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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W18
審判 全部申立て  登録を維持 W18
審判 全部申立て  登録を維持 W18
審判 全部申立て  登録を維持 W18
審判 全部申立て  登録を維持 W18
管理番号 1312080 
異議申立番号 異議2015-900233 
総通号数 196 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2016-04-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2015-07-10 
確定日 2016-02-18 
異議申立件数
事件の表示 登録第5756186号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 
結論 登録第5756186号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第5756186号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲1のとおりの構成よりなり,平成26年6月19日に登録出願され,第18類「かばん類,袋物,財布,書類入れかばん,リュックサック,ビジネスバッグ,スーツケース,ハンドバッグ,スポーツバッグ,皮革,模造皮革,なめし革,毛皮,傘,皮革製包装用容器,携帯用化粧道具入れ」を指定商品として,同27年3月11日に登録査定,同年4月3日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が,本件商標が商標法第4条第1項第11号,同項15号及び同項19号に該当するとして,登録異議の申立ての理由として引用する国際登録第1002196号商標は,別掲2のとおりの構成よりなり,2008年8月14日に米国にした商標の登録出願に基づきパリ条約第4条の規定による優先権を主張して,平成21年(2009年)1月16日に国際商標登録出願され,別掲3のとおり,第8類,第9類,第11類,第12類,第14類,第16類,第18類,第20類,第22類,第25類及び第34類に属する国際登録原簿に記載の商品を指定商品として,同22年11月5日に設定登録されたものである。

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は,本件商標は商標法第4条第1項第11号,同項第15号及び同項第19号に該当するから,同法第43条の2第1号により,その登録は取り消されるべきであると申立て,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第32号証を提出した。
1 商標法第4条第1項第11号について
本件商標は,別掲1のとおり,やや縦長で逆台形状の黒色の角丸長方形の太枠内に,縁取りされ,丸みを帯びた逆台形状の四角形を背景とする白抜き十字の図形が表され,その下部に「MOBILITY」の文字が表されてなるものである。このうち,「MOBILITY」の文字部分は,商標下部に凹凸で小さく控えめに表されていること,また,「MOBILITY」の語は,「動きやすいこと,移動性」等を意味する英単語であるところ(甲3),本件商標の指定商品である第18類「かばん類」等との関係においては,商品の品質・用途等を示すにすぎない記述的な語であることを考慮すると,本件商標中,「MOBILITY」の文字部分は出所識別標識としての機能を有しない部分であるといえる。
一方,本件商標中,縁取りされ,丸みを帯びた逆台形状の四角形を背景とする白抜き十字の図形部分は,特徴的である上,商標中央に大きく表されているため,最も注意を惹く部分である。また,この部分は本件商標に係る指定商品の品質,用途等を何ら示すものではないから,出所識別標識としての機能を十分に発揮する本件商標の要部に相当するものと考えられる。
そして,引用商標は,白色で縁取りされ,丸みを帯びた黒色の四角形を背景に,白抜き十字の図形が表されてなるものである。
本件商標の要部と,引用商標を対比すると以下のとおりである。
まず,外観を対比すると,両商標は,四角形部分が丸みを帯びている点,縁取りを有する点,白抜き十字の図形が表されている点において共通している。本件商標に係る四角形部分は逆台形状である点において若干相違するものの,それ以外の特徴については全て共通していることから,両商標は外観において酷似しているといえる。
また,両商標は,十字の図形部分から生じる「十字」「クロス」等の観念において共通する。同様に,称呼についても,十字の図形部分から生じる「ジュウジ」「クロス」等の称呼において共通する。
以上より,本件商標と引用商標は,外観,称呼及び観念のいずれにおいても同一又は類似するといえるため,互いに類似する商標である。
そして,本件商標の指定商品中,少なくとも第18類「かばん類,袋物,財布,書類入れかばん,リュックサック,ビジネスバッグ,スーツケース,ハンドバッグ,スポーツバッグ,傘,携帯用化粧道具入れ」は,引用商標に係る第18類の指定商品と同一又は類似する商品である。
したがって,本件商標は,引用商標と類似する商標であり,引用商標に係る指定商品又はこれらに類似する商品について使用するものであるから,商標法第4条第1項第11号に該当する。

2 商標法第4条第1項第15号について
(1)引用商標の著名性
