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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない W4144
管理番号 1306536 
審判番号 無効2014-890084 
総通号数 191 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2015-11-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2014-11-18 
確定日 2015-09-25 
事件の表示 上記当事者間の登録第5661565号商標の商標登録無効審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 審判費用は,請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5661565号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲のとおりからなり,平成25年10月22日に登録出願,第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授,運動施設の提供,運動用具の貸与」及び第44類「医業,医療情報の提供,健康診断,歯科医業,調剤,リハビリテーションの指導及び助言,栄養の指導,介護,医療用機械器具の貸与」を指定役務として,同26年3月10日に登録査定,同年4月4日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が,本件商標の登録の無効の理由として引用する登録商標は,以下の4件であり,いずれも現に有効に存続しているものである。
1 登録第4310458号商標(以下「引用商標1」という。)は,「GーSTAR」の欧文字と,「ジースター」の片仮名とを上下二段に横書きしてなり,平成6年9月30日に登録出願,第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として,同11年8月27日に設定登録され,その後,同21年7月21日に商標権の存続期間の更新登録がされたものである。
2 登録第3265453号商標(以下「引用商標2」という。)は,「GーSTAR」の欧文字と,「ジースター」の片仮名とを上下二段に横書きしてなり,平成6年9月30日に登録出願,第18類「原革,原皮,なめし皮,毛皮,革ひも,かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ,かばん金具,がま口口金,傘,ステッキ,つえ,つえ金具,つえの柄,乗馬用具,愛玩動物用被服類」を指定商品として,同9年2月24日に設定登録され,その後,同19年1月16日に商標権の存続期間の更新登録がされたものである。
3 登録第4824855号商標(以下「引用商標3」という。)は,「GーSTAR」の欧文字を横書きしてなり,2003年10月24日に域内市場における調和のための官庁(商標及び意匠)においてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張して,平成16年4月23日に登録出願,第9類「サングラス,眼鏡・サングラス用ひも・ケース,その他の眼鏡の部品及び附属品,その他の眼鏡,測定機械器具」,第14類「計時用具,クロノメーター,その他の時計,宝飾品,貴金属及びその合金,宝玉及びその原石並びに宝玉の模造品,貴金属製宝石箱,身飾品,貴金属製のがま口及び財布,貴金属製コンパクト,貴金属製靴飾り,貴金属製喫煙用具」及び第35類「フランチャイズの事業の管理(インターネットによるものを含む。),その他の事業の管理(インターネットによるものを含む。),フランチャイズの事業に関する指導及び助言(インターネットによるものを含む。),その他の事業に関する指導及び助言(インターネットによるものを含む),フランチャイズ事業に関する情報の提供(インターネットによるものを含む。),広告(インターネットによるものを含む。),経営の診断又は経営に関する助言(インターネットによるものを含む。),市場調査(インターネットによるものを含む。),商品の販売に関する情報の提供(インターネットによるものを含む。),事業の管理又は運営に関する一般事務処理の代理又は代行(インターネットによるものを含む。),財務書類の作成,職業のあっせん,競売の運営,輸出入に関する事務の代理又は代行,新聞の予約購読の取次ぎ,速記,筆耕,書類の複製,文書又は磁気テープのファイリング,電子計算機・タイプライター・テレックス又はこれらに準ずる事務用機器の操作,建築物における来訪者の受付及び案内,広告用具の貸与,タイプライター・複写機及びワードプロセッサの貸与,求人情報の提供,自動販売機の貸与」を指定商品及び指定役務として,同年12月10日に設定登録され,その後,同26年6月24日に商標権の存続期間の更新登録がされたものである。
4 国際登録第950314号商標(以下「引用商標4」という。)は,「GーSTAR」の欧文字よりなり,2007年10月18日に国際商標登録出願,第41類「Entertainment including music publishing services, editing or recording of sounds and images; production of sound recordings; production of image recording, video and DVD; organization of concerts, parties, festivals and entertainment events; production of television and radio programs; publication of printed matter, including books, magazines and newspapers; sporting activities; organization of exhibitions for cultural or educational purposes.」を指定役務として,平成21年7月31日に設定登録されたものである。
なお,引用商標1ないし引用商標4をまとめて,以下「引用商標」という場合がある。

第3 請求人の主張
請求人は,本件商標の登録を無効とする,審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として,甲第1号証ないし甲第478号証(なお,甲第202号証は提出されていない。以下「甲○」と記載する場合がある。)を提出した。
1 本件商標の登録を無効とすべき理由
(1)本件商標
本件商標の「G star」の文字と星形図形は,全体としてまとまりよく一体的に表されたものと看取できる。ただし,該星形図形は,「star」の文字部分を図形で表した装飾であると認識できることから,該図形部分が単独で役務の出所識別標識として機能するものとは考えにくい。
よって,本件商標は,その文字部分から「ジースター」の称呼のみが生じ,該文字部分が強い識別力を発揮するものといえる。
(2)引用商標
引用商標1及び2の片仮名部分は,「GーSTAR」の文字の読みを表したものと認識,理解されるものであり,引用商標は,「ジースター」の称呼のみが生ずる。
GーSTARブランド(以下「GーSTAR」という。)は,世界的なデニムブランドとして周知・著名性を獲得していることから,引用商標からは,有名デニムブランドとの観念が生ずる。
