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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない X43
管理番号 1315853 
審判番号 取消2014-300350 
総通号数 199 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2016-07-29 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2014-05-13 
確定日 2016-05-30 
事件の表示 上記当事者間の登録第5212767号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件商標は、「雅山」及び「Gazan」の文字を2段に横書きしてなり、平成20年4月16日に登録出願、第43類「飲食物の提供,業務用加熱調理機械器具の貸与,業務用食器乾燥機の貸与,業務用食器洗浄機の貸与,加熱器の貸与,調理台の貸与,流し台の貸与,タオルの貸与」を指定役務として、同21年3月13日に設定登録されたものである。
なお、本件審判の請求の登録は、平成26年5月30日にされたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、「商標法第50条第1項の規定により、本件商標の指定役務中、第43類『飲食物の提供』ついての登録を取り消す。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、審判請求書、弁駁書、口頭審理陳述要領書及び上申書において、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第8号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、「飲食物の提供」について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、商標法第50条第1項の規定によりその登録は取り消されるべきである。

2 弁駁書における主張
被請求人は、乙第1号証ないし乙第5号証を根拠として、商標「雅山」が飲食物の提供について、少なくとも2010年以降より現在まで使用中であると主張する。
しかしながら、いずれの証拠も、商標「雅山」の使用とは認められるべきものではない。
(1) 同意契約書(乙1)の存在は認める。
(2)被請求人は、株式会社雅山(代表取締役 X)が運営する飲食店の店舗のウェブサイト(乙2)を根拠に、その店舗の名称が「雅山 GARDEN」である点を主張するが、これは認め、また、同ホームページ内で「GAZAN」の文字が表示されている点も認める。
しかしながら、これを根拠に「雅山」が商標として使用されていると主張する点は争う。
ウェブサイト内において、被請求人が主張する「GAZAN」が表示されている部分は、店舗の外観や店内の様子が表示される部分であり、店舗の雰囲気や印象をわかりやすく表現している部分である。いわば同ウェブサイトをスタイリッシュに表示するためのデザインとして機能している部分に過ぎない。このような箇所にのみ表示されている文字が識別標識として機能しているとは考えるべきではない。むしろ、同ウェブサイトの各ページヘッダ左上に常に表示されている「雅山 GARDEN」部分が店舗名すなわち自他識別標識として機能している、すなわち商標として使用されていると考えるべきである。
また、同ウェブサイトの「アクセス」のページ内に表示されている「米沢牛料理店雅山 GARDEN」(http://gazan.jp/access.shtml)も識別標識として機能している表示であって、商標として使用されていると考えるべきである。
「雅山 GARDEN」及び「GAZAN GARDEN」と本件商標とは、「GARDEN」の有無の相違により、「社会通念上同一と認められる商標」に該当しないことは明らかである。むしろ、外観、称呼及び観念のいずれも異なる「非類似の商標」である。
(3)被請求人は、ウェブサイト「食ベログ」(乙3)を根拠に、店舗の名称が「雅山 GARDEN」である点を主張するが、これは認める。また、同サイトに店舗正面に「雅山」の看板が掲げられている写真が掲載されていること認める。
しかし、この写真を根拠に「雅山」が商標として使用されていると主張する点は争う。
飲食店の情報サイトにおいては、店舗の雰囲気や提供される料理が一目でわかりやすいように、店内の雰囲気やメニューの一例の写真を掲載することが一般的に行われている。ウェブサイト閲覧者は、当該写真をその店舗が自身の趣味や利用する目的に合致するか否かの判断のために使用すると考えるのが自然であり、その店舗の名称が何であるかを当該写真中の小さな文字をもって確認するとは極めて考えにくい。当該写真は単なるイメージ写真として認識され、店舗の雰囲気のみが伝えられていると考えるべきである。
したがって、掲載写真の中の1枚に「雅山」の文字が表示されていても、その「雅山」の文字が他の店舗を区別するための識別標識として機能していると考えるのは妥当でない。
むしろ、1頁目の左上部分に大きく表示されている「雅山 GARDEN(ガザンガーデン)」の表示部分こそが、識別標識として認識されており、商標として使用されていると考えるべきである。なお、実際にウェブサイト「食ベログ東京」内で「麻布十番」と「焼肉」で検索をかけると店舗名「雅山 GARDEN」として検索結果が表示されることから、店舗名は「雅山 GARDEN」であり(この点は被請求人も認めている)、使用されている商標も「雅山 GARDEN」であることは明らかである(甲2)。
(4)乙第5号証ウェブサイト「YAHOO!ロコJAPAN」についても(3)と同様である。また、乙第5号証に掲載されている写真がいつ、誰によって撮影されたものか不明であるため、写真自体には証拠能力がないと考える。
(5)被請求人は、「Rettyグルメ」のウェブサイト(乙4)を根拠に、「六本木 雅山」の名称で飲食店を営業していると主張するが、当該ウェブサイトの掲載情報を参照すると「雅山 GARDEN」と同一住所であるため、実質的に「雅山 GARDEN」自体の内容である。推察するに、相当に古い情報(例えば「雅山 GARDEN」に改称する前の古い店名が掲載され続けられてしまっているなど)が考えられる(インターネットの店舗情報無料掲載サービスは無数にあるため、登録した全ての情報を最新のものに更新できているとは限らない)。
したがって、乙第4号証のみをもって「六本木 雅山」の名称で飲食物の提供を行っているという主張は認められない。同店舗の名称は「雅山 GARDEN」のみである。
また、被請求人は、店舗正面に「雅山」の看板が提示されている写真を根拠に商標「雅山」が使用されている旨を主張するが、この写真は上述したように店舗のイメージを表しているにすぎず、インターネット閲覧者がこの写真内の看板から店舗名称が「雅山」と認識し他店と識別しているとは考えられない。

3 口頭審理陳述要領書(平成27年5月21日)における主張
(1)被請求人は、ウェブサイト「食ベログ」に関するプリントアウト乙第6号証ないし乙第14号証を提出したが、いずれも商標の使用を示す事実の立証とはならない。