申立人であるウェンガー エス アーは,長年アーミーナイフを製造販売し続けてきたスイスを代表する老舗の一つである。アーミーナイフとは,軍隊において戦闘以外の日用的な使用に供される多機能な折りたたみナイフのことであるが,軍用品から派生して広く一般用の多機能折りたたみナイフとして普及しているものである(甲4)。
1901年,スイス北西部に所在する刃物商であった申立人は,スイス軍とアーミーナイフの供給に関する契約を締結した。そのアーミーナイフはスイス陸軍の装備として正式採用され,申立人は,100年以上に渡りビクトリノックス社と共にスイス軍へのアーミーナイフの納入を続けた(甲5)。また,申立人及びビクトリノックス社は,スイス軍への納入と共に一般向けにアーミーナイフの製造販売を続けた結果,当該製品は,圧倒的なシェア・高品質を誇るスイスを代表する製品として世界中でよく知られるに至った(甲4)。そして,申立人の製造販売に係るアーミーナイフに一貫して使用され続けた引用商標は,申立人及びその製品を示すものとして世界的に著名となるに至った。なお,引用商標は申立人の名義において世界各国で商標登録されている。
このように,申立人及びビクトリノックス社の製造販売に係るアーミーナイフは世界中で高い名声を得るに至ったが,両ブランドの力を結集させてその地位を強化するため,申立人は,8年前にビクトリノックス社の傘下に入る決断を下し,申立人のナイフ部門は2013年にビクトリノックス社へ統合された。このため,現在,引用商標が使用されたアーミーナイフの製造販売は行われていないが,申立人は,世界各国で引用商標が用いられたかばん,時計,包丁等の製品の販売及び宣伝広告を継続して行っており,引用商標は現在もなお申立人を示すものとして著名である。
日本国内においても,申立人及びビクトリノックス社の製造販売に係るアーミーナイフ.は,スイスを代表する製品であると認識されている(甲5)。また,引用商標に係る時計,包丁等の製品は約100の百貨店・専門店等で取り扱われており,それらの製品は国内の雑誌記事において度々取り上げられている状況にあることから,引用商標の持つ名声の高さをうかがうことができる。
以上を示す証左として,次の資料を提出する。
ア 製品写真・カタログ
甲第6号証は,引用商標に係る時計が,北海道・東京都・愛知県・兵庫県の各地に所在する「丸善」「ロフト」「西武」「ビックカメラ」等の百貨店・専門店で販売されたことを示す写真である。甲第7号証は,引用商標に係る包丁類が百貨店「ロフト」にて販売されたことを示すものである。甲第8号証ないし甲第10号証は,引用商標に係るライター,サングラス,かばん類の製品カタログである。これらの書類が示すように,引用商標が付された時計・包丁類・ライター・サングラス・かばん類等の製品が日本国内において販売されている。
イ 取引書類
甲第11号証は,日本国内にて引用商標に係る製品を取り扱うビクトリノックス・ジャパン株式会社と小売店舗との間における,2015年6月から7月にかけての売上伝票・発注書・請求書等の取引書類であり,甲第12号証は,申立人の関連会社であるウェンガー ウォッチ エスアーとビクトリノックス・ジャパン株式会社との間における引用商標に係る時計に関する請求書・梱包明細書等の取引書類である。これらの書類が示すように,引用商標に係る製品は日本国内において販売され続けている。
ウ 宣伝・広告に関する資料
(ア)甲第13号証は,2012年8月度における申立人製品の宣伝広告状況を報告する資料であり,次の事実が示されている。
2012年8月1日,株式会社テレビ東京の制作するテレビ番組「ワールドビジネスサテライト」にて,申立人の販売する引用商標が付された携帯型太陽光発電装置が取り上げられ,全国に放映された。
2012年8月6日から12日頃,生活協同組合連合会コープネット事業連合が組合員150万人へ送付するダイレクトメールに,引用商標に係る包丁類の広告が掲載された。
2012年8月22日,引用商標に係る時計を扱う販売店向けに,商品知識の教授等の販売トレーニングが行われた。
(イ)甲第14号証は,2012年9月度における申立人製品の宣伝広告状況を報告する資料であり,次の事実が示されている。
2012年9月に発行された雑誌「BE-PAL」,「Tokyo Walker」,「CLUTCH」,「BE-PAL大人の逸品」,「男子キッチン」,「monoマガジン」,「宝島」,「PEAKS」,「ランドネ」の記事において,引用商標が付された申立人の製品が取り上げられた。
2012年9月に発行された雑誌「男子キッチン」,「ecocolo」,「読楽」に,引用商標に係る包丁類の広告が掲載された。
(ウ)甲第15号証は,2013年9月度における申立人製品の宣伝広告状況を報告する資料であり,次の事実が示されている。
2013年9月に発行された雑誌「Goods Press」,「BE-PAL」,「GARRRV」,「monoマガジン」,「ナイフマガジン」,「Car Goods」,「Gainer」,「Begin」,「SJ」,「腕時計王」,「warp」,「POWER Watch」,「WATCH FILE」の記事において,引用商標が付された申立人の製品が取り上げられた。
(エ)甲第16号証は,2013年12月度における申立人製品の宣伝広告状況を報告する資料であり,2013年12月に発行された雑誌「BRUTUS」,「Goods Press」,「JOKER」,「Gainer」に,引用商標が付された申立人の製品が取り上げられた記事が掲載された事実が示されている。
エ 外国における商標登録の状況
