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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない 030
管理番号 1307500 
審判番号 取消2013-301115 
総通号数 192 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2015-12-25 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2013-12-20 
確定日 2015-11-13 
事件の表示 上記当事者間の登録第4225824号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
登録第4225824号商標(以下「本件商標」という。)は、「ヨーロピアン」の文字を横書きしてなり、平成8年12月12日に登録出願、第30類「コーヒー及びココア,コーヒー豆,茶,みそ,ウースターソース,ケチャップソース,しょうゆ,食酢,酢の素,そばつゆ,ドレッシング,ホワイトソース,マヨネーズソース,パスタソース,焼肉のたれ,角砂糖,果糖,氷砂糖,砂糖,麦芽糖,はちみつ,ぶどう糖,粉末あめ,水あめ,ごま塩,食塩,すりごま,セロリーソルト,化学調味料,香辛料,米,脱穀済みのえん麦,脱穀済みの大麦,食用粉類,食用グルテン,スパゲッティのめん,マカロニ,パスタソース付きのスパッゲティのめん,パスタソース付きのマカロニ,その他の穀物の加工品,ぎょうざ,サンドイッチ,しゅうまい,すし,たこ焼き,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,べんとう,ホットドッグ,ミートパイ,ラビオリ,即席菓子のもと,アイスクリームのもと,シャーベットのもと,アーモンドペースト,イーストパウダー,こうじ,酵母,ベーキングパウダー,氷,アイスクリーム用凝固剤,家庭用食肉軟化剤,ホイップクリーム用安定剤,酒かす」を指定商品として、平成10年12月25日に設定登録され、その後、平成20年9月16日に商標権の存続期間の更新登録がなされたものである。
なお、本件審判の請求の登録は、平成26年1月15日にされている。

第2 請求人の主張
請求人は、商標法第50条第1項の規定により、本件商標の指定商品中、第30類「コーヒー及びココア,コーヒー豆」についての登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、審判請求書及び弁駁書において、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁等の理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第42号証を提出している。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品中、上記した請求に係る指定商品について、本件審判請求前3年以内(以下「要証期間」という。)に、継続して日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが、その指定商品について、本件商標を使用していない。
したがって、本件商標は、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 弁駁の理由
(1)「登録商標の使用」について
被請求人は、要証期間に日本国内において、商標権者が「インスタントコーヒー」について本件商標を使用していたと主張し、乙2号証の1から6号証の3までを提出している。しかし、これらによっては、商標法第50条第2項における「登録商標の使用」の事実は証明されていない。
ア 登録商標と使用に係る標章との同一性
乙第2号証の1は、本件商標「ヨーロピアン」を付して販売している商品「インスタントコーヒー」(以下「本件商品」という。)の包装袋であるとするもので、その表面上寄りに上下2段に同書同大で「ヨーロピアン」及び「コーヒー」の文字(以下、前記包装袋に2段書きされた標章と一括して「使用標章1」という。)が表れており、その裏面には「品名 インスタントコーヒー」の表示がなされている。その他、乙第2号証ないし乙第4号証、乙第6号証(いずれも枝番を含む。)はいずれも、この乙第2号証の1のインスタントコーヒーと同一物の宣伝広告又は販売に係るものであるとみられる。
