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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W25 審判 全部申立て 登録を維持 W25 審判 全部申立て 登録を維持 W25 審判 全部申立て 登録を維持 W25 審判 全部申立て 登録を維持 W25 審判 全部申立て 登録を維持 W25 審判 全部申立て 登録を維持 W25 |
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管理番号 | 1315893 |
異議申立番号 | 異議2015-900276 |
総通号数 | 199 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2016-07-29 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2015-08-28 |
確定日 | 2016-05-19 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第5766788号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第5766788号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第5766788号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成26年12月26日に登録出願、第25類「下着,被服」を指定商品として、同27年4月15日に登録査定、同年5月29日に設定登録されたものである。 第2 引用商標 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が登録異議の申立ての理由として引用する登録商標は、以下のとおりであり、いずれも現に有効に存続しているものである。 1 国際登録第1149708号商標(以下「引用商標1」という。)は、「ALESSANDRO DEL PIERO」の欧文字を書してなり、2012年10月30日にItalyにおいてした商標登録出願に基づきパリ条約第4条による優先権を主張し、2012年(平成24年)11月7日に国際商標登録出願、第9類、第14類、第16類、第25類、第28類及び第41類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、平成26年4月4日に設定登録されたものである。 2 国際登録第1149709号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲2のとおりの構成からなり、2012年6月7日にItalyにおいてした商標登録出願に基づきパリ条約第4条による優先権を主張し、2012年(平成24年)11月7日に国際商標登録出願、第9類、第14類、第16類、第25類、第28類及び第41類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、平成26年4月4日に設定登録されたものである。 以下、これらをまとめて「引用商標」という。 第3 登録異議の申立ての理由 申立人は、本件商標について、商標法第4条第1項第7号、同項第8号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであると申立て、その理由を以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第18号証を提出した。 1 本件商標について 本件商標は、2つの欧文字「D」を重ね合わせた記号の下に「DOLCE DEL PIERO」の欧文字をサンセリフ様のフォントで表し、さらにその下に、小さく「ドルチェ デル ピエロ」の片仮名を通常書体で書してなり、第25類「下着,被服」を指定商品として、平成26年12月26日に株式会社フリーアドヴァンスにより出願され、平成27年5月29日に設定登録、平成27年6月30日に商標登録公報が発行されたものである(甲1)。 2 引用標章について 「Del Piero」の欧文字(以下「引用標章1」という。)又は「デルピエロ」の片仮名(以下「引用標章2」という、引用標章1と併せて「引用標章」という。)は、我が国を含む世界中で著名であるイタリアのサッカー選手「Alessandro Del Piero」の姓である「Del Piero」及びこれを片仮名表記したものである(甲2)。 なお、申立人は、「Alessandro Del Piero」が設立し、その商品化等をマネジメントする会社である。 3 商標法第4条第1項第8号について (1)引用標章の著名性について 引用標章は、イタリアのサッカー選手「アレッサンドロ・デル・ピエロ(Alessandro Del Piero)」の略称として、我が国でも著名である。「アレッサンドロ・デル・ピエロ(Alessandro Del Piero)」は、1991年からイタリアにおいてプロサッカー選手としてのキャリアをスタートし、1993-1994年シーズンにはイタリアの一部リーグ「セリアA」の強豪チーム「ユベントス」に移籍、2010年までプレーしてセリアAでの最多得点記録を更新、また、FIFAワールドカップには日韓大会を含む1998年、2002年、2006年と3大会連続で出場しており、本人が親日家であり(甲2)、日本語のブログを開設し(甲3)、キャラクター商品も販売していることから(甲4)、我が国においてもサッカー愛好家、サッカーに関心をよせる人々を中心として広く一般に知られるに至っている。