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審決分類 審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W30
管理番号 1306602 
審判番号 無効2014-890102 
総通号数 191 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2015-11-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2014-12-18 
確定日 2015-10-05 
事件の表示 上記当事者間の登録第5610990号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5610990号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5610990号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成25年4月16日に登録出願、第30類「茶,調味料,香辛料,穀物の加工品,米,脱穀済みのえん麦,脱穀済みの大麦,食用粉類」を指定商品として、同年7月23日に登録査定、同年8月30日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第19号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、商標法第3条第1項柱書の要件を具備せず、また、同法第4条第1項第7号に違反して登録されたものであるから、商標法第46条第1項第1号に基づき、その登録は無効とされるべきである。
2 具体的な理由
(1)請求人について
請求人は創業160年の老舗醤油・味噌蔵である。
請求人は、1854年に屋号を「岩城屋」、読みを特殊な「ユワキヤ」として現在の大分県大分市内に創業し醤油の製造販売を開始(甲3)、1950年に「ユワキヤ醤油株式会社」として法人化し(甲4)、創業以来今日まで継続的に味噌や醤油、そして昨今ではドレッシング、ソース、酢など主に「調味料」の製造販売を営んでいる(甲3ないし甲7)。
なお、昭和3年には、屋号のロゴに「ユワキヤ」の片仮名を付した商標の登録を受けたが(甲3)、現在では失効してしまった。
また、請求人は1950年の会社設立と同時に、製造販売商品についての販促物などを頒布し始め(甲3)、2003年からは顧客向けに「岩城屋新聞」(カタログ販促物)の発行・頒布を開始(甲8の1及び2)、今日まで継続的に広告宣伝を行ってきた。さらに、昨今では請求人は、自社商品をインターネット上のショッピングサイトを通じて全国に販売している(甲9)。
そして請求人は、「岩城屋」の創業当時より現代まで、屋号である「岩城屋」を、その営業標章として使用し(例えば、店舗入り口の「のれん」に使用:甲2)、また、会社名であり登録商標でもある「ユワキヤ醤油」(商標登録第5701981号)の標章と共に、請求人商品の商標として「岩城屋」を一貫して使用している。その間、商品の品質を重視した研究開発に努力を傾注しつつ、上記のとおり、請求人は永年に亘る営業活動を通じて、醤油・味噌の老舗の製造業者としての名声と地位を築き上げ、現在に至っている。
(2)被請求人について
ア 被請求人について、本無効審判の請求の時点では、何を生業としている個人なのか定かではない。
ただし、平成13年頃の「大分合同新聞」の記事(甲10)によると、当時は「文筆業」や「画家」であったとされている。また、当時請求人で調査したところ、具体的な商行為を行っているという事実を客観的に裏付ける証拠は見つからず、現在でもその状況は変わっていない。さらに、被請求人は上記の記事中の記載から、現在では既に73歳前後であり、常識的に考えれば、本件商標の指定商品である調味料等の製造販売に係る事業を今から新たに起こすことは到底不可能な年齢である。また、これまでに調味料等の製造販売に係る事業を実際に行ってきた事実も確認できない。
イ 被請求人は本件商標の他にも、請求人の商号又は屋号に係る商標登録出願を行っている(甲12の1ないし5)。
被請求人は、まず、請求人が商標登録していないことを奇貨として、平成22年1月21日に、無断で商標「ユワキヤ醤油」を登録出願したが、同商標は請求人の著名な略称と同一であり、取引者・需要者に広く認識されている商標「ユワキヤ醤油」と同一であることを理由として、商標法第4条第1項第8号及び同第10号に該当するとして拒絶査定され、同査定は確定した(甲13)。
