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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W45
審判 全部申立て  登録を維持 W45
管理番号 1318255 
異議申立番号 異議2015-900350 
総通号数 201 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2016-09-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2015-11-04 
確定日 2016-08-05 
異議申立件数
事件の表示 登録第5786407号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5786407号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第5786407号商標(以下「本件商標」という。)は、「FACEJAPAN」の文字を標準文字で表してなり、平成27年2月19日に登録出願、第45類「オンラインによるソーシャルネットワーキングサービスの提供」を指定役務として、同年6月16日に登録査定、同年8月14日に設定登録されたものである。

第2 登録異議の申立ての理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標は商標法第4条第1項第15号及び同第7号に該当するから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであると申立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第12号証を提出した。
1 引用商標
(1)登録第5062344号商標(以下「引用商標1」という。)は、「FACEBOOK」の文字を標準文字で表してなり、2006年(平成18年)6月29日にアメリカ合衆国においてした商標登録出願に基づきパリ条約第4条の規定による優先権を主張して、平成18年11月14日に登録出願、第42類及び第45類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定役務として、同19年7月13日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
(2)国際登録第1075094号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲のとおりの構成からなり、2010年5月23日に、Franceにおいてした商標登録出願に基づきパリ条約第4条の規定による優先権を主張し、2010年(平成22年)7月16日に国際商標登録出願、第9類、第35類、第36類、第38類、第41類、第42類及び第45類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、平成26年9月12日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
(3)登録第5499071号商標(以下「引用商標3」という。)は、「フェースブック」の文字を標準文字で表してなり、平成22年5月25日に登録出願、第9類、第35類、第36類、第38類、第41類、第42類及び第45類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同24年6月8日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
以下、これらをまとめていうときは、「引用商標」という。
2 商標法第4条第1項第15号について
(1)引用商標の著名性
申立人は、引用商標である「FACEBOOK」又は「フェースブック」の名称のもとに、インターネット上におけるソーシャルネットワーキングサービス(SNS)を提供している。
「FACEBOOK」のサービスは、2004年にアメリカの学生向けに提供が開始され、2006年以降は一般にも開放され、13歳以上であれば誰でも利用できるようになり、急速にその利用者数を増やしていった。2008年には、日本語版のサービスが提供され、本格的に日本でも利用されるようになった。2011年9月には、世界中に8億人の利用者を有する世界最大のソーシャルネットワーキングサービスとなり、2012年10月には、その利用者は10億人を突破したとされ、また、日本国内における利用者も2011年9月には1,000万人を超えたとされる(甲5)。そして、世界中において2015年9月のデイリーアクティブ利用者は、10億1,000万人、2015年9月30日時点での月間アクティブ利用者数は、15億5,000万人とされる(甲6)。
現在では「FACEBOOK」のサービスの利用者は、個人にとどまらず、公的機関や企業も情報発信メディアとして積極的に活用している。
このように、「FACEBOOK」は、ソーシャルネットワーキングサービスの代表格であり、今や我々の社会生活において情報共有やコミュニティー形成のためのツールとして不可欠なものとなっている。
そして、「FACEBOOK」創設の経緯に関しては、2010年に「ソーシャル・ネットワーク」というタイトルのもとに映画化されており、「FACEBOOK」は、広く世間の関心の対象となっている。
以上のとおり、引用商標は、インターネット上におけるソーシャルネットワーキングサービスの提供について、本件商標の登録出願日の時点において既に、日本国内及び外国において、需要者の間に広く認識されており、著名な商標となっていた。
(2)出所の混同のおそれ
ア 本件商標と引用商標の比較