ちなみに、インターネットで「Del Piero」、「デルピエロ」の欧文字又は片仮名を検索すると、いずれも真っ先に「アレッサンドロ・デル・ピエロ」が検索され、人名としては「アレッサンドロ・デル・ピエロ」のみが検索され、さらに日本における使用状況を表す片仮名の検索結果では「アレッサンドロ・デル・ピエロ」に関するもののみが検索される(甲5、甲6)。この結果からは、「Del Piero」、「デルピエロ」の文字は、イタリアのサッカー選手である「アレッサンドロ・デル・ピエロ(Alessandro Del Piero)」と一義的に結びついており、我が国おいては「Del Piero」、「デルピエロ」の文字は「アレッサンドロ・デル・ピエロ(Alessandro Del Piero)」を指し示すものとして認識されていることを示すものである。 さらに、有名なサッカー選手を紹介する「サッカー名選手館」には、デルピエロが世界で最も魅力的なプレーヤーの1人として紹介されており(甲7)、テニスのウィンブルドン選手権に観戦に多くの著名人が訪れたとしてデルピエロが紹介されている(甲8)。また、現在でも、スーパーゴール集としてデルピエロのゴールシーンが紹介されており、「日本でも人気のある選手のひとり」であると紹介されている(甲9、甲10)。さらに、デルピロは日本の佐賀県でサッカー教室を開催し(甲11)、その著書が日本でも販売されているほか(甲12)、レプリカユニホームが多数販売されている(甲13)。 本件においては、上記事実関係によれば、1991年からイタリアにおいてプロサッカー選手としてのキャリアをスタートし、1993-1994年シーズンにはイタリアの一部リーグ「セリアA」の強豪チーム「ユベントス」に移籍、2010年までプレーしてセリアAでの最多得点記録を更新、また、FIFAワールドカップには日韓大会を含む1998年、2002年、2006年と3大会連続で出場しているほか、日本語ブログを開設し、自身のキャラクター商品を販売し、その著作による書籍を販売し、サッカー教室を開催するなどして、雑誌、新聞等で度々取り上げられており(上記各号証の記事)、引用標章は、我が国のサッカーファンをはじめとして、一般に広く浸透し、よく知られているといえる。これによれば、引用標章は、イタリアのサッカー選手である「アレッサンドロ・デル・ピエロ(Alessandro Del Piero)」を指し示すものとして一般に受け入れられているものといえる。 (2)商標法第4条第1項第8号該当性について 本件商標は、上記の構成よりなり、イタリアのサッカー選手「アレッサ ンドロ・デル・ピエロ(Alessandro Del Piero)」の略称である引用標章を含む商標である。また、「アレッサンドロ・デル・ピエロ(Alessandro Del Piero)」は、本件商標権者に承諾を与えていない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当する。 4 商標法第4条第1項第7号について 上記のように、引用標章は、イタリアのサッカー選手である「アレッサンドロ・デル・ピエロ(Alessandro Del Piero)」を指し示すものとして一般に受け入れられているものといえる。 他方、本件商標は、上記の構成よりなり、引用標章を「DOLCE」、「ドルチェ」の文字と組み合わせてなる。これは、イタリア語で「甘い菓子、デザート類」との意味を有するもの(甲14)であり、サッカーの一流プレーヤーとしてはイメージのよくないものである。 また、「DOLCE」、「ドルチェ」は、イタリアを代表する世界的なラグジュアリー(高級)ファッションブランドであるドルチェ&ガッバーナのイタリア人デザイナーのドメニコ・ドルチェの略称である(甲15、甲16)。 このような著名な人名の略称を2つ組み合わせて使用することは、その名声、名誉を傷つけるおそれがあるばかりでなく、公正な取引秩序を乱し、社会公共の利益に反し、ひいては公序良俗を害する行為というべきであるから、商標法第4条第1項第7号に該当する。 5 商標法第4条第1項第15号について 上記のように、引用標章は、イタリアのサッカー選手である「アレッサンドロ・デル・ピエロ(Alessandro Del Piero)」を指し示すものとして一般に受け入れられており、我が国おいても、サッカー愛好家やサッカーに関心をよせる需要者の間では周知著名となっている。 本件商標は、上記構成よりなるところ、記号部分と文字部分は、その構成上分離観察され、さらに引用標章が周知であること、及び「甘い菓子、デザート類」との意味を有するイタリア語「DOLCE」、「ドルチェ」とは何らの関連性はなく、ドルチェ&ガッバーナのイタリア人デザイナーのドメニコ・ドルチェとも全く無関係である。 したがって、本件商標からは「DEL PIERO」、「デル ピエロ」が分離観察され、称呼及び観念において共通する。 また、引用標章は、サッカー愛好家やサッカーに関心を持つ需要者には、世界的なサッカー選手として周知著名であり、かつ、我が国においては一種の造語と把握認識される。 さらに、本件商標の指定商品は「下着,被服」であり、引用標章にかかるキャラクター商品とは重複しており、需要者も相当部分が共通する。 