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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない Y05
管理番号 1321319 
審判番号 取消2015-300542 
総通号数 204 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2016-12-22 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2015-07-22 
確定日 2016-10-11 
事件の表示 上記当事者間の登録第4693081号商標の登録取消審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 審判費用は,請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
登録第4693081号商標(以下「本件商標」という。)は,「グングン」の片仮名を標準文字で表してなり,平成14年7月24日に登録出願,第5類「シート状の患部冷却剤,ジェル状の組成物を塗布してなるシート状の貼付用薬剤,薄葉紙・シート材又はパッドに含浸させた消炎剤,不織布に薬剤を塗布してなる冷却パップ剤,その他の薬剤」を含む第5類,第10類及び第11類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として,同15年7月18日に設定登録され,現に有効に存続しているものである。
なお,本件審判請求の登録日は,平成27年8月5日である。

第2 請求人の主張
請求人は,本件商標の指定商品中,第5類「シート状の患部冷却剤,ジェル状の組成物を塗布してなるシート状の貼付用薬剤(農薬に当たるものを除く。),薄葉紙・シート材又はパッドに含浸させた消炎剤,不織布に薬剤を塗布してなる冷却パップ剤,その他の薬剤(農薬に当たるものを除く。)」についての登録を取り消す,審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求め,本件商標は,本件審判の請求の登録前3年以内に,継続して日本国内において,商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが,本件審判の取消しに係る指定商品について,本件商標を使用していないとして,審判請求書,審判事件弁駁書,平成28年4月4日付けの口頭審理陳述要領書及び同年5月24日付けの上申書において,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第29号証を提出している。
1 本件商標の使用について
(1)商標的使用について
「商標の使用」とは,商標法第2条第3項各号に列挙されているところ,これらの規定に該当するものであれば,形式的には「商標の使用」に該当する。
しかし,形式的には「商標の使用」に該当するとしても,自他商品の識別機能を果たす使用態様ではない場合には,商標の使用には該当しないとするのが判例通説である(最高裁平成9年7月1日,東京高裁平成8年12月19日)(甲1,2)。すなわち,商標の本質的機能は自他商品の識別機能にあるところ,商標の使用と言い得るためには,使用態様や使用方法等具体的な事実関係からみて,それが自他商品を識別するために使用されていること,すなわち「商標的使用」が必要である。
(2)消臭剤関連への使用
乙第1号証及び乙第2号証は,商標「消臭元 いぬのきもち」に係る商品「室内用消臭剤」(以下「使用消臭剤1」という。)の包装箱であるが,「犬特有のニオイ/ぐんぐん消臭!」の記載は,犬の匂いをどんどん吸収する商品といった商品の品質や特徴を表す表示であると容易に認識されるものである。
また,乙第4号証ないし乙第6号証は,「お部屋の消臭元 やすらぎそよぐラベンダー」に係る室内用消臭剤(以下「使用消臭剤2」という。),「お部屋の消臭元 心くつろぐリフレッシュハーブ」に係る室内用消臭剤(以下「使用消臭剤3」という。)及び「トイレの消臭元 やすらぎそよぐラベンダー」に係るトイレ用消臭剤(以下「使用消臭剤4」という。)の包装容器の天面に,「でっかいろ紙で/ぐんぐん消臭/ず?っと香る」と記載されており,「大きなろ紙で,どんどん消臭し,長く香りが持続する」といった商品の特徴を表す説明であると容易に認識されるものである。すなわち,これは,自他商品の識別標識として使用しているとはいえず,商標的使用には該当しない。
