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審決分類 審判 全部無効 商品と役務の類否 無効としない X45
管理番号 1310829 
審判番号 無効2015-890040 
総通号数 195 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2016-03-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2015-05-01 
確定日 2016-01-25 
事件の表示 上記当事者間の登録第5337886号商標の商標登録無効審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 審判費用は,請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5337886号商標(以下「本件商標」という。)は,「CASCOM」の欧文字と「キャスコム」の片仮名とを上下二段に書してなり,平成22年1月8日に登録出願,第45類「新聞記事情報・雑誌記事情報・文献記載情報・地図情報の提供,緊急時の連絡・通報の代行・媒介又は取次ぎ,不測の緊急事態時における状況の調査及び情報の提供,不測の緊急事態時における対処法に関する助言・情報の提供,施設の警備,身辺の警備,徘徊者の捜索,その他の個人の身元又は行動に関する調査,身の上相談・人生相談及びこれに関する情報の提供,身の上相談・人生相談の斡旋・媒介又は取次ぎ,緊急時用通報機器の貸与,火災報知機の貸与,消火器の貸与,家庭用電熱用品類の貸与(他の類に属するものを除く。)及びこれに関する情報の提供,家庭用電熱用品類の貸与(他の類に属するものを除く。)の斡旋・媒介又は取次ぎ,徘徊者の位置情報の提供」を指定役務として,同年7月16日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が,本件商標の登録の無効の理由において引用する登録第4366401号商標(以下「引用商標」という。)は,「キャスコム」の片仮名と「CASCOM」の欧文字とを上下二段に書してなり,平成11年1月11日に登録出願,第9類「電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品」を指定商品として,同12年3月10日に設定登録され,その後,同22年3月9日に商標権の存続期間の更新登録がされ,現に有効に存続しているものである。

第3 請求人の主張
請求人は,本件商標の登録を無効とする,審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め,審判請求書において,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として,甲第1号証ないし甲第5号証を提出した。
1 無効原因
(1)商標の類似について
本件商標は「CASCOM\キャスコム」,その呼称は「キャスコム,カスコム」であり,他方,引用商標は「キャスコム\CASCOM」,その呼称は「キャスコム,カスコム」であり,極めて類似性が高い。
(2)商品又は役務の類似
請求人は,安否・緊急通報装置「キャスコム」を用いて,高齢者の安否確認システムを提供している。
そのシステムの内容は,よく利用する冷蔵庫などの家電の扉にセンサーを設置し,長時間センサーが反応しない場合に自動的にセンターへ通報するといったものであり,高齢化社会用に開発されたものである(甲3)。
他方,被請求人は,「キャスコム」,「CASCOM」と記載された緊急通報装置を用いて,高齢者の安否確認サービスを提供しているが,その内容は,高齢者の動きを検知できなかった時点で通報を行うといったものである(甲4)。
以上のことから,本件商標の指定役務中,「緊急時の連絡・通報の代行・媒介又は取次ぎ,不測の緊急事態時における状況の調査及び情報の提供,不測の緊急事態時における対処法に関する助言・情報の提供,緊急時用通報機器の貸与」(以下「引用役務」という場合がある。)と,引用商標の指定商品である「電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品」の用途が,高齢者の安否確認及び緊急通報との点で一致していることは明白である。
(3)請求人及び被請求人は,いずれも,群馬県富岡市内の会社であり,群馬県内や日本全国の市町村の自治体に上記システムを提供している。
