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審判番号(事件番号) データベース 権利
不服20113475 審決 商標
不服201515976 審決 商標

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審決分類 審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 取り消して登録 W11
審判 査定不服 商3条2項 使用による自他商品の識別力 取り消して登録 W11
管理番号 1309652 
審判番号 不服2015-764 
総通号数 194 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2016-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-01-14 
確定日 2016-01-06 
事件の表示 商願2013-98030拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願商標は、登録すべきものとする。
理由 1 本願商標
本願商標は、別掲のとおりの構成からなり、第11類に属する願書記載のとおりの商品を指定商品として、平成25年12月13日に登録出願されたものであり、指定商品については、原審における同26年8月8日付け手続補正書により、第11類「ランプシェード」となったものである。

2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は、6面の図形からなる立体商標と認められるところ、その指定商品『ランプシェード』は、一般に、光源を拡散させ、周囲に広く光を照らすもので、昨今、空間との調和をデザインしたインテリアとしての機能を備えた数多くの商品が市場に出回っている実情にある。そうすると、本願商標は、その指定商品『ランプシェード』について使用しても、本願商標に接する取引者、需要者は、その構成態様に徴してランプシェードの一形態を表現したものと認識するものとみるのが相当であるから、本願商標は、単に商品の形状を普通に用いられる方法をもって表示するにすぎないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。また、出願人が提出した証拠によっては、商品の営業に係る実績が何ら示されていないことから、商標法第3条第2項の要件を満たすものとは認められない。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
(1)本願商標の商標法第3条第1項第3号該当性について
本願商標は、別掲のとおり、突起を有する円柱部分の下に、上下方向にカーブした大きさの異なる4枚のシェードと2枚の水平の板を有し、これらのシェード及び板をつなぐ3本の線を組み合わせた構造からなる立体的形状のランプシェードといえるものであるところ、本願の指定商品である「ランプシェード」は、一般に、光源を拡散させて周囲を照らすため、光源の一部又は全部を覆う形状のものであるが、昨今は、空間を飾るインテリアの一つとして取り扱われて、様々な形状にデザインされたランプシェードが製造、販売されている実情がある。そうすると、本願商標は、これに接する取引者、需要者が、当該商品の形状をカーブした4枚のシェード等でデザインされた構造からなる立体的形状のランプシェードとして理解し、商品等の機能又は美感をより発揮させるために施されたものと認識するというのが相当であるから、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものといわなければならない。
してみると、本願商標の立体的形状は、未だ商品の形状を普通に用いられる方法で表示するものの域を出ないと解するのが相当であり、「ランプシェード」の形状として、需要者の予測可能な範囲内のものというべきである。
したがって、本願商標は、これをその指定商品に使用しても、単に商品の形状を普通に用いられる方法で表示したにすぎないものであるから、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。
(2)商標法第3条第2項について
ア 請求人(出願人)は、本願商標が、仮に、商標法第3条第1項第3号に該当するものであっても、同法第3条第2項に規定する、使用された結果需要者が何人かの業務に係る商品であると認識することができるものである旨主張して、甲第1号証ないし甲第224号証を提出しているので、以下、本願商標が商標法第3条第2項の要件を具備するものであるか否か検討する。
