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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない 042
管理番号 1313179 
審判番号 取消2014-300960 
総通号数 197 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2016-05-27 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2014-11-28 
確定日 2016-03-22 
事件の表示 上記当事者間の登録第4727744号商標の登録取消審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 審判費用は,請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4727744号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲に示すとおり,「SOLUTION PARTNER」の欧文字を横書きした構成からなり,平成7年1月18日に登録出願,同15年11月21日に設定登録,第42類「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ,飲食物の提供,入浴施設の提供,写真の撮影,オフセット印刷,グラビア印刷,スクリーン印刷,石版印刷,凸版印刷,気象情報の提供,求人情報の提供,一般廃棄物の収集及び処分,産業廃棄物の収集及び処分,建築物の設計,測量,デザインの考案,電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,電子部品及び電子機器並びに記憶媒体に関する試験・開発及び研究,医薬品・化粧品又は食品の試験・検査又は研究,建築又は都市計画に関する研究,公害の防止に関する試験又は研究,電気に関する試験又は研究,土木に関する試験又は研究,著作権の利用に関する契約の代理又は媒介,通訳,翻訳,医業,健康診断,歯科医業,調剤,栄養の指導,衣服の貸与,計測器の貸与,自動販売機の貸与,展示施設の貸与,電子計算機(中央処理装置及び電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスク・磁気テープその他の周辺機器を含む。)の貸与,技術者の派遣による電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,科学用・航海用・測量用・写真用・音響用・映像用・計量用・信号用・検査用・救命用・教育用・計算用又は情報処理の機械器具及び電気式又は光学式の機械器具・これらの部品・附属品及び材料に関する試験・検査・分析・調査又は研究,医療用機械器具及び医療補助品・これらの部品・附属品及び材料に関する試験・検査・分析・調査又は研究,照明用・加熱用・蒸気発生用・調理用・冷却用・乾燥用・換気用・給水用又は衛生用の装置・これらの部品・附属品及び材料に関する試験・検査・分析・調査又は研究,防災技術・安全技術に関する試験・検査・分析・調査又は研究,化学及び応用化学・物理学及び応用物理学・生物化学・電気工学及び電子工学・金属工学・資源開発工学・農学・医学に関する試験・検査・分析・調査又は研究」を指定役務とするものであり,その商標権は現に有効に存続している。
なお,本件審判の請求の登録は,平成26年12月17日である(以下,同登録前3年以内の期間を「本件要証期間」という。)。

第2 請求人の主張
請求人は,本件商標の指定役務中「建築物の設計,測量,電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,電子部品及び電子機器並びに記憶媒体に関する試験・開発及び研究,医薬品・化粧品又は食品の試験・検査又は研究,建築又は都市計画に関する研究,公害の防止に関する試験又は研究,電気に関する試験又は研究,土木に関する試験又は研究,技術者の派遣による電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,科学用・航海用・測量用・写真用・音響用・映像用・計量用・信号用・検査用・救命用・教育用・計算用又は情報処理の機械器具及び電気式又は光学式の機械器具・これらの部品・附属品及び材料に関する試験・検査・分析・調査又は研究,医療用機械器具及び医療補助品・これらの部品・附属品及び材料に関する試験・検査・分析・調査又は研究,照明用・加熱用・蒸気発生用・調理用・冷却用・乾燥用・換気用・給水用又は衛生用の装置・これらの部品・附属品及び材料に関する試験・検査・分析・調査又は研究,防災技術・安全技術に関する試験・検査・分析・調査又は研究,化学及び応用化学・物理学及び応用物理学・生物化学・電気工学及び電子工学・金属工学・資源開発工学・農学