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審決分類 審判 一部申立て  登録を維持 W162541
管理番号 1318252 
異議申立番号 異議2015-900250 
総通号数 201 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2016-09-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2015-07-28 
確定日 2016-08-12 
異議申立件数
事件の表示 登録第5760943号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5760943号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第5760943号商標(以下「本件商標」という。)は、「モンスター娘のいる日常」の文字を標準文字で表してなり、平成26年12月11日に登録出願され、第9類、第16類、第24類、第25類、第28類及び第41類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品又は役務を指定商品又は指定役務として、平成27年3月13日に登録査定、同年4月24日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が本件登録異議の申立てに引用する、申立人のいう「MONSTER」ファミリー商標は、以下の38件であり、いずれも現に有効に存続しているものである。なお、38件の商標をまとめていうときは、以下、単に「引用商標」という。
(1)国際登録第1048069号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、第9類、第16類、第18類及び第25類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、2010年(平成22年)6月28日に国際商標登録出願され、平成23年7月29日に設定登録されたものである。
(2)登録第5788675号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲2のとおりの構成からなり、平成26年12月25日に登録出願、第9類、第16類、第18類及び第25類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成27年8月28日に設定登録されたものである。
(3)登録第5788676号商標(以下「引用商標3」という。)は、「MONSTER ENERGY」の文字を標準文字で表してなり、平成26年12月25日に登録出願、第9類、第16類、第18類及び第25類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成27年8月28日に設定登録されたものである。
(4)上記(1)ないし(3)のほか、(4)登録第5689430号商標、(5)登録第5730813号商標、(6)登録第5393681号商標、(7)登録第5057229号商標、(8)登録第5010968号商標、(9)登録第5394526号商標、(10)登録第5442171号商標、(11)登録第5417815号商標、(12)登録第5379390号商標、(13)登録第5527566号商標、(14)登録第5476620号商標、(15)登録第5490798号商標、(16)登録第5497766号商標、(17)登録第5451361号商標、(18)登録第5480373号商標、(19)登録第5527567号商標、(20)登録第5495941号商標、(21)登録第5769176号商標、(22)登録第5417770号商標、(23)登録第5375090号商標、(24)登録第5327467号商標、(25)登録第5409580号商標、(26)登録第5409582号商標、(27)登録第5419507号商標、(28)登録第5409583号商標、(29)登録第5542584号商標、(30)登録第5043703号商標、(31)登録第5431412号商標、(32)登録第5419513号商標、(33)登録第5423080号商標、(34)登録第5757485号商標、(35)登録第5389881号商標、(36)商願2015-8109号商標(なお、平成28年4月22日に登録第5844119号として商標登録原簿に設定登録された。)、(37)登録第5715016号商標、(38)登録第5657923号商標であり、合計38件の商標である。

第3 登録異議申立ての理由
申立人は、本件商標の指定商品及び指定役務中、第16類、第25類及び第41類についての登録は、商標法第43条の2第1号により、取り消されるべきであると申し立て、その理由を要旨以下のように述べ、その証拠方法として甲第1号証ないし甲第285号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 「MONSTER」ファミリー商標の著名性
