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審決分類 審判 全部無効 商標の周知 無効としない W28
審判 全部無効 商3条柱書 業務尾記載 無効としない W28
管理番号 1315731 
審判番号 無効2015-890018 
総通号数 199 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2016-07-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2015-03-02 
確定日 2016-04-08 
事件の表示 上記当事者間の登録第5695905号商標の商標登録無効審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 審判費用は,請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5695905号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲(1)のとおりの構成よりなり,平成26年4月3日に登録出願,第28類「釣り具」を指定商品として,同年8月5日に登録査定,同年8月22日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が本件商標の登録無効の理由に引用する商標は,請求人提出に係る商標目録に記載の「引用商標」であり,その構成は,別掲(2)のとおりである(本審決においても,以下「引用商標」という。)。

第3 請求人の主張
請求人は,「本件商標の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めると申し立て,その理由を次のように述べ,証拠方法として,甲第1号証ないし甲第21号証(枝番を含む。なお,当事者が提出した証拠において枝番を有するものについて,枝番を記載しないときは,枝番の全てを含むものである。)を提出した。
1 請求の理由
本件商標の登録は,以下の理由により,商標法第3条第1項柱書及び同法第4条第1項第10号に違反してされたものであるから,同法第46条第1項第1号により無効にすべきものである。
(1)商標法第3条第1項柱書について
ア 本件商標及び他の商標登録出願について
本件商標の商標権者(以下,単に「商標権者」という。)は,本件商標を平成26年4月3日に登録出願した(甲1)。また,同年4月17日に,「DRIFTER」,「OZMA」,「RODEO」,「ZORO」の各文字及び請求人の会社名である「シービーワン」の文字よりなる商標について,指定商品を「釣り具」として登録出願をした(甲3?甲7)。
イ 商標権者の警告
(ア)商標権者は,同人が代表者を務める有限会社RAIGA(以下「RAIGA社」という。)の名称をもって,平成26年2月27日頃に,請求人に対し,商品名に関する問い合わせを行い(甲8),請求人が,同年3月12日付けの書面において,善意で使用したものである旨を回答した(甲9)。
(イ)その後,商標権者は,RAIGA社による平成26年3月14日頃発送の書面をもって,請求人に対し,「RAIGA」の文字よりなる商標(登録第4810612号:甲2,以下「別件商標」という。)の商標権に基づいて,請求人の引用商標について,使用の中止を求める旨の警告をした。なお,同書面には,商標権者の2種類の名刺が添付されていた(以上,甲10)。
しかし,別件商標は,指定商品を「非鉄金属,原料プラスチック」(第1類)及び「塗料,染料,顔料」(第2類)とするものであり,ルアーを製造する際に使用する原材料ではあっても,製品としての「ルアー」について使用するものではなかったので,請求人は,代理人を通じて,平成26年3月31日付け書留内容証明郵便により,当該商標権の権利範囲でない旨の回答書をRAIGA社に送付した(甲11)。
(ウ)商標権者は,RAIGA社による平成26年10月2日頃発送の書面をもって,請求人に対し,本件商標のみならず,「ドリフター」及び「オズマ」の商標も登録した旨,請求人が引用商標の使用をしないとの確約書がもらえれば,「ドリフター」及び「オズマ」の商標を譲渡する旨を伝えてきた(甲12)。
請求人は,上記条件に従うべく,一時は引用商標の使用を中止し,他の2件については実費として出願手数料及び郵便費用を支払う旨,引用商標を付して既に出荷したルアーについては,対象外とすることを望む旨の回答をし,これに「誓約書」(案)を添付した(甲13)。
なお,被請求人は,甲第13号証に関し請求人の主張は「明かな虚偽」と主張する。
しかしながら,被請求人らが今般福岡地方裁判所に提訴し,その証拠書類には同種書類が添付されており,その本文内容は,甲第13号証と同じである。これを,本件審判の補強証拠として提出する(甲20)。
(エ)上記(ウ)の請求人の回答に対し,商標権者は,RAIGA社による平成26年11月15日付け書面をもって,請求人に対し,出荷済みのルアー全品の回収とともに,既に出荷したルアーについての販売先等の報告を要求し,さらに当該報告に誤りが判明した場合は1個あたり1万円の違約金を請求することなどを内容とする「商標権示談契約書」2通を添付して通知した(甲14)。ちなみに,当該「商標権示談契約書」の商標権者側の当事者は,RAIGA社である。
請求人は,上記「商標権示談契約書」の条項修正を求める書面(甲15)を平成26年12月15日に発送したところ,商標権者代理人は,請求人に対し,同27年1月20日付けで警告書を送付した(甲16)。
なお,被請求人は,甲第15号証についても,請求人は発送した書類とは異なり,請求人の主張が虚偽であるとするが,一方では答弁書において,甲第15号証を引用しつつ,当該証拠を自らの主張の根拠とすることは,明かな自己矛盾である。
ウ 商標権者の商標登録の目的について
上記のように,商標権者は,請求人がルアーに表示した各種標章について,商標登録をしていないことを奇貨として,自ら商標登録出願をし,使用する意図がないにもかかわらず,登録を受けたものであることは明白である。
なお,請求人のホームページには,各標章を付したルアー(ただし,引用商標を付したものは前記警告を受けた際に削除した。)の画像が公開されており(甲17),商標権者は当該ホームページから商標を選択したことは容易に推察される。
エ 商標法第3条第1項柱書の適用について
以上のとおり,商標権者は,自己が使用する意思がないにもかかわらず,専ら請求人に対する警告の根拠を取得する目的で,又は,譲渡する目的で登録出願し登録を受けたものといわざるを得ない。
