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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y03
管理番号 1306499 
審判番号 取消2014-300079 
総通号数 191 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2015-11-27 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2014-02-06 
確定日 2015-09-16 
事件の表示 上記当事者間の登録第5122377号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5122377号商標の商標登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
登録第5122377号商標(以下「本件商標」という。)は、「マリンプラセンタ」の文字を標準文字で表してなり、平成18年9月6日に登録出願、第3類「プラセンタエキスを配合してなるせっけん類,プラセンタエキスを配合してなる化粧品」を指定商品として、平成20年3月28日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由、答弁に対する弁駁、平成27年1月6日付け口頭審理陳述要領書による陳述及び同年2月20日付け上申書において、次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第18号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品について継続して3年以上、日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても使用された事実がないから、その登録は、商標法第50条1項の規定により、取り消されるべきである。
2 答弁に対する弁駁
(1)使用時期について
被請求人が提出した乙第2号証ないし乙第9号証(枝番号を含む。)の発行日は、本件審判の請求の登録前3年以内(以下「要証期間」という。)のものではなく、また、乙第1号証及び乙第10号証はその発行日が不明であるから、被請求人は、乙第1号証ないし乙第10号証(枝番号を含む。)により、要証期間内における本件商標の使用を証明していない。
(2)乙第11号証について
乙第11号証は、本件商標の設定登録前になされた使用権の許諾契約であるが、今日においてその契約が効力を有しているか否か、判然としないため、本件審判における商標の使用証拠として乙第11号証を採用することはできない。
(3)乙第10号証について
乙第10号証はその発行日が不明であるが、被請求人がこれを「平成23年(2013年)6月配布」と主張していることから、以下のとおり、乙第10号証について予備的主張をする。
ア 乙第10号証に記載されている「マリンプラセンターメカブ」は、本件商標と同一のものではない。
イ 本件商標の指定商品の範囲について
「プラセンタ」は、「哺乳類の胎盤」を指す言葉として認識されているものであること(甲5?9(枝番号を含む。))及び本件商標の出願中における被請求人の主張(甲10、11)によると、本件商標の指定商品は、哺乳類の胎盤から抽出された成分を配合したせっけん類及び化粧品の範疇にある商品を指すことは明らかである。
そして、乙第10号証における商品「パーフェクトクリーンオイル」「エバーフレッシュ」「マリングラス」及び「マリンアンバー」についての記載からは、これらの商品に哺乳類の胎盤から抽出された成分が配合されていることは明らかでない。また、通信販売のウェブサイトによると、これらの商品の「全成分」の欄に、哺乳類の胎盤(プラセンタ)から抽出された成分は記載されていない(甲12(枝番号を含む。))。
したがって、被請求人は、上記のいずれの商品にも哺乳類の胎盤から抽出された成分が配合されていることを証明していない。
ウ 商標としての使用について
乙第10号証における「マリンプラセンタ」の文字は、化粧品等に含まれる成分を指す「マリンプラセンターメカブ」の言葉の一部として使用されているにすぎないものであるから、これに接した需要者は、「マリンプラセンターメカブ」なる物質が化粧品等に含有されているとは認識するものの、該文字やその文字に含まれる「マリンプラセンタ」の文字を化粧品等の名称であると認識することはない。
したがって、乙第10号証に掲載されている化粧品やせっけんについて、「マリンプラセンタ」の文字は商標として使用されていない。