申立人は,世界各国において引用商標に関する商標登録を行っている。これを証するため,国際登録第1002196号(保護対象国:44力国)に係る国際登録証及び国際事務局データペース検索結果写し,欧州共同体商標登録7555436号登録証,米国商標登録3820133号,同第4301579号登録証,カナダ商標登録TMA846351号,同TMA815234号登録証,エクアドル商標登録2389-14号登録証,ペルー商標登録217889号登録証を添付する(甲17?甲22)。
オ 引用商標の外国における著名性を裏付けるための追加資料
申立ての理由において,引用商標は世界的に著名なものであることを指摘すると共に,その事実を示す資料を提出したが,引用商標の外国における著名性を裏付けるための追加資料として,甲第24号証ないし甲第32号証を提出する(合議体注記:甲第24号証ないし28号証は,本件申立てに係る補正書の提出後である平成27年10月30日に上申書として提出されたものである。)。
甲第24号証ないし28号証に示されるように,引用商標が使用された製品は世界各地で販売されており,とりわけ米国において非常に大きな売上を見せている。甲第24号証に示された米国における直近の売上の合計は,2014年度が71,937,652米ドル,2013年度が58,676,561米ドル,2012年度が63,076,545米ドルである。
また,甲第29号証ないし甲第32号証が示すとおり,申立人に係るいずれのかばん製品にも,製品中央付近の目立つ位置に引用商標が付されている。
これらの資料から,申立人の製造販売に係る引用商標が用いられた製品が世界各地で販売されていること,また,米国における非常に大きな売上からすると,少なくとも米国において引用商標が盛んに使用されており,米国の需要者間において引用商標が著名であることが明らかである。
(2)引用商標との出所混同の恐れ
引用商標は,別掲2のとおり,白色で縁取りされ,やや丸みのある黒色の四角形を背景に,白抜き十字の図形が表されてなるものであるところ,本件商標は,世界的に著名な引用商標と酷似する図形をその要部に備えているから,本件商標は,他人の著名商標をその一部に有する商標に相当するものである。
また,引用商標は現在,時計・包丁類・ライター・サングラス・かばん類等の多様な製品に使用されて続けているところ,本件商標に係る全ての指定商品は,申立人が現に製造販売している製品と同一又は類似の関係にあるものか,又は密接な関連性を有するもののいずれかである。
以上に鑑みると,本件商標がその指定商品について使用された場合,需要者においてそれが申立人の製品であるとの誤認が生じるであろうことは容易に想像できるため,本件商標は申立人の業務に係る商品との間において混同が生じるおそれがある商標であることが明らかである。このため,仮に本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当しないとしても,本件商標は,同項第15号に該当する。
さらに,引用商標が用いられたアーミーナイフは圧倒的なシェア・高品質を誇るスイスを代表する製品として世界中でよく知られるに至っているものであることに鑑みると,少なくとも引用商標の国際登録時において,引用商標が外国において著名な商標であることが我が国の需要者によって認識されていたと推認されるところであり,この点のみを考慮しても,本件商標がその指定商品に使用された場合には,その商品の出所について引用商標との間で混同を生ずるおそれがあるといえる。このため,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。

3 商標法商標法第4条第1項第19号について
引用商標は,上記2(1)のとおり,申立人の製造販売に係るアーミーナイフヘの長年の使用によって世界的に著名となっているため,商標法第4条第1項第19号にいう「日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標」に該当することが明らかである。また,上記のとおり,本件商標は引用商標と酷似する図形をその要部に備えることから,本件商標は引用商標と類似する商標である。
ところで,本件商標の商標権者(以下「本件商標権者」という。)は,本件商標以外にも,商標登録第5759665号及び商願2014-51133について商標登録・出願を行っている。
これらの商標は,角丸四角形内に白抜きで十字の図形が表されている点において,いずれも引用商標と近似している。特に,商願2014-51133に至っては,十字を囲む枠の態様及び十字の背景の色彩が申立人の使用している商標と酷似している。
また,本件商標権者と同一の名称・住所が表示されている本件商標権者のものと思われるウェブサイトを参照すると,「Cooperator」(協力者)として引用商標及び申立人に係る「WENGER」のロゴが無断で表されており,あたかも本件商標権者が申立人と取引関係を有しているかのようであるが(甲23),実際にはそのような関係は存在していない。
さらに,本件商標権者が,世界的に著名な引用商標の存在を全く知らずに一連の商標を偶然に考案し出願したとは到底考えることができない。
以上からすると,本件商標権者は,引用商標に化体した信用,名声,顧客吸引力等を不正に利用する意図をもって,本件商標及び上記の商標の登録を試みたことは明白である。仮に本件商標の登録を許すならば,本件商標が付された製品を申立人に係る製品と誤認して購入してしまう需要者が多数現れることは自明であり,需要者を保護するためにも本件商標の登録を取り消すべき必要性は高い。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に該当する。