(3)引用商標の周知・著名性について
GーSTAR社は,1989年にオランダ・アムステルダムにおいて創立し,1996年に発売のロー(未加工)デニムを使い,ひざが曲がった立体裁断のジーンズが人気を博した(甲6)。
GーSTARは,ヨーロッパを代表するデニムブランドとして,現在,世界約70力国において商品を販売するに至っている(甲144,甲347及び甲359)。
請求人は,GーSTARグループの会社であり,2003年10月24日に登録出願し,2006年1月5日に商標登録された共同体商標や,20力国以上を指定国とする国際登録のほか,ブラジル,カナダ,アルゼンチン,ニュージーランド,オーストラリア,アメリカ合衆国,日本,インドネシア等の多くの国において多数のGーSTAR商標登録を有している(甲6の1ないし17)。
日本では1998年頃から代理店が輸入販売していたが,2001年11月に日本法人のジースター・インターナショナル株式会社を設立,東京に事務所とショールームを開設し,日本における販売を行っている。2005年には,日本初のオンリーショップを東京・渋谷にオープンし,続いて大阪市・南堀江にもオープンした。2008年に東京・表参道ヒルズに東京で2店舗目となるオンリーショップをオープンし,ニューヨークコレクションに出展した「ニューヨーク・ロウ」等を揃えるなど,順調に我が国における事業を拡大してきた(甲6ないし甲8)。
オンリーショップは,2010年末時点で東京2店,大阪2店の4店だったが,2011年4月に大阪あべのマーケットパークキューズモール内,また,同年5月に名古屋・栄に店舗をオープンした。同年秋には,京都・寺町通り,東京・銀座の並木通りに路面店を出店した(甲9ないし甲14)。
GーSTAR社は,大都市圏にオンリーショップを配置し,全国の百貨店やチェーン専門店等においても商品を販売している。2014年8月現在で東京,大阪,名古屋,京都等の都市圏にオンリーショップ13店舗を配置し,百貨店やチェーン専門店等の卸先小売店舗602店,アウトレットストア5店舗においても商品の販売を行っている。加えて,GーStarオンラインショップの他,Amazon.co.jp,zozotown,BanperHit!等の6つのショッピングサイトにおいてオンライン販売も行っている。表参道ヒルズ,なんばパークス等の有名なショッピングモールにオンリーショップを出店していることに加えて,伊勢丹等の有名百貨店や,日本全国のスーパーやチェーン専門店等において販売されていることから,その販売チャネルの多様さから,GーSTARに対する我が国の取引者・需要者の認知度は相当高いものといえる(甲15ないし甲20)。
GーSTARの売上は,2005年において世界全体で前年比30%増の約1,000億円(小売価格),日本では50%増の約30億円となっている(甲21)。その後も着実に業績を伸ばし,日本におけるGーSTARの売上(小売価格)は,概算で,2009年及び2010年が各年約40億円,2011年が約60億円,2012年及び2013年が各年約70億円となっている。
他のインポートブランドの売上高を列挙すると,ディーゼルジャパン(株)の2013年12月期の売上高(小売価格)は290億円,GAS JAPAN株式会社の2013年12月期の売上高(小売価格)は25億円,株式会社ヒーローインターナショナルの2013年9月期の売上高(卸売価格)は23億円,エージージャパン株式会社の2013年7月期の売上高(卸売価格)は12億円となっている(甲22ないし甲25)。
GーSTARは,デザイン性,機能性に特徴をもつ,他のデニムブランドとは一線を画したブランドとして認知されており,他のインポートブランドとの比較において,我が国においてヨーロッパを代表するデニムブランドとして競争的地位を確立しているといえる。
GーSTARのキャンペーン広告,商品,イベント等が多数の雑誌を中心とするメディアに高い頻度で掲載されていることが明らかである。
雑誌におけるGーSTARブランド紹介記事より,GーSTARが欧州を代表するデニムブランドとして我が国の取引者・需要者に認識され,注目されているブランドであるといえる。加えて,オンリーショップや販路の拡大,積極的な宣伝活動,他業種メーカーや有名デザイナー等とのコラボレーション等を通じて,我が国において世代を問わず,広く一般需要者にも知られているといえる。
よって,遅くとも本件商標の出願日である平成25年(2013)10月22日までに,「GーSTAR」商標は世界的なデニムブランドとして我が国の取引者・需要者の間で広く知られるものとなっており,本件商標の登録日の平成26年(2014)4月4日にも,現在においてもその周知・著名性は維持されているといえる(甲26ないし甲470(甲202を除く。))。
(4)本件商標と引用商標の類似性について
本件商標は,「G star」の文字と星形図形との結合商標であるところ,星形図形部分は装飾にすぎず独立して出所識別機能を発揮するとは考えにくいものであり,「G star」の文字部分が出所識別標識として機能すると考えられる。
本件商標の文字部分「G star」と引用商標「GーSTAR/ジースター」又は「GーSTAR」とを比較すると,大文字と小文字の差異があるとしても,ともに「G」及び「STAR」の文字からなり,同文字部分から「ジースター」の称呼のみが生ずる。
よって,本件商標は,引用商標と構成文字を同じくし,同一の称呼が生ずる類似の商標であるといえる。
(5)指定商品・役務の類似性について
本件商標の指定役務のうち,第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授,運動施設の提供,運動用具の貸与」は,文化,芸術,教育,スポーツと関連する役務であるところ,引用商標4の第41類の指定役務「sporting activities; organization of exhibitions for cultural or educational purposes」等もスポーツ,文化,教育と関連するものであることから,本件商標と引用商標4の指定役務は,密接に関連するものである。
本件商標が第41類の指定役務について使用された場合,GーSTARと何等かの関係がある者の提供する役務であるとの誤認・混同を需要者・取引者に生じさせるおそれがあるものといえる。
また,本件商標の第44類「医業,医療情報の提供,健康診断,歯科医業,調剤,リハビリテーションの指導及び助言,栄養の指導,介護,医療用機械器具の貸与」は,主に医療や介護に関連する役務であるところ,その需要者層には,ファッションに関心の高い層やGーSTARの顧客も含まれる。
GーSTARの主力商品であるジーンズは,カジュアルウェアとして世代を問わず愛用されている被服であり,GーSTARのジーンズがジュニア世代を対象とした雑誌から高齢者を対象とするものまで各種の雑誌等に幅広く掲載されているように,GーSTARの顧客の年齢層は幅広いものである(甲120ないし甲346,甲444ないし甲451)。
これらに加えて,カメラ,家具等の異業種とのコラボレーションや,国連との貧困撲滅のための協業,海洋廃棄物を利用した新素材を用いた被服の開発を通じての環境活動等にも積極的に取り組む,多方面においてその企業活動が紹介されることによって,ファッションにあまり関心のない層にもブランドイメージを広く発信している(甲417ないし甲443,甲452ないし甲458)。
本件商標の第44類の指定役務は,主に医療や介護に関連するものであるが,GーSTARが長年に亘り,我が国において営業活動及び宣伝広告を行ってきたことにより,ファッションの分野のみならず,多方面において世代を問わず認識されるブランドとなっていることから,本件商標が第44類の指定役務について使用された場合,GーSTARと何等かの関連性がある者の提供する役務であるとの誤認・混同を需要者・取引者に生じさせるおそれがあるといえる。