そして,「ぐんぐん」の文字が他の文字と二段に表されているとか,「容易に前後の文字とは識別,分類観察」ができるかどうかのような構成だけでなく,当該表示全体から「ぐんぐん」の文字について需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して「自他商品の識別標識又は出所識別標識」としての効果を発揮しているか否かを基準として認定・判断すべきところ,「ぐんぐん」の文字は,本来の意味である「変化していく度合いが大きいさま」等の意味とあいまって,「消臭」の効果を誇張ないし強調したものと認識し,理解されるにすぎず,単に商品の品質・効能にかかる用語にすぎないと認められるから,上記の「ぐんぐん」の文字の記載をもって「商標法第50条の登録商標の使用」に当たる旨を主張する被請求人の主張は失当である。
(3)患部冷却剤関連への使用
上記(2)と同様に,商標「熱さま透明ゼリー大人用」及び「熱さま透明ゼリーこども用」に係るシート状冷却剤(以下「使用患部冷却剤」という。)の包装箱(乙7,8,10)に「グングン」なる文字が記載されているが,当該表示はいずれも,「熱をぐんぐん冷ます」ほどの意味合い,すなわち,商品の品質,効能を表示したものにすぎず,本件商標と社会通念上同一と認められる商標の使用とはいえない。
2 本件商標の使用時期について
(1)販売サイトへの商品の掲載について
被請求人が提出するAmazon.co.jpの販売サイト(以下「アマゾン販売サイト」という。)において「『熱さま透明ゼリー大人用』なる商品」が掲載されていたことは認められたとしても,これをもって本件商標の使用の証明をした根拠とすることはできない。また,乙第10号証は,本件審判の請求の登録前3年(以下「要証期間」という。)外のものである。
そもそも,使用患部冷却剤が被請求人のカタログに掲載されているのは,要証期間外である2009年のカタログのみであり,それ以降のカタログの提出もなく,また,2015年のカタログである乙第3号証の該当欄には同商品の記載はない。また,乙第8号証の写真に掲載された商品についても使用期限が要証期間の前である2009年1月となっており,要証期間内のアマゾン販売サイトのアーカイブである乙第12号証,乙第13号証,乙第33号証及び乙第34号証ではいずれも「この商品は現在お取扱いできません。」と記載されている。これらの証拠に基づけば,要証期間前の2009年頃には使用患部冷却剤の販売は既に終了していたと認められる。さらに,「ドラッグピュア楽天市場店」のウェブサイトにおいて,「小林製薬 熱さま透明ゼリー大人用」の項において,使用患部冷却剤の写真(乙8)と同様の写真の掲載とともに「【2009年10月に販売終了となりました。】」の表示が認められる(甲27)。
(2)商品の返品について
被請求人は,「返品承認・引取依頼」(乙14,15,35,36)及び「返品承認・取引一覧表」(乙16)を提出するが,これらの商品は使用期限間近又は使用期限を過ぎた商品であり,店頭から引取依頼会社が回収して製造業者(被請求人)に返品されたものであれば,当該商品は,もはや商品とはいえない単なる廃棄物であるというべきであり,当該返品取引は,本件商標の使用には当たらない。
仮に商品の返品の事実が認められるとしても,被請求人による要証期間内における商標の使用事実との関連性は認められず,具体的な被請求人による使用事実の間接事実には該当しない。
本件商標の使用を証明する場合には,通常であれば,「(製造元から卸売商への)納品書」のような書類を提出すべきであるから,「返品承認・引取依頼」等をもって,商標を使用したことを推認する根拠とすることはできない。
3 まとめ
以上から明らかなように,被請求人は,本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において,商標権者である被請求人によって,その指定商品である「シート状の患部冷却剤,シェル状の組成物を塗布してなるシート状の貼付用薬剤(農薬に当たるものを除く。),薄葉紙・シート材又はパッドに含浸させた消炎剤,不織布に薬剤を塗布してなる冷却パップ剤,その他の薬剤(農薬に当たるものを除く。)」について,本件商標を使用していたと認めるに足る証拠を提出せず,「本件商標の使用を証明」したものとはいえない。
したがって,本件商標は,商標法第50条の規定により,その登録は取り消されるべきである。

第3 被請求人の主張
被請求人は,結論と同旨の審決を求める,と答弁し,審判事件答弁書,平成28年3月22日付けの口頭審理陳述要領書,同年5月13日付け及び同年7月4日付けの上申書において,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として乙第1号証ないし乙第36号証を提出している。