第4 当審の判断
1 引用商標の周知著名性について
(1)事実認定
証拠及び申立人の主張によれば,以下のとおり認めることができる。
ア 申立人は,件外ビクトリノックス社とともに,アーミーナイフの製造販売を続けてきたスイスの企業である。アーミーナイフとは,軍隊において戦闘以外の日用的な使用に供される多機能な折りたたみナイフのことであるが,軍用品から派生して広く一般用の多機能折りたたみナイフとして普及しているものである(甲4及び申立人の主張)。
イ 引用商標は,長年アーミーナイフに使用されてきたところ,申立人のナイフ部門は,2013年1月30日にビクトリノックス社に統合され,以降,申立人は,アーミーナイフの製造販売を行っておらず,本件商標登録出願時及び査定時おいて,引用商標をアーミーナイフに使用していない(甲5及び申立人の主張)。
ウ 申立人は,甲第6号証は引用商標に係る時計について,北海道・東京都・愛知県・兵庫県の各地に所在する「丸善」「ロフト」「西武」「ビックカメラ」等の百貨店・専門店で販売されたことを示す写真であり,甲第7号証は引用商標に係る包丁類が百貨店「ロフト」にて販売されたことを示すものであり,さらに,甲第8号証ないし甲第10号証は,引用商標に係るライター,サングラス,かばん類の製品カタログであり,これらの書類が示すように,引用商標が付された時計,包丁類,ライター,サングラス,かばん類等の製品が日本国内において販売されていると主張している。
しかしながら,これらの証拠によれば,引用商標が,時計,包丁類,ライター,サングラス,かばん類に使用されていることがうかがい知ることができるものの,引用商標が,我が国において,どの期間,どの地域で,どのような規模で使用されたのかが把握することができず,また,甲第8号証ないし甲第10号証のカタログの配布部数も確認することができない。
エ 甲第11号証は,具体的にどのような商品が取引の対象となったのか確認できないものであり,甲第12号証は,2012年9月に商品「時計」について申立人により取り扱われたことは確認できるものの,数量については合計「245pc」との記載が認められるものの,これが具体的に商品「時計」についてどのような数量を表しているのか明らかではない。
オ 甲第13号証によれば,引用商標が使用された申立人の商品が,2012年8月に,テレビで取り上げられ(商品は「携帯型太陽光発電装置」),生活協同組合連合により宣伝され(商品は「包丁」),時計店向けに宣伝トレーニングが行われたことが確認できるところであるが,それにとどまるものである。
カ 甲第14号証ないし甲第16号証によれば,2012年9月,2013年10月ないし12月に発行された雑誌(延べ29誌)において,引用商標が使用された申立人の商品(ナイフ,包丁,時計など)が紹介されたことが確認できるものの,これらの雑誌の発行部数は把握できず,これら以外の,新聞,雑誌やマスメディア等における宣伝広告の程度やその期間等は把握することはできない。
キ 甲第24号証ないし甲第28号証によれば,引用商標を使用した商品は,外国において取り扱われていることが確認でき,甲第24号証の米国における直近の売上の合計は,2014年度が71,937,652米ドル,2013年度が58,676,561米ドル,2012年度が63,076,545米ドルであるとの主張がされている。
甲第24号証は,主に商品「かばん類」のものであり,上記の主張に不自然さは認められず,この金額(3年間の平均で約6千4百万米ドル)を甲第10号証に示された申立人の商品「かばん類」の価格に照らせば,同商品は米国において相当数の販売数量があったものと推認できる。
ク 甲第29号証ないし甲第32号証によれば,外国で取り扱われている,申立人の商品「かばん類」には引用商標が使用されていることが確認できるものの,これらが,どの国で取り扱われ,販売数量はどの程度であるのかなどは把握することはできない。
(2)引用商標の周知著名性についての判断
以上によれば,引用商標は,米国において主に,商品「かばん類」に使用された結果,同国において一定の周知性を獲得していたものと判断できる。
しかしながら,提出された証拠方法によっては,引用商標が我が国において,本件商標登録出願時及び登録査定時において,かばん類,ナイフ,包丁,時計,ライターなどに使用され,これが申立人の商標として,我が国の取引者,需要者の間で広く知られ,著名となっていたと認めることはできない。
2 商標法第4条第1項第11号について
(1)本件商標と引用商標との類否について
本件商標は,別掲1のとおり,やや縦長で角丸台形状の黒色の太枠内に,縁取りのある丸みを帯びた略台形状の内に白抜きで十字の図形が表され,その下部に「MOBILITY」の欧文字が表示されてなるものである。本件商標は,その構成中の図形部分からは,取引に資する上での特定の称呼及び観念は生じないというべきであるから,その構成中の「MOBILITY」の文字に相応して「モビリティー」の称呼,「動きやすさ,移動性」の観念が生じるものである。
これに対して,引用商標は,別掲2のとおり,白色で縁取りされ,丸みを帯びた黒色の四角形内に,白抜きで十字の図形が表されてなるものであり,ここからは,取引に資する上での特定の称呼及び観念は生じないというべきである。
この点について,申立人は,本願商標と引用商標から,構成中の十字の図形に相応して「クロス」,「ジュウジ」の称呼及び「十字」,「クロス」の観念が生じる旨主張している。