・医学に関する試験・検査・分析・調査又は研究」についての登録を取り消す,審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求める,と申立て,その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ,証拠方法として甲第1号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は,本件審判の取消し請求に係る指定役務について継続して3年以上日本国内において商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが使用した事実が存しないから,その指定役務に係る商標登録は商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)弁駁の趣旨
被請求人は,本件商標を取消し請求に係る指定役務中「建築物の設計,デザインの考案,建築又は都市計画に関する研究,防災技術・安全技術に関する試験・検査・分析・調査又は研究」について使用していたことの証拠として乙第1号証ないし乙第8号証を提出した。
しかしながら,これらの証拠によっては,本件商標が取消し請求に係る指定役務について使用されていたことの立証はなされていない。
なお,本件審判の取消し請求に係る指定役務に「デザインの考案」は含まれていない。
(2)証拠の検討
ア 乙第1号証について
乙第1号証は,そもそも商標法第2条第3項第8号に規定する「役務に関する広告,価格表若しくは取引書類」のいずれにも該当しない。
また,取消し請求に係る指定役務のいずれについての使用の立証であるかも定かでない。
さらに,被請求人が本件商標の使用と主張する箇所は,全23頁からなる資料中の21頁に記されている“「成長性と収益性に富んだ三井不動産グループ」の実現”という事業目標の第2段階目に設定された小目標の説明文中の記述「・グローバルなマーケットでの不動産ソリューション・パートナーの地位を確立」,及び平成24年4月9日付けのニュースリリース中,4頁の事業計画の6年の計画期間の後半3か年の“位置づけ”の下に記されている説明文中の記述「『グローバルなマーケットでの不動産ソリューション・パートナー』の地位を確立します。」である。
しかしながら,これらの記述は,明らかに自他役務識別機能を発揮しておらず,商標としての使用(商標法第2条第3項各号)には該当しない。
イ 乙第2号証について
乙第2号証は,「株主の皆様へ」と題された投資家向けに作成された説明資料と思われるが,そもそも被請求人の取引者・需要者を対象として頒布される資料であるか定かでなく,商標法第2条第3項第8号に規定する「役務に関する広告,価格表若しくは取引書類」のいずれにも該当しない。
また,被請求人が本件商標の使用と主張する箇所は,9頁の“不動産ソリューションサービス事業”に併記された記述「不動産ソリューションパートナーのさらなる進化を目指して」であるが,この記述は,明らかに自他役務識別機能を発揮しておらず,商標としての使用(商標法第2条第3項各号)には該当しない。
さらに,この記述に係る被請求人の役務は,「不動産の活用に関する相談」,「不動産仲介」及び「駐車場事業」であるところ,取消し請求に係る指定役務のいずれにも該当しない。
ウ 乙第3号証について
乙第3号証は,被請求人の社会と環境への取り組みを紹介した資料であるが,被請求人が本件商標の使用と主張する箇所は,33頁の“従業員への取り組み”と題された項目中,“人材育成?幅広い視野と専門能力を持つ人材の育成?”の説明文中における副題「『不動産ソリューション・パートナー』の体現に向けて」,及びその中の記述「三井不動産は,顧客ニーズとマーケットの変化を多面的にとらえて新たな価値を創造する『不動産ソリューション・パートナー』であることを目指しています。」,さらには,“多様なバックグランドを持つ人材の採用”の段落中の記述「三井不動産では,『不動産ソリューション・パートナー』の中核を担う人材として,幅広い視野と高いポテンシャルを持っていることを重視し,ダイバーシティ(多様性)の思想に基づいて多様なバックグランドを持った人材を採用しています。」である。
しかしながら,これらの記述も,明らかに自他役務識別機能を発揮しておらず,商標としての使用(商標法第2条第3項各号)には該当しない。
また,そもそもこの記述に係る被請求人の取り組みは,取消し請求に係るいずれの指定役務にも該当しない。
エ 乙第4号証について
乙第4号証は,被請求人の会社概要であるが,被請求人が本件商標の使用と主張する箇所は,19頁で紹介されている“海外新規プロジェクト”の説明文「グローバルなマーケットにおける不動産ソリューション・パートナーを目指して。」,及びその下の解説文中の「市場と顧客のグローバル化・ボーダーレス化か加速する昨今,当社はグローバルなマーケットにおける不動産ソリューション・パートナーとなることを目指し,積極的に海外事業を展開。」であるが,これらの記述も,明らかに自他役務識別機能を発揮しておらず,商標としての使用(商標法第2条第3項各号)には該当しない。