1 本件商標の使用について
(1)消臭剤関連への使用
被請求人が平成26年(2014年)7月に発行し配布を開始した「新製品のご案内/NEW PRODUCTS LINE UP/2014 秋/AUTUMN」(以下,「2014年新製品カタログ」という。)の「芳香・消臭剤」の項に,使用消臭剤1が掲載されている(乙1)。
それらの容器正面部には,「ぐんぐん消臭」の文字が表示されている(乙1,2)。このうち「消臭」の文字は商品の用途・効能を示す,自他商品識別機能を有しない表示であって,それ自体は特に強く注意を惹くものではないから,「ぐんぐん」の部分を独立した表示として認識することができる。
この消臭剤は,室内の臭気を消去することを目的としており,包装容器の側面にも「用途:室内用」と記載されているように,室内用消臭剤である。
また,平成27年(2015)4月に発行し,それ以来配布している「2015/KOBAYASHI PRODUCTS/小林製薬総合カタログ」(以下,「2015年新製品カタログ」という。)の「芳香・消臭剤」の項には,使用消臭剤2ないし4が掲載されている(乙3)。
使用消臭剤2ないし4の容器天部において,「ぐんぐん」と「消臭」の文字が2段書きに表示されている(乙4?6)。この「消臭」の文字はそれ自体商品の用途・効能を示すにすぎない上,「ぐんぐん」の文字はその上段に書き分けられているから,外観上独立して認識することができる。
そして,「ぐんぐん」の表示は,本件商標「グングン」を単に平仮名書きに変更したにすぎず,称呼は同一であり,観念においても異なるものではないから,社会通念上同一とみられるものである。
以上のとおり,本件商標と社会通念上同一とみられる商標「ぐんぐん」が,第5類「室内用消臭剤及びトイレ用消臭剤」に使用されたことが明らかである。
(2)患部冷却剤関連への使用
被請求人が平成21年(2009年)4月に発行し配布を開始した「小林製薬総合カタログ/KOBAYASHI PRODUCTS/2009」の「衛生雑貨品」の項(第46頁)には,使用患部冷却剤が掲載されている。
使用患部冷却剤の包装箱の正面には,「グングン」の文字が表示されている。この文字の前後には「高い熱を」及び「とる!」の文字が表されているが,これらが黄色又は白色の文字列を水平に表示したありふれたものであるのに対比して,赤い文字で大きさを変えながら斜めに表した「グングン」の文字は目立つものとなっている(乙7,8)。
また,使用患部冷却剤は,熱を下げる目的で使用するシート型のゼリー状患部冷却剤である(乙9)。
2 本件商標の使用時期について
(1)消臭剤関連への使用
使用消臭剤1が掲載された2014年新製品カタログは,平成26年7月に発行され,それにより使用消臭剤1が宣伝広告されたものであるから,使用消臭剤1は,要証期間内に使用されたことが明らかである。
また,使用消臭剤2ないし4が掲載された2015年新製品カタログは,平成27年4月に発行されたものであるから,使用消臭剤2ないし4は,要証期間内に宣伝広告されたことが明らかである。
(2)患部冷却剤関連への使用
ア インターネットアーカイブについて
「WAYBACK MACHINE」は,「インターネットアーカイブ(InternetArchive)」が保存しているウェブサイトを閲覧できるサービスである。「インターネットアーカイブ」は,世界中のウェブ情報を代表とするさまざまなデジタル情報をアーカイブしている非営利法人である。
ウェブアーカイブは,ウェブ全体もしくはその一部を収集し,そのコレクションを後世の研究者,歴史家,一般大衆のために保存して,アーカイブ(保存記録)としたものを指す。
イ 販売サイトへの商品の掲載について
アマゾン販売サイトの使用患部冷却剤に係る現在のページには,商品が掲載され,「この商品は現在お取扱いできません。」との記載がなされている(乙22)。
しかしながら,被請求人は,本件商標が要証期間内に使用されていたことを示す証拠として,2009年11月11日付(乙10),2014年1月5日付(乙12)及び2015年5月13日付(乙13)のアマゾン販売サイトの使用患部冷却剤に係るウェブページのアーカイブを提出した。
これらからは,アマゾン販売サイトの使用患部冷却剤に係るウェブページは,2007年11月14日から2015年5月13日までの間において,アーカイブとして保存されていたことが明らかであり,保存されたアーカイブが断続的であるとしても,その間も連続的に掲載されていたと推認される。
ウ 商品の返品について