しかしながら,両商標構成中の十字の図形は,それ自体ありふれたものというべきであり,この部分が両商標の要部となるとはいえず,本件商標と引用商標の図形は,それぞれ,全体が一体のものとして観察,把握されるというべきであり,上記の申立人の主張は採用することはできない。
そこで,両商標の類否についてみるに,両商標は,外観上,十字の図形を囲む背景及び縁取りにおいて,本件商標については,やや縦長で角丸台形状の太枠内に縁取りのある丸みを帯びた略台形で構成され,他方,引用商標については,白色で縁取りされ丸みを帯びた黒色の四角形で構成されており,互いに,十字の図形を囲む背景及び縁取りにおいて顕著な差異があること,本件商標は,十字の図形を囲む背景図形及び縁取中に「MOBILITY」の欧文字を含むことから,両商標は互いに区別し得るものである。以上よりすると,両商標は,外観上類似するということはできないものである。
そして,本件商標からは,「モビリティー」の称呼及び「動きやすさ,移動性」の観念が生じるのに対して,引用商標からは,取引に資する上での称呼及び観念は生じないから,両商標は,称呼及び観念において類似するということはできない。
したがって,本件商標と引用商標とは,外観,称呼及び観念のいずれからみても,類似する商標ということはできない。
よって,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第15号について
上記1のとおり,引用商標は,我が国において,本件商標登録出願時及び登録査定時において申立人の商標として,我が国の取引者,需要者の間で広く知られ,著名となっていたと認めることはできず,かつ,本願商標と引用商標とは上記2のとおり,互いに類似しない商標であるから,本件商標をその指定商品について使用しても,これに接する取引者,需要者が,該商品が申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品又は役務であるかのように誤認することはなく,その出所について混同を生ずるおそれはないというべきである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しない。
4 商標法第4条第1項第19号について
引用商標が米国において一定の周知性を獲得しているものであるとしても,本件商標と引用商標とは,上記2のとおり,互いに類似しない商標であるから,本件商標は,商標法第4条第1項第19号の該当性の要件を欠くものである。
そして,申立人が主張する,商標登録第5759665号及び商願2014-51133に係る商標は,本件商標とは態様が異なる別の事案のものであり,これらの登録商標の取得及び商標登録出願の行為をもって,本件商標権者が本件商標を不正の目的をもって使用をするものとの証左とすることはできず,また,本件商標権者のものと推認し得るウェブサイトに申立人の赤色の引用商標と同様の図形及び「WENGER」の文字が表示されているとしても(甲23),それをもって,本件商標権者が本件商標を不正の目的をもって使用をするものということもできない。
5 まとめ
以上,本件商標は,商標法第4条第1項第11号,同項第15号及び同項第19号のいずれにも該当するものとは認められないから,同法第43条の3第4項に基づき,その登録を維持すべきである。
よって,結論のとおり決定する。
別掲 別掲1 本件商標


別掲2 引用商標


別掲3 引用商標の指定商品
第8類「Cutlery, in particular pocket knives, multi-purpose pocket knives, multi-purpose knives, folding knives, household knives, kitchen knives and paring knives, bread knives, knives used in the restaurant industry, butchers' knives, fishing knives, hunting knives, craftsmen's knives, knives for sportsmen and sportswomen; kitchen flatware, in particular peelers, spatulas, carving forks; table cutlery; scissors; sharpening instruments; display boxes adapted for cutlery, knife holders, cutlery pouches sold empty, knife cases, knife holsters, knife covers and storage cases.」
第9類「Camera cases; computer carrying cases, mobile phone and cell phone cases and specialty holsters for carrying personal digital assistant; laser pointers; luminous pointers.」
第11類「Appliances, namely, battery-operated lights for camping; flashlight pointers.」