(1)申立人は、1930年代に創業した米国の飲料メーカーであり、2002年(平成14年)にエナジードリンクの新ブランド「MONSTER ENERGY」を創設し、米国で、同年4月から製造販売を開始し、経済・ビジネス界でも注目を浴び、男性若者層を中心に、たちまち人気商品となった(甲2、4、7、18、56?58)。
(2)申立人の「MONSTER ENERGY」ブランド(以下「MEブランド」という。)の各種エナジードリンクには、発売開始以降、現在まで継続して、「MONSTER」と他の語又は文字を組み合わせてなる構成を共通点とする多数の商標(以下「『MONSTER』ファミリー商標」という。)が個別商品名として使用されており(甲58)、そのボトル缶には、「MONSTER」の文字が太字で顕著に表示されている(甲11?16、58)。
(3)2002年(平成14年)から現在まで、全世界におけるMEブランドのエナジードリンクに関する広告、マーケティング及び販売促進活動費は総額30億米ドルを超え(甲58)、その販売促進の内容は、世界の有名アスリート・レーシングチーム及び競技会、アマチュア選手、音楽祭及びミュージシャン、並びに米国ラスベガスの公共機関モノレールに対する支援活動(スポンサー提供)、並びに販売店用什器及び備品の供給である(甲34?45、52、53、56?58)。
(4)日本国内ではMEブランドのエナジードリンクの販売は、アサヒ飲料株式会社を通じて、2012年(平成24年)5月8日から開始している(甲5?7、12、14、58)。その発売後、同年9月時点で既に年間売上目標の100万箱を突破し(甲8)、その後も好調に売上を伸ばして157万箱の売上を記録した(甲9、130?132)。その後、現在まで6種の異なる「MONSTER」ファミリー商標を付したエナジードリンクが国内で流通している(甲10、13、15、124?127、185?187、202)。
また、2012年(平成24年)5月の国内発売直後から、継続的にテレビコマーシャル放映、日本開催の多数のスポーツイベント等へのスポンサー提供、サンプル配布などを含む大々的な広告・販売促進活動が実施されている(甲58)。
日本における「MONSTER ENERGY」ブランドのエナジードリンクの販売数量は、2012年5月の販売開始から2015年6月30日までの約3年余りの期間において約2億3600万缶を売り上げ、総販売額は1億7500万米ドル以上、日本円で170億円以上に上る(甲58)。
(5)申立人は、現在までに全世界100以上の国及び地域で、1種類以上の「MONSTER」ファミリー商標を使用したエナジードリンクを販売し、又は販売中である。販売額は、2002年(平成14年)に米国で販売開始以来、130億缶以上販売し、世界中で毎年30億缶以上を売上げ、世界中で合計240億米ドルを超える収益を上げており、全世界での小売販売額は毎年60億米ドルを超える。(甲58)
(6)申立人は、2002年から現在まで、MEブランドマークが付された被服、運動用特殊衣服、運動用ヘルメット、ステッカー、リュックサック等は、インターネットの通信販売業者により、日本国内でも輸入販売されており(甲47、48)、一般消費者の人気も高い。
また、申立人は、ビデオゲーム制作販売会社とも提携し、申立人がスポンサーを務めるカーレーサー等がMEブランドマークを付したウエア等を着用し、レーシングカーを使用して登場する複数のビデオゲーム製品なども商品化しており、日本でも購入可能である(甲58)。
(7)以上の事実に照らせば、申立人の「MONSTER」ファミリー商標は、本件商標の登録出願日の遙か以前より、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、米国をはじめとする外国で広く認識されていただけにとどまらず、本件商標の登録出願時及び登録査定時には、日本国内の需要者の間でも申立人の業務に係る商品を表示するものとして広く認識されていたことが明らかである。
2 本件商標の商標法第4条第1項第15号の該当性について
本件商標の指定商品及び指定役務中、第16類、第25類及び第41類の指定商品及び指定役務は、引用商標1、2及び3の指定商品と同一又は類似の役務を含む。また、これらの指定商品又は指定役務は、申立人がその商標を使用許諾しているライセンシーを通じてMEブランドマークを付して実際に製造販売しているTシャツ、帽子、スウェットシャツ等のアパレル製品、運動用ヘルメット、サーフボード、レーシングスーツ、かばん類、ステッカー、時計、傘などのライセンス商品(甲176?184)と同一又は類似のもの、あるいは当該ライセンス商品とその製造部門、販売場所、提供場所、使用目的、用途、需要者の範囲などが一致ないし重複する互いに関連性が密接な商品といえるものである。また、本件商標が使用される第41類の指定役務は娯楽の提供、映像、画像、音声、音楽、ゲームなどのコンテンツの提供として把握されものであり、申立人のMEブランドが使用されているビデオゲーム製品(甲58)、さらには、申立人がMEブランドを用いて日本を含む世界各国で提供しているスポーツや音楽に関する様々な娯楽イベントの企画、運営又は開催の役務(甲34?45、58、128、129、133?136、157?175、188?209)と同一又は類似のものである。
