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審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) W03
管理番号 1313261 
異議申立番号 異議2014-900167 
総通号数 197 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2016-05-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2014-06-02 
確定日 2016-03-14 
異議申立件数
事件の表示 登録第5653895号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5653895号商標の商標登録を取り消す。
理由 第1 本件商標
本件登録第5653895号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおりの構成からなり、平成25年8月28日に登録出願、第3類「家庭用帯電防止剤,家庭用脱脂剤,さび除去剤,染み抜きベンジン,洗濯用柔軟剤,洗濯用漂白剤,つや出し剤,自動車用光沢剤,せっけん類,自動車用洗浄剤,化粧品,香料,自動車用芳香剤,薫料,研磨紙,研磨布,研磨用砂,人造軽石,つや出し紙,つや出し布」を指定商品として、同25年12月4日登録査定、同26年3月7日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人ら」という場合がある。)が引用する申立人らの製造・販売する商品のタグ・シールに付する標章は、別掲(2)ないし(12)のとおりの構成よりなり、また、登録異議申立人の有限会社オリジナルプラント(以下「オリジナルプラント」という。)が有する登録商標は、別掲(13)ないし(15)のとおりの構成よりなる登録第5167977号商標(別掲(13))、登録第5324656号商標(別掲(14))、登録第5561880号商標(別掲(15))及び登録第5607847号商標(別掲(14))である(上記標章及び登録商標を総称して「引用商標」という場合がある。)。

第3 登録異議の申立ての理由(要旨)
登録異議申立人は、登録異議の申立ての理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第48号証(枝番号を含む。)を提出している。
1 商標法第4条第1項第10号および15号該当性
本件商標は、需要者の間で広く認識されている(甲5、甲11ないし甲34)引用商標とその文字部分、図形部分ともに同一又は類似であり、全体としてみても類似である。
また、申立人らは、申立人商標を基にしたシリーズ商品(以下「申立人商品」という。)と本件商標の指定商品「化粧品」、「香料」は抵触する(甲5)。
それ以外の指定商品についても、キャラクターグッズという申立人商品の特性および申立人商品と一定の類似性があること、申立人商標が需要者の間で広く認識されていることから、これと類似する本件商標がその指定商品に使用された場合には商品の出所について混同を生ずるおそれがある。
2 商標法第4条第1項第19号
引用商標が需要者の間で広く認識されていること、本件商標と引用商標が類似であることは上記のとおりである。また、商標権者は模倣品の販売目的という不正の目的をもって本件商標出願をしたものである。
3 商標法第4条第1項第7号
商標権者は周知の申立人のキャラクターを知りつつ模倣品販売という不正の目的をもって商標出願をしており、本件は申立人と商標権者との取引上のトラブルという事案でもないことから、本件商標登録出願の経緯には著しく社会的妥当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないものである。
4 本件商標の登録は、証拠(甲1ないし甲48)から明らかなように、商標法第4条第1項第7号、同第10号、同第15号及び同第19号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、取り消されるべきものである。

