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審決分類 審判 全部無効 称呼類似 無効としない X44
審判 全部無効 外観類似 無効としない X44
審判 全部無効  無効としない X44
審判 全部無効 観念類似 無効としない X44
管理番号 1314468 
審判番号 無効2015-890031 
総通号数 198 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2016-06-24 
種別 無効の審決 
審判請求日 2015-04-15 
確定日 2016-04-25 
事件の表示 上記当事者間の登録第5317583号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本願登録第5317583号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおり、「ヘアードクタールイ」の片仮名及び「HairDoctorRui」の欧文字を二段に横書きしてなり、平成20年7月14日に登録出願、第44類「美容,理容,あん摩・マッサージ及び指圧,カイロプラクティック,きゅう,柔道整復,はり,介護,美容院用又は理髪店用の機械器具の貸与」を指定役務として、平成22年3月17日に登録審決、同年4月16日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が請求の理由において引用する商標第3049824号(以下「引用商標」という。)は、別掲2のとおり、やや図案化した「ヘアドクター」の片仮名を横書きしてなり、ヘアドクター株式会社により平成4年9月26日に登録出願、第42類「健康食品料理の提供,美容,理容,シャワー・サウナ・ジェットバスの提供,写真の撮影,グラビア印刷,デザインの考案,化粧品・食品の試験・検査・研究,著作権の利用に関する契約の代理又は媒介,マッサ?ジ,きゅう,毛髪診断及び健康指導,育毛・発毛促進処置,増毛施術,栄養の指導,計測器の貸与,電子計算機の貸与」を指定役務として、同7年6月30日に特例商標として設定登録され、その後、最終的に、同23年7月25日付け受付の移転登録により酒井淳也(以下「引用商標権者」という。)に移転されたものであり、現に有効に存続しているものである。

第3 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第6号証を提出している。
1 請求人適格
請求人は、引用商標権者から使用許諾を受け商標使用している「ヘアドクター発毛科学研究所」の所長の酒井榮一である(甲5)。
甲第5号証に示す新聞広告記事のとおり、請求人は、「飲む育毛剤『救いの髪』の開発者である発毛・育毛の専門企業・ヘアドクター発毛科学研究所(本社・新潟県)」の所長であり、1977年以来35年間、髪のことが気になる人に育毛サロンでの手当てをはじめ、自分でできる効果的な発毛・育毛方法と脱毛予防の研究開発に取り組んでいる、わが国を代表する育毛の専門家の一人である。そして、引用商標権者は、ヘアドクター発毛科学研究所の副所長である。
このように、請求人は、「ヘアドクター」の商標を発毛・育毛の施術(育毛サロン)及び育毛剤(商品販売者名)等に使用しており、同業者である被請求人が引用商標と類似する本件商標を使用することにより不利益を受けることから、本件商標登録無効審判を請求することに利害関係を有するものであり、請求人適格を有する。
この点に関し、被請求人は、請求人が引用商標権者から使用許諾を受けていることについて立証する資料が何ら提出されていないから、請求人が利害関係人であるか否かが不明である旨反論しているので、請求人は、引用商標権者と商標使用許諾契約書を交わし、平成28年1月18日付け審判事件弁駁書(以下「弁駁書」という。)において、請求人が引用商標の通常使用権者であることを明確にした(甲6)。
したがって、請求人が利害関係を有することは明白である。
2 無効原因
本件商標と引用商標とは互いに類似する商標である。「ヘアードクター」は、一般名称及び慣用的に使用されている商標ではない。また、「ヘアドクター」は、使用実績のある登録商標であり、普通名称化しているような特別な事情もない。
これに対して、本件商標構成中の「ルイ」は、「ヘアードクター」に比して短く、人の名前と認識される言葉である。