本件商品は、被請求人の運営するインターネット上の販売サイト(ネットショップ)において販売されており、「販売商品一覧」には「ヨーロピアンコーヒー」の文字(以下「使用標章2」ということがある。前記包装袋に2段書きされた標章と一括して「使用標章」という。)が表示され、該当頁にも同じ使用標章2が表示されている(甲3)。
使用標章1は、「ヨーロピアン」及び「コーヒー」の文字が、上下2段に区切られているものの、同書同大でまとまりよく表されており、全体として「ヨーロピアンコーヒー」と表示したものと認識される。使用標章2は、同書同大で1段に「ヨーロピアンコーヒー」と表示している。本件商標を構成する「ヨーロピアン」は、一般に「ヨーロッパの、ヨーロッパ人の」という意味の形容詞又は「ヨーロッパ人」を意味する名詞という両方の用法を併せ持つ英単語であるが、使用標章においては「コーヒー」を修飾して、全体として「ヨーロッパのコーヒー」を意味する(甲4、甲5)。すなわち、「ヨーロピアン」単独で用いられる場合には、地域を指すこともあれば、そこに住む人々を指すこともあるが、「ヨーロピアンコーヒー」という結合で用いられる使用標章の場合では意味内容が異なるというべきである。
したがって、本件商標と使用標章とは、その外観、称呼のみならず、観念が異なることが明らかであり、同一性があるということができない。
イ コーヒーについての「ヨーロピアン」という語の意味について
本件商標「ヨーロピアン」という語は、「ヨーロッパの」等の意味を持つ英単語であるが、古くからコーヒーに関連して、下記のように用いられている。
(ア)成美堂出版「珈琲の大事典」29頁、田口護監修「珈琲の楽しみ方BOOK」108頁によれば、深煎りの豆を中挽きにして、中温の湯を中速で注ぐという標準的な淹れ方で淹れると、苦みが強く、コクがあり、香味が高いヨーロピアンスタイルのコーヒーになる旨の記載がある(甲6、甲7)。
(イ)中野弘志著「コーヒー自家焙煎教本」47頁には、ブレンド名の分類としても、「アメリカンブレンド」に対するものとして「ヨーロピアンブレンド」の名称が一般的用語として用いられている旨の記載がある(甲8)。
(ウ)秋山悟堂著「おいしく入れるコーヒー入門」71頁、上島珈琲本社編「コーヒー読本」86頁などによれば、コーヒー豆の焙煎度について、8段階に分けた場合、最も深い焙煎度が「イタリアン・ロースト」と呼ばれ、その次に深い焙煎度が「フレンチ・ロースト」と呼ばれており、「イタリアン・ロースト」は、イタリアの代表的な珈琲であり、エスプレッソ等に用いられ、「フレンチ・ロースト」は、ヨーロッパ、とくにフランスで愛好され、カフェ・オ・レ等に用いられるなど、ヨーロッパにおいては深煎り豆が愛好されている旨の記載がある(甲9、甲10)。
(エ)また、このような、コーヒーの特徴を示す意味で「ヨーロピアン」の語が用いられている例としては、「ヨーロピアンタイプで人気なのは・・・」(日本経済新聞1991年10月13日朝刊9頁)。「ヨーロピアンタイプの“モッカ”」(日経流通新聞1992年5月5日19頁)。「ウェンディーズも三年前からヨーロピアンタイプの濃いものにしている」(日経流通新聞1998年6月6日1頁)、「メニュー構成は、ヨーロピアンコーヒーとサラダが中心で」(日刊工業新聞1999年6月8日1頁)、「深い香りと味わいをカフェのイメージの中で表現するヨーロピアンリッチテーストコーヒー『マキシム』」(日本食糧新聞2000年3月3日10頁)、「ヨーロピアンタイプのリッチテイストコーヒーとしてリニューアル。ヨーロピアンタイプの喫茶店の増加を背景にヨーロピアンコーヒーが身近な存在となっている」(日経流通新聞2000年5月20日5頁)、「『マキシム』は本格的ヨーロピアンコーヒーとして品質訴求を行い」(日本食糧新聞2001年3月5日14頁)等の記載がある(甲11?甲17)。