第4 当審における取消理由
当審において、商標権者に対して、平成27年7月6日付け取消理由通知書で通知した本件商標の取消理由は、要旨次のとおりである。
1 申立人らの提出に係る証拠及び申立理由の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。
(1) オリジナルプラントは、「1.服飾雑貨、室内用装飾品、陶器の企画、製造、販売及びその輸出入 2.文具、玩具、縫いぐるみの企画、製造、販売及びその輸出入 3.紳士服、婦人服、子供服、アクセサリー、袋物の企画、製造、販売及びその輸出入 4.絵本の出版 5.キャラクター商品(個性的な名称や特徴を有している人物、動物等の画像を付けたもの)の企画、開発」等を目的として、平成3年10月24日に設立された企業であり(甲2)、また、登録異議申立人の株式会社サンタン(以下「サンタン」という。)は、「1.喫煙具の製造販売 2.装粧品の製造販売」等を目的として、昭和46年3月1日に設立された企業であって(甲3)、オリジナルプラントは、サンタンに、キャラクター商品の商品化権をライセンスしている。
(2) 申立人らは、オリジナルプラントの取締役である戸崎尚美(大脇尚美)の創作に係るうさぎのキャラクターと「le Sucre」の文字よりなるデザインを基にした、ぬいぐるみ、文房具類、かばん・ポーチ類、ベビー用品、キッチン用品、タオル・ハンカチ類、インテリア用品、カー用品、入浴剤等の化粧品などの生活雑貨等の商品(以下「申立人商品」という場合がある。)の企画をし、サンタン又はサブライセンシーがこれらの商品の製造販売を行っている(甲2、甲4及び甲5)。
(3) 申立人商品及び引用商標の新聞、雑誌、通販カタログ等での紹介ないし広告、申立人商品の各種展示会等への出展等
ア 全国に20,000部発行されている小売店向けの情報誌「ファンシーショップ」(平成17年11月25日発行)には、サンタンが雑貨「le Sucre」シリーズを第4回「東京ファッショングッズトレードショー」に出品した旨の記事が、うさぎのぬいぐるみの写真とともに掲載された(甲11、甲12)。
イ 申立人商品及び引用商標は、通販カタログ「MY-SELECT」(2006年春夏号)、千趣会の「新:生活館」(2006年春夏号、同年夏号、2007年春夏号:年3回、各300万部発行)、「くらしと生協」(2007年春夏号)、「heart diary」(2009年秋冬号)に掲載されたほか、通販カタログ付きの書籍「手作りしよう!はじめての通園通学グッズ」(2010年2月7日発行)、「まいにちいっしょ!通園通学手づくりバッグ」(2012年2月17日発行)、「はじめての通園通学バッグとグッズ」(2013年1月23日発行)には、「le Sucre」模様の生地等を使用したバッグ等の作り方が紹介されるなどした(甲13?甲23)。
ウ サンタンは、平成17年から平成19年にかけて、「東京ファッショングッズトレードショー」に申立人商品を出品した(甲11、甲24)。また、サンタン及びサブライセンシー(井澤コーポレーション)は、平成23年春、同年秋冬、平成24年春夏、同年秋冬に、「東京雑貨コレクション」に申立人商品を展示した(甲25)。さらに、申立人らは、申立人商品を、平成22年、平成23年の阪神梅田本店の「うさぎのぴょんぴょん展」(甲26)、平成22年12月26日から翌年1月6日まで阪急三番街で開催された「キディランドプレゼンツ『梅田うさパーク2011』」で展示、販売した(甲27)。平成22年「うさぎのぴょんぴょん展」に関して、同年6月22日付け読売新聞夕刊にその広告が掲載され、その広告には、「『ル・シュクル』が登場」の文字とともに、うさぎのぬいぐるみの写真が掲載された(甲28)。
(4) 申立人商品の販売店及び売上高
ア 本件商標の出願日である平成25年5月2日の時点において、申立人商品は、全国80店舗以上の「Plus Heart」直営店、関東・甲信越・北陸地方で約20店舗を展開する「Aming」(甲29?甲31)で販売されていたほか、オンラインショッピングサイトの「Little Leaf」(本店、楽天市場)、「雑貨のおもちゃ箱パーク」(本店、楽天市場、Yahoo!店、Amazon.co.jp)等多数のオンラインショッピングサイトで販売されていた(甲32、甲33)。申立人らは、遅くとも平成18年以降、これらの小売店や問屋をはじめとした取引先に対して毎年2回カタログを配布していた(甲5)。
イ 申立人商品の売上は、平成21年から同25年まで、小売価格で毎年約6億円から10億円程度であった(甲34)。
(5) 平成26年2月20日言い渡しの大邱(テグ)地方法院の判決