加えて,請求人は,平成11年4月から,担当部署を「キャスコム事業部」として,上記システムを提供している。
そのため,群馬県藤岡市及び安中市,埼玉県本庄市等が,実際に請求人と被請求人とを混同し,請求人に対して,被請求人との関係について説明を求めたことがあり(甲5),現に,需要者が役務と商品の出所を混同するといった状況が生じている。
以上より,引用商標の指定商品と,本件商標の指定役務中の引用役務とは,極めて類似しているというほかなく,商品又は役務が類似する。
2 答弁に対する弁駁
請求人は,被請求人の答弁に対し,弁駁していない。

第4 被請求人の答弁
被請求人は,結論同旨の審決を求めると答弁し,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として乙第1号証ないし乙第7号証を提出した。
1 本件商標の指定役務について
本件商標の指定役務中の「緊急時の連絡・通報の代行・媒介又は取次ぎ,不測の緊急事態時における状況の調査及び情報の提供,不測の緊急事態時における対処法に関する助言・情報の提供」は,第45類に属する役務で,類似群コードとして「42T01」が付されたものであり,「施設の警備,身辺の警備」に含まれる。
本件商標の指定役務中の「緊急時用通報機器の貸与」は,第45類に属する役務で,類似群コードとして「42X08」が付されたものであり,「火災報知器の貸与,消火器の貸与」に含まれる。
2 引用商標の指定商品について
引用商標の指定商品は,第9類に属する商品で,「電気通信機械器具」は,類似群コードとして「11B01」が付されたものであり,「電子応用機械器具及びその部品」は,「11C01」が付されたものである。
3 指定役務と指定商品との対比
上記のとおり,本件商標の引用役務と,引用商標の指定商品とは,類似群コードが異なり,いわゆる備考類似も規定されていないことからして,明らかに類似しない商品役務である。
4 請求人の商品について
(1)請求人は,「安否・緊急通報装置『キャスコム』を用いて,高齢者の安否システムを提供している。」とされているが,本装置「安否・緊急通報装置」は,「よく利用する冷蔵庫などの家電の扉にセンサーを設置し,長時間センサーが反応しない場合に自動的にセンターへ通報するといったもの」であるとの主張からすると,通報という機能・用途等の観点からして,第9類の「火災報知器,ガス漏れ警報器,盗難警報器(類似群コード:09G04)に属する商品であって,引用商標の指定商品に属する商品ではない(乙1ないし乙4)。
上記のように,請求人の商品は,引用商標の指定商品に含まれるものではないため,請求人の主張は,その前提となる指定商品の分類の当てはめが不当であることからして,失当である。
(2)請求人は,需要者が役務と商品の出所を混同するといった状況が生じている旨主張しているが,その根拠を欠き,そのような事実が存在したと認めることはできるものではない(乙5)。
5 その他
被請求人は,請求人に対し前橋地方裁判所高崎支部に民事訴訟を提起しており,請求人は,その訴訟における答弁書において,本無効審判の請求を主張している(乙6及び乙7)。
6 まとめ
以上により,引用商標の指定商品と,本件商標の指定役務中の「緊急時の連絡・通報の代行・媒介又は取次ぎ,不測の緊急事態時における状況の調査及び情報の提供,不測の緊急事態時における対処法に関する助言・情報の提供,緊急時用通報機器の貸与」とは,類似するものではない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当しない。

第5 当審の判断
1 請求の利益について
請求人が本件審判を請求する利害関係を有することについては,当事者間に争いがなく,審判事件答弁書によれば,両当事者は,前橋地方裁判所において,動産引渡等請求について争いがある(乙6及び乙7)ので,請求人は本件審判の請求人適格を有するものと判断し,本案について審理する。
2 本件商標と引用商標の類否について
本件商標は,「CASCOM」の欧文字と「キャスコム」の片仮名とを上下二段に表してなり,引用商標は,「キャスコム」の片仮名と「CASCOM」の欧文字とを上下二段に表してなるものであるから,両商標は,その構成各文字を同じくするものであって,外観において近似し,「キャスコム」の同一の称呼を生じ,観念においても相違がないものである。
したがって,本件商標は,引用商標と類似のものと認められ,これについて当事者間に争いはない。
