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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない X05
管理番号 1306615 
審判番号 取消2015-300011 
総通号数 191 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2015-11-27 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2014-12-26 
確定日 2015-10-05 
事件の表示 上記当事者間の登録第5435411号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5435411号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成23年4月6日に登録出願、第5類「失禁用ライナー,失禁用パッド,失禁用おしめ」を指定商品として、同年9月2日に設定登録されたものである。
なお、本件審判の請求の登録日は、同27年1月21日である。

第2 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証及び甲第2号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品のいずれについても、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかによって使用された事実が存しないから、商標法第50条第1項の規定により、その登録は取り消されるべきである。
2 答弁に対する弁駁
被請求人が提出している証拠において使用している商標は、本件商標と社会通念上同一の商標ではない。以下、本件商標と使用している商標が同一性を有しない点につき詳述する。
(1)本件商標と使用商標の構成について
本件商標は、別掲1のとおり、楕円形内に「肌ケア」の文字と、該楕円形周囲に細線で2つの円が重なり合う模様を有する楕円模様を右上に配し、該楕円模様の左下に空間を形成するようにリング状の花柄模様を配した図形で構成されている。
他方、乙第1号証ないし乙第4号証において使用されている商標は、別掲2のとおり、本件商標とほぼ同一の構成を基調としつつも、それに加えて、リング状の花柄模様内に形成された空間に極めて大きく「ポイズ」の文字が配され、また、「肌ケア」の文字の周囲及びリング状の花柄模様には星柄模様が多数散りばめられた構成(以下「使用商標」という。)よりなるものである。
(2)本件商標と使用商標の非同一性について
ア 外観
上記(1)で示したとおり、使用商標は、本件商標とほぼ同一の構成を基調とはしているが、先ず、リング状の花柄模様内に形成された空間に「ポイズ」の文字が極めて大きく配されているという点において、本件商標とは決定的な差異を有している。「ポイズ」の文字は、リング状の花柄模様内に形成された空間、すなわち、本件商標の中央部分に相当する位置に配されており、文字の大きさも、「肌ケア」の文字の約1.5倍ないし2倍程で極めて大きく表されているため、使用商標の構成の中核ともいえる圧倒的な存在感を有するものである。「ポイズ」の文字の色も、周囲の楕円形状や花柄模様と同様、ピンク色であり、使用商標全体に色彩的な統一感をもたらすような構成ともなっていることから、あえて当該文字部分を、周囲の図形等と切り離して認識することは極めて不自然であり、これに接する需要者がこの「ポイズ」の文字部分を無視して周囲の図形等のみを認識するということは到底あり得ない。
この点、被請求人は、本件商標に係る図形と、「ポイズ」の文字とに何ら一体性は無い旨を主張しているが、上記したように、「ポイズ」の文字が配されている位置や、大きさ、色等を考慮すれば、むしろ、図形等を含めた色彩的な統一感のある使用商標全体の中で中核となるような構成要素といえることから、これらにつき一体性が無いとする被請求人の主張は失当である。
なお、被請求人は、本件商標に係る図形と、「ポイズ」の文字とに一体性が無いことの根拠として、商標「ポイズ」が、商品「失禁用ライナー,失禁用パッド」を表示するものとして需要者の間に広く認識されている点を述べているが、かかる主張も、全くもって的を射ない主張であるといわざるを得ない。
