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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W1617 審判 全部申立て 登録を維持 W1617 |
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管理番号 | 1306632 |
異議申立番号 | 異議2014-900347 |
総通号数 | 191 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2015-11-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2014-12-18 |
確定日 | 2015-09-18 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第5704098号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第5704098号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第5704098商標(以下「本件商標」という。)は,「オカベカミコン」の片仮名を横書きしてなり,平成26年4月14日に登録出願,第16類及び第17類に属する商標登録原簿に記載の商品を指定商品として,同年8月6日に登録査定,同年9月19日に設定登録されたものである。 2 登録異議申立ての理由 登録異議申立人(以下「申立人」という。)は,本件商標は,商標法第3条第1項柱書の要件を具備せず,また,同法第4条第1項第7号に該当するから,その登録は,同法第43条の2第1号により,取り消されるべきであるとして,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第8号証(枝番号を含む。)を提出した。 (1)申立人の事業内容及び沿革 申立人は,梱包資材の開発・製造・販売を行っており,国内に本社・工場を有するほか,中国に関連会社の工場を有している(甲2)。 申立人の前身は,包装材料を扱う「岡部商店」(1961年に設立)であり,その後,「有限会社岡部紙器製作所」に改組(1967年),「有限会社オカベカミコン」に社名変更(1987年)し,さらに,「株式会社オカベカミコン」に組織変更(2004年)をしている(甲2?甲4)。 以上のとおり,「オカベカミコン」を商号の一部に使用してから,現在までおよそ27年が経過している。申立人は,この間,包装・梱包資材,包装容器などの製造・販売を続けており(甲2,甲3),申立人の商号は,これらの商品を扱う企業として周知である。 また,申立人は,取り扱う各商品の名称について登録商標を取得し(甲5),使用もしている。 (2)本件商標権者と申立人との関係について 本件商標権者は,申立人の代表者として長らくその地位にあった。しかしながら,平成23年3月14日に代表者の地位を退き(甲4),同25年11月1日には会長職も退いた(甲6,甲7)。平成25年11月1日以降,本件商標権者は,申立人との雇用関係がー切無く,申立人に対する支配関係・被支配関係についても無い。 なお,本件商標権者の住所は申立人住所と同一であるが,本件商標権者は,既にその住所に居住していない。 (3)商標法第3条第1項柱書について 上記のとおり,本件商標権者は,申立人が,少なくとも1987年以降において,「オカベカミコン」を含む商号を本件商標の指定商品を含む業務に長年使用していた事実を熟知している一方,いずれの指定商品に関しても直接的に業務として営んだことは無い。本件商標権者は,過去において,申立人の代表者として,申立人の業務に関与したことはあったが,本件商標権者個人として,本件商標の指定商品に関して事業を行ったことは無い。 以上のとおり,本件商標権者は,長期にわたって申立人の代表者であり,申立人の商号の一部である「オカベカミコン」からなる商標が,それが登録されているか否かにかかわらず,申立人の所有に係るものであるところを極めて明確に認識し得えたはずである。よって,本件商標権者は,本件商標について,自ら使用し得るものとして認識しながら取得したものとはいい難い。 この点に関して,本件商標権者は,申立人に対して,会長職を辞した後,平成25年11月5日以降において,金銭的な要求(甲8)など,不当な要求を繰り返している。本件商標権者の本件商標の登録の目的は,このような要求を受け入れさせることであり,本件商標権者に本件商標の使用意思が無いことは,このような事実からも明らかである。 したがって,本件商標の登録は,商標法第3条第1項柱書に違反してなされたものである。 (4)商標法第4条第1項第7号について 本件商標は,申立人の商号のうちの「株式会社」の文字を除いただけのものであり,本件商標の取得は,申立人の利害に多大な影響を直接的に与え得る。このような影響は,当事者の一部の商品についての登録商標の取得による影響よりもはるかに大きい。 そして,本件商標権者は,過去において申立人の代表者であったのであるから,本件商標の取得により,そのような影響が申立人に及ぶであろうという点については,極めて明確に認識し得る状況にあったものといえる。 以上の点からすると,本件商標権者が申立人の商号の一部である本件商標を取得することは,申立人の事業の遂行を阻止し,公共的利益を損なう結果に至ることを知りながら,「オカベカミコン」の名称による利益の独占を図る意図でしたものであって,剽窃的なものと考えざるを得ない。このような本件商標の登録出願の経緯には,社会的相当性を欠くものがあり,その登録を認めることは,商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ない。 