(6)出所の混同のおそれ
GーSTARは,ロー(未加工)デニムを使用したジーンズブランドとして広く知られているが,同じく1996年に発売された「GーSTAR Elwood」も立体裁断デニムとして世界中で1300万本を超えるロングセラー化している人気商品である(甲463ないし甲465)。
また,日本法人の略称「ジースター・インターナショナル」が雑誌,新聞等の記事に必ず記載されていることからも,「GーSTAR(ジースター)」商標は,「GーSTAR RAW」と同様にブランド名として我が国において周知・著名になっているものといえる。
該商品は,「GーSTAR Elwood Limited Edition」の名称でも販売されており,我が国においても人気商品となっている(甲78,甲466ないし甲470)。
本件商標がその指定役務に使用されると,取引者・需要者にGーSTARブランドと関連がある者の業務に係る役務であるとの誤認・混同を生じさせるおそれがあるというべきである(甲471ないし甲476)。
過去の審決において,商標登録無効審判事件について,その登録を無効とする審決がなされている(甲477及び甲478)。
この審決を鑑みても,請求人の商標「GーSTAR(ジースター)」は,日本市場へ参入した時からブランド名称として使用されているものであり,また,長年の使用を通じて取引者・需要者に周知・著名となっているものである。
加えて,GーSTARは,ファッション関連商品にとどまらず,カメラ,家具等メーカーとのコラボレーションや貧困問題や環境問題に取り組む等の幅広い活動を通じて,デザインに関心の高いすべての世代に向けてブランドイメージや世界観を発信している。
そうとすれば,本件商標の指定役務に「GーSTAR」商標の使用をしていない役務が含まれているとしても,本件商標が「GーSTAR」商標と同一のアルファベット文字からなり,同一の称呼を生ずる商標であることから,本件商標がその指定役務について使用された場合,取引者・需要者において,「GーSTAR」の業務に係る役務であるとの誤認や,または「GーSTAR」と営業上の関係又は同一の表示による事業を営むグループに属する関係にある者の業務に係る役務であるとの誤認・混同を生ずるおそれがあるというべきである。
請求人は,ブランド認知を高めるために,大規模なキャンペーン広告を行い,様々なイベントの開催や,他業種とのコラボレーション等を行い,積極的にブランドイメージの発信を行ってきた。本件商標は請求人の「GーSTAR」商標と構成文字を同じくするため,本件商標がその指定役務に使用された場合は,GーSTARと組織的・経済的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるとの誤認・混同を生じ,GーSTARが長年の営業努力により築いてきたブランドイメージ及び出所表示機能が拡散し,希釈化するおそれがある。
よって,本件商標がその指定役務に使用されると,取引者・需要者にGーSTARと関連がある者の業務に係る役務であるとの誤認・混同を生じさせるおそれがあるから,本件商標は,すべての指定役務についてその登録を取り消されるべきである。
2 むすび
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから,同法第46条第1項により,無効とすべきである。

第4 被請求人の答弁
被請求人は,結論同旨の審決を求めると答弁し,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として乙第1号証ないし乙第223号証(以下「乙○」と記載する場合がある。)を提出した。
1 商標法第4条第1項第15号にいう「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれ」の有無は,当該商標と他人の表示との類似性の程度,他人の表示の周知著名性及び独創性の程度や,当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質,用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし,当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として,総合的に判断されるべきである(最高裁平成10年(行ヒ)第85号,平成12年7月11日第三小法廷判決参照)。
2 請求人が提出した証拠の証拠力について
本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当するというためには,登録査定時(2014年3月10日)だけでなく,登録出願時(2013年10月22日)においても当号に該当することを要する(商標法第4条第3項)。
しかしながら,甲第16号証ないし甲第20号証,甲第97号証ないし甲第120号証,甲第279号証,甲第280号証,甲第245号証,甲第256号証,甲第287号証,甲第290号証,甲第292号証,甲第293号証,甲第304号証,甲第305号証,甲第308号証,甲第312号証,甲第313号証,甲第332号証ないし甲第346号証,甲第368号証,甲第384号証,甲第385号証,甲第403号証ないし甲第405号証,甲第409号証,甲第410号証,甲第415号証,甲第429号証,甲第451号証,甲第453号証ないし甲第459号証,甲第461号証,甲第462号証及び甲第471号証ないし甲第474号証は,登録出願時よりも後の発行日・打出日からなるものであり,また,このうち甲第16号証ないし甲第20号証,甲第108号証ないし甲第120号証,甲第287号証,甲第332号証ないし甲第342号証,甲第344号証ないし甲第346号証,甲第368号証,甲第384号証,甲第385号証,甲第404号証,甲第409号証,甲第410号証,甲第415号証,甲第429号証,甲第451号証,甲第453号証ないし甲第457号証及び甲第471号証ないし甲第474号証については,登録査定時よりも後の発行日・打出日からなるものである。
よって,本件商標の商標法第4条第1項第15号の該当性を判断する上で,これらの証拠力は,無いか極めて微弱であると評価できる。
3 引用商標の周知著名性について
(1)請求人の使用する商標について
甲各号証を総合してみると,請求人は,一貫して「GーSTAR RAW」,「GーStar RAW」,「GーStar Raw」,「ジースターロゥ」,「ジースター ロゥ」又は「ジースター・ロゥ」の文字からなる商標(以下「請求人使用商標」という。)を使用しているというべきであり,請求人使用商標は,引用商標とは明らかにその構成を異にする。
請求人使用商標は,甲各号証において,同じ書体及び大きさをもって一体的に表されており,構成文字全体から生ずる「ジースターロー」又は「ジースターロウ」の称呼も淀みなく一気に称呼しうるものである。
また,請求人使用商標は,「GーSTAR」又は「ジースター」の文字部分が独創性の高いものではないので,看者の注意を特に強くひくものではなく,また,「RAW」,「ロー」又は「ロゥ」文字部分が,商標登録第5361033号(乙1)及び国際登録第1000949号(乙2)の我が国における登録例からも明らかなとおり,出所識別標識としての称呼,観念が生じないとは認められないのであるから,その構成全体をもって一体不可分のものとして認識されるものである。
よって,請求人使用商標と引用商標とは,全く別異の商標というべきである。
