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審判番号(事件番号) データベース 権利
不服201516548 審決 商標
不服201511316 審決 商標
不服201513171 審決 商標
不服201516531 審決 商標

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審決分類 審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない W10
管理番号 1318145 
審判番号 不服2015-8197 
総通号数 201 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2016-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-05-01 
確定日 2016-07-20 
事件の表示 商願2014-17994拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は、別掲1のとおりの構成からなり、第10類に属する願書に記載のとおりの商品を指定商品とし、2014年1月30日にインドにおいてした商標登録出願に基づきパリ条約第4条による優先権を主張して、平成26年3月10日に登録出願されたものである。そして、その指定商品は、原審における平成26年10月31日付け手続補正書により、第10類「投薬治療用の吸入器」と補正されたものである。

2 原査定における拒絶の理由の要旨
原査定は、「本願商標は、その構成から明らかなように、蓋の付いた簡単な形状の投薬治療用の吸入器の一形態を表すものであるから、これを本願の指定商品『投薬治療用の吸入器』に使用しても、取引者、需要者は、単に、指定商品自体の形状と認識するにすぎない。そうすると、本願商標をその指定商品に使用したときは、指定商品の形状、品質を表示するにすぎない。したがって、本願商標は商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
(1)商標法第3条第1項第3号該当性について
本願商標は、別掲1のとおり、白色の本体部分と丸みを帯びた蓋部分と緑色の作動部からなり、一部に滑り止めの突起を有する立体的な形状からなるものである。
ところで、投薬治療用の吸入器(以下「吸入器」という。)は、容器内に入れた薬剤を吸入口から吸い込むことにより薬剤を局所投与するために使用されるもので様々な方式、形状のものがある。そのうち、ドライパウダー吸入器においては、本願商標のように吸入口が蓋で覆われ、外観に筒形状を有さないものが複数存在しており、それぞれ操作方法について異なる部分もあるが、薬剤を投与するために重要である薬剤をセットする動作、吸入口をくわえ吸い込む動作については共通しているものである。また、その形状については、別掲2のとおり、薬剤のセットを確実、簡便にできるような改良や、本体を持ちやすくする改良などがそれぞれ行われているものである。
そして、そのような実情よりすれば、本願商標の形状は、容器に薬剤を入れ、その薬剤を吸入する機能を効果的に発揮させるため、又は、美感を高めるために採用されたものと理解させるものといえる。
そうとすれば、本願商標に接する取引者、需要者は、吸入器において、一般に採用されている形状(吸入口が蓋で覆われていてボタン等の作動部を有する形状)の一形態を表したものと認識し、その特徴は、機能上又は美感上の理由による形状の選択と予測し得る範囲のものであるから、商品の機能や美感を際立たせるために選択したものと理解するにとどまり、商品の出所を識別する標識とまでは認識しないとみるのが相当である。
してみれば、本願商標は、その指定商品に使用するときには、商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標といわなければならない。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものである。
(2)請求人の主張について
ア 請求人は、本願商標は、吸入器が一般的に備えている特徴を有していないことから、直ちに吸入器の形状を表すものと認識されない旨主張する。
しかしながら、吸入器を製造するメーカーは、別掲2のとおり、使いやすさや携帯性などを考慮して改良しているところ、本願商標に接する取引者、需要者は、これが操作性や携帯性などに考慮した結果の形状であると認識するというのが相当であるから、請求人による上記主張を採用することはできない。
イ 請求人は、需要者等が、吸入器の有する個性的な形状に着目し、当該形状を出所識別の手がかりとして取引にあたる場合も少なくない旨主張する。
しかしながら、本願商標のように吸入口が蓋で覆われ、外観に筒形状を有さない吸入器が複数存在し、また、その特徴は、機能上又は美感上の理由による形状の選択と予測し得る範囲であることは、上記(1)において認定、判断したとおりである。また、本願商標が現実の取引において自他商品識別力を有していると認められる証拠は提出されておらず、本願商標が自他商品の識別力を有するに至っているとも認められない。
ウ また、請求人は、過去の登録例を挙げ、本願商標も登録されるべきである旨主張する。
しかしながら、請求人の挙げる登録例等は、本願商標とは、商標の構成態様等において相違し、事案を異にするものであって、そのような例が存することをもって、本願商標についてした上記認定、判断が左右されるものではない。
エ したがって、上記アないしウのとおり、請求人の主張はいずれも採用することができない。
(3)まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
1 本願商標(色彩については、原本を参照のこと。)