すなわち、仮に、商標「ポイズ」が需要者の間に広く認識されているような状況であるとしても、そのような状況であれば、それが中央に極めて大きく配された場合、需要者がこれを無視して周囲の図形等のみを認識することが無いこと、なおさらであり、これは、被請求人が商標「ポイズ」を使用していることの根拠とはなり得ても、本件商標を使用していることを何ら立証するものでは無く、むしろ本件商標には存在しない「ポイズ」の文字が配された使用商標が、本件商標とは同一性を有しないことを示す最大の根拠となり得るものである。
使用商標の態様(乙1、乙2及び乙4)を見ても、いずれも使用商標のすぐ横、或いはすぐ下に大きく「肌ケアのポイズ」なる文字が併記されていることから、「ポイズ」の文字と「肌ケア」の文字とが一体性を有するものとして需要者に認識されることも明らかであるといえ、この事実は、このような使用を行っている被請求人が自ら示しているところである。
また、被請求人は、使用商標には、本件商標には存在しない小さな星柄模様が散りばめられている点につき、「数個散りばめられた」と述べているが、「肌ケア」の文字の周囲及びリング状の花柄模様に配された全てを数えれば、計9個もの星柄模様が全体的に散りばめられていることから、決して「数個」では無いため、誤りである。そして、これらの星柄模様は、各々の大きさこそ、さほど大きくは無いものの、9個もの数が全体的に散りばめられており、使用商標全体の外観にキラキラした印象をもたらしているといえる。
したがって、このような星柄模様が一つも存在せず、上記のようなキラキラした印象が感じられない本件商標と、使用商標とでは、その外観が全く異なるものであるから、これを単に「僅かな相違」であるとした被請求人の主張も失当である。
以上のとおり、本件商標と使用商標は、外観上全く別異の商標であるといえる。
イ 称呼
本件商標からは、構成中の「肌ケア」の文字に相応して「ハダケア」の称呼が生じる。
これに対し、使用商標からは、その中央に極めて大きく表された「ポイズ」の文字に相応して「ポイズ」の称呼が生じる。また、その「ポイズ」の文字の右上に、やや小さく「肌ケア」の文字も表されていることから、上記の称呼「ポイズ」以外の称呼が生じ得るとすれば、「ハダケアポイズ」或いは「ポイズハダケア」なる称呼が生じ得る。
そこで、本件商標より生じる「ハダケア」の称呼と、使用商標より生じ得る「ポイズ」、「ハダケアポイズ」及び「ポイズハダケア」の各称呼とを比較すると、同一の称呼でないことは明白である。
なお、被請求人は、本件商標に係る図形と、「ポイズ」の文字とに何ら一体性は無い旨を主張して、あたかも使用商標からは「ポイズ」の称呼が生じ得ないかのような主張を行っているが、前記したように、「ポイズ」の文字は、使用商標の構成の中核ともいえる圧倒的な存在感を有するものであって、更に、被請求人が主張するように、商標「ポイズ」が需要者の間に広く認識されているのであれば、これに接する需要者がこの「ポイズ」の文字部分を無視して周囲の図形等のみを認識するということは到底あり得ないため、先ずは、使用商標より「ポイズ」の称呼が生じると考えるのが自然である。
また、使用商標の構成中の「肌ケア」の文字の存在、及び使用商標のすぐ横、或いはすぐ下に大きく「肌ケアのポイズ」なる文字が併記されているという実際の使用態様を考慮しても、使用商標から生じ得るのは「ハダケアポイズ」或いは「ポイズハダケア」なる称呼であり、いずれにしても、使用商標より、本件商標と同一の称呼「ハダケア」のみが生じることはあり得ない。
以上のとおり、本件商標と使用商標は、称呼においても全く別異の商標であるといえる。
ウ 観念
本件商標及び使用商標は、それぞれ上記(1)で示した構成からなり、「肌ケア」「ポイズ」の文字部分は、いずれも特定の商品の品質等に通じる具体的な意味合いを生じ得ない造語であるから、このような造語と図形要素との結合からなる両商標は、いずれも商標全体としても特定の観念を生じさせるものではなく、観念上、互いに比較できるものではない。
以上のとおり、本件商標と使用商標は、観念においても同一性を有しない全く別異の商標であるといえる。
エ 総合判断
以上に述べたとおり、本件商標と使用商標は、外観、称呼、観念のいずれの点においても、全く相容れない別異の商標であり、社会通念上同一の商標でないことは明らかである。
なお、本件商標構成中のリング状の花柄模様内に形成された空間部分は、あくまで、文字や図形等の要素が何も存在しない空間部分であって、当該空間部分にどんな文字要素、図形要素が配されても、それ以外の構成要素が共通していれば本件商標と同一性を有するという訳では無い。当該空間部分には、何も存在しないことを前提として、商標登録出願、審査が行われ、その結果、登録が認められているのであるから、その登録後においても、商標権者(被請求人)には、あくまで当該空間部分には何も存在しない態様で登録商標を使用する義務が発生していると考えられる。
