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審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) W163539
審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) W163539
管理番号 1321443 
異議申立番号 異議2015-900365 
総通号数 204 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2016-12-22 
種別 異議の決定 
異議申立日 2015-12-04 
確定日 2016-10-05 
異議申立件数
事件の表示 登録第5789024号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5789024号商標の商標登録を取り消す。
理由 第1 本件商標
本件登録第5789024号商標(以下「本件商標」という。)は、「Halal Cold Chain」の文字を横書きしてなり、平成27年3月24日に登録出願、第16類「紙製包装用容器,紙箱,紙袋,段ボール箱,ファイバー箱,紙類,包装用紙,段ボール原紙,段ボール,印刷物」、第35類「広告業,インターネットによる広告,広告に関する情報の提供,経営の診断又は経営に関する助言,市場調査,インターネットによる市場調査,商品の販売に関する情報の提供,インターネットによる商品の販売に関する情報の提供,ホテルの事業の管理,財務書類の作成,会計事務処理の代行,輸出入に関する事務の代理又は代行,文書又は磁気テープのファイリング,商品の注文・受注・発注に関する事務処理の代行,電子計算機・タイプライター・テレックス又はこれらに準ずる事務用機器の操作」及び第39類「鉄道による輸送,車両による輸送,船舶による輸送,航空機による輸送,貨物の輸送の媒介,貨物の積卸し,寄託を受けた物品の倉庫における保管」を指定商品及び指定役務として平成27年7月14日に登録査定、同年8月28日に設定登録されたものである。

第2 登録異議の申立ての理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、申立ての理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第12号証を提出した。
本件商標は、「イスラム法で許されたもの。特に、食品に関する規定の要件を満たしているものをハラール食品という。」等を意味する「Halal」の文字と、「生鮮食料品を冷凍・冷蔵・低温の状態で鮮度を保ちながら生産者から消費者に届ける輸送・保管の一貫した体系。低温流通体系。」等を意味する「Cold Chain」の文字を結合した「Halal Cold Chain」の文字を横書きで普通に用いられる方法で表してなるものであるから、指定商品及び指定役務中、ハラルに対応した商品・役務に使用しても、需要者が何人かの業務に係る商品・役務であることを認識できない。また、ハラルに対応していない商品・役務に使用するときは、商品の品質・役務の質の誤認を生じさせるおそれがある(商標法第3条第1項第6号及び同法第4条第1項第16号)。

第3 本件商標に対する取消理由
商標権者に対して、平成28年5月20日付けで通知した本件商標の取消理由は、次のとおりである。
1 登録異議申立人の提出に係る証拠によれば、以下の事実が認められる。
(1)イスラム圏におけるハラル制度等について
ア 「マレーシアハラル制度の基礎と応用」(平成23年3月、財団法人食品産業センター発行)には、「マレーシアは、近年、外国資本の導入により製造業を中心に工業化を推進し、著しい経済発展を遂げてきています。我が国からも、電気・電子産業を中心とする製造業の投資は多く見られるものの、食品産業の進出は中国、タイなどに集中し、イスラム教徒が多く、ハラル食品の提供が必要なマレーシアへの投資は少なかったのが実情です。イスラム圏の経済発展は著しく、ハラル食品市場(イスラム市場)は5,800億ドルといわれるほど巨大になり、新たなマーケットとしての魅力を増してきています。こうした中、2008年5月23日に我が国の福田首相とマレーシアのアブドゥラ首相との首脳会談が開催され、アブドゥラ首相から、日本からマレーシアへのハラル食品を含む食品加工分野への投資促進の要請がありました。」(1頁)、「ハラル(Halal)制度は、イスラム教義にしたがった食品等の規格を管理する制度である。