2 吸入器の形状が改良されていることを示す新聞記事及びインターネット情報
(1)2014年6月23日付け「日刊薬業」に「大塚製薬 メプチンスイングへラーを7月2日発売」の見出しの下、「大塚製薬は、気管支拡張剤『メプチン』ドライパウダーの改良製剤として、『メプチンスイングへラー10μg吸入100回』(一般名=プロカテロール塩酸塩水和物)を7月2日から発売する。粉末吸入器『スイングへラー』にドライパウダー状の薬剤を充填した製剤で、ワンプッシュで1吸入分の薬剤をセットできる。保管容器と一体化したため、既存品『クリックへラー』に比べて操作性や携帯性も高めた。同社はクリックへラーからスイングへラーへの切り替えを進めていく方針。・・・」の記載がある。
(2)2014年3月25日付け「日刊工業新聞」(19ページ)に「呼吸器薬メーカー、吸入器デザインの創意工夫尽きず-使いやすく、教えやすく」の見出しの下、「呼吸器薬メーカーが吸入器のデザインを創意工夫している。ぜんそくや慢性閉塞(へいそく)性肺疾患(COPD)などの呼吸器疾患は薬効成分と吸入デバイスの両方が重要な市場だ。呼吸器が弱っている患者が、上手に薬を吸い込まなければいけない。患者の吸い方一つで効き方が変わるため、薬剤師は吸入指導に時間を割く。メーカーの吸入器の簡便さ、使いやすさへの探究は尽きることがない。・・・」の記載がある。
(3)2014年3月13日付け「日経産業新聞」(11ページ)に「GSK、ぜんそく薬『レルベア』、服用時、吸入器で自動配合、変質などリスク軽減」の見出しの下、「・・・使い勝手も改良した。ディスカスではカバーを開けた後、吸入前にレバーを動かして、内部で吸入スペースに薬を設置する必要があった。エリプタではカバーを開ける動作と薬の設置の動作を一体化。カバーを開ける1ステップで吸入できるようにした。また、残薬量を示すカウンターも大型化した。今回の吸入器は、全世界で同一のものが使用されている。英国本社で改良を繰り返し、吸入器の開発だけで10年以上かかっているという。『より持ちやすいよう、周囲を加工するなど新しい試作器が届くと小さな改良が行われていた』と平井氏は振り返る。日本からの要望も反映されている。ふたを開け、薬がセットされた際に「カチッ」という音がするのは日本から出した要望の結果だ。薬が正しくセットされているかどうかが確認できるように、薬がセットされるタイミングで歯車の爪がひっかかり、音が出るようにした。・・・」の記載がある。
(4)2009年1月26日付け「化学工業日報」(8ページ)に「第一三共、インフル長時間作用薬09年度申請、1回投与で治療可能に」の見出しの下、「・・・8958は経口吸入のパウダー製剤のため、専用の吸入デバイスが必要。臨床試験での使用品とは別に、2回吸入対応の改良デバイスも開発している。」の記載がある。
(5)「宮川医院」のウェブサイトにおいて、「吸入ステロイド薬(ICS)」の表題の下、「5)フルタイド ディスカスの吸入方法」の項に「あらゆる面で、フルタイドディスカスはフルタイドロタディスクの改良型といえます。」の記載がある。
(http://miyagawaiin.nzjp.net/04_04.html)

審理終結日 2016-02-15 
結審通知日 2016-02-16 
審決日 2016-03-07 
出願番号 商願2014-17994(T2014-17994) 
審決分類 T 1 8・ 13- Z (W10)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岩本 和雄 
特許庁審判長 今田 三男
特許庁審判官
豊泉 弘貴
酒井 福造
代理人 川本 真由美 
代理人 市川 久美子 
代理人 鮫島 睦 

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