かかる状況下、当該空間部分に、本件商標の構成要素としては全く含まれていない「ポイズ」の文字が新たに配された商標の使用をもって、本件商標と社会通念上同一の商標を使用していると解することは、本件商標の商標権者の登録商標の使用義務を、いたずらに、かつ、何の根拠も無く免除・軽減することに他ならず、ひいては、第三者の商標選択の余地を不当に狭める不使用商標の存在を個別に排除せんとする商標法第50条不使用取消審判の制度趣旨にも大いに反することとなる。
仮に、当該空間部分に、識別力を有しない(或いは弱い)文字が、極めて小さく表示されて、構成全体の中においても埋没しているような使用態様である場合には、本件商標と社会通念上同一であるか否かを議論する余地が生じ得るかもしれないが、被請求人が示した使用商標においては、本件商標と同一性を有しないことは明らかである。
3 まとめ
以上のとおり、被請求人が提出した証拠によっては、本件商標が本件審判の請求の登録日前3年以内に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかにより、その請求に係る指定商品について使用されていた事実は一切証明されておらず、よって、本件商標の登録は、その不使用を理由とする取消しを免れないものである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第7号証を提出した。
1 答弁の理由
本件商標は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者(被請求人)が請求に係る指定商品中「失禁用ライナー,失禁用パッド」(以下「本件商品」という。)について使用している(乙1ないし乙5)。
(1)商標権者は、自社の商品カタログである「2012 AUTUMN ALL PRODUCTS GUIDE 全商品カタログ」(乙1。以下「2012カタログ」という。)の第25頁、「2013 SPRING ALL PRODUCTS GUIDE 全商品カタログ」(乙2。以下「2013カタログ」という。)の第25頁に、別掲2のとおりの使用商標を本件商品とともに掲載し、取引先等に頒布している。
これら商品カタログ(乙1及び乙2)は、株式会社ジーエーシーが印刷・製本し、2012カタログは30,000冊が2012年7月9日に、2013カタログは25,000冊が2013年1月15日に同社から商標権者に納品されたものである(乙3)。
また、2012カタログの裏表紙右下には「2012年7月発行」と、2013カタログの裏表紙右下には「2013年1月発行」と記載されており、これから商品カタログの発行年月日が特定できる。
さらに、商標権者は、2014年12月13日発行の情報季刊誌「くまにち ゆとれあ」(乙4)において、使用商標を本件商品に関する広告に使用している(乙4及び乙5)。
これらから、商標権者が、本件商品の商品カタログ及び広告に、本件商標と社会通念上同一の商標を表示していた事実が確認でき、商標権者の上記行為は、商標法第2条第3項第8号の「商品に関する広告、価格表若しくは取引書類に標章を付して頒布する行為」に該当する。
(2)本件商標と使用商標の同一性について
本件商標は、楕円形内に「肌ケア」の文字と、該楕円形周囲に細線で2つの円が重なりあう模様を有する楕円模様を右上に配し、該楕円模様の左下に空間を形成するようにリング状の花柄模様を配した図形で構成されている。
使用商標は、本件商標を構成する「肌ケア」の文字の周囲とリング状の花柄模様に極小さな星柄模様が数個散りばめられた図形と、リング状の花柄模様内に形成された空間に配された「ポイズ」の文字とで構成されている。
このように構成された本件商標と使用商標とは、以下に述べる理由により同一性があり、使用商標の使用は本件商標の使用である。
ア 通常の商取引における商標の使用においては、登録商標が図形である場合に、この図形の登録商標に文字を併記して使用することや、登録商標が文字である場合に、この文字の登録商標に図形を配して使用するといったことが広く行われている。
このような場合、需要者が図形と文字とを分離して認識できる、例えば、登録商標が図形である場合に、図形と文字で構成される使用に係る商標から、需要者が図形と文字を分離し、登録商標である図形を容易に認識できるものであれば、登録商標である図形と文字とに一体性が無いとされ、登録商標と使用に係る商標の図形に同一性があれば、使用に係る商標の使用は登録商標の使用と認められる。