本件商標は、引用商標1及び2と、一般的に需要者の印象に強く残りやすい語頭に位置する「FACE」が共通し、「FACE」を語頭に有して他の語との結合からなるという商標の構成態様においても似通っている。そして、引用商標3とは、称呼において語頭の「フェース」が共通する。
また、本件商標の指定役務は、引用商標が著名性を獲得するに至った役務と同一又は類似である。
イ 本件商標の構成
本件商標は、「FACE」と「JAPAN」の2語の結合から構成されることを容易に認識されるものである。一般的に「JAPAN」の語は、「Yahoo! JAPAN」、「MSN Japan」、「Google Japan」、「YouTube Japan」などの例に見られるように、「日本向けのサービス」であることを表示するものである。それゆえ、本件商標を構成する「JAPAN」部分は、指定役務との関係において、単に役務の提供の場所を表示するにすぎないと認識されるものであるから、本件商標においては、語頭に位置する「FACE」部分が、とりわけ需要者の注意関心を強く引いて印象に残るというべきである。
ウ 引用商標の構成中の「FACE」の語の独自性
引用商標の構成中の「FACE」の語又はそのカタカナ表記の「フェース」の語は、「顔」を意味する英語であるが、ソーシャルネットワーキングサービスとの関係において、単に役務の内容を直接的又は記述的に表示するにすぎないということはない。そして、「FACEBOOK」以外のソーシャルネットワーキングサービスとしては、「Twitter」、「Google+」、「LINE」、「Instagram」、「Pintererest」、「LinkedIn」、「Tumblr」、「mixi」などが広く知られているが、主要な大手のソーシャルネットワーキングサービスの名称において、「FACE」の語をその一部にも採用しているものは「FACEBOOK」以外には見られない(甲8)。このように、該サービスに「FACE」の語を使用することは一定の独自性がある。
エ 誤認・混同の発生
引用商標は、ソーシャルネットワーキングサービスについて著名に至っており、引用商標を構成する「FACE」の語には一定の独自性が認められる。
そうすると、本件商標は、語頭に「FACE」の文字を有してなるという商標の構成態様が引用商標と似通っている上に、「FACE」の文字が需要者の注意を強く引くものであり、さらに、その指定役務は、引用商標が著名性を獲得しているソーシャルネットワーキングサービスそのものであるため、これに接する需要者は、著名な「FACEBOOK」を容易に連想・想起するというのが相当である。
オ 小括
以上のとおり、引用商標がソーシャルネットワーキングサービスについて著名であること、本件商標と引用商標は、語頭の「FACE」の文字を共通にし、構成態様も似通っていること、本件商標においては「FACE」の文字部分が強調して認識されること、ソーシャルネットワーキングサービスについて引用商標を構成する「FACE」の語には独自性があることから、本件商標は、その指定役務について使用されると、引用商標に係る業務の営業主である申立人と経済的又は組織的に何らかの関係がある者の業務に係る役務に関するものであると、役務の出所について誤認混同を生ずるおそれがある。
そして、仮に、本件商標の登録を認めた場合には、著名に至っている引用商標が有する顧客吸引力や信用へのただ乗り、さらには、その希釈化を招くという結果を生じかねない。
3 商標法第4条第1項第7号について
(1)商取引秩序の混乱のおそれ
本件商標は、上述のとおり、著名なソーシャルネットワーキングサービスである「FACEBOOK」と何らかの関連性があるとの誤認混同を生ずるおそれがある。需要者が、本件商標に係るサービスを「FACEBOOK」の関連サービスであると誤信することにより、個人情報が流出すれば、利用者に重大な損害をもたらし、ソーシャルネットワーキングサービスへの信頼を損ね、ひいては、社会全体の公正な商取引の秩序を乱すことになる。
(2)不正の意図
本件商標の権利者は、語頭に「FACE」の文字を冠して、それと国名・地域名とを結合させた複数の商標を、ソーシャルネットワーキングサービスについて、他国においても登録出願(甲9?甲12)しており、これらの商標はいずれも、「FACEBOOK」と何らかの関連性を有する各国・各地域向けのサービスであると、需要者に誤認させるおそれがあるものである。これらの登録出願及び本件商標の登録出願は、世界的に著名な「FACEBOOK」の名声や顧客吸引力に便乗する不正の意図をもってなされたものであり、国際信義に反する。

第3 当審の判断
1 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)引用商標の周知著名性について
申立人の提出した証拠によれば、「Facebook」は、申立人が運営するインターネット上のソーシャルネットワーキングサービスであって、2004年にアメリカ合衆国の学生向けにサービスを開始した。当初は、学生のみに限定していたが、2006年9月26日以降は一般にも開放され、日本語版は2008年に公開された。公開後、急速にユーザー数を増やし、2010年にサイトのアクセス数がGoogleを抜き話題となった。2011年9月、世界中に8億人のユーザーを持つ世界最大のソーシャルネットワーキングサービスとなり、2012年10月に、10億人を突破した。日本国内の利用者数は、2010年12月で約308万人、2011年9月末に1,000万人を超えた(甲5)。
そして、申立人のホームページの記載によれば、2015年9月のデイリーアクティブ利用者は、10億1,000万人、同年9月30日時点での月間アクティブ利用者数は15億5,000万人となっている(甲6)。
そうすると、申立人は、2004年にアメリカ合衆国において「ソーシャルネットワーキングサービス」について、「Facebook」を使用開始し、日本語版が2008年に公開され、それ以後、日本国内及び世界中において相当数の利用者数を有する状況となっているものである。