以上の事情に照らせば、本件商標を「下着,被服」に使用するときは、その取引者及び需要者において、その商品がイタリアのサッカー選手である「アレッサンドロ・デル・ピエロ(Alessandro Del Piero)」と関係がある営業主の業務に係る商品と広義の混同を生じるおそれがあるということができる。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。 6 商標法第4条第1項第19号について 上記のように、引用標章は、イタリアのサッカー選手である「アレッサンドロ・デル・ピエロ(Alessandro Del Piero)」の本国であり、サッカーの盛んな強豪国であるイタリアにおいては、サッカー愛好家やサッカーに関心をよせる需要者を超えて、一般人の間においても周知著名となっていることが優に推認され、また、引用標章は、キャラクター商品としても使用されていることから、イタリアにおける需要者の間に広く認識されている商標といえる。 また、本件商標からは「DEL PIERO」、「デル ピエロ」が分離観察されるから、両者は称呼及び観念を共通にして類似する。 そして、引用標章は、イタリアのサッカー選手の周知著名な略称であること、かつ、主として被服に使用されているキャラクター商標(標章)であり、「DOLCE」、「ドルチェ」がイタリアを代表する世界的なラグジュアリー(高級)ファッションブランドであるドルチェ&ガッバーナのイタリア人デザイナーのドメニコ・ドルチェの略称であること、さらに、本件商標の指定商品が両方に関連する「下着,被服」であることを考慮すれば、かかる組合せは、これらの2つの商標(標章)の周知著名性を十分に認識しながら、その信用、名声に便乗して利益を得ようとする不正の目的が推認されるものである。 あるいは、本件商標は、これら2つの周知著名な商標(標章)を組み合わせて一種のパロディとして使用するものであり、その周知著名性を利用し、あやかって利益を得ようとするものといえ、いずれにしても不正の目的をもって使用するものである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。 7 商標法第4条第1項第11号について 上記のように、本件商標からは「DEL PIERO」、「デル ピエロ」が分離観察され、「デルピエロ」の称呼及びイタリアのサッカー選手である「アレッサンドロ・デル・ピエロ(Alessandro Del Piero)」の観念が生じる。 他方、引用商標1及び2からは、「ALESSANDRO DEL PIERO」の欧文字に相応して、イタリアのサッカー選手である「アレッサンドロ・デル・ピエロ(Alessandro Del Piero)」の観念が生じ、かかる人名は一般的に「デルピエロ」と省略されて呼ばれることから「アレッサンドロデルピエロ」の称呼のほか、「デルピエロ」の称呼が生じる。 よって、本件商標と引用商標1及び2は、称呼及び観念が共通し、「アレッサンドロ・デル・ピエロ(Alessandro Del Piero)」の周知著名性及び人名の識別力の強さを考慮すれば、観念の共通性が全体に与える影響は極めて強いことから、外観の相違を凌駕して、本件商標と引用商標1及び2とは全体として類似する。 また、本件商標と引用商標1及び2は、指定商品について「被服」が重複する。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。 第4 当審の判断 申立人は、本件商標が商標第4条第1項第7号、同項第8号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号に該当すると主張しているので、以下、検討する。 1 引用標章の著名性について (1)申立人の主張及び同人の提出に係る証拠によれば、以下の事実を認めることができる。 ア 「Alessandro Del Piero」は、イタリア出身のサッカー選手であり、申立人は、「Alessandro Del Piero」が設立し、その商品化等をマネジメントする会社である。 イ 2013年12月19日付けの「【衝撃サッカー動画】まだまだ衰え知らず!デル・ピエロ選手のファンタジスタぶりを見せつけるビューティフルゴールがすごい!!」の見出しのウェブサイトの記事において、「アレッサンドロ・デル・ピエロ選手」が「デル・ピエロ選手」と称されている事実が認められる(甲10)。 ウ 「ぴあ関西版WEB」のウェブサイトにおいて、「デルピエロも真剣モード!7月24日(水)キックオフ、サガン鳥栖vsシドニーFC」の見出しの記事において、「アレッサンドロ・デル・ピエロ」が「デルピエロ」と称されている事実が認められる(甲11、合議体注:日付及び曜日から、平成25年7月24日の記事と推認される。)。 エ 「Amazon.co.jp」のウェブサイトにおいて、2013年7月1日発行の「アレッサンドロ・デル・ピエロ(著)、Alessandro Del Piero(原著)」の書籍「デル ピエロ 真のサッカー選手になるための10の心得」が販売されている事実が認められる(甲12)。 なお、申立人は、「Alessandro Del Piero」について書かれたウェブサイトの写し(甲2、甲7?甲9)、「アレッサンドロ・デル・ピエロ」と称する日本語の公式ブログの写し(甲3)、「Del Piero」及び「デルピエロ」のインターネットにおける検索結果(甲5、甲6)を提出しているが、いずれも、本件商標の登録査定後に印刷されたものである。 