ところが、被請求人は、今度は、請求人が創業時以来から用いて親しまれている屋号「岩城屋」を文字部分とする商標を平成23年4月5日に登録出願をし、該商標は同年9月30日に設定登録となった。
さらに、被請求人は、本件商標をはじめ「岩城屋」、「ゆわきや」及び「ユワキヤ」の文字を含む3件の商標を登録出願をした。
(3)請求人と被請求人との関係について
ア 取引関係
甲第10号証の新聞記事に記載されている当事者は、被請求人と請求人の社長である。
請求人と被請求人は、過去も現在も経済的な繋がりは全く無く、被請求人が請求人企業の社員や役員であったことは無いが、請求人は被請求人にホームページの見積もりを依頼したことはあった。すなわち、僅かではあるが、両者の間に取引関係はあったのである。また、同記事等に記載があるK氏についても同様である。
このように請求人と被請求人及びK氏(以下「被請求人ら」という。)の間では取引関係があったにも関わらず、被請求人らは、突如として請求人事務所にて、請求人に対し金銭を要求してきたのである。
そして、被請求人らは、請求人の営業妨害のみを目的とした文書を、主に大分県内の企業500社にFAX送信した。また同時期、被請求人らは、請求人の営業を妨害するため、請求人に先立って「yuwakiya.○○○」のドメインネームを取得していた。そして、被請求人らは、「業界の老舗・ユワキヤ提供 超過激アダルトサイト○○○」などと大きく書かれた猥褻文書をも同様に大分県内の企業にFAX送信していた(甲14の1)。いうまでもなく、FAXの送り先である大分県内の企業であれば、「ユワキヤ」といえば直ちに請求人のことを想起するため、当該文書は明らかに請求人の営業を妨害する目的で、しかも請求人の名誉を毀損させるという社会的に許されない目的をもって送信されたものである。
なお、当該事件については請求人の名誉毀損に係るため、請求人は刑事告訴の準備をしていたが、被請求人及びK氏の代理人弁護士より、被請求人及びK氏の両名による謝罪文を名誉毀損文書及び卑猥文書をFAX送信した企業に宛てて発送する予定である旨連絡があり(甲14の2)、2001年10月10日付けで、K氏のみの名で「謝罪文」を実際に発送したようであったため(甲14の3)、名誉毀損を理由とする刑事告訴はしなかった。
イ 請求人にあてた通知書
被請求人は、本件商標を含む請求人関連商標が商標登録されていないことを奇貨として、本来は請求人が正当な権利者であるべき商標の登録出願を、請求人の気づかぬ間に次々と行っていた。本件商標が登録されるや否や、被請求人は請求人に対し、商標の使用中止を求める「ご通知」を送付し(甲15)、警告をしてきた。該通知書の差出日は、被請求人が登録証を受け取ってから僅か2週間程度のことである。
被請求人は、このように本件商標の登録日から極めて短期間で請求人に商標の使用の中止を求めてきた。
また、同様に被請求人は、本件商標に酷似した商標が登録されるや否や、上記の第1回目の通知書と同様の内容である通知書(「ご連絡」)を、請求人に対し送付している(甲16)。なお、請求人は、該商標についても、本請求と同時並行で無効審判請求をしている。
(4)本件商標の出願の目的について(推察)
ア 上記(2)アのとおり、被請求人の事業の実態は明らかではなく、実際に本件商標の指定商品についての製造・販売業を行っているかは疑わしい。
仮に事業を行っているとしても、個人営業であると思われ、個人営業であれば一般的に事業の規模は極めて小規模であると思われるところだが、そもそも本件商標の指定商品は、一個人がそう易々と製造・販売に携われる類いの商品ではない。また、これら商品は、一般的には薄利多売の商品群であり、利益を上げるためにそれなりのロットの商品を製造する必要があるが、そのための施設・設備への投資には想像もつかない多額の資金やリスクを伴う。よって、一個人である被請求人が、リスクをとって莫大な資本を投じて「調味料」等の製造販売に関する事業を過去に行い、または、現在もその事業を継続して行っているとは到底考えられない。つまり、実際にはそれら事業を行ったこともないし、現在も行っていないと見るのがごく自然である。また、被請求人は今後近い将来、本件商標の指定商品に関する事業を行う意思があるとは少しも思われず、少なくともその可能性は限りなく低いと思われる。
このように、被請求人は事業の実体がほとんど無いため、本件商標の出願時、登録査定時には、被請求人は、本件商標を自己の業務にかかる商品について使用する意思を有していなかったと推認せざるを得ない。