一方で請求人は,「GーSTAR RAW」の商標についての国際登録第1132005号(乙3),商標登録第4766861号(乙4)及び商標登録第4863868号(乙5)の商標登録(以下「別件商標」という。)を所有している。
そうすると,甲各号証によって信用の蓄積が証明されうるのは別件商標についてであり,引用商標への信用の蓄積は無いか極めて微小であるといわざるをえない。
この点については,甲各号証中の繊研新聞の記事において,請求人ブランドの表記の変遷に如実に表れている。2009年までの記事には「ジースター」の表記が認められるものの,2010年以降の記事(甲9,甲15,甲350,甲352,甲361,甲386及び甲475)においては,「ジースター・ロゥ」の表記に統一されている。これは,請求人ブランドが「ジースター・ロゥ」であるということの請求人自身の意思が記事に反映されたものであると捉えることができる。
(2)繊研新聞,ファッション雑誌及びウェブサイトについて
甲各号証において,請求人は,繊研新聞,ファッション雑誌,ウェブサイト等の記事を多く用いている。
しかし,繊研新聞は業界紙であり(乙6),一般需要者が講読するようなものではないので,繊研新聞の記事によって一般需要者への認知度が高まることはない。
また,ファッション雑誌やウェブサイトは,テレビコマーシャルとは異なり,自らその情報を欲する者のみが見るものである。よって,その宣伝効果についても極めて限定されるものであり,その対象はファッション雑誌を購読する程ファッションを趣味とする者のみに限られる。
(3)売上高について
請求人は,甲第21号証により2005年における売上高を約30億円と主張するが,売上高の数字については請求人へのインタビューの内容に基づいたものであると考えられ,信憑性に欠ける。
また,2009年ないし2013年についての売上高については,何らの証拠も示されていない。
一般的に法人の売上は多種多様なものを含むのであるから,請求人は,引用商標を使用した商品についての売上高を示す客観的な証拠を提出すべきである。
また,我が国のジーンズ製ズボンの市場規模が如何ほどであるのか,その中で引用商標を使用した商品は如何ほどのシェアを占めるのか,そして,そのシェアを何年間維持しているのか等,周知著名性を判断するに際しての重要な要素が全く明らかにされていない。
乙第7号証は,フリー百科事典「ウィキペディア(Wikipedia)」の「ジーンズ」の項をプリントアウトしたものであるが,ジーンズブランド一覧として記載されたものの中には,引用商標及び請求人使用商標のいずれも記載が見あたらない。
当該ジーンズブランド一覧中,各国のジーンズブランドとして「DIESEL(ディーゼル)」が挙げられており,請求人は,甲第22号証を提出してディーゼルジャパン株式会社の売上高を示し,当該「DIESEL」ブランドとの比較を行っている。
しかし,当該「DIESEL」ブランドの商標主であるディーゼル・エセペーア(乙8)が,被服以外の商品を指定した「DIESEL」の文字からなる商標の登録に対して商標法第4条第1項第15号の該当性を争った事件(異議2009ー685022)においては,「DIESEL」ブランドの周知著名性が否定された判断がなされている(乙9)。
また,当該商標登録の他にも,「DIESEL」の文字からなる商標がディーゼル・エセペーア以外の者に対し登録が認められている(乙10ないし乙13)。
(4)コラボレーションについて
請求人は,ライカ(カメラ),ランドローバー(自動車),キャノンデール(自転車)及びVitra(家具)等とコラボレーションを行っていることから,これらの分野においても広く知られている旨主張する。
しかし,コラボレーションの相手方の周知著名性やコラボレーションされた商品の販売数量等は不明である。
また,コラボレーションされた商品は,事前に宣伝され,かつ,期間ないし商品が限定されているのであって,これに接する一般需要者は,おのずと当該商品や各企業に係る広告宣伝のための限定的な企画として理解するというのが普通である。
(5)小括
以上によれば,引用商標のみならず請求人使用商標についても,請求人の業務に係る「ジーンズ製ズボン」を表示する商標として,我が国の需要者に広く認識されていると認めることはできない。
4 引用商標の独創性について
引用商標は,アルファベット1文字である「G」と,「星」を意味する英語として我が国においてよく親しまれている「STAR」の文字とが,ハイフン「ー」を介して結合したものであり,請求人は,本件商標と文字部分が同一のアルファベット文字からなることを主張する。
しかし,アルファベット1文字と「STAR」の文字とが結合した構成からなる引用商標の独創性は高いものではない。
アルファベット1文字と「STAR」の文字との組み合わせからなる標章若しくはその称呼からなる標章を含むものの出願・登録例を示す(乙14ないし乙222)。現実の社会においては,出願・登録されずに商標が使用されることも多い中,出願・登録例だけでこれ程の数に及んでいるのであるから,引用商標は,あらゆる分野において普通に採択されうる独創性の高くない商標であるということができる。
5 本件商標の指定役務と請求人の業務に係る商品との関連性について
請求人は,本件商標の指定役務と引用商標4の指定役務とを比較し,密接に関連するものであると主張するが,甲各号証によって周知著名性を証明しようとする請求人の業務に係る使用商品「ジーンズ製ズボン」との間における関連性を説明しなければならないのであって,何ら使用についての証拠を提出していない引用商標4の指定役務との関連性を説明しても,当を失するという他ない。
6 需要者の共通性について
本件商標の指定役務の需要者は,「技芸・スポーツ又は知識の習得を欲する者,運動施設の利用を欲する者,運動用具のレンタルを欲する者,患者,医療情報を欲する者,健康診断の受診を欲する者,歯科の患者,リハビリテーションを必要とする者,栄養についての指導を欲する者,介護を必要とする者及び医療用機械器具のレンタルを欲する者」である。
一方,請求人の業務にかかる使用商品の需要者は,甲各号証において,商品を着用しているファッションモデルの写真が示すとおり,「ファッションを趣味とする若者」であることがわかる。
よって,本件商標の指定役務の需要者と,請求人の業務にかかる使用商品の需要者とでは共通性がない。
7 出所の混同のおそれについて
以上を総合勘案すると,引用商標の周知著名性は皆無であり,引用商標の独創性は高くなく,本件商標の指定役務と請求人の業務に係る使用商品との関連性もなく,需要者も一致しないのであるから,出所の混同のおそれは全くないというべきである。

第5 当審の判断
1 引用商標の周知・著名性の程度について
(1)甲各号証について
請求人が,引用商標の周知・著名性について提出した証拠方法(甲第7号証ないし甲第470号証(甲第202号証を除く。))によれば,以下のとおりである。
ア 発行日又は掲載日が本件商標の登録出願日(平成25年(2013年)10月22日)以前のもの
(ア)「GーSTAR」(小文字により表されているものも含む。)の文字が表示されているもの
甲33,甲35,甲224,甲235,甲261,甲262,甲358,甲369,甲371,甲382,甲391,甲422,甲432,甲433,甲439,甲464,甲466。
(イ)「ジースター」の文字が表示されているもの
甲7,甲21,甲26,甲27,甲29,甲347,甲355,甲376,甲377,甲442,甲448,甲452,甲463。
(ウ)「GーSTAR RAW」,「GーStar RAW」,「GーStar Raw」又は「g-star raw」の文字が表示されているもの