そこで、使用商標を見てみると、リング状の花柄模様内に形成された空間に配された「ポイズ」の文字は、楕円形内に「肌ケア」の文字と、該楕円形周囲に細線で2つの円が重なりあう模様とを有する楕円模様に僅かに掛かってはいるものの、本件商標の構成を変えるものとはなっておらず、需要者は使用商標から本件商標である図形を容易に認識できる。すなわち、使用商標において、本件商標である図形と、これに併記された「ポイズ」の文字とに何ら一体性は無い。
イ さらに付言すれば、使用商標で、本件商標である図形に併記されている「ポイズ」は、商標権者を「キンバリー クラーク ワールドワイド インコーポレイテッド」とする他人の登録商標(登録第4824968号)であり、商標権者は、商標「ポイズ」の権利者から使用許諾を受け、本件商品に商標「ポイズ」を使用している。
この商標「ポイズ」を付した商品は、1994年にナプキンタイプの尿ケア専用品として「ポイズパッド」が我が国で初めて販売されて以降、高い吸収力と肌にやさしい品質を兼ね備えた失禁用商品として主に女性の需要者の間で好評を得ている。同商品は、ドラッグストア、スーパー、コンビニエンスストア、ホームセンターなどで販売され、2009年から2013年における軽失禁商品の市場占有率は平均15%と非常に高い市場占有率を誇っている。
このように、商標「ポイズ」は、商標権者が販売する本件商品を表示するものとして取引者・重要者の間に広く認識されているものである。
この結果、需要者は使用商標をみて、商標「ポイズ」を図形から容易に分離して認識する状況にあり、このことは、また、本件商標である図形を認識することにもなる。
ウ このように、使用商標において、本件商標である図形と、これに併記された「ポイズ」の文字とに何ら一体性は無く、また、本件商標である図形と、これに併記された「ポイズ」の文字を常に一体としてみなければならない特段の理由も認められない。
過去の審決例においても、図形と文字で構成される使用商標にあって、図形と文字を常に一体としてみなければならない特段の理由も認められない場合や文字と図形とが分離した独立した標章として明らかに認識し得る場合には、使用商標から文字部分と図形部分を分離し、使用商標と登録商標との同一性を認める判断がなされている(乙6および乙7)。
このような審決例に照らしても、本件商標と使用商標とに同一性があると認められる。
(3)本件商標と使用商標の図形の同一性について
本件商標と使用商標の図形は、後者が「肌ケア」の文字の周囲とリング状の花柄模様に極小さな星柄模様が数個散りばめられた図形となっている点に、相違が認められる。
しかし、この相違は僅かな相違であり、使用商標における図形と本件商標とは実質的に同一のものであり、本件商標と使用商標とは、社会通念上同一の商標と認められるものである。
商標法第50条第1項の規定に基づく登録商標の取消審判に係る審決取消訴訟における判決(東京高裁 平成2年(行ケ)第48号)に照らしてみても、使用商標の構成から文字を除いた図形は本件商標と実質的に同一のものであり、使用商標には本件商標の識別性が明確に維持されているといえる。
したがって、本件商標と使用商標は、社会通念上同一の商標である。
(4)まとめ
以上のとおり、商標権者(被請求人)は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、本件商標と社会通念上同一の商標を本件審判請求に係る指定商品中「失禁用ライナー,失禁用パッド」について使用している。
したがって、本件審判の請求は成り立たない。

第4 当審の判断
1 被請求人提出の乙各号証及び同人の主張によれば、次の事実を認めることができる。
(1)乙第1号証は、「2012 AUTUMN ALL PRODUCTS GUIDE 全商品カタログ」との表題のカタログ(2012カタログ)であり、その第25頁の左最上部には、「ヘルスケア(軽失禁)」の記載があり、左上部には、別掲2のとおりの構成からなる商標(使用商標)が表示され、頁の下半分には「尿ケアライナータイプ」、「尿ケア専用ナプキンタイプ」等の文字とともに、商品の写真が掲載されており、また、その裏表紙には、「日本製紙クレシア株式会社」及び「2012年7月発行」の記載がある。
(2)乙第2号証は、「2013 SPRING ALL PRODUCTS GUIDE 全商品カタログ」との表題のカタログ(2013カタログ)であり、その第25頁の左最上部には、「ヘルスケア(軽失禁)」の記載があり、左上部には、使用商標が表示され、頁の下半分には「尿ケアライナータイプ」、「尿ケア専用ナプキンタイプ」等の文字とともに、商品の写真が掲載されており、また、その裏表紙には、「日本製紙クレシア株式会社」及び「2013年1月発行」の記載がある。