3 本件商標の指定役務と引用商標の指定商品の類否について
(1)本件商標の指定役務について
本件商標の指定役務は,前記第1に記載のとおりであり,その指定役務中,争いのある第45類「緊急時の連絡・通報の代行・媒介又は取次ぎ,不測の緊急事態時における状況の調査及び情報の提供,不測の緊急事態時における対処法に関する助言・情報の提供,緊急時用通報機器の貸与」(引用役務)は,緊急時用の通報機器から通報された不測の緊急事態について,その状況を調査し,利用者等に対してその状況の内容等を連絡,通報等を行う役務,緊急事態についての対処法の助言,情報等の提供を行う役務,及び,緊急時用の通報機器の貸与に関するものということができる。
そして,請求人が提出した被請求人のホームページ(甲4)には,上部に「A」の文字部分がややデザイン化された「CASCOM」の欧文字が表示され,「株式会社キャスコムは独自に開発した機器で『安心な暮らし』を皆様にお届けする会社です」の記載,及び,「キャスコム緊急通報センターでは オペレーターと看護師が 24時間 緊急通報や安否通報の対応をいたします また,メールでの通報を選択することもできます」の記載があり,その下には,「見守り型・緊急通報」及び「あんしんめ?る」と記載してそれぞれの機器が掲載され,「キャスコム」と表示された機器が掲載されている。
また,該「キャスコム」と表示された機器については,「緊急ボタンの位置をお知らせする・・・CA2010型 緊急通報装置です」,「他社緊急通報センター様と弊社緊急通報センターを通し・・・市町村の自治体様を窓口とした多くのお年寄りのご家庭に設置され 日々の暮らしを見守っています」の記載がある。
これらによれば,被請求人は,「キャスコム」と表示された緊急通報用の機器を必要とする者の家庭に設置し,該機器から通報された緊急又は安否の通報に対し,「キャスコム緊急通報センター」において対応等を行っているものであり,これは,本件商標の指定役務中,「緊急時の連絡・通報の代行・媒介又は取次ぎ,不測の緊急事態時における状況の調査及び情報の提供,不測の緊急事態時における対処法に関する助言・情報の提供,緊急時用通報機器の貸与」の役務の提供ということができる。
(2)引用商標の指定商品について
引用商標の指定商品は,第9類「電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品」であるところ,その指定商品中の「電気通信機械器具」は,例えば,「携帯電話機」等の「電話機械器具」,「携帯用通信機械器具」等の「無線通信機械器具」の類の商品であり,その指定商品中の「電子応用機械器具及びその部品」は,例えば,「コンピュータ,パーソナルコンピュータ」等の「電子計算機及びその周辺機器」の類の商品である。
そして,「携帯電話機」,「携帯用通信機械器具」は,「無線を用いた持ち運び可能な小型電話機」等であって,通話,インターネット,電子メール等に使用される商品であって,「コンピュータ,パーソナルコンピュータ」は,主に電子計算機として使用される商品ということができる。
また,これらの商品は,その専門の事業者により製造され,専門の販売店若しくはコーナー等において品揃えされ販売されているのが一般的であり,それらの需要者は,「携帯電話機」や「パーソナルコンピュータ」等を使用する広く一般の者ということができる。
(3)本件商標の指定役務と引用商標の指定商品との類否について
役務と商品の類否について,「役務と商品とが類似するかどうかに関しては,前述の商標法の目的や商標の定義に照らし,役務又は商品についての出所の混同を招くおそれがあるかどうかを基準にして判断すべきであり,商品の製造・販売と役務の提供が同一事業者によって行われているのが一般的であるかどうか,商品と役務の用途が一致するかどうか,商品の販売場所と役務の提供場所が一致するかどうか,需要者の範囲が一致するかどうかなどの事情を総合的に考慮した上で,個別具体的に判断するのが相当である。」旨判示されている(東京地方裁判所 平成11年(ワ)第438号)。
そこで,本件商標の引用役務と引用商標の指定商品との類否について検討するに,本件商標の引用役務は,不測の緊急事態時における緊急通報や安否通報等の対応を行う事業者により提供されているのに対し,引用商標の指定商品は,その商品の専門の事業者により製造され販売されているのが一般的であるから,同一事業者によって行われているものということができない。
