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審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) W03
管理番号 1315923 
異議申立番号 異議2015-900152 
総通号数 199 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2016-07-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2015-05-14 
確定日 2016-05-30 
異議申立件数
事件の表示 登録第5740238号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5740238号商標の商標登録を取り消す。
理由 第1 本件商標
本件登録第5740238号商標(以下「本件商標」という。)は、「シャンパンフローラルの香り」の文字を標準文字で表してなり、平成26年10月16日に登録出願、第3類「口臭用消臭剤,動物用防臭剤,せっけん類,歯磨き,入浴剤(医療用のものを除く。),化粧品,香料,薫料,つけづめ,つけまつ毛」を指定商品として、同27年1月29日に登録査定、同年2月13日に設定登録されたものである。

第2 登録異議の申立ての理由
登録異議申立人は、本件商標の登録は取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第46号証(枝番号を含む。)を提出した。
本件商標は、「シャンパン」の片仮名を含んだものであるところ、該文字は、発泡性ぶどう酒の著名な原産地統制名称であって、その使用が厳格に管理・統制されているものである。しかして、本件商標は、この著名な原産地統制名称に化体した高い名声及び信用にフリーライドするものであり、これを原産地からかけ離れた特定人の商標として登録し、使用することは、厳格に管理統制されている前記原産地統制名称を希釈化させるものである。
したがって、本件商標は、公正な取引の秩序を乱し、ひいては国際信義に反するものであって、公の秩序を害するおそれがあるというべきであるから、商標法第4条第1項第7号に該当する。

第3 本件商標に対する取消理由
当審において、平成28年2月15日付けで本件商標権者に対し通知した取消理由の内容は次のとおりである。
1 「シャンパン」の文字の著名性及び顧客吸引力について
(1)書籍、雑誌及び新聞における記載について
ア 「コンサイスカタカナ語辞典」(平成8年10月1日株式会社三省堂発行)の437頁には、「シャンパン(Champagne)」の項に「発泡ワインの一種,フランス北東部シャンパーニュ地方産の美酒。白ぶどう酒に糖分を加え発酵させ、香料を配し、びん詰にして1年以上貯蔵する。多量の炭酸ガスを含みさわやかな香味をもつ。祝宴に多く用いられる。シャンペンとも。日本では中国名『三鞭酒』を借りてシャンペンと読んでいた。シャンパーニュ地方以外でつくられる発泡ワインはスパークリング-ワインと呼んで区別される。」の記載がある(甲12)。
イ 「広辞苑第6版」(平成20年1月11日株式会社岩波書店発行)の1310頁には、「シャンパーニュ(Champagne)」の項に「フランス北東部、パリ盆地東部の地方(州)。ブドウ栽培・シャンペン製造で知名。中心都市ランス」と記載され、また、「シャンパン(Champagne)」の項に「発泡性の白葡萄酒。厳密にはフランス北東部シャンパーニュ地方産のものを指す。発酵の際に生じた炭酸ガスを含み、一種爽快な香味がある。祝宴の乾杯などに用いる。」の記載がある(甲13)。
ウ 「新版 世界の酒辞典」(昭和57年5月20日株式会社柴田書店発行)の228頁には、「シャンパン(Champagne)」の項に「フランスのシャンパーニュ地方でつくられているスパークリング・ワイン。正式の名称をバン・ド・シャンパーニュ(Vin de Champagne)という。世界の各地で、各種のスパークリング・ワインがつくられているが、このうちシャンパンと呼ばれるものは、フランスのシャンパーニュ地方、特にプルミュール・ゾーン(ランス山とマルヌ谷との一等地)、ドゥジェーム・ゾーン(マルヌ県のうち一等地以外の村落群)産のスパークリング・ワインにかぎると1911年の法律で定められている。」の記載がある(甲5)。
