプラスチック基礎製品」に使用されていることが理解される。
ウ 宣伝用チラシ及びカタログの作成時期
宣伝用チラシやカタログの作成年月日は、それらチラシ等の裏面右下端に各社独自のカタログ番号等とともに記載されるのが一般的である。
乙第3号証の裏面右下端には「05.02.3000M」の記載があり、この冒頭4桁の数字は、このカタログが2005年2月に作成されたことを示している。
乙第4号証の裏面右下端には「220-3ITI010」の記載があり、この末尾4桁の数字は、このカタログが2010年10月に作成されたことを示している。
乙第5号証の裏面右下端には「228-1HT1207」の記載があり、この末尾4桁の「1207」は、この2012年7月に作成されたことを示している。
次に、乙第5号証のカタログ作成時期について、さらに詳しく説明する。 乙第6号証は発売担当のダイオ化成株式会社が、印刷会社である株式会社梵天社(代表者:坂本直樹住所:京都市南区)に乙第5号証に係るカタログを注文した注文書の写しである。
乙第6号証の注文書の写しには、乙第5号証に係るカタログ表紙のプリントが添付されていることから、乙第5号証のカタログの発注書であることがわかる。
作成時期は、注文書の写しの中ほどに記載された「*表紙(裏面)の作成年月日の弊社NO.は228-IHT1207です。」の末尾4桁より2012年7月であることがわかるが、さらに、この注文書の日付が平成24(2012)年6月25日とあることからしても、「228-IHT1207」の末尾4桁の「1207」は2012年7月を示していることが理解される。この番号は、乙第5号証裏面右下端の番号と一致する。また、注文書にカタログの数量として「1,000部」と記載があることから、このカタログが1,000部作成され、取引先に配布されたことが理解される。
このように、本件商標に係る宣伝用チラシやカタログが、少なくとも2005年、2010年及び2012年に作成され、取引先に配布されている。
(4)「ハイガード」に係る商品の販売について
乙第7号証は、商標権者の売上伝票の写しである。この売上伝票の発行日は、売上伝票の写しの右上に「発行日12.04.25」とあることから、2012年4月25日に発行されたものである。販売先は、宛先に記載の「ダイオ化成株式会社」である。売上伝票に記載された品番として「ZT2600D」とあるが、これは乙第3号証ないし乙第5号証のカタログや宣伝用チラシに共通して示されている「ハイガード」の品番とー致している。また、前記のとおり、商標権者とダイオ化成株式会社は、ウェーブロックホールディングスの100%子会社であるが、両者はそれぞれ独立した別法人であるため、2012年4月25日に「ハイガード」に係る商品が商標権者からダイオ化成株式会社に実際に販売されたことがこの売上伝票によって証明されている。すなわち、本件商標に係る商品が実際に市場に流通していたことがこの売上伝票から理解される。
したがって、請求人は、審判請求書において、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者、通常使用権者のいずれもが使用した事実を確認できなかった旨を述べているが、実際には、前記証拠に示されるとおり、商標権者によって本件指定商品に使用されている。
(5)本件商標と使用商標の同一性について
本件商標は、上段に片仮名「ハイガード」を配し、下段に欧文字「HIGUARD」を配してなる商標である。
本件商標の上段及び乙第3号証ないし乙第5号証に示されている使用商標である片仮名「ハイガード」の「ハイ」は、「高い」を意味する英単語「high」に由来し、「ガード」は、「保護、防御」等を意味する英単語「GUARD」に由来すると考えられる。したがって、2つの英単語から生ずる意味を合わせると全体として「防御の程度が高い」という漠然とした意味合いが生ずるかもしれない。しかしながら、「ハイガード」という言葉は日本語には存在する言葉ではなく、前記のとおり単なる曖昧なイメージを生ずるのみであることを考慮すると、「ハイガード」は全体として特定の意味を持たない造語であると判断される。また、欧文字「HIGUARD」についても、「HI」が「高い」を意味する英単語「HIGH」の省略(例HI-FIなど)とも考えられるが、欧文字「HIGUARD」は通常使用される英単語には存在するものではないため、一連に書された欧文字「HIGUARD」は、上段の片仮名「ハイガード」同様、特定の意味合いが生じない造語とみるべきである。
また、本件商標から生じる称呼は、上段、下段ともに「ハイガード」のみである。
本件商標のような特定の意味合いを持たない造語の場合、取引現場で重要視されるのは称呼である。すなわち、取引者や需要者は、主に称呼によって商標の判別を行い、商品の取引を行うため、本件商標と使用商標の称呼が一致している場合であれば、取引上両者は同一のものと取り扱われると判断してもよい。
本件についてみると、前記のとおり、本件商標から生ずる称呼は、上段、下段ともに「ハイガード」のみであり、実際の使用商標もその称呼を表す片仮名「ハイガード」である。また、使用商標は、本件商標の上段に記載の「ハイガード」とも一致することから、本件商標と使用商標は社会通念上同一と認められる範囲の商標であることは明らかである。
確かに、登録商標はそのままの態様で使用することが原則であるが、本件のように、登録商標は片仮名と欧文字を二段に書してなるものであっても、実際に使用されているのは片仮名のみであったり、欧文字のみであったりすることは取引の実情としてよく見受けられる。
本件についても、登録商標の上段「ハイガード」及び下段「HIGUARD」から自然に生じる称呼はいずれも「ハイガード」であり、上段と下段の観念における異同はないため、前記審決例と同様、社会通念上同一商標の使用と認められるべきである。