また、Tシャツ、キャップ、ボール等の商品が販売されているウェブサイトの写し(甲4)は、引用標章の使用が明らかではなく、「DEL PIERO」の文字が表示されたユニフォームが販売されているウェブサイトの写し(甲13)は、申立人との関係が不明なものであり、いずれの証拠も、本件商標の登録査定後に印刷されたものである。 (2)「アレッサンドロ・デル・ピエロ(Alessandro Del Piero)」の略称について 「アレッサンドロ・デル・ピエロ(Alessandro Del Piero)」は、上記(1)アないしエのとおり、我が国において、「デル・ピエロ選手」や「デルピエロ」と称されているほか、愛称(ニックネーム)が「アレ」、「アレックス」、「ピント(ゥ)リッキオ」である事実が認められる(甲2、甲7)。なお、外国における略称は明らかでない。 (3)「Del Piero」及び「デル ピエロ」の文字について 「Del Piero」の文字は、「(デル・ピエロという)姓」を表すイタリア語であり、「デル ピエロ」の文字は、その読みを表したものであるから、引用標章は、イタリア人の姓を表したものである。 (4)小括 上記(1)アないしエの事実からは、本件商標の登録出願日前に、我が国において、「アレッサンドロ・デル・ピエロ(Alessandro Del Piero)」が「デル・ピエロ選手」や「デルピエロ」と称されていたこと、及び、「アレッサンドロ・デル・ピエロ(Alessandro Del Piero)」の自著の「デル ピエロ」という書籍が発行されていたことがうかがえるとしても、我が国において、これらの略称が「アレッサンドロ・デル・ピエロ(Alessandro Del Piero)」を表すものとして、どの程度知られていたかを把握することはできない。 また、上記(1)アないしエの事実からは、本件商標の登録出願日前に、我が国において、申立人が、いずれの商品に引用標章を使用したかの事実が明らかではなく、その売上げ、シェア、宣伝広告の態様、期間等を具体的に把握し得る証拠の提出もない。 加えて、上記(2)のとおり、「アレッサンドロ・デル・ピエロ(Alessandro Del Piero)」の略称は、我が国において複数あるものであり、また、上記(3)のとおり、引用標章は、イタリア人の姓を表したものであるが、我が国において引用標章がイタリア人の姓を表すものとして広く知られているとはいい難いものである。 以上を総合的に考慮し、判断すると、引用標章は、本件商標の登録出願時及び登録査定時に我が国において、イタリア出身のサッカー選手である「アレッサンドロ・デル・ピエロ(Alessandro Del Piero)」の略称を表示するものとして著名になっていたものと認めることができず、また、申立人の商品を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることもできない。 さらに、申立人は、外国における引用標章の周知性について立証していないから、引用標章が外国における需要者の間に広く認識されているとも認めることができない。 2 「DOLCE」及び「ドルチェ」について 申立人の提出に係る証拠によれば、国語辞書において、「ドルチェ【(イタリア)dolce】」について、「甘い菓子、デザート類」との記載がある(甲14)。 その他の証拠は、「ドルチェ&ガッバーナ」のオンラインストアのウェブサイトの写し(甲15)及び同ブランドについて書かれたウェブサイトの写し(甲16)であるものの、本件商標の登録査定後に印刷されたものである。 そして、当審が職権をもって調査しても、イタリアのファッションブランドである「DOLCE&GABBANA」(ドルチェ&ガッバーナ)は、ドメニコ・ドルチェとステファノ・ガッバーナによって創立されたとの事実は認められるものの、「DOLCE」及び「ドルチェ」の文字が、ドメニコ・ドルチェの略称として、我が国において広く認識されていたとの事実を認めることはできない。 そうすると、「DOLCE」及び「ドルチェ」の文字が、「甘い菓子、デザート類」の意味を有するイタリア語及びその読みとして、我が国において、認識される場合があるとしても、ドメニコ・ドルチェの略称として、我が国の需要者の間に広く認識されていたものとはいうことはできない。 3 本件商標と引用標章の類否について (1)本件商標について 本件商標は、別掲1のとおり、2つの欧文字「D」からなるモノグラム図形の下に、「DOLCE DEL PIERO」の欧文字を大きく書し、その下に「ドルチェ デル ピエロ」の片仮名を小さく書してなるところ、該片仮名は、欧文字の読みを特定するものと無理なく理解させるものである。 そして、上記のとおりの構成からなる本件商標は、欧文字部分において、同じ書体、同じ大きさで外観上まとまりよく表されているものであり、かつ、これから生じる「ドルチェデルピエロ」の称呼もよどみなく一連に称呼し得るものである。 また、上記1及び2のとおり、その構成中、「DOLCE」及び「ドルチェ」の文字部分は、「甘い菓子、デザート類」の意味を有するイタリア語及びその読みとして、我が国において、認識される場合がある一方、「DEL PIERO」及び「デル ピエロ」の文字部分は、イタリア人の姓を表すイタリア語及びその読みとして、我が国において広く知られているとはいい難いものであるから、本件商標全体として、直ちに特定の意味合いを認識、理解させるものとはいえない。 