このような目的で商標登録を受けることは,「登録主義」を前提とする我が国商標法を逆手に取ったものであり,商標の使用を通じて化体する業務上の信用を保護しようとする商標法の趣旨にもとる行為である。また,我が国商標法が同法第3条第1項柱書において「登録主義」を採用する根拠としては,「あらかじめ使用者に将来の使用による信用の蓄積に対して法的な保護が与えられることを保証すべきであり,そのためには現実にその商標の使用をする予定のある者には,近い将来において保護に値する信用の蓄積があるだろうと推定して事前に商標登録をすべき」との趣旨に基づくものである(特許庁編「工業所有権法(産業財産権法)逐条解説」参照)。さらに,当該逐条解説によれば,譲渡目的等の商標登録に関連して「当初から自ら使用するものでないものに排他独占的な権利を設定するのは妥当でない」とされている。特に,商標権者のように,請求人が使用する商標を根こそぎ登録出願しそれらの登録を企むことは,まさに図利目的及び請求人に対する加害目的以外には考えられず,そのような目的をもって,商標登録を受けたものであるから,商標法の趣旨に反し,同法第3条第1項柱書の要件を満たしていないことは明らかである。
なお,上記要件の判断時は査定時であると解されるところ,前記のように,査定時はおろか現在に至るもルアーを製造販売することなく,自己で商標を使用する意思をも有していない。RAIGA社は,「ルアーキャスト」として,シリコン樹脂などの原料プラスチック等に前記商標を付して販売しているようであるが,これらの使用は,本件商標に係る指定商品とは異なる非類似の商品であるのみならず,使用主体が権利者とは実質的に異なるものであり,到底ルアーについて商標権者が使用しているとはいい難い。
なお,被請求人は,請求外「RAIGA社」が本件商標を使用し,広告宣伝を行った旨主張するが,被請求人自身の使用については,主張・立証されていない。
(2)商標法第4条第1項第10号について
ア 本件商標
本件商標は,手書き風の「RAIGA」の文字を横書きにした構成よりなる。
イ 引用商標
引用商標は,毛筆体による「雷牙」及びカギ括弧付きの「RAIGA」の文字を横書にした構成よりなる。
ウ 指定商品について
本件商標の指定商品は,「釣り具」であり,これには「ルアー」が含まれる。
エ 両商標の比較
引用商標は,その構成文字より,「ライガ」の称呼を生ずる。他方,本件商標は,その構成文字より,「ライガ」の称呼を生ずる。
したがって,本件商標は,「ルアー」について使用する引用商標と同じ商品に使用する類似の商標である。
周知性について
引用商標を付したルアー(以下「請求人商品」という。)は,平成18年11月17日から使用を開始し,釣り師の間で「良く釣れるルアー」として話題となり(甲18),一躍ヒット商品となった。その後も継続的に引用商標を使用することにより,会員数200名を超える釣りの愛好会等のユーザーの間で知られるに至った。その他にも,釣りに関係する者(釣り雑誌の編集者,ルアーメーカー,釣り具販売店,プロの釣り師及び遊漁船の船長)においても広く知られることとなった(甲19)。
また,請求人商品は,北海道地方から九州地方に至る全国の販売店で取り扱われ(別紙1及び別紙2参照),遅くとも本件商標の登録出願時までには,全国的に周知であった。なお,別紙2は,出荷伝票から出荷の状況をピックアップしたものである。
したがって,請求人は,継続して引用商標を使用しており,かかる周知性は継続している。
カ 商標法第4条第1項第10号の適用について
以上のとおり,本件商標の登録出願時及び登録査定時のいずれの時点においても,引用商標が周知であったことから,本件商標は,商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものである。

第4 被請求人の主張
被請求人は,結論同旨の審決を求めると答弁し,その理由を次のように述べ,証拠方法として,乙第1号証ないし乙第34号証(枝番を含む。)を提出した。
1 請求人の提出に係る証拠について
(1)甲第13号証は,原本であるのか写しであるのかは不明であるが,商標権者の平成26年10月2日付け書面に対する請求人の回答は,甲第13号証のものとは異なるから,これが請求人から商標権者に発せられた書面であるとの主張は明らかな虚偽である。
(2)甲第15号証は,原本であるのか写しであるのかは不明であるが,請求人が商標権者に発送した書面は,甲第15号証のものとは異なるから,これが請求人から商標権者に発せられた書面であるとの主張は明らかな虚偽である。
2 商標法第3条第1項柱書について
(1)商標権者の警告について
ア 商標権者が代表者を務めるRAIGA社は,平成17年7月27日から現在に至るまで,ルアー及びメタルジグと呼ばれる金属製ルアーの作成キットである商品「ルアーキャスト・スタータキット」(乙1,以下「RAIGA社製品」という場合もある。)の販売をしており,その際には,商品の包装(乙1),RAIGA社のホームページ(乙2),商品発注書(乙3)等に標章「RAIGA」を付している。そして,平成16年以降約10年以上にわたり,RAIGA社製品は,本件商標と共に数多くの雑誌やテレビ等で取り上げられた(乙4)。また,雑誌等においてRAIGA社製品を懸賞品として出品したり(乙5),広告記事を積極的に掲載したり(乙6),広告宣伝活動を全国的に行い,平成16年6月から平成25年12月までの累計の広告宣伝費は総額1,299万9,439円に達する(乙7)。
さらに,商標権者が発明及び商品化したRAIGA社製品は,平成12年6月11日に福岡発明研究会の最優秀賞を,同年8月30日に社団法人全国発明婦人協会西部支部主催の「第31回西日本地区暮らしの発明工夫展」において優秀賞を,同13年1月14日に福岡発明研究会の1月度の月例会で最優秀賞を,同14年7月7日に東久瀋宮記念賞を,それぞれ受賞した(以上,乙8?乙11)。その後も,商標権者は,社団法人発明学会が主催する「発明試作セミナー」の開催,ヒューマンアカデミーが主催する「ヒューマン・フィッシングカレッジ」での講師等,その発明品の普及活動を積極的に行っている(乙12,乙13)。
以上のように,本件商標が多数の需要者の目に触れる機会があり,本件商標がRAIGA社製品を指し示すものとして周知であることを裏付けるものである。このことは,Googleで語句「RAIGA」を検索すると,最上位にRAIGA社のホームページが表示されることからも明らかといえる(乙14)。
したがって,商標権者は,RAIGA社製品に付している「RAIGA」が商標として周知であると認識していたから,RAIGA社製品が含まれる指定商品「釣り具」については商標権を保有せずとも,不正競争防止法(以下「不競法」という。)に基づき保護されると認識していた。
イ 以上の事情の下で,商標権者は,請求人が,そのホームページのルアー商品紹介サイトにおいて,商品の包装に,本件商標と同一の「RAIGA」及び類似の「雷牙」を付して広告を行っている事実を発見した(乙15,乙16)。さらに,YAHOO!のショッピングサイトで語句「RAIGA」で検索を行うと,RAIGA社製品に加え,請求人の商品も複数抽出された(乙17)。
以上の状況から,商標権者は,請求人に対し,引用商標の使用状況を問い合わせた(甲8)。