本件商標では、海外での使用を想定し、下段に欧文字「HIGUARD」を配し、登録を受けたものであるが、現在日本における使用では、どうしても片仮名のみの商品紹介にならざるを得ない状況にある。というのも、取引者、需要者が日本在住であることを考慮して、カタログ等に使用される商品名はすべて片仮名が使用されており、カタログ等の全体の統一感や読み易さ、見易さの点からも片仮名が優先して使用された(乙3ないし乙5)。
さらに、本件商標の構成が、上段に片仮名「ハイガード」、下段に欧文字「HIGUARD」が書されていることからも、片仮名「ハイガード」を中心に使用されるであろうことは、理解されるところである。
そして何より、商標権者は、乙第3号証ないし乙第5号証に示される「ハイガード」に「(R)」を付して使用することにより登録商標であることをアピールしており、取引者や需要者もこれを登録商標と認識している。
(6)まとめ
このように、乙第3号証ないし乙第5号証に示されたカタログや宣伝用チラシは、本件商標が付された状態で取引先に配布されていることから、これらは商標法第2条第3項第8号にいう「商品に関する広告宣伝」に該当しており、また、カタログ等の作成時期が、それぞれ2005年、2010年及び2012年であることから、本件商標が、本件審判請求予告登録前3年以内に使用されていたことが証明される。
さらに、乙第7号証の売上伝票は、実際に本件商標に係る商品が販売されたことを示すものであり、本件商標に係る指定商品が市場に流通していたことを示している。
以上のとおり、本件商標は本件請求の予告登録前3年以内に、商標権者により、その指定商品である「繊維布地を合成樹脂で挟んでなる積層シート、繊維と貼り合わせたプラスチックシート、シート状・フィルム状・フォイル状・テープ状のプラスチック基礎製品」について使用されていることは明らかで疑いの余地がなく、使用されている商標の態様も、商標法第50条第1項の規定に照らせば、社会通念上同一と認められる範囲を出ないものである。
2 口頭審理における陳述
(1)被請求人による追加の主張
ア 商標権者が使用する商標は本件商標の使用であることについて
商標権者が実際に使用している商標は、二段に書された本件商標のうち片仮名で記載された上段部分「ハイガード」なのであり、この使用をもって本件商標全体の使用と同視できる。
乙第1号証及び乙第3号証ないし乙第5号証から理解できることは、商品のチラシ、カタログやウェブページにおいて、商標権者は自己の商品の名称として片仮名「ハイガード」を使用していること、及び、片仮名「ハイガード」には「(R)」マークを付していることから、商標権者自らが自己の登録商標であると認識して使用しているということである。
ここで、本件商標の下段に書された「HIGUARD」についてみると、ここから一義的に生ずる称呼は上段と同一の「ハイガード」である。そうとすると、商標権者が使用している片仮名「ハイガード」は、本件商標の上段であるとともに上段及び下段から共通に生ずる称呼でもある。商談の場では特に、商品の名称を音で認識することが多く、本件商標全体から生ずる称呼「ハイガード」は取引の現場で重視されることから、これに接する需要者、取引者は、当然、商標権者の商標、つまり、本件商標であると認識する。
さらに、観念については、審理事項通知書に記載のとおりに「ハイガード」が造語で無観念であるならば、欧文字「HIGUARD」も無観念であるし、「ハイガード」から「高いガード」の観念が生ずるのであれば、「HIGUARD」からも「高いガード」の観念が生ずることは後述のとおりである。
よって、商標権者が使用する「ハイガード」は、本件商標と同一の称呼及び観念を生ずる。
また、乙第5号証のカタログ裏面に書された「High-guard」は、カタログ制作の場において、登録商標について十分認識していなかった担当者が、「ハイガード」の「ハイ」は「High」由来のものであるという認識から記載してしまったものと思われる。これが取引者、需要者の認識にどれ程の影響を与えるとは思われない。後で説明するが、本件商標下段に記載の「HIGUARD」の「HI」についても、上段と同様、「High」由来のものであるので、乙第5号証のカタログに記載されている「High-guard」は本件商標と同視できるものである。
請求人は、片仮名と欧文字を同等に取り扱っているようであるが、商標権者は、実際の取引現場で広く認識されやすい本件商標の上段部分「ハイガード」を優先的に使用したに過ぎない。
このように、商標権者が使用する商標は本件商標の上段部分であり、また、上段及び下段から一義的に生ずる称呼及び観念とも同一のものであることから、被請求人による片仮名「ハイガード」の使用をもって本件商標全体の使用と同視できるものである。
(2)当審の暫定的見解について
乙第1号証及び乙第3号証ないし乙第5号証に記載の「ハイガード」と本件商標との社会通念上の同一性について説明する。
ア 本件商標から生ずる観念について
本件商標は、上段に片仮名「ハイガード」を配し、下段に欧文字「HIGUARD」を配してなる商標である。本件商標の上段及び使用商標である片仮名「ハイガード」の「ハイ」は、「高い」を意味する英単語「high」に由来し、「ガード」は、「保護、防御」等を意味する英単語「GUARD」に由来する。また、本件商標の下段に記載の「HIGUARD」中の「HI」は上段の「ハイ」と同様に「HIGH」に由来する。
したがって、本件商標の上段「ハイガード」及び下段「HIGUARD」からは共通した意味合いである「防御の程度が高い」若しくは「高いガード」という共通した意味合いが生ずるといえる。つまり、暫定的見解に記載の、「High-guard」から生ずるとされる「高いガード」と同一の観念を生ずる。