エ 「明治屋酒類辞典」(昭和63年8月1日株式会社明治屋本社発行)の202頁には、「Champagne(仏)(英)シャンパン」の項に「フランスの古い州の名『シャンパーニュ』をとってワインの名に用いたものである。現在『統制された名称』であって、何ら形容詞を付けないで単に『シャンパーニュ』と称する資格を有するのは、マルヌ県の一定地域のブドウを原料にし、その地域内で、『シャンパン法』でつくった『白』スパークリングワインである。最高生産量にも制限があって、それを越えた部分には形容詞がつく。」と記載され、209頁ないし211頁 には、「統制名称」の項に「シャンパンは、詳しくは『ヴァン・ド・シャンパーニュ』であるが『シャンパーニュ』という地名を名乗るには資格がいる。1908年(明治41年)初めて法律ができて、『シャンパーニュ』という名称が『法律上指定された』名となった。」、「要するにシャンパンの条件は(ア)シャンパン地区の生産であること。(イ)シャンパン法(ビン内で後発酵を行い、発生したガスをビン内に封じ込める)で製造したものであること。(ウ)白ワインであること。(原料ブドウには黒ブドウと白ブドウとを、メーカーの秘伝で混和するけれど、でき上がりは白ワインである)(エ)その年度の最高の生産高に制限があること、の4条件を具えなければならない。」の記載がある(甲15)。
オ 「ワイン紀行」(平成3年9月25日株式会社文藝春秋発行)には、シャンパンの歴史及び製造過程についての記載がある(甲16)。
カ 「洋酒小事典」(昭和56年6月15日株式会社柴田書店発行)の95頁には、「シャンペン Champagne」の項に「フランスのシャンパーニュ地方でつくられているスパークリング・ワインの総称。」の記載がある(甲17)。
キ 「フランスのワインとスピリッツ」(1987年フランス食品振興会発行)の18頁ないし20頁には、EC(欧州共同体)の規則に従って、ワインはテーブルワインとV.Q.P.R.D.(指定地域優良ワイン)の2つの等級に分類され、フランスでは、この2つの等級がさらにそれぞれに2分され、(ア)A.O.C.(原産地統制名称ワイン)(イ)V.D.Q.S.(上質限定ワイン)(ウ)ヴァン・ド・ペイ(地酒)(エ)ヴァン・ド・ペイを除いたテーブルワインの4つに分けられること、V.D.Q.S.(上質限定ワイン)は、原産地名称国立研究所(I.N.A.O.)によって厳しく規制されパスしたものに限られ、製造の条件は法令化されていること、A.O.C.(原産地統制名称ワイン)は、その製造が、V.D.Q.S.ワインに適用される規制より更に厳格な規則を充たすものでなければならず、原産地、品種、最低アルコール含有度、最大収穫量、栽培法、剪定、醸造法及び場合によっては熟成条件などの基準が決定されていること、原産地域がV.D.Q.S.ワインの場合よりさらに厳しく限定されていること、その名称を使用することができるためには、様々な基準に合うように製造され、さらに鑑定試飲会の検査に合格しなければならないことなどが記載され、20頁には、産地別A.O.C.ワイン一覧表中に「シャンパーニュ CHAMPAGNE」の記載がある(甲18)。
ク 「田崎真也のフランスワイン&シャンパーニュ事典」(平成8年9月30日日本経済新聞社発行)には、「私たちはシャンパーニュという言葉を聞いただけで、心が浮き浮きしてくる。それだけシャンパーニュは特別な意味を持ったワインなのだ。近頃は日本でもシャンパーニュが本格的にレストランやワインバーで飲まれるようになったのはうれしい限りだ。」の記載がある(甲19)。
ケ 「最新版 The ワイン & コニャック アルマニャック」(昭和62年10月14日 読売新聞社発行)には、シャンパーニュ地方の様子及びシャンパンと食事との関わり合いについての記載があり、8葉目には、「シャンパーニュ地方でつくられる、発泡酒だけに名付けられるシャンパン」の記載がある(甲20)。
コ 「世界の酒4 シャンパン」(平成2年6月30日株式会社角川書店発行)の6頁には、「シャンパーニュの丘」の見出しの下に「シャンパーニュのワインの歴史に、さらにひとつの栄光のエピソードが加わった。それは発泡性ワインの誕生である。この画期的な発見、発明は、その後の研究者たちの努力によって、発泡性ワイン、シャンパンの名声を、ヨーロッパのみならず世界的なものにしたのであった。」の記載があり、8頁には、「シャンパーニュのぶどう畑」の見出しの下に「シャンパーニュというのは、この地方の古くからの一般的呼称である。・・・シャンパーニュには、他の産業もいろいろとあるが、何といってもシャンパンで世界的に知られている。」の記載がある(甲21)。