甲10,甲13,甲14,甲30ないし甲32,甲34,甲37ないし甲96,甲121,甲123,甲125,甲127ないし甲133,甲135ないし甲165,甲167,甲168,甲170ないし甲176,甲178ないし甲184,甲186,甲189ないし甲197,甲199ないし甲201,甲203ないし甲223,甲225ないし甲234,甲236ないし甲242,甲244,甲246,甲247,甲250ないし甲252,甲255,甲258ないし甲261,甲263ないし甲265,甲267,甲271ないし甲278,甲281ないし甲286,甲300,甲302,甲303,甲309ないし甲311,甲314,甲316,甲317,甲319,甲320,甲322ないし甲328,甲330,甲331,甲348,甲349,甲351,甲353ないし甲360,甲363ないし甲365,甲367,甲370ないし甲372,甲374,甲375,甲378,甲380ないし甲383,甲387ないし甲390,甲392ないし甲399,甲401,甲402,甲406ないし甲408,甲412ないし甲414,甲416,甲418ないし甲420,甲423ないし甲428,甲431,甲437,甲440ないし甲442,甲444,甲447,甲449,甲465ないし甲470。
(エ)「ジースター・ロゥ」,「ジースター ロゥ」又は「ジースターロー」の商標が使用されているもの
甲9,甲13,甲15,甲36,甲89,甲94,甲121,甲122,甲124,甲126,甲127,甲132ないし甲134,甲136,甲143,甲144,甲147ないし甲149,甲151,甲160,甲161,甲163ないし甲165,甲169,甲171,甲172,甲176ないし甲179,甲185ないし甲189,甲191,甲192,甲194,甲198,甲199,甲201,甲203,甲205,甲206,甲209ないし甲211,甲213ないし甲218,甲222,甲223,甲226,甲227,甲229,甲230,甲233,甲236,甲239,甲241,甲242,甲246,甲247,甲250ないし甲252,甲257,甲258,甲264,甲267,甲272ないし甲276,甲278,甲282ないし甲284,甲286,甲294,甲296,甲300,甲303,甲309ないし甲311,甲314ないし甲320,甲322ないし甲326,甲330,甲348,甲350,甲352,甲355,甲357,甲359,甲361,甲363,甲367,甲371,甲373ないし甲377,甲380ないし甲382,甲388,甲395,甲397,甲398,甲400ないし甲402,甲407,甲411,甲437,甲438,甲443,甲446ないし甲448,甲450,甲459,甲475。
(オ)上記以外の文字が表示されているもの又は使用商標が見あたらないか不鮮明なもの
甲8,甲11,甲12,甲202,甲351,甲354,甲358,甲417,甲434,甲460。
イ 発行日又は掲載日が本件商標の登録出願日(平成25年(2013年)10月22日)以降のもの
甲97ないし甲120,甲243,甲245,甲256,甲279,甲280,甲290,甲308,甲312,甲313,甲321,甲329,甲332ないし甲345,甲362,甲366,甲368,甲379,甲384ないし甲386,甲403ないし甲405,甲409,甲410,甲451,甲453ないし甲458,甲461,甲462。
ウ 発行日ないし掲載日が不明のもの
甲16ないし甲20,甲166,甲248,甲249,甲253,甲254,甲266,甲268ないし甲270,甲287ないし甲289,甲291ないし甲293,甲295,甲297ないし甲299,甲301,甲304ないし甲307,甲346,甲386,甲415,甲417,甲421,甲429,甲430,甲435,甲436,甲445,甲473。
(2)引用商標の周知・著名性について
ア 「GーSTAR」(小文字により表されているものも含む。)の文字が表示されているものについては,以下のとおりである。
(ア)甲第33号証は,雑誌「エル・ジャポン」の2011年11月号(一部,写し)であり,その344頁には,最上部に「GーSTAR」の商標が表示され,「噂の“イット”ガールが語る最新デニムスタイルとは?」の記載の下,「新世代のボンドガールはスキニーデニムがお好き!?」として請求人のデニム商品についての,女優によるコメント記事が掲載されている。
(イ)甲第35号証は,2011年8月8日付の「exciteニュース」のウェブサイト(写し)であり,「GーSTAR,ヴィンセント・ギャロを新キャンペーンに起用」の記載の下,請求人のシャツ,タイ,レザージャケットにデニムアイテムをミックスした商品についての記事が掲載されている。
(ウ)甲第224号証は,雑誌「RollingStone」の2012年4月号(一部,写し)であり,その2葉目には,「GーSTAR」の表示の下,「右ヒップポケットにジップを追加したオリジナルな意匠に加え,ユニークなコインポケットも興味深い。・・・」としてデニムパンツが宣伝されている。
(エ)甲第235号証は,雑誌「SWeet」の2012年5月号(一部,写し)であり,その222頁には,「海外セレブもすでに愛用中!」「大ヒットのカラーデニム」の記載と,「GーSTAR」との表示の下,デニムパンツが掲載されている。
(オ)甲第261号証は,雑誌「GISELe」の2013年11月号(一部,写し)であり,その74頁には「Jeg Skinny by GーStar」の表示の下,デニム製品の情報が掲載されている。
(カ)甲第262号証は,雑誌「ジゼル」の2013年11月号(一部,写し)であり,その126頁には「ミランダやグウェンなど オシャレ番長の愛用デニム」と記載して,「GーSTAR」の表示の下,デニム製品が掲載されている。
(キ)甲第369号証は,「VOGUE」のウェブサイト(2013年7月1日付け,写し)であり,「ジースターインターナショナル代表取締役である・・・さんに聞く。」とのタイトルによるインタビュー記事が掲載され,「1989年にオランダのアムステルダムで誕生し,ローデニム(染色後,一度も洗っていないノンウォッシュのデニム)を中心に,個性豊かなデザインと革新的なアプローチで新しいデニムスタイルを提案し続けている『GーSTAR』」の記載がある。
(ク)甲第371号証は,2011年4月24日更新の「msnビューティースタイル」のウェブサイト(写し)であり,「原宿交差点でスタイル・バトル開催 GーSTARがジャック」の記載の下,「GーSTAR RAW(ジースター ロゥ)」が4月29日と30日の2日間,原宿駅からほど近い神宮前交差点をジャックし『スタイル・バトルフォトセッション』を開催する。」の記載がある。
(ケ)甲第382号証は,2011年8月19日付の「スポーツ報知」とする新聞記事(写し)であり,「『GーSTAR×Kitsonカプセル・コレクション』発売中」の見出しの下,「GーStar RAW(ジースターロウ)は,先週8月11日にロサンゼルスのセレブ御用達ブランド『Kitson(キットソン)』と『GーSTAR×Kitsonカプセル・コレクション』を発表した。」との内容の記事が掲載されている。
(コ)甲第391号証は,雑誌「RollingStone」の2012年10月号(一部,写し)であり,「日本人初のコラボレーションは あの有名なエディターと」の記載の下,「日本を代表するファッショエディター・・・がGーSTARとの日本人初のコラボレーションを発表。」として,デニムパンツ情報が掲載されている。
(サ)甲第422号証は,雑誌「RollingStone」の2013年9月号(一部,写し)であり,その145頁には,「見た目も機能性も両方こだわるスマート派のコンパクトカメラ」の記載の下,「ライカがオランダ発ジーンズ&ファッション・ブランド『GーSTAR』とのコラボレーション・・・特別限定モデル・・・を発売した。」として商品カメラの情報が掲載されている。