3 平成27年1月6日付け口頭審理陳述要領書による陳述及び同年2月20日付け上申書について
(1)使用商品と本件商標の指定商品の同一性について
ア 本件商標の指定商品に含まれる「プラセンタエキス」の意味合いについて
被請求人は、ワカメ胞子体が「胎盤」というべき機能を果たし、ワカメ胞子体が「プラセンタ」であると主張している。
しかしながら、胎盤が母体と胎児とを連絡する器官であるのに対し、ワカメ胞子体はこのような「器官」ではなく、同様の機能もない。また、ワカメは動物ではないから、ワカメ胞子体(メカブ粉末抽出エキス)がプラセンタ又はプラセンタエキスではなく、ワカメは海藻の一種であるから(甲14)、ワカメ胞子体又はメカブの粉末から抽出したエキスが、「海藻抽出物」であることは明白である。
したがって、本件商標の指定商品に含まれる「プラセンタエキス」は、「動物(哺乳類)の胎盤から抽出された成分」であるから(甲5?11、13(枝番号を含む。))、海藻抽出物である「ワカメ胞子体(メカブ粉末抽出エキス)」は、プラセンタエキスではない。
イ 「植物性プラセンタ」「海洋性プラセンタ」等について
化粧品等の分野における、「植物性プラセンタ」や「海洋性プラセンタ」の表示は(乙22?24(枝番号を含む。)、甲15(枝番号を含む。))、消費者に効能をわかりやすく説明するために、プラセンタ(胎盤)に似た効用を有することを、広告表現として用いているに過ぎないものであるから、「植物性プラセンタ」又は「海洋性プラセンタ」の言葉自体が、本件商標の指定商品でいう「プラセンタエキス」自体の意味合いを説明するものではないし、そこに含まれる成分を表示するものでもない。
また、乙各号証において、ワカメ胞子体(メカブ粉末抽出エキス)を「プラセンタ」、「プラセンタエキス」、「植物性プラセンタ」又は「海洋性プラセンタ」と称している証拠は一つもなかった。
なお、ワカメ胞子体(メカブ粉末抽出エキス)に含まれる成分と○○プラセンタと称される物質に含まれる成分とに共通する部分があることは、関係のない事項であって、「ワカメ胞子体(メカブ粉末抽出エキス)」が「プラセンタエキス」であることを明らかにするものではない。
ウ したがって、被請求人が使用商品として主張する「ワカメ胞子体(メカブ粉末抽出エキス)を配合してなるせっけん」(以下「使用商品」という。)は、本件商標の指定商品「プラセンタエキスを配合してなるせっけん類」ではない。
(2) その他
ア 乙第12号証の証明書に押印された印の印影は不鮮明であり、かつ、有限会社マトネットワークステーションの印鑑証明書の添付がないため、乙第12号証が、有限会社マトネットワークステーションによって作成された証明書であるのか不明であるから、乙第12号証により、乙第1号証の作成日が証明されたとはいえないものであり、被請求人は、乙第1号証が、要証期間内に本件商標を使用をしたことを証明していない。
イ 乙第13号証の2葉目の印刷会社による証明書において言及されている「添付のマリンアンバー100gの化粧箱」が添付されていないから、乙第13号証の1葉目の「化粧箱見本の画データを印刷したもの」と同一の化粧箱が、当該証明書に列挙された日付に印刷会社によって印刷され、納品されたことを、被請求人は証明したとはいえない。よって、被請求人は、乙第13号証によって、乙第10号証に掲載された商品の製造・販売者が商標権者、専用使用権者又は通常使用権者であることを証明していない。
ウ 「株式会社オフィスあゆ川」の住所について、乙第20号証は、誰が誰に対して発行した文書なのか明らかではなく押印欄に押印もない。また、「株式会社オフィスあゆ川」の請求先住所及び出荷元住所がともに、「静岡県伊東市十足●●」となっており、乙第11号証に記載されている住所「東京都港区東新橋●●」又は乙第13号証に記載されている住所「東京都目黒区上目黒●●」との関係が把握できない。
また、乙第21号証は、株式会社オフィスあゆ川のウェブサイトの写しと思われるところ、実際に、そのウェブサイトのアドレスにアクセスできないから、該ウェブサイトが存在することを確認できなかった(甲18)。
エ したがって、被請求人が本件商標の使用権者であると主張する株式会社オフィスあゆ川が、近鉄百貨店株式会社阿倍野店に商品を販売した株式会社オフィスあゆ川と同一であることを確認できない。
(3) まとめ
以上のとおり、本件商標は、その指定商品について継続して3年以上、日本国内において商標権者、専用使用権者及び通常使用権者のいずれによっても使用された事実がないから、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。