これに対し,請求人は,引用商標の使用を認める一方で,謝罪及び使用中止に関しては何ら言及しなかった(甲9)。
そのため,商標権者は,請求人に対し,再度の警告により,引用商標の使用中止を求めた(甲10の1)が,請求人は,別件商標(甲2)との類否に言及するのみで,自身の行為が不競法第2条第1項第1号に規定する「不正競争」に該当することについては何ら言及せず,また,引用商標の使用中止もしなかった(甲11)。そのため,商標権者は,「RAIGA」が商標権者の商標として周知であるとの客観的な判断を求めるための1つの手段として,特許庁に,指定商品「釣り具」について「RAIGA」を登録出願し登録を受けた(甲1)。また,同時に,「OZMA」及び「DRIFTER」についても,将来の使用可能性を考慮して登録出願し登録を受けた。
そこで,商標権者は,本件商標に基づき,請求人に対し,引用商標の使用中止並びに商品名の変更,さらには不競法に基づく訴えを提起する準備がある旨を伝えた(甲12)。また,請求人が引用商標の使用をしないとの確約が得られれば,「OZMA」及び「DRIFTER」の各登録商標を請求人に譲渡する意思を伝えた。
これに対し,甲第13号証にあるとおり,請求人は,引用商標の使用中止,「OZMA」及び「DRIFTER」の各登録商標の請求人への移転希望を商標権者に伝えた。一方で,請求人は,小売店が保有する在庫分については,引用商標を使用継続する意思があることを伝えてきた。この点につき,商標権者は,小売店が保有する在庫分については,請求人がメーカーとして当然の責任として回収すべきと考えていたが,商品の回収に当たっての請求人の負担を考慮して,商品の回収に協力する意思を請求人に伝えるともに,今後請求人が引用商標を使用しないための確約を得る目的で,商標権示談契約書を請求人に送り,問題の解決に積極的に取り組んでいた(甲14)。
ところが,請求人は,甲第15号証にあるとおり,商標権示談契約書に記載の内容のうち,主に小売店の在庫分の回収に関する条項は対応できないため,商標権示談契約書の内容修正を商標権者に依頼した。商標権者は,小売店の在庫分の回収に協力する意思を請求人に伝え,問題解決に向けて多くの譲歩をしたにもかかわらず,在庫の回収を拒み引用商標を使用し続けようとする請求人の態度に大きな失望を受け,当事者同士のやり取りでは問題の解決に至らないと判断し,弁護士に相談の上,警告書を送付した(甲16)。
(2)商標権者の商標登録の目的について
前記のとおり,商標権者は,「RAIGA」が商標権者の商標として周知であることの客観的な判断を求めるための1つの手段として,また,請求人に引用商標の使用中止を求めるため,特許庁に対して,本件商標を登録出願し登録を受けたものであり,請求人が主張するような図利加害の目的がないことは明らかである。
(3)商標法第3条1項柱書の適用について
ア 本件商標の使用の意思について
前記のとおり,RAIGA社は,平成17年7月27日から現在に至るまで,継続的にRAIGA社製品及びこれに関連する商品に本件商標を付して販売している(乙2)。また,RAIGA社は,その履歴事項全部証明書の目的に記載されているとおり,「釣り具の輸出及び販売」を事業の1つとしている(乙18)。
以上より,RAIGA社は,本件商標の指定商品に関する事業を行っていることは明らかであり,商標権者は,本件商標の登録査定時はもちろんのこと将来においても使用意思を有していたことは明らかである。
イ 図利加害目的について
前記のとおり,本件商標は,RAIGA社製品を指し示すものとして,全国的に,釣り愛好家,釣り具販売業者及び釣り関係者の間で広く認識されていたものといえるから,商標権者は,本件商標については特段商標権を保有しなくとも不競法に基づき保護されると解釈していた。
一方で,請求人は,前記2(2)のとおりの目的をもって,特許庁に,本件商標を登録出願し登録を受けたのであるから,請求人が主張するような図利加害の目的は一切ないことは明らかである。
ウ 指定商品について
請求人は,RAIGA社製品は,本件商標の指定商品とは非類似であるため,RAIGA社は,本件商標を使用していないと主張する。
RAIGA社製品は,「シリコン2001(1KG),ルアーキャスト,プラスティックブロック型(型の外枠に使用),締金具(小),離型剤,型取り粘土,説明書」を1セットにし,プラスティックルアーを手軽に手作りできる商品である(乙1,乙19)。上記における「ルアーキャスト」は,プラスティックルアーを手作りするための素材である樹脂を意味する(乙20)。RAIGA社製品を購入した需要者は,「ルアーキャスト」が消耗すると,RAIGA社のホームページ等(乙2,乙3)より「ルアーキャスト」を単体で購入できる。したがって,「ルアーキャスト」と「ルアーキャスト・スタータキット」は,RAIGA社製品として明確に区別されており,特に「ルアーキャスト・スタータキット」とは,それを購入した需要者が,RAIGA社のホームページ内のルアー製作の手順を紹介したページ等(乙21?乙23)に従えば,誰でも手軽に「ルアー」を作ることができる製作キットである。
したがって,RAIGA社製品は,本件商標の指定商品に含まれると解される。
よって,商標権者は,本件商標の登録査定時において,指定商品について本件商標を使用していたといえる。
3 商標法第4条第1項第10号について
(1)引用商標の雑誌への掲載について
ア 請求人は,雑誌「SALT WORLD」への掲載をもって(甲18),引用商標が周知性を有する旨を主張する。
日本国内で発行される釣り雑誌は,少なくとも50種類近く存在し(乙24),そのうち主要な釣り雑誌の年間の発行部数は,「ROD&REEL」が30万部,「BASSER」,「つり人」,「つり丸」が各25万部,「東海つりガイド」が18万7千部,「釣春秋」が15万部,「シーバスマガジン」が11万部である(乙25)。一方,引用商標が掲載された雑誌「SALT WORLD」の発行部数は年間8万部程度であり(乙26),上記主要な釣り雑誌に比べ,その発行部数は多いとはいえない。
イ 雑誌等の媒体への掲載に基づき商標法第4条第1項第10号に規定する周知性を有するといえるためには,過去の審決(乙27?乙30)に示されているように,少なくとも「発行部数が所定以上の,複数の一般総合雑誌等に,途切れることなく定期的に,繰り返し掲載されている」ことを要すると解せる。これを,本件についてみると,引用商標は,他の主要な釣り雑誌に比べて発行部数が少なく,かつ,50種類近くも存在する釣り雑誌のうちの1誌に1度だけ掲載されただけであり,その掲載も,全194頁のうちのわずか3頁の記事にすぎず(乙31),引用商標が目立つような商標的な態様で掲載されているわけではない。
(2)釣り関係者の証明書について
請求人は,引用商標が周知であることの証明として,釣りに関係する者が署名・押印した証明書(甲19)を提出する。