(ア)本願商標に係る商品形状の完成等
出願人は、1874年にデンマークで設立された照明器具メーカーであり、1924年に「近代照明の父」と呼ばれるデンマーク生まれのポール・ヘニングセン(以下「ヘニングセン」という。)と協力を開始した(甲5、6、40、193)。そして、本願商標は、ヘニングセンが1958年にデザインし、出願人が、現在に至るまで55年以上、ヘニングセン及び同氏の子息との協約に基づき、世界中の市場において、本願商標に係る立体的形状のランプシェード(以下「出願人製品」という。)に独占して使用してきたものである(甲6、66、197等)。
出願人製品の形状は、上下方向にカーブした大きさの異なる4枚のシェード、内部に組み込まれた2枚の反射板並びにこれらのシェード及び板をつなぐ3本の線によって構成されている。各々のシェードのカーブには、光源の光を光が必要とされる方向に効率良く反射させるために、ヘニングセンがシェードの形状に採用した「対数螺旋」と呼ばれる曲線が用いられており、メインシェードの直径が50cmであることから、「PH5」と名付けられた。出願人製品は、デンマークにおいて、「国民性ランプ」と称されるまでになり、海外で知られる最初のデンマーク製品の一つとして、55年以上を経た今も、日本を含め世界各地で人気を博している(甲6、8、19、40)。
出願人製品は、電球型蛍光灯への対応等の理由から、1994年に、塗装をオフホワイトから純白に近い白色に、また、2枚の内の1枚の反射板を金属製からフロストガラスに変更されているが、基本的な形状に変更はない(甲66)。
(イ)本願商標の使用の実情
a 使用開始時期及び使用期間
出願人製品は、ヘニングセンがデンマークで1958年にその形状を完成し、出願人が同年から販売を始め(甲197)、日本においては、出願人の販売代理店であった株式会社YAMAGIWA(名称変更時の「株式会社ヤマギワ」の時期を含む。)が、1972年から2007年までの定期的に発行する商品カタログ(甲158?178、180?182)並びに2014年及び現在の同社のインターネット販売サイト(甲66)で紹介し、輸入販売している。
また、出願人の日本法人であるルイスポールセン ジャパン株式会社(名称変更時の「タルジェッティ ポールセン ジャパン株式会社」の時期を含む。以下「日本法人」という。)は、同社の1992年から2014年まで定期的に発行する商品カタログ(甲184?189、191?195、197?204、206?210、212、214)並びに2014年及び現在の同社のインターネット販売サイト(甲68)で、出願人製品を紹介し、輸入販売している。
b 使用地域
出願人の日本法人は、当審における職権調査によれば、東京にショールームを有し、出願人の取扱いに係る商品は、東北、関東、甲信越、中部、関西、中国、四国及び九州の家具店等で取り扱われている。
また、出願人の「顧客リスト」(甲157)には、全国の建築設計事務所、住宅メーカー、インテリアコーディネーター、インテリアショップ、百貨店、インテリア雑誌及びプレス等の約5千社(人)が掲載されている。
c 販売数量
出願人製品は、世界で50万台を超すセールスを記録しているロングセラー商品であり(甲6)、日本においては、1999年から2014年の間に、約7万5千台が販売されている(甲217)。
d 広告宣伝等
上記a及びbで述べたとおり、出願人製品が掲載された商品カタログは、株式会社YAMAGIWA及び出願人の日本法人により、1972年から2014年の間に定期的に作成され、全国の建築設計事務所、住宅メーカー、インテリアコーディネーター、インテリアショップ、百貨店、インテリア雑誌及びプレス等の約5千社(人)の顧客へ配布されている(甲157)。また、住宅メーカーのミサワホーム株式会社が作成した商品カタログにおいても、出願人製品が掲載されている(甲217?219(合議体による注:上記cに記載の甲217及び下記eに記載の甲218及び219と号証番号が重複している。))。
出願人製品は、1995年から2014年に発行された、家具に関する書籍、照明に関する雑誌・カタログ、インテリア雑誌、ファッション雑誌、経済雑誌等の数多くの出版物で紹介されており(甲2、4?63、69)、例えば、「PH5・・・Paul Henningsen/Louis Poulsen Lighting,Denmark・・・PHシリーズ中、住宅用ペンダントライトとして最も普及した」(甲2)、「ポール・ヘニングセン デンマーク生まれ。近代照明の父と言われる。・・・北欧を代表する多くの照明器具を生み出した」(甲5)、「PH5 ルイスポールセン 1874年に創業したデンマークの照明器具メーカー、ルイスポールセンの定番として、世界で50万台を超すセールスを記録しているロングセラー商品。