「食ベログ」の公式ウェブサイト( http://user-help.tabelog.com/review_guide/ )(甲3)の口コミガイドラインによると、「食ベログ」の口コミ情報は、客観的な事実、正確な日時等の情報を収集・掲載することを目的とするものではなく、ユーザーの個人的かつ主観的な感想程度の内容であって、かつ、運営主体は、その内容や投稿写真等が事実に基づくものであるか否か一切確認を行っておらず、またその内容・情報について全く保証もしなければ、一切の責任を持つこともない、という情報である。
乙第7号証ないし乙第14号証を確認すると、投稿者の氏名は匿名とされ、性別と居所(都道府県まで)以外は全く不明で人物の特定が不可能である。さらに、登録されている写真について、被請求人は「雅山」が大きく表示されていることから商標の使用は明らかであると繰り返し主張するが、いずれの写真も撮影者や撮影日等の情報、すなわち証拠として成立するために必要とされる情報はその一切が不明であり、「食ベログ」運営者もそのような事実の裏付けを全く確認しないまま掲載している。
すなわち、「食ベログ」内のユーザーによる口コミは、投稿者や投稿内容(店舗訪問日時、記事内容の正確性、写真の情報等の全て)において、事実確認が一切行われていない、極めて信用性の低い情報にすぎないのである。仮に、レストランのガイドブックやTVの取材等の情報などであれば、その掲載内容について出版社・放送局・制作会社等がその情報について責任をとるものであるから、掲載されている内容が基本的に事実に基づくものといえるが、「食ベログ」内の口コミはそれらとは全く性質が異なり、少なくとも何らかの証明や確認に用いられる性質のものではない。
(2)乙第1号証によると、「第1項 移管の内容について」の「1.商標と店舗名称」の規定おいて、「実施権の有効期間は当該店舗が『雅山』の名称で営業を行っている期間、有効なものとする。」と定められているところ、被請求人は、株式会社雅山が「雅山 GARDEN」の店舗名称で営業していると繰り返し主張し、その証拠として乙第2号証ないし乙第5号証を提出している。
被請求人自ら、店舗名称は「雅山」でなく「雅山 GARDEN」であると認めており、かつ、この点については請求人も同意できるので、店舗名称は確かに「雅山 GARDEN」であるというべきである。そのため、同意契約書によれば通常使用権は消滅しており、株式会社雅山は審判の請求の登録前3年より前からすでに通常使用権者でないというべきである。これを裏付けるように、被請求人から提出される資料は、乙第1号証を除きいずれもインターネットから誰でも入手できる情報のみであり、株式会社雅山から提供された取引書類は一切提出されていない。
以上より、審判の請求の登録前3年より前からすでに通常使用権者の地位を失っていた株式会社雅山による商標の使用に関する証拠は、いずれも本件商標の使用の証拠とはなり得ない。

4 上申書(平成27年7月1日)における主張
(1)本件上申書の主張の要旨は、株式会社雅山は、遅くとも2011年(平成23年)3月より「雅山 GARDEN」の店舗名で飲食店を現在まで営業しており、「雅山」の店舗名称は一切使用していないので、乙第1号証の契約書に規定されるとおり、株式会社雅山は2011年3月以降は本件商標の通常使用権者の立場にはなく、株式会社雅山がいかなる商標を使用しようとも本件商標の使用とはいえない。したがって本件商標は取り消されるべきである、というものである。
なお、株式会社雅山が2011年3月より「雅山 GARDEN」の店舗名で営業していることを証明する証明書を受領したので、その原本を甲第6号証として提出する。
(2)被請求人は、乙第1号証の契約書の趣旨について、商標「雅山」に化体した業務上の信用を維持することを目的とするもの、と主張するが、本契約書の目的は、契約書1頁目「前段:目的」に明確に記載されているとおり、店舗「雅山」の営業権及び不動産以外の物件の迅速な継承(特定承継)が、有限会社雅山から株式会社雅山へ行われることを目的とするものである。そのため、商標権の実施権(使用権)は、権利の移転手続が完了するまでの経過措置として、暫定的な権利として許諾されたにすぎない、と理解すべきである。
これは、第1項内の「1.商標と店舗名称」において、「基本的に営業権の譲渡に伴っての移管が望ましいが、甲事情によって完全移管が出来ない場合は以下のように処する」として、営業権の譲渡同時に商標権も完全移管されることが規定されていることからも明らかである。
上記規定によれば、本来、有限会社雅山は株式会社雅山へ商標権を速やかに移転する義務があり、さらに移転が完了するまでの経過措置として通常使用権の設定登録を行う義務があったのである。
しかしながら、商標登録原簿によると、実際には権利の移転登録も通常使用権の設定登録もされていない。譲受人たる株式会社雅山がこのような手続を行わずに放置するとは考えづらいので、譲渡人たる有限会社雅山が債務を履行せず、移転手続等に協力しなかったものと容易に推察できる。
このように、乙第1号証の契約は、商標「雅山」に化体した業務上の信用を維持することを目的とするという抽象的なものでなく、有限会社雅山から株式会社雅山へ商標権を譲渡するという具体的な目的・手続が定められた契約である。
(3)被請求人は、乙第1号証の契約書の趣旨が商標「雅山」に化体した業務上の信用の維持を目的とすることであることからすれば、「雅山 GARDEN」は、商標「雅山」に付加的な「GARDEN」の文字を追加したにすぎず、実質的に「雅山」と同一・類似の商標であるとし、飲食店は「雅山」の名称で運営されていると考えるべきである、と主張する。
しかし、上述したように、契約書の趣旨は有限会社雅山から株式会社雅山へ商標権等を正常かつ迅速に承継するという具体的な目的・手続等を定めているのである。そのため、契約書の趣旨と商標の類似の解釈とは全く関係のない問題である。そのため、商標「雅山」と「雅山 GARDEN」の同一・類似を判断するにあたり、契約の趣旨を持ち出すこと自体、極めて不合理である。
ここで、契約書の文言の解釈は、原則として文言どおりに行うべきであり、恣意的に拡大・縮小解釈すべきではない。乙第1号証の文言は、「実施権の有効期間は当該店舗が『雅山』の名称で営業を行っている期間、有効なものとする」と明確に規定されており、決して「雅山の文字を含む名称」と規定されているわけではない。被請求人は、この規定を「当該店舗が『雅山の文字を含む名称』」と恣意的に拡大解釈するために、契約書の趣旨が商標「雅山」に化体した業務上の信用の維持を目的とするものであると主張しているとしか考えられない。「『雅山』の名称で…」を「『雅山の文字を含む』名称で…」のつもりであったならば、契約書の締結前にそのような文言に修正するよう協議すべきであったのである。契約締結後に、不利益を免れるために恣意的に拡大解釈を行うことは、契約当事者として不誠実であり、そのような身勝手な解釈は認められるべきでない(なお、移転等の手続に協力していない点で十分に不誠実である)。
さらに被請求人は、「雅山 GARDEN」の「GARDEN」部分は「付加的な」言葉にすぎず、商標「雅山」の使用及び店舗名「雅山」の使用に他ならないと主張するが、これも誤りである。
