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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W09
管理番号 1307538 
異議申立番号 異議2014-900348 
総通号数 192 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2015-12-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2014-12-19 
確定日 2015-10-23 
異議申立件数
事件の表示 登録第5707334号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 
結論 登録第5707334号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第5707334号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲1に示すとおりの構成よりなり,平成26年5月12日に登録出願,同年8月28日に登録査定,第9類「従業員の労働時間・出勤又は予定の管理のためのコンピュータソフトウェア,コンピュータソフトウェア」を指定商品として,同年10月3日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が,登録異議の申立ての理由において引用する国際登録第1130437号商標(以下「引用商標」という。)は,別掲2に示すとおりの構成よりなり,2011(平成23)年10月7日に欧州連合においてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し,2012(平成24)年1月19日に国際商標登録出願,第9類「computer programs(downloadable software)」を含む第9類,第12類,第20類,第35類,第37類,第41類及び第42類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として,2014(平成26)年5月16日に設定登録されたものであり,その商標権は現に有効に存続しているものである。

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は,本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当するものであるから,同法第43条の2第1号により,その登録は取り消されるべきであると申立て,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第5号証を提出した。
1 指定商品の抵触について
本件商標の指定商品は,第9類「従業員の労働時間・出勤又は予定の管理のためのコンピュータソフトウェア,コンピュータソフトウェア」である。
一方,引用商標の指定商品には,第9類「computer programs (downloadable software)」が含まれる。
したがって,本件商標の指定商品は,引用商標の指定商品と抵触する。
2 商標の抵触について
過去の審決,判決を踏まえれば,図形商標の類否を判断するにあたっては,商標の向きにかかわらずその構成全体から取引者,需要者が受ける印象,記憶,連想等を問題とすべきであること,及び,両商標を対比するにあっては両者を並べてその細部までを観察し対比を行う対比的観察ではなくて,時と処を異にして,これらに接したときを想定した離隔的観察によるべきである。
そこで,本件商標を反時計回りに90度回転させて引用商標と対比した上で,類否について検討する。
3 本件商標の構成
本件商標は,黒地の円図形中に,下から垂直に立ち上がり略中央付近の高さで外側斜め45度方向に屈曲する白色折れ線図形が左右対称状に複数配されており,背景の黒地円形図形は,白色折れ線図形によって上方の大きい扇形図形と下側左右の小さい扇形図形に切り分けられたような構成となっている。
そして細部をみると,白色折れ線図形のうちの最中央部の2本は垂直部が1本に合わさっており,その結果,白色折れ線図形の本数は,垂直部で7本,傾斜部で左右に4本ずつとなっている。また,白色折れ線図形の垂直部は,斜め45度の傾斜部に比べて,その幅が細い構成となっている。
4 引用商標の構成
引用商標は,黒地の円図形中に,下から垂直に立ち上がり略中央付近の高さで外側斜め45度方向に屈曲する白色折れ線図形が左右対称状に複数配されており,背景の黒地円形図形は,白色折れ線図形によって上方の大きい扇形図形と下側左右の小さい扇形図形に切り分けられたような構成となっている。
そして細部をみると,白色折れ線図形は,全て独立したものが左右に3本ずつで,垂直部と傾斜部でその幅に違いはない。また,傾斜部の端部が僅かに窄まっている。
5 対比
本件商標及び引用商標は,いずれも特定の観念や称呼を生じないものであるから,このように特定の観念や称呼を生じない商標同士の間に商標法第4条第1項第11号にいう類似に該当する関係があるか否かの判断は,それぞれの商標の構成全体の有する外観上の印象が互いに相紛らわしいか否かによってするしかない。
そして,その対比にあっては,前記のとおり,商標の向きにとらわれず離隔的観察による必要がある。
こうした前提に立って,本件商標と引用商標について,時と処を違えて離隔的観察をした場合,外観上,最も看者に強い印象を与えるのは,左右外側に対称状に開いてゆく白色折れ線図形と,それによって切り取られた大小3つの扇形図形がバランスよく配されている点である。
なぜならば,これらの点は商標の全体構成の最も大きな部分を占め,両商標を一見したとき最初に取引者,需要者が認識し得る構成だからである。
取引の迅速を尊ぶ実際の取引市場においては,取引者,需要者は,こうした一見して最初に認識し得る構成からその商標の印象を形成する。
そうとすれば,左右外側に対称状に開いてゆく白色折れ線図形と,それによって切り取られた大小3つの扇形図形が,バランスよく配されている点こそが両商標の基本的特徴であって,この基本的特徴が共通する以上,時と処を違えて離隔観察した場合,看者は,本件商標と引用商標の両者から共通の印象を受けると考えるのが自然である。
差異点についてみると,白色折れ線図形の本数は,これが1本や2本であれば兎も角も,左右合計で7本,8本ともなれば,その正確な本数は対比観察によらなければ把握することが難しい。
また,傾斜部先端が窄まっているか否かも図形端部の面積的にごく小さな部分における差異点であって,商標全体の印象に与える影響は決して大きくはない。
白色折れ線図形の線の幅の相違は,商標中央部付近における差異点ではある。しかし,商標全体における白色部分と黒色部分の占有比という観点からすれば,白色折れ線図形の本数が引用商標より多い本件商標にあって,個々の白色折れ線図形の幅が狭められることで,白色折れ線図形の本数が少ない引用商標に近くなっており,むしろ,商標全体の印象を近づけている。
このように本件商標と引用商標は細部において相違点は存在するけれども,基本的特徴が共通であって,商標全体の外観上の印象が相紛らわしい類似の商標と思料する。
6 むすび
以上から明らかなように,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当するにもかかわらず商標登録されたものである。

