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審判番号(事件番号) データベース 権利
異議2015900153 審決 商標

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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W32
審判 全部申立て  登録を維持 W32
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審判 全部申立て  登録を維持 W32
管理番号 1307560 
異議申立番号 異議2015-900118 
総通号数 192 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2015-12-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2015-04-10 
確定日 2015-11-09 
異議申立件数
事件の表示 登録第5730466号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5730466号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第5730466号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成26年8月16日に登録出願、第32類「ビール」を指定商品として、同年10月28日に登録査定、同27年1月9日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、登録異議の申立ての理由において引用する国際登録第R456739号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲2のとおりの構成からなり、2000年(平成12年)11月6日に国際商標登録出願(事後指定)、第32類「Beer and non-alcoholic beverages.」を指定商品として、平成13年8月31日に設定登録されたものであり、現に有効に存続しているものである。
なお、引用商標は、商標法第68条の10第1項の規定により、商標登録第1997122号(昭和56年5月12日登録出願)に基づく国際商標登録出願の出願時の特例が適用されるものである。

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標について商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであると申し立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第8号証(枝番を含む。また、以下、枝番の全てを引用する場合は、その枝番の記載を省略する。)を提出した。
なお、申立人は、異議申立理由補充書2頁の「4.申立の理由(1)申立ての理由の要約」において「商標法第4条第1項第7号」と記載しているが、その後の申立ての理由の記載に徴すれば、この記載は「商標法第4条第1項第15号」を誤記したものと判断されるので、本件においては、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するとの申立てがされたものとして審理する。
1 商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、「HB」の欧文字2文字を多少図案化させて表されてなり、該欧文字に照応して、「エイチビイ」の称呼が自然に生じるものである。
他方、引用商標は、王冠の図形の下部に「H」の欧文字の右縦線と「B」の欧文字の左縦線とを重ねた要素を配して表されてなり、該要素に照応して、引用商標からも「エイチビイ」の称呼が自然に生じるものである。
してみれば、本件商標と引用商標とは、「エイチビイ」の称呼を共通にし、称呼上類似する商標といえる。
そして、本件商標と引用商標の指定商品は、同一又は類似であることは明らかである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから、その登録は、同法第43条の2第1号により取り消されるべきものである。
2 商標法第4条第1項第15号について
(1)申立人及び引用商標について
申立人は、1589年に当時のバイエルン国王御用達の醸造所として創設されたホフブロイ宮廷醸造所を前身とする、ドイツのバイエルン州ミュンヘンに所在するビール醸造所である(甲3)。
申立人に係るビールは、20年以上前から我が国にも輸入され、ビール愛好家の中でも広く知られており、インターネット等を介して頻繁にその商品と共に、「歴史ある醸造所」、「名物ビアガーデン」、「ミュンヘン6大ブルワリーの一つ」、「絶大な人気のドイツビール」等として紹介がなされている(甲4)。
特に、近年のドイツビールブームの高まりに伴い、ビールの祭典として毎年10月にドイツのミュンヘンで催されるOktober fest(オクトーバーフェスト)に倣った「日本版オクトーバーフェスト」が我が国でも2003年から開催されており、2014年度は延べ60万人を動員する巨大イベントとして成長を遂げているものであるが、申立人によって醸造されたビールも当然に該「日本版オクトーバーフェスト」にて提供されている(甲5及び甲6)。
そして、我が国でのドイツビールの人気や申立人に係るビールの認知度が高まるにつれて、申立人のビールの我が国への輸入量も増加の一途を辿っており、2014年度には56,900リットルのビールが瓶に満たされた状態で、また、230,000リットルのビールが樽(バレル)に満たされた状態で輸入され、これは通常のビールの大瓶の45万本以上に相当する量である。
このような状況において、我が国に輸入された申立人の業務に係るビールも酒販店や各種飲食店で提供されているものであり(甲7)、引用商標が付された商品は申立人の業務に係るビールであることを表示するものとして、我が国の需要者の間に広く知られている。
(2)本件商標の使用について
本件商標は、その指定商品を「ビール」とするものであるが、その権利者にあっては、自己の醸造所にて製造したクラフトビールについて本件商標を付しており、その実際の態様も本件商標を特に顕著に表すものとなっている(甲8)。
(3)商標法第4条第1項第15号該当性について
ア 引用商標の周知著名性について
本件では、引用商標(引用商標の王冠の図案を金色に着色し、且つ「HB」のアルファベットを白抜きにした商標を含む。)が遅くとも本件商標が登録出願、登録査定された日までに、申立人の業務に係る商品「ビール」を表示するものとして、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されていることは上述したとおりである。
更には、数百年以上という申立人の事業の継続性から、引用商標が申立人自身を指称する所謂ハウスマークとして機能し、その周知著名性と相侯って、既に申立人の業務に係る一群の商品を表す、「HB」なるブランド(以下「HBブランド」という。)も既に確立している。
上述の状況に鑑みると、引用商標は申立人の業務に係る商品に付される商標として、又は申立人の名声を得た著名な略称として、或いは申立人に係る「HBブランド」の名称として多角的な面から取引者、需要者に広く認知されており、このような長年に亘る努力の結果得られた業務上の信用を保護するのが商標法制定の趣旨といえるものである。
イ 本件商標と引用商標等との混同について
本件商標が付された「ビール」が取引に資された場合、申立人と経済的・組織的に何らかの関係性を有する者の業務に係る商品であると需要者等に容易に想起させ得るものであり、具体的な取引の実情という観点からも、本件商標は出所の混同を生じさせかねないものである。
(4)小括
したがって、本件商標が付された商品「ビール」が実際の商取引に資された場合、これに接した取引者、需要者は、申立人、又は「HBブランド」を容易に想起又は連想し、更にその商品は申立人又はこれらと営業上何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、その商品の出所について混同を生じさせる蓋然性は極めて高いものであることから、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであって、同法第43条の2第1号により取り消されるべきものである。

