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審決分類 審判 一部無効 商4条1項16号品質の誤認 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W14
管理番号 1309638 
審判番号 無効2015-890005 
総通号数 194 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2016-02-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2015-01-08 
確定日 2015-12-17 
事件の表示 上記当事者間の登録第5703654号商標の商標登録無効審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 登録第5703654号の指定商品中「腕時計,時計バンド,時計の文字盤,時計鎖,時計側」についての登録を無効とする。 審判費用は,被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5703654号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲のとおり「Swisscy」(3文字目の「i」には,頭に「・」が付されていない態様である。以下,本件商標を「swisscy」と表示する。)の文字を横書きしてなり,平成26年4月29日に登録出願され,第14類「腕時計,時計バンド,時計の文字盤,時計鎖,時計側,時計用化粧箱,ブレスレット,ネックレス,指輪」を指定商品として,同年8月26日に登録査定,同年9月19日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張の要点
請求人は,結論同旨の審決を求め,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1ないし第27号証を提出している。
1 請求人の概要(請求人が利害関係を有すること)
請求人(英語名:Federation of the Swiss Watch Industry FH。日本語名:スイス時計協会FH)は,スイスの時計メーカー等を会員とし,スイスの時計産業全体及び会員共通の利益保護と促進等を目的とする,スイス法に基づいて設立された非営利団体である。
請求人は,スイスのビエンヌに本部を有する他,東京及び香港に情報センターを有しており,東京センターは日本において,スイスの時計産業に関する広報活動,後述するスイス法令についての啓蒙活動等を行っている(甲1及び2)。
また,請求人は,スイス法である「商標及び原産地表示の保護に関する連邦法(Federal Law on the Protection of Trademarks and Indications of Source)」の第56条に基づき,スイスの国益を代表して,「Switzerland」及び「Swiss」の表示の違法な使用行為を取り締まることを,その重要な任務としており,かかる使用行為に対して訴訟を提起する権限を付与されている(甲3)。
請求人は,上記任務及び権限に基づき,スイス国内において訴訟を提起する他,スイス国外においても,各国の法令に従い,「Switzerland」及び「Swiss」の表示の違法な使用行為に対して法的措置を行っている。
なお,請求人は,証明商標制度を有する米国において「SWISS」及び「SWISS MADE」の証明商標の登録を有しており(甲4及び5),また,同様に証明商標制度を有する香港においても「SWISS」の証明商標の登録を有しており(甲6),これらの証明商標の登録を通じて「SWISS」及び「SWISS MADE」の語の第三者による使用を管理している。
本件請求も,請求人がスイスより付与された上記任務及び権限に基づき,スイスの国益を代表して,「Swiss」の表示の違法な使用行為を日本の法令に従って取り締まる活動の一環として,これを行うものである。
したがって,請求人は,本件審判の請求をすることについて,利害関係を有する。
2 スイス法令について
(1)スイスは,1992年8月28日付のスイス国連邦商標法第50条に基づく,「ウォッチに対し”Switzerland”又は”Swiss”の名称の使用を管理する規定」(以下「スイス法令」という。)を制定している(甲7)。