被請求人は、例として「A」という名称に対し、「A1号店」、「A東京店」、「大阪A」等の例を挙げ、いずれも「A」と紛らわしいと主張するが、本件は「雅山」と「雅山 GARDEN」との関係を問題としているのであり、「雅山1号店」、「雅山東京店」、「大阪雅山」を問題としているのではない。具体例が極めて不適切であり、正面から議論するということ避けていると考えざるを得ない。また、別の例として「○○ガーデン」という表示は、各種店舗で良く使用され、又は庭等を併設している店舗名称によく使用されていると主張するが、その根拠や実際の具体例は何一つ示していない。なお、請求人が「雅山 GARDEN」の実店舗を訪問したところ、外庭や内庭の存在は確認できなかった。そのため、商標「雅山 GARDEN」の「GARDEN」の文字は役務の質等を表す言葉として機能していないことは明らかである。
そもそも「雅山 GARDEN」は、株式会社雅山が、指定役務を「第43類 飲食物の提供」として、2011年(平成23年)3月16日に出願し(この出願と同時期に株式会社雅山は店舗名称を「雅山 GARDEN」へ変更したのである)、拒絶理由通知等を受けることなく、同年8月26日に設定登録が認められている(商標登録第5434684号)。なお、請求人はこの出願の代理人の1人である(甲7)。
この点から、「雅山 GARDEN」は、「GARDEN」の有無において本件商標とは外観・称呼・観念のいずれも異なり、出所混同の生じ得ない非類似の商標であると特許庁により認められているのである。
したがって、「雅山 GARDEN」は本件商標とは明らかに非類似の商標であり、「雅山」の信用を利用するものではなく、店舗の名称も「雅山 GARDEN」のみである。被請求人による、契約書の誤った趣旨理解を前提として「雅山 GARDEN」の使用は「雅山」の使用と認識される、との主張は明らかに誤りである。
(4)被請求人は、本件の実施権(使用権)を認めないとの請求人の主張・認識は、契約の安定性や継続性を一切無視するもので、かつ取引の安全性や秩序を乱すものであるから認められるべきではないと主張する。
しかしながら、そもそも商標権の承継を行う契約を締結しておきながら、その義務を果たさず、債務不履行(正確には履行遅滞)としているのは被請求人である。(なお、契約に定められた対価500万円+月次売上1500万円を超えた部分の売上10%については、株式会社雅山は支払いを完了している)。したがって契約の安定性や継続性を一切無視し、取引の安全性や秩序を乱しているのは被請求人以外の何者でもない。
乙第1号証に示す契約が全て履行されていれば、株式会社雅山は本件商標の商標権者となり、店舗名や使用商標を「雅山」としたまま継続して使用できたはずである。しかし、被請求人による債務不履行のため、商標権の承継もされず通常使用権の登録も得られない状態となってしまったため、形式的に生じる商標権侵害の問題を回避すべく、やむを得ず、店舗名称を「雅山」から「雅山 GARDEN」へと2011年3月に変更するとともに、その使用の安全性・継続性を担保するために「雅山 GARDEN」の新規出願・登録を行ったのである。
しかしながら、株式会社雅山は、やはり「雅山」の店舗名や商標を正当に使用したいとの強い希望があるため、債務の履行を全く期待できない被請求人とのこれ以上の交渉・話し合いを断念し、新たなコストを負担してまで、請求人名義で「雅山」を新規に出願し(商願2014-42198、甲8)、また、請求人名義で本件不使用取消審判を請求したのである。
株式会社雅山が新規出願や本件審判の請求人となっていないのは、株式会社雅山が「雅山」商標を安全に使用可能になるということが大局的な目的であり、有限会社雅山と対立すること自体が目的でないため、なるべく当事者対立構造を避けるべく、株式会社雅山の代わりとして請求人が当事者となっているためである。請求人はこれまで何度も株式会社雅山と打ち合わせを行い本契約にまつわる諸事情を把握した結果、話し合いを断念し、やむを得ず不使用取消審判の請求を行わざるを得なかったのである。
したがって、乙第1号証の契約書の規定からも、本来正当に本件商標を使用できるのは株式会社雅山であり、被請求人ではない。
被請求人が本件商標の商標権者である限り、株式会社雅山はやむを得ず「雅山 GARDEN」を使用し続ける他ない。これは、本来保護されるべき者が不利益や新たな金銭的負担を強いられ、債務を履行しない者に権利が認められ利益が享受され続けるという極めて不合理な自体である。これは商標法第1条が定める商標法の趣旨にも反することとなると考える。
このような状況から、被請求人が契約の安定性、商取引の安全性、取引秩序を乱す、などを主張する権限が微塵もないことは容易に理解できるはずである。
(5)被請求人は、株式会社雅山か店舗名称として「雅山」のみならず「雅山 GARDEN」の双方を使用していると主張する。
しかしながら、正式な店舗名称が複数存在するということはありえない。 被請求人が平成26年8月6日付け答弁書で繰り返し主張し、また口頭審理陳述要領書において提出した証拠書類(乙7ないし乙14)の食ベログの表示に示されるとおり、株式会社雅山が運営する店舗の名称は「雅山 GARDEN」のみである。これらの証拠や陳述を撤回しないまま、店舗の名称が「雅山」と「雅山 GARDEN」の双方であるという主張は、契約書の「当該店舗が『雅山』名称で営業を行っている期間、有効なものとする」との被請求人にとって不都合な契約を無視するための後付けの主張である。このような後付けの「付加的な」主張を行うことこそ許されるべきではない。

5 まとめ
以上より、被請求人の主張はいずれも認められるべきではない。
よって、株式会社雅山に本件商標の通常使用権が存在しないことは明らかである。
したがって、本件商標は継続して3年以上商標権者又は使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、指定役務「第43類 飲食物の提供」は、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきである。

第3 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求め、審判事件答弁書、口頭審理陳述要領書及び上申書において、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第一号証ないし乙第十四号証を提出した(以下、乙第一号証ないし乙第十四号証の漢数字部分を、「乙第1号証」、「乙1」のようにアラビア数字で記載する。)。
1 答弁書における主張
(1)現在、本件の商標権に関しては、東京都世田谷区代沢3-26-11所在の株式会社雅山(代表取締役 X)に対して、「『雅山』営業譲渡に係る諸事移管の同意契約書」(乙1)に基づいて許諾している。
該契約書に基づき港区麻布台の店舗の営業権を被請求人から株式会社雅山に対して譲渡するものであり、その営業権の譲渡の移管に伴う契約を締結している。
したがって、第1項に定めるごとく、「商標登録上の実施権」を株式会社雅山に対して認めている。
なお、現在その登録に関しては未登録であるが、本契約に基づいて通常使用権が存在することは明確である。
また、本契約の締結者はYと株式会社雅山であるが、Yは被請求人である有限会社雅山の代表者であり、実質オーナーであるから、Yが有限会社雅山の代表者として提携した契約であり、実施許諾を認める権限を有するものとして契約したものであり、当然株式会社雅山も権限を認めて契約したものであるから、正当な契約として両者間の合意のもとに締結されているものである。
また、この契約は2010年2月28日に締結され、現在も有効である。