しかし,これら証明書の大半は,請求人が予め準備したほぼ同内容の定型文章による証明願いに,各人が署名・捺印したものにすぎず,各証明者が,如何なる根拠に基づいて,かつ,引用商標を自他商品の識別機能としての商標として理解した上で証明したものか必ずしも明らかとはいえない。
仮にこれら証明書が信頼できる証拠たり得ても,本件商標の出願時及び査定時における日本国内の釣り人口は,少なくとも約700万人以上存在すると予想され(乙32),上記証明書は,そのうちのわずか36名分にすぎず,周知性を認定するに至らない証拠であることは明らかである。
(3)引用商標が付されたルアーの販売数量について
ア 請求人は,別紙1として平成18年3月1日から同26年2月28日までの販売年度別の販売数量及び販売地域別の累計販売数量を提出するが,これらは,ルアーの販売数量として多いのか少ないのか,他の比較データが提出されていないため周知性を認定する証拠としては不十分である。
イ 一方で,ルアーの新製品の初年度における販売数量に関する個人ブログには,10万個以上の場合は大ヒット商品,5万個以上の場合はヒット商品,2万個以上の場合は普通の商品,1万個以上の場合は失敗商品と記載されており(乙33),これを請求人商品の販数量に当てはめると,販売初年度の売上個数は6,597個であり,最も販売数量の多い3年目(販売期間:平成20年3月1日?同21年2月28日)でも,売上個数は12,229個である。なお,上記個人ブログは,ルアーメーカーである株式会社デュオの代表取締役である安達政弘のものであり,業界事情に精通した信頼できる見解といえる。
ウ 日本釣振興会の資料には,2002年時点のルアーフィッシング用品の小売販売総額に関し,2002年時点の釣り人口が1,670万人,釣り用品の小売市場規模は2,246億円,ルアーフィッシングの構成比は28.9%,ルアーフィッシング用品の小売販売総額は649億940万円,と記載されている(乙34)。
以上のデータをもとに,請求人商品の販売年度別の販売数量のうち,最も販売数量の多い3年目(平成20年3月1日?同21年2月28日)のルアーフィッシング用品の小売販売総額を推定すると,2008年時点の釣り人口が1,120万人(乙32),釣り用品の小売市場規模は1,506億円(計算式:2,246億円×1,120万人/1,670万人),ルアーフィッシングの構成比は28.9%(2002年から不変として算出),ルアーフィッシング用品の小売販売総額は435億2340万円(計算式:1,506億円×28.9%)となる。
ここで,請求人商品は大きさ等により変動するが,平均1,333円/個で算出すると,1,333円×12,229個≒1630万円となり,これは,ルアーフィッシング用品の小売販売総額(435億2340万円)の0.04%にも満たない。
したがって,請求人商品の販売数量は,比較データが示されていないため,周知性を認定するための証拠として不十分であることを前提として,上記客観的な証拠に基づいて判断すると,その販売シェアは極めて少額である。
(4)以上のとおり,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,引用商標は,取引者,需要者に広く認識されていたということはできないから,本件商標は,商標法第4条第1項第10号に該当するものではない。
4 むすび
以上の理由により,本件商標は,商標法第3条第1項柱書,同法第4条第1項第10号の規定に違反して登録されたものではない。

第5 当審の判断
1 商標法第3条第1項柱書について
(1)商標法第3条第1項柱書は,「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標については,次に掲げる商標を除き,商標登録を受けることができる。」と規定し,登録出願に係る商標が,その出願人において「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標」であることを商標の登録要件の一つとして定めているところ,「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標」とは,現に行っている業務に係る商品又は役務について現に使用している場合に限らず,将来行う意思がある業務に係る商品又は役務について将来使用する意思を有する場合も含むと解される。
そこで,本件商標が,その登録査定時(平成26年8月5日)において,商標権者が現に行っている業務に係る商品について現に使用している商標に該当していたか,あるいは,将来行う意思がある業務に係る商品について将来使用する意思を有する商標に該当するかについて,以下検討する。
(2)本件商標の指定商品は,前記第1のとおり,「釣り具」とするものであるところ,証拠(各項の括弧内に掲記)及び職権による調査によれば,以下の事実を認めることができる(なお,被請求人の提出に係る乙号証の大半は,発行年月日若しくは作成年月日又は出展が不明であり,かつ,不鮮明で判読ができないものが多数含まれており,これらの証拠は採用することができない。)。
ア RAIGA社及びRAIGA社製品について
(ア)RAIGA社の履歴事項全部証明書(平成27年3月18日福岡法務局証明:乙18)によれば,RAIGA社は,福岡県中央区鳥飼1丁目3番19-504号に本店を置き,「塗料,型取り材料,ウレタン樹脂等の注型材料の研究・開発及び製造・販売。絵画,彫刻,室内装飾品,服飾雑貨,インテリア小物,書画,骨董品,スポーツ用品,釣具の輸出入及び販売。」等を目的として,平成16年6月23日に設立された有限会社ディスプレイオフィス(以下「ディスプレイオフィス社」という。)より同17年7月27日に商号変更した会社であって,その代表取締役を三吉秀征(商標権者)とする。
(イ)RAIGA社の前身であるディスプレイオフィス社は,例えば,「TACKLE BOX」(株式会社フリーウェイ,平成12年9月1日発行:乙5の3)の「PRESENT」(132頁)に,「ディスプレイオフィス来画 ルアー製作キット・ルアーキャスト/ルアーキャストは発泡ウレタン樹脂でお気に入りのルアーのコピーが作れるという大変,画期的なルアー製作キットである。・・/ディスプレイオフィス来画(らいが)」などと,また,「SALT WORLD」(株式会社えい出版社,2003年8月10日発行:乙6の1,2002年6月10日発行:乙6の2)等に,「カンタンにオリジナルメタルジグを生産,量産できる。/鉛鋳造用シリコン!」,「スターターキット/耐熱ルアーシリコン(主材,硬化剤),離型剤,表面処理剤,プラスティックブロック,締め金具(大),ライガメタルジグ型取り用ルアー」,「製造 直販 卸し ライガ/来画」(乙6の1),「ディスプレイオフィス来画」(乙6の2)などと記載されているように,「ルアー製作キット・ルアーキャスト」と称するルアーの製作キットの製造販売を行っていた(なお,乙12によれば,「ディスプレイオフィス来画」は,その代表が商標権者であり,ディスプレイオフィス社と認められる。)。