後記5(2)イのとおり、韓国において、著作権法違反、不正競争防止法等に関する法律違反、商標法違反があるとして、平成25年9月17日に大邱(テグ)地方検察庁により公訴提起がされた金炳哲(キム・ビョンチョル)(甲38の2訳文)に対し、大邱(テグ)地方法院が、平成26年2月20日に言い渡した判決において、ルシュクレ(le sucre)うさぎ人形は、朴三浩(パク・サムホ)が、平成17年2月1日に、サンタンとの間で、ルシュクレキャラクター商品販売委託契約を締結し、平成21年2月13日に、韓国国内商品化権契約を締結した後、韓国国内ライセンス事業を行い、平成21年5月1日から平成25年6月l日までの間、多数の韓国企業との間でルシュクレライセンス契約を締結し、文具用品、厨房用品、下着、靴下などのホームウェア、寝具類、傘、水着、タオル、履物、アクセサリーなどとともに、韓国国内の販売店やオンライン販売店で販売され、かつ、広告された結果、遅くとも金炳哲(キム・ビョンチョル)が上記法律違反行為をした平成22年11月頃には、韓国国内の需要者の間に広く知られていたキャラクター人形であり、不正競争防止法等に関する法律第2条第1号(イ)目で規定する「韓国国内に広く認識された他人の商品であることを表示した標識」に該当する旨認定した(甲40訳文)。そして、朴三浩(パク・サムホ)が韓国国内の販売店等を通じて販売するルシュクレ(le sucre)うさぎ人形に付された引用商標(後記5(1)の朴三浩(パク・サムホ)が韓国国内で得た登録商標も含む。)も韓国国内の需要者の間に広く認識されていたものと優に推認することができる。
2 前記1で認定した事実によれば、引用商標は、本件商標の登録出願日(平成25年8月28日)には既に、申立人商品を表示するものとして、我が国の雑貨小物を取り扱う業者や主として若い女性、園児等小さな子供のいる母親並びに韓国の需要者などに、広く認識されていたものと認めることができ、その周知性は、本件商標の登録査定時においても継続していたものと推認することができる。
3 本件商標と引用商標との類似性
(1) 引用商標
ア 引用商標は、別掲(2)ないし(15)のとおりの構成よりなるものであるところ、これらを大別すると以下のとおりである。
(ア)うさぎの頭部よりなる図形と「le Sucre」の文字を結合した商標(別掲(2)、(4)、(10)、(11)、(15)、以下「引用商標(ア)」という。)
(イ)2匹又は1匹の擬人化したうさぎの図形と「le Sucre」又は「Le Sucre」の文字を要部とする商標(別掲(3)、(5)?(9)、(12)、以下「引用商標(イ)」という。)
(ウ) 「le Sucre」の文字と「ル.シュクル」の文字を二段に横書きした商標(別掲(13)、以下「引用商標(ウ)」という。)
(エ) 擬人化したうさぎを細い線で漫画風に表した図形よりなる商標(別掲(14)、以下「引用商標(エ)」という。)
イ 引用商標より生ずる称呼及び観念
(ア) 引用商標(ア)において、うさぎの頭部よりなる図形は、一般に広く採択され、使用されているありふれた図形といえるから、「le Sucre」の文字部分に強い自他商品の識別機能を有するものといえる。したがって、引用商標(ア)は、「le Sucre」の文字より、「ルシュクル」の称呼及び「砂糖」の観念が生ずるものである。
(イ) 引用商標(イ)における2匹又は1匹の擬人化したうさぎの図形部分と「le Sucre」又は「Le Sucre」の文字部分は、いずれもこれら商標を特徴付ける基本的構成部分(要部)といえるものであるところ、該うさぎの図形部分と「le Sucre」又は「Le Sucre」の文字部分とは、観念上密接な関係を有するものとは認められないから、それぞれ独立して自他商品の識別機能を有するものということができる。したがって、引用商標(イ)は、うさぎの図形部分から、「ウサギ」又は「ニヒキノウサギ」の称呼及び「うさぎ」又は「2匹のうさぎ」の観念が生ずるものであって、また、「le Sucre」又は「Le Sucre」の文字部分より、「ルシュクル」の称呼及び「砂糖」の観念が生ずるものである。
(ウ) 引用商標(ウ)は、その構成文字に相応して、「ルシュクル」の称呼及び「砂糖」の観念が生ずるものである。
(エ) 引用商標(エ)は、その構成に相応して、「ウサギ」の称呼及び「うさぎ」の観念が生ずるものである。
(2) 本件商標
本件商標は、別掲(1)のとおり、2匹の擬人化したうさぎを細い線で漫画風に表した図形と、これら図形の間の下部に、「le sucre」及び「ル シュクル」の文字を二段に横書きしてなるものであるところ、その構成中のうさぎの図形部分と「le sucre」及び「ル シュクル」の文字部分は、申立人商標(イ)と同様、それぞれ独立して自他商品の識別機能を有するものである。
してみると、本件商標は、その構成中顕著に表した2匹の擬人化したうさぎの図形部分より「ニヒキノウサギ」の称呼及び「2匹のうさぎ」の観念を生ずるほか、「le sucre」及び「ル シュクル」の文字部分より、「ルシュクル」の称呼及び「砂糖」の観念が生ずるものである。
(3) 本件商標と引用商標の対比
ア 外観
(ア) 本件商標と引用商標(ア)は、構成全体を観察すれば、外観上類似するとはいえないが、「le sucre」の文字部分を同じくするものであるから、両商標は、「le sucre」の文字において外観上類似するものというべきである。
(イ) 本件商標と引用商標(イ)は、全体的にみれば、擬人化したうさぎの図形と「le Sucre」又は「Le Sucre」の文字を結合した点において、看者に与える印象において外観上極めて近似するものといえるばかりか、細部においても、うさぎの図形における耳、目、鼻、口などの表現方法、うさぎ全体の表現方法において、極めて近似、あるいは、色彩を除けばほぼ同一といえるものである。