(シ)甲第432号証は,雑誌「VOGUE JAPAN」の2011年10月号(一部,写し)であり,その2葉目には,「GーSTARとヴィトラがコラボ。プルーヴェの家具が甦る。」の記載の下,椅子とサイドボードの情報が掲載されている。
(ス)甲第433号証は,雑誌「SEVEN HOMME」の2011年の6号(一部,写し)であり,その2葉目には,「GーSTARとブルーヴェがコラボした 洗練の家具コレクション」の記載の下,家具の情報が掲載されている。
(セ)甲第436号証は,雑誌「Casa BRUTUS」の2012年1月号(一部,写し)であり,その2葉目には「あの名作アイテムが続々と復刻に!」の記載の下,「・・・シャロット・ペリアンがデザインした家具4点が新たに復刻に。オランダ発のデデニムブランド<GーSTAR>は,ジャン・プルーヴェの限定家具コレクションを発表するなど・・・・」との記事が掲載されている。
(ソ)甲第439号証は,雑誌「ELLE DECOR」の2011年8月号(一部,写し)であり,その2葉目には,「Basel GーSTAR×ジャン・フルーヴェ スタイリッシュな家具が登場」の記載の下,「6月に開かれたアート・バーセルで,GーStarがvitra社とコラボレーション・・・・」との記事が掲載されている。
(タ)甲第464号証は,雑誌「EYESCREAM」の2011年12月号(一部,写し)であり,「GーStar Pierre Morisset」,「ヨーロッパ・デニムの革命児が語る,デニム愛」の記載の下,「GーStarに入る前から数えると40年近くにもなるデニム界における華々しい経歴・・・」としてデニム製品について,請求人のデザイナーによるコメント記事が掲載されている。
(チ)甲第466号証は,「BEUTY&YOUTH」のウェブサイト(写し)であり,「NEWS:」の2013年1月31日付けの記事には,「今季も<GーSTAR RAW>の別注「Elwood」が登場します。」の記載の下,「20年以上にわたってデニム界のパイオニア的ポジションを担い続けているデニムブランド<GーStar>。そんな<GーStar>のアイコン的デニムが今から17年前の1996年に誕生した「Elwood」です。」の記載があり,デニムパンツが掲載されている。
イ 「ジースター」の文字が表示されているものについては,以下のとおりである。
(ア)甲第7号証は,2005年6月28日付の繊研新聞の記事情報であり,「ジースター・インター オランダのジーンズカジュアル『ジースター』オンリーショップ出店 東京,大阪皮切りに」の見出しの下,「・・・ジースターは89年に生まれたジーンズカジュアルブランドで,ロー(未加工)デニム使いや,立体裁断ジーンズの先駆けとして定評がある。・・・7月21日に日本初のオンリーショップを東京・渋谷のファッションビル,神南坂フレーム1階に開設(売り場面積193平方メートル)。9月8日に大阪市南堀江に2号店(同161平方メートル)を開く。」の記載がある。
(イ)甲第21号証は,2005年12月19日付の繊研新聞の記事情報であり,「<インタビュー>ジースター・インターナショナル社長,・・・日本に初のオンリーショップ ローデニムにこだわる」の見出しの下,「欧州ジーンズカジュアルブランドが好調を続けている。オランダの『ジースター』もそのひとつで,日本に初のオンリーショップを開設した。・・・ジースターの売上は,世界全体で前年比30%増の1000億円(小売価格),日本では50%増の30億円です。」とのインタビュー記事が掲載されている。
(ウ)甲第26号証は,2007年1月19日付の繊研新聞の記事情報であり,「・・・ジースター・インターナショナル・アカウント・マネージャー ・・・さん 小売りのプロに任せる」の見出しの下,「ジースターは,プロダクト・デベロッピング・カンパニーを社是としています。・・・日本ではジースターは今期20%程度の伸びになりそうです。・・・最近では,東京に出店しているパリのラウンジとの協業や,表参道駅でのビジュアル広告など,イメージ喚起のための取り組みも強めています。」とのインタビュー記事が掲載されている。
(エ)甲第27号証は,2008年12月1日付の繊研新聞の記事情報であり,「<ひと>世界支援のプラットフォームを目指す『ジースター』ブランドディレクター ・・・さん」の見出しの下,「顧客とのコミュニケーションを強化する,オランダのジーンズブランド『ジースター』。今秋からスタートした国連との協業は,ディレクターである彼の役割が大きい。・・・」との記事が掲載されている。
(オ)甲第29号証は,2009年12月10日付の繊研新聞の記事情報であり,「<インタビュー>ジースター・インターナショナルCEO ・・・さん あくまでジーンズブランド デニムの可能性追求」の見出しの下,「今年ブランド創立20周年を迎えたオランダのジーンズブランド『ジースター』。店舗展開は直営店でなくFCで進め,もの作りに集中する姿勢は他社と一線を画す。『ジースターはあくまでジーンズブランド。デニムの可能性を追求する』という。」とのインタビュー記事が掲載されている。
(カ)甲第347号証は,雑誌「WWD FOR JAPAN」の2011年3月30日号(一部,写し)であり,その47頁には,「出店攻勢によるブランド認知度アップで3年後に売り上げ3倍を目指す」,「今秋『ジースター』が銀座,京都に路面店をオープン」の記載の下,「雑誌に商品を掲載したり,オンリー店で認知度を上げたりすることで,これまでお付き合いのなかった販売チャネル=新規のお客様にブランドを知ってもらうことにつながり,売り上げに奏功している。」とのインタビュー記事が掲載されている。
(キ)甲第355号証は,雑誌「ELLE JAPON」の2011年12月号(一部,写し)であり,その255頁には「ELLE FASHION NEWS」として,「ジースターの銀座・旗艦店がオープン!」の記載の下,「モード感と機能性を兼ね備えたデニムが世界中で愛されているジースター ロゥ。 都内3店舗目となる旗艦店が銀座・並木通りにオープン。」として店舗が紹介され,店舗写真には,「GーSTAR RAW」の商標が大きく表示されている。
(ク)甲第376号証は,雑誌「WWD JAPAN」の2013年4月1日号(一部,写し)であり,その23頁には,「3/14THU 『ジースターが』新キャンペーン『ART OF RAW』を披露 表参道の『モントーク』をジャック!」の見出しが表示され,記事中には,「『ジースター ロゥ』の2013年春夏新キャンペーン“ART OF RAW”のローンチイベントを表参道の『モントーク』で開催した。・・・」の記載がある。
(ケ)甲第377号証は,雑誌「WWD JAPAN」の2013年4月15日号(一部,写し)であり,その17頁には,「『ジースター』が東京で新キャンペーンを披露」の見出しの下,記事中には,「ジースターインターナショナルは,『ジースター ロゥ』の2013年春夏新キャンペーン“THE ART OF RAW(ジ アート オブ ロゥ”のローンチイベントを3月13日,表参道の『モントーク』で開催した。・・・」との記載がある。
(コ)甲第442号証は,雑誌「GLITTER」の「クリスチャン ルブタン 2011秋冬コレクション」の(一部,写し)であり,その2葉目には,「GーSTAR RAW」の表示の下,「ジースター×ジャン・プルーヴェ 家具ブランドVitraとコラボ」の記載があり,家具及び家具に関する情報が掲載されている。
(サ)甲第448号証は,「まっぷる 愛知」の2013最新版(一部,写し)であり,その2葉目には,「GーSTAR ELWOOD」と表示して,テーパードデニムが掲載されている。