また,RAIGA社は,例えば,「日本の魚釣り」(2013年5月22日号:乙4の1)の「釣り道具を作る/メタルジグ・プラグ」の特集記事には,「ここでは,メタルジグ用の『ライガ/耐熱シリコン・スタータキット』と,プラグ用の『ルアーキャスト・スタータキット』を使用して,製作方法を解説する。」(1頁)と記載され,「プラグ製作に使用する道具」(7頁)には,「型を作るキットの内容」として,「プラグ製作用の『ライガ/ルアーキャスト・スタータキット』の内容。/(1)枠を作るためのプラスチックブロック。(2)型を挟んで押さえるための板とネジ。(3)シリコン(1kg)。(4)硬化剤。(5)離型剤。(6)『ルアーキャスト』に混ぜて,均一に発泡させるためのフィーラー。(7)二液性発泡ウレタンの『ルアーキャスト』。(8)型取り用の油粘土。」などと記載されているように,ディスプレイオフィス社と同様に,「ルアーキャスト・スタータキット」(RAIGA社製品)と称するルアーの製作キットの製造販売を行っていた。そして,上記「プラグ製作用の『ライガ/ルアーキャスト・スタータキット』の内容を構成する各商品は,「個別に購入することも可能」(2頁)である。
したがって,RAIGA社は,その前身であるディスプレイオフィス社の時代を通して,ルアーの製作キットの製造販売を行っていたと認めることができる。
イ 商標権者の有する登録商標及び登録出願した商標等
(ア)商標権者は,別掲(1)のとおり,「RAIGA」の文字を手書き風に横書きした本件商標を平成26年4月3日に登録出願した。
(イ)商標権者は,本件商標と同一の構成よりなり,平成16年2月9日に登録出願,第1類「非鉄金属,原料プラスチック」及び第2類「塗料,染料,顔料」を指定商品として同年10月15日に設定登録され,その後,商標権存続期間の更新登録がされた登録第4810612号(別件商標)を有している(甲2)。
(ウ)商標権者は,「DRIFTER」の文字を標準文字で表してなり,平成26年4月17日に登録出願,第28類「釣り具」を指定商品として同年9月5日に設定登録された登録第5699368号(以下「『DRIFTER』商標」という。)を有している(甲3)。
(エ)商標権者は,「OZMA」の文字を標準文字で表してなり,平成26年4月17日に登録出願,第28類「釣り具」を指定商品として同年9月5日に設定登録された登録第5699369号(以下「『OZMA』商標」という。)を有している(甲4)。
(オ)商標権者は,「RODEO」の文字を標準文字で表してなり,第28類「釣り具」を指定商品として,平成26年4月17日に登録出願をした(甲5。ただし,当該出願は,商標法第4条第1項第11号を理由とする拒絶査定が確定した。)。
(カ)商標権者は,「ZORO」の文字を標準文字で表してなり,第28類「釣り具」を指定商品として,平成26年4月17日に登録出願をした(甲6。ただし,当該出願は,商標法第4条第1項第11号を理由とする拒絶査定が確定した。)。
(キ)商標権者は,「シービーワン」の文字を標準文字で表してなり,第28類「釣り具」を指定商品として,平成26年4月17日に登録出願をした(甲7。ただし,当該出願は,商標法第4条第1項第11号を理由とする拒絶査定が確定した。)。
(ク)請求人のホームページの「ルアー」のサイト(2015年1月21日にプリントアウトされたもの:甲17)によれば,「DRIFTER」,「RODEO」,「ZORO」,「OZMA」の各文字よりなる標章などが付されたルアーが掲載されている。ただし,上記各標章を付したルアーがいつ頃から販売又は請求人のホームページに掲載されたのかは明らかではない(なお,請求人の主張には,引用商標を付したルアーについては,商標権者からの警告を受けた際に削除した旨の記載ある。)。
ウ RAIGA社又は商標権者が請求人に発した警告書等及び請求人の回答
(ア)RAIGA社は,請求人に対し,RAIGA社は,ルアーやジグの製作用材料の商標として「RAIGA」を使用しているところ,顧客からルアーやジグの販売も行っているのかとの指摘を受け,調査した結果,インターネット上で「RAIGA」(雷牙)なるルアーが出回っていることが判明したこと,請求人は,いつ頃から当該商品名を採用したのか回答を求めることなどを内容とする書面を送付した。なお,当該書面には,「○R記号」が付された本件商標と同一の構成よりなる商標(以下「RAIGA社使用商標」という。)が表示されている(甲8。ただし,当該書面には作成日等の記載はない。)。
(イ)請求人は,上記(ア)の書面に対し,2014年(平成26年)3月12日付けで,請求人は,設立当初からルアーの販売を行っており,引用商標を付したルアーも長年販売していること,引用商標は請求人が独自に考案したものであり,請求人の取り扱う商品には,包装等に社名を付して他社の商品と混同を生じないように気をつけていることなどを内容とする書面をRAIGA社に送付した(甲9)。
(ウ)RAIGA社は,上記(イ)の書面に対し,請求人商品に使用される引用商標は,RAIGA社の有する別件商標の商標権を侵害している旨を内容とする書面を請求人に送付した。なお,当該書面には,RAIGA社使用商標が表示されている(甲10の1。ただし,当該書面には作成日等の記載はない。)。また,RAIGA社は,「来画/RAIGA」(「RAIGA」の文字は本件商標と同一の構成よりなる。)の文字が表示され,RAIGA社の代表取締役としての商標権者の名刺も同時に送付した(甲10の2)。
(エ)請求人は,代理人を通して,上記(ウ)の書面に対し,平成26年3月31日付けで,請求人が引用商標を使用している商品は,ルアーであり,別件商標の商標権の効力範囲に属さないから,RAIGA社の指摘には法的根拠がない旨を内容とする書面をRAIGA社に送付した(甲11)。
(オ)RAIGA社は,請求人に対し,引用商標は,本件商標と類似する商標であるから,商品名の変更をすることを要求する旨,「DRIFTER」商標及び「OZMA」商標も登録を受けたので,引用商標を使用しないという確約がもらえれば,上記「DRIFTER」商標及び「OZMA」商標は,実費で請求人に譲渡してもよい旨を内容とする書面を送付した。なお,当該書面には,RAIGA社使用商標が表示されている(甲12。ただし,当該書面には作成日等の記載はないが,甲13には,当該書面が「平成26年10月2日付け」である旨の記載がある。)。
(カ)請求人は,上記(オ)の書面に対し,平成26年10月○日(日の記載はなく,「○」(まる)が記載されている。以下,同様。)付け書面をもって,請求人が引用商標を使用したルアーを販売する行為は,商標権者の有する商標の商標権を侵害することはないと考えるが,平成25年9月に複数の小売店に計300個のルアーを販売した後は当該ルアーの販売を行っておらず,また,請求人のホームページから引用商標を付したルアーを削除した旨,上記ルアーを販売した小売店には,その在庫があると思われるが,当該在庫に限って商標使用中止の対象外とすることを要求する旨,商標権者の有する「DRIFTER」商標及び「OZMA」商標を実費で譲り受ける旨などを内容とする書面をRAIGA社に送付し,上記内容を記載した誓約書(案)を添付した(甲13)。