第3 被請求人の主張
被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し、その理由及び平成26年12月17日付け口頭審理陳述要領書による陳述及び平成27年2月6日付け上申書において、次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第25号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 答弁の内容
本件商標は、商標使用権許諾契約書を交わしている株式会社オフィスあゆ川(以下「本件使用権者」という。)によって、その指定商品について、本件審判の請求登録日以前より国内で継続的に使用されている(乙1?11)。
2 平成26年12月17日付け口頭審理陳述要領書による陳述及び平成27年2月6日付け上申書 について
(1)乙第1号証について
被請求人は、乙第1号証の作成日を証する証拠としてその印刷を依頼した印刷会社による証明書の写しを乙第12号証として提出する。なお、乙第1号証として提出した商品パンフレットと乙第12号証に添付されているリーフレットは同じものである。
(2)乙第10号証について
乙第10号証に掲載されている「本店限定 リッチラメラ オープン記念キット 4200円 エンリッチングシリーズ マリンアンバー(ソープ&泡パック)100g現品、・・・」の化粧箱見本の画像データを印刷したものを、この化粧箱の印刷を行った印刷会社による証明書の写しとともに乙第13号証として提出する。さらに乙第10号証に掲載されている商品が実際に近鉄百貨店で販売されていたことを証するものとして2013年5月25日付けの注文伝票の写し、平成25年5月26日付けの納品書の写し、2013年5月28日付けの納品伝票の写しを乙第14号証の1ないし3として提出する。
そして、乙第13号証において、上記商品の発売元である本件使用権者の表示、本件商標及びその下欄の全成分表示に「ワカメ胞子体(メカブ粉末抽出エキス)」の表示が確認できる。
また、乙第17号証として、乙第13号証の2葉目の「証明書」に記載の「添付のマリンアンバー100g」の化粧箱(原本)を提出する。
(3)乙第11号証について
請求人は、乙第11号証について、本件商標の設定登録前になされた契約であるから、本件審判における商標の使用を証明する証拠とはなり得ないと主張しているが、乙第11号証から明らかであるように、被請求人は、本件使用権者に平成19年3月31日付けで使用権許諾契約を交わしており、その契約はこれまで解除されることなく継続している。そして、本件使用権者は、乙第1号証、乙第10号証、乙第12号証ないし乙第14号証(枝番号を含む。)からすると、本件商標を指定商品に付して使用していることは明らかである。
(4)使用標章と本件商標の同一性について
請求人が主張するように「マリンプラセンターメカブ」等といった使用標章もあるが、乙第13号証には「マリンプラセンタ」の使用標章が存在するから、使用標章と本件商標とは同一であるといえる。
(5)使用商品と本件商標の指定商品との同一性について
本件使用権者は、「ワカメ胞子体(メカブ粉末抽出エキス)を配合してなるせっけん」(使用商品)に本件商標を付して販売を行っている(乙13)。
そして、本件商標の指定商品に含まれる「プラセンタエキス」とは「胎盤からの抽出物」を意味するものであり、「プラセンタ」は「胎盤」を意味するものである(甲11)が、本件使用権者が販売するせっけんや化粧水に配合されている「ワカメ胞子体」は、ワカメの根元部位をいい、これがまさに「胎盤」というべき機能を果たすものであから(乙15)、「ワカメ胞子体」は、「海の胎盤」といえ、「プラセンタ」と称するに相応しいものといえる。
したがって、使用商品と本件商標の指定商品とは、同一の範囲内にあると考える。
(6)乙第11号証、乙第13号証及び乙第14号証の2に記載されている「株式会社オフィスあゆ川」の関係
ア 「株式会社オフィスあゆ川」の住所変更の変遷について
「株式会社オフィスあゆ川」は、乙第11号証に記載された「東京都港区東新橋●●」から、平成20年4月16日に「東京都品川区西五反田●●」に移転し、その後、平成22年6月1日に乙第13号証に記載された現住所である「東京都目黒区上目黒●●」に移転している(乙18、19)。
イ 乙第14号証の2に記載されている「株式会社オフィスあゆ川」の住所について
乙第14号証の2に記載されている「伊東市十足●●」は、「株式会社オフィスあゆ川」の事務所兼配送センターとして使用している(乙20、21)。