また,商標登録出願について先願主義を採用し,現に使用していることを要件としていない我が国の法制度を前提としても,このような剽窃的出願は,健全な法感情に照らし条理上許されないというべきであり,商標法の目的(商標法第1条)にも反し,公正な商標秩序を乱すものというべきである。本件商標の出願当時,標章「オカベカミコン」が周知・著名であったか否かにかかわらず,本件商標は,「公の秩序又は善良な風俗を害するおそれがある商標」に該当するものである。 したがって,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第7号に該当する。 3 当審の判断 (1)商標法第3条第1項柱書について 商標法第3条第1項柱書の「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標」とは,少なくとも登録査定時において,現に自己の業務に係る商品又は役務に使用をしている商標,あるいは将来自己の業務に係る商品又は役務に使用する意思のある商標と解される(知財高裁平成24年(行ケ)第10019号,同年5月31日判決)。 そうすると,本件商標権者が,本件商標の登録査定時において,本件商標を自己の業務に係る指定商品について現に使用をしていなくとも,将来において使用する意思があれば,本件商標は,商標法第3条第1項柱書の要件を具備するといえるところ,申立人が提出する全証拠によっても,本件商標権者がそのように本件商標を使用する意思を有することを否定するに足りる事実は見いだせない。 なお,申立人は,本件商標権者は,申立人の会長職を辞した後,平成25年11月5日以降において,申立人に対する金銭的な要求(甲8)を行うなど,不当な要求を繰り返しているから,本件商標権者による本件商標の登録の目的は,このような要求を受け入れさせることであり,本件商標権者に本件商標の使用意思がないことは,このような事実からも明らかである旨主張するが,当該金銭的な要求とされるものには,文面上,創業者である本件商標権者が,申立人の社長に対し,これまで面倒をみてきたお返しとして毎月一定額の金銭を頂戴したい旨の記載が認められるにすぎず,他の証拠を合わせみても,本件商標権者において,将来にわたり,本件商標を自己の業務に係る指定商品に使用する意思がないとはいうことができないから,申立人による上記主張を採用することはできない。 したがって,本件商標は,商標法第3条第1項柱書の要件を具備しないものとはいえない。 (2)商標法第4条第1項第7号について ア 商標法第4条第1項第7号にいう「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」には,a)その構成自体が非道徳的,卑わい,差別的,矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合,b)当該商標の構成自体がそのようなものでなくとも,指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し,社会の一般的道徳観念に反する場合,c)他の法律によって,当該商標の使用等が禁止されている場合,d)特定の国若しくはその国民を侮辱し,又は一般に国際信義に反する場合,e)当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり,登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合,などが含まれるというべきである(知財高裁平成17年(行ケ)第10349号,同18年9月20日判決)。 イ 証拠及び申立人の主張によれば,申立人が「オカベカミコン」の片仮名を商号の一部に使用していること,本件商標権者が平成23年3月まで申立人の代表者であり,かつ,同25年11月まで会長であったこと,及び本件商標権者は「オカベカミコン」が申立人の商号の一部であると承知していたことを認めることができる(甲2?甲4,甲6?甲8)。 しかしながら,「オカベカミコン」の片仮名からなる本件商標が上記アのa)ないしd)に該当しないことは明らかであるし,また,e)についても該当すると認めるに足りる事実は見いだせない。その他,本件商標が公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標と認めるに足りる証拠もない。 そうすると,本件商標は,公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標ということはできない。 ウ したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に該当しない。 (3)まとめ 以上のとおり,本件商標は,商標法第3条第1項柱書の要件を具備しないものではなく,また,同法第4条第1項第7号に該当するものではないから,これらに違反して登録されたものということはできない。 したがって,本件商標の登録は,商標法第43条の3第4項の規定により,維持すべきである。 よって,結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2015-09-10 |
出願番号 | 商願2014-29022(T2014-29022) |
審決分類 |
T
1
651・
22-
Y
(W1617)
T 1 651・ 18- Y (W1617) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 浦崎 直之 |
特許庁審判長 |
大森 健司 |
特許庁審判官 |
田中 敬規 田村 正明 |
登録日 | 2014-09-19 |
登録番号 | 商標登録第5704098号(T5704098) |
権利者 | 岡部 昌明 |
商標の称呼 | オカベカミコン |
代理人 | 上田 千織 |
代理人 | 飯田 昭夫 |
代理人 | 安藤 敏之 |
代理人 | 村山 信義 |
代理人 | 江間 路子 |