(2)この契約段階までは被請求人が東京都港区麻布台にて「雅山」名称の飲食店舗を営業しており、この営業活動を引き続いて同場所で飲食店舗の営業活動を継続しているものである(乙2)。
乙第2号証に明示していると共に肉料理及びこれに付随する飲食物の提供業務を行っていることは該使用権者のホームページを見れば一見して明白である。 特に営業主体は雅山代表としてX名での御挨拶が該店舗のホームページ(乙2)に明示されていることから、係る者である使用権者が使用していることは明白であり、係る代表者は第1号証に示す契約書の当事者と一致するものであるから、使用権者の使用である。
併せて店舗名称を「雅山 GARDEN」として営業していることが該店舗のホームページでも明確となっている。特に「雅山 GARDEN」の表示だけでなく同ホームページにおいて「GAZAN」という表示をしている個所が多数あり、使用権者が「雅山」商標の使用をしていることは明白である。
「雅山 GARDEN」のみならず「GAZAN」に関する各表示類は、「登録商標(書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標、平仮名、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生ずる商標、外観において同視される図形からなる商標その他の当該登録商標と社会通念上同一と認められる商標」(商標法第50条第1項)の使用に他ならないものである。
なお、乙第1号証として添付した東京都港区麻布台にて「雅山」名称の飲食店舗を営業している株式会社雅山の使用権者のホームページのアドレスは「 http://gazan.jp」である。
(3)次に、使用権者のホームページではなく、他社の宣伝用のホームページへの明示としては次のものが存在する。
まず「食ベログ」のホームページにも店舗紹介(乙3)を掲載しており、使用権者の「雅山 GARDEN」の飲食物の提供に関する業務を行っていることを広く明示している。特に、営業をしている店舗正面に「雅山」の大きな看板を提示して営業を行っている店舗の正面の写真が掲載されている(乙3)。
なお、ネット予約受付状況として8月から9月までの日付を明示したものがあり、現時点において少なくとも9月までは営業を行う予定であることも明白である。
また、2012年11月27日の日付のログもあり、これは2011年11月に訪問した時のログであることから、少なくとも2011年11月からは営業をしていることが明確となる。
したがって、使用権者である株式会社雅山が過去から現在まで「雅山」の使用を行っているものである。
次に「Rettyグルメ」のホームページにも店舗紹介(乙4)を掲載しており、このホームページにも使用権者の「六本木 雅山」の飲食物の提供に関する業務を行っていることを広く明示しているものであり、営業活動をしているほかに、前記と同様に店舗正面に「雅山」の大きな看板を提示して営業を行っている店舗の正面の写真が掲載されている(乙4)。また、該ホームページの口コミの欄にも多数の口コミが寄せられており、多数の人に飲食物の提供業務を行っていることが判明するものである。
さらに、「YAHOO! ロコ JAPAN」のホームページにも店舗紹介(乙5)を掲載しており、使用権者の「雅山 GARDEN」の飲食物の提供に関する業務を行っていることを広く明示しているものであり、営業活動をしているほかに、特に看板の写真が掲載されており、該看板には縦書きで大きく「雅山」と表示されている。少なくとも店舗の外に大きな縦型の看板を設置しており、該看板には「雅山」と明示されている状況が明確に示されている。さらに、前記と同様に店舗正面にも横書きで「雅山」と明示している大きな看板を用いていることが明確であり、併せて箸入れにも大きく太字で「雅山」と明示しているものである。
以上のように本件商標に関してはその使用権者が、「雅山」商標を飲食物の提供に関して使用していることが明確であり、少なくとも2010年以降より現在も使用中である。

2 口頭審理陳述要領書(平成27年5月7日)における主張
本件商標に係る使用権者である株式会社雅山が役務「飲食物の提供」について本件商標を本審判請求の登録日以前にも使用していることを立証する。
乙第2号証ないし乙第5号証は、2014年8月6日にプリントアウトした証拠であるが、この証拠に示すとおりに少なくとも本審判請求の登録日前3年以内には既にこの様な状態で使用を行ってきているものである。
(1)被請求人の使用を行っている店舗においては少なくとも本審判請求の登録日前3年以上前からほぼ同様の形態で営業を行っており、店内の装飾や活動に用いられる物品類もほぼ同様に使用してされているものである。
飲食店としての宣伝に良く用いられている「食ベログ」は、ユーザーの口コミであることからこのユーザーが使用した日付において営業を行っていること及びその時の状態等を立証することにより、本件商標に係る使用権者である株式会社雅山が役務「飲食物の提供」について本件商標を本審判請求の登録日以前にも使用していることを立証する。
ア 「食ベログ」とはいかなるものかを2015年5月5日にプリントアウトしたインターネット上において一般的に理解されている内容を乙第6号証によって示す。
プリントアウトした日付は本審判請求の登録日後であるが、2005年から変わらずに続けているものであり、内容がこの時点から変わったというものではない。
イ 2014年1月4日投稿で2013年12月に訪問した口コミ(乙7)には、店舗での営業がされていることを示す書き込みと、さらに訪問時の写真が明示されているから、少なくとも来店当日には飲食物の提供を行っていたことは明白である。
この中において箸袋に「雅山」と極めて大きく独特の書体と太字で明示すると共にその横に細字で小さくゴシック体で「GARDEN」と明示されている写真が2枚あり、さらに入口の店頭に「雅山」と大きな看板を示している写真があり、又店舗外においてビルの側壁に看板を設置しており、「雅山」と大きく電灯によって表示されている写真がでている。
これらの4つの写真をインターネット上のウェブサイトにおいてクリックするとこの4枚の写真のデータが示されるが、いずれも2013/12/29登録と示されており、写真撮影日を示すものとして十分に理解できると共に認識できるものである。なお、ホームページ上のデータとして2013/12/29登録と明記されているが、この部分のプリントアウトができなかったので、この表記の添付はない。
このことから使用権者が少なくともホームページへのデータ登録日である2013年12月29日にこれらの写真に示す事実があり、この役務提供時における「雅山」登録商標の使用として商標法第2条第3項第3号ないし同項第6号及び同項第8号のすべて又は一部に該当する使用を行っていたことは明白である。
ウ 2013年2月14日投稿で2012年12月に訪問した口コミ(乙8)には、店舗での営業がされていることを示す書き込みとさらに訪問時の写真が明示されている。
写真には箸袋に不鮮明ではあるが、「雅山」と極めて大きく独特の書体と太字で明示すると共に、その横に細字で小さくゴシック体で「GARDEN」と明示されており、この写真はコース料理を示す写真をクリックして大きく表示した際にあらわれるものであり、ホームページ上のデータとして2013/2/19登録と明記されている。なお、この部分のプリントアウトができなかったので、この表記の添付はない。