イ 一方で、平成13年に被請求人は請求人に対し脅迫行為を行っていること、請求人の商号の要部である「ユワキヤ醤油」の登録出願をしていること、請求人の屋号である「岩城屋」の文字からなる商標を3件も出願していること、それら商標のうち2件については「岩城」の読みとしては全く一般的でない「ゆわき」のルビがわざわざ付されていること(「ゆわき」の読みは請求人の独創であって、被請求人を含め他人が偶然に思いつくなどということは到底考えられない。)、当該2件の商標の登録後に間を空けずに直ちに請求人に対して商標の使用中止を求める通知書を送りつけてきていること、以上の事実を総合考慮すると、本件商標の出願日前より、被請求人は、請求人が創業時から約160年間使用している営業標識であり老舗ブランドともいえる大切な屋号「岩城屋」(読みは請求人の独創による「ゆわきや」)及び請求人の業務にかかる商品について、熟知していたことは明らかであり、当該請求人の屋号である「岩城屋」及びその特殊な読みである「ゆわき(や)」の登録がないことを奇貨として、かつ、請求人への営業妨害及び請求人の取引企業に損害を与える目的、はたまた取引の秩序を乱す目的のみをもって、先回りして本件商標を登録出願したものと強く推察される。
(5)商標法第3条第1項柱書及び同法第1条について
商標法第3条第1項柱書に係る判決(東京地方裁判所 平成22年(ワ)11604号:甲17)に沿って検討するに、請求人の歴史については、上記(1)で述べたとおり、これまで160年に渡って「岩城屋」(読み方は特殊な「ゆわきや」)を使用してきており、単なる屋号というよりは、歌舞伎の世界と同様、もはや「名跡」ですらある。すなわち、160年に渡って継承されてきた「信用」「伝統」「歴史」そのものであり、業務上の信用や顧客吸引力が十分に蓄積されたものである。
したがって、このような歴史的屋号(「名跡」)と同じ構成文字・読みからなる本件商標が、請求人以外の者に商標登録されるべきでないこと、また同時に、請求人自身が本件商標について商標権を得ることは、商標法第1条にいう商標法の目的に合致するものである。
逆に、被請求人が本件商標の商標権者である限り、実際に商標を使用する者(請求人)の業務上の信用は失われ、ひいては取引者・需要者の利益を保護することにもならない。
また、上記(4)アのとおり、被請求人のような一個人が本件商標の指定商品の製造販売を行うことは極めて困難であり、また実際に被請求人には事業の実体がほとんど無い。さらに、被請求人が本件商標を取得した目的としては、本件商標が侵害されていると主張して請求人の業務上の信用を毀損すること、あるいは、請求人に対して営業妨害を行うことであると十分に推察されるから(実質的には「警告書である」通知書の送付等)、本件商標の登録出願時及び登録査定時には、被請求人は、本件商標を自己の業務にかかる商品について使用する意思を有していなかったと強く推認できる。
したがって、本件商標が商標法第3条第1項柱書の要件を具備しないことは明らかである。
(6)商標法第4条第1項第7号について
ア 本号に係る審判決(知財高裁平成17年(行ケ)10349号、甲18、甲19)によれば、無効請求に係る商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠く場合にあっては、無効審判請求人の使用に係る標章・営業標識等が周知・著名であろうがなかろうが、当該登録商標は「公の秩序又は善良な風俗を害するおそれがある商標」に該当すると評価されるべきである。
イ 確かに、請求人の屋号「岩城屋」(読みは「ゆわきや」)は、全国的に周知・著名とはいえないかもしれない。
しかし、上記(3)の事実と(4)での推察からも明らかなとおり、本件商標の採択が、請求人により既に160年間も使用されている屋号の構成文字及び読みと偶然に一致したとみることはできないどころか、被請求人は、請求人の屋号及び製造販売する商品を熟知しつつ、請求人が本件商標について商標登録を得ていないことを奇貨とし、しかも請求人の屋号の使用に支障を来たさせることのみを目的として本件商標を登録出願したものである。
そして、被請求人が自ら使用する目的をもって本件商標を登録出願したとの特段の事情も見あたらない。
以上のとおり、被請求人は、他人(請求人)が大切に長年使用する屋号について不正な目的をもって剽窃的に本件商標の登録出願をしたものというべきであり、登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものであり、その上、その不当に獲得した商標権をもとに正当な権利者を脅すという公正な取引秩序に反する行為は、許されるはずがない。