(7)「ワカメ胞子体(メカブ粉末抽出エキス)」が指定商品の表示における「プラセンタエキス」であること
ア 「プラセンタ」について
「プラセンタ」の本来の意味は、動物の「胎盤」を意味するとの認識に変わりはないが、化粧品業界において「プラセンタ」という語は、もはや、甲第8号証(枝番号を含む。)に示されるような豚・馬等の動物性プラセンタに使用されるに止まるものではなく、鮭の卵巣膜やアマモ等に由来するものを海洋性プラセンタ等、ライ麦、大豆、メロン等に由来するものを植物性プラセンタ等と称し、「○○プラセンタ」配合等と広告宣伝され、販売されて(乙22?24(枝番号を含む。))、より広い意味合いで使用されている。
このように「プラセンタ」、すなわち「胎盤」でないものにまで、「プラセンタ」と称している取引の実情があるから、様々な成分のうちのなにをもって「プラセンタ」といえるのかの線引きがあいまいといえる。また、「プラセンタ」とは広義にいえば、「胎盤」それ自体ではなく、胎盤に多く含む成分アミノ酸、ビタミン、ミネラル等を豊富に含んだものにまで拡大して使用されていることがわかる(甲8、甲22の2?4)。
商品「マリンアンバー」は、「マリンプラセンターメカブの粉末に含まれている、ぬめり成分フコイダンやアルギン酸・・・」(乙1)、「メカブには肌に潤いを与えるフコイダンをはじめミネラル、ビタミン、アルギン酸、19種類のアミノ酸が含まれ・・・」(乙5)の記載をし、その化粧箱には、「マリンプラセンタ メカブに含まれるミネラル、アルギン酸、フコイダンなど・・・」と記載している(乙13、17)。
また、インターネット検索により、メカブにはアルギン酸、フコイダンのほか、ビタミン等の有効成分が豊富に含まれていること、メカブはわかめの生殖器にあたることがわかる(乙25(枝番号を含む。))。
イ 「ワカメ胞子体(メカブ粉末抽出エキス)」と「プラセンタエキス」について
以上のとおり、化粧品業界では、「プラセンタエキス」を「胎盤」からの抽出物に限らず、成分のうちに胎盤と同じ、アミノ酸、ビタミン、ミネラル等を豊富に含んだ成分についても、「○○プラセンタ」、「○○プラセンタエキス」と称して広く使用されている実情に照らせば、「ワカメ胞子体(メカブ粉末抽出エキス)」も「プラセンタエキス」といっても何ら不合理な点はない。
よって、本件使用権者は、本件商標の指定商品の範疇の商品に本件商標を使用しているものである。
3 まとめ
以上のとおり、被請求人は、本件商標の使用事実を立証し得たものであるから、本件審判の請求は成り立たない。

第4 当審の判断
1 被請求人及び請求人の提出に係る証拠並びに職権調査によれば、以下のとおり認められる。
(1)「商標使用権許諾契約書」(乙11)の第1条の記載によれば、商標権者は、本件商標の設定登録前である、平成19年3月31日付けで「商願2006-83044」(本件商標の出願番号)について、株式会社オフィスあゆ川(東京都港区東新橋●●)に対して、その商標登録後の使用を許諾したものであって、第1条に、その実施期間は平成19年4月1日から1年間であり、両者から何らの申出もないときは、当該契約が更に1年間延長され、以降も同様とする旨が記載されている。
(2)乙第11号証に記載された「株式会社オフィスあゆ川」は、その「閉鎖事項全部証明書」(乙18)及び「履歴事項全部証明書」(乙19)により、平成20年4月16日付けで東京都港区東新橋●●から東京都品川区西五反田●●に、さらに、平成22年6月1日付けで東京都目黒区上目黒●●に移転したことが認められる。
(3)乙第1号証は、株式会社オフィスあゆ川(東京都目黒区上目黒●●)の商品パンフレットであるところ、乙第12号証の「証明書」は、その記載に有限会社マトネットワークステーションの代表者の記名及び押印が認められるものであり、その他に、その記載において不自然なところはないから、、有限会社マトネットワークステーションは、印刷した上記パンフレット1000枚を株式会社オフィスあゆ川に、平成24年7月8日、納品したことを認めることができる。
したがって、上記株式会社オフィスあゆ川は、上記商品パンフレット(乙1)の納品日以降の平成24年7月頃、これを頒布したことを推認し得るものである。そして、該商品パンフレットには、「肌力開花 Step1 洗顔」の見出しの下に「<リッチラメラ>エンリッチングシリーズ マリンアンバー<ソープ&泡パック>100g」について、「メカブと黒砂糖の成分」「マリンプラセンターメカブの粉末に含まれている、ぬめり成分フコイダンやアルギン酸、加水分解コラーゲン」の記載が認められる。また、「マリンプラセンターメカブ」の表示を認めることができるが、「マリンプラセンタ」の文字のみの表示はない。