スイス法令は,時計について「Switzerland」や「Swiss」等の表示を行うために当該時計が満たすべき条件を規定し,「スイス製」を名乗ることができる時計の範囲を明確にすることで,精密で高品質の時計として全世界的に高い評価を受けているスイス製時計の評判を保護し,ひいては,スイスの重要な産業の一つである時計産業を保護することを,その目的とするものである。
(2)スイス法令は,時計が「スイス製時計」であるための条件として,以下の3条件を挙げている(スイス法令第1条a)。
(a)ムーブメント(動作機構)がスイス製であること。
(b)スイス国内において,ムーブメントのケース組み込みが行われたこと。
(c)スイス国内において,製造者による最終検査が行なわれたこと。
また,スイス法令は,ムーブメントが「スイス製」であるための条件として,以下の3条件を挙げている(スイス法令第2条)。
(i)スイス国内において組み立てられたこと。
(ii)スイス国内において,製造者による最終検査が行なわれたこと。
(iii)全構成部品の対価の少なくとも50%以上がスイス製造者によること。但し,その組み立てに要するコストは含まない。
換言すれば,スイス法令上,これらの条件をすべて満たす時計のみが「スイス製」の時計である。(以下,上記条件をすべて満たし,スイス法令に準拠している時計を「スイス法令準拠時計」といい,上記条件のいずれかを満たさず,スイス法令に準拠していない時計を「スイス法令非準拠時計」という。)
(3)スイス法令上,「Switzerland」,「Swiss」,「Swiss Product(スイス製品)」,「manufactured in Switzerland(スイス製)」,「Swiss quality(スイス品質)」,その他「Swiss」又は「Switzerland」を含む表示及びこれらと混同の恐れがある表示は,スイス法令準拠時計についてのみ使用することができる(スイス法令第3条第1段落)。
ここでいう「使用」には,時計本体又は包装に当該表示を付すことの他,かかる時計の販売又は販売の申し込み,かかる時計を流通に置くこと,あるいはかかる表示を広告等に付すことも含まれる(スイス法令第3条第5段落)。
3 日本におけるスイス法令の認識
(1)スイス法令は,あくまでスイスの国内法であり,日本その他の法域において直接的に効力を有する訳ではない。
しかしながら,実際には,スイス法令は日本国内の需要者の間で広く認識されており,日本の需要者は,ある時計が「スイス製」であるという場合,あるいは時計について「Swiss」又は「Switzerland」の表示がなされている場合,当然に,当該時計はスイス法令準拠時計であると認識するものである。
(2)このことは,請求人が,請求人の東京センターのウェブサイト等を通じて,スイス法令についての啓蒙発動を日本で行っていること(甲2)の他,独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO)の作成した資料(甲8),並びに,請求人とは直接関係ない時計メーカー,時計小売業者及び時計修理業者が一般消費者向けに作成したウェブサイトにおいて,スイス法令が紹介されており(甲9ないし17),また,その他の取引者・需要者が開設したウェブサイト等においてもスイス法令が紹介されていること(甲18ないし23)からも明らかである。
とりわけ,日本におけるインターネット通信販売の大手であるアマゾン(amazon.co.jp)は,そのウェブサイト内のスイス製時計の通信販売のページにおいて,「『MADE IN SWISS』の時計について」と題し,スイス法令が定める上記条件を引用している(甲9)。同ウェブサイトは,日々,多数の利用者が通信販売のためにこれを利用しており,同ウェブサイト内でスイス法令が紹介されることで,スイス法令の認知度は飛躍的に高まっている。
4 請求人による日本における活動
上記のとおり,請求人は,スイス法により付与された権限に基づき,「Switzerland」及び「Swiss」の表示の違法な使用行為を取り締まる権限を付与されている。請求人は,この権限に基づき,スイス国内において訴訟を提起する他,スイス国外においても,各国の法令に従い,「Switzerland」及び「Swiss」の表示の違法な使用行為に対して法的措置を行っている。