したがって、本件商標の登録を認め、登録状態を放置しておくことは、「商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合」にあたるものといえるから、本件商標は、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当するというべきであり、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものである。
(7)まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第3条第1項柱書の要件を具備せず、また、同法第4条第1項第7号に違反して登録されたものである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証を提出した。
1 本件商標について
本件商標は、家紋「岩城立引き」中の白円内に「岩城屋」の文字を隷書体で墨書し、その読み「ユワキヤ」より「ゆわき」を難読部分の「岩城」の右横にゴシック体のルビとしたものである。
「岩城屋」を「ユワキヤ」と読むのを被請求人の独創とし、「請求人のみの行為である」とはいかなる論理か。商標登録において独創とされることは名誉なことではあっても、請求人に帰すべきとする論理になるものではない。
2 請求人について
(1)請求人は、安政元年創業をうたっているが、2次資料のみであり(甲3)、明治7年醤油屋中(現在の同業組合か)発行の文書資料などは、昭和30年代以前の一村における一業一者(社)状況を彷彿させるものがあり、該文書宛名に「岩城屋」の記載はないながら、岩城屋あるいは醤油屋とよばれる店はあったと思われる。
初見は昭和3年とされる商標登録通知であるが、写真版が小さく薄いために見にくく、判読できる情報は多くない。登録のロゴマーク中には「ユワキヤ」の文字は見えるが、「岩城屋」との関連を示すものはない。また醤油屋であることも不明である。この商標登録がいつ、いかように失効、消滅したかは知る由もない。
さらに「とっくり」、「うんすけ」などの写真で時代を特定するのは困難である。かなり古いころから間断なくか、断続的にかは不明ながら、竹中の地に醤油屋が存在したことは確かなようである。
つぎに見参するのは昭和25年5月31日の「ユワキヤ醤油株式会社」の設立登記(甲4)になる。以来途切れることなく営業活動はあり続け、現在に至るものと思われる。
甲第5号証ないし甲第9号証は、甲第3号証との重複であり、現況部分の厚みを増しただけである。
(2)請求人の主張は、「のれん」及び「とっくり」の2例から見て、「岩城屋」ではなく、「竹中 岩城屋」とすべきが妥当である。
3 被請求人について
ユワキヤの読みや岩城屋、ユワキヤの商標にこだわる理由を以下述べる。
被請求人の祖母は鹿児島の商家付で、業態は不明ながら屋号をユワキヤと呼び、厳密に音写するならユワッキャと聞こえるものであった。戦後、本物醤油、アミノ酸醤油、あやしげな固形の醤油の元と呼ばれるものなど貧弱な品揃えながら、数年間は醤油の販売をしていた。
ユワキヤ時代からの家紋は、本件商標の文字部分を取り去ったものである。実際的にはもう少々横長になり、白円の比率を小さくしたものである。この家紋を「岩城立引き」と呼ぶ。
つまりユワッキャは岩城屋であり、曖昧音、促音を整理してユワキヤと表記する。
4 請求人と被請求人との関係について
(1)取引関係
ア 請求人と被請求人との取引関係は全くといっていいほど存在していない。請求人と出会ったのは平成12年10月頃、ローカルライフ社編集部である。ローカルライフ社の社長は請求人の社長(当時専務)であり、K氏が「月刊Local LIFE」(タブロイド判12ページの地域紙)の編集長であった。被請求人はK氏と友人である。
イ Local LIFEのホームページサーバ開設作成に関してはご祝儀に無料で、というのを固辞された次第であり、請求書を出してくれといわれながら、詰めた話にはならなかったのである。
この件で「これをファックスで流す」の発言を恐喝文言とされたわけであるが、恐喝などなかったのである。
「yuwakiya.○○○」表記のチラシ(甲14の1)はファックスマガジンではない。このチラシはK氏の独走で、請求人のほか数人に発送されただけのようで、公判でもほとんど問題にならなかったように記憶している。なお、ファックスマガジンは「大南地域新報」である。