(シ)甲第452号証は,2008年9月18日付の繊研新聞の記事情報であるところ,「『ジースター』が国連と協業 貧困撲滅活動など支援 発進力向上狙う」との見出しのもと,「オランダのデニムブランド『ジースター』は,国連と協業したミレニアムキャンペーンをスタートした。11日に行ったコレクションショーで活動内容を発表,日米のジースターショップやイベントでキャンペーンを広げる。・・・」との記事が掲載されている。
(ス)甲第460号証は,「Omotesando Hills Style Magazine」の2011年秋号(一部,写し)であり,その2葉目に掲載されている帽子及び3葉目に掲載されているデニムパンツが,「ジースターストア」の商品である旨が記載されている。
(セ)甲第463号証は,雑誌「WWD FOR JAPAN」の2011年8月8・15日号(一部,写し)であり,その2葉目には,「2012年 春夏コレクション『ブレッド&バター』速報inベルリン」「『ジースター』の3Dデニムが進化」,「究極の新立体デニム『5620ディメンション」との見出しの下,「7月6日から8日までベルリンで開催されたファッションのトレード見本市『ブレッド&バター』で『ジースター』は,どのブランドよりもインパクトのあるプレゼンテーションを行った。」の記載がある。
ウ 「GーSTAR」(小文字により表されているものも含む。)及び「ジースター」の文字の周知・著名性の程度について
本件商標の登録出願日前における「GーSTAR」(小文字により表されているものも含む。)の使用については,2011年6月ないし2013年11月に発行された各種雑誌が12件,2011年4月ないし2013年1月に掲載されたインターネットウェブサイトが4件及び2011年8月に発行された新聞記事が1件であって,これらにおいて,「GーSTAR」との表示の下,デニムパンツやデニム製品が紹介されているものである。
また,「ジースター」の文字の使用については,2005年6月ないし2009年12月に発行された新聞記事情報が6件,2011年3月ないし2013年に発行された雑誌が8件であって,これらにおいて,「ジースターは89年に生まれたジーンズカジュアルブランド」又は「オランダのジーンズブランド『ジースター』。」等と記載されているものである。
そして,これらの甲各号証からは,請求人の事業開始時期,事業や活動の概要が把握できるものであり,請求人の取り扱いに係るデニムパンツ,デニム製品等が,我が国で販売され,「GーSTAR」の表示の下にデニム製品が広告されていること,「ライカがオランダ発ジーンズ&ファッション・ブランド『GーSTAR』とのコラボレーション」及び「ジースター×ジャン・プルーヴェ 家具ブランドVitraとコラボ」のように,カメラや家具のブランドとのコラボレーション関する情報,また,「『ジースター』が国連と協業 貧困撲滅活動など支援」などのように支援活動を行っていること等をうかがい知ることができる。
しかしながら,日本における「GーSTAR」及び「ジースター」の使用開始時期,営業の規模(店舗数等),上記各号証以外の,一般の新聞,雑誌,マスコミなどを通じた宣伝広告の程度を示す証拠などは提出されていないものであるから,上記の甲各号証によっては,「GーSTAR」及び「ジースター」の文字が請求人の業務に係る商品に使用をされた結果,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,我が国の取引者,需要者の間で広く認識されていたということはできないものである。
エ 「GーSTAR RAW」,「GーStar RAW」,「GーStar Raw」又は「g-star raw」及び「ジースター・ロゥ」,「ジースター ロゥ」又は「ジースターロー」の文字が表示されているものについては,甲各号証中に多数示されているものであるから,これらの文字は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,請求人の業務に係る「デニムパンツ」等のデニム製品を表示するものとして,我が国において使用されているものと認められる。
そして,請求人は,請求人商品の売上高について,GーSTARの売上は,2005年において世界全体で前年比30%増の約1,000億円(小売価格),日本では50%増の約30億円となっている(甲21)。その後も着実に業績を伸ばし,日本におけるGーSTARの売上(小売価格)は,概算で,2009年及び2010年が各年約40億円,2011年が約60億円,2012年及び2013年が各年約70億円となっていると主張している。
この額について,これが認め得るとしても,業界全体のデニム製品の売上高や請求人製品のシェアが把握できる証拠は提出されておらず,かえって,乙第7号証の8/13ページには,請求人が自身と対比しているディーゼルジャパン株式会社が取り扱う「DIESEL(ジーゼル)」が,他の4社とともに掲載されているところ,請求人の名称ないし使用する商標は表示されていない。
そうであれば,請求人の主張する売上高は,当該業界において他社との比較において,高い位置を占めるものということができないものであるから,「GーSTAR RAW」,「GーStar RAW」,「GーStar Raw」又は「g-star raw」及び「ジースター・ロゥ」,「ジースター ロゥ」又は「ジースターロー」の文字は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,請求人の業務に係る「デニムパンツ」等のデニム製品を表示するものとして,我が国の需要者に広く知られていたものということができない。
2 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)本件商標と引用商標について
本件商標は,別掲のとおり,「G」の欧文字と十字をデザイン化した図形及び「star」の欧文字とを結合して一体的に表した構成からなり,「G」及び「star」の欧文字から,「ジースター」の称呼を生じ,構成全体としては,特定の観念を生じないものである。
引用商標は,「GーSTAR」の欧文字と「ジースター」の片仮名とを上下二段に表したもの又は「GーSTAR」の欧文字を表してなり,これらからは,「ジースター」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものである。
そして,本件商標と引用商標は,その構成中に「G」のアルファベットと,「star」又は「STAR」の同じ綴りの欧文字を含むものであるから,外観上,近似した印象を与えるものであり,「ジースター」の同一の称呼を生ずるものであるから,両者は,類似の商標というべきである。
しかしながら,引用商標の構成文字である「GーSTAR」及び「ジースター」は,前記1(2)ウに記載のとおり,提出に係る甲各号証によっては,請求人の業務に係る商品に使用をされた結果,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,我が国の取引者,需要者の間で広く知られていたものということはできず,引用商標1ないし3の指定商品と本件商標の指定役務とは,商品と役務という違いに加え,引用商標の指定商品の生産部門,販売部門,原材料等と本件指定役務の提供の手段,目的,場所,需要者の範囲,業種等との関連性は,極めて薄いものである。
そして,引用商標3及び4の指定役務と本件商標の指定役務とは,その提供の手段,目的,場所,需要者の範囲,業種又は事業者等を異にするものである。
そうすると,本件商標は,商標権者がこれをその指定役務について使用しても,取引者,需要者に引用商標を連想又は想起させることはなく,その役務が請求人あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのごとく,その役務の出所について混同を生ずるおそれはないものである。