使用患部冷却剤の実際の販売終了時期は,ある卸売商から被請求人宛てに出された平成26年(2014年)7月18日付けの「返品承認・引取依頼」(乙14,35)において,合計389梱の商品の返品引取が依頼されており,その中に「熱さま透明ゼリー大人用12枚 1」との記載があることから,少なくともその時期にはまだ当該商品が引取依頼会社に残っていたことがわかる。この依頼に対しては,同年7月24日に引取が実行されている。同様に平成26年(2014年)8月26日にも返品承認・引取依頼がなされたことが明らかになっている(乙15,36)。その他,同年7月から翌年6月にかけて,同様に同じ製品の返品依頼が複数社からなされていた(乙16)。
これらから,使用患部冷却剤が,要証期間である平成24年8月5日以降,同27年8月4日までの間にも販売が継続されていたことが明らかである。
なお,請求人は「商品の返品」を商標の使用行為に当たらないと主張するが,被請求人は,「返品承認・引取依頼」(乙14,15,35,36)が使用患部冷却剤の返品引取の依頼に係るものであるところ,商品の返品要請があった以上,それまでの期間において当該商品が店頭に置かれるなどして販売に供されていた,すなわち,譲渡若しくは引渡し又は譲渡若しくは引渡しのために展示されていたことが推認されることを主張しているのであるから,返品が実行されたかどうかは譲渡等の使用行為があったことと関連せず,請求人の主張は的を射ないものである。
ところで,商品の返品依頼は,一般に,商品の使用期限が残り少なくなってきた場合のみならず,店頭に陳列するのに十分な数量を維持できない場合,売上げが見込めない場合などにもしばしばなされる。実際に返品された商品の中には,使用期限のない雑貨も多数含まれている。すなわち,「返品承認・引取依頼」(乙14,15,35,36)に示した商品が使用期限間近又は使用期限を過ぎた単なる廃棄物であるとの請求人の主張は,商慣習に照らして単なる憶測の域を出ないものである。
3 「ぐんぐん」又は「グングン」の文字の表示について
(1)消臭剤関連への使用
使用消臭剤1の商品包装箱(乙2)には,最も目立つ正面に「ぐんぐん」と「消臭」の文字が表示(以下「本件使用標章1」という。)されており,しかも前者は後者に比べて大きい文字で表示されており,両者の間には外観上の区切れを看取することができる。ここにおいて「消臭」の文字は,それ単独で観察すれば商品の品質・効能に係る用語であるということがいえる。
使用消臭剤2ないし4の商品容器(乙4?6)のもっとも目立つ天部シートに「ぐんぐん」及び「消臭」の文字が上下2段に表されている(以下「本件使用標章2」という。)。下段の「消臭」の文字それ自体は,商品の品質・効能に係る用語であるということがいえ,上段の「ぐんぐん」の文字はそれ自体「消臭」とは分離した表示形態となっている。
これらにおける「ぐんぐん」の文字は,「消臭」の文字とは分離観察を不可能または困難とするとか,識別不可能とするほどほど一体不可分に結合しているともいい難い。
また,「ぐんぐん」の文字は,本件使用標章1及び2全体の構成の中にあって,他の文字や図形と分離観察することが不可能又は困難というほどに一体不可分に結合されているとか,「ぐんぐん」の文字部分だけを取り出して識別認識することができないなどの格別の事情は認められず,取引者,需要者は,「ぐんぐん」の文字部分に着目し,これを独立した標章として認識しないとはいい切れない。
したがって,「ぐんぐん」の文字部分の使用態様は,本件商標と社会通念上同一の商標に当たる。
(2)患部冷却剤関連への使用
使用患部冷却剤の包装箱の上部右肩には,「高い熱を」と「とる!」の間に「グングン」の文字が表示(以下「本件使用標章3」という。)されていた。この構成中,「高い熱」の文字が黄色,「を」と「とる!」が白色で単に横書きしているのに対して,「グングン」の文字は異なる赤色の文字で,しかも右肩上がりに傾け徐々に大きくなるように表示されており,容易に前後の文字とは識別,分離観察できる目立った態様で表示されているから,「グングン」の文字部分の使用態様は,本件商標と社会通念上同一の商標に当たる。
(3)商標的使用について
請求人は,被請求人による「ぐんぐん」及び「グングン」の表示が商標的な使用とはいえないとし,自他商品の識別機能を果たす使用態様でない場合には,商標の使用には該当しないとするのが判例通説であると主張するが,そのような判例は存在しないし,通説であるともいえない(乙17?19)。
少なくとも,「グングン」の文字が本件請求に係る指定商品について他の文字・図形部分とは識別・分離可能な態様で表示されていたのであるから,不使用取消しにおいては,商標の使用があったというべきである(乙11)。
4 結び