具体的には、イスラム教の禁ずる豚肉やアルコール等を含まない安全な食品等の規格を定め、製造・流通等を審査し、適合製品・施設を認証し、これに表示させるものである。」(3頁)、「1-3.ハラル食品とは何か/・・ハラル食品の定義は、ハラル食品規格(MS1500)によれば、『シャリア法で許可され、一定の条件を満たす食品』とされている。下記にその条件を列記する。・・(1)シャリア法でハラルでないとされる動物のいかなる部分・製品を含まないこと・・(2)シャリア法でナジス(不浄)とされるものを、その量にかかわらず含まないこと・・(3)食べるのに適しており、安全、無毒で、中毒性がなく、有害でないこと・・(4)シャリア法がナジス(不浄)とするものによって汚染された機器を用いて予備処理、加工・製造されていないこと・・(5)シャリア法で許されていない人体各部またはその派生品が含まれていないこと・・(6)予備処理、調整、包装、貯蔵、輸送の際、上記(1)、(2)、(3)、(4)または(5)のいずれかの要件を満たさない食品から物理的に隔離されること」(6頁?8頁)、「2.ハラル規格の内容:ハラル認証の要件/・・制度としてのハラルは、食品の製造、流通等の現場で、具体的にどのような行動をすべきかを示すものであり、技術マニュアル的な性格も帯びている。・・ハラル規格は、農場から食卓に至るすべての物およびプロセス、つまり、サプライチェーン全体が、ハラルであることを求めているからである。これらのすべての要件を満たした食品のみがハラル認証マークを製品に使用できる。」(12頁)、「2-6.貯蔵・輸送、陳列・販売・提供、包装・表示の要件/2-6-1.貯蔵・輸送、陳列・販売・提供/極めて重要な規定である。倉庫、輸送車両、店舗、レストランにおいて、非ハラルのものと接触することを防ぐための規定である。・・2-6-2.包装・表示/ハラル規格は、ハラル食品が非ハラルの包装材と接触すると汚染されるとの考え方に立って、食品包装が満たすべき要件を示している。総論として、ハラル食品は適切に包装すること、包装材料は事実上ハラルのものとすることと規定・・」(23頁、24頁)などの記載がある(甲4)。
イ 「日通総研 ロジステックスレポート/ハラル認証と物流業者への影響」(2015年(平成27年)7月29日、株式会社日通総合研究所発行)には、「・・多くの場合、ハラルとはムスリムの『食』に関する宗教的な禁忌と理解されるが、化粧品やトイレタリー製品など、肌に直接触れる製品についてもハラルであるかどうかについて関心が高い。」(1頁)、「・・様々なプレーヤーが関与する『サプライチェーン全体』のハラル性を客観的に認証する仕組みを作ることは難しい。そうした複雑なサプライチェーンを『輸送』『倉庫(保管・パッケージング)』『小売り』に機能分化し、それぞれのハラル認証を規格化したのがマレーシアである。」、「・・マレーシアのハラル認証は国家規格として制定されているため、基準そのものの透明性や客観性が高いうえ、宗教的な厳格さも兼ね備えており、他のイスラム諸国からの信頼が厚い。そのため、特に非イスラム国の企業がハラルの要件を理解するには、格好の素材といえる。・・イスラム教の観点を含んだマネジメントシステム(MS1900)、化粧品に対する認証(MS2200-Part1)など、徐々に範囲を広げてきた。そして、世界でも初めて、サプライチェーンのハラル性を認証する、MS2400シリーズを制定している。」(2頁)、「ハラル認証は、ムスリムが消費することを許された証明である側面と、GMP(審決注:Good Manufacturing Practices(適正製造基準))やHACCP(審決注:Hazard Analysis and Critical Control Point(危害分析重要管理点))をベースとした安全や品質基準の側面も持っており、ムスリム以外の消費者に対しても訴求力がある。食品や飲料など製品へのハラル認証は2004年くらいから本格的に運用が始まり、現在では市場に深く浸透している。一方、保管や輸送に関するハラル認証は2010年に規格が完成し、2014年から本格的に認証制度が運用され始めたばかりである。」(3頁)、「・・物流事業者がハラル認証を受けるためには、輸送や保管といった、業務フローの文書化が必要になる。そして、業務プロセスごとに考えられるリスク、リスクの評価、リスクの管理方法、などを一つ一つ確認していくこととなる。・・日系物流事業者では、日本通運、NYKロジステックスの現地子会社であるTASCOがマレーシアで物流ハラル認証を受けている。」