日本においては,請求人は過去に,「SWISS LEGEND」の標準文字からなる商標(商標登録第5447781号)について,本件と同様の理由に基づき無効審判を請求した(無効2012-890053)。同事件においては,請求人と商標権者との間で和解が成立し,請求人が審判請求を取下げる代わりに,商標権者が商標権の一部放棄により「平成4年8月28日付のスイス国連邦商標法第50条に基づくウォッチに対し”Switzerland”または”Swiss”の名称の使用を管理する規定に準拠していない時計」等を指定商品から除外することで,事件が終了している(甲26及び27)。
また,被請求人に対しては,被請求人が香港において本件商標と同様の「Swisscy」の商標について商標出願を行ったのに対し,請求人は異議申立てをした。なお,香港における当該異議申立ては,異議申立て直後に被請求人が上記出願を取り下げたため,既に終了している。
5 本件商標の商標法第4条第1項第16号該当性
(1)スイス法令は日本国内の取引者・需要者の間で広く認識されており,ある時計について「Swiss」の表示が使用された場合,日本の取引者・需要者は,当該時計がスイス法令準拠時計であると認識するものである。
したがって,「Swiss」の表示がスイス法令非準拠時計について使用された場合,かかる使用は,当該時計がスイス法令準拠時計であるとの誤った認識を取引者・需要者に与え,取引者・需要者は,当該時計がスイス法令準拠時計であると誤認するおそれがある。
(2)他方,本件商標の指定商品には,第14類「腕時計」が含まれるところ,この中に,スイス法令非準拠時計も含まれることは明らかである。
(3)また,別掲のとおり,本件商標は「Swisscy」の欧文字を横書きしてなるものであるところ,ここには「Swiss」の文字が含まれている。
この点,「Swiss」の語は「スイスの」を意味する英単語として日本の取引者・需要者に一般的に知られている語である。また,「Swiss」の文字は,「Swisscy」を構成する7文字のうち,その大部分である5文字を占めている。
したがって,本件商標に接した取引者・需要者は,本件商標の中に「Swiss」の語が含まれると認識するものである。
(4)そうすると,本件商標が,「腕時計」に含まれるスイス法令非準拠時計について使用された場合,かかる使用は,当該時計がスイス法令準拠時計であるとの誤った認識を取引者・需要者に与え,取引者・需要者は,当該時計がスイス法令準拠時計である旨,その品質を誤認するおそれがある。
(5)また,「腕時計」以外の本件指定商品(「時計バンド,時計の文字盤,時計鎖,時計側」)のうち,スイス製でない商品について本件商標が使用された場合には,当該商品がスイス製であるとの誤った認識を取引者・需要者に与え,取引者・需要者は,当該商品がスイス製である旨,その品質を誤認するおそれがある。
(6)以上のとおり,本件商標は,その指定商品中「腕時計,時計バンド,時計の文字盤,時計鎖,時計側」について使用される場合,商品の品質の誤認を生ずるおそれがあり,商標法第4条第1項第16号に該当するものである。
6 本件商標の商標法第4条第1項第7号該当性
(1)上記第1のとおり,本件商標には「Swiss」の文字が含まれており,本件商標を「腕時計」に含まれるスイス法令非準拠時計について使用した場合,当該使用行為はスイス法令に違反する。
また,「腕時計」以外の本件指定商品(すなわち,「時計バンド,時計の文字盤,時計鎖,時計側」)はいずれも,「腕時計」を構成する部品として,「腕時計」の目につく箇所に使用されるものである。「時計バンド,時計の文字盤,時計鎖,時計側」に本件商標が付され,当該商品が「腕時計」を構成する部品として使用された場合には,結局,当該腕時計自体に本件商標が付されたのと同じ状態になる。
したがって,当該腕時計がスイス法令非準拠時計である場合には,かかる使用行為はスイス法令に違反する。
(2)他方,スイス法令は,あくまでスイスの国内法であり,日本国内において直接的に効力を有する訳ではない。
しかしながら,スイス法令に違反する行為が行われた場合には,たとえ,当該行為がスイス国外において行われたものであったとしても,当該行為は,精密で高品質の時計として全世界的に高い評価を受けているスイス製時計の評判を保護し,ひいてはスイスの重要な産業の一つである時計産業を保護するというスイス法令の目的に反するものであり,スイス法令が保護することを目的としたスイスの国益を著しく害するものである。