(4)乙第13号証は、「<リッチラメラ>エンリッチングシリーズ マリンアンバー<ソープ&泡パック>100g」の化粧箱見本の画像データ及びその印刷会社による証明書であり、当該印刷会社は、平成23年2月上旬、平成24年7月中旬及び下旬並びに平成25年9月中旬に、上記画像デーデタ(甲13)に係る化粧箱(甲17)を、その発売元に表示された株式会社オフィスあゆ川(東京都目黒区上目黒●●)(以下「本件使用者」という。)に納品したことが認められる。
なお、乙第17号証の化粧箱は、上記画像データ(乙13)と背景図の色の出方がわずかに異なるが、商品表示、発売元、製造販売元等、その他の表示は同一であることから、乙第17号証の化粧箱が発売元である株式会社オフィスあゆ川に納品されたものとみて差しつかえないものであり、該化粧箱には、「マリンプラセンタ」の表示が認められる。そして、「メカブに含まれるミネラル、アルギン酸、フコイダンなどに植物成分をプラス。なめらかな素肌を保ち、サッパリした洗い上がりに。」の記載及び「全成分」の表示には「石ケン素地、スクロース、ワカメ胞子体(メカブ粉末抽出エキス)、黒砂糖、グリセリン、グリコシルトレハロース、加水分解コラーゲン」等の記載が認められるが、「プラセンタ」の文字は表示されていない。
(5)乙第14号証の1は、近鉄百貨店阿倍野店の2013年5月25日付け注文伝票(写し)、乙第14号証の2は、株式会社オフィスあゆ川(伊東市●●)の平成25年5月26日付け納品書(写し)及び乙第14号証の3は、近鉄百貨店阿倍野店の2013年5月28日付け納品伝票(取引先用)(写し)であるところ、これらにより2013年(平成25年)5月28日頃、株式会社オフィスあゆ川(伊東市●●)から、「マリンアンバー」(以下「本件商品」という。)12個が近鉄百貨店阿倍野店に納品されたことが認められる。
(6)乙第20号証は、「納品代行業務確認書」であり、その記載内容からして、平成25年5月16日以降の株式会社オフィスあゆ川(静岡県伊東市●●)から近鉄百貨店阿倍野本店へ発送する化粧品についての納品代行業務に係る書類であることが認められるところ、株式会社オフィスあゆ川(静岡県伊東市●●)の代表取締役は本件使用者の代表取締役と同一であること(乙18及び乙19)、乙第13号証、乙第14号証(枝番号を含む。)及び乙第17号証によれば、株式会社オフィスあゆ川(静岡県伊東市●●)と本件使用者の取扱商品は「マリンアンバー」であること、さらに乙第21号証によれば、株式会社オフィスあゆ川の「本社住所」として「東京都目黒区上目黒●●」、「事務所・配送センター」として「静岡県伊東市●●」の表示が認められることを総合すると、株式会社オフィスあゆ川(静岡県伊東市●●)は、本件使用者と同一人と判断することができる。なお、職権調査によれば、提出された乙第21号証とは体裁が異なるところがあるが、本件使用者のウェブサイトにおいて、現在も、「株式会社オフィスあゆ川」について、「東京都目黒区上目黒●●」、「事務所・配送センター」として「静岡県伊東市●●」の表示を確認することができる。
したがって、本件使用者(株式会社オフィスあゆ川(東京都目黒区上目黒●●))は、2013年5月28日頃、近鉄百貨店阿倍野店に、乙第17号証の包装箱で包装された本件商品を12個納品したものといえる。
2 本件商標の使用について
被請求人の提出に係る証拠によれば、「商標使用権許諾契約書」(乙11)は、平成20年4月1日以降、商標権者及び本件使用者の両者から、契約の解除の申出等の意思表示もなく、該契約が終了していたと認めるに足る特段の事情も見当たらない。
したがって、該契約は、その第1条により、更新がされ、以下の引渡し又は譲渡が行われた時点においても有効に存続していたものと推認されるものであるから、本件使用者は、本件商標の通常使用権者であるといえる。
そして、上記1(4)及び(5)によれば、本件使用者は、本件要証期間内である平成25年5月下旬頃、本件商品12個を近鉄百貨店阿倍野店に引渡し又は譲渡したものと認めることができる。
また、該本件商品は、乙第17号証の化粧箱により包装されていたものであり(上記1(4))、その包装箱に表示された「マリンプラセンタ」の表示は、本件商標と同一の構成文字であるから、本件商標と社会通念上同一の商標と認められる。
したがって、通常使用権者と認められる株式会社オフィスあゆ川は、本件要証期間内に、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を本件商品(マリンアンバー)に使用したものと認められる。
3 本件商品について