(3)乙第3号証は、平成27年3月2日付の株式会社ジーエーシー(以下「ジーエーシー」という。)の取締役営業本部長による「証明書」であるところ、その内容として、ジーエーシーがカタログの印刷・製本をし、日本製紙クレシア株式会社に納品したものであるとして、「1.2012 AUTUMN ALL PRODUCTS GUIDE 全商品カタログ/2012年7月発行/発行部数:30,000冊/納品日:2012年7月9日」及び「2.2013 SPRING ALL PRODUCTS GUIDE 全商品カタログ/2013年1月発行/発行部数:25,000冊/納品日:2013年1月15日」の記載がある。
そして、別紙1として、2012カタログの表紙、第25頁目及び裏表紙、別紙2として2013カタログの表紙、第25頁目及び裏表紙の写しが添付されている。
(4)乙第4号証は、2014年(平成26年)12月13日発行の情報誌「くまにち ゆとれあ」であるところ、右下部には「日本製紙クレシア株式会社」の記載があり、中央上部には、使用商標が表示され、下部には、「選ぶなら、肌ケアのポイズ。」の見出しの下、「多い時も安心用」、「長時間・夜も安心用」などの文字とともに、尿ケア専用ナプキンタイプの商品の写真が掲載されている。
(5)乙第5号証は、「熊本県高齢者介護施設・住宅ガイドブログ:くまにち ゆとれあ」のウェブサイトであるところ、「くまにち ゆとれあ」の見出しの下、「私ども、NPO法人ワークショップ『いふ』は、熊本日日新聞社広告局が発行する『くまにちゆとれあ』の取材協力・監修に参加しています。『ゆとれあ』は、“自分らしい生き方”をともに考える情報誌。年4回発行の季刊誌です。」の記載がある。
2 上記1で認定した事実によれば、以下のとおり認めることができる。
(1)商標権者は、「ヘルスケア(軽失禁)」のページにおいて、別掲2のとおりの構成からなる商標(使用商標)並びに「尿ケアライナータイプ」、「尿ケア専用ナプキンタイプ」等の文字とともに、「失禁用ライナー」及び「失禁用パッド」と認められる商品の写真を掲載した商品カタログを、2012年(平成24年)7月発行の2012カタログについては3万部、2013年(平成25年)1月発行の2013カタログについては2.5万部作成した。
そして、当該商品カタログの上記発行状況に照らせば、少なくとも2012カタログは、2012年(平成24年)7月9日の納品後から、2013カタログが納品された2013年(平成25年)1月15日までの間に、取引先に頒布されたものと推認するのが合理的である(上記1(1)ないし(3))。
そして、2012カタログの納品日から2013カタログの納品日に至る期間は、本件審判の請求の登録前3年(以下「要証期間」という。)以内に当たる期間である。
(2)商標権者は、2014年(平成26年)12月13日発行の情報誌「くまにち ゆとれあ」に使用商標を表示して「失禁用パッド」と認められる商品「尿ケア専用ナプキンタイプ」の広告を掲載した。
当該情報誌は、その体裁及び熊本日日新聞社広告局が発行していることから、発行日以後、速やかに少なくとも熊本県内を中心に頒布されたものと推認することができる(上記1(4)及び(5))。
そして、当該発行日は、要証期間内に当たるものである。
なお、請求人はこれらの事実について争っていない。
(3)上記(1)及び(2)のとおりであるから、商標権者は、日本国内において、要証期間内に、本件審判の請求に係る指定商品中「失禁用ライナー」又は「失禁用パッド」の取引書類(商品カタログ)又は広告に使用商標を付して頒布していたと認められる。
3 本件商標と使用商標の同一性について
請求人は、本件商標と使用商標の同一性について争っているので、以下検討する。
(1)本件商標について
本件商標は、別掲1のとおり、楕円形内に「肌ケア」の文字と、該楕円形周囲に細線で2つの円が重なり合う模様を有する楕円模様を右上に配し、該楕円模様の左下に空間を形成するようにリング状の花柄模様を配した図形からなるものである。
(2)使用商標について
ア 使用商標は、別掲2のとおり、本件商標とほぼ同一の構成を基調とした標章に加えて、リング状の花柄模様内に形成された空間に「ポイズ」の文字が配され、また、「肌ケア」の文字及びリング状の花柄模様の周囲には小さな星柄模様が9個散りばめられた構成からなるものである。
そして、使用商標は、その構成中「ポイズ」の文字のみが濃いピンク色で表され淡いピンクを基調とした他の部分とは異なることから、一見して、該文字とその周りを囲む輪郭(以下、使用商標の構成中「ポイズ」の文字を除く輪郭図形(「肌ケア」の文字を含む。)を「図形部分」という。)からなるものと把握、認識されるとみるのが自然である。