ウ トップレベルドメイン「YUWAKIYA.○○○」について
乙第1号証は、Whois(フーイズ)検索の結果である。検索時点は不明である。ファイル中にはなく、プロパティで見てもファイル作成日時は飛んでいる。ドメインの性質上、有効期限内にしか存在しないので、その幅のある期間内のいつかになる。保存フアイル形式はTEXTであり、それなりの信頼性しかない。取得年月日あたりには請求人をWeb上は勿論、付近の食料品店、スーパーマーケットなどで「ユワキヤ」ブランドの商品を見たことがない。
(2)請求人にあてた通知書
「ご通知」(甲15)及び「ご連絡」(甲16)の文書は特許庁HPから容易にたどりつける知的財産権者の当然の権利と、発露の手法である。
5 本件商標の出願の目的について
請求人が主張する推察の話は前後二段に分かれている。
まず前段であるが、被請求人に醤油屋はできない、などといっているが、請求人が邪魔をしなければ、早く実行できるのである。
次に後段であるが、「ユワキヤ\岩城屋」に関わる商標をいくつか取得することは請求人ヘの営業妨害にあたる、ということのようである。
被請求人の「ユワキヤ\岩城屋」に関わる出願、登録の全商標に意見書、上申書などを提出しているが、まことに不愉快である。
6 商標法第3条第1項柱書及び同法第1条について
甲第17号証の判例をひきながら商標法第3条第1項柱書をなぞっただけでしかない。商標ブローカーと決めつけるには保有商標は少なく、商標の使用未使用をいえそうもないことから、内容の伴わない主張になってしまっている。
また、ユワキヤの読みが請求人だけのオリジナルでないことは、すでに述べたとおりである。
商標法第3条第1項柱書の要件を具備しない、とはいかなることか。要件とは第1号から第6号のことであり、これを具備しないことによって商標登録を受けることができる、と柱書はいっているのである。
7 商標法第4条第1項第7号について
請求人の挙げる判例(甲18及び甲19)のいずれも国際信義、国家威信、さらに国益などという語が書かれており、国際スケールの判例では我々の身の丈に合わず、空疎な議論にしかならない。
つまり「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」をほとんど該当するところのない判例をあげても、なにひとつ証拠もなく、論理もなく、ただ感性的決めつけにすぎない。
8 まとめ
本件商標は、商標法第3条第1項柱書の要件を具備していないとの主張は論理の破綻であり、かつ、同法第4条第1項第7号に違反して登録されたものでもない。

第4 当審の判断
1 請求人及び被請求人提出の証拠、両人の主張及び職権調査によれば、次の事実を認めることができる。
(1)請求人に係る事実
ア 請求人は、昭和25年5月に設立され、本店を大分市大字竹中に置く、商号を「ユワキヤ醤油株式会社」とする法人である(甲4)。
イ 請求人は、その前身は1854年に創設され、以来160年以上の歴史を持ち、しょうゆ、みそをはじめとする調味料などの製造販売を営んでいる(甲3ないし甲7)。
そして、請求人は、遅くとも、大正時代には「竹中/岩城屋」の文字を(甲3)、昭和3年頃には「ユワキヤ」の文字を(甲3)、昭和30年頃には「ユワキヤ醤油」の文字を(甲3)、平成17年頃には「岩城屋醤油」の文字を(甲5、職権調査(ヘルシンキで陸上の第10回世界選手権が開催されたのは平成17年である。))、平成26年には「竹中/岩城屋」、「ユワキヤ醤油」、「ユワキヤ」、「岩城屋醤油」、「ユワキヤ/岩城屋」の文字(甲2、甲8の2、甲9)を、商品「しょうゆ」、「みそ」などに使用していた。
なお、被請求人は 請求人が平成25年9月以前から「ユワキヤ、ゆわきや、岩城屋」の商標を使用しているとして、請求人に書面を送付している(甲15)。
ウ 上記ア及びイに加え、「竹中」が請求人の住所の一部と一致し、「醤油」が請求人の製造販売する商品の普通名称であるから「岩城屋」及び「ユワキヤ」の文字がいずれも自他商品識別標識としての機能を果たし得ること、請求人は、創業約160年の企業(甲7)であり、新聞にも複数回掲載された地元では知られている老舗の企業といえること、2003年(平成15年)から2014年(平成26年)までの期間に顧客向けのカタログ販促物に「岩城屋」の文字を使用している(甲8の1及び2)ことをあわせみれば、請求人は遅くとも昭和の初め頃から現在に至るまで、同人の屋号又は商号の略称として、あるいは製造販売に係る商品について、「岩城屋」及び「ユワキヤ」の文字を使用し、かつ、「岩城屋」を「ユワキヤ」と称呼していたと推認することができる。