(2)本件商標と「GーSTAR RAW」,「GーStar RAW」,「GーStar Raw」又は「g-star raw」の文字及び「ジースター・ロゥ」,「ジースター ロゥ」又は「ジースターロー」について
本件商標は,別掲のとおりの構成からなり,「ジースター」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものである。
他方,「GーSTAR RAW」,「GーStar RAW」,「GーStar Raw」の文字よりなる商標は,一定デザイン化されているもの及び普通に用いられる方法で表示されているものを含めて,いずれも同じ書体,同じ大きさで,等間隔をもって一連に表されており,これらからは,「ジースターロー」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものである。
そして,「ジースター・ロゥ」,「ジースター ロゥ」又は「ジースターロー」の文字からは,「ジースターロー」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものである。
そこで検討するに,本件商標と「GーSTAR RAW」等及び「ジースターロー」等の文字よりなる商標とは,外観は,それぞれの構成態様に照らし,明らかな差異を有するものであるから,外観上,明確に区別できるものである。
また,本件商標から生ずる「ジースター」の称呼と,「GーSTAR RAW」等及び「ジースターロー」等の文字よりなる商標から生ずる「ジースターロー」の称呼とは,語尾における「ロー」の音の有無の差異に加え,その構成音及び構成音数が明らかに相違するものであるから,称呼上,明確に区別できるものである。
また,本件商標と,「GーSTAR RAW」等及び「ジースターロー」等の文字よりなる商標は,いずれも特定の観念を生じないものであるから,類似するとはいえないものである。
そうとすれば,本件商標と「GーSTAR RAW」等及び「ジースターロー」等の文字よりなる商標とは,外観,称呼及び観念のいずれにおいても相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
さらに,本件商標の指定役務と,請求人の業務に係る商品「デニムパンツ」等のデニム製品とは,商品と役務という違いに加え,本件指定役務の提供の手段,目的,場所,需要者の範囲,業種等と,「デニムパンツ」等のデニム製品の生産部門,販売部門,原材料等との関連性は,極めて薄いものいうべきである。
そうとすれば,「GーSTAR RAW」等及び「ジースターロー」等の文字よりなる商標が請求人の商標として「デニムパンツ」等のデニム製品に使用されているとしても,本件商標をその指定役務に使用した場合,需要者がこれらの請求人の商標を想起,連想することはないというのが相当であるから,本件商標は,請求人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係がある者の業務に係る役務であるかのように,その役務の出所について混同を生じさせるおそれはないものである。
(3)まとめ
以上のとおりであるから,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しない。
3 請求人の主張について
請求人は,本件商標がその指定役務に使用されると,取引者・需要者にGーSTARブランドと関連がある者の業務に係る役務であるとの誤認・混同を生じさせるおそれがあるというべきであり,請求人は,これを到底容認することはできないとして甲第471号証ないし甲第476号証を提出している。
甲第471号証は,インターネット検索サイト「Google」の「maps」において,「G☆star」をキーワードとして検索した結果(写し)であり,岐阜県に所在する「Gーstar梅林」,「Gーstar徹明」等の所在が表示され,それとともに「GーStar RAW」のオフィシャルオンラインストアに関する広告が表示されること,甲第472号証は,「Gーstar梅林」のウェブサイト(写し)であること,甲第473号証は,「bebible【ヘビブレ】スムージー専門店」のウェブサイト(写し)であり,「GーStar RAW展示会に出店」及び「GーStar RAWのプレス向け展示会にてケータリング出店させていただきました。」の記載があること,甲第474号証は,インターネット検索サイト「Google」の「maps」において,本件商標権者が経営する「リハビリ特化型デイサービス G☆star」と記載され,その施設の所在が表示されるとともに「Right-on」の所在地が表示されること,甲第475号証の2010年5月26日付けの繊研新聞によれば,「オランダのジーンズカジュアルブランド『ジースター・ロゥ』を販売するジースター・インターナショナル(東京)は,・・・今春夏からライトオンの店内でテスト販売する。」の記載があること,甲第473号証は,「bebible【ヘビブレ】スムージー専門店」のウェブサイト(写し)であり,「GーStar RAW展示会に出店」及び「GーStar RAWのプレス向け展示会にてケータリング出店させていただきました。」の記載があることを確認することができる。
これらによれば,例えば,請求人の商品が,「Right-on」で販売され,また,「GーStar RAW展示会」に「bebible【ヘビブレ】」がケータリング出店した等から,請求人と「ライトオン」等との間に業務上の関連性があることが想起される場合があるとしても,インターネット検索サイト「Google」の「maps」において,本件商標権者の施設が表示された地図上に,「GーStar RAW」に関する広告が表示されたことをもって,直ちに両者の業務上の関連性を表すものということができない。
また,商標法第4条第1項第15号該当性について判断された判決及び審決例(甲476等)を提出するが,すでに述べたように,本件商標と「GーSTAR RAW」等及び「ジースターロー」等の文字よりなる商標とは,互いに相紛れるおそれのない非類似の商標であって,本件商標の指定役務と,請求人の業務に係る商品「デニムパンツ」等のデニム製品との関連性は,極めて薄いものであるから,本件商標を使用する本件商標権者の役務と,請求人の商品との間に,出所の混同のおそれがあるということはできないものである。
4 結語
以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第15号に違反してされたとはいえないものであるから,同法第46条第1項の規定により,無効とすることができない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲 別掲 (本件商標)





審理終結日 2015-04-24 
結審通知日 2015-05-07 
審決日 2015-05-20 
出願番号 商願2013-82360(T2013-82360) 
審決分類 T 1 11・ 271- Y (W4144)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 海老名 友子 
特許庁審判長 今田 三男
特許庁審判官 田中 亨子
井出 英一郎
登録日 2014-04-04 
登録番号 商標登録第5661565号(T5661565) 
商標の称呼 ジイスター、スター 
代理人 恩田 博宣 
代理人 特許業務法人 小笠原特許事務所 
代理人 恩田 誠 

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