1920年台半ばから当社との協力関係を結んだ気鋭のデザイナー、ポール・ヘニングセンによるデザインで、58年に販売を開始。・・・以降の照明デザインの歴史を変えた名作とされており、世界中で数多くの模倣品を生んだ。」(甲6)、「ペンダント型の照明器具といえば、すぐにヘニングセンのデザインした一連の器具が想起されるほどに、彼のデザインは、世界中で最も長く使われてきている。」(甲8)、「デンマークの国民的ランプと称され、北欧のみならず世界のスタンダードの座に、21世紀もおそらく君臨するのだろう。」(甲15)、「北欧のペンダントランプを代表する超ロングセラー。」(甲19)、「世界の名品・定番品」(甲23)、「1958年に発表されたルイスポールセン社の代表作ともいえる照明」(甲30)、「ルイスポールセンのPH5・・・照明デザインの盛んな北欧の中でも名高い照明ブランド。4枚シェードのこのPH5はポール・ヘニングセンのデザイン」(甲31)、「ルイスポールセンの名作照明」(甲59)等の記載とともに、出願人製品の写真が掲載されている。
また、出願人製品は、高校の教科書「工芸I」(平成24年3月5日検定済)において、「ライティングデザイン」の項で、「モダンデザインの代表的ペンダント PH5」及び「ポール・ヘニングセン(デンマーク・1894-1967)」と記載され、同製品の写真と共に採り上げられている(甲1)。
さらに、出願人製品は、「名作といわれる器具の形を変えることなく内部構造の見直しを図り、より適応性の高い商品に仕上げたことが評価」され、平成9年通商産業省選定グッド・デザイン外国商品賞を受賞している(甲3)。
e 証明書等
出願人は、同社が日本において40年以上にわたりランプシェードに本願商標に係る立体商標を使用してきた結果、日本全国において需要者が出願人の業務に係る商品であることを認識できる旨の国内及び外国の照明器具の著名なデザイン関係者並びにデンマーク国駐日大使の証明書又は陳述書を提出している(甲70?74、219、223、224)。
なお、出願人製品は、デンマークの切手のデザインに採用されるほど、デンマーク国民に親しまれている(甲218)。
(ウ)小括
上記(ア)及び(イ)によれば、出願人は、本願商標とほぼ同一の形状からなる立体的形状を商品「ランプシェード」について、1958年から使用し、日本においては、遅くとも1973年から現在まで約42年継続して使用したことが認められる。また、出願人製品は、定期的に作成された出願人の販売代理店や日本法人等の商品カタログに、その写真と共に掲載されて、全国的に配布され、さらに、照明又はインテリアの書籍、雑誌及びカタログのみならず、高校の教科書並びにファッション及び経済関係の雑誌にも、近代照明の父といわれるデザイナーのヘニングセンによりデザインされ出願人の販売に係る名作のランプシェードとして、その写真と共に、長期にわたって採り上げられていることに照らせば、出願人製品に係る立体的形状は、照明器具を取り扱う業界において、ランプシェードの代表的な立体的形状として、取引者、需要者に認識されているといえる。
なお、出願人製品は、電球の変化等の時代的事情から、1994年に塗装及び反射板の1枚の材料が変更されているが、塗装の変更は同系色内での僅かな変更であり、材料の変更も基本的な立体的形状に変更を加えるものではないことから、1973年から約42年間、ほぼ同一の形状を維持しているものといえる。
イ そうすると、本願商標は、その指定商品「ランプシェード」について、出願人により、長年の間、継続的に使用をされた結果、需要者が出願人の業務に係る商品であることを認識するに至ったものと判断するのが相当であるから、本願商標は、商標法第3条第2項の要件を具備している。
(3)結論
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものの、同法第3条第2項の規定により商標登録を受けることができるものであるから、原査定は、取消しを免れない。
その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲(本願商標)
第1図


第2図


第3図


第4図


第5図


第6図



審決日 2015-12-15 
出願番号 商願2013-98030(T2013-98030) 
審決分類 T 1 8・ 13- WY (W11)
T 1 8・ 17- WY (W11)
最終処分 成立  
前審関与審査官 岩崎 安子 
特許庁審判長 酒井 福造
特許庁審判官 堀内 仁子
藤田 和美
代理人 特許業務法人 松原・村木国際特許事務所 

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