その理由、つまり、「ハイ」及び「HI」が一義的に「high」を示す言葉であることを以下に説明する。
イ 「ハイ」及び「HI」と「HIGH」の関係について
片仮名「ハイ」や欧文字「HI」は、英単語「HIGH」の略語として、日常頻繁に使用され、また、接することばである。
まず、片仮名「ハイ」を広辞苑で調べると、「【high】程度の大きいこと。高いさま。高級。」とある(乙12)。つまり、「ハイ」は、「high」の文字を片仮名で表したものである。また、日本語においても形容詞として使用されており、広辞苑にも例示されているが、「ハイスピード」、「ハイジャンプ」、「ハイクラス」など他の名詞と組み合わされ、「high」と同じ意味で使用されていることがわかる。また、「ハイ」つまり「high」は、商品等の品質や程度について「高い」や「高級」を表すことから、好んで使われる言葉でもある。
また、欧文字「HI」は「HIGH」由来の言葉であり、「HI」が「HIGH」の略語として使用されている場面が頻繁に見受けられる。例えば、音響機器を示す「ハイファイ」(hi-fi)、高度先端技術を示す「ハイテク」(hi-tech)、高品位テレビジョンを意味する「ハイビジョン」(hi-vision)などは、すべて「high-fidelity」、「high-technology」、「high-vision」の略称であることは一般的によく知られていることである(乙12)。そのほかにも、打楽器の一種である「ハイハット」(hi-hat(high-hat))や高解像度を示す「ハイレゾ」(hi-res(high-resolution))など(乙13)も「hi」が「high」の略語として使用されている例の一部である。これらは、時と場合によって「hi」と「high」のいずれかが使用されるといったことも見受けられ、「hi」と「high」はなんら区別なく使用されていることからも、観念上の異同はない。
特に、日本語では、「hi」と「high」は称呼上同一(「ハイ」)であり、片仮名で「ハイ」と記載されている場合、「hi」と「high」のいずれかを区別することは難しく、また、両者は同一の観念を生ずる言葉であるため、区別する必要もない。
「ハイ」の片仮名や「hi」の欧文字が、「high」に由来し、「high」と同一の観念を生ずるということは、御庁の審判例からも明らかである。乙第14号証ないし乙第16号証に引用する審判例は、本件とは異なり、商標登録の取消の審判ではないが、御庁審判部で「hi」や「ハイ」が「high」と同じ意味に使用されると判断されていることから、本件審判事件において参考になる事例である。
このように、「hi」及び「ハイ」は、「high」と同じ称呼であるのみならず、同一の観念を有することばであることは明らかである。したがって、本件商標「ハイガード/HIGUARD」からは、「High-guard」と同一の「高いガード」という観念が生ずるとみるのが相当である。 一方で、「ハイガード」は日本語として普通に使用される言葉ではなく、また、「HIGUARD」及び「high-guard」についても同様に英語として普通に使用される言葉ではない。それぞれの構成要素である「ハイ(hi若しくはhigh)」と「ガード(guard)」の意味から「高いガード」という観念を生ずる可能性は否定できないが、指定商品との関係で具体的に「高いガード」が何から何をガードするのかが明らかではなく、更に、何から何を(どのような手段かは不明であるが)「高く」「ガード」するといったように商品の品質について間接的に暗示するにすぎないことから、いずれのフレーズも等しく全体として特定の意味合いを持たない造語であるといってよい。
そうとすると、本件商標の上段「ハイガード」及び下段「HIGUARD」から生ずる観念に異同はなく、また、自然に生じる称呼はいずれも「ハイガード」であることから、乙第1号証及び乙第3号証ないし乙第5号証に使用されている商標は、本件商標と社会通念上同一であると認められるべきである。
また、請求人は、弁駁書において、「High-guard」が「高度な(高次の防御)」を示す格闘技の防御姿勢を指すものとして使われている旨主張するが、広く一般的に使用され認知されている使用例ではない上、本件商標の指定商品の分野とは無関係であり、本件商標の指定商品の分野では特定の意味合いを有する言葉ではないことは明らかである。
さらに、請求人は、登録商標「サーパス/SERPAS」について、上段の片仮名文字「サーパス」のみを使用していたという事案の審決を例示しているが、請求人の挙げている審判事件と本件は事案を異にする。
ウ 指定商品の使用について
請求人は、本件商標に係る指定商品中、第17類「繊維布地を合成樹脂で挟んでなる積層シート、繊維と貼り合わせたプラスチックシート、シート状・フィルム状・フォイル状・テープ状のプラステック基礎製品」の使用証拠として提出した乙第3号証ないし乙第4号証に示す「ポリエステルターポリン」が第22類の「雨覆い」や「天幕」に類似する商品であり、類似群コード(20D01)に属する商品である旨、及び、甲第4号証に記載の「ターポリン」が織物であるとの記載をもって、商標権者の使用する商品がプラスチック基礎製品ではない旨主張するが、商標権者の使用する商品は、第17類の「プラスチック基礎製品」に属することは明らかである。
さらに、請求人は、商標権者が使用する商品が第22類の「雨覆い」や「天幕」に類似する商品であり、類似群コード(20D01)に属する商品である旨を申し述べているが、商標権者が販売している商品は、「半加工品」であり、最終製品である第22類の「雨覆い」や「天幕」とは異なる。
したがって、商標権者が使用する商品は、第17類「プラスチック基礎製品」に含まれるものであることは明らかである。