本件商品は、その包装箱の表示(上記1(4))から、「せっけん」であることを認めることができるが、それらの表示を総合してみても、直ちに「プラセンタエキスを配合してなるせっけん」であるということはできない。
ここで、被請求人が主張する、本件商品に係る「ワカメ胞子体(メカブ粉末抽出エキス)」が「プラセンタエキス」といえるか否かについて、検討する。
被請求人及び請求人の提出に係る証拠によれば、プラセンタ(エキス)は、化粧品についての辞典において、「哺乳類の胎盤の抽出物」(甲5)「牛、豚、馬、羊などの胎盤より無菌的に精製水で抽出される」(乙22の2)ものとしていて、また、プラセンタエキスの製造会社、日本化粧品工業連合会等の解説においても、哺乳類の胎盤で、医薬品・健康食品・化粧品には豚、馬、ヒト由来のプラセンタが利用されているとされている(甲6、7、13(枝番号を含む。)乙22の2)。
そして、せっけんや化粧品等の取引の実情においては、豚、馬等の動物のプラセンタを使用したことを表示している商品に加えて(甲7、8、乙23の3ほか)、植物性プラセンタ、海洋性プラセンタの表示が使用された商品が取引されているところ、植物性プラセンタは、大豆、ライ麦、トウモロコシ、アセロラ、クロレラ、カッコン等(の胚芽あるいは胚座)から抽出した成分を、海洋性プラセンタは、魚類(鮭の卵巣膜)、アマモエキス(乙23の6)から抽出した成分を指すものとして使用されていることが認められる(甲15、乙23、24(枝番号を含む。))。
しかしながら、ワカメ胞子体(メカブ粉末抽出エキス)又はワカメないしはメカブのエキスが、上記、いずれかの「プラセンタ(エキス)」として理解されている、又は、使用されていると認めるに足りる証拠の提出はない。
そして、本件商品の包装箱には、上記1(4)のとおり、各種の成分が含まれていることが表示されているが、「プラセンタ」の表示を確認することはできない(乙17)。さらに、本件商品を取り扱うウェブサイトにおける宣伝広告の表示を見ても、「メカブ粉末を配合し、・・・メカブにはミネラルに加え、ぬめり成分フコイダンとアルギン酸が含有・・・黒糖、アロエベラエキス、カワラヨモギエキス・・・グリコシルトレハロースやコラーゲン配合。」及び使用商品の成分として「ワカメ胞子体(メカブ粉末抽出エキス)」の表示は認められるものの、「プラセンタ」の表示を使用していることを確認することはできない(甲12-4)。
加えて、上記1(3)のとおり、本件要証期間内に頒布された商品パンフレットをみても、本件使用者がその業務に係る商品について、「プラセンタ(エキス)」を商品に配合していることを把握することはできない。
してみると、本件商品に接する取引者、需要者は、本件商品にプラセンタエキスが配合されていると認識することは不可能であり、「メカブに含まれるミネラル、アルギニン酸、フコイダン等に植物成分が配合されていること」を理解するにとどまるものである。
そうすると、せっけん、化粧品等の業界及びその取引の実情を踏まえると、本件商品は、「プラセンタエキスを配合してなるせっけん」であるということはできない。
4 まとめ
以上のとおり、被請求人は、通常使用権者が、本件要証期間内に、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を本件商品について使用したことを証明したものであるが、本件商品について、「プラセンタエキスを配合してなるせっけん」であることを証明し得たということはできない。
さらに、被請求人は、他に本件商標をその指定商品のいずれかについて使用していることを証明していない。
したがって、本件商標は、本件審判請求の予告登録前3年以内に日本国内において、本件商標の指定商品について、商標権者、専用使用権者及び通常使用権者によっても使用されていないものといわざるを得ないから、本件商標の登録は、商標法第50条1項の規定により、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2015-06-30 
結審通知日 2015-07-03 
審決日 2015-08-07 
出願番号 商願2006-83044(T2006-83044) 
審決分類 T 1 31・ 1- Z (Y03)
最終処分 成立  
前審関与審査官 箕輪 秀人林田 悠子鈴木 斎 
特許庁審判長 酒井 福造
特許庁審判官 堀内 仁子
藤田 和美
登録日 2008-03-28 
登録番号 商標登録第5122377号(T5122377) 
商標の称呼 マリンプラセンタ、マリン、プラセンタ 
代理人 沖本 周子 
代理人 奥村 公敏 
代理人 中井 宏行 

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