そうすると、本件商標は、「ドルチェデルピエロ」の称呼を生じ、また、特定の観念を生じないものである。 (2)引用標章について 引用標章1は、「DEL PIERO」の欧文字を、また、引用標章2は、「デルピエロ」の片仮名を書してなるところ、「デルピエロ」の称呼を生じ、イタリア人の姓を表すイタリア語及びその読みとして、我が国において広く知られているとはいい難いものであるから、特定の観念を生じないものである。 (3)本件商標と引用標章の類否について 本件商標と引用標章を比較すると、両者は、外観において、構成文字及び態様の相違により、外観上相紛れるおそれはない。 次に、称呼において、本件商標から生じる「ドルチェデルピエロ」の称呼と引用標章から生じる「デルピエロ」の称呼は、語頭における「ドルチェ」の音の有無という顕著な差異に加え、構成音を異に有するものであり、それぞれを一連に称呼するときは、全体の語感、語調が相違し、明瞭に聴別し得るものであるから、両者は、称呼上相紛れるおそれはない。 また、観念において、本件商標及び引用標章は、いずれも特定の観念を生じないものであるからから、観念上相紛れるおそれはない。 なお、申立人は、本件商標から、「DEL PIERO」及び「デル ピエロ」が分離観察される旨述べているが、上記構成及び称呼において、これに接する取引者、需要者が「DEL PIERO」及び「デル ピエロ」の文字部分に着目し、当該文字部分から生じる称呼のみをもって取引に資するというよりは、その文字部分の構成全体をもって一体不可分のものと認識し、把握するとみるのが自然であり、他に、殊更「DEL PIERO」及び「デル ピエロ」の文字部分のみが独立して認識されるとみるべき特段の事情は見いだせないものである。 したがって、本件商標は、引用標章とは、外観、称呼及び観念のいずれの点からみても、相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。 4 商標法第4条第1項第8号該当性について 本件商標は、上記3(1)のとおり、その構成において、「DEL PIERO」の欧文字及び「デル ピエロ」の片仮名を有するものの、上記1のとおり、引用標章は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、イタリアのサッカー選手である「アレッサンドロ・デル・ピエロ(Alessandro Del Piero)」の略称として、我が国において著名であったとはいえないから、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当するものではない。 5 商標法第4条第1項第7号該当性について 本件商標は、上記3(1)のとおりの図形、欧文字及び片仮名からなるところ、その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような図形及び文字からなるものではなく、また、その構成において、「DEL PIERO」の欧文字及び「デル ピエロ」の片仮名を有するものの、上記1のとおり、引用標章は、イタリアのサッカー選手である「アレッサンドロ・デル・ピエロ(Alessandro Del Piero)」の略称として、我が国において著名であったとはいえないから、それを指定商品に使用しても、社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反するとはいうことができないし、イタリア若しくはイタリア国民を侮辱し、又は国際信義に反するものということはできない。 さらに、本件商標は、他の法律によって、本件商標の使用等が禁止されているものではなく、また、本件の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くというところがあるというべき事情は見いだせない。 そうすると、本件商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標というべきものではない。 なお、申立人は、本件商標は、著名な人名の略称を2つ組み合わせていること、また、「DOLCE」及び「ドルチェ」の文字はイタリア語で「甘い菓子、デザート類」の意味を有するものであり、サッカーの一流プレーヤーとしてはイメージのよくないものであることから、これを使用することは、その名声、名誉を傷つけるおそれがあるばかりでなく、公正な取引秩序を乱し、社会公共の利益に反し、ひいては公序良俗を害する行為というべきである旨述べている。 しかしながら、上記1及び2のとおり、引用標章並びに「DOLCE」及び「ドルチェ」は、いずれも特定の人名の略称として、我が国において広く知られているとはいえないものであるから、「DOLCE」及び「ドルチェ」の意味合いに関わりのないものである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するものではない。 6 商標法第4条第1項第15号該当性について 上記1及び3のとおり、引用標章は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されているとはいえず、かつ、本件商標と引用標章とは非類似の商標であるから、本件商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者をして、引用標章を連想、想起することはなく、該商品が申立人又は同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、その出所について混同を生じるおそれはないというべきである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものではない。 