(ウ) 本件商標と引用商標(ウ)は、構成全体を観察すれば、類似するとはいえないが、「le Sucre」の文字部分を同じくするものであるから、「le sucre」の文字において外観上類似するものというべきである。
(エ) 本件商標と引用商標(エ)は、うさぎの図形において、その耳、目、鼻、口などの表現方法、うさぎ全体の表現方法において、極めて近似するものである。
(オ) したがって、本件商標と引用商標は、これらを時と所を異にして離隔的に観察した場合は、外観上互いに紛れるおそれのある類似の商標というべきである。
イ 称呼及び観念
本件商標と引用商標(ア)ないし(ウ)は、「ルシュクル」の称呼及び「砂糖」の観念を同じくするものであり、また、本件商標と引用商標(イ)とは、「ニヒキノウサギ」の称呼及び「2匹のうさぎ」の観念を同じくするものである。
ウ 以上によれば、本件商標と引用商標は、外観上類似する商標であって、かつ、本件商標と引用商標(ア)ないし(ウ)は、称呼及び観念上も類似する商標というべきである。
4 不正の目的
(1) 申立人らと朴三浩(パク・サムホ)との関係
前記2(5)の大邱(テグ)地方法院が、平成26年2月20日に金炳哲(キム・ビョンチョル)らに言い渡した判決(甲40訳文)によれば、朴三浩(パク・サムホ)は、平成17年2月1日に、サンタンとの間で、ルシュクレキャラクター商品販売委託契約を締結し、平成21年2月13日に、韓国国内商品化権契約を締結した後、韓国国内ライセンス事業を行い、平成21年5月1日から平成25年6月l日までの間、多数の韓国企業との間でルシュクレライセンス契約を締結し、文具用品、厨房用品、下着、靴下などのホームウェア、寝具類、傘、水着、タオル、履物、アクセサリーなどを韓国国内の大型マートとオンライン販売店で販売し、また、日本から輸入するルシュクレ(le sucre)うさぎ人形(以下「本件うさぎ人形」という。)についても、多数のオンライン販売店等で販売していたこと、朴三浩(パク・サムホ)は、韓国において他人が有していた「le Sucre」商標を譲り受けた後、平成25年1月3日に、「le Sucre」の文字とうさぎの図形を結合した商標を商標登録したこと、などが認められる。
(2) 本件商標権者等について
ア 本件商標権者は、大韓民国釜山廣城市中区富平1街10-8番地に所在の株式会社であり、金炳哲(キム・ビョンチョル)を代表者とするものである(ただし、平成25年5月5日退任:甲1、甲37、甲40訳文)。また、金炳哲(キム・ビョンチョル)は、大阪市淀川区西宮原2丁目2番17号に所在の(有)海新貿易の代表取締役でもある(甲37及び甲42)。
イ 金炳哲(キム・ビョンチョル)は、平成25年9月17日に、韓国において、著作権法違反、不正競争防止法等に関する法律違反、商標法違反があるとして、大邱(テグ)地方検察庁により公訴の提起がされ(甲38の2訳文)、これを受けて、大邱(テグ)地方法院は、平成26年2月20日に、金炳哲(キム・ビョンチョル)に対し、懲役2年に処す旨の判決を言い渡した(甲40訳文)。
ウ 上記判決は、「被告人の主張に関する判断」において、概略以下のように認定した。
(ア) 不正競争防止等に関する法律違反において、「本件うさぎ人形は韓国国内に広く知られているキャラクター人形であり、消費者は日本で販売される本件うさぎ人形を正規品として認識しているといえるため、本件うさぎ人形は不正競争防止法及び営業秘密保護に関する法律第2条第1号(イ)目で規定する『韓国国内に広く認識された他人の商品であることを表示した標識』に該当し、被告人は本件うさぎ人形と実質的に同一・類似のうさぎ人形を輸入・販売し商品主体混同行為をしたとみるのが相当である。」
(イ) 商標法違反において、「本件うさぎ人形をそのまま図形で形状化した本件登録商標(審決注:朴三浩(パク・サムホ)が韓国で出願し、登録を得た商標。以下同じ。)の図形部分と同じ模様のうさぎ人形を輸入・販売することは消費者をして商標の本質的機能といえる出所を混同させるもので、商標権を侵害するものとみるのが相当であり、被告人が本件登録商標の図形部分と同じ模様のうさぎ人形を輸入・販売しつつその文字のみをシュクレドルジ(sucre d’orge)に変更したからといって商標権を侵害する故意がなかったとはいえない。」
エ 金炳哲(キム・ビョンチョル)が販売した上記うさぎ人形に付されたタグの表面は、「sucre d’orge」の文字が表されているものの、引用商標中、別掲(7)ないし(9)の商標とは、文字の表記方法、構成全体の形状・色彩・図柄等において極めて近似するものであり、また、同裏面には、日本語で注意事項や材質等が記載され、さらに、「製造元(有)海神貿易」、「販売元(有)SANTAN」、「大阪市淀川区西宮原2-2-17」などと記載されている(甲41)。
オ 本件商標権者又は金炳哲(キム・ビョンチョル)は、我が国において、以下の商標を登録出願した。
