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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 Y25
審判 全部申立て  登録を維持 Y25
管理番号 1305208 
異議申立番号 異議2015-900053 
総通号数 190 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2015-10-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2015-02-09 
確定日 2015-09-04 
異議申立件数
事件の表示 登録第5716285号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5716285号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第5716285号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成26年7月9日に登録出願され、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴,水上スポーツ用ウエットスーツ」を指定商品として、同年10月21日に登録査定、同年11月7日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、登録異議の申立ての理由として引用する登録商標は、以下の3件であり、いずれも、存続期間の更新が1回なされ、現に有効に存続しているものである。
1 登録第4435662号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲2のとおりの構成からなり、2000年2月11日にアメリカ合衆国においてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張して、平成12年6月13日に登録出願され、第25類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同年11月24日に設定登録されたものである。
2 登録第4615786号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲2のとおりの構成からなり、平成14年2月5日に登録出願され、第18類及び第25類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同年10月25日に設定登録されたものである。
3 登録第4664724号商標(以下「引用商標3」という。)は、別掲3のとおりの構成からなり、平成13年4月10日に登録出願され、第25類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同15年4月18日に設定登録されたものである。
なお、以下、引用商標1ないし引用商標3をまとめて引用商標という。

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであると申立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第57号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 商標法第4条第1項第11号について
(1)本件商標と引用商標との類否
本件商標と引用商標は、いずれも欧文字の「M」をモチーフとし、この「M」様の図形が白く右に斜