(4頁)、「3.日本におけるハラル認証/ハラル認証は、マレーシアなど海外に限ったものではなく、最近は日本でもトピックとなることが多い。その大きな背景には、ムスリム人口が多いのは、中東ではなくアジア・太平洋地域である、という事実がある。アジア各国の所得が向上したため、日本製の食品がアジア市場を目指す動きや、日本へのムスリム観光客の急増といった現象が起こり、ハラルに関する関心が高くなっている。日本国内にもいくつかのハラル認証機関があり、認証を獲得する企業も増えてきている。認証を取得しているのは、食品製造業やレストラン、ホテルなどが多いものの、物流企業が倉庫の認証を取得する事例がでてきている。」(5頁)などの記載がある(甲5)。
ウ 申立人の2015年(平成27年)5月20日付けニュースリリースには、申立人のマレーシア法人TASCOが、マレーシアにおいて、輸送業務・倉庫業務のハラル認証を取得した旨の記載があり、今後の活動として、「マレーシア国内でハラル食品や化粧品、医薬品などをターゲットに、トラックと倉庫を活用したロジステックスサービスの提供を開始するとともに、マレーシアでのハラルに関するノウハウと当社グローバルネットワークをつなげることで、ハラル物流のワンストップサービスの構築を目指します。」などの記載がある(甲6)。
(2)「コールドチェーン」(Cold Chain)の語の使用例
ア 申立人の提出した昭和42年9月16日付け平木竜雄氏の「食品流通の機構に関する一考察(その1)」と題する論文において、「さて、このコールドチェーンと言うことばが元来用いられたのは、1950年(昭和25年)、O.E.E.C.(欧州経済協力機構)とE.C.A(米国経済協力庁)共催で西欧12ヶ国の専門家からなるコールドチェーン調査団(U.S.Cold Chain Study Expert Team)がアメリカのコールドチェーン・インU.S.A)という課題で発表された。これが『コールドチェーン』という用語が公式の文書のなかに表れた最初のものとされている。少なくとも、現在では、コールドチェーンは、生産から消費に至るまで、その食品を冷たい温度で連結させ流通させる形態のことを称するものである。したがって、低温流通機構(体系または方式)すなわち、コールドチェーンという常識語にまでなったわけである。」(16頁)の記載がある(甲7)。
イ 「物流用語辞典」のウェブサイトには、「コールドチェーン【英語】cold chain」の見出しのもと、「コールドチェーンとは、冷蔵したまま産地から小売業者まで流通させる方法のことです。低温流通体系ともいいます。食材の鮮度を保ったまま食品提供できるメリットがあり、コンビニエンスチェーンやスーパーマーケットなどで利用されている流通手法です。」の記載がある(甲8)。
ウ 「甲府青果株式会社」のウェブサイトには、「コールドチェーン」の見出しのもと、「コールドチェーンとは? 弊社で取り扱う生鮮食品を生産?輸送、消費者の皆様へお届けするまで低温に保つ物流方式であり、低温流通体系を維持するため従来の建屋を生かし商品の入荷から仕分け・出荷までを行う約1200坪のスペース全体を冷蔵施設に改装し、お客様により安全で新鮮な商品をお届けできる「コールドチェーン」を確立いたしました。」の記載がある(甲10)。
エ 「2013年度 主要国・地域におけるコールドチェーン調査(インドネシア、マレーシア)」(2014年3月/日本貿易機構(ジェトロ)ジャカルタ事務所/クアラルンプール事務所/農林水産/食品部 農林水産/食品調査課発行)には、「2.2ヤマト運輸:事業者向けビジネスに拡大の余地」の見出しのもと、「マレーシアのコールドチェーンの現状を販売店、運送会社の視点から2回に亘って紹介する第2回目。今回は、日系運送会社側から見たマレーシア国内間でのコールドチェーンの現状を、「宅急便」で知られる運送会社ヤマト運輸のマレーシア拠点・マレーシアヤマト運輸の宅急便事業担当マネージャー・山口直人氏に伺った。以下の内容は、ジェトロ・クアラルンプール事務所が2014年3月4日に実施したインタビュー内容に基づく。」と記載され、「<取扱商品はハラルに限定>」の項には、「・・主な取扱商品は、マレーシア国内産のケーキ、アイス、麺などであるが、卸売り業者が顧客の場合は韓国産食材、取扱量はごく一部だが日本から輸入した鮮魚が取り扱われることもある。食品以外としては花きの取り扱いもある。宅配ドライバーの9割がマレー系のイスラム教徒であり、また利用顧客の一部にはトラック内でノンハラル商品と混載されることを嫌がるマレー系もいるため、クール宅配便の取扱商品はハラルに限定している。」の記載がある(甲12)。