これから類推するに2012年12月ごろ一度訪問して、さらに2013年2月19日にも訪問の上12月の来訪の模様を2月14日に投降したものとみられるものである。
したがって、少なくとも本審判請求の登録日前3年以内に現実に営業活動である役務の提供が行われており、さらに「雅山」登録商標の商標法第2条第3項第3号ないし同項第6号及び同項第8号のすべて又は一部に該当する使用を少なくともしていることは明白である。
エ 2012年12月19日投稿で2012年12月に訪問した口コミ(乙9)には、店舗での営業がなされていることを示す書き込みとさらに訪問時の写真が明示されている。
写真には入口に「雅山」と極めて大きく明示した看板がでていることが示されており、特にこの写真の詳細を見るためにホームページ上の写真をクリックすると2013/2/19登録と明示されているが、この日付の部分はプリントアウトできなかったので、添付してはいない。
このことより2013年2月19日には通常と同様に役務の提供を行っていたと考えられる。
オ 2012年11月27日投稿で2011年11月に訪問した口コミ(乙10)には、店舗での営業がなされていることを示す書き込みと、さらに訪問時の写真が明示されている。
写真には入口に「雅山」と極めて大きく明示した看板がでていることが示されており、特にこの写真を詳細に見るとこのことが明確になると共に、添付してはいないがホームページ上の写真の詳細には2010/9/29登録となっている。
さらに、メニューにおいて「雅山特選牛」というメニューがあり、「雅山」という名称を前面に押し出して営業が行われていることが明確となっている。
このメニューを示した写真も前記と同様であるが、2012/11/27登録となっており、少なくともこの時点でも大々的に使用していたことが明確である。
このことより2010年9月29日と2012年11月27日には使用者が役務の提供を行っており、かつ「雅山」商標の使用として商標法第2条第3項第3号ないし同項第6号及び同項第8号に該当する使用を行っていたことは明白である。また、少なくとも店舗に出向いて飲食物の提供を受けた来店日として2011年11月には、この様な「雅山」商標の使用を行っていたものと十分に推定できる。
カ 2012年4月6日投稿で2011年10月に訪問した口コミ(乙13)には、店舗での営業がされていることを示す書き込みとさらに訪問時の写真が明示されている。
この写真は、登録データとして2012/04/06登録となっており、この日に撮影したものであると十分に推定できると共に、少なくとも来店日には、この様な「雅山」商標の使用が行われていたと推定できるものである。
さらに、「灸り」と説明のある写真をクリックすると、その写真内に「雅山」と表示された箸袋が写り込んでおり、「雅山」商標を使用していることは明白である。
したがって、2012年4月6日あるいは少なくとも2011年10月に使用権者が役務の提供を行っており、商標法第2条第3項第3号、同項第4号及び同項第6号の使用を行っていたことは明白である。
キ 2012年9月4日投稿で2012年8月に訪問したロコミ(乙11)、2012年5月3日投稿で現実の来店は2012年2月に訪問した口コミ(乙12)及び2011年12月13日投稿で現実の来店は2011年10月に訪問した口コミ(乙14)には、店舗での営業がされていることを示す書き込みがされているので、少なくともこの日付には前記と同様に飲食物の提供を行っていたと推認できる。
ク これらのデータのプリントアウトは本審判請求の登録日後となるが、少なくとも本審判請求の登録日前3年以内に現実に営業活動が行われており、かつ、「雅山」の使用を飲食物の提供に対して行っているものであることは明白である。
さらに前記各食ベログのデータに示すように使用権者は継続して飲食物の提供を行っており、使用状態を示す写真を鑑みれば、少なくともこれらの飲食物の提供が行われている際に写真に示す「雅山」商標の使用は常時行われていたことは明白である。
したがって、使用権者による飲食物の提供についてのこれらの「雅山」商標の使用は商標法第2条第3項第3号ないし同項第6号及び同項第8号の使用を行っているものである。
さらに、乙第2号証ないし乙第5号証に関しても、本審判請求の登録日前においてもほぼ同様の営業活動をしていたことは明白であるから、これらの証拠によっても使用していることは十分に推定できるものである。
(2)次に請求人は、被請求人の使用を立証している「雅山」は、法上の使用に該当しない旨主張している。
しかし、被請求人の示す各種証拠類を鑑みれば明確に「雅山」という商標が認識できるように使用しているものであり、十分に自他商品識別機能を発揮でき、業務上の信用が化体する状態で使用しているものである。

3 上申書(平成27年6月16日)における主張
請求人は、平成27年5月21日付の口頭審理陳述要領書で、通常使用権者の地位について、店舗名称は「雅山」でなく「雅山 GARDEN」である旨主張し、通常使用権の存在を立証する乙第1号証の「『雅山』営業譲渡に係る諸事移管の同意契約書」第1条の「実施権の有効期間は当該店舗が『雅山』の名称で営業を行っている期間、有効なものとする。」の条項に基づいて、「雅山 GARDEN」が店舗名称であることを理由として、本契約は無効である旨主張する。
該条項は契約の有効無効を決定する極めて重要な事項であり、その認定は厳格に判断することは極めて重要である。
すなわち、店舗の名称が「雅山」である場合には、本契約で定める内容に基づいて、従来、「雅山」名称での営業活動に基づいて化体した業務上の信用という保護法益を守りその業務上の信用を維持するものであるから、財産的価値を認め実施権を認めているものである。
よって、本契約は名称の使用継続である実施の権能を前提とした契約であり、この様な業務活動と一体となる「雅山」という名称の権益を保護し、将来に結び付けるための契約といわざるを得ない。
したがって、この様に化体している業務上の信用と全く異なる別の業務上の信用を新たに形作るような名称が全く異なるものとなった場合には、保護すべき内容が異なるものであり、もはや従来、維持してきた業務上の信用と全く異なる信用を化体する営業活動に他ならず、このような場合においては、本契約は有効なものではなくなることを示唆するものといわざるを得ない。
この場合、本契約における使用許諾は、従来、継続営業によって使用されてきた「雅山」に化体している「雅山」の業務上の信用が維持できる、あるいは、より拡大する使用を行っている場合にはもとより「雅山」の名称の営業を継続しているといわざるを得ない。すなわち、一般需要者が従来の営業活動と同視しうる、あるいは、関連していると認められる名称の使用を行っている営業の場合には、従来、化体している業務上の信用はそのまま維持され、さらには拡大していくものであることであり、「雅山」名称の営業を行っていることに他ならない。
これに対して、従前と比べ営業主体が全く異なる主体となる、あるいは、従前の営業内容と全く異なる営業となる等を含め、全く異なる名称での営業は従前のもとは異なるものであることが一般需要者をして認識できるものであれば、もはや従前の業務上の信用とは異なり、何ら従前の業務上の信用を維持するものではないことから、本契約を有効とはならず別異な新たな営業となるものといえる。
したがって、この様な場合には本契約の実施権はもはや有効とはいえないものとなる。