サ 「ザ・ワールドアトラス・オブ・ワイン」(平成3年5月27日文芸春秋発行)の58頁には、「フランス」の見出しの下に「フランスは勤勉で感覚的なだけでなく、実に組織的だ。・・・栽培地を規定し、分類し、管理している。どの地所が一番優れているかを、ほぼ200年にもわたって整然とリストアップし続けている。過去60年前後、こうした仕事はワインそのものだけでなく、消費者の保護という点で世界的な関心事として次第に重要性を増している。」の記載、110頁には、「シャンパーニュ」の見出しの下に「シャンパーニュという名前は、ボルドーの称呼などのように、限定された区域に適用されるだけでなく、この名前を名乗るまでに1滴ずつのワインが経なければならない一連の手法をも指す。」の記載がある(甲22)。 シ 「世界のワインカタログ1999」(平成10年12月1日サントリー株式会社発行)の242頁には、左上に「シャンパーニュ」の文字を小さく「Champagne」の文字を大きく横二段に表し、「シャンパーニュ(Champagne)A.O.C.ワイン地域図」の見出しの下にその地域図の記載があり、243頁には、「シャンパーニュ」の見出しの下に「フランスの葡萄産地としては最北部にあたるシャンパーニュは、言うまでもなく、あのシャンパンの産地です。この地でつくられるスパークリングワインのシャンパンは、スパークリングワインの代名詞として使用されるほど、世界的で最も有名なワインのひとつです。その名にふさわしく、大変手間のかかる伝統的な手法をかたくなに守り続けて、素晴らしい風味を生み出しています。」の記載がある(甲23)。
ス 「料理王国1月号別冊 季刊ワイン王国 NO.5」(平成12年1月20日株式会社料理王国社発行)の80頁には、「ひとくちにシャンパンといっても一様でないのはそれもそのはず、シャンパーニュ地方ワイン生産同業委員会(CIVC)がまとめているすべての醸造元の数は5200にものぼる。委員会は、シャンパン消費量上位10カ国に外国事務所をおいて、『シャンパンと呼べるのは、シャンパーニュ地方産スパークリングワインだけ』ということを訴えてきたが、’93年頃から『5200の醸造元があれば5200様のシャンパンがある』ということもアピールするようになった。」の記載がある(甲24)。
セ 世界の名酒事典
(ア)「世界の名酒事典’80改訂版」(昭和55年5月30日株式会社講談社発行)の248頁には、「スパークリング・ワイン」の見出しの下に「グラスに注ぐと、軽やかな細かい泡が立つ、華やかなワイン。発泡酒といわれ、第二次発酵ののち、グラスに注いだとき泡立つワインをいう。シャンパンがその代表で、別格扱いされているが、世界のワイン地帯には、ほとんどある。」の記載があり、「シャンパンの故郷ランス」の見出しの下に、シャンパンの特徴や製造法及び地理についての記載がある(甲25の1)。 (イ)「世界の名酒事典」の’82-’83年度版、’84-’85年度版、’87-’88 年版、’90年版ないし2014年版においてもほぼ同内容の記載があり、製品の紹介がされている(甲25の2ないし26)。 (ウ)「世界の名酒事典’90年版」(平成元年12月22日株式会社講談社発行)の7頁ないし13頁には、「シャンパンの楽しみ」と題して対談が記載され、215頁には、「ワインの法律」の見出しの下に「ヨーロッパではEC(欧州共同体)においてワイン法を制定し、加盟各国はこれに基づいてそれぞれ国内法を設けている。」の記載、ECのワイン法に基づく品質区分例として、「フランス」における「指定地域優良ワイン」は「V.D.Q.S.ワイン」と「A.O.C.ワイン」と記載され、「ワインのタイプ」の見出しの下に、スパークリング・ワイン(発泡性ワイン)について「シャンパンに代表されるように、発酵中の炭酸ガスを瓶の中に閉じ込めて、発泡性をもたせたワイン。ただし、シャンパンは原産地呼称法上定められた名称で、フランスのシャンパーニュ地方産に限られる名称。」の記載がある(甲25の5)。
(エ)「世界の名酒事典’94年版」(平成4年12月9日株式会社講談社発行)の12頁及び13頁には、映画にかかわるシャンパンについて、例えば、「『肉料理には赤いワイン、魚には白いワイン、そして恋にはシャンパンを』といったのは『昼下がりの情事』(57年、ビリー・ワイルダー監督)のオードリー・へプバーン。」のように多数紹介されている(甲25の9)。
(オ)「世界の名酒事典2000年版」(平成11年11月15日株式会社講談社発行)の16頁ないし22頁には、「ミレニアム・シャンパーニュ紀行」の見出しの下に、シャンパンメーカー及びシャンパーニュ地方についての記載がある(甲25の15)。