したがって、本件商標構成中の「ヘアードクタールイ」は、「ヘアードクター」と「ルイ」との結合力が弱く、一体不可分に一体化した結合商標ではなく、「ルイ」と称する「ヘアドクター」ブランドと理解されるような商標であり、明らかに「ヘアードクター」に重心が置かれた商標である。故に、「ヘアドクター」と「ヘアードクタールイ」とは、称呼も観念も類似する商標である。
そして、少なくとも「理容・美容(育毛・増毛施術等)」の分野においては、長年の使用実績により、業界では周知のブランド名であるから、本件商標は、他人の実績のあるブランド名に単に「ルイ」を付記したにすぎない商標であって、明らかに出所混同が生じる類似商標である。
本件商標に係る拒絶査定不服審判における審決は、単にわずか2文字の「ルイ」、英字としてもわずか3文字の「Rui」を、現存する他人の先行登録商標「ヘアドクター」に付加しただけで、非類似と判断しており、商標権侵害とならないことになるかのような判断は誤っているといわざるを得ない。さらに、使用実績のある先登録商標を全く無視した判断であり、商標保護の法目的にも反する。
本件商標は、過不足ない言葉を結合させたケースではなく、バランスも明らかに悪く、しかも周知であるかどうかを別にしても、現存する登録商標(ブランド名)であって英字10文字の「HairDoctor」に、わずか3文字の「Rui」を付記しただけである。しかも、付記した「Rui」は、人の名前と認識されるような言葉であることも考慮すれば、明らかに出所混同の生じるおそれがある類似商標である。
したがって、本件商標は、本件商標登録出願前に商標登録された引用商標と類似し、商標法第4条第1項第11号に違反して商標登録されたものであり、同法第46条第1項第1号により本件商標登録は無効とされるべきものである。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証を提出している。
1 請求人の請求人適格性
請求人は、引用商標の商標権者から使用許諾を受けていることで利害関係を有するとしているが、これを立証する資料は何ら提出されていないから、法的利害関係があるか否かは全く不明である。
甲第5号証の提出によって、被請求人の使用による本件商標で不利益を受けるとの主張は、経済的な理由にすぎず、商標登録無効審判の請求人適格性を明らかにしているものではない。
2 本件商標と引用商標との外観上の相違
本件商標中の2段併記されたいずれの態様のものであっても、引用商標とは、特に構成文字の配列、構成文字数の根本等において相違し、また、本件商標と引用商標とは、その外観構成において顕著に区別し得る外観上非類似の商標であることは明白である。
3 本件商標と引用商標の称呼上の相違
本件商標からは「ヘアードクタールイ」の称呼が生じ、引用商標からは「ヘアドクター」なる称呼が生じる。
本件商標は、7音ないし9音より構成され、引用商標は、5音ないし6音構成からなるから、両商標は、その構成音数において顕著に相違する称呼上非類似の商標であることは明らかである。
この点に関し、請求人は、引用商標に係る「ヘアドクター」は登録商標であり、使用実績もあるブランド名であるばかりでなく、一般的な慣用語ではなく、普通名称化している特別事情もないとともに、「ルイ」は人の名前と認識される言葉であり、「ヘアドクター」との結合力は弱く、したがって、一体不可分に一体化した結合商標ではないとする。
しかしながら、本件商標が2段に併記されているとしても、それぞれの表示段において、構成各文字が、同一の書体で、一連かつ一体として表わされているから、これが全体で一個の商標を構成することは、その構成外観上からも明らかである。
よって、本件商標に接する取引者、需要者は、常にその全体で一個の商標と正しく認識、記憶し、「ヘアードクタールイ」として、その全体を不可分に理解するものである。
これに対して、引用商標は、一個の商標として特定された構成に沿って「ヘアドクター」とのみ称呼されるから、これが本件商標の称呼「ヘアードクタールイ」と相違することは明瞭である。
また、本件商標の外観構成より明らかなとおり、下段英文字中の「H」、「D」、「R」は大文字で表わされてなるところ、これらの大文字が特に強調されているものではなく、それらの間で表示されている英小文字とは間隔も空かず、一連に繋がっていること、上段表示においての片仮名文字が一連で、その何れをも強調されないで表わされているから、全体としても一連、一体に構成されているのである。