以上のとおり,本件商標は,要証期間内に,本件審判請求に係る指定商品中「室内用消臭剤及びトイレ用消臭剤」等について日本国内で使用をしていたものであるから,商標法50条1項の規定により取消されるべきであるとする請求人の主張は理由がない。

第4 当審の判断
1 使用の事実について
証拠及び被請求人の主張によれば,以下の事実が認められる。
(1)消臭剤関連
ア 2015年新製品カタログ(乙3)には,その表紙に本件商標権者の略称と認められる「小林製薬」の記載並びに「2015 KOBAYASHI PRODUCTS」及び「小林製薬総合カタログ」の記載がある。そして,その2葉目の「目次」の最下段には,「※2015年3月現在の情報です。」の記載がある。また,その55頁の最上段右側の商品の紹介には「お部屋の消臭元 やすらぎそよぐラベンダー」の見出しの下,「●でっかいろ紙で強力消臭し,大容量で長持ちする芳香消臭剤」の記載とともに,商品の写真が掲載されている(使用消臭剤2)。使用消臭剤2には,中央の目立つ位置に「お部屋の」,「消臭元」及び「やすらぎそよぐラベンダー」の文字の記載がある。
イ 乙第4号証は,商標権者の商品の写真であるところ,当該写真の1葉目の商品には,中央の目立つ位置に「お部屋の」,「消臭元」及び「やすらぎそよぐラベンダー」の文字が記載され,当該商品の包装容器の図案についても,上記アの商品と同じであることから,乙第4号証の一連の写真は,使用消臭剤2を撮影したものと認められる。そして,使用消臭剤2の天部シートには,赤地に白抜きで「お部屋の」の記載,特徴的な書体でやや大きめに「消臭元」の記載及び大きな籠字で中を黄色に着色した「でっかいろ紙で」(最後の「で」の文字のみは黒色のゴシック体で表されている。)の記載があり,その下に,角を丸くした白色の長方形を2つ並べ,左側の長方形内には紺色の「ぐんぐん」及び「消臭」の各文字を中央にそろえて2段に横書きした記載,右側の長方形内には赤色の「ずーっと」及び「香る」の各文字を中央にそろえて2段に横書きした記載がある。また,使用消臭剤2の裏面の下段のラベルには,「品名:消臭・芳香剤/用途:室内用」並びに商標権者の名称,住所,ホームページのアドレスが記載されている。
(2)患部冷却剤関連
ア 2009年新製品カタログ(乙7)には,その表紙に「小林製薬総合カタログ」及び「KOBAYASHI PRODUCTS 2009」並びに商標権者の名称と認められる「小林製薬株式会社」の記載がある。また,その46頁の最下段の商品の紹介には「熱さま透明ゼリー大人用」の見出しの下,「●水分の蒸発をさまたげず,高い熱をグングン冷やす透明ジェル100%の冷却シート」の記載とともに,商品の写真が掲載されている(使用患部冷却剤)。使用患部冷却剤には,その包装箱の正面に赤色の楕円中に白抜きで大きく「強冷」の記載,籠字で中を黄色に着色した「高い熱を」の文字の記載に続けて白地中に赤色に着色した「グングン」の記載(当該文字は,やや右上がりに書してなる。),さらに続けて籠字で「とる!」の記載がある。また,同じく,その包装箱の正面の中央部分には,黄色のリボン状の枠内に「熱さま透明ゼリー」(「熱」文字は赤色,「さま」の文字は紺色,「透明ゼリー」は白色で書してなる。)の記載がある。
イ 乙第8号証は,商標権者の商品の写真であるところ,当該写真の1葉目の商品には,正面の中央部分に黄色のリボン状の枠内に「熱さま透明ゼリー」の文字が記載され,包装箱の図案についても,上記アの商品と同じであることから,乙第8号証の一連の写真は,使用患部冷却剤を撮影したものと認められる。そして,使用患部冷却剤の包装箱裏面には,「特徴」の項に「高い熱もグングン冷やす冷却ゼリーシート・・・3.大人の高い熱に最適・・・」の記載,「ここにこだわっています!」の項に「表面シートがなくゼリーだけなので,熱を一気に発散し,皮膚の温度を-3℃に冷やします。」の記載,及び「使用方法」の項に「2.ゼリーシートを取り出し,おでこに貼ってください。」の記載がある。
ウ 乙第10号証は,2009年(平成21年)11月11日付のインターネットアーカイブに係る使用患部冷却剤に係るアマゾン販売サイトの写しであるところ,当該写しの1葉目には,「熱さま透明ゼリー大人用(冷却シート)12枚」,「価格:¥945」及び「この商品はゲンキーが販売,発送します。」の記載がある。また,当該写しの2葉目には,「登録情報」の見出しの下,「Amazon.co.jpでの取扱い開始日:2007/8/15」の記載がある。
エ 乙第12号証は,2014年(平成26年)1月5日付のインターネットアーカイブに係る使用患部冷却剤に係るアマゾン販売サイトの写しであるところ,当該写しの1葉目には,「熱さま透明ゼリー大人用(冷却シート)12枚」,「この商品は現在お取り扱いできません。」の記載がある。また,当該写しの2葉目には,「登録情報」の見出しの下,「Amazon.co.jpでの取扱い開始日:2007/8/15」の記載がある。
