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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W3541
審判 全部申立て  登録を維持 W3541
審判 全部申立て  登録を維持 W3541
管理番号 1319369 
異議申立番号 異議2016-900064 
総通号数 202 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2016-10-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-03-16 
確定日 2016-09-10 
異議申立件数
事件の表示 登録第5817866号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 
結論 登録第5817866号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第5817866号商標(以下「本件商標」という。)は,「CREW NET」の欧文字を標準文字により表してなり,平成27年8月11日に登録出願され,第35類「求人情報の提供,就職・転職の相談,職業のあっせん,人材紹介,広告業,広告用スペースの提供(ウェブサイト上の広告用スペースの提供を含む。),マーケティング,経営の診断又は経営に関する助言,市場調査又は分析」及び第41類「職業に関する知識の教授,技芸・スポーツ又は知識の教授,資格の認定及び資格の付与,資格検定試験の企画・運営又は実施,セミナー・シンポジウム・会議・講演会・研修会・研究会の企画・手配・運営・開催及びこれらに関する情報の提供,書籍の制作,電子出版物の制作,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。)」を指定役務として,同年12月16日に登録査定,同28年1月8日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する商標(以下「引用商標」という。)は,「Crew Net」の欧文字を横書きした構成からなるものである。

第3 登録異議の申立ての理由
本件商標は,商標法第3条第1項柱書,同法第4条第1項第10号及び同項第15号に該当し商標登録を受けることができないものであるから,その登録は,商標法第43条の3第2項の規定により,取り消されるべきものである旨申立て,その理由を以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第32号証を提出した。
1 引用商標の著名性について
(1)Crew Netサイトについて
申立人は,平成9年5月に航空業界への就職・転職の支援活動を開始し(甲2,甲3),その開始当初から,引用商標を,専用のウェブサイトに,その支援活動と他者の業務とを識別するための商標として継続的に用いている(甲3,甲4)(このウェブサイトを,以下「Crew Netサイト」という。)。
そして,求人情報の提供,職業のあっせん,広告用スペースの提供並びにセミナー・シンポジウム・会議・講演会・研修会・研究会の企画・手配・運営・開催及びこれらに関する情報の提供について使用する引用商標は,申立人の業務に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている。
ア Crew Netサイトの運用について
申立人は,Crew Netサイトの開設と同時にスタートした情報交換の場を継承するとともに,客室乗務員等を採用する側の航空会社や航空関連会社,客室乗務員等を養成する専門学校などからの要求に応え,企業広告・バナーや航空業界の就業に有利な知識の習得コースの案内などを掲載した。さらに,前記の情報交換の場を,従来のweb画面への転載方式から,ユーザーが直接に投稿することのできる電子掲示板方式に変更した(甲4,甲5)。
申立人は,平成27年1月に,新たに独自ドメインJOIN-CREW.NETを取得し,このドメインを用いて,現行のCrew Netサイトを運用している(甲6,甲7)。
イ ユーザーについて
(ア)申立人は,平成16年9月からユーザーに対するメール配信を始めたものであり,この約6年間に有料及び無料のメール配信を申し込んだユーザーは7000名以上に上り,それらの各所在地は47都道府県に及ぶ(甲9)。
このメール配信は平成23年1月に全て無料化された上で,現在も継続している。
申立人は,平成27年2月にCrew Netサイトの全面改訂を行い,(以下,ここでいう登録会員を単に「登録会員」という。)(甲10?甲12)。
登録会員は,平成27年2月から本件商標の出願日である平成27年8月11日の前日までの約6か月間に1万382名に上り,さらに,本件商標の登録査定の日である平成27年12月16日の前日までの約4か月間に1万3296名に上っている,なお,平成28年2月末現在の登録会員は1万5136名である。