他方,日本の側には,スイスの上記国益を害してまで保護すべき重要な国益は存在しない。そもそも,日本の国内法の下でも,「SWISS」の語を含む商標をスイス製時計以外の時計について使用することは,商標法第4条第1項第16号や不正競争防止法第2条1項第13号,不当景品類及び不当表示防止法第4条(優良誤認表示)に違反するとする扱いが一般的である。このように,日本の国内法がスイス製時計以外の時計について「SWISS」の語を含む商標の登録及び使用を禁止している状況下で,スイス法令非準拠時計について「SWISS」の表示の使用を積極的に認めることが,日本の国益に何ら沿うものでないことは明らかである。
むしろ,日本の需要者間において,スイス製時計は精密で高品質であるとの認識が一般的であり,日本の需要者もスイス製時計の品質について強い信頼を有している。ここで,スイス法令非準拠時計について「SWISS」の表示を認めること(すなわち,「スイス製」を名乗ることを認めること)は,かかる日本の需要者がスイス製時計について有している強い信頼を害することにもなり兼ねない。このような観点からすれば,むしろ,スイス法令非準拠時計について「SWISS」の表示を認めない方が,日本の国益に沿うものである。
以上のような事情を考慮すれば,本件商標は,本件指定商品について使用される場合,日本とスイスとの間の国際信義に反し,したがって,公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標(商標法第4条第1項第7号)であるというべきである。
(3)なお,知財高裁が,登録商標が国際信義に反することを理由として商標法第4条第1項第7号該当性を認めた比較的最近の判決としては,知財高裁平成18年9月20日判決(「赤毛のアン」判決。平成17年(行ケ)第10349号)(甲第24号証)及び知財高裁平成24年12月19日判決(「シャンパンタワー」判決。平成24年(行ケ)第10267号)(甲第25号証)を挙げることができる。
「赤毛のアン」判決の事案は,カナダ国において著名な小説の題名である「Anne of Green Gables(赤毛のアン)」について,日本において商標登録がなされたのに対し,同小説の舞台となったカナダ国プリンス・エドワード・アイランド州が無効審判を請求したというものである。知財高裁は,同小説がカナダ国の重要な文化的資産であること,日本においても同小説は広く親しまれていること,カナダ国内においては同商標が公的標章として登録され,何人も当該商標を自己の商標として使用できないこと等の事情を考慮して,当該商標が商標法第4条第1項第7号に該当することを認めた。
本件は,「赤毛のアン」判決の事案よりも,より直接的に,外国の国益が害される恐れが問題となっている事案であるということができる。すなわち,上記判決の事案においては,「Anne of Green Gables(赤毛のアン)」がカナダ国の重要な文化的資産であり,カナダ国内において公的な保護が与えられてはいたものの,日本における商標登録によってカナダ国の国益が害されるおそれがあるか否かという点については,必ずしも,そのような因果関係が明確である訳ではなかった。これに対し,本件では,スイス国外において「SWISS」の表示がスイス法令非準拠時計について使用され,かかる時計が流通することは,スイス法令が保護することを目的としたスイスの国益に反するものであることは明白である。したがって,本件商標の商標法第4条第1項第7号該当性は,「赤毛のアン」判決の事案よりも明白であるというべきである。
また,「シャンパンタワー」判決の事案は,「シャンパンタワー」の語について,日本において商標登録がなされたのに対し,フランスの「シャンパーニュ地方ぶどう酒生産同業委員会」が無効審判を請求したというものである。知財高裁は,「シャンパン(CHAMPAGNE)」の語がフランス北東部のシャンパーニュ地方で作られる発泡性ぶどう酒を意味する語であり,生産地域・製法・生産量など所定の条件を備えたぶどう酒についてだけ使用できるフランスの原産地統制名称であることを前提として,かかる「シャンパン」の表示がフランスにおいて有する意義や重要性,日本における周知著名性等を総合考慮すると,「シャンパンタワー」の商標を指定商品について使用することは,フランスのシャンパーニュ地方における酒類製造業者の利益を代表する「シャンパーニュ地方ぶどう酒生産同業委員会」のみならず,法律により「CHAMPAGNE」の名声・信用・評判を保護してきたフランス国民の国民感情を害し,日本とフランスの友好関係にも影響を及ぼしかねないものであり,国際信義に反するとして,当該商標が商標法第4条第1項第7号に該当することを認めた。