オ 乙第14号証及び乙第35号証は,平成26年7月18日付けの「返品承認・引取依頼書及び添付書類」であるところ,当該書類の2葉目には,商標権者宛の「返品取引要望書」の見出しの下,「下記の返品の引取りを依頼します。」の記載,「バラ商品」の欄に「389梱」の記載がある。そして,その4葉目の23行目には「JANコード」の列に「498707201486800」,「商品名」の列に「熱さま透明ゼリー大人用12枚」,入庫数の列に「1」の記載がある。
2 判断
(1)上記1の認定事実によれば,以下のとおり認められる。
ア 消臭剤関連
上記1(1)の認定事実によれば,〈1〉本件商標権者は,2015年(平成27年)3月現在の情報として使用消臭剤2を2015年新製品カタログに掲載したこと,〈2〉使用消臭剤2の天部シートには,赤地に白抜きで「お部屋の」の記載,特徴的な書体でやや大きめに「消臭元」の記載及び大きな籠字で中を黄色に着色した「でっかいろ紙で」(最後の「で」の文字のみは黒色のゴシック体)の記載があり,その下に,角を丸くした白色の長方形を2つ並べ,左側の長方形には紺色の「ぐんぐん」及び「消臭」の各文字を中央にそろえて2段に横書きした記載(本件使用標章2),右側の長方形には赤色の「ずーっと」及び「香る」の各文字を中央にそろえて2段に横書きした記載があること,〈3〉使用消臭剤2は,上記カタログ上で「●でっかいろ紙で強力消臭し,大容量で長持ちする芳香消臭剤」と説明され,かつ,商品の裏面ラベルには,「品名:消臭・芳香剤/用途:室内用」と記載されているものであるから「室内用の芳香作用を有する消臭剤」であること,が認められる。
イ 患部冷却剤関連
上記1(2)の認定事実によれば,〈1〉本件商標権者は,2009年(平成27年)に使用患部冷却剤を2009年新製品カタログに掲載したこと,〈2〉使用患部冷却剤の包装箱には,その正面に赤色の楕円中に白抜きで大きく「強冷」の記載,籠字で中を黄色で「高い熱を」の文字の記載に続けて白地中に赤色で「グングン」の記載(当該文字は,やや右上がりに書してなる。),さらに続けて籠字で「とる!」の記載(本件使用標章3)があること,〈3〉使用患部冷却剤は,商品「おでこに貼付し熱を下げることを目的としたゼリー状の冷却シート」であること,が認められる。
また,被請求人による使用患部冷却剤に係るアマゾン販売サイトは,インターネットアーカイブによりその内容が更新される度に保存され,その保存されたアマゾン販売サイトの履歴によると,使用患部冷却剤は,2007年(平成19年)8月15日にアマゾン販売サイト上で一般に向けて販売が開始され,2009年(平成21年)11月11日以降もその販売は継続していたが,2014年(平成26年)1月5日以降は,同サイトで取り扱われなくなったことが認められるから,その前日(同月4日)までは,同サイトで販売のために商品が掲載されていたものと推認できる。
また,乙第14号証及び乙第35号証によれば,平成26年7月18日に,商品取扱い者より本件商標権者に対し,使用患部冷却剤を1個返品する旨の依頼があったことが認められることからすれば,上記推認にも不整合な点はない。
ウ 以上を前提に,以下で更に検討する。
(2)消臭剤関連の使用について
ア 本件使用標章2の使用者及び使用消臭剤2について
本件使用標章2の使用者は,本件商標権者であり,使用消臭剤2は,「室内用の芳香作用を有する消臭剤」である(乙1,2)。そして,「室内用消臭剤」は,本件商標の登録出願時に適用される「類似商品・役務審査基準(国際分類第8版対応)」(https://www.jpo.go.jp/shiryou/kijun/kijun2/1311-042_kijun.htm)による商品及び役務の区分第5類「薬剤」下に例示されている「防臭剤(身体用のものを除く。)」に準ずる商品であるから,使用消臭剤2も同じく「薬剤」に属する商品と認めることができる。
したがって,使用消臭剤2は,本件審判請求に係る指定商品中「その他の薬剤(農薬に当たるものを除く。)」に含まれる商品というのが相当である。
イ 本件使用標章2の使用時期について
使用消臭剤2は,2015年(平成27年)3月現在の情報として商標権者作成の2015年新製品カタログに掲載されたものである。そして,本件使用標章2は,使用消臭剤2の天部シートに記載されたものである。
そうすると,商標権者は,要証期間内である2015年(平成27年)3月頃には,使用消臭剤2の包装に本件使用標章2を付していたものと推認できる。
ウ 本件使用標章2と本件商標との同一性について