また,これらの記述に係る被請求人の役務は,取消し請求に係る指定役務のいずれにも該当しない。
オ 乙第5号証ないし第7号証について
乙第5号証ないし第7号証は,いずれも被請求人とは他人の就職情報提供業者により提供されている求人情報である上に,商標法第2条第3項第8号に規定する「役務に関する広告,価格表若しくは取引書類」のいずれにも該当しない。
カ 乙第8号証について
乙第8号証は,被請求人の全13頁からなる顧客向け資料であるが,これは商標法第2条第3項第8号に規定する「役務に関する広告,価格表若しくは取引書類」のいずれにも該当しない。
また,被請求人が本件商標の使用と主張する箇所は,その最終頁の“終わりに”と題された項目の最後に記されている締め括りの挨拶「貴社の貴重な経営資源である■■■ビルの資産価値を維持し,今後さらに発展させていくために,弊社は実績と経験を最大限活用し,■■■様のソリューションパートナーとしてご協力させていただきたいと存じます。」であるが,この挨拶文の記述も,明らかに自他役務識別機能を発揮しておらず,商標としての使用(商標法第2条第3項各号)には該当しない。
さらに,乙第8号証に記載されている役務は,工事に関するサポート(第37類 建築工事に関する助言),テナント誘致(第36類 建物の賃借の代理又は媒介),運営管理(第36類 建物の管理)であって,取消し請求に係る役務ではない。
(3)まとめ
以上のとおり,被請求人が,取消し請求に係る指定役務について,本件商標と同一又は社会通念上同一と認められる商標を,本件審判の請求の登録前3年以内に,日本国内おいて使用していた事実は存在しないので,本件登録は上記指定役務について商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。

第3 被請求人の主張
被請求人は,結論同旨の審決を求めると答弁し,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として乙第1号証ないし乙第8号証を提出した。
1 理由の要旨
本件商標は,本件審判の取消し請求に係る指定役務のうち,「建築物の設計,デザインの考案,建築又は都市計画に関する研究,防災技術・安全技術に関する試験・検査・分析・調査又は研究」について,日本国内において,本件審判の予告登録日前3年以内に,商標権者により使用された。
2 具体的な理由
(1)本件商標と商標権者(被請求人)の業務
被請求人は,我が国の不動産業界におけるリーディングカンパニーとしての地位を有しており,住宅,オフィスビル,商業施設,宿泊施設,物流施設等の不動産を中心とする事業を広く行っている。その事業には,建物及び土地の売買や貸与等の不動産取引業務にとどまらず,建築物の設計,リフォーム,インテリアデザイン,都市計画に関する研究,防災や環境に関する研究等様々な業務を含むものである。
そして,2012年の「イノベーション2017」構想において,不動産に関する「ソリューションパートナー」としての地位を確立していくという目標を掲げ,その実現に向けて邁進している(乙1?7)。
被請求人は,この「イノベーション2017」構想の下で,前記事業に係る業務を行う際に,被請求人を表示するものとして,本件商標を日本国内で使用している。
(2)商標権者による使用
被請求人は,本件商標と社会通念上同一の商標「ソリューションパートナー」,あるいは「ソリューション・パートナー」を,以下(乙1?7)のとおり,本件審判の予告登録日前3年以内に,本件審判の取消し請求に係る指定役務のうち,「建築物の設計,デザインの考案,建築又は都市計画に関する研究,防災技術・安全技術に関する試験・検査・分析・調査又は研究」について使用している。
・「イノベーション2017/2012年4月」(乙1)
・「株主の皆様へ/2014年度・中間報告」(乙2)
・「&EARTH REPORT 2014?三井不動産グループの社会・環境への取り組み(2014年9月発行)」(乙3)
・会社案内「三井不動産(2014年発行)」(乙4)
・インターネットサイト「就職ウォーカー2015」:会社情報「三井不動産株式会社」(乙5)
・インターネットサイト「リクナビ2015」:三井不動産株式会社(乙6)
・インターネットサイト「リクナビ2016」:三井不動産株式会社(乙7)
そして,これらの使用は,商標法第2条第3項第8号の使用行為に該当する。
また,被請求人は,2013年7月26日付けの顧客への提案書(乙8)において,本件商標と社会通念上同一の商標「ソリューションパートナー」を使用している。
この提案書は,被請求人が,「ソリューションパートナー」というプロフェッショナルな役務の提供者として,建物のマスターリース契約を前提に,建物の改修工事,耐震補強工事を行い,運営管理や将来的な建物の建て替え計画,建物被災度判定システム等による防災や安全技術への取り組みを提言したものである。