3 請求人提出の口頭審理陳述要領書について
(1)被請求人の使用する商標について
請求人は、口頭審理陳述要領書において甲第5号証を示して、「『HIGUARD』中の『HI』は、商品の品番・型番等を表示する記号としても使用され、様々な語の略語ともなり得、よく知られるところでは呼び掛けを表す間投詞であり、人名でもある」ことから、「HI」を含む「HIGUARD」は造語とし、また、被請求人の使用する「ハイガード」は「High-guard」との関連でなされ、「『High-guard』が本件商標と到底同視できない」ことを理由に、被請求人が本件商標を使用していないと主張する。
しかしながら、上記疑義につき、被請求人は下記のとおり反論する。
請求人は、「HI」を多義的な言葉であるため、「High」との関連性が薄いとし、本件商標「ハイガード/HIGUARD」と「High-guard」が社会通念上同一ではないとしているが、そもそも、「High-guard」の語は、本件商標と「ハイガード」との社会通念上の同一性を失わせるほどに異質の、かけ離れた観念を生ずるものなのであろうか。
被請求人提出の口頭審理陳述要領書においても述べているが、たとえ、「High-guard」からは、「高いガード」の観念が生ずる場合があったとしても、指定商品との関係では、具体的に「高いガード」が何から何をガードするのかが明らかではなく、更に、何から何を(どのような手段かは不明であるが)「高く」「ガード」するといったように商品の品質について間接的に暗示するに過ぎない。すなわち、「High-guard」は既成語ではない造語なのであり、たとえそこから観念が生ずるとしても、それは商標としての識別性を欠くほどに記述的なものではなく、せいぜい漠然としたものである。一方、本件商標も等しく造語であるから特定の観念が生じないというのであれば、本件は、造語同士の観念比較であって、「既成語」と「既成語」との間で観念が相違し明確に区別される場合とは事案が異なる。
また、「ハイ○○」や「○○ガード」が一般的に使用されている実情からすると、本件商標は造語であるにしても、ここから少なくとも一定の観念が生ずる可能性も否定できない。そういった場合、その観念は、「ハイ」が「High」や「HI」に通じることは、乙第12号証及び乙第13号証より明らかであることから、「HIGUARD」と「High-guard」の観念は通底するといえる。そうすると、本件商標と「High-guard」は観念上同視できるものといえ、請求人の主張は失当であるといわざるを得ない。
また、請求人は、乙第5号証を示し、「『HIGUARD』中の『HI』は、商品の品番・型番等を表示する記号としても使用され、様々な語の略語ともなり得、よく知られるところでは呼び掛けを表す間投詞であり、人名でもある。」と主張しているが、甲第5号証に示される「HI」は、すべて「HI」単独で使用される場合が示されており、本件商標や請求人が示した「HI」+「名詞」の組み合わせからなるものとは事案が異なる。繰り返しになるが、「HI」+「名詞」の「HI」部分が「High」を示すことは乙第14号証ないし乙第16号証の審決例からも明らかである。
以上のように、請求人はスペリングの異なる「High-guard」の語がたまたま裏表紙にみられたため、これに固執し執拗な反論を続けているが、被請求人が提出した使用証拠方法全体を素直に見ればわかるように、商標権者が使用しているのは、実際の取引現場で広く認識されやすい本件商標の上段の片仮名部分「ハイガード」なのであり、また、上段及び下段から一義的に生ずる称呼及び観念とも同一のものであることから、商標権者による片仮名「ハイガード」の使用をもって本件商標の使用と同視できるものである。

第4 当審の判断
1 本件各使用商標の使用の事実について
(1)被請求人の提出に係る証拠及び被請求人の主張によれば、以下の事実が認められる。
ア 被請求人の前身である日本ウェーブロック株式会社は、プラスチックとファイバーの複合素材メーカーとして、昭和39年に設立されたが、平成17年4月に商号を「ウェーブロックホールディングス株式会社」に変更するとともに、純粋持株会社となった。これと同時に、ウェーブロックホールディングス株式会社の100%子会社である事業会社として、会社分割により、被請求人が設立された。
被請求人は、その設立以降、PVC(ポリ塩化ビニル)、EVA(エチレンビニルアセテート)等の合成樹脂を使用して加工したシート、フィルムやその成形品を、建設仮設資材、農業資材、工業材料等として製造・販売するなどの事業を行っている。
イ 被請求人は、「ハイガード」という商品名のターポリン(ポリエステル織布にPVC樹脂をコーティングしたシートで、ガレージ、野積みシート、トラック荷台カバー等の用途に用いられるもの。本件商品)を製造・販売しているところ、本件商品については、以下のとおり、商標が記載された商品カタログが作成、頒布されている事実がある。
(ア)被請求人は、被請求人を製造元、ダイオ化成を発売元とする「ウェーブロックGTシリーズ」と題する、見開き4頁からなる商品カタログ(乙4)を、ダイオ化成とともに作成し、頒布した。そして、乙第4号証のカタログには、その表紙の右下部に「ハイガード」の片仮名文字を青色のデザイン化された書体で記した商標(本件使用商標2)が記載され、その下に「防汚/無滴処理品」との記載がある。また、乙第4号証のカタログの見開きの中央下部にも本件使用商標2が記載され、その右横に「ポリエステルターポリン」との記載があり、その下方にサンプルとして生地見本が貼付されている。さらに、乙第4号証のカタログの裏面には、標準物性表が記載されているところ、その中には、「ボンガード ポリエステルターポリンシリーズ」の一つとして、品種欄に「ZT2600Dハイガード」との記載がある。