(オ)さらに、これまで他社から販売された商品に関する新聞記事等、例えば、ブティック・カフェ日本の「レギュラーコーヒーバッグ」の「ヨーロピアンブレンド」(日経産業新聞1982年5月29日9頁)、服部コーヒーフーズのコーヒーバッグ「ヨーロピアンブレンド」(日経流通新聞1990年12月11日3頁)、キリンビバレッジの「ジャイブコーヒー ヨーロピアンロースト」(日経流通新聞1994年9月29日5頁)、明治乳業のコーヒーゼリー「ヨーロピアンコーヒー モカゼリー」(日本経済新聞朝刊1994年3月24日15頁)、UCC上島珈琲の「UCCロイヤルヨーロピアンブレンドTYPE II」(日本経済新聞朝刊1994年10月20日朝刊15頁)、ネスレ日本のインスタントコーヒー「ネスカフェ・プレジデント」の「ヨーロピアンマイルド」(日経産業新聞1995年9月19日15頁)、ネスカフェ「プレジデントヨーロピアンマイルド」(日本食糧新聞1996年2月16日2頁)、ダイニチ工業「ヨーロピアンブレンド」(日本経済新聞地方経済面1997年6月18日22頁)、「マキシムヨーロピアンセレクション」(日経産業新聞1999年8月12日14頁)、JAVA ZONE 「ヨーロピアンブレンド」(長瀬正人編「おいしいコーヒー豆を買う本」4頁、69頁、98頁、109頁)、オフィスリングシステムのコーヒー豆「ヨーロピアン」(日経産業新聞2001年8月30日25頁)、さらには、インターネットの販売サイト、例えば下記において展示、広告されている、ブルックスコーヒー「ヨーロピアンブレンド」、UCC・カフェオーナーズクラブ「ヨーロピアン シリーズ」、CAFE工房「ヨーロピアンブレンド」、カフェプロ「ヨーロピアンブレンド」、生協「ヨーロピアン\European」、国太楼「ヨーロピアンコーヒー」、ヒルス「ヨーロピアンブレンド」、セブンプレミアム「ヨーロピアンブレンド」、神戸珈琲「ヨーロピアンブレンド」、クライス カフェ ジャパン「ヨーロピアンブレンド」、ジュピターコーヒー「ヨーロピアンブレンド」、珈琲倶楽部「ゴールド・ヨーロピアンブレンド」等の商品において、「ヨーロピアン」の語がコーヒーの品質を表すものとして用いられている(甲18?甲40)。
すなわち、「ヨーロピアン」の文字は、とりわけ「アメリカン(コーヒー)」との対比において、「イタリア、フランス等のヨーロッパで愛好される、またはヨーロッパを発祥地とする深煎りのコーヒー、苦味が強いコーヒーないしコクのあるコーヒー」を意味する言葉として、長年にわたり、書籍・広告等の文献、コーヒー製造・販売に関わる業者などにおいて使用されていることが明らかである。
ウ 使用標章「ヨーロピアンコーヒー」の使用態様
被請求人は、平成25年10月20日頃から、インターネット上の販売サイトにおいて、使用標章を表示してコーヒーの販売を開始した旨を広告し、同ウェブサイトには、「程よい酸味とキレ、そして強いコクが特徴のコロンビア産のコーヒー豆を使用。」との説明がなされている(甲3)。このような説明は、正に前述のような「ヨーロッパで愛好される、またはヨーロッパを発祥地とする深煎りのコーヒー、苦味が強いコーヒーないしコクのあるコーヒーであること」と整合するものである。
したがって、使用標章は本件商品の品質を記述するにとどまるといわざるを得ない。さもなければ、商品の品質について誤認を生じさせるおそれのある不正な表示というべきである。
ところで、商標は自他商品の識別をその本質とするものであるから、不使用取消審判における被請求人の「登録商標の使用」は自他商品を識別するものでなければならないとするのが多数の判決・通説である(例えば、甲41、甲42)。
しかるところ、被請求人の主張・立証する使用標章は、前述のとおり、本件商品の品質を表示するに過ぎないから、自他商品を識別することのできないものであり、商標の使用に当たらない。
(2)結び
以上のとおり、被請求人は、その提出に係る乙号証において、本件商標と同一性ある標章が自他商品を識別する態様において使用されていた事実を立証していないといわざるを得ない。

第3 被請求人の主張
被請求人は、結論と同旨の審決を求める、と答弁し、答弁書において、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第6号証(枝番号を含む。)を提出している。
1 答弁の理由
(1)本件商標の使用事実
ア 乙第2号証の1は、本件商標「ヨーロピアン」を付して販売している本件商標権者の商品「インスタントコーヒー」の包装袋の写しである。
なお、本件商標権者は「ヨーロピアン/コーヒー」の包装資材をエスエステクナ株式会社に対して、平成25年9月30日依頼し、平成25年10月15日に受け入れている(乙2の2?4)。
イ 乙第3号証の1は、商標権者のネットショップの購入者である坂本一平氏への商品名「ヨーロピアンコーヒー」の納品書(控え)の写しである。