本件商標は,上記第1のとおり,「グングン」の片仮名を標準文字で表してなるものである。
他方,本件使用標章2は,上記(1)アのとおり,角を丸くした白色の長方形内に紺色の「ぐんぐん」及び「消臭」の各文字を中央にそろえて2段に横書きしてなるものである。そして,本件使用標章2は,使用消臭剤2の天部シートの全体の構成の中にあって,他の文字や図形と分離観察することが不可能又は困難というほどに一体不可分に結合されているとか,本件使用標章2の部分だけを取り出して識別認識することができないなどの格別の事情は認められないから,これを独立した標章として認識し得るものである。
また,本件使用標章2は,その構成中の背景にあたる長方形部分は,ありふれた輪郭といえるものであるから,その構成中の文字部分を分離観察することは容易であるといえる。
そして,本件使用標章2は,「ぐんぐん」の文字部分と「消臭」の文字部分を中央にそろえて2段に横書きされたものであるから,「ぐんぐん」の文字部分を明確に看取できるものである。
そうすると,本件商標と本件使用標章2の構成中の「ぐんぐん」の文字部分は,片仮名及び平仮名を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生ずる商標といえるから,本件使用標章2の構成中の「ぐんぐん」の文字部分は,本件商標と社会通念上同一の商標といえる。
なお,請求人は,包装容器の天面には,全体として「でっかいろ紙で/ぐんぐん消臭/ず?っと香る」と記載されており,「大きなろ紙で,どんどん消臭し,長く香りが持続する」といった商品の特徴を表す説明であると容易に認識できるものであるから,自他商品の識別標識として使用しているとはいえず,商標的使用には該当しない旨主張する。
しかしながら,商標法50条の主な趣旨は,登録された商標には,その使用の有無にかかわらず,排他独占的な権利が発生することから,長期間にわたり全く使用されていない登録商標を存続させることは,当該商標に係る権利者以外の者の商標選択の余地を狭め,国民一般の利益を不当に侵害するという弊害を招くおそれがあるので,一定期間使用されていない登録商標の商標登録を取り消すことについて審判を請求することができるというものである。上記趣旨に鑑みれば,商標法50条所定の「使用」は,当該商標がその指定商品又は指定役務について何らかの態様で使用されていれば足り,出所表示機能を果たす態様に限定されるものではないというべきである(知財高裁平成26年(行ケ)第10234号・同27年11月26日判決)。
そうすると,本件使用標章2は,たとえ全体として「大きなろ紙で,どんどん消臭し,長く香りが持続する」程の意味合いを看取させるとしても,上記のとおり,本件使用標章2は,本件商標と社会通念上同一の商標と認められる「ぐんぐん」の文字部分を明確に看取できるものであり,本件審判請求に係る指定商品中「その他の薬剤(農薬に当たるものを除く。)」に含まれる使用消臭剤2に使用されているものであるから,請求人の主張は採用できない。
エ 小活
以上によれば,商標権者は,要証期間内である平成27年3月頃に,日本国内において,本件請求に係る指定商品中「その他の薬剤(農薬に当たるものを除く。)」に属すると認められる使用消臭剤2の包装に,本件商標と社会通念上同一と認められる本件使用標章2を付したと認めるのが相当である。
そして,商標権者の上記使用行為は,商標法第2条第3項第1号に該当するものと認められる。
(3)患部冷却剤関連の使用について
ア 使用患部冷却剤の使用者及び使用商品について
使用患部冷却剤の使用者は,本件商標権者であり,使用患部冷却剤は,「おでこに貼付し熱を下げることを目的としたゼリー状の冷却シート」である。そして,使用患部冷却剤は,本件審判請求に係る指定商品中「シート状の患部冷却剤,ジェル状の組成物を塗布してなるシート状の貼付用薬剤」に含まれる商品というのが相当である。
イ 本件使用標章3の使用時期について
本件使用標章3は,使用患部冷却剤の包装に付されていたものである。
そして,使用患部冷却剤は,2007年(平成19年)8月15日にアマゾン販売サイト上で一般に向けて販売が開始され,2014年(平成26年)1月4日までは,同サイトで販売のために掲載がなされていたものと推認できることからすると,商標権者は,要証期間内に,日本国内において,本件使用標章3を使用患部冷却剤の包装に付していたものと推認できる。
なお,請求人は,要証期間内のアマゾン販売サイトのアーカイブである乙第12号証,乙第13号証,乙第33号証及び乙第34号証ではいずれも「この商品は現在お取扱いできません。」と記載され,さらに,使用患部冷却剤が「ドラッグピュア楽天市場店」のウェブサイトにおいて,「小林製薬 熱さま透明ゼリー大人用」の項において,「【2009年10月に販売終了となりました。】」の表示が認められ,これらの証拠に基づけば,要証期間前の2009年(平成21年)頃には使用患部冷却剤の販売は既に終了していた旨主張する。