また、乙第4号証のカタログの裏面右下端には、「220-3 IT1010」との記載がある。
(イ)被請求人は、被請求人を製造元、ダイオ化成を販売元とする、冊子状の商品カタログ(乙5)を、ダイオ化成とともに作成し、頒布した。
そして、乙第5号証のカタログにおいては、その表表紙に、商品の内容とその名称が4段に分けて青地に白抜きで記載されているところ、その3段目には、「防汚・ポリエステルターポリンシート」の名称として「ハイガード」の片仮名文字を青地に白抜きのゴチック体で記した商標(本件使用商標3)が記載されている。また、乙第5号証のカタログの目次には、項目として「防汚ターポリンシート(ハイガード/ニュー・ホワイトガード)」との記載があり、そのNO.15には、「品名」として「ZT2600Dハイガード」との記載がある。さらに、乙第5号証のカタログの本文中のNO.15の頁の最上段には、「ハイガードZT2600D」との記載があり、同頁には、「品名」として「防汚ポリエステルターポリン(ハイガード)ZT2600D」との記載のほか、商品の色、特性、用途例等の説明が記載されている。加えて、乙第5号証のカタログの裏表紙には、商品の名称を表す英語が4段に分けて青地に白抜きで記載されているところ、その3段目には、「High-guard New-white-guard」の欧文字が記載されている。また、乙第5号証のカタログの裏表紙右下端には、「228-1HT1207」との記載がある。
(2)乙第4号証のカタログ及び乙第5号証のカタログが作成・頒布された時期について
乙第4号証のカタログ及び乙第5号証のカタログが作成された時期について、被請求人は、これらのカタログの裏面に記載された数字等の最後の4桁の数字が、これらのカタログが作成された西暦の年号の下2桁と月を表すものである旨主張するのに対し、請求人は、被請求人の上記主張を裏付ける証拠がないなどとしてこれを争うので、以下、この点について検討する。
ア 乙第5号証のカタログについて
(ア)乙第5号証のカタログの裏表紙右下端には、「228-1HT1207」との記載があり、被請求人の上記主張に従えば、これは、同カタログの作成時期が2012年(平成24年)7月であることを表しているということになる。
他方、乙第6号証は、ダイオ化成が印刷業者に対し、商品カタログ1000部の印刷を発注した際の注文書であるところ、当該発注の対象となった商品カタログが乙第5号証のカタログであることは、乙第6号証の品名の記載が「ウェーブロック、テクミラー、ボンガード短冊型カタログ」とされ、また、乙第6号証にサンプルとして添付されたカタログの表表紙のデザインが乙第5号証のカタログの表表紙のデザインと一致することから明らかである。しかるところ、乙第6号証の作成日付は、平成24年6月25日であるから、その後、これに近接した時期に乙第5号証のカタログが作成されたであろうことは、これを推認し得るところであり、そうすると、乙第6号証のカタログの裏表紙右下端の「228-1HT1207」との記載の末尾4桁の数字が当該カタログの作成時期が2012年(平成24年)7月であることを表すとする被請求人の主張は、乙第6号証の内容と符合するものであって、これによって裏付けられるということができる。加えて、乙第6号証には、発注者であるダイオ化成から印刷業者への指示事項として、「※表紙(裏面)の作成年月日の弊社NO.は、228-1HT1207です。」との記載が付記されており、「228-1HT1207」の記載がカタログの作成時期を表すことが示されていることからも、被請求人の上記主張が裏付けられる。
(イ)これに対し、請求人は、乙第6号証について、その品名欄に「ハイガード」の記載がないこと及び乙第6号証中の「※表紙(裏面)の作成年月日の弊社No.は、228-1HT1207です。」との記載が意味不明であることから、注文書の記載として極めて不自然であり、その証拠価値には疑義がある旨主張する。
しかしながら、乙第6号証においては、その1枚目品名欄に、乙第5号証のカタログの表表紙に4段に分けて記載された商品名のうち、「ウェーブロック」(1段目)、「テクミラー」(2段目)及び「ボンガード」(4段目)の各商品名が記載され、かつ、その2枚目に、乙第5号証のカタログの表表紙と同一のデザインのサンプルが添付されているのであるから、乙第6号証の品名欄の記載において、乙第5号証のカタログの表表紙に記載された残りの商品名である「ハイガード/ニュー・ホワイトガード」(3段目)の記載が省略されていたとしても、格別不自然なこととはいえない。
また、乙第6号証中の「※表紙(裏面)の作成年月日の弊社No.は、228-1HT1207です。」との記載は、その内容から見て、乙第5号証のカタログの印刷発注に当たって、当該カタログの作成時期を表す注文者独自のナンバー表示として、「228-1HT1207」との表示を付すよう印刷業者に指示する趣旨の記載であることが明らかであって、意味不明な記載などとはいえないから、この点においても、乙第6号証に格別不自然な点があるとはいえない。
したがって、乙第6号証の証拠価値に疑義があるとする請求人の前記主張は採用できない。
(ウ)以上によれば、乙第5号証のカタログの裏表紙右下端の「228-1HT1207」との記載のうち、末尾4桁の数字が、同カタログの作成時期が2012年(平成24年)7月であることを表しているとする被請求人の主張は、証拠による裏付けのあるものとしてこれを首肯することができるというべきである。
したがって、乙第5号証のカタログは、平成24年7月に作成されたことが認められ、また、そのころ、顧客等に対し頒布されたことが推認されるものといえる。
イ 乙第4号証のカタログについて