したがって、本件商標における音数が7音ないし9音よりなるとしても、本件商標の称呼が「ヘアードクター」と「ルイ」とに分離される蓋然性は全くないから、「ルイ」部分が捨象されて「ヘアードクター」として認識されることはあり得ない。
また、本件商標「ヘアードクタールイ」は、これがその一部のみをもって略称される必然性は全くない。
4 本件商標と引用商標の観念上の相違
本件商標は、その態様中の「ルイ」がともすると女性を表す固有名詞とも看取されることを考えると、髪について、あるいは髪に関する医者の個性的な人物名を看取されるものとはいえる。
これに対し、引用商標が観念するのは、その英語的意味合いから一般的な「髪についての医者」としての不特定なイメージがあるにすぎないから、両者は別個のものである。
しかも、指定役務、特に理容、美容との関係を見るとき、これらの役務のいずれも髪に関するものであることを鑑みると、「ルイ」なる個性的名称部分が独自な観念を発揮することは明らかであり、よって、本件商標と引用商標は、その意味も相違し、観念上も非類似の商標である。
5 「ヘアードクター」と「ルイ」との単なる結合ではない点
請求人は、引用商標がその使用実績により業界では周知のブランド名であり、少なくともこの理容・美容(育毛・増毛施術等)の分野では、本件商標は、請求人である他人の実績あるブランド名に「ルイ」を付記したにすぎず、出所混同を生じる類似商標である、と主張している。
しかしながら、「ヘアードクター」は、「髪医者」、「髪に関する医者」というような意義を有する英語に通じ、近時の語学力の理解を鑑みると、理容、美容の役務に使用されるとき、その対象者となる使用者をして髪に関する専門的なアドバイスを行うような役務の用途、使用目的を意味する自他役務識別力のない、あるいは弱い用語から成るにすぎない、とすれば、本件商標に接した者は、捨象される可能性がある自他商品・役務識別力が弱い「ヘアードクター」なる部分よりも、むしろ、「ルイ」部分によって認識される可能性が大きく、それが自然であるといえる。
請求人は、長年の使用実績により「ヘアドクター」が周知となっているとしているが、この周知である事実は全く示されていないし、その証拠も提示されていない。また、甲第5号証によって実績が示されているとしても、本件商標の登録時の周知性を示すものではないから、不当な主張にすぎない。
6 まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものではない。

第5 当審の判断
1 請求人適格について
本件審理に関し、当事者間に利害関係についての争いがあるので、まず、この点について判断する。
商標法第46条に規定する商標登録無効の審判を請求するについての法律上の利益を有する者とは、必ずしも当該登録商標と同一または類似の商標を同一または類似の商品について使用している者、あるいはその使用により現実に当該登録商標の権利者から販売中止の警告などを受けている者等に限られず、本条の立法趣旨、即ち、過誤による商標登録を存続させておくことは本来権利として存在することができないものに排他独占的な権利の行使を認める結果となるので妥当ではないという点を考慮すると、広くみるべきであって、本来無効とされるべき商標が登録され保護を受けることによって不利益を被るおそれのある者を含むと解するのが相当である。
本件においては、請求人は、引用商標の通常使用権者であって(甲6)、引用商標を発毛・育毛の施術(育毛サロン)及び育毛剤等の役務及び商品に使用しており、同業者である被請求人が引用商標に類似する本件商標を使用することは不利益を受けると主張しているのであるから、本件商標の登録を無効にし、排除せんとすることは、商標権の本質に照らして当然の権利というべきものである。
したがって、請求人は、本件商標の存在によって、不利益を受ける者であるから、本件審判の請求をするにつき、利害関係を有するというべきである。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標
本件商標は、別掲1のとおり、「ヘアードクタールイ」の片仮名及び「HairDoctorRui」の欧文字を二段に横書きしてなるものであるところ、該各文字は、同書、同大により等間隔で、まとまりよく一体に表してなるものであり、上段の片仮名は下段の欧文字の読みを片仮名表記したものと無理なく認識されるものである。そして、その構成文字から生ずる「ヘアードクタールイ」の称呼もよどみなく一連に称呼し得るものである。