してみれば、そもそも本内容は、従前に「雅山」の使用を前提として「雅山」での営業を定めた契約であるのに対して、現時点でも、全く異なることなく「雅山」を使用して「雅山」として営業を行っているものである点でまったく相違点はない。
請求人は、「GARDEN」の表示が付いていることから、「雅山」の名称の使用ではない、すなわち、「雅山」を従前どおり全く変えずにそのまま使用し、さらに若干の間隔をあけて「GARDEN」を付加したことから「雅山」の使用ではない旨主張する。
しかしながら、「雅山」部分をそのまま使用すれば、従来から店舗に来店している顧客は従来とおり「雅山」名称の店舗に来店しているという当然の認識を有するものであり、この実施権を有する株式会社雅山も同様に従来、「雅山」名称に化体している業務上の信用を前提として名称の使用を継続していることは明白である。
また、「雅山」という名称の全体部分を全く同一にして、付加的に用語を用いて店舗名称として同一あるいはグループの名称を示すことは、商取引上多用されている行為である。例えば、グループのメイン名称をAという名称とする店舗において、A1号店やA東京店、A大阪、札幌A等としてグループ全体の一部の店舗名称としてAという共通の店舗名称を明示した上で、この店舗の差を明示するために該店舗名称に付加的に店舗毎の差別化をするための表示を付加して使用することは多用されているものであり、この様な場合には店舗の共通名称であるAという名称を統一して使用し、Aであることを明確に表示するために統一して使用するものである。さらに、○○ガーデンという表現もその場所を各種店舗で良く使用されるものであり、例えば、庭等を併設している店舗名称として庭のイメージを出すためにメイン名称にガーデンという表記を追加して使用する場合もある。
特に、通常は、メインの店舗名称の表示がより明確となるように字体を統一して使用するのに対して、付加的な事項に関しては、大文字と小文字を分けて区別しやすくして表示することや日本語と英文字とに分けて表示する場合、あるいはその表示自体の大きさを異なるものとし、使用することは一般的に良く行われるものである。共通の基本的な店舗名称を大きく一連で表示し、付加的な表示をやや離して小さく表示する等の事も多々行われている一般的な表示態様である。今回の表示はまさにこの対応であり、日本語と英文字とに区分けして「雅山」と離した状態で表示し、より印象付けて表示しているものであり、本店舗における従前からの使用により化体している「雅山」に対しての業務上の信用はそのまま十分に維持しているものである。
そして、特に店舗に訪れる者においても、本店舗が飲食物の提供を行っている「雅山」名称の店舗であることは明確に認識しているものである。
したがって、株式会社雅山で使用している使用態様として「雅山」単体での使用が明確に存在しているのもその証左でもある。
さらに、「GARDEN」が付加されている表示対応も存在することが、「雅山」の名称の使用をしていないことの立証となるものではない。
逆に「雅山」単体の名称の使用をしていることに対して「GARDEN」が付加されている表示対応も存在していることをもって、あたかも「雅山」単体の名称の使用の認識を全て消滅させるような表示と認識しなければならないような理由はー切ないものである。
したがって、「雅山」名称での営業の認識又は従来と変わらずに同一営業主体により同一のサービスの提供、すなわち、飲食物の提供を行っているものとの認識は全ての店舗利用者が当然に有する真っ当な認識に他ならない。
仮に何らかのサービスの内容に変化を有する印象を与えた場合であっても、前と同様の同一グループの営業活動に基づく従来の営業の継続であるとの認識を有するものに他ならない。
さらに、請求人の主張する「雅山 GARDEN」という表示は、一見して明確に「雅山」と「GARDEN」とを2つ用いて表示していることは明確である。
この構成から「雅山」と関係を全く有さない表示とみることは不可能といわざるを得ず、「雅山」のままの表示であり、業務主体は従前と全く同一と通常認識しうる「雅山」名称下での営業といえるものである。
百歩譲って「雅山 GARDEN」と認識した場合であっても、従前の「雅山」と関連を有する同一グループの名称とだれしもが認識する表示といわざるを得ない。
なお、この様に使用に際して多用される付加表現を付加した表示を使用したことをもって、基本的な部分を全く同一とする表示を全く異なる表示からなる別異なものとして取り扱い、乙第1号証に示す契約を無効として認識することは契約の安定性や継続性を一切無視した取引の安全性を阻害する主張といわざるを得ず、特に、継続的に長年使用して化体している多大な業務上の信用を一般的に多用されている方法で他の付加的事項を記載した表示があることを理由に実施権の有効性を認めないことは、商取引の安全性を阻害し、取引秩序を乱す許されざる認識といわざるを得ない。
しかして、株式会社雅山は、正当な実施権者であり、株式会社雅山による東京都港区麻布台で営業している飲食物の提供を行っている「雅山」店舗において「雅山」商標の使用をしているものである。
なお、株式会社雅山の使用に際して「雅山」のみならず「雅山 GARDEN」商標を使用しているものであり、店舗名称として考えても「雅山」のみならず「雅山 GARDEN」双方を使用しているものである。
特に「雅山 GARDEN」の使用であっても、「雅山」の部分を全く共通にしており、営業主体が異なるものとの認識は一切生ずるものではなく、「雅山」の一態様の名称の使用に他ならないものであって化体する業務上の信用はまさに同じものといわざるを得ない。
したがって、乙第1号証の「『雅山』営業譲渡に係る諸事移管の同意契約書」第1条の「実施権の有効期間は当該店舗が『雅山』の名称で営業を行っている期間、有効なものとする。」との条項の「当該店舗が『雅山』の名称で営業を行っている期間」に該当するものであって、実施権はまさに有効のものであることから、本件登録商標の商標権についての通常使用権が有効に存在し、株式会社雅山はこの通常使用権を有するものである。

第4 当審の判断
1 被請求人の提出に係る証拠によれば、次の事実を認めることができる。
(1)乙第1号証は、甲をY、乙を株式会社雅山(代表取締役 X)とする2010年2月28日付けの「『雅山』営業譲渡に関わる諸事移管の同意契約書」であるところ、次の記載がある。
ア 「目的」として、「甲と乙は、甲所有であった店舗『雅山』(以下本物件という)の営業権の譲渡に伴い、不動産契約以外の本物件の正常かつ迅速な継承を目的として必要な事項の合意を交わす。正常な継承の内容として、名称、設備等の移管と店舗としての信用性、認知度の継承も含まれるものとする。」の記載
イ 「第1項 移管の内容について」の項に、「1.商標と店舗名称」として、「基本的に営業権の譲渡に伴っての移管が望ましいが、甲事情によって完全移管が出来ない場合は以下のように対処する。甲は、乙が本物件を営むにあたり、店舗名称及び店舗関係物品に使用する名称として公に『雅山(がざん)』という名称を使用する商標登録上の実施権を乙に与える。実施権は甲の知的財産所有権に基づいて登記を行う。実施権の有効期間は当該店舗が『雅山』の名称で営業を行っている期間、有効なものとする。」の記載
ウ 「3.備品」として、「甲は、2010/1末日で引き上げた設備・備品の内、店舗運営上必要と判断するものを乙に移管する。」の記載
(2)乙第2号証は、2014年8月6日にプリントアウトした「 http://gazan.jp/ 」をアドレスとするホームページであり、各ページの先頭には「Yonezawa beef Restaurant」の文字の記載がある。