一般に,建物の改修工事,耐震補強工事といった工事には,施工前に「建築物の改修設計,建築物の改修デザイン」を顧客に提示し,同意を得た上で施工するのが常識である。
さらに,被請求人は,防災への取り組みとして,日本橋に危機管理センターを設置し,防災技術・安全技術に関する調査や研究を行っており,これら調査や研究を駆使した建物被災度判定システムの導入を提案している。
したがって,この提案書(乙8)により,本件審判の請求に係る役務中「建築物の設計,建築物のリフォームデザインの考案,防災技術・安全技術に関する試験・検査・分析・調査又は研究」について使用された事実が立証されている。
4 まとめ
以上のように,本件商標は,商標権者により,本件審判の取消し請求に係る指定役務中「建築物の設計,デザインの考案,建築又は都市計画に関する研究,防災技術・安全技術に関する試験・検査・分析・調査又は研究」について,日本国内において,本件審判の請求の登録日前3年以内に使用されたことが明らかである。
したがって,本件商標は,商標法第50条の規定により登録を取り消されるべきものではない。

第4 当審の判断
1 証拠及び被請求人の主張によれば,以下の事実が認められる。
(1)被請求人は,我が国の不動産業界におけるリーディングカンパニーであって,被請求人及びそのグループ会社からなる三井不動産グループは,ビルディング事業,商業施設事業,賃貸住宅・ホテル・リゾート事業,住宅事業,不動産ソリューションサービス事業を主要事業としている(乙3,4)。
(2)被請求人は,三井不動産グループ中長期経営計画「イノベーション2017」(2012?2017年度グループ中長期経営計画)を策定し,2012年(平成24年)4月9日に,その概要をインターネット上でニュースリリースとして公表した。当該ニースリリースには,同計画期間は,2012年度から2017年度までの6年間とし,後半の3か年(2015?2017年度)をステージIIと位置づける旨の記載とともに,「『グローバルなマーケットでの不動産ソリューション・パートナー』の地位を確立します。」との記載がある(乙1)。
なお,インターネットサイト「就職ウォーカー2015」並びに「リクナビ2015」及び「同2016」の就職情報においても,被請求人の会社情報の中に,上記とほぼ同様の記載があることが認められる(乙5?7)。
(3)被請求人が作成した株主への2014年度中間報告書(2014年4月1日?同年9月30日)9頁には,「不動産ソリューションサービス事業 不動産ソリューションパートナーのさらなる進化を目指して」との見出しの下,「豊富な経験と国内外のネットワークをもとに,当社グループの総合的なマネジメント力を活かし,お客様のパートナーとして,ベストソリューションを提供いたします。」との記載がある(乙2)。
(4)被請求人が作成した2013年7月26日付けの顧客向け提案書(乙8)2頁には,「今回の提案は,■■■(審決注:マスキングされていることを表す。以下同じ。)ビルの貸付整備工事,リーシング,耐震補強工事等において現在または将来想定される課題について,弊社の持つ経験とノウハウを提供し,資産価値の維持と将来の成長について,短期的な面だけでなく長期的な視野で貴社の資産戦略に寄与することを目的としています。そのための手段として,本日は弊社によるマスターリースをご提案し,マスターリースに含まれる以下の一連の業務についてご説明致します。」との記載,その下に,「工事に関するサポート(貸付整備工事・耐震補強工事)」及び「運営管理(プロパティマネジメント)」等の各業務の概要について記載がある。
同8頁には,「VI.工事に関するサポート業務について」の見出しの下,「◆弊社のリニューアルや耐震補強工事の豊富な工事管理実績を基に,■■■ビルにおける方針策定から工事会社との折衝,工事管理までお引き受けし,貴社にとって最適な工事のご提案とサポートをいたします。」との記載並びにリニューアル工事実績及び耐震補強工事実績の例が紹介されている。
同12頁には,「VIII.運営管理について」の見出しの下,「危機管理センター」について「オフィスワーカーの安全確保とテナントの事業継続支援のため,先進の情報設備を整えた危機管理センターを日本橋に設置しております。・・・各ビルとの情報ネットワークとコミュニケーション拠点として機能し,総合的な状況把握と判断を行うとともに,迅速かつ適切な復旧支援を行います。」との記載,「建物被災度判定システム」について「弊社では地震発生時,・・・建物の被災状況の把握が不可欠であるため,高層ビルに『建物被災度判定システム』の導入を進めています。」との記載及び当該システムの構成が図示されている。