第4 当審の判断
1 商標法第4条第1項第11号について
(1)本件商標について
本件商標は、別掲1に示すとおりの構成よりなるところ、これは、欧文字の「H」と「B」とをモチーフにデザイン化された、いわゆるモノグラムであって、モチーフとなった各欧文字ではなく、組み合わせによる図形として看取されるとみるのが相当であるから、専らその外観をもって取引に資されるものであって、特定の称呼及び観念をもって取引に資されるとは考え難いといえる。
この点に関して、申立人は、本件商標が「HB」の欧文字2文字を多少図案化させて表してなるものであり、該欧文字に照応して、「エイチビイ」の称呼が自然に生じる旨主張している。
しかしながら、本件商標は、欧文字の「H」と「B」とをモチーフにしたものであるとしても、欧文字2文字が商品の規格、品番等を表す記号、符号として類型的に使用され、極めて簡単で、かつ、ありふれた標章に該当し、それのみでは自他商品・役務の識別機能を発揮するものとは考え難いものであることを勘案するならば、モチーフとなった各欧文字に着目してその称呼及び観念をもって取引に資するというよりも、上述のとおり、欧文字の組み合わせによる図形として、その外観をもって取引に資するとみるのが自然である。
そうであれば、本件商標は、その外観をもって取引に資されるものであって、「エイチビイ」(HB)の称呼及び観念をもって取引に資されることはないというべきであるから、上記の申立人の主張は採用することができないものである。
(2)引用商標について
引用商標は、別掲2に示すとおり、王冠と思しき図形の下に、欧文字の「H」と「B」とをモチーフにデザイン化されたモノグラムを配した構成からなるものといえるところ、これを王冠と思しき図形とモノグラムを分離してみなければならない特段の事情を見い出すこともできないものであるから、全体をもって一体不可分の図形からなる商標とみるのが自然といえる。
そして、引用商標は、その構成全体としては何を表したものであるのか容易に理解し得ないものであることを踏まえると、特定の称呼及び観念が生じるとは考え難く、その外観をもって取引に資されるとみるのが自然である。
この点に関して、申立人は、引用商標が王冠の図形の下部に「H」の欧文字の右縦線と「B」の欧文字の左縦線とを重ねた要素を配して表してなるものであり、該要素に照応して、引用商標からも「エイチビイ」の称呼が自然に生じることとなる旨主張している。
しかしながら、引用商標は、上述のとおり、その構成全体をもって一体不可分の図形からなる商標とみるのが自然であり、しかも、仮に、モノグラムだけをみた場合にも、上記(1)の本件商標と同様に称呼及び観念をもって取引に資されるというよりも、外観をもって取引に資されるといえるものであるから、結局、上記の申立人の主張も採用することができない。
(3)本件商標と引用商標との類否について
本件商標と引用商標とは、外観においては、上記(1)及び(2)のとおりであるから、明確に区別し得る差異を有するものであり、類似するということはできないものである。
また、称呼及び観念においては、両商標は、上記(1)及び(2)のとおり、特定の称呼及び観念を生じないものであるから、比較すべくもないものである。
そうとすれば、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれか
らみても、類似する商標ということはできないものである。
(4)小括
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するということはできないものである。
2 商標法第4条第1項第15号について
(1)申立人が提出した甲各号証によれば、以下のことが認められる。
ア 申立人は、1589年に創設されたドイツのビール醸造所であり、引用商標を使用していること(甲3)。
イ 申立人のビールは、我が国においてインターネット等を介して紹介がされていること(甲4)。
ウ ビールの祭典として毎年10月にドイツのミュンヘンで催されるオクトーバーフェストに倣った「日本版オクトーバーフェスト」が我が国でも2003年から開催されており、2014年度は延べ60万人の参加があり、申立人のビールも2012年に名古屋、2013年に大阪及び新宿、2014年に横浜及び広島並びに2015年に池袋及び秋葉原で開催された「日本版オクトーバーフェスト」で提供されていること(甲5及び甲6)。