一方で,求人側のJAL及びANAによる採用数は,客室乗務員が,両者を合わせて多い年で約1500名の規模であり,地上職が,JALグループ及びANAグループ各社を合わせて数百名規模である。また,外国の航空会社やそれらのグループ企業による日本国内における採用数は,客室乗務員及びグランドスタッフの何れについて,各社とも概ね若干名程度にとどまっている。そのため,上で述べたCrew Netサイトの登録会員数は,航空業界での年間就業者数よりも十分に大きい数値であり,就業希望者全体に対して大きな割合を占めているものと推測される。
(イ)Crew Netサイトの全面改訂以降の平成27年2月から本件商標の出願日である平成27年8月11日の前日までに,初めてCrew Netサイトを閲覧したユーザーは,13万931名である(甲13)。また,同じく平成27年2月から本件商標の登録査定の日である平成27年12月16日の前日までの約10か月間に,21万4282名が初めて閲覧している。すなわち,Crew Netサイトは,多数のユーザーによって閲覧され,閲覧したユーザーは,日本国内の広い地域に所在している(甲14)。
(ウ)広告等について
申立人は,多くの内外の航空会社や航空関連会社から,Crew Netサイトへの求人広告の掲載依頼を受けている。(甲15,甲16)。
また,Crew Netサイトは,教育機関を中心とする多くの外部サイトにおいて紹介されている(甲17)
(2)セミナーの開催等について
ア 申立人は,名称に引用商標を冠した航空業界への就職・転職セミナー及び相談会を各地で開催し,多くの参加者を集めている。
申立人は,平成9年以降,航空業界への就職・転職セミナーを関西,関東,九州等の各地において通算20回以上開催し,セミナー名に引用商標を用いている(甲21?甲25)。
申立人は,これらのセミナーにおいて,自らが講師を務めるとともに,航空業界の就労経験者や現役職員を講師として招き,就職・転職希望者に対して航空会社等の企業情報や採用情報を提供し,かつ,エントリーシートの記入,面接,内定後の準備事項などに関する知識を教授している。
また,申立人は,平成24年以降,航空業界への就職・転職のための相談会を京都市内において6回開催し,相談会名に引用商標を用いている。申立人は,これらの相談会において自らが相談員を務め,1名につき50分程度の個別相談に応じている(甲26,甲27)。
イ 申立人は,Crew Netサイトを運営する協力スタッフであり,客室乗務員としての就業経験を有するキャリア・コンサルタントに対し,表紙の著作者名欄に引用商標を冠することを許諾するとともに,このキャリア・コンサルタントによる著作物の著作・発表に協力した(甲28?甲31)。
(3)小括
以上よりすると,引用商標は,少なくとも第35類「求人情報の提供,就職・転職の相談,職業のあっせん,広告用スペースの提供(ウェブサイト上の広告用スペースの提供を含む。)」及び第41類「職業に関する知識の教授,技芸・スポーツ又は知識の教授,セミナー・シンポジウム・会議・講演会・研修会・研究会の企画・手配・運営・開催及びこれらに関する情報の提供,書籍の制作,電子出版物の制作」について,申立人の業務に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている。
2 商標法第3条第1項柱書の該当性について
本件商標権者は,本件商標の出願を行った平成27年8月以前の,平成24年5月から同年6月までの間に,いずれも第41類「資格付与のための資格試験の実施及び資格の認定・資格の付与」の役務を指定して,商標「Certified Crew Controller」,商標「客室乗務実務検定」及び商標「CABIN CREW CERTIFCATE」の商標登録出願を行い,平成24年10月から同年12月までの間に,商標登録第5530734号,第5541129号及び第5541130号を受けている。これら3件の商標は,航空業界に従事する者のための資格の名称又は検定の名称を意味するものと一般世人において容易に理解しうるところである。
しかしながら,上記3件の登録商標又は本件商標を名称とする資格又は検定が実在すると認められるような情報を見付けることができないため(甲32),本件商標権者が本件商標の登録査定時において,少なくとも第41類「資格の認定及び資格の付与,資格検定試験の企画・運営又は実施」の指定役務に係る業務を行っていた可能性が極めて低い。すなわち,本件商標権者がこれらの役務について本件商標を使用する合理的必要性が存在しなかったことは歴然としている。
また,上記の事実のとおり,引用商標がすでに申立人の業務に係る役務を表示するものとして広く認識されていたことが明らかである。そのため,本件商標権者は,引用商標の商標登録がなされていないことを奇貨として,上記の「資格の認定及び資格の付与,資格検定試験の企画・運営又は実施」以外の引用商標に係る役務を含む第35類及び第41類の各役務を併せ指定して,自ら使用する意思なく本件商標の商標登録出願を実施した可能性が高い。