また、使用商標は、その構成態様から、看者をして中央に大きく表された「ポイズ」の文字部分に着目し、認識、記憶することはもちろんのこと、図形部分に着目し、認識、記憶することも少なくないものというのが相当である。
そうすると、使用商標の図形部分は、独立して自他商品識別標識としての機能を果たし得るものというべきである。
イ 請求人は、使用商標はその構成中「ポイズ」の文字が極めて大きく配され、色彩も周囲の模様と同様にピンク色で統一感をもたらすような構成であることから、該「ポイズ」の文字部分を無視して図形部分のみを認識することはない旨主張している。
しかしながら、一般的に、複数の自他商品識別標識としての機能を果たす部分を有する商標は少なくないから、使用商標において「ポイズ」の文字部分及び図形部分それぞれを自他商品識別標識としての機能を果たす部分と認識することを否定することにはならない。
さらに、商標法第50条第1項の取消審判においては、登録商標(社会通念上同一と認められる商標を含む。)の使用の有無が問題とされるのであるところ、請求人も「使用商標は、本件商標とほぼ同一の構成を基調としている」旨述べている。
したがって、請求人のかかる主張は採用できない。
(3)本件商標と使用商標の同一性について
使用商標は、図形部分と「ポイズ」の文字部分が一体不可分のものとまではいうことができないものであり、上記(2)アのとおり、図形部分が独立して自他商品識別標識として機能するものであるところ、該図形部分は、本件商標の構成に、その構成要素を保持しつつ、小さな星柄模様を9個散りばめられた構成からなるものといえる。
そして、その使用商標の図形部分は、本件商標の構成の基本を変更するものではなく、本件商標の有する識別性に影響を与えない範囲にとどまっているといえるものであるから、本件商標と社会通念上同一と認められる商標に該当するというべきである。
そうすると、使用商標は、その構成中、図形部分が独立して自他商品識別標識としての機能を果たし得るものであって、同図形部分が本件商標と社会通念上同一と認められるものであるから、使用商標は、本件商標と社会通念上同一と認められる商標に該当するというべきである。
なお、請求人は、本件商標について、その構成中の中央の空間部分には何も存在しないことを前提として登録が認められているのであるから、その態様で登録商標を使用する義務が発生していると考えられ、当該空間部分に「ポイズ」の文字が新たに配された商標の使用をもって、本件商標と社会通念上同一の商標を使用していると解することは、商標法第50条不使用取消審判の制度趣旨に反する旨主張しているが、使用商標は、本件商標の識別性が影響を受けるような本件商標の基本を変更しているものではなく、登録商標と社会通念上同一と認められることは上述のとおりであり、加えて、パリ条約第5条C(2)の趣旨も踏まえれば、かかる主張は採用する限りでない。
4 まとめ
以上のとおりであるから、商標権者は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者がその請求に係る指定商品中「失禁用ライナー,失禁用パッド」の取引書類及び広告に本件商標と社会通念上同一と認められる商標を付して頒布した(商標法第2条第3項第8号)といわなければならない。
したがって、被請求人(商標権者)は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者がその請求に係る指定商品の範ちゅうに属する商品について、本件商標(社会通念上同一と認められる商標を含む。)の使用をしていたことを証明したといえるから、本件商標の登録は、本件審判の請求に係る指定商品について、商標法第50条の規定により、取り消すべきでない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲1(本件商標)
(色彩は原本参照)




別掲2(使用商標)
(色彩は原本参照)




審理終結日 2015-08-07 
結審通知日 2015-08-12 
審決日 2015-08-25 
出願番号 商願2011-24112(T2011-24112) 
審決分類 T 1 31・ 1- Y (X05)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 堀内 真一 
特許庁審判長 林 栄二
特許庁審判官 中束 としえ
梶原 良子
登録日 2011-09-02 
登録番号 商標登録第5435411号(T5435411) 
商標の称呼 ハダケア 
代理人 大塚 明博 

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