そして、1葉目は、「雅山GARDEN?焼肉 塩すきやき しゃぶしゃぶ」というタイトルのページであり、「毎月の29日は、雅山の『肉の日』です。」の記載、2葉目は、「アクセス-雅山GARDEN」というタイトルのページであり、「Yonezawa beef Restaurant」の文字の右側に四角枠内に「雅山」の文字(隷書体で表されている(以下、単に「隷書体」という。))が表示された写真が掲載され、「アクセス」として、「米沢牛料理店 雅山GARDEN」及び「東京都港区麻布台・・・」の記載、3葉目は、「ごあいさつ-雅山GARDEN」というタイトルのページであり、「ごあいさつ」の見出しで「オープン以来16年、雅山は毎日新たな気持ちでお客さまをお迎えしております。・・・雅山代表 X」の記載がある。8葉目は、「塩すきやき-雅山GARDEN」というタイトルのページであり、「Yonezawa beef Restaurant」の文字の下部に「GAZAN」及び「A LA CARTE」(最初の「A」の文字にアクサンテギュが付されている。)の記載、「お薦めコース」の見出しで「前菜盛合せ・雅山サラダ・デザート・・・」の記載があり、16葉目は、「お飲み物-雅山GARDEN」というタイトルのページであり、「Yonezawa beef Restaurant」の文字の下部に「GAZAN」及び「BEVARAGE & WINE」の記載、「ボトル」の見出しで「雅山オリジナル焼酎」等の記載がある。
(3)乙第3号証は、2014年8月6日にプリントアウトした食べログのウェブサイトであり、1葉目には、「雅山GARDEN(ガザンガーデン)」の見出しで、店舗正面に「雅山」(隷書体)の看板が掲げられた写真が掲載され、「雅山GARDEN ネット予約受付状況」として「8月-9月」「お盆休みのお知らせ 8月13日(水)?8月17日(日)の期間はお休みさせていただきます。」、「オープン以来16年、雅山は毎日新たな気持ちでお客さまをお迎えしております。・・・」の記載がある。(プリントアウト日が2014/08/06であり、また、8月13日が水曜日であることから、2014年8月6日時点でのお知らせと認められる。)。3葉目に、「店舗基本情報」として、「店名 雅山GARDEN (ガザンガーデン)」、「ジャンル 焼肉、しゃぶしゃぶ、すき焼き」、「住所 東京都港区麻布台・・・」及び「ホームページ http://gazan.jp/」の記載がある。
(4)2015年5月5日にプリントアウトした食べログのウェブサイトには、「雅山GARDEN(ガザンガーデン)」に関して、口コミとして次の投稿記事がある。
ア 乙第7号証の1葉目には、「贅沢な空間で米沢牛のすきやきを」の見出しで、「投稿:2014/01/04(2013/12訪問)」の記載、「すき焼きを食べたくて探したのがこちらの米沢牛の専門店」などの記載と共に、投稿写真として、壁に白地に黒字で大きく「雅山」(隷書体)の文字が表示された看板が掲げられた店舗正面の写真(7葉目の「店舗入り口」の写真(別掲1)、「米沢牛専門料理店 雅山」の文字(「雅山」の文字は隷書体)が表示された店舗外の看板の写真(8葉目の写真には、「米沢牛専門料理店」の文字と「雅山」の文字が縦2列に表示された看板とその後方に塔とおぼしき物が写っている(別掲2))が掲載されている。
なお、被請求人は、「これらのインターネット上のウェブサイトにおいてクリックすると写真のデータが示されるが、いずれも『2013/12/29登録』と示されており、写真撮影日を示すものとして十分に理解できると共に認識できるものである。なお、ホームページ上のデータとして『2013/12/29登録』と明記されているが、この部分のプリントアウトができなかったので、この表記の添付はない。」と述べているので、職権によりウェブサイト上の当該写真のデータを確認したところ、写真データにはいずれも「2013/12/29登録」と表示された。
以下、職権による確認を「(職権確認:写真の登録日は2013/12/29)」のように記載する。
イ 乙第8号証の1葉目には、「2013/02/14(2012/12訪問)」の記載と「一年半ぶりの雅山。おいしくいただきました。」の記載がある。
ウ 乙第9号証には、「雅山 で米沢牛を食す」の見出しで、「2012/12/19(2012/12訪問)」、「今日は雅山へ行ってきました 雅山は六本木にある塩すきやきで有名な米沢牛が売りのお店です。・・・コース内容は、・・・雅山サラダ・・・」の記載があり、投稿写真の内、店舗正面の写真(5葉目の写真)には「雅山」(隷書体)と表示されている(職権確認:写真の登録日は2012/12/19)。
エ 乙第13号証には、「接待向け 塩すき焼き」の見出しで、「2012/04/06(2011/10訪問)」、「塩すき焼きで有名な雅山」の記載がある。

2 以上のことから、次のように判断することができる。
(1)本件商標の使用について
ア 乙第2号証は、株式会社雅山の店舗のホームページ(http://gazan.jp/、2014年8月6日にプリントアウトしたもの。以下、「店舗ホームページ」という場合がある。)であり、「Yonezawa beef Restaurant」のタイトルの下、アクセスとして「米沢牛料理店 雅山GARDEN」及び「東京都港区麻布台・・・」の記載及び挨拶として「オープン以来16年、雅山は毎日新たな気持ちでお客さまをお迎えしております。・・・雅山代表 X」の記載があること、並びに、「X」は、株式会社雅山の代表取締役である(乙1)ことから、株式会社雅山は、2014年8月6日現在、米沢牛料理店を東京都港区麻布台において営業しており、16年間継続して営業していると認められる。
イ 乙第7号証は、「雅山GARDEN(ガザンガーデン)」の食べログの投稿記事であり、口コミとして、投稿日を2014/01/04、訪問日を2013/12として、「すき焼きを食べたくて探したのがこちらの米沢牛専門店。」などの記載と共に、投稿写真として、「雅山」(隷書体)の文字が表示された店舗正面の看板及び「米沢牛専門料理店 雅山」(「雅山」の文字は隷書体。)の文字が表示された店舗外のものと認められる看板が掲載されており、これらの写真の登録日は2013年12月29日であることから、2013年12月に、株式会社雅山が飲食物の提供を行っていたこと並びに店舗正面に「雅山」の文字が表示された看板及び店舗外に「米沢牛専門料理店 雅山」の文字が表示された看板を掲げていたことが認められる。(2)本件商標と使用商標について
本件商標は、上記第1のとおり、「雅山」の漢字及び「Gazan」の欧文字を2段に横書きしたものであるところ、本件商標の構成文字の「Gazan」が、「雅山」の称呼である「ガザン」をローマ字でそのまま表したものであることは明らかである。
そして、株式会社雅山が使用した商標は、店舗正面及び店舗外の看板に表示された隷書体の「雅山」の文字からなるところ、該文字は、本件商標の「雅山」の文字の書体を変えたにすぎない同一の文字であるから、株式会社雅山が使用していた「雅山」の商標は、本件商標と社会通念上同一の商標といえる。
(3)本件商標の使用時期について
上記(1)のとおり、株式会社雅山は、米沢牛の料理を提供する店の看板に「雅山」の文字を付して、それを2013年(平成25年)に展示していたといえ、これは本件審判の請求の登録(平成26年5月30日)前3年以内である。