7 商標法第4条第1項第19号該当性について 上記1及び3のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用標章が申立人の業務に係る商品を表示するものとして、日本国内及び外国における需要者の間に広く認識されているとはいえず、かつ、本件商標と引用標章とは非類似の商標である。 また、申立人の提出に係る証拠を総合してみても、本件商標が、引用標章の信用、名声に便乗して利益を得ようとする不正の目的をもって使用をするものと認めるに足る具体的な事実を見いだすことはできない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当するものではない。 8 商標法第4条第1項第11号該当性について (1)引用商標1について 引用商標1は、「ALESSANDRO DEL PIERO」の欧文字を書してなるところ、その構成中、「ALLESSANDORO」の文字は、「(アレッサンドロという)男性の名」を表すイタリア語(株式会社小学館「伊和中辞典第2版」)である。 また、「DEL PIERO」の文字部分は、「(デル・ピエロという)姓」を表すイタリア語である。 そうすると、引用商標1は、我が国において広く親しまれているローマ字読みに倣って、「アレッサンドロデルピエロ」の称呼を生じ、また、イタリア人の名と姓を表したものではあるものの、人物の特定ができるとまではいえないことから、特定の観念を生じるとはいえないものである。 (2)引用商標2について 引用商標2は、別掲2のとおり、欧文字のサインとおぼしき筆記体風文字の下に、数字の「10」のような文字を書しているようにみえるものであるが、いかなる文字を表したものであるかを直ちに理解することは困難であり、構成全体が図形として認識されるにとどまるものであるから、特定の称呼及び観念を生じないものである。 (3)本件商標と引用商標1の類否について 本件商標と引用商標1を比較すると、両商標は、その全体の外観において、図形の有無、構成文字及び態様の相違により、相紛れるおそれのないこと明らかである。 次に、称呼において、本件商標から生じる「ドルチェデルピエロ」の称呼と引用商標1から生じる「アレッサンドロデルピエロ」の称呼を比較すると、その構成音数及び構成音の差異により、明瞭に聴別し得るというべきであるから、両商標は、称呼上相紛れるおそれはない。 また、観念において、本件商標及び引用商標1は、いずれも特定の観念を生じないものであるから、観念上相紛れるおそれはない。 したがって、本件商標と引用商標1は、外観、称呼及び観念のいずれの点からみても、相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。 (4)本件商標と引用商標2の類否について 本件商標と引用商標2を比較すると、両商標は、外観において、一見して区別し得る明らかな差異を有するから、外観上相紛れるおそれはない。 次に、称呼において、本件商標から「ドルチェデルピエロ」の称呼を生じるのに対し、引用商標2は称呼を生じないから、称呼上相紛れるおそれはない。 また、観念において、本件商標及び引用商標2は、いずれも特定の観念を生じないものであるから、観念上相紛れるおそれはない。 そうすると、本件商標と引用商標2は、外観、称呼及び観念のいずれの点からみても、相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。 (5)小括 (3)及び(4)のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。 9 まとめ 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第8号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号のいずれにも違反して登録されたものではないから、同法第43条の3第4項により、維持すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
別掲1 本件商標 別掲2 引用商標2 |
異議決定日 | 2016-05-09 |
出願番号 | 商願2014-111312(T2014-111312) |
審決分類 |
T
1
651・
262-
Y
(W25)
T 1 651・ 22- Y (W25) T 1 651・ 271- Y (W25) T 1 651・ 261- Y (W25) T 1 651・ 222- Y (W25) T 1 651・ 23- Y (W25) T 1 651・ 263- Y (W25) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 浦崎 直之 |
特許庁審判長 |
大森 健司 |
特許庁審判官 |
平澤 芳行 大橋 洋子 |
登録日 | 2015-05-29 |
登録番号 | 商標登録第5766788号(T5766788) |
権利者 | 株式会社フリーアドヴァンス |
商標の称呼 | ドルチェデルピエロ、ドルチェ、デルピエロ、デイデイ |
代理人 | 恩田 誠 |
代理人 | 恩田 博宣 |