エ 我が国において申立人のビールが酒販店や各種飲食店で提供されていること(甲7)。
(2)引用商標の周知著名性について
ア 上記(1)によれば、申立人がドイツのビール醸造所であり、申立人の商品「ビール」が我が国に輸入、販売され、飲食店等で提供されていることは確認できるものの、それ以外には、我が国における、申立人の商品「ビール」の販売や役務「ビールの提供」の提供期間、同地域、商品「ビール」の販売量、商品「ビール」や役務「ビールの提供」についての宣伝広告の程度、業界における市場占有率など、引用商標の周知性を推し量るべき具体的な証拠は提出されてはいない。
イ また、申立人は、同人が取り扱うビールについて、「申立人のビールの我が国への輸入量は、2014年度には56,900リットルのビールが瓶に満たされた状態で、又230,000リットルのビールが樽(バレル)に満たされた状態で輸入され、これは通常のビールの大瓶の45万本以上に相当する量である。」と主張しているものの、その事実を示す具体的な証拠は提出していない。
そして、仮に、申立人のこの主張が正しいものと仮定した場合でも、2014年度における申立人のビールの輸入量は、286,900リットルであるところ、当審が職権をもって調査するに、2014年度の直近である、2013年における我が国のビールの消費量は548万9千キロリットルとされており(「『キリンビール大学』レポート2013年 世界主要国のビール消費量」http://www.kirin.co.jp/company/news/2014/1224_01.html参照)、これとの対比によれば、申立人のビールの輸入量の我が国における市場占有率は、0.01パーセントにも満たないものと推定されるところである。
ウ してみれば、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の取引者、需要者の間で周知・著名になっていたということができないものである。
(3)出所の混同のおそれ
引用商標は上記(1)及び(2)のとおり、我が国において周知・著名とはいえないものであり、しかも、本件商標と引用商標とは、上記1(3)のとおり、相紛れるおそれのない非類似の商標であるから、本件商標をその指定商品について使用しても、これに接する取引者、需要者が、該商品が申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように連想、想起するとは考え難く、その出所について混同を生じるおそれはないというべきである。
(3)小括
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するということはできないものである。
3 まとめ
以上のとおり、本件の商標登録は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に違反してされたものではないから、同法第43条の3第4項により、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 別掲1(本件商標)




別掲2(引用商標)




異議決定日 2015-10-27 
出願番号 商願2014-58429(T2014-58429) 
審決分類 T 1 651・ 261- Y (W32)
T 1 651・ 263- Y (W32)
T 1 651・ 262- Y (W32)
T 1 651・ 271- Y (W32)
最終処分 維持  
前審関与審査官 蛭川 一治 
特許庁審判長 林 栄二
特許庁審判官 高橋 幸志
中束 としえ
登録日 2015-01-09 
登録番号 商標登録第5730466号(T5730466) 
権利者 合資会社PROGRESSIVE PARTNERSHIPS
商標の称呼 エイチビイ、エッチビイ 
代理人 岡部 讓 
代理人 田中 尚文 

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