(2)被請求人に係る事実
ア 被請求人は、「ユワキヤ醤油」の文字からなる商標を、平成22年1月に「みそ」、「しょうゆ」を含む「調味料」などの商品を指定商品として登録出願したところ、当該出願は、「この出願に係る商標は大分県大分市大字竹中3336番地所在の『ユワキヤ醤油株式会社』(審決注:請求人)が商品『しょうゆ』について使用し、・・・取引者、需要者間に広く認識されている商標『ユワキヤ醤油』と同一又は類似であり・・・商標法第4条第1項第10号に該当する」旨の拒絶理由通知書が送付され、当該理由により平成23年2月に拒絶査定された(請求人主張、職権調査)。
イ 被請求人は、「岩城屋」の文字を含む別掲2のとおりの商標を、平成23年4月に「みそ」、「しょうゆ」などの各種調味料を指定商品として登録出願し、当該出願は平成23年9月に設定登録された(請求人主張、職権調査)。
ウ 被請求人は、「岩城屋」、「ゆわき」の文字を含む別掲1のとおりの商標(本件商標)を、平成25年4月に「みそ」、「しょうゆ」を含む調味料などの商品を指定商品として登録出願し、当該出願は同25年8月に設定登録された(上記第1)。
エ 被請求人は、平成25年9月に請求人に対し、「請求人が『ユワキヤ、ゆわきや、岩城屋』の商標を用いて調味料などを販売することが、本件商標の商標権の侵害になるので、当該商標の使用を中止するよう請求する」旨を内容とする「ご通知」と題する書面を送付した(甲15、被請求人主張)。
オ 被請求人は、平成25年10月に「岩城屋」、「ゆわきや」の文字を含む別掲3のとおりの商標を、平成26年6月に「ユワキヤ」、「岩城屋」の文字を含む別掲4のとおりの商標を、いずれも「みそ」、「しょうゆ」を含む「調味料」などの商品を指定商品として登録出願した。なお、前者は平成26年6月に設定登録されている。(請求人主張、職権調査)
カ 被請求人は、平成26年11月に請求人に対し、上記エと同趣旨の内容が記載された「ご連絡」と題する書面を送付した(甲16、被請求人主張)。
キ 被請求人が、現在までに「みそ」、「しょうゆ」を含む「調味料」等本件商標の指定商品について、本件商標を使用している事実はもとより、それら商品に係る業務を行っている事実も確認することはできない(請求人主張、職権調査)。
加えて、被請求人は、本件商標を使用している旨及び本件商標の指定商品に係る業務を行っている旨の主張並びに証拠の提出のいずれもしていない。
2 商標法第4条第1項第7号について
(1)本号にいう「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」には、a)その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合、b)当該商標の構成自体がそのようなものでなくとも、指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反する場合、c)他の法律によって、当該商標の使用等が禁止されている場合、d)特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反する場合、e)当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合、などが含まれるというべきである。(知財高裁 平成17(行ケ)第10349号:裁判所ホームページhttp://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/548/033548_hanrei.pdf)
(2)被請求人のした商標登録出願について
ア 被請求人は、大分県大分市に在住する者であるところ、その商標登録出願は、上記1(2)のとおり、いずれも「みそ」、「しょうゆ」をはじめとする調味料などの商品をその指定商品とし、平成22年1月に「ユワキヤ醤油」の文字からなる商標を、平成23年4月に「岩城屋」の文字を含む商標を、平成25年4月に「岩城屋」、「ゆわき」の文字を含む商標(本件商標)を、平成25年10月に「岩城屋」、「ゆわきや」の文字を含む商標を、さらに平成26年6月に「ユワキヤ」、「岩城屋」の文字を含む商標を登録出願したものである。