そして、本件商標は、その欧文字部分において、「H」、「D」及び「R」の文字が大文字で表されていることから、「ヘアー」及び「Hair」、「ドクター」及び「Doctor」並びに「ルイ」及び「Rui」のそれぞれ3語から構成されているとみるのが自然であるところ、その構成中の「ヘアー」及び「Hair」の語は、「髪」を意味する語であり、また、同じく「ドクター」及び「Doctor」の語は、「医者。博士。」の意味を有し、名前の前に置かれる敬称として広く親しまれた英語であり、医者の診療分野別に、当該診療分野を表す語を冠して、例えば、「内科ドクター」、「小児科ドクター」等と呼ばれる実情があることからすれば、本件商標は、商標全体として「髪の医者であるルイという人物」程の一連の観念を認識させるとみるのが自然であり、殊更、「ルイ」及び「Rui」の文字部分を捨象し、「ヘアードクター」及び「HairDoctor」の文字部分をもって取引に資されるとみるべき特段の事情も見いだせない。
(2)引用商標
引用商標は、別掲2のとおり、やや図案化した「ヘアドクター」の片仮名を横書きしてなるものであるから、その構成文字に相応して、「ヘアドクター」の称呼を生ずるものであり、「髪の医者」程の意味合いを認識させるものであるから、当該意味合いの観念を生ずるものである。
(3)本件商標と引用商標との類否
本件商標と引用商標とは、それぞれ上記(1)及び(2)のとおりの構成であって、その構成において明らかな差異を有することからすれば、両商標は、外観上、容易に区別し得るものといえる。
次に、本件商標から生ずる「ヘアドクタールイ」の称呼と引用商標から生ずる「ヘアドクター」の称呼は、構成音数及び「ルイ」の音の有無という顕著な差異を有するから、両称呼は明確に聴別し得るものである。
さらに、本件商標は、「髪の医者であるルイという人物」の観念が生ずる一方で、引用商標は、「髪の医者」の観念が生ずるものであるから、観念上、両商標が相紛れるおそれはない。
そうしてみると、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
(4)請求人の主張について
請求人は、引用商標が、「理容・美容(育毛・増毛施術等)」の分野においては、長年の使用実績により、周知のブランド名である旨を主張するが、提出された甲第5号証からは、請求人が発毛及び育毛を専門とする「ヘアドクター発毛科学研究所」の所長であり、1977年以来35年間、育毛サロンでの手当てをはじめ、発毛及び育毛方法と脱毛予防の研究開発に取り組んでいることがうかがえるにすぎないものであり、引用商標が需要者の間において周知であると認めることはできない。この点に関し、請求人は、「引用商標が周知である事実は全く示されていないし、その証拠も提示されていない。」旨の被請求人の反論に対しても、弁駁書において、その周知性を裏付ける証拠を何ら提出していない。
(5)小括
したがって、本件商標及び引用商標に係る指定役務が同一又は類似するものであるとしても、両商標は非類似の商標であるから、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当するものではない。
3 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項の規定に基づきその登録を無効とすべきではない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲1(本件商標)


別掲2(引用商標)


審理終結日 2016-02-25 
結審通知日 2016-03-01 
審決日 2016-03-14 
出願番号 商願2008-57078(T2008-57078) 
審決分類 T 1 11・ 262- Y (X44)
T 1 11・ 263- Y (X44)
T 1 11・ 261- Y (X44)
T 1 11・ 02- Y (X44)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 泉田 智宏 
特許庁審判長 酒井 福造
特許庁審判官 堀内 仁子
藤田 和美
登録日 2010-04-16 
登録番号 商標登録第5317583号(T5317583) 
商標の称呼 ヘアードクタールイ、ルイ、アアルユウアイ、ヘアードクター、ドクタールイ 
代理人 原田 寛 
代理人 吉井 雅栄 
代理人 吉井 剛 

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