ソ 「The 一流品 決定版」(昭和61年4月17日読売新聞社発行)の260頁には、「スパークリングワイン/シャンパン」の見出しの下に「スパークリングワイン、発泡性で炭酸ガスを多量に含んだワインである。いちばん有名なのがシャンパン。フランスではマルヌ、オーブ、エーヌ、セーヌ・エ・マルヌ四県のぶどう畑でとれたものを原料にしたものだけをほんとうのシャンパンと証明している。祝祭典や結婚式、誕生日など華やいだ場所で乾杯用として使われる、歓びを演出する酒でもある。」と記載され、以下に著名なシャンパンが紹介され(甲26の1)、同誌PART2(昭和62年4月20日発行)、PART3(昭和63年5月6日発行)及びPART4(平成元年6月16日発行)にも同様の趣旨の記載がある(甲26の2ないし4)。
タ 「家庭画報特選 Made in EUROPE ヨーロッパの一流品 女性版」(昭和57年11月1日株式会社世界文化社発行)の198頁には、「“女性を美しくする唯一の飲み物”-シャンパン」の見出しの下に「シャンパンという名称は、フランスのシャンパーニュ地方で造られる発泡性ワイン(スパークリング・ワイン)の総称で、それ以外のものは単にスパークリングと呼ばれます。」と記載され、製品が紹介されている(甲27)。
チ 「家庭画報編 女性版 世界の特選品’84」(昭和58年11月1日株式会社世界文化社発行)の217頁には、「CHAMPAGNE シャンパン」の見出しの下に「パリから170キロ東の、ランスより南一帯がシャンパーニュ地方。ここでつくられる発泡性ワインがシャンパンです。」の記載がある(甲28)。
ツ 「男の一流品大図鑑’86年版」(昭和60年12月1日株式会社講談社発行)の191頁には、CHAMPAGNE(シャンパン)が一流品の一つとして紹介されており(甲29)、同誌’87年版及び’88年版においても同様にCHAMPAGNE(シャンパン)が一流品の一つとして紹介されている(甲30及び甲31)。
テ 「はじめてのシャンパン&シェリー」(平成11年株式会社宙出版発行)の22頁には、「シャンパンの定義」の見出しの下に「シャンパンというと、発泡性ワインの代名詞のようなイメージがありますが、正確には、フランスのシャンパーニュ地方で伝統的な醸造法を用いて造られた発泡性ワインのみを指します。シャンパンの規定は、フランスワイン法(AOC)で細かく定められます。シャンパーニュ地方で栽培されたブドウを用いること,伝統的なシャンパーニュ方式で製造すること、製造の全工程を指定地域内で行うことなど、さまざまな条件を満たすことが義務付けられています。ほかの国や地域で、シャンパンと同様の製法を用いた発泡性ワインが造られたとしても、それをシャンパンと呼ぶことはできないのです。」と記載され、132頁には、「一目で分かるシャンパンのデータ」の見出しの下に、1998年における上位10カ国へのフランスからの国別出荷量等がグラフにより示されており、我が国への出荷量については、イギリス、ドイツ、アメリカ、ベルギー、スイス、イタリアに次いで多く298万本(750ml、以下同じ。)であること及びフランスからの総出荷量は、1993年が22909万本、1998年が29246万本であって、この間ゆるやかに上昇を続けている旨が記載されている(甲32)。
ト 新聞掲載
(ア)昭和64年1月5日付け日本経済新聞夕刊には、「シャンパン(産地)」の見出しの下に「シャンパンはフランス・シャンパーニュ地方で造られたスパークリングワイン(発泡酒)のこと。グラスに注ぐと軽やかな細かい泡が立つ華やかなワインだ。シャンパーニュ地方はパリの北東、約百七十キロにあり、同国のブドウ産地では最も北に位置する寒い地域」の記載がある(甲33の1)。
(イ)平成元年6月13日付け日本経済新聞夕刊には、「シャンパン人気急上昇中-発泡性ワイン、輸入量5割増(アーバンNOW)」の見出しの下に「現在ではフランスの原産地名称国立研究所(INAO)により、『シャンパン』と名のれるのはその“生誕地”シャンパーニュ地方の発泡性ワインのみと規定されている。」の記載がある(甲33の2)。
(ウ)平成2年1月11日付け日本経済新聞夕刊には、「くらしアラカルト」において「シャンパン」の見出しの下に「炭酸ガスを含む発泡性ワインは各国にあるが、『シャンパン』を名乗れるのはフランスのシャンパーニュ地方産だけ。・・・最近のパーティーブームに加えて、昨年4月の酒税改正で2割程度価格が下がったことから、人気急上昇。」の記載がある(甲33の3)。