同13頁には,「IX.終わりに」の見出しの下,「●別館につきましては,耐震補強工事を行う前提でご提案しておりますが,・・・」,「●建物の詳細状況の調査をさせていただく必要がございます。」及び「●貴社にとって最適なストラクチャーの構築に向けてご協議させていただければと思います。」との記載,さらに締めくくりの言葉として,「貴社の貴重な経営資源である■■■ビルの資産価値を維持し,今後さらに発展させていくために,弊社は実績と経験を最大限活用し,■■■様のソリューションパートナーとしてご協力させていただきたいと存じます。・・・」との記載がある。
2 前記1で認定した事実によれば,本件商標の商標権者は,(ア)本件要証期間内に,不動産に関する総合的なソリューションサービス事業を主要事業の一として行っているところ(前記1(1)?(3)),(イ)顧客向けに提案書を2013年7月頃に作成し,当該顧客に建物のマスターリース契約を前提に,その契約内容に含まれる一連の業務,すなわち,工事に関するサポート(建物の改修工事,耐震補強工事の実施)や,建物の運営管理(日本橋に危機管理センターを設置し,建物被災度判定システム等による防災や安全技術への取り組みを実施)等について説明し,また,これらの実施に当たっては,事前に顧客の建物の詳細状況を調査する旨述べていること(前記1(4))から,当該提案書は,役務「防災技術・安全技術に関する検査・分析又は調査」に関する取引書類であると認められる。また,(ウ)前記(ア)においては,不動産に関する「ソリューションパートナー」との意味合いを認識させる「不動産ソリューション(・)パートナー」との表記を,さらに,前記(イ)においては,当該顧客の「ソリューションパートナー」として協力する旨の表記があること,が認められる。
そして,当該提案書に係る役務「防災技術・安全技術に関する検査・分析又は調査」は,本件審判の取消し請求に係る指定役務に含まれること,また,当該役務に使用された「ソリューションパートナー」との表示(標章)は,本件商標「SOLUTION PARTNER」とは,同一の称呼及び観念を生じる商標であるから,本件商標と社会通念上同一の商標であると認めることができる。
そうであれば,被請求人の上記行為は,「・・役務に関する広告,定価表若しくは取引書類に標章を付して・・頒布・・する行為」(商標法第2条第3項第8号)に該当するものということができる。
したがって,被請求人は,本件要証期間内に日本国内において,商標権者が取消し請求に係る指定役務に含まれる「防災技術・安全技術に関する分析・調査」について,本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用していたことを証明したものと認めることができる。
3 請求人の主張について
請求人は,提案書(乙8)について,「役務に関する広告,価格表若しくは取引書類のいずれにも該当せず,役務についての自他役務識別標識としての使用に該当しないから,本件商標がその請求に係る指定役務に使用されていたことを何ら立証するものではない」旨主張している。
しかしながら,商標権者は,顧客に対して当該提案書を用いて,工事に関するサポート(建物の改修工事,耐震補強工事の実施)や,建物の運営管理(日本橋に危機管理センターを設置し,建物被災度判定システム等による防災や安全技術への取り組みを実施)等について説明し,また,これらの実施に当たっては,事前に顧客の建物の詳細状況を調査することも当該提案書に明示して,契約内容を説明していることからすれば,役務「防災技術・安全技術に関する検査・分析又は調査」に関する商標法第2条第3項第8号所定の取引書類にも該当するというべきであり,また,当該提案書には,他の記述に埋没することなく,本件商標と社会通念上同一と認められる商標「ソリューションパートナー」が,商標権者が提供する役務の内容を表すものとして使用されていたと認めることができるから,当該役務についての出所識別標識としての使用に該当する。
したがって,請求人の上記主張は採用できない。
4 むすび
以上のとおりであるから,本件商標の登録は,商標法第50条の規定により,取り消すことはできない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲 別掲 (本件商標)




審理終結日 2015-09-09 
結審通知日 2015-09-14 
審決日 2015-11-12 
出願番号 商願平7-3088 
審決分類 T 1 32・ 1- Y (042)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 平松 和雄 
特許庁審判長 堀内 仁子
特許庁審判官 田中 亨子
田村 正明
登録日 2003-11-21 
登録番号 商標登録第4727744号(T4727744) 
商標の称呼 ソルーションパートナー 
代理人 特許業務法人きさ特許商標事務所 
代理人 山崎 和香子 
代理人 齋藤 宗也 
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト 

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