(ア) うさぎの図形と「sucre d’orge」の文字を結合した商願2013-33948(平成25年4月18日出願、指定商品:第18類、第24類及び第28類に属する商品、甲43)
(イ) うさぎの図形からなる商願2013-36941(平成25年5月1日出願、指定商品:第5類に属する商品、登録第5665839号(平成26年4月25日設定登録)、甲44)
(ウ) うさぎの図形と「sucre d’orge」の文字を結合した商願2013-90190(平成25年4月18日出願、指定商品:第18類及び第24類に属する商品、出願却下(平成26年10月17日)、甲45)
(エ) うさぎの図形からなる商願2013-36942(平成25年5月1日出願、指定商品:第18類、第21類、第24類、第25類及び第28類に属する商品、拒絶査定確定、甲46)
(オ) 「sucre d’orge」の文字からなる商願2013-36970(平成25年5月1日出願、指定商品:第5類に属する商品、拒絶査定確定、甲47)
(カ) 2匹のうさぎの図形と「le sucre」の文字からなる商願2013-37347(平成25年5月2日出願、指定商品:第5類及び第12類に属する商品、登録第5631156号(平成25年11月22日設定登録)、甲35の1)
なお、金炳哲(キム・ビョンチョル)が代表取締役となっている(有)海新貿易は、「LE SUCRE/ル シュクル」の文字からなる商願2013-43419(平成25年5月25日出願、指定商品:第18類及び第25類に属する商品、甲48)を出願し、当該出願は、登録第5667116号として、平成26年5月9日に設定登録された。
(3) 前記(1)及び(2)で認定した事実によれば、申立人商品は、平成17年2月1日に、サンタンと朴三浩(パク・サムホ)との間で締結した販売委託契約に基づき、韓国において輸入、販売されていたこと、その後、サンタンと朴三浩(パク・サムホ)は、平成21年2月13日に、「le sucre」の韓国国内における独占的商品化権及び韓国において「le Sucre」の商標権を取得する権限に関するライセンス契約を締結し、これに基づき、朴三浩(パク・サムホ)は、韓国において、他人の有する「le sucre」などの商標の譲渡を受けた後、「le sucre」の文字とうさぎの図形を結合した商標を出願し、登録を得たこと、申立人商品中のうさぎ人形は、韓国国内においてもその需要者に好評を博し、これに付されたタグに表示された擬人化したうさぎ図形と「le sucre」などの文字は、遅くとも平成22年11月頃には、韓国国内の需要者の間に広く認識されていたこと、このような状況において、本件商標権者の代表者である金炳哲(キム・ビョンチョル)は、平成22年11月24日頃から平成24年6月4日までの間に、申立人商品中のうさぎ人形の模造品を輸入し、韓国国内で販売していたこと、当該模造品のうさぎ人形のタグには、その表面に、別掲(7)ないし(9)の商標と酷似する模様が描かれ、また、同裏面には、該商品が日本で製造された商品であるかのように誤認される日本語の注意書き等と「販売元サンタン」の文字が表示されていたこと、上記金炳哲(キム・ビョンチョル)の不正行為は、韓国国内の著作権法、不正競争防止法等に関する法律、商標法に違反する行為であるとして、平成25年9月17日に、大邱(テグ)地方検察庁に公訴され、大邱(テグ)地方法院は、平成26年2月20日に、金炳哲(キム・ビョンチョル)に対し、懲役2年に処す旨の判決を言い渡したこと、本件商標権者及び金炳哲(キム・ビョンチョル)は、平成25年5月前後に、引用商標に類似する商標を我が国に出願したこと、などを認めることができる。
そうすると、本件商標権者の代表者である金炳哲(キム・ビョンチョル)の韓国国内における一連の違法行為、並びに、本件商標権者及び金炳哲(キム・ビョンチョル)による我が国における引用商標に類似する商標の登録出願を併せ考えると、本件商標権者による本件商標の出願及びその登録は、申立人らの商品に付される引用商標の存在及びその周知性を熟知した上で、申立人らが引用商標を第3類に属する商品について、登録を得ていないことを奇貨として、引用商標の周知性フリーライドするなど、本件商標を専ら自己の業務のために利用する意図(不正の目的)をもって、本件商標を先取り的に出願し、登録を得たものと推認せざるを得ないというべきである。
したがって、本件商標は、不正の目的をもって使用するものといわなければならない。
5 むすび
以上のとおり、引用商標は、その出願日(平成25年8月28日)及び登録査定日(平成25年12月4日)の時点において、申立人らの商品を表示するものとして、我が国の雑貨小物を取り扱う業者や主として若い女性、園児等小さな子供のいる母親などの間並びに韓国の需要者の間に広く認識されていたものであるところ、本件商標は、引用商標と類似する商標であり、かつ、本件商標権者は、引用商標の周知性フリーライドするなどの不正の目的をもって本件商標の登録を取得したものと認めることができる。
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第19号に違反してされたものである。