乙第4号証のカタログの裏面右下端には、「220-3 IT1010」との記載があり、被請求人の前記主張に従えば、これは、同カタログの作成時期が2010年(平成22年)10月であることを表しているということになる。
しかるところ、上記アで述べたとおり、乙第5号証のカタログにおいて、その裏表紙に記載された数字等の末尾4桁の数字が当該カタログの作成時期を表すものであることが認められることからすれば、乙第5号証のカタログと同様に、被請求人が製造元、ダイオ化成が発売元として表示され、共通する商品について作成された乙第4号証のカタログにおいても、同様の取扱いがされているものと考えるのが自然である。そして、このことは、被請求人が乙第4号証のカタログの最新版であるとして提出する乙第22号証のカタログの裏面左下端に、同カタログの作成時期が2015年(平成27年)3月であることを表すものと考えられる、「220-5 IT-1503」の記載があることからも裏付けられるところである。
以上によれば、乙第4号証のカタログにおいても、裏面右下端の「220-3 IT1010」との記載のうち、末尾4桁の数字が、同カタログの作成時期が2010年(平成22年)10月であることを表しているとする被請求人の主張は、これを首肯することができるというべきである。
したがって、乙第4号証のカタログは、平成22年10月に作成されたことが認められ、また、そのころ、顧客等に対し頒布されたことが推認されるものといえる。
(3)以上の認定事実を総合すれば、本件商標の商標権者である被請求人は、本件審判請求の登録前3年以内である、平成22年10月ころ及び平成24年7月ころ、日本国内において、本件商品に関する広告又は取引書類に当たる乙第4号証のカタログ及び乙第5号証のカタログに、上記(1)イ(ア)及び(イ)のとおり本件使用商標2及び3を付して、これを頒布することにより、本件使用商標2及び3を使用(商標法2条3項8号)したものと認められる。
なお、被請求人は、2005年(平成17年)2月に作成された乙第3号証のチラシにおいても、本件使用商標1を使用した旨主張するが、当該チラシが本件審判請求の登録前3年以内の時期に頒布されていたことを認めるに足りる証拠はないから、仮に、被請求人主張の事実が認められるとしても、本件審判請求の登録前3年以内における本件商標の使用の事実が認められることにはならない。
2 本件商品が本件審判請求に係る指定商品に属するか否かについて
(1)本件審判請求に係る指定商品は、第17類「繊維布地を合成樹脂で挟んでなる積層シート、繊維と貼り合わせたプラスチックシート、シート状・フィルム状・フォイル状・テープ状のプラスチック基礎製品、その他のプラスチック基礎製品」であるところ、これらの指定商品は、省令別表第17類4に定める「プラスチック基礎製品」の範ちゅうに属するものと認められる。
しかるところ、本件商標の商標登録出願時に施行されていた商標法施行令別表(平成18年政令第342号による改正前のもの。以下「政令別表」という。)の第17類は、その名称を「電気絶縁用、断熱用又は防音用の材料及び材料用のプラスチック」とされていること、省令別表第17類4の「プラスチック基礎製品」には、「板」、「帯」、「管」、「金属はくを蒸着したプラスチックシート」、「スポンジ体」、「積層板」「接着剤を塗布したプラスチックシート」、「繊維入り板」、「反射基剤を有するプラスチックシート」、「フィルム生地」、「棒」、「毛状プラスチック基礎製品」が含まれるとされていること、特許庁商標課編「商品及び役務の区分解説(国際分類第10版対応)」において、「プラスチック基礎製品」(34A01)には、プラスチックの半加工品が該当し、成型等の加工を何ら施さない原料としてのプラスチックは第1類「原料プラスチック」に属し、第21類「プラスチック製の包装用容器」等の最終製品となったものは含まれないとされていることからすれば、省令別表第17類4の「プラスチック基礎製品」とは、原料としてのプラスチックや最終製品を除いた、プラスチックの半加工品を指すものと解すべきである。
したがって、本件審判請求に係る指定商品である第17類「繊維布地を合成樹脂で挟んでなる積層シート、繊維と貼り合わせたプラスチックシート、シート状・フィルム状・フォイル状・テープ状のプラスチック基礎製品、その他のプラスチック基礎製品」に属するといえるためには、原料としてのプラスチックや最終製品ではなく、プラスチックの半加工品であることが必要と解される。
(2)以上を踏まえて、本件商品が本件審判請求に係る指定商品に属するものか否かについて検討する。
ア 証拠(乙3ないし乙5、乙21、乙22)によれば、本件商品について、以下の事実が認められる。
(ア)本件商品は、産業用強力ポリエステル平織り基布の全体(表面と裏面)をPVC(ポリ塩化ビニル)樹脂でコーティングしたシートであり、一般に「ターポリン」あるいは「ポリエステルターポリン」と呼ばれるものであるが、特に、表面に汚れを付きにくくするための防汚処理を、裏面に水滴のボタ落ちを防止するための無滴処理を施した点に特徴がある。
(イ)本件商品の用途例としては、パイプ車庫やパイプ倉庫の覆い、野積みシート、カーテン(仕切り幕、風除け)、トラック荷台カバーなどがある。
(ウ)本件商品は、幅185センチメートル、厚さ0.35センチメートルのシートが50メートルの巻物(ロール)になった状態で販売される。
イ 上記アによれば、本件商品は、プラスチックの一種であるPVC樹脂を主要な成分とする製品であるところ、ポリエステル織布にPVC(ポリ塩化ビニル)樹脂をコーティングするという加工を施したものであるから、原料としてのプラスチックでないことは明らかである。