かかる事実を総合的に勘案すれば,本件商標権者は,現在及び将来において本件商標を使用する意思を有していないことは明白である。
よって,商標法第3条第1項柱書の要件を満たさないものであるから,同法第43条の2第1号によって取り消されるべきものである。
3 商標法第4条第1項第10号及び同項第15号の該当性について
(1)商標法第4条第1項第10号の該当性について
本件商標は,標準文字で「CREW NET」の欧大文字を横書きしてなり,一方,引用商標は,「Crew Net」の欧大文字と欧小文字とを横書きしてなることから,両者は,外観において大文字と小文字の違いがあるだけであるから,文字商標としては,実質的に同一であるか,そうでないとしても,少なくとも類似の商標であることは明らかである。
そして,上記で指摘したとおり,申立人は少なくとも第35類「求人情報の提供,就職・転職の相談,職業のあっせん,広告用スペースの提供(ウェブサイト上の広告用スペースの提供を含む。)」及び第41類「職業に関する知識の教授,技芸・スポーツ又は知識の教授,セミナー・シンポジウム・会議・講演会・研修会・研究会の企画・手配・運営・開催及びこれらに関する情報の提供,書籍の制作,電子出版物の制作」について,本件商標と実質的に同一であるか,そうでないとしても,少なくとも類似する引用商標を使用し続けてきた。
よって,本件商標に係る指定役務の一部は,需要者の間に広く認識されている引用商標に係る役務又はこれらに類似する役務に相当する。
(2)商標法第4条第1項第15号の該当性について
また,本件商標は,その指定役務のうち,上で述べた一部の指定役務を除いたものについて使用するとき,引用商標が需要者の間で広く認識されていること,引用商標が申立人による支援活動全般において共通して使用されるハウスマークであること,役務どうしの関連性等を勘案し,申立人の業務に係る役務と混同を生ずるおそれがある商標であることは明らかである。
(3)小括
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第10号及び同項第15号に規定する不登録事由が存在し,その登録は,同法43条の2第1号によって取り消されるべきものである。
4 結び
よって,本件商標は,商標法第3条第1項柱書の要件を満たさず,かつ,同法第4条第1項第10号及び同項第15号に該当し,商標登録を受けることができないものであるから,その登録は,商標法第43条の3第2項の規定により取り消されるべきものである。

第4 当審の判断
1 商標法第3条第1項柱書について
商標法第3条第1項柱書の「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標」として商標登録を受けることができるのは,現に使用している商標だけでなく,使用する意思があり,かつ,近い将来において使用する予定のある商標も含まれるものと解すべきである。
そうすると,本件商標権者が,本件商標の登録査定時において,本件商標を自己の業務に係る指定役務について現に使用をしていなくとも,将来において使用する意思があれば,本件商標は,商標法第3条第1項柱書の要件を具備するといえるところ,申立人が提出する全証拠によっても,本件商標権者がそのように本件商標を使用する意思を有することを否定するに足りる事実は見いだせない。
なお,申立人は,本件商標権者は商標登録第5530734号,同5541129号及び同第5541130号の各登録商標と本件商標を保有しているが,これらの登録商標を名称とする資格又は検定が実在すると認められるような情報を見付けることができないため,本件商標権者が本件商標の登録査定時において,少なくとも第41類「資格の認定及び資格の付与,資格検定試験の企画・運営又は実施」の指定役務に係る業務を行っていた可能性が極めて低い旨,さらに,自ら使用する意思なく本件商標の商標登録出願を実施した可能性が高いことは,本件商標権者が引用商標の周知性を認識していたこと,あるいは,本件商標権者が登録料を分割して前半5年分のみ納付し,後半5年分の納付を先送りしにしていることによっても裏付けられる旨主張している。
しかし,本件商標は,前記第1のとおり,平成27年12月16日に登録査定されたものであり,その登録査定から1年も経過していないものであるから,本件商標等と同一の名称の資格又は検定が実在すると認められるような情報を見付けられることができなかったとしても,かかる事実のみによっては,近い将来において,本件商標権者が本件商標をその指定役務について使用する意思がないことまでを具体的に裏付けるものとはいえない。
また,本件商標は,設定登録料金を前半の5年分だけ支払っていることをもって,本件商標の登録査定時に,本件商標権者が本件商標をその指定役務について,現に使用しているか又は近い将来使用する予定があるかについて,格別に合理的疑義があったものということもできない。
したがって,本件商標は,商標法第3条第1項柱書の要件を具備しないということができない。