第5 商標権者の意見
商標権者は、前記第4の取消理由の通知に対し、指定した期間を経過するも何ら意見を述べていない。

第6 当審の判断
本件商標は、前記第1の構成からなるものである。
そして、本件商標について通知した前記第4の取消理由は、妥当なものと認められる。
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第19号に違反してされたものであるから、他の申立の理由について判断するまでもなく、同法第43条の3第2項の規定により、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 別掲(色彩は、原本を参照されたい。)
(1)本件商標


以下、引用商標
(2)


(3)


(4)


(5)


(6)


(7)


(8)


(9)


(10)


(11)


(12)


(13)


(14)


(15)










異議決定日 2015-11-06 
出願番号 商願2013-71185(T2013-71185) 
審決分類 T 1 651・ 222- Z (W03)
最終処分 取消  
前審関与審査官 大井手 正雄 
特許庁審判長 酒井 福造
特許庁審判官 今田 三男
堀内 仁子
登録日 2014-03-07 
登録番号 商標登録第5653895号(T5653895) 
権利者 株式会社国際綜合貿易
商標の称呼 ルシュクル、シュクル、シュクレ、シュークル、スクレ 
代理人 山本 隆司 
代理人 小山 義之 
代理人 佐竹 希 
代理人 佐竹 希 
代理人 山本 隆司 

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