本件の事案は,ある語が外国の法令により一定の基準を満たした商品についてのみ使用することができるよう統制されている点や,当該語が日本において周知著名である点などにおいて,「シャンパンタワー」判決の事案と共通している。したがって,本件商標を本件指定商品について使用することが,スイスの時計産業全体の利益を代表する請求人のみならず,法律により「SWISS」の時計の名声・信用・評判を保護してきたスイス国民の国民感情を害し,日本とスイスの友好関係にも影響を及ぼしかねないものであり,国際信義に反するものであって,本件商標が商標法第4条第1項第7号に該当することは明らかである。
(4)以上より,本件商標は,その指定商品中「腕時計,時計バンド,時計の文字盤,時計鎖,時計側」について使用される場合,公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあり,商標法第4条第1項第7号に該当するものである。
7 結論
以上のとおり,本件商標は,その指定商品中「腕時計,時計バンド,時計の文字盤,時計鎖,時計側」について,商標法第4条第1項第16号及び同第7号に該当するものであるから,同法第46条第1項の規定に基づき,その登録を無効にすべきものである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は,請求人の主張に対し何ら答弁していない。

第4 当審の判断
1 請求人適格について
請求人が本件審判の請求をすることについて利害関係を有することは,当事者間に争いはなく,請求人の提出に係る証拠を総合すれば,請求人は本件審判について請求人適格を有するものと認められる。
よって,以下,本案に入って審理する。
2 本件商標の商標法第4条第1項第16号該当性について
(1)請求人の提出に係る証拠によれば,以下の事実が認められる。
ア 請求人は,スイスの時計メーカー等を会員とし,スイスの時計産業全体及び会員共通の利益保護と促進等を目的とする非営利団体であって,スイスの時計産業に関する広報活動,啓蒙活動等を行っており,また,スイスの法律である「商標及び原産地表示の保護に関する連邦法」の規定に基づき,ウォッチにおける「Switzerland」又は「Swiss」の表示の違法な使用を取り締まる権限を付与されている(甲1ないし3)。
イ スイスでは,1992年8月28日のスイス国連邦商標法第50条に基づき,「ウォッチに対し”Switzerland”又は”Swiss”の名称の使用を管理する規定」(以下「スイス法令」という。)が制定されており,スイス法令第1条a及び第2条では「スイス製ウォッチ」及び「スイス製ムーブメント」の定義が定められている。同定義規定によれば,「スイス製ウォッチ」とは,(a)ムーブメントがスイス製であり,(b)スイス国内においてムーブメントのケース組み込みが行われ,(c)スイス国内において製造者による最終検査が行われたものとされ,また,「スイス製ムーブメント」とは,(i)スイス国内において組み立てられ,(ii)スイス国内において製造者による最終検査が行われ,(iii)全構成部品の対価の少なくとも50%以上がスイス製造者によるもの(ただし,その組み立てに要するコストは含まない。)とされている(甲7)。
そして,スイス法令第3条は,「Switzerland」,「Swiss」,「Swiss Product」,「manufactured in Switzerland」,「Swiss quality」,その他「Swiss」若しくは「Switzerland」の文字を含む名称又はこれらと混同の恐れがある表示は,スイス製のウォッチ又はムーブメントについてのみ使用することができ,ウォッチ又はその包装に上記表示を付すことのほか,上記表示が付されたウォッチの販売,販売の申出若しくは流通に置く行為又は上記表示を看板,広告,カタログ,請求書,レター若しくは手形に付す行為も使用とみなされる旨定めている(甲7)。