また、本件商品は、上記ア(イ)のとおり、様々な用途において、それぞれ大きさや形状が異なる状態で使用されることが予定されるところ、本件商品は、幅と厚さが一定で、長さが50メートルに及ぶシートが一巻きになった状態で販売されるものであることからすると、本件商品を購入した者がこれを種々の最終製品に加工して最終需要者に販売されることが予定されていると考えるのが自然である。そうすると、本件商品は、少なくとも専ら最終製品として販売されるというものではなく、その後の加工によって最終製品となる半加工品を含むものであると認められる。
してみると、本件商品は、本件審判請求に係る指定商品である「シート状・・・のプラスチック基礎製品」に属するものといえる。
また、本件商品は、ポリエステル繊維布地を合成樹脂であるPVC樹脂でコーティングすることにより、ポリエステル繊維布地をPVC樹脂が上下から挟んだ積層構造をなしているものといえるから、本件審判請求に係る指定商品である「繊維布地を合成樹脂で挟んでなる積層シート」に属する。
さらに、本件商品は、ポリエステル繊維とプラスチックの一種であるPVC樹脂とを貼り合わせたシートといえるから、本件審判請求に係る指定商品である「繊維と貼り合わせたプラスチックシート」に属する。
ウ これに対し、請求人は、ターポリンは、横断幕、テント生地、養生シート等の用途で、ロール状に巻いた状態の生地が、最終消費者に最終製品として販売されるものである旨主張し、「ターポリン」の語をインターネットで検索した結果を表示した画面、また、インターネット上でターポリンを販売する業者のホームページ画面を提示したところ、これらから明らかになるのは、複数の業者が、ターポリンを、横断幕、テント生地、養生シート等の用途に使用される製品としてインターネット上で販売しているという事実にすぎず、このことから直ちに、本件商品を含むターポリン一般について、専ら最終製品として最終消費者に販売されていることが明らかになるというものではない。
したがって、請求人の上記主張は、その証左によって認められるものではなく、他にこれを認めるべき証拠もないから、これを採用することはできない。
エ 以上によれば、本件商品は、本件審判請求に係る指定商品のうち、「繊維布地を合成樹脂で挟んでなる積層シート」、「繊維と貼り合わせたプラスチックシート」及び「シート状…のプラスチック基礎製品」のいずれにも属するものといえる。
3 本件使用商標2及び3が本件商標と社会通念上同一のものといえるか否かについて
商標法50条1項においては、使用の対象となる商標について、「登録商標(書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標、平仮名、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであつて同一の称呼及び観念を生ずる商標、外観において同視される図形からなる商標その他の当該登録商標と社会通念上同一と認められる商標を含む。以下この条において同じ。)」と規定されており、「登録商標と社会通念上同一と認められる商標」も含むものとされている。
そこで、本件使用商標2及び3が本件商標と「社会通念上同一と認められる商標」といえるか否かについて、以下検討する。
(1)本件商標は、いずれもゴチック体による、片仮名文字の「ハイガード」を上段に、欧文字の「HIGUARD」を下段に配してなる商標である。これに対して、本件使用商標2及び3は、片仮名文字の「ハイガード」のみからなる商標である点において、本件商標と外観上の相違が認められることは明らかである。
一方で、本件商標の上段の「ハイガード」の4文字の片仮名文字と下段の「HIGUARD」の7文字の欧文字は、欧文字1文字の大きさが片仮名1文字の約8割程度の大きさであるが、上段と下段との間隔は近接し、それぞれの文字部分の左右の幅は同一であり、その両端の位置がそろっており、全体として上段及び下段の文字部分がまとまりよく配置されていること、「GUARD」(guard)の語は、「警戒。監視。防御。」等の意味を有する英単語として我が国において一般的に認識されており、「HIGUARD」の欧文字中の「GUARD」の部分から「ガード」の称呼が自然に生じることからすると、「ハイガード」の片仮名文字は「HIGUARD」の欧文字の表音を示したものとして、両者は一体的に把握され、本件商標全体から「ハイガード」の称呼が生じるものと認められる。また、本件使用商標2及び3から「ハイガード」の称呼が生じることは明らかである。そうすると、本件商標と本件使用商標2及び3の称呼は同一であることが認められる。
(2)そこで、本件商標と本件使用商標2及び3から生ずる観念の異同について検討する。
ア 片仮名の「ハイガード」から生ずる観念について
片仮名の「ハイガード」は、それ自体が辞書等に登載された既成の用語として特定の観念を有するものではない。しかし、「ハイ」の部分は、英語の「high」に由来し、「程度の高いこと。高度。高級。」などの意味を有する外来語として、また、「ガード」の部分は、英語の「guard」に由来し、「警戒。監視。防御。」などの意味を有する外来語として、いずれも一般的に使用されていること(広辞苑第六版)、また、片仮名の「ハイ」は、例えば、「ハイスピード」、「ハイジャンプ」、「ハイクラス」などのように、その後に続く外来語と結合して一連表記され、「高い○○」、「高度な○○」の意味で使用される用例が一般的にみられること(広辞苑第六版)からすれば、本件審判請求に係る指定商品である第17類「繊維布地を合成樹脂で挟んでなる積層シート、繊維と貼り合わせたプラスチックシート、シート状・フィルム状・フォイル状・テープ状のプラスチック基礎製品、その他のプラスチック基礎製品」に係る取引者、需要者が、片仮名の「ハイガード」からなる商標に接した場合には、これを上記のような意味を有する「ハイ」の語と「ガード」の語が結合した用語として認識すると考えられる。そして、これを前提とすれば、片仮名の「ハイガード」からなる商標からは、「高度な防御」といった観念が生ずるというべきであり、更には、これが上記指定商品に使用されることを想定すると、これらの商品の用途や性能等に関連した印象が生ずることの結果として、「物を保護する程度が高い。」といった観念が生ずるものと認めることができる。