なお,甲第13号証について,被請求人は,原本であるのか写しであるのかは不明であるとの主張をすると共に,RAIGA社の平成26年10月2日付け書面(甲12)に対する請求人の回答は,甲第13号証のものとは異なるから,これが請求人から商標権者に発せられた書面であるとの主張は明らかな虚偽である旨主張する。
しかし,甲第13号証は,その日付が,上記のとおり,「平成26年10月○日」と記載されているところから,少なくとも原本であるとは考えられないが,請求人は,当該書面に関し,「請求人から商標権者に発せられた書面である」との積極的な主張はしていないばかりか,その内容に関しては,被請求人は,前記第4の2(1)イにおいて,「甲第13号証にあるとおり,請求人は,引用商標の使用中止,『OZMA』及び『DRIFTER』の各登録商標の請求人への移転希望を商標権者に伝えた。一方で,請求人は,小売店が保有している在庫分については,引用商標を使用継続する意思があることを伝えてきた。」旨述べているのであるから,仮に甲第13号証が実際に請求人から商標権者に発せられた書面そのものではないとしても,被請求人は,甲第13号証に記載された内容がRAIGA社の平成26年10月2日付け書面(甲12)に対する請求人の回答内容と実質的に同一であると認めていると判断することができる。さらに,請求人による平成27年7月15日付けの弁駁書において,被請求人らが今般福岡地方裁判所に提訴した証拠書類とする,甲第13号証と同じ内容の証拠書類が甲第20号証として提出された。したがって,上記に関する被請求人の主張は理由がない。
(キ)RAIGA社は,上記(カ)の書面に対し,平成26年11月15日付け書面をもって,小売店に販売した引用商標を使用したルアーの在庫分について,回収等をして,引用商標が表に出ないよう努力すべきであり,請求人にとって,それが負担となるのであれば,RAIGA社も協力する旨を記載した書面を,請求人に送付すると共に,商標権示談契約書2通(同一のもの)も送付した。なお,当該書面には,RAIGA社使用商標が表示されている(甲14)。
また,商標権示談契約書の条項は,以下のとおりである。
第1条 乙(審決注:請求人,以下同じ。)は甲(審決注:RAIGA社,以下同じ。)の保有する商標RAIGAの名称がついた釣り具を今後販売しないものとする。
第2条 乙は小売店に対して告知しRAIGAのついた商品の回収もしくはパッケージの変更などでRAIGAの名称が出ないように本契約締結後3ヶ月以内に終了するものとする。
第3条 乙は上記の商品を回収および改名終了後,書面による報告をすること。
第4条 乙は終了報告書を提出後,乙のRAIGAルアーが販売された場合,処置報告をすること。
第5条 乙が販売した300個のRAIGAルアーについて販売先,個数,日時を報告すること。もし,それ以外にRAIGAのルアーが販売されていることが判明した場合,1個につき壱萬円の違約金を甲に支払うものとする。
第6条 本契約が守られなかった場合,乙は甲に対し,それにかかった損害を補償する。
(ク)請求人は,上記(キ)の書面に対し,平成26年 月 日(月日の記載欄は空欄である。)付け書面をもって,商標権示談契約書の第2条ないし第5条を削除することを要求する旨,「DRIFTER」商標及び「OZMA」商標は,請求人が使用している重要な商標であるから,これらを他人に対価を払って譲り受けることは妥当ではないので,商標権者がこれらの商標を放棄(登録抹消)することを商標権示談契約書に加えることを要求する旨を内容とする書面をRAIGA社に送付した(甲15)。
なお,甲第15号証について,被請求人は,甲第13号証と同様の主張をするが,甲第15号証は,その日付が,上記のとおり,「平成26年 月 日」と月日の欄が空欄であるところから,少なくとも原本であるとは考えられないが,請求人は,当該書面に関し,「請求人から商標権者に発せられた書面である」との積極的な主張はしていないばかりか,その内容に関しては,被請求人は,前記第4の2(1)イにおいて,「請求人は,甲第15号証にあるとおり,商標権示談契約書に記載の内容のうち,主に小売店の在庫分の回収に関する条項については対応できないため,商標権示談契約書の内容修正を商標権者に依頼した。」旨述べているのであるから,仮に甲第15号証が実際に請求人から商標権者に発せられた書面そのものではないとしても,被請求人は,甲第15号証に記載された内容がRAIGA社に送付された書面と実質的に同一のものであると認めていると判断することができる。したがって,上記に関する被請求人の主張は理由がない。
(ケ)商標権者は,代理人を通して,2015年(平成27年)1月20日付け警告書をもって,請求人が「RAIGA」,「DRIFTER」,「OZMA」の各標章を付した釣り具を販売する行為は,商標権者の有する商標の商標権を侵害する行為であるから,これら標章を付した釣り具の販売を中止することを要求する旨を請求人に通知した(甲16)。
(3)前記(2)で認定した事実によれば,商標権者がRAIGA社の代表取締役であることについては,当事者間に争いがないところ,RAIGA社は,「釣具の輸出入及び販売」を目的の一つとして平成16年6月23日に設立された会社(平成17年7月27日にディスプレイオフィス社より商号変更)であり,その前身のディスプレイオフィス社(ディスプレイオフィス来画)は,平成12年8月頃から,その業務に係る商品「ルアー製作キット・ルアーキャスト」(乙5の3)の販売を行っていたと推認することができ,2003年(平成15年)頃から,製造販売元の表示として,「ライガ/来画」の表示を用いるようになった(乙6の1等)。しかし,前記のとおり,被請求人の提出に係る証拠の大半は,発行年月日若しくは作成年月日又は出展が不明であり,かつ,不鮮明で判読ができないものであり,商品に付された商標が本件商標と同一の構成よりなる商標であるか,あるいは,それがいつの頃から使用されていたものであるかについては明確に特定することはできないが,少なくとも「日本の魚釣り」(2013年5月22日号:乙4の1)の「プラグ製作に使用する道具」(7頁)には,「プラグ製作用の『ライガ/ルアーキャスト・スタータキット』の内容」として,RAIGA社製品が紹介されていたところであり,また,RAIGA社が,請求人に対し,ルアーに付されている「RAIGA/雷牙」(引用商標)の使用時期についての回答を求める書面(甲8)には,RAIGA社使用商標が表示されており,これを送付した時点(甲8には作成日の記載はないが,請求人がこれに対する回答をしたのが平成26年3月12日であるから,それ以前と考えられる。)において,RAIGA社は,「ルアーキャスト・スタータキット」(RAIGA社製品)の商標として,上記RAIGA社使用商標を使用していたものと推認することができる。そして,上記時期は,本件商標の登録出願日(平成26年4月3日)より前の日付であること,さらに,RAIGA社が請求人に宛てた平成26年10月2日付け書面(甲12)においてもRAIGA社使用商標が表示されており,当該日付は,本件商標の登録査定日(平成26年8月5日)より後のものであることを,それぞれ認めることができる。