乙第3号証の2は、問い合わせ番号757-8287-7634、品名「ヨーロピアン」の坂本一平氏の代引専用の伝票の写しである。
乙第3号証の3は、原票番号757-8287-7634についての商品代金、うまみ味だし1155、ヨーロピアンコーヒー1190、運賃315、手数料300、消費税15の合計金額2975が代金と引き替えに支払われていることを示す送金明細一覧表の写しである。
これら乙第2号証の1、乙第3号証の1(商品名「ヨーロピアンコーヒー」の文字)、乙第3号証の2(「ヨーロピアンコーヒー」の文字)、乙第3号証の3、後述する乙第5号証から、本件商標を付した商品が2013年11月14日(出荷 乙3の1)、2013年11月16日(納品 乙3の1、後述する乙5)に使用さていることは明らかである。
ウ 乙第4号証の1は、商標権者のネットショップの購入者である足立勝氏への商品名「ヨーロピアンコーヒー」の納品書(控え)の写しである。
乙第4号証の2は、問い合わせ番号757-8287-7730、品名「ヨーロピアン」の足立勝氏の代引専用の伝票の写しである。
乙第4号証の3は、原票番号757-8287-7730についての商品代金1190、運賃315、手数料300、消費税15の合計金額1820が代金と引き替えに支払われていることを示す送金明細一覧表の写しである。
これら乙第2号証の1、乙第4号証の1 (商品名「ヨーロピアンコーヒー」の文字)、乙第4号証の2(「ヨーロピアンコーヒー」の文字)、乙第4号証の3、後述する乙第5号証から、本件商標を付した商品が2013年12月4日(出荷 乙4の1)、2013年12月5日(納品 乙4の1、後述する乙5)に使用さていることは明らかである。
なお、上述の問い合わせ番号757-8287-7634、757-8287-7730の商品の流通過程は、乙第5号証でさらに明瞭となっている。
エ 「地方銀行 フードセレクション 2013」(乙6の1)10月21日、22日 東京ビッグサイトにおいて、商品「ヨーロピアン/コーヒー」を宣伝のため、商品「ヨーロピアン コーヒー」と、該商品を記載したパンフレットを配布した事実(乙6の1?3)から、本件商標を付した商品が2013年10月21日に使用さていることは明らかである。
したがって、上述したア?エより、商標権者は、起算日以前に本件商標を「インスタントコーヒー」に使用している事実がある以上、本件商標は、その指定商品「コーヒー及びココア,コーヒー豆」についての登録は、取消されるべきでない。

第4 当審の判断
1 被請求人の提出した証拠によれば、以下の事実が認められる。
(1)乙第2号証の1は、小分けされた「インスタントコーヒー」(本件商品)の包装袋の表面と裏面の写しである。
そして、その包装袋の表面には、「ヨーロピアン」の文字が表示され、該文字の「ン」の右上には、「○」の中に「R」が表示されている記号が付されている(以下「○R記号」という。)。なお、この「○R記号」は、我が国において定められているものではない(法令上規定された表示方法ではない)ものの、特定の国や地域において、直前にある語句や記号が登録された商標(Registered Trademark)であることを知らせるためのマークとして使用されているものである。
また、該「ヨーロピアン」の文字の下には、「コーヒー」の文字が表示され、さらに、「無糖」「お湯を注ぐだけ」の文字とコーヒーの入ったカップ等の図形が表示されている。
包装袋の裏面には、「品名」として「インスタントコーヒー」、「内容量」として「2g」及び「製造者」として「真富士屋食品株式会社」(以下「真富士屋食品」という。)等の記載がある。
乙第2号証の3は、「原料・包材・注文書」及び「送り状」の写しであるところ、その「注文書」は、「真富士屋食品」から「エスエステクナ(株)」(以下「エスエステクナ」という。)に宛てた2013年9月30日付けのものであって、これには、「品名」の欄に「ヨーロピアンコーヒーフィルム」、「数量」の欄に「17700m」、「入荷日」の欄に「10/15」等の記載及び確認印がある。
乙第2号証の4は、「2013年10月15日」及び「2013年10月21日」付け「納品書」の写しであるところ、上段の「2013年10月15日」付けの「納品書」は、「エスエステクナ」から「真富士屋食品」に宛てたものであって、これには、「商品名/規格」の欄に「ヨーロピアンコーヒーフィルム 3C 140×1000m」が三段にわたって記載され、それぞれの「数量」の欄に「10,000」「4,650」「3,050」、金額の「総計」の欄に「275,289」等の記載がある。