オ 職権による調査によれば、以下の事実を認めることができる。
(ア)「株式会社ノードグラフ」のウェブサイトには、「コールドチェーン(低温物流体系)とは?」の見出しのもと、「コールドチェーンとは、低温管理を必要とする製品を出荷から最終消費地まで冷蔵または冷凍状態を維持し、品質を保ったまま流通させる物流方式のことです。私たちの生活はコールドチェーンによって支えられています。 製薬会社からコンビニベンダー、スーパーマーケットまでコールドチェーンを利用している企業や組織は様々で、対象となる品目は医薬品、化学薬品、血液バッグ、冷凍食品、生鮮食品、水産物、などと数え上げたらキリが無く、数多くの製品がコールドチェーンによって品質を保たれ流通しているのです。」などの記載がある(http://www.nodegraf.jp/coldchain/index.html)。
(イ)2012年12月14日付け日本食糧新聞11ページには、「中島商店、新配送センター竣工 コールドチェーンを確立」の見出しのもと、「青果仲卸の中島商店は、JR尼崎駅近くに本社機能を持つ新配送センターを完成させ、来年初から本格稼働を開始する。鉄筋3階建てで、1階に大型冷蔵倉庫と荷受け・仕分け場、2階には事務所兼倉庫などを設置。冷蔵車で届く青果物の入庫から仕分け、加工、出荷に至るまでを一定の温度で行うコールドチェーンを確立している。安全・安心、新鮮を求める青果物流通の時代要請に対応すると同時に廃棄ロスを大幅に削減しコストを低減。厳しい価格競争にも打ち勝つ体制が整った。」の記載がある。
(ウ)2006年3月29日付け日経MJ(流通新聞)1ページには、「野菜鮮度革命、ハイテク競争??チルド物流普及、市場拡大後押し。」の見出しのもと、「鮮度保持の前提となるチルド(冷蔵)流通の範囲は広がっている。日本アクセスは本格的に生鮮野菜の卸に進出し、業務分野を加工食品、乳製品の外に広げた。セブン?イレブン・ジャパンも食材から完成品の総菜まで一貫して低温で運ぶ『コールドチェーン』の仕組みを全国に広げている。日本アクセスは四月一日、同社としては最新鋭の物流センターを愛知県春日井市で稼働させる。本業の冷凍、冷蔵設備のほかに『野菜庫』を設けた。食品と野菜を混載してチルドで店舗に運び込む。中井忍統括部長は『大手小売りの中にチルドで野菜を運んでほしいという要請が増えてきたため』と解説する。」の記載がある。
(3)前記(1)及び(2)で認定した事実によれば、「ハラル(halal)」は、イスラム法に基づいて許されたものを意味し、特に、食品に関する規定の要件(シャリア法でハラルでないとされる動物のいかなる部分・製品を含まないこと、シャリア法でナジス(不浄)とされるものをその量にかかわらず含まないことなど)を満たしているものをハラル食品ということ、イスラム圏の一つであるマレーシアにおいては、ハラル食品としての要件、食品を製造・加工する業者から食品等の貯蔵・輸送等の流通業者に至るまでサプライチェーン全体の要件すべてを満たした食品のみがハラル認証マークを製品に使用でき、その認証を国家規格として制定していること、「貯蔵・輸送、陳列・販売・提供」の要件に関していえば、倉庫、輸送車両、店舗、レストランにおいて、非ハラルのものと接触しないこと、「包装・表示」の要件に関しては、ハラル食品が非ハラルの包装材と接触すると汚染されるとの考え方に立ち、包装材料は事実上ハラルのものとすることなどと規定されていること、ハラル食品等の貯蔵、輸送、販売、包装等流通に関する条件は、サプライチェーン全体からみて、取引上極めて専門性を要すること、マレーシアにおけるハラル認証制度は、食品や飲料など製品へのハラル認証は2004年(平成16年)頃から本格的に運用が始まり、保管や輸送に関するハラル認証は2010年(平成22年)に規格が完成し、2014年(平成26年)から本格的に認証制度が運用され始めたこと、一方、イスラム教徒の人口の増加に伴い、ハラル食品市場(イスラム市場)は、2008年(平成20年)の時点で、5,800億ドルといわれるほど巨大になり、新たなマーケットとして、世界の様々な業界から注目されている中で、ハラル認証制度があるイスラム市場への参入を意図している我が国の企業が少なくないと優に推測されること、現に、本件商標の商標権者及び申立人の子会社がマレーシアにおいて物流ハラル認証を受けていることなどを認めることができる。