(4)一方,一般的に登録商標を有する商標権者が,自己の営業に係る会社に当該登録商標の使用を黙示的に許諾する場合が多いことは,商取引の実情に照らして明らかといえる。そして,本件における商標権者とRAIGA社とは,その営業活動において,相即不離の関係にあるといえるから,商標権の使用許諾制度を採用している現行法においては,商標法第3条第1項柱書にいう「自己の業務に係る商品について使用をする」における「自己の業務」には,RAIGA社のような立場にある者は,商標権者と同一視できるとみて差し支えないといえる。
してみると,本件における商標権者は,自己が代表取締役となっているRAIGA社の業務に係る商品ついて本件商標を使用する目的をもって登録出願したものとみることができ,RAIGA社は,本件商標の登録出願日はもとより,その登録査定日においても,その業務に係る「ルアーキャスト・スタータキット」について本件商標と同一の構成よりなるRAIGA社使用商標を使用していたものと認めることができるから,その使用は,「自己の業務に係る商品について使用をする商標」とみるのが相当である。
(5)以上によれば,「釣具の輸出入及び販売」を目的の一つとして設立されたRAIGA社は,本件商標の登録査定には既に,RAIGA社製品(ルアーキャスト・スタータキット)に本件商標と同一の構成よりなるRAIGA社使用商標を使用していたものであり,RAIGA社製品は,釣り具と極めて関連性の高い商品といえるから,近い将来において本件商標をその指定商品「釣り具」について使用する蓋然性は極めて高いというべきであり,また,商標権者は,将来において,本件商標をその指定商品について使用する意思がある旨述べているところである。
したがって,本件商標は,その登録査定時である平成26年8月5日には,商標権者と実質的に同一視できるRAIGA社により,釣り具と極めて関連性の高い商品であるRAIGA社製品に使用されていたということができ,また,RAIGA社ないし商標権者により近い将来において,その指定商品「釣り具」について使用される予定のある商標ということができる。
(6)請求人の主張について
請求人は,RAIGA社から送付された警告書等を前提に,商標権者は,請求人がルアーに表示した各種標章について,商標登録をしていないことを奇貨として,自ら商標登録出願をし,使用する意図がないにもかかわらず,登録を受けたものであって,商標権者のように,請求人が使用する商標を根こそぎ登録出願し,それらの登録を企むことは,まさに図利目的及び請求人に対する加害目的以外には考えられず,そのような目的をもって,商標登録を受けたものであるから,商標法の趣旨に反し,同法第3条第1項柱書の要件を満たしていないことは明らかである旨主張する。
しかし,前記認定のとおり,ディスプレイオフィス社は,2003年(平成15年)頃から,製造販売元の表示として,「ライガ/来画」の表示を用いるようになったのである。また,RAIGA社製品は,2013年(平成25年)5月に発行された雑誌「日本の魚釣り」に,「プラグ製作用の『ライガ/ルアーキャスト・スタータキット』の内容」として紹介されていたものである。加えて,RAIGA社が請求人に送付した書面(甲8)には,RAIGA社使用商標が表示されていたのであるから,RAIGA社は,本件商標の登録出願日には既に,本件商標と同一の構成よりなるRAIGA社使用商標を「ルアーキャスト・スタータキット」(RAIGA社製品)に使用していたと推認することができる。そして,RAIGA社製品は,釣り具と極めて関連性の高い商品といえるから,近い将来において本件商標をその指定商品「釣り具」について使用する蓋然性は高いというべきである。
したがって,本件商標は,商標法第3条第1項柱書の要件を充足しているというべきである。
また,商標権者の登録出願した商標(甲3?甲7)は,請求人がその業務に係るルアーについて使用する標章(甲17)や請求人の略称を表すものであることが認められ,特に,「DRIFTER」商標及び「OZMA」商標については,RAIGA社が,これらの商標の登録を受けたこと及びこれらの商標を請求人に実費で譲渡することをわざわざ書面をもって請求人に知らせてきたこと(甲12)からすれば,商標権者は,インターネット上で請求人がルアーについて使用している標章を調査し,これらを商標登録出願したと考えられる余地はあるといえる。
しかし,商標権者による本件商標やその他の商標の登録出願は,請求人とRAIGA社との間で行われた警告書等の書面のやりとりの期間中にされたものであり,特に,請求人がRAIGA社に宛てた平成26年3月31日付けの書面(甲11)は,別件商標の商標権の効力範囲に触れているところから,商標権者は,RAIGA社製品に使用するRAIGA社使用商標の防護をする意図(RAIGA社製品が本件商標の商標権の効力の範囲に属するか否かはさておく。)及び請求人による引用商標の使用の排除をする意図をもって,急きょ本件商標の登録出願を行ったものと推測することができる。加えて,RAIGA社が請求人に宛てた書面(甲12)には,請求人が引用商標を使用しないという確約をすれば,「DRIFTER」商標及び「OZMA」商標について,実費で請求人に譲渡してもよい旨の記載があり,これらの事情を併せ考慮すると,商標権者による本件商標の登録出願が当初より請求人から高額の許諾料や譲渡対価の取得のみを目的とする,いわゆる商標ブローカーなどによる濫用的な商標登録と同等なものとみるべき事情は見いだせず,その他,商標権者が図利目的及び請求人に対する加害目的をもって,上記商標の登録を受け又は登録出願を行ったと認めるに足りる的確な証拠の提出はない。
してみると,商標選択の自由を前提として最先の出願人に登録を認める先願主義の原則が採用されている我が国の商標法制度のもとにおいて,RAIGA社がその業務に係る商品に使用するRAIGA社使用商標に類似する引用商標を排除するために取った商標権者の一連の行為は,直ちに商標法制定の趣旨に反するとまでいうことはできない。したがって,上記に関する請求人の主張は採用することができない。
(7)以上のとおりであるから,本件商標は,商標法第3条第1項柱書の要件を充足しない商標ということはできない。
2 商標法第4条第1項第10号について
(1)引用商標の周知性について
請求人は,引用商標の周知性を明らかにする証拠として,請求人商品の販売数量・販売地域等が記載された資料(別紙1及び別紙2),当該ルアーが掲載された雑誌(甲18),釣りに関係する者(釣り雑誌の編集者,ルアーメーカー,釣り具販売店,プロの釣り師,遊漁船の船長等)の証明書(甲19)を提出する。