(エ)平成2年1月27日付け朝日新聞には、「シャンパンの輸入量、90年の日本は66%増(情報ファイル・国際)」の見出しの下に「日本の昨年のシャンパン輸入が初めて100万本を突破し、前年に比べて実に66.65%増の128万本に達した・・・日本の輸入の伸び率は世界一。輸入量も、カナダの147万本に次いで世界第10位にのし上がった。」の記載がある(甲33の4)。
(オ)平成2年11月16日付け朝日新聞には、「商品の外国地名使用ご用心(素顔のウルグアイ・ラウンド)」の見出しの下に「ワインだけでなく、ウイスキーについても、世界的に知られるようになった産地名は、『知的所有権』のひとつ、商標などとして保護されるべし、というのだ。アルコール類などの『産地名』に対する保護は、欧州諸国が約100年前につくったマドリード協定でうたわれている。『シャンパン』と『スパークリング・ワイン』との区別も、この協定に沿ったものだ。」の記載がある(甲33の5)。
(カ)平成3年4月27日付け朝日新聞には、「スパークリングワイン 手ごろな値段で楽しめる(カタログ)」の見出しの下に「シャンパンはシャンパーニュ地方で、瓶内発酵法によってつくるなど、法律で基準が細かく決まっており、この地方以外でつくられるスパークリングワインをシャンパンと呼ぶのは禁止されている。」の記載がある(甲33の6)。
(キ)平成4年7月27日付け毎日新聞夕刊には、「バルセロナ五輪・第2日 ワインの里を疾走--女子自転車・個人ロードレース」の見出しの下に「『シャンパン』はフランスのシャンパーニュ地方だけで作られるワインの発泡酒の名称。」の記載がある(甲33の7)。
(2)小括
上記(1)によれば、「Champagne」の語は、(ア)フランス北東部の地名であり、同地で作られる発泡性ぶどう酒を意味する語であること、(イ)生産地域、製法、生産量など所定の条件を備えたぶどう酒についてだけ使用できるフランスの原産地統制名称であること、(ウ)「Champagne」(シャンパン)が発泡性ぶどう酒を代表するほど世界的に著名であること、(エ)我が国において「Champagne」を表す邦語として「シャンパン」が普通に使用されていること、(オ)我が国において数多くの辞書、辞典、事典、書籍、雑誌及び新聞などにおいて「シャンパン」についての説明がなされていること、(カ)世界の名酒事典などにおいて「シャンパン」の具体的製品が紹介されていること、(キ)我が国の1998年におけるシャンパン輸入量が世界第7位で298万本(750ml)と多いことなどが認められ、これらを総合すると、「Champagne」(シャンパン)の文字は、我が国において、本件商標の登録出願時(平成26年10月16日)前には、「フランスのシャンパーニュ地方で作られる発泡性ぶどう酒」を意味するものとして、一般需要者の間に広く知られており、この著名性はその後登録査定時(同27年1月29日)においても継続していたというのが相当である。そして、「Champagne」の片仮名表記である「シャンパン」の片仮名も、「Champagne」の欧文字と同様であって、ワインという商品分野に限られることなく、一般消費者に対しても高い顧客吸引力が化体するに至っていると認められる。
2 原産地統制名称又は原産地表示の統制と保護
フランスにおいては、1935年に制定された原産地統制呼称法(Appellation d'Origine Controlee)(甲6ないし甲8、甲14、甲15、甲18、甲25の5の215頁、甲33及び甲37等)により、優れた産地のぶどう酒を保護・管理することを目的として、原産地統制呼称制度(AOC制度)が制定され、フランスにおける原産地統制呼称(“Appelation d 'Origine Controlee”)の保護とその活動を行う政府の機関として、国立原産地品質研究所が設立され、同機関は、2007年1月に「国立原産地・品質研究所」(略称「I.N.A.O.」)に組織変更された。
また、フランスシャンパーニュ地方における酒類製造業者の利益の保護、シャンパーニュ原産地の名称の保護を目的として、「シャンパーニュ地方ぶどう酒生産同業委員会」(略称「C.I.V.C.」)が設立された(甲2ないし甲5、甲24及び甲33)。
原産地統制名称ぶどう酒(A.O.C.)は、原産地、品質、最低アルコール含有度、最大収穫量、醸造法等の様々な基準に合うように製造されなければならず、その基準に合格してはじめてA.O.C.名称を使用することができる(甲3、甲7、甲18)。