(2)乙第3号証の1は、「真富士屋食品」から「ネットショッピングの坂本一平」氏に宛てた「納品書(控)」であって、これには、「出荷年月日」の欄に「2013,11,14」、「納品年月日」の欄に「2013,11,16」、「商品名」の欄に「うま味だし・1800ml」及び「ヨーロピアンコーヒー」、「数量」の欄に「100」及び「10,000」、金額の「合計」の欄に「2660」等の記載がある。
乙第3号証の2は、「福山通運」の荷物の運送についての「お客様控」であって、「お届け先」を「坂本一平」氏、「荷送人」を「真富士屋食品」とするものである。
これには、日付の欄に「13年11月14日」、「品名」の欄に「うま味だし・1800ml 1コ/ヨーロピアンコーヒー 1CS」等の記載がある。
(3)乙第4号証の1は、「真富士屋食品」から「ネットショッピングの足立勝」氏に宛てた「納品書(控)」であって、これには、「出荷年月日」の欄に「2013,12,4」、「納品年月日」の欄に「2013,12,5」、「商品名」の欄に「ヨーロピアンコーヒー」、「数量」の欄に「10,000」、金額の「合計」の欄に「1505」等の記載がある。
乙第4号証の2は、「福山通運」の荷物の運送についての「お客様控」であって、「お届け先」を「足立勝」氏、「荷送人」を「真富士屋食品」とするものである。
これには、日付の欄に「13年12月4日」、「品名」の欄に「ヨーロピアンコーヒー 1CS」等の記載がある。
2 以上の事実を総合すれば、以下のとおり判断することができる。
(1)本件商標の使用について
本件商品の包装袋の表面には、「ヨーロピアン」の文字が表示され、該文字の「ン」の右上には、「○」の中に「R」が表示されている記号が付されている。そして、該「ヨーロピアン」の文字は、本件商標と同じ片仮名で表示されたものであって、社会通念上同一の商標の使用と認められるものである。
ところで、この本件商標に付された「○R記号」は、我が国において法令上規定された表示方法ではないものの、直前にある文字が登録商標であることを知らせるためのマークとして理解されるものというのが相当であるから、これによっても、該「ヨーロピアン」の文字が登録商標であることを示しているものである。
また、該「ヨーロピアン」の文字の下に表示された「コーヒー」の文字は、その包装袋の中身がコーヒーであることの内容表示として表されているものと理解されるものである。
よって、本件商標の使用は、「ヨーロピアン」の登録商標の下に「コーヒー」の文字が同書、同大に書されているとしても、「ヨーロピアンコーヒー」という一体不可分の結合によって表示されたものではないというべきであるから、該「ヨーロピアン」の表示をもって本件商標の使用というべきである。
(2)商標の使用者、使用商品及び使用時期について
本件商標は、小分けされた「インスタントコーヒー」(本件商品)の包装袋に表示されているものである。そして、乙第2号証の3及び4によれば、この包装袋は、その「注文書」の発注が2013年9月30日に「真富士屋食品」から「エスエステクナ」になされ、品名を「ヨーロピアンコーヒーフィルム」として「17,700」の数量が「2013年10月15日」に納品されたものである。
商標権者である真富士屋食品は、この包装袋を使用した本件商品について、「2013年11月16日」及び「2013年12月5日」に「ネットショッピング」の「坂本一平」氏及び「足立勝」氏にそれぞれ販売していることが認められる。
(3)小括
以上のとおり、商標権者は、要証期間内である、2013(平成25)年11月16日及び同年12月5日に、本件商標と社会通念上同一と認められる商標が付された包装袋を使用した商品「インスタントコーヒー」を、顧客に譲渡したと認められるものであり、商標権者による上記使用は、商標法第2条第3項第2号の「商品又は商品の包装に標章を付したものを譲渡する行為」に該当するものである。
3 請求人の主張について