しかしながら,使用患部冷却剤が,上記「ドラッグピュア楽天市場店」において,2009年(平成21年)10月に販売終了したとしても,それは,各販売店舗等に係る個別の事情であって,当該事情が全ての店舗等に共通するものとはいえないし,上記のとおり,使用患部冷却剤は,要証期間内に継続してアマゾン販売サイトで販売のために掲載されていたものと推認できるものであるから,請求人の主張は採用することはできない。
ウ 本件使用標章3と本件商標との同一性について
本件商標は,上記第1のとおり,「グングン」の片仮名を標準文字で表してなるものである。
他方,本件使用標章3は,上記(1)イのとおり,使用患部冷却剤の包装箱には,その正面に赤色の楕円中に白抜きで大きく「強冷」の記載,籠字で中を黄色で「高い熱を」の文字の記載に続けて白地中に赤色で「グングン」の記載(当該文字は,やや右上がりに書してなる。),さらに続けて籠字で「とる!」と記載してなるものである。そして,本件使用標章3は,使用患部冷却剤の包装箱全体の構成の中にあって,他の文字や図形と分離観察することが不可能又は困難というほどに一体不可分に結合されているとか,本件使用標章3の部分だけを取り出して識別認識することができないなどの格別の事情は認められずないから,これを独立した標章として認識し得るものである。
そして,本件使用標章3の「グングン」の文字部分は,白地中に赤色で記載され,前後の「高い熱を」及び「とる!」の文字に比べて目立つ様に記載されているから,本件使用標章3の構成中の「グングン」の文字部分が,独立した要部として理解される場合も少なくないというべきである。
そうすると,本件商標と本件使用標章3の構成中の「グングン」の文字部分は,社会通念上同一の商標といえる。
なお,請求人は,本件使用標章3は,「熱をぐんぐん冷ます」程の意味合い,すなわち商品の品質,効能を表示したものにすぎず,本件商標と社会通念上同一と認められる商標の使用とはいえない旨主張する。
しかしながら,商標法50条の主な趣旨は,上記(2)ウのとおりであって,本件使用標章3は,本件商標と社会通念上同一の商標と認められる「グングン」の文字部分が目立つ様に記載され明確に看取できるものであり,本件審判請求に係る指定商品中「シート状の患部冷却剤,ジェル状の組成物を塗布してなるシート状の貼付用薬剤」に含まれる使用患部冷却剤に使用されているものであるから,請求人の主張は採用できない。
エ 小活
以上によれば,商標権者は,要証期間内に,日本国内において,本件請求に係る指定商品中「シート状の患部冷却剤,ジェル状の組成物を塗布してなるシート状の貼付用薬剤」に含まれると認められる使用患部冷却剤の包装に,本件商標と社会通念上同一と認められる本件使用標章3を付したと認めるのが相当である。
そして,商標権者の上記使用行為は,商標法第2条第3項第1号に該当するものと認められる。
3 まとめ
以上のとおり,被請求人は,要証期間内に日本国内において,商標権者が本件請求に係る指定商品中「その他の薬剤(農薬に当たるものを除く。)」に属する使用消臭剤2の包装及び本件請求に係る指定商品中「シート状の患部冷却剤,ジェル状の組成物を塗布してなるシート状の貼付用薬剤」に含まれる使用患部冷却剤の包装に,本件商標と社会通念上同一の商標を付していたことを証明したと認め得る。
そして,商標権者の上記使用行為は,商標法第2条第3項第1号の「商品又は商品の包装に標章を付する行為」に該当するものと認められる。
したがって,本件商標の登録は,商標法第50条により,取り消すことはできない。
よって,結論のとおり審決する。
審理終結日 2016-08-10 
結審通知日 2016-08-17 
審決日 2016-08-31 
出願番号 商願2002-62377(T2002-62377) 
審決分類 T 1 32・ 1- Y (Y05)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 清川 恵子 
特許庁審判長 田中 幸一
特許庁審判官 田村 正明
早川 文宏
登録日 2003-07-18 
登録番号 商標登録第4693081号(T4693081) 
商標の称呼 グングン 
代理人 柳生 征男 
代理人 中田 和博 
代理人 特許業務法人浅村特許事務所 
代理人 青木 博通 

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