イ 本件商標から生ずる観念について
片仮名の「ハイガード」からは、上記アのような観念が生ずるといえるところ、本件商標は、片仮名の「ハイガード」の下に「HIGUARD」の欧文字が配されていることから、これらを全体としてみた場合にも、上記アと同様の観念が生ずるといえるかが問題となる。
そこで検討するに、前記(1)のとおり、本件商標の上段の「ハイガード」の片仮名文字は下段の「HIGUARD」の欧文字の表音を示したものとして両者は一体的に把握されるものといえるから、本件商標に接した取引者、需要者においては、欧文字の「HIGUARD」について、片仮名の「ハイガード」の「ハイ」の語に相応する「HI」の語と、片仮名の「ハイガード」の「ガード」の語に相応する「GUARD」の語とが結合したものであることを自然に認識するというべきである。
そして、このうち、「GUARD」の語が、「警戒。監視。防御。」等の意味を有する英単語として、我が国においても一般的に認識されていることは、前記(1)のとおりである。
次に、「HI」の語については、「やあ。」などの呼び掛けを表す間投詞に当たる英単語としての用例が一般的ではあるが、そのような間投詞が他の用語と結合して一連表記される用例は一般的ではないから、上記のように「GUARD」の語と結合して一連表記された「HI」の語が、間投詞の「HI」の語であると認識されることは考え難い。他方、「hi」の語には、「高い。高度な。高級な。」等の意味を有する英単語「high」の略語としての意味もあり(乙29)、しかも、「hi」の語には、例えば、高品位テレビジョンの日本方式の愛称として「hi-vision」、高度先端技術を表すものとして「hi-tech(technologyの略)」などのように、その後に続く英単語と結合して一連表記され、「高度な○○」の意味で使用される用例が、我が国においても一般的にみられるところである(乙12、13)。
以上のような「HI」の語及び「GUARD」の語に対する我が国における一般的な認識を前提とすれば、上記アのような観念が生ずるものと認められる片仮名の「ハイガード」の下に配された「HIGUARD」の欧文字から構成された本件商標に接した本件審判請求に係る指定商品の取引者、需要者においては、これを上記用例と同様に、「HI」は「high」の略語として認識し、あるいは「HI」の語から「high」の語を想起又は連想し、本件商標は、「high」の語を表す「HI」と「警戒。監視。防御。」等の意味を有する英単語の「GUARD」とが結合して一連表記されたものであって、上段の「ハイガード」の片仮名と同様の意味を有するものとして認識するというべきである。
してみると、本件商標からは、片仮名の「ハイガード」単独の場合と同一の観念、すなわち、「高度な防御」あるいは「物を保護する程度が高い。」といった観念が生ずるものと認めるのが相当である。
これに反する請求人の主張は、採用できない。
ウ 観念の同一性について
本件使用商標2及び3は、片仮名の「ハイガード」からなる商標であるから、これからは、前記アのとおり、「高度な防御」あるいは「物を保護する程度が高い。」といった観念が生ずる。また、本件商標からも、これと同一の観念が生ずることは、前記イのとおりである。
したがって、本件商標と本件使用商標2及び3は、そこから生ずる観念が同一であるというべきである。
(3)以上によれば、本件商標と本件使用商標2及び3とは、前記(1)のとおりの外観上の相違が認められるものの、同一の称呼及び観念を生ずるものであることからすれば、本件使用商標2及び3は本件商標と「社会通念上同一と認められる商標」(商標法50条1項)に該当するというべきである。
4 結論
以上のとおりであるから、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者がその請求に係る指定商品「繊維布地を合成樹脂で挟んでなる積層シート,繊維と貼り合わせたプラスチックシート,シート状・フィルム状・フォイル状・テープ状のプラスチック基礎製品,その他のプラスチック基礎製品」について、本件商標と社会通念上同一の商標を使用していたことを証明したものということができる。
したがって、本件商標は、商標法第50条第1項の規定により、その請求に係る指定商品についての登録を取り消すべきでない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2016-06-02 
結審通知日 2016-06-09 
審決日 2016-07-01 
出願番号 商願2006-46678(T2006-46678) 
審決分類 T 1 32・ 1- Y (Y17)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山本 敦子 
特許庁審判長 今田 三男
特許庁審判官 小松 里美
堀内 仁子
登録日 2007-04-13 
登録番号 商標登録第5041167号(T5041167) 
商標の称呼 ハイガード 
復代理人 永露 祥生 
復代理人 長谷川 綱樹 
代理人 恩田 誠 
代理人 恩田 博宣 
代理人 小谷 武 
復代理人 伊東 美穂 
代理人 木村 吉宏 

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