第4 当審の判断
1 本件商標及び引用商標
(1)本件商標は,別掲1のとおり,黒地の円図形の左端から伸びる等間隔の7本の水平な細線が途中から上下方向に屈曲して,該細線の4倍相当の太さの8本の太線となり,黒地の円図形を上下対称に切り抜く構成からなる図形であり,本件商標からは,特定の称呼及び観念を生じない。
そして,本件商標は,円の右側部分に,白地が多いことから,大きな黒地の扇状図形が,圧倒的に独立して印象付けられる。このことは,本件商標を反時計回りに90度回転させて観察した場合にあっても同様である。
(2)引用商標は,別掲2のとおり,黒地の円図形の下端から伸びる等間隔の6本のやや細目の線が途中から左右上方に3本ずつ屈曲し,その緩やかな尖端が内輪に接した構成からなる図形であり,引用商標からは,特定の称呼及び観念を生じない。
そして,引用商標は,6本のやや細目の線が平行に伸び,屈曲後もその太さがほぼ変わらないことから,円の上部及び下部左右の3か所に黒地の扇状図形を明確に見て取れるものであり,中央の扇状図形は,要部分が長く伸びている。
(以下,本件商標及び引用商標の屈曲した線図部分を「折れ線図形」という場合がある。)
2 本件商標と引用商標との対比
本件商標と引用商標は,それぞれ,前記1(1)及び(2)のとおりの構成よりなるところ,いずれも全体的構成が黒地の円図形を上下ないし左右を対称にして折れ線図形を有する点では共通するとしても,本件商標は,円の左端から等間隔に分かれた7本の水平な細線が,屈曲後,8本の太線となって,黒地の円図形を上下対称にして切り抜く構成よりなるものであるのに対し,引用商標は,円の下端から等間隔に分かれた6本のやや細目の垂直な線の先端が,屈曲後に,黒地の円内に納まっている構成よりなるものであるから,たとえ,本件商標を反時計回りに90度回転させて観察した場合にあっても,本件商標と引用商標とでは,黒地部分と白地部分の占める印象及び折れ線図形が全く異なり,両商標を対比観察した場合はもとより,時と処を異にして離隔的に観察した場合においても,外観上,明らかに区別し得るものである。
また,本件商標及び引用商標は,いずれも特定の称呼及び観念は生じないものであるから,称呼及び観念において相紛れるおそれはない。
したがって,本件商標と引用商標とは,その外観,称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれはないから,非類似の商標というべきである。
3 申立人の主張について
申立人は,外観上,最も看者に強い印象を与えるのは,左右外側に対称状に開いてゆく折れ線図形と,それによって切り取られた大小3つの扇状図形がバランスよく配されている点こそが両商標の基本的特徴である旨主張する。
しかしながら,本件商標は,全体観察した場合,折れ線図形の太さが屈曲部を境に変わることから,円の右側部分は,白地も多く,大きな黒地の扇状図形を見て取れるが,円の左側部分は,7本の細線との関係で黒地部分の方が圧倒的に多く印象付けられ,円の左上及び左下部分にある扇状図形が独立して印象付けられる態様とはなっていない。このことは,本件商標を反時計回りに90度回転させて観察した場合にあっても同様である。本件商標は,折れ線図形によって切り取られた大小3つの扇状図形がバランスよく配されていると看取させるものではなく,引用商標とは黒地部分の印象を全く異にするものである。
したがって,申立人の上記主張は,採用することができない。
4 まとめ
以上のとおり,本件商標と引用商標とは非類似の商標であるから,両商標の指定商品が同一又は類似のものであるとしても,本件商標は,商標法第4条第1項第11号には該当しない。
したがって,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第11号に違反してされたものではないから,同法第43条の3第4項の規定に基づき,その登録を維持すべきものである。
よって,結論のとおり決定する。
別掲 別掲
1 本件商標


2 引用商標



異議決定日 2015-10-15 
出願番号 商願2014-37150(T2014-37150) 
審決分類 T 1 651・ 261- Y (W09)
最終処分 維持  
前審関与審査官 矢代 達雄 
特許庁審判長 堀内 仁子
特許庁審判官 田中 亨子
田村 正明
登録日 2014-10-03 
登録番号 商標登録第5707334号(T5707334) 
権利者 クロノス インコーポレイテッド
代理人 齋藤 宗也 
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト 
代理人 特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK 
代理人 山崎 和香子 

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