ア そこで,上記提出された証拠を以下検討する。
(ア)別紙1によれば,請求人商品は,平成18年11月17日に発売が開始され,その販売数量は,発売開始から同19年2月28日までが6597個,同年3月1日から同20年2月29日までが4626個,同年3月1日から同21年2月28日までが12229個,同年3月1日から同22年2月28日までが6542個,同年3月1日から同23年2月28日までが3833個,同年3月1日から同24年2月29日までが1229個,同年3月1日から同25年2月28日までが2191個であり,本件商標の出願日直近の同年3月1日から同26年2月28日までが805個であって,その合計は38052個であるが,そのうちの7630個が海外で販売されたから,上記約7年3カ月の間に,約3万個が我が国において販売されたことになる(別紙2)。
しかし,請求人商品の約7年3カ月の間における約3万個の販売数量が,ルアーの需要者において引用商標が請求人の業務に係る商品を表示するものとして認識され得るに十分な販売数量といえるかどうかは,別紙1及び別紙2からは必ずしも明らかではない。この点について,財団法人日本釣振興会が2005年(平成17年)1月7日に作成した「質問事項の回答」(乙34)によれば,2002年(平成14年)の釣り人口が1,670万人,ルアーフィッシングの構成比は28.9%であり,これよりルアーフィッシング人口は482万6300人と記載されているところ,これをこのまま,請求人商品が最も売れた平成20年3月1日から同21年2月28日までの12229個に当てはめて,1人が1個購入したとして単純計算しても,ルアーフィッシング人口482万6300人中の12229人が購入したことになり,ルアーフィッシング人口における1%にも満たない者(12229÷4826300≒0.0025)が購入したにすぎない。
したがって,別紙1及び別紙2をもってしては,引用商標の周知性を基礎づけるほどの販売数量があったものと認めるには足りない。
(イ)「SALT WORLD」(株式会社えい出版社,2007年2月1日発行:甲18)の「ハイプレッシャー下のボートシーバス」(文:鈴木斉)には,「メインで使用したのはシービーワンのガル・ライトシリーズの『雷牙』,このルアーはテンションを軽く掛けて落とすと細かなフラッシングフォールをするので,活性の低い魚にとにかくよく効く。もちろん,リトリーブやシャクリを入れてもスイミングバランスが良く,とにかくヒット率が高く,私が最も信頼しているルアーのひとつだ。」と記載され(54頁),「CB-ONE 雷牙80g」の表示と共にその写真が掲載されている(55頁)。
しかし,上記記載から「ハイプレッシャー下のボートシーバス」の著者が請求人商品を信頼しているルアーの一つであることは認められるものの,ルアーは,釣りの対象魚,釣り場所,天候,潮の流れ,水の透明度等の相違により,釣り人は,1回の釣りにおいてさえも,必ずしも常に決まったルアーを使用するものとは限らず,かなり頻繁にいろいろのメーカーのルアーを使用する場合が多いと考えられることに加え,上記雑誌における記載は,請求人が請求人商品について広告をしたものとはいえず,他に,請求人が請求人商品の広告をしたと認めるに足りる証拠の提出はない。
したがって,上記雑誌の記載をもって,引用商標の周知性を基礎づけることは困難であるといわざるを得ない。
(ウ)釣りに関係する者の証明書には,各証明者の釣りに関する活動経歴が記載された後に,「貴社(審決注:請求人。以下同じ。)が『雷牙』および『RAIGA』の名称を使用し,後記表示の商標(審決注:引用商標。以下同じ。)を付したルアーは,7?8年前には既に,海釣りを好むルアー愛好家の間で有名であり,海のルアー釣りの業界内においても認知されています。従って,『雷牙』および『RAIGA』の名称および後記表示の商標は,貴社がルアーについて使用しているものであるとして,釣り具を販売する業界において有名であり,これらが表示されたルアーは,平成26年3月までには貴社の製造・販売に係るものとして広く知られていると認識しております。」(甲19の1)などとほぼ同一の文面が記載されている(甲19の2?36)。
しかし,上記証明書は,予め記載された定型的な文書に,請求人の取引先等関連業者などが記名押印等をしたものと優に推測させるものであって,各証明者の独自の知見から引用商標の周知性を証明したものとはいい難い上,その内容の裏付けとなる客観的な資料が提出されていないことからすれば,これらの証明書をもって,引用商標の周知性を基礎づける根拠とすることはできない。
イ 前記アのとおり,引用商標は,請求人の業務に係る商品「ルアー」(請求人商品)を表示するものとして,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。
(2)以上によれば,本件商標と引用商標とが商標において類似し,かつ,両商標が使用する商品が同一又は類似の商品であるとしても,引用商標は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできないから,本件商標は,「他人の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標」には該当しないものというべきである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第10号に該当する商標と認めることができない。
3 むすび
以上のとおり,本件商標は,商標法第3条第1項柱書及び同法第4条第1項第10号に違反して登録されたものではないから,同法第46条第1項第1号の規定により,無効とすべきものではない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲 別掲(1) 本件商標


別掲(2) 引用商標


審理終結日 2015-08-05 
結審通知日 2015-08-10 
審決日 2015-08-24 
出願番号 商願2014-25854(T2014-25854) 
審決分類 T 1 11・ 18- Y (W28)
T 1 11・ 255- Y (W28)
最終処分 不成立 
前審関与審査官 吉野 晃弘 
特許庁審判長 早川 文宏
特許庁審判官 前山 るり子
田中 幸一
登録日 2014-08-22 
登録番号 商標登録第5695905号(T5695905) 
商標の称呼 ライガ 
代理人 遠藤 聡子 
代理人 弁護士法人柴田・中川法律特許事務所 
代理人 筒井 宣圭 
代理人 大坪 めぐみ 
代理人 井川 浩文 
代理人 有吉 修一朗 
代理人 森田 靖之 
代理人 田中 雅敏 
代理人 梶原 圭太 
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