第12類「Aircraft; automobiles; bicycles; motorcycles; ships; bicycles and tricycles, including their spare parts and their structural parts, included in this class; baby buggies; rain covers for baby buggies; mosquito nets for baby buggies; thermal sleeping bags for baby buggies; sunscreens for baby buggies; buggy boards; prams; child safety seats for vehicles; sun-blinds for automobiles; stirrups for children, for automobiles; bicycle seats for children; covers for vehicles fitted); pram covers fitted); bump belts for mothers-to-be; bump belts for children; buckles for safety belts for children; tightening cushions for car seats for children; car seats booster cushions for children; seat covers for vehicles.」
第14類「Watches of Swiss origin.」
第16類「Leather passport holders; binders, card files, binders and file pockets, document portfolios; notepads, scratchpads, and writing pads, and loose paper refills.」
第18類「All-purpose dry bags, luggage, backpacks, daypacks, duffel bags, utility bags, shoulder bags, casual bags, briefcases, non-motorized wheeled packs, cosmetic cases sold empty and toiletry cases sold empty, travel bags, small personal leather goods, namely, wallets, billfolds, credit card cases, neck, necklace wallets, and shaving bags sold empty; umbrellas and name and calling card cases, cosmetic cases sold empty, toiletry cases sold empty, luggage tags, waistpacks, bags worn on the body, business cases, travel bags, all-purpose personal care bags, small personal leather goods; shoe bags for travel; unfitted bags for handheld electronic devices; waistpacks for holding electronic devices.」
第20類「Sleeping and nap mats, sleeping bags, air mattresses for use when camping, inflatable mattresses for use when camping, leather airline ticket holders; folding furniture; cots; neck pillows.」
第22類「Tents, screen houses in the nature of a tent, gazebo-like shelters in the nature of a tent.」
第25類「Clothing, footwear, headgear.」
第34類「Smokers` articles, in particular cigarette paper and tubes, cigarette filters, tobacco tins, cigarette cases and ashtrays, pipes, pocket apparatus for rolling cigarettes, lighters; matches.」

異議決定日 2016-02-09 
出願番号 商願2014-51131(T2014-51131) 
審決分類 T 1 651・ 222- Y (W18)
T 1 651・ 263- Y (W18)
T 1 651・ 262- Y (W18)
T 1 651・ 261- Y (W18)
T 1 651・ 271- Y (W18)
最終処分 維持  
前審関与審査官 浦崎 直之 
特許庁審判長 田中 幸一
特許庁審判官 早川 文宏
田村 正明
登録日 2015-04-03 
登録番号 商標登録第5756186号(T5756186) 
権利者 厦門市斯巴特進出口有限公司
商標の称呼 モビリティ 
代理人 大谷 寛 
代理人 特許業務法人浅村特許事務所 

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