また,本件商標の引用役務は,不測の緊急事態時における緊急通報や安否通報等に対応するための役務の提供であるのに対し,引用商標の指定商品は,通話,インターネット,電子メール等に使用される商品又は電子計算機等であるから,用途が一致するものということができない。
さらに,本件商標の引用役務は,緊急通報や安否通報等に対応するために設けられた場所において提供されるのに対し,引用商標の指定商品は,これらの商品と取り扱う専門の販売店若しくはコーナーであるから,役務の提供場所と商品の販売場所とが一致するということができない。
また,本件商標の引用役務の需要者は,不測の緊急事態時における緊急通報や安否通報等の対応を必要とする者であるのに対し,引用商標の指定商品の需要者は,広く一般の者といえるものであるから,需要者の範囲が一致するものということもできない。
以上を総合すると,本件商標の引用役務と引用商標の指定商品とは,その事業者,用途,役務の提供場所及び商品の販売場所,需要者の範囲を異にする非類似のものというべきである。
その他,請求人が提出した証拠からは,本件商標の指定役務と引用商標の指定商品とが類似するものとすべき事情は見あたらない。
(4)まとめ
以上のとおり,本件商標が引用商標と類似の商標であるとしても,本件商標の指定役務は,引用商標の指定商品と同一又は類似の役務とはいえないから,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当しない。
4 請求人の主張について
請求人は,「請求人は,安否・緊急通報装置『キャスコム』を用いて,高齢者の安否確認システムを提供している。そのシステムの内容は,よく利用する冷蔵庫などの家電の扉にセンサーを設置し,長時間センサーが反応しない場合に自動的にセンターへ通報するといったものである(甲3)。他方,被請求人は,『キャスコム』,『CASCOM』と記載された緊急通報装置を用いて,高齢者の安否確認サービスを提供しているが,その内容は,高齢者の動きを検知できなかった時点で通報を行うといったものである(甲4)。以上のことから,本件商標の引用役務と,引用商標の指定商品の用途が,高齢者の安否確認及び緊急通報との点で一致していることは明白である。」旨主張している。
請求人が提出した「キャスコムからのご提案」とする同人のパンフレット(甲3)には,「安全センサー他 緊急通報サービス」の「緊急専用」と,「象印マホービン みまもりほっとライン」の「みまもり専用」とを,「緊急も見守りもこれ1台」として機能する「キャスコム」と表示された機器が掲載されており,該機器は,請求人の主張及びその機能,用途からして,「センサーからの信号を検知して監視者へ自動通報するための装置」に相当する商品であり,第9類「火災報知器,ガス漏れ警報器,盗難警報器」の類の商品と認められる。
しかしながら,請求人の使用にかかる該機器が,「通報用」に使用される装置であるとしても,これが,引用商標の指定商品に含まれるものということができず,本件商標の引用役務と引用商標の指定商品とが類似するものでないことは,前記3(3)に記載したとおりである。
また,請求人の使用にかかる該機器の用途と本件商標の引用役務の用途とが共通する場合があるとしても, 該機器は,引用商標の指定商品には含まれない商品であるから,本件商標の指定役務と引用商標の指定商品との類否判断に,影響を及ぼすものということができない。
よって,請求人の主張は採用することができない。
5 まとめ
以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第11号に違反してされたとはいえないものであるから,同法第46条第1項の規定により,無効とすることができない。
よって,結論のとおり審決する。
審理終結日 2015-11-26 
結審通知日 2015-12-01 
審決日 2015-12-14 
出願番号 商願2010-982(T2010-982) 
審決分類 T 1 11・ 265- Y (X45)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 綿貫 音哉海老名 友子 
特許庁審判長 金子 尚人
特許庁審判官 田中 亨子
大井手 正雄
登録日 2010-07-16 
登録番号 商標登録第5337886号(T5337886) 
商標の称呼 キャスコム、カスコム 
代理人 橋爪 ひろみ 
代理人 館山 史明 
代理人 特許業務法人 武和国際特許事務所 
代理人 高橋 伸二 

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