してみれば、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、取引者、需要者の間において、申立人の業務に係る役務「ソーシャルネットワーキングサービス」を表示するものとして広く認識されていたものと認められる。
(2)本件商標と引用商標との類否
本件商標は、「FACEJAPAN」の文字を書してなるところ、該文字は、同書、同大、等間隔に視覚上まとまりよく一体に表されているものであって、該文字から生ずる「フェースジャパン」の称呼は、よどみなく一連に称呼できるものである。
また、本件商標は、辞書等に掲載が認められないものであるから、特定の意味を有しない一種の造語というのが相当である。
そうすると、本件商標は、その構成文字全体に相応して、「フェースジャパン」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものというべきである。
他方、引用商標は、「FACEBOOK」、「facebook」又は「フェースブック」の文字からなるところ、上記のとおり、申立人がこれを「ソーシャルネットワーキングサービス」に使用して周知著名となっているものである。
してみれば、引用商標は、それぞれの構成文字に相応して「フェースブック」の称呼を生じるものである。また、引用商標は、申立人の業務に係る著名な商標としての「facebook(フェイスブック)」の観念を生じるものである。なお、「facebook(フェイスブック)」が「face」や「フェイス」と略されて使用されている証左は提出されていない。
そこで、本件商標と引用商標とを比較すると、外観においては、本件商標及び引用商標は、それぞれ上記のとおりの構成からなるものであって、外観上、明らかに区別し得るものである。
また、称呼においては、本件商標から生ずる「フェースジャパン」の称呼と引用商標から生ずる「フェースブック」の称呼とは、その音構成に明らかな差異を有するものであるから、両者をそれぞれ一連に称呼するときは、称呼上、相紛れるおそれはないというべきである。
さらに、本件商標は、特定の観念を生じないものであり、また、引用商標からは、申立人の業務に係る著名な商標「facebook(フェイスブック)」の観念を生じるから、本件商標と引用商標とは、観念上、類似するということができない。
したがって、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても、互いに紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
(3)出所の混同のおそれ
前記(1)のとおり、本件商標の登録出願日(平成27年2月19日)前に、日本における需要者の間において、引用商標は申立人の業務に係るソーシャルネットワーキングサービスに関する役務を表示するものとして広く認識されているものである。
しかしながら、本件商標と引用商標とは、前記(2)のとおり、非類似の商標であり、明らかに相紛れるおそれのない別異の商標というべきであって、ほかに役務の出所について混同を生ずるおそれがあるとすべき特段の事情も見いだせない。
そうすると、本件商標をその指定役務に使用しても、これに接する取引者、需要者が、該役務を申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように連想、想起することはなく、その出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
2 商標法第4条第1項第7号該当性について
本件商標は、前記1(2)のとおり、引用商標とは非類似の商標であり、また、申立人の提出に係る証拠のいずれをみても、商標権者が本件商標を使用した結果、引用商標の「FACEBOOK」に化体した信頼を損ね、ひいては、社会全体の公正な商取引の秩序を乱すおそれがあると認めるに足る事実は、見いだせない。
加えて、本件商標の権利者は、ソーシャルネットワーキングサービスについて、語頭に「FACE」の文字を冠して、それと国名・地域名とを結合させた複数の商標を他国(アメリカ合衆国及びメキシコ)において、登録出願(甲9?甲12)しているとしても、これをもって、世界的に著名な引用商標の名声や顧客吸引力に便乗する不正の意図をもってなされたものともいえず、国際信義に反するとはいい難い。
してみれば、本件商標は、これをその指定役務に使用したとしても、社会全体の公正な商取引の秩序を乱すおそれはなく、また、他人の著名な商標の名声や顧客吸引力に便乗するといった不正の目的をもって出願されたものではない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
3 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号及び同第7号に違反してされたものではないから、商標法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 別掲 引用商標2 (色彩については、原本参照。)




異議決定日 2016-07-28 
出願番号 商願2015-15099(T2015-15099) 
審決分類 T 1 651・ 22- Y (W45)
T 1 651・ 271- Y (W45)
最終処分 維持  
前審関与審査官 泉田 智宏 
特許庁審判長 井出 英一郎
特許庁審判官 清棲 保美
山田 正樹
登録日 2015-08-14 
登録番号 商標登録第5786407号(T5786407) 
権利者 アシール フィロ ドス サントス
商標の称呼 フェースジャパン、フェース 
代理人 鈴木 礼至 
代理人 特許業務法人深見特許事務所 

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