(4)本件商標の使用者について
上記1(1)のとおり、2010年2月28日付けで有限会社雅山の代表者であるYを甲として、株式会社雅山(代表取締役 X)を乙として、「『雅山』営業譲渡に関わる諸事移管の同意契約」が締結され、該契約は、「目的」を「甲と乙は、甲所有であった店舗『雅山』(以下本物件という)の営業権の譲渡に伴い、不動産契約以外の本物件の正常かつ迅速な継承を目的として必要な事項の合意を交わす。正常な継承の内容として、名称、設備等の移管と店舗としての信用性、認知度の継承も含まれるものとする。」とし、「第1項 移管の内容について」において、「1.商標と店舗名称」として、「甲は、乙が本物件を営むにあたり、店舗名称及び店舗関係物品に使用する名称として公に『雅山(がざん)』という名称を使用する商標登録上の実施権を乙に与える。実施権は甲の知的財産所有権に基づいて登記を行う。実施権の有効期間は当該店舗が『雅山』の名称で営業を行っている期間、有効なものとする。」と定められているものである(乙1)。
そうすると、本件商標の商標権者である有限会社雅山は、株式会社雅山との間において、本件商標について、2010年2月28日付けで使用権の契約を締結したものであり、当該店舗が『雅山』の名称で営業を行っている期間において、株式会社雅山は、本件商標の通常使用権者と認められる。
(5)請求人の主張について
ア 請求人は、株式会社雅山が本件商標の通常使用権者であるか否かに関して、「株式会社雅山は、遅くとも2011年(平成23年)3月より『雅山GARDEN』の店舗名で飲食店を現在まで営業しており、『雅山』の店舗名称は一切使用していないので、乙第1号証の契約書に規定されるとおり、株式会社雅山は2011年3月以降、本件商標の通常使用権者の立場にはなく、株式会社雅山がいかなる商標を使用しようとも本件商標の使用とはいえない。」旨主張し、証拠として、平成27年6月23日付けの株式会社雅山の証明書(甲6)を提出している。
該証明書は、「株式会社雅山代表取締役Xは2011年(平成23年)3月より、同社が運営する米沢牛料理店を『雅山GARDEN』の名称にて営業していることを証明する」旨を内容とするものであり、株式会社雅山代表取締役の署名及び捺印がある。
イ しかしながら、食べログの投稿記事によれば、2013年12月に、株式会社雅山が店舗外に「米沢牛専門料理店 雅山」の文字が表示された看板を掲げており(乙7)、また、2012年12月及び2013年12月に、店舗正面に「雅山」の文字が表示された看板を掲げていた(乙9、乙7)といえるものである。
そして、店舗を訪れた者が「一年半ぶりの雅山。おいしくいただきました。」(2014年2月14日投稿(2012/12訪問)乙8)、「雅山で米沢牛を食す」(2012年12月19日投稿(2012/12訪問)乙9)、「塩すき焼きで有名な雅山」(2012年4月6日投稿(2011/10訪問)乙13)のように、「雅山」と記載していることからすれば、需要者が「雅山」で飲食物の提供を受けたと認識している状況がうかがえる。
ウ さらに、2014年8月6日時点の店舗ホームページ(乙2)において、株式会社雅山代表Xの「あいさつ」として、「オープン以来16年、雅山は毎日新たな気持ちでお客さまをお迎えしております。雅山代表 X」と記載している。
そして、店舗ホームページにおいて、「Yonezawa beef Restaurant」の文字の右側の四角枠内に「雅山」の文字(隷書体)が表示された写真が掲載されているが、四角枠内と「雅山」の文字(隷書体)部分は、「雅山GARDEN」に関する食べログのウェブサイト(乙3)の写真中の「雅山」の文字(隷書体)が表示された店舗正面の看板と同じものと認められるから、株式会社雅山は、2014年8月6日においても店舗ホームページに、店舗正面の「雅山」の文字が表示された看板の写真を掲載していると認められる。なお、請求人は、乙第3号証において、店舗正面に「雅山」の看板が掲げられている写真が掲載されていることを認めている。
そして、店舗正面に「雅山」の文字が表示された看板の写真は、乙第9号証にも掲載されており、写真の食べログへの登録日は、2012年12月19日であるから、株式会社雅山は、少なくとも2012年12月頃から2014年8月頃まで、店舗正面に「雅山」の文字が表示された看板を掲げていたといえる。
また、店舗ホームページにおいて、「毎月の29日は、雅山の『肉の日』です。」の記載、掲載された写真には、メニューとして「GAZAN A LA CARTE」、「雅山サラダ」、「雅山オリジナル焼酎」の記載があり、「GAZAN」及び「雅山」の文字が使用されている。
エ 上記イ及びウ並びに「『雅山』営業譲渡に関わる諸事移管の同意契約」において、「正常な継承の内容として、名称、設備等の移管と店舗としての信用性、認知度の継承も含まれるものとする。」及び「甲は、2010/1末日で引き上げた備品、設備の内、店舗運営上必要と判断するものを乙に移管する。」との記載があることを総合的に勘案すれば、株式会社雅山は、店舗として「雅山」の信用性、認知度を継承し、「雅山」の看板や店舗の運営に必要な備品も継承し、継続して使用しているといえ、2014年8月6日時点においても、店舗名を「雅山」として営業していると需要者に理解させる状況にあるといえる。
オ したがって、店舗ホームページや食べログの見出しに「雅山GARDEN」の文字が使用されているとしても、株式会社雅山は、少なくとも2012年12月頃から2014年8月頃において米沢牛料理店を「雅山」の名称で営業していないということはできないから、請求人の主張は採用できない。
(6)小活
上記(1)ないし(4)によれば、本件商標の通常使用権者である株式会社雅山は、本件審判の請求の登録(平成26年5月30日)前3年以内に、その請求に係る指定役務「飲食物の提供」について、本件商標と社会通念上同一の商標を付した看板を掲げていたと認められる。
そして、この通常使用権者の行為は、商標法第2条第3項第8号の「役務に関する広告に標章を付して展示する」行為に該当する。

3 まとめ
以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、通常使用権者が、その請求に係る指定役務について、本件商標(社会通念上同一の商標を含む。)の使用をしていたことを証明したものということができる。
したがって、本件商標は、商標法第50条の規定により、その請求に係る指定役務についての登録を取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲1 店舗入り口
(1)



(2)参考(看板部分の拡大)




別掲2 店舗外の看板
(1)



(2)参考(看板部分の拡大)





審理終結日 2015-10-29 
結審通知日 2015-11-02 
審決日 2016-04-20 
出願番号 商願2008-29806(T2008-29806) 
審決分類 T 1 32・ 1- Y (X43)
最終処分 不成立 
前審関与審査官 堀内 真一吉澤 拓也 
特許庁審判長 大森 健司
特許庁審判官 土井 敬子
原田 信彦
登録日 2009-03-13 
登録番号 商標登録第5212767号(T5212767) 
商標の称呼 ガザン、ミヤビヤマ 
代理人 旦 武尚 
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