請求人は、「使用標章1は、『ヨーロピアン』及び『コーヒー』の文字が、上下2段に区切られているものの、同書同大でまとまりよく表されており、全体として『ヨーロピアンコーヒー』と表示したものと認識される。使用標章2は、同書同大で1段に『ヨーロピアンコーヒー』と表示している。本件商標を構成する『ヨーロピアン』は、一般に『ヨーロッパの、ヨーロッパ人の』という意味の形容詞又は『ヨーロッパ人』を意味する名詞という両方の用法を併せ持つ英単語であるが、使用標章においては『コーヒー』を修飾して、全体として『ヨーロッパのコーヒー』を意味する。すなわち、『ヨーロピアン』単独で用いられる場合には、地域を指すこともあれば、そこに住む人々を指すこともあるが、『ヨーロピアンコーヒー』という結合で用いられる使用標章の場合では意味内容が異なるというべきである。したがって、本件商標と使用標章とは、その外観、称呼のみならず、観念が異なることが明らかであり、同一性があるということができない。」旨、主張している。
しかしながら、本件審判は、商標法第50条による商標登録の取消しを求める審判であるところ、本件商標の使用についての判断においては、実際に使用されている商標の態様が本件商標と社会通念上同一であれば認められるものである。
そして、前記したとおり、本件商標が実際に使用されている商標の態様は、上記2で認定したとおり、使用に係る「ヨーロピアン」の文字が、本件商標と同じ片仮名で表示されたものであって、その外観、称呼及び観念に異なるところはなく、また、「ヨーロピアンコーヒー」という一体不可分の結合によって表示されたものではないというべきであるから、社会通念上同一の商標の使用と認められるものである。
また、請求人は、「すなわち、『ヨーロピアン』の文字は、とりわけ『アメリカン(コーヒー)』との対比において、『イタリア、フランス等のヨーロッパで愛好される、またはヨーロッパを発祥地とする深煎りのコーヒー、苦味が強いコーヒーないしコクのあるコーヒー』を意味する言葉として、長年にわたり、書籍・広告等の文献、コーヒー製造・販売に関わる業者などにおいて使用されていることが明らかである。・・・したがって、使用標章は本件商品の品質を記述するにとどまるといわざるを得ない。さもなければ、商品の品質について誤認を生じさせるおそれのある不正な表示というべきである。ところで、商標は自他商品の識別をその本質とするものであるから、不使用取消審判における被請求人の『登録商標の使用』は自他商品を識別するものでなければならないとするのが多数の判決・通説である。しかるところ、被請求人の主張・立証する使用標章は、前述のとおり、本件商品の品質を表示するに過ぎないから、自他商品を識別することのできないものであり、商標の使用に当たらない。」旨、主張している。
しかしながら、請求人の提出に係る証拠からは、「ヨーロピアンタイプ」、「ヨーロピアンブレンド」等の文字の使用は認められるものの、これらを表示するものとして、単独で「ヨーロピアン」の文字が使用されている例は少なく、一般に普通に使用されているという程ではないものであるから、「ヨーロピアン」の文字は、本件商品の品質を表示するに過ぎず、自他商品を識別することのできないものであって、商標の使用に当たらないということができない。
よって、請求人の主張はいずれも採用の限りでない。
4 むすび
以上のとおりであるから、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、取消請求に係る指定商品「コーヒー及びココア」の範ちゅうに属する「インスタントコーヒー」について、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を、商標権者が使用していたことを証明したものと認められる。
したがって、本件商標の登録は、取消請求に係る指定商品について、商標法第50条の規定により、取り消すべき限りでない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2014-09-04 
結審通知日 2014-09-08 
審決日 2014-10-14 
出願番号 商願平8-140300 
審決分類 T 1 32・ 1- Y (030)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 今田 三男
特許庁審判官 井出 英一郎
田中 亨子
登録日 1998-12-25 
登録番号 商標登録第4225824号(T4225824) 
商標の称呼 ヨーロピアン 
代理人 中田 和博 
代理人 入江 一郎 
代理人 柳生 征男 
代理人 青木 博通 

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