イ そして、これら登録出願された商標をみると、いずれも上記1(1)のとおり、請求人が長年、屋号又は商号の略称として、あるいは製造販売に係る商品について使用している「岩城屋」又は「ユワキヤ」の文字を含むものであり、さらには、「岩城屋」を「ユワキヤ」と称呼している請求人の屋号や商標に徐々に近づいたものとなっていることがうかがえるものである。
(3)本件商標の登録出願について
ア 本件商標は、「岩城屋」、「ゆわき」の文字を含む別掲1のとおりの構成からなり、「ユワキヤ」の称呼を生じるものであって、その指定商品は上記第1のとおり「みそ」、「しょうゆ」をはじめとする調味料を含むものであるから、本件商標の登録出願は、上記(2)の被請求人の一連の商標登録出願のうちの一つといえる。
イ また、被請求人は、本件商標の登録出願前に、上記1(2)アのとおりの拒絶理由通知書が送付されていること、及び請求人と同じ大分市内に在住していることから、「岩城屋」を「ユワキヤ」と称呼している請求人の屋号や商標を知っていたとみるのが合理的である。
ウ 上記ア及びイに加え、被請求人が上記(2)の商標の登録出願をする前に、少なくとも請求人の関係者と面識があることを認めていること、本件商標の登録出願から2年、設定登録から1年半以上経過している現在において、被請求人が本件商標をその指定商品について使用している事実を確認できないこと(調味料等を指定商品とする上記1(2)アの登録出願からは5年以上、同イの設定登録からでも約4年が経過しているところ、その事業を開始したこと又は準備していることを具体的に証明するところもない。)、及び本件商標の商標権を基に請求人に「ユワキヤ、ゆわきや、岩城屋」の商標の使用の中止を請求していること(上記1(2)エ、カ)をあわせみれば、被請求人(商標権者)は、請求人が「みそ」、「しょうゆ」などの調味料などに「ユワキヤ、ゆわきや、岩城屋」の商標を使用していることを知ったうえで、それら商標が商標登録されていないことを奇貨として、請求人の営業の妨害をする目的で本件商標を登録出願したものとみるのが相当であって、そうとするならば、本件商標の登録出願の経緯には社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものというべきである。
してみれば、本件商標は、上記(1)の「e)当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合」に該当するものであって、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標というべきものである。
3 被請求人の主張について
被請求人は、祖母に関連する屋号「岩城屋」が転訛して「ユワキヤ」となった旨、「ご通知」(甲15)及び「ご連絡」(甲16)は商標権者(被請求人)の当然の権利である旨主張しているが、そのうちの前者の主張を裏付ける証拠の提出はなく、被請求人による上記1(2)アないしウ及びオのとおりの商標登録出願の経緯や上記1(2)キのとおり被請求人による本件商標の使用が確認できないことなどからすれば、かかる主張はにわかには受け入れ難く、本件商標は、上記2(3)のとおり判断するのが相当である。
よって、被請求人の上記主張は採用することができない。
4 むすび
以上のとおり、本件商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標に該当するものであって、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録を無効にすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲1(本件商標)


別掲2(被請求人が平成23年4月に登録出願した商標)


別掲3(被請求人が平成25年10月に登録出願した商標)


別掲4(被請求人が平成26年6月に登録出願した商標)



審理終結日 2015-08-11 
結審通知日 2015-08-14 
審決日 2015-08-27 
出願番号 商願2013-28237(T2013-28237) 
審決分類 T 1 11・ 22- Z (W30)
最終処分 成立 
前審関与審査官 山根 まり子 
特許庁審判長 林 栄二
特許庁審判官 梶原 良子
中束 としえ
登録日 2013-08-30 
登録番号 商標登録第5610990号(T5610990) 
商標の称呼 ユワキヤ、イワキヤ、イワシロヤ、ユワキ、イワキ、イワシロ 
代理人 松本 秀治 
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