当該指定役務の需要者は、申立人の上記娯楽イベントや申立人がブース出展したゲーム製品の展示会(甲171、172)の観戦者、聴衆、来場者と一致ないし重複することが明らかである。
したがって、本件指定商品等は、申立人及びその商標ライセンシーの取り扱いに係る商品及び役務と同一又は類似のものであり、あるいは、当該商品及び役務と製造部門、販売部門、原材料、用途、効能、販売場所、提供場所、需要者の範囲等が一致ないし重複し、密接な関連性を有する商品及び役務であることが明らかである。
本件商標は、一般に看者の注意、関心を最も強く惹きつける語頭部分に「モンスター」の文字を有すること、「モンスター」の文字は、外来語の「モンスター」として国民一般に広く親しまれていること、また、本件商標は「モンスター」の文字部分のみが片仮名で表記され、他の文字部分と外観印象を異にするから、語頭の「モンスター」の文字部分が出所識別標識として需要者を最も強く印象づけて、その記憶に留まる。
本件商標は、「MONSTER」に相応する「モンスター」の文字と他の文字を組み合わせて構成されたものとして容易に認識理解されるものであるから、申立人の「MONSTER」ファミリー商標とその構成方法が一致し、これらと非常に似通った印象の出所識別標識として需要者に認識され、記憶される。
加えて、本件商標の構成文字の前半の6文字「モンスター娘」は、申立人の「MONSTER」ファミリー商標のひとつであり、また、申立人が世界各地で開催する上記のスポーツ競技会、ショー、コンサートなどの娯楽イベントや申立人製品の販売プロモーションイベントに出演し、サンプル配布などのプロモーション活動(甲58)を行う美女集団の名称「MONSTER GIRL」(モンスター・ガール)(引用商標28)と同一又は類似の観念を想起、連想させるものであるから、本件商標に接した需要者は、「モンスター娘」の文字部分に基づいて、申立人の提供に係る様々な娯楽イベントに登場するモンスター・ガール(MONSTER GIRL)を直観する可能性が高い。
本件商標の登録出願時には、申立人の使用に係る「MONSTER」ファミリー商標は、日本国内及び米国を含む多数の外国において申立人の業務に係る商品を表示するものとして本件指定商品等の需要者の間で広く認識されていた。
このような事情の下で本件商標が本件指定商品等に使用された場合、これに接した需要者は、申立人の「MONSTER」ファミリー商標に共通する「MONSTEE」の文字に対応する「モンスター」の文字部分に着目し、「MONSTER ENERGY」「MONSTER」をはじめとする「MONSTER」ファミリー商標を想起連想することにより、本件商標を申立人の「MONSTER」ファミリー商標のひとつであると誤信し、あるいはまた本件商標を使用した商品及び役務が申立人又は申立人と経済的又は組織的関係を有する者(たとえば、申立人の関連会社、あるいは、申立人から「MONSTER」ファミリー商標の使用許諾を受けたライセンシー)の取り扱いに係るものであると誤信し、その出所について混同を生じるおそれが高いことが明らかである。
商標法第4条第1項第15号の規定はまた、出所の混同防止のみならず、著名商標の顧客吸引力へのフリーライド、その出所表示力のダイリューションを防止する趣旨も含むものであると解される[平成16年(行ケ)第85号審決取消請求事件、平成16年10月20日東京高裁判決]。本件商標が本件指定商品等に使用された場合は、2002年から現在に至る申立人による継続的使用と営業努力によって申立人の商品役務出所識別標識として広く認識されるに至ったMONSTERブランドマーク及び「MONSTER」ファミリー商標の強力な出所表示力が希釈化することが明らかである。また、被申立人による本件商標の使用は申立人が「MONSTER」ファミリー商標について獲得した信用力、顧客吸引力にフリーライドする行為といわざるを得ない。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当する。
3 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15の規定に違反して登録されたものであるから、その指定商品・役務中第16類「全指定商品」、第25類「全指定商品」及び第41類「全指定役務」について取り消されるべきである。

第4 当審の判断
1 使用商標の周知性について