以上のとおり、ヨーロッパでは、原産地表示保護のための独自の制度を設けることにより、原産地表示を手厚く保護しており(甲10)、「Champagne」(シャンパン)は、最も厳しい基準を要求される「保護原産地呼称」として認定され、ヨーロッパにおいて保護されている(甲11)。
そして、申立人らは、「Champagne」(シャンパン)表示が有する上記のような周知著名性や信頼性を損なわないよう、シャンパーニュ地方のぶどう生産者やぶどう酒製造業者を厳格に管理・統制し、厳格な品質管理・品質統制を行ってきたものであり、このような、申立人らをはじめとするシャンパーニュ地方のぶどう生産者やぶどう酒製造業者らの努力、さらには、フランス国民の絶え間ない努力により、「Champagne」(シャンパン)表示の周知著名性が蓄積・維持され、それに伴って高い名声、信用、評判が形成されているものである。
3 商標法第4条第1項第7号該当性について
本件商標は、「シャンパンフローラルの香り」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中の「シャンパン」の文字部分は、「フランスのシャンパーニュ地方で作られる発泡性ぶどう酒」を意味する語として著名であり、構成中の「フローラルの香り」の文字部分は、「花のような香り」ほどの意味合いを有する語であって、その指定商品中の化粧品、せっけん類や入浴剤(医療用のものを除く。)等の分野における商品に多く採用される香りであり、指定商品の品質を表示する部分といえる(甲46の1ないし5)から、本件商標の構成においては、「シャンパン」の文字部分が強く印象づけられるとみるのが相当である。
そして、「Champagne」(シャンパン)の語は、「フランスのシャンパーニュ地方で作られる発泡性ぶどう酒」を意味するものとして本件商標の登録出願時及び登録査定時はもとより、その後においても我が国の一般需要者の間に広く知られていること、フランスシャンパーニュ地方のぶどう生産者・ぶどう酒製造者が長年その土地の風土を利用して優れた品質の発泡性ワインの生産に努めてきたこと、フランスが国内法令を制定し、1935年以降申立人らが中心となって原産地名称を統制、保護してきた結果、その著名性が獲得されたこと、さらに、「シャンパン」の語からは、「Champagne」以外の観念を想起させるものとは認められないことを併せ考慮すれば、たとえ、本件商標の指定商品がワインとは異なる分野の商品であるとしても、「シャンパン」の文字を含む本件商標は、「シャンパン」及び「Champagne」の文字の著名性や顧客吸引力にただ乗り(フリーライド)したり、または、希釈化(ダイリューション)するおそれがあり、また、シャンパーニュ地方のぶどう生産者及びぶどう酒製造者はもとより、国を挙げてぶどう酒の原産地名称又は原産地表示の保護に努めているフランス国民の感情を害し、我が国とフランス政府の友好関係にも影響を及ぼしかねないものであり、国際信義に反するものというべきである。
以上の点を総合すれば、本件商標は、公正な取引秩序を乱し、国際信義に反するものであるから、商標法第4条第1項第7号に該当する。

第4 商標権者の意見
本件商標権者は、上記第3の取消理由の通知に対して、何ら意見を述べていない。

第5 当審の判断
本件商標についてした上記第3の取消理由は、妥当であって、本件商標の登録は、その理由に示すとおり、商標法第4条第1項第7号に違反してされたものであるから、同法第43条の3第2項の規定により、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2016-04-20 
出願番号 商願2014-87361(T2014-87361) 
審決分類 T 1 651・ 22- Z (W03)
最終処分 取消  
前審関与審査官 海老名 友子 
特許庁審判長 青木 博文
特許庁審判官 平澤 芳行
田中 亨子
登録日 2015-02-13 
登録番号 商標登録第5740238号(T5740238) 
権利者 株式会社桃谷順天館
商標の称呼 シャンパンフローラルノカオリ、シャンパンフローラル 
代理人 稲葉 良幸 
代理人 山口 現 
代理人 佐藤 俊司 
代理人 山口 現 
代理人 田中 克郎 
代理人 田中 克郎 
代理人 池田 万美 
代理人 稲葉 良幸 
代理人 池田 万美 
代理人 佐藤 俊司 

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