ウ 上記(イ)のスイス法令の規定については,我が国においても,独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO)ジュネーブ事務所・欧州ロシアCIS課作成(2012.9)の資料「スイス時計産業の世界戦略」において詳細に紹介されているほか,多くの時計メーカー,時計小売業者,時計修理業者等により紹介されている。実際,スイス製の腕時計については,「SWISS MADE」,「スイスメイド」,「MADE IN SWISS」の表示をはじめ,「SWISS」又は「スイス」の文字を含む表示が使用されている(甲8ないし23)。
なお,上記(イ)のスイス法令にいう「ウォッチ」とは,「携帯用の時計。懐中時計・腕時計など。」をいうものと解される(岩波書店発行「広辞苑第6版」)。
(2)上記(1)の事実によれば,スイス国内において,腕時計における「Swiss」又は「Switzerland」の文字を含む名称又はこれらと混同の恐れがある表示は,スイス法令によりその使用が規制され,スイス製の時計についてのみ使用できることが,我が国の時計を取り扱う業界においても,広く認識されているというべきである。
そうすると,商品「腕時計」について「スイスメイド」,「SWISS MADE」,「Swiss」,「Switzerland」等の文字又はこれらの文字を含む表示が使用された場合には,取引者,需要者は,当該時計が上記(1)(イ)のスイス法令に準拠した商品であると認識し理解するというのが自然である。
(3)他方,本件商標は,「Swisscy」の文字からなり,その構成中に「スイスの,スイス風(製,産)の」の意味を有する「Swiss」の文字が含まれていることが明らかであるばかりでなく,語尾部分の「cy」は「性質・状態・階級・身分などを表す抽象名詞を造る」接尾辞であること(研究社発行「新英和大辞典第6版」),さらに,本件無効審判事件の無効に係る本件商標の指定商品「腕時計,時計バンド,時計の文字盤,時計鎖,時計側」との関係において,本件商標中の「Swiss」の文字が看者の注意を強く惹くことからすれば,本件商標は,上記スイス法令に準拠した商品ないしスイス製の商品を連想,想起させる場合が決して少なくないというべきである。
そして,本件商標の指定商品中の「腕時計,時計バンド,時計の文字盤,時計鎖,時計側」は,上記スイス法令に準拠していない腕時計並びにスイス製でない時計バンド,時計の文字盤,時計鎖及び時計側を含むものである。
(4)小括
以上よりすると,本件商標は,これをその指定商品中の「スイス法令に準拠していない腕時計並びにスイス製でない時計バンド,時計の文字盤,時計鎖及び時計側」について使用した場合,これに接する取引者,需要者は,当該商品が恰も「スイス法令に準拠した腕時計又はスイス製の時計バンド,時計の文字盤,時計鎖若しくは時計側」であるかの如く,商品の品質の誤認を生ずるおそれがあるものといわなければならない。
したがって,本件商標は,その指定商品中「腕時計,時計バンド,時計の文字盤,時計鎖,時計側」について,商標法第4条第1項第16号に該当するものである。
3 むすび
以上のとおり,本件商標は,その指定商品中「腕時計,時計バンド,時計の文字盤,時計鎖,時計側」について,商標法第4条第1項第16号に違反して登録されたものであるから,請求人のその余の主張について判断するまでもなく,同法第46条第1項の規定に基づき,その登録を無効にすべきものである。
よって,結論のとおり審決する
別掲 別掲(本件商標)



審理終結日 2015-07-24 
結審通知日 2015-07-29 
審決日 2015-08-11 
出願番号 商願2014-33887(T2014-33887) 
審決分類 T 1 12・ 272- Z (W14)
最終処分 成立 
前審関与審査官 齋藤 貴博 
特許庁審判長 早川 文宏
特許庁審判官 田中 幸一
前山 るり子
登録日 2014-09-19 
登録番号 商標登録第5703654号(T5703654) 
商標の称呼 スイスシー 
代理人 橋本 千賀子 
代理人 長谷 玲子 
代理人 塚田 美佳子 
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