また、物流の分野において、低温管理を必要とする生鮮食料品・医薬品等を安全に品質を保ったまま消費者に提供することができる低温物流体系を「コールドチェーン」(Cold Chain)と称している事実があり、この語は遅くとも1950年(昭和25年)頃には使用されていたこと、現在は、製薬会社からコンビニベンダー、スーパーマーケットまでコールドチェーンを利用している企業や組織は様々であり、その製品も多岐にわたることなどを認めることができる。
2 本件商標の商標法第3条第1項第6号及び同法第4条第1項第16号該当性について
本件商標は、前記第1のとおり、「Halal Cold Chain」の文字を横書きしてなるところ、その構成中の「Halal」の語は、「イスラム法で許されたもの。特に、食品に関する規定の要件を満たしているものをハラール食品という。」、「イスラム教の戒律に従って殺し処理した食用肉」などを意味し、「Cold Chain」の語は、「生鮮食料品を冷凍・冷蔵・低温の状態で鮮度を保ちながら生産者から消費者に届ける輸送・保管の一貫した体系。低温流通体系。」などを意味するものである(甲2?甲3)。
そうすると、本件商標は、構成文字全体をもって成語を表すものではないが、全体として「ハラル食品等の低温流通体系」なる意味合いを表したと理解されるものといえる。
してみると、前記1(3)で認定したイスラム圏における食品を中心とした製品の製造・物流等に関するハラル制度を基盤とした社会的事情、また、我が国の物流の分野において、低温管理を必要とする製品を流通させるために「Cold Chain」(コールドチェーン)と称する低温物流体系を整えることが、関係企業等に定着していることなどの取引の実情を考慮し、加えて、我が国の観光庁が2013年から2015年にかけて策定した「観光立国実現に向けたアクション・プログラム」の実施に官民一体となって取り組んでいる実情や2020年東京オリンピック開催を契機として、我が国を訪れる外国人観光客や外国の事業者等が増加することに伴い、当然のことながらイスラム圏からの観光客・事業者等の増加も予想され、これを迎える我が国の企業等もハラル食品ないしハラル認証制度に関心を持つといえること、などを総合すると、上記意味合いを有する本件商標をその指定商品及び指定役務中の「ハラル食品等の低温流通体系に対応した商品及び役務」について使用するときは、その需要者が何人かの業務に係る商品・役務であることを認識することができない商標というべきであるから、自他商品・自他役務の識別標識としての機能を果たし得ないものといわなければならない。
また、上記意味合いを有する本件商標をその指定商品及び指定役務中の「ハラル食品等の低温流通体系に対応した商品及び役務」以外の商品及び役務について使用するときは、商品の品質及び役務の質について誤認を生じさせるおそれがあるというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第6号及び同法第4条第1項第16号に該当する。
3 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第3条第1項第6号及び同法第4条第1項第16号に違反してされたものと認める。

第4 商標権者の意見
前記第3の取消理由に対し、商標権者は、何ら意見を述べるところがない。

第5 当審の判断
本件商標についてした前記第3の取消理由は、妥当なものと認められる。
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第6号及び同法第4条第1項第16号に違反して登録されたものといわざるを得ないから、同法第43条の3第2項の規定により、その登録を取り消すべきものとする。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2016-08-26 
出願番号 商願2015-26803(T2015-26803) 
審決分類 T 1 651・ 272- Z (W163539)
T 1 651・ 16- Z (W163539)
最終処分 取消  
前審関与審査官 大房 真弓 
特許庁審判長 今田 三男
特許庁審判官 堀内 仁子
小松 里美
登録日 2015-08-28 
登録番号 商標登録第5789024号(T5789024) 
権利者 日本通運株式会社
商標の称呼 ハラールコールドチェーン、ハラルコールドチェーン、ハラール、ハラル、コールドチェーン 
代理人 特許業務法人筒井国際特許事務所 

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