2 商標法第4条第1項第10号の該当性について
(1)本件商標と引用商標の類否について
本件商標は, 「CREW NET」の欧文字を標準文字で表してなるものであり,他方,引用商標は,「Crew Net」の欧文字を横書きしてなるものであるところ,本件商標と引用商標とを比較すると,両商標は大文字と小文字の違いはあるものの,その綴りを同じくするものであるから,両商標からは「クルーネット」の同一の称呼が生じるものであり,観念において異なるところはないというべきであるから,両商標は類似の商標といえる。
(2)引用商標の著名性について
申立人の提出に係る証拠及び主張によれば,申立人は,平成9年にCrew Netサイトを開設した当初から,そのトップページ(甲2,甲4?甲6)に,「Crew Net」又は「CREWNET」の欧文字を表示していたことが認められる。
しかしながら,これらウェブサイト上で表示されているほかに,引用商標に係る役務の具体的な取引実態(営業の規模,売上高等)や宣伝広告における実態(宣伝広告の内容,回数,宣伝費等)などは把握し得ない上に,登録会員数やウェブサイトへのアクセス数が引用商標に対する需要者の認知度を直ちに把握させ得るともいい難く,また,平成16年9月からの6年間で有料及び無料のメール配信を申し込んだユーザーが7000名以上に上るとしても,そのことを裏付ける証拠の提出もなく,さらに,この人数自体が周知性を基礎付けるほど多数であるともいい難いものである。
また,申立人は,Crew Netサイトの運営にとどまらず,引用商標を名称に用いたセミナー,相談会,交流会の開催をはじめ,メールマガジンの配信,記事の投稿などを行い,出版物の著作にも関わっている旨主張しているが,セミナー開催は,平成9年以降,通算20回以上であるとしても,平均すると年1回程度であり,その回数は少なく,就職・転職相談会等についても,平成24年以降,開催されたのは6回程度であり,参加人数や内容等も不明である。さらに,テキスト等の著作物の制作にしても,その発行部数,売上実績,広告実績,需要者等に対する認知度などは明らかではなく,その他,申立人の使用する商標が我が国の需要者等に広く認識されていることを把握できる資料の提出はない。
してみると,引用商標は,申立人の提出する全証拠によっては,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,「求人情報の提供,就職・転職の相談,職業のあっせん,広告用スペースの提供(ウェブサイト上の広告用スペースの提供を含む。),セミナー・シンポジウム・会議・講演会・研修会・研究会の企画・手配・運営・開催及びこれらに関する情報の提供,書籍の制作,電子出版物の制作」等について,申立人の業務に係る役務を表示する商標として,需要者の間で広く認識されるに至っていたと認めることはできない。
(3)小括
以上によれば,本件商標と引用商標が類似の商標であるとしても,引用商標が申立人の業務に係る役務を表示するものとして需要者の間で広く認識されるに至っている商標とは認められないから,本件商標は,商標法第4条第1項第10号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第15号の該当性について
本件商標と引用商標が類似の商標であるとしても,引用商標が周知・著名なものとは認められないこと上記2(2)のとおりである。
してみれば,本件商標を指定役務に使用した場合,これに接する需要者が引用商標を想起し連想して,当該役務を申立人の業務に係る役務,あるいは同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように,役務の出所について混同を生じさせるおそれがある商標ということはできない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しない。
4 まとめ
以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第3条第1項柱書,同法第4条第1項第10号及び同項第15号のいずれにも違反してされたものではないから,同法第43条の3第4項の規定に基づき,維持すべきものである。
よって,結論のとおり決定する。
異議決定日 2016-09-01 
出願番号 商願2015-77171(T2015-77171) 
審決分類 T 1 651・ 25- Y (W3541)
T 1 651・ 271- Y (W3541)
T 1 651・ 18- Y (W3541)
最終処分 維持  
前審関与審査官 安達 輝幸 
特許庁審判長 堀内 仁子
特許庁審判官 小林 裕子
早川 文宏
登録日 2016-01-08 
登録番号 商標登録第5817866号(T5817866) 
権利者 櫻井 祐二
商標の称呼 クルーネット、クルー 
代理人 鷹津 俊一 

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