(1)申立人の提出に係る各甲号証によれば、申立人は、1930年代に創業した米国の飲料メーカーであり、2002年にエナジードリンクの新ブランド「MONSTER ENERGY」を創設し、米国においては、同年4月から製造販売を開始し(甲2、4、7、18)、その後、経済・ビジネス誌において申立人ないしはその商品が紹介された(甲49、51?58)。
(2)我が国では、申立人のエナジードリンク(以下「申立人商品」という。)は、2012年(平成24年)5月8日から「MONSTER ENERGY」及び「MONSTER KHAOS」が清涼飲料として発売開始されたものであり(甲7)、その商品には、側面が黒色の容器の正面に顕著に表された緑色の図案化された「m」の文字(以下「『m』図形」という。飲料の種類により色が相違する。)、その下に図案化された白抜きの「MONSTER」の文字及び「ENERGY」の文字を配した構成の商標(以下「使用商標」という。)が使用されているものであり(甲5?8、10?17等)、申立人商品は、我が国において、2012年末までに157万箱販売され(甲7?9)、さらに、2013年(平成25年)5月7日、2014年(平成26年)8月19日、同年10月7日にも、使用商標又は「m」図形を付した申立人商品が発売されたことが認められる(甲10、124?127)。
そして、申立人は、申立人商品の国内販売の開始直後から、テレビコマーシャルの放映、発売を記念するイベントを行ったほか、各種イベントのスポンサー提供を介して広告宣伝を行い、例えば、2012年(平成24年)には、2か月間にわたり路上で50万缶、渋谷における発表会で4万缶、晴海フェリーターミナルにおけるパンクロックフェスティバルで5500缶、愛知県におけるサーフィン大会で4500缶のサンプル配布、各地で行われたスケートボード競技会のスポンサー提供などを行い、約3年間の売上げが約170億円であると陳述しているが(甲58)、上記コマーシャルの放映等に係る具体的な証拠の提出はない。
申立人は、日本のオートバイメーカーのレーシングチームのスポンサーとなったことがロードレース世界選手権(MotoGP)(甲44、176、177等)のウェブサイトにおいて、また、外国のモータースポーツのスポンサーとなったことが申立人(甲45)のウェブサイトにおいて紹介され、選手のユニフォームや車体等に使用商標や「m」図形が使用されたことが認められる。
さらに、申立人は、使用商標を付したアパレル製品やステッカーなどの販売についてライセンス契約を締結し、これら商品が、我が国においても、2011年(平成23年)1月頃からインターネットで販売されたこと(甲47、48)、2013年以降、日本で開催されたビッグエア、モータースポーツイベント及びレース等を主催又は協賛しており、一部のイベントにおいては、申立人商品の試飲の実施又は使用商標等が付された車体、用具、アパレル製品等が使用されたこと(甲157?160、162、164、166、167等)、「東京ゲームショウ 2013」に出展し申立人商品等のプレゼントキャンペーン(2013年(平成25年)9月9日?30日)を実施したこと(甲171、173)が認められる。
なお、申立人提出の証拠により、申立人商品のサンプル配布活動を行う集団の名称が「MONSTER GIRL」(モンスター・ガール)(引用商標28)と称されて知られている事実は確認できない。
(3)以上によれば、申立人は、我が国において、2012年5月の申立人商品発売以降、比較的若い世代が集まる繁華街やイベント会場等において申立人商品のサンプル配布を行い、申立人が主催又は協賛したスポーツイベント等においても出場選手のユニフォーム等に使用商標が表示されたことからすると、使用商標は、本件商標の登録出願日前までには、清涼飲料を取り扱う分野の取引者及び若い世代を中心とした消費者の間では、ある程度知られていたものと認めることができる。
しかしながら、我が国における、申立人商品のキャンペーンは、上記のとおり、若い世代が集まる一部の場所において行われたものであり、スポーツ後援の対象も主にモータースポーツ、スノーボードであった。
さらに、申立人は、我が国において、申立人商品の発売に係るニュースリリース(甲7?甲10、124、125)を行ったこと以外に、使用商標を付した申立人商品の広告を新聞、雑誌等に積極的に継続して行ってきた事実を見いだすことはできない。
してみると、使用商標を使用した申立人商品は、我が国における上記販売開始時期及びその限定的な宣伝方法によっては、その周知性も限られるものといわざるを得ない。
なお、使用商標を付したアパレル製品やステッカー等のウェブサイトにおける販売について、申立人が提出した証拠により、我が国におけるそれら商品の需要者等の使用商標についての認識を把握することはできないばかりでなく、その事実のみにより申立人商品に係る使用商標の周知性認定を基礎付けることもできない。
以上を総合すると、申立人は、その業務に係る商品に使用商標を使用してることが認められるが、使用商標が申立人商品を表示するものとして、本件商標の登録出願の時及び登録査定時において、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されるに至っていたとまでは認めることができない。
そして、申立人提出の証拠により、使用商標以外のすべての引用商標が使用されていることは認められないから、申立人が主張する「MONSTER」ファミリー商標が、我が国の取引者、需要者に広く知られているものとはいえない。
(4)本件商標と使用商標との類似性
本件商標は、前記第1のとおり、「モンスター娘のいる日常」の文字を標準文字で表してなるものであるから、その構成は外観上まとまりよく表されているものであり、また、構成文字全体から生ずる「モンスタームスメノイルニチジョウ」の称呼も冗長ではあるものの一連に称呼し得るものである。そして、その構成文字は、普通に使用される書体であることにより、いずれかの文字が特に強い印象を与えることはないものといえるから、かかる構成からなる本件商標においては、その構成全体として一体不可分のものとして把握され、認識されるものというのが相当であり、その他に、片仮名で表記された語頭の「モンスター」の文字部分が独立して出所識別標識としての機能を果たすものというべき、特段の事情は見当たらない。
したがって、本件商標は、その構成文字全体に相応して、「モンスタームスメノイルニチジョウ」の称呼のみを生じ、特定の観念を生じないものであるとみるのが相当である。
一方、使用商標は、前記(2)のとおり、色彩の点を除けば、引用商標1又は引用商標2と同一の構成からなるものであるところ、その構成中の「m」図形とその下に書された文字部分(図案化された「MONSTER」の文字及び「ENERGY」の文字)とは、視覚上分離して看取されるものであり、使用商標に接する取引者、需要者は、称呼しやすい文字部分を捉えて商品の取引に当たる場合が多いとみるのが相当である。そうすると、使用商標は、構成文字全体に相応して「モンスターエナジー」の称呼を生じ、その構成中の「MONSTER」及び「ENERGY」の文字は、それぞれが「怪物」及び「エネルギー」を意味する英語としていずれも一般に親しまれている語であることから、「怪物のエネルギー」程の意味合いを理解させるものである。
してみると、本件商標から生じる「モンスタームスメノイルニチジョウ」の称呼と使用商標から生じる「モンスターエナジー」の称呼とは、「ムスメノイルニチジョウ」と「エナジー」の音という明確な差異を有し、聞き誤るおそれはない。
そして、本件商標が標準文字で表されているのに対し、使用商標が前記(2)のとおり、図案化された「MONSTER」の文字及び「ENERGY」の文字を有するものであるから、外観上明らかに相違し、見誤るおそれはなく、また、本件商標は、特定の観念を生じないのに対し、使用商標は、「怪物のエネルギー」の観念を生じるから、観念においても相紛れるおそれはない。
したがって、本件商標と使用商標とは、類似しないものであり、別異の商標である。
(5)出所の混同
上述のとおり、本件商標と使用商標とは、別異の商標として認識されるものであり、さらに、前記(3)認定のとおり、使用商標及び「MONSTER」ファミリー商標は、申立人商品を表示するものとして、本件商標の登録出願の時及び登録査定時において、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されていた商標とはいえない。
してみると、本件商標に接する取引者、需要者が、使用商標及び「MONSTER」ファミリー商標を連想又は想起することはないというべきであるから、本件商標は、これをその指定商品について使用しても、その取引者、需要者をして、該商品が申立人又はこれと何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生じさせるおそれがある商標ということはできない。
(6)まとめ
以上によれば、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものと認めることはできない。
2 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものではないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 別掲1(引用商標1)



別掲2(引用商標2)




異議決定日 2016-08-01 
出願番号 商願2014-104854(T2014-104854) 
審決分類 T 1 652・ 271- Y (W162541)
最終処分 維持  
前審関与審査官 今田 尊恵 
特許庁審判長 今田 三男
特許庁審判官 堀内 仁子
小松 里美
登録日 2015-04-24 
登録番号 商標登録第5760943号(T5760943) 
権利者 株式会社徳間書店
商標の称呼 モンスタームスメノイルニチジョー 
代理人 中熊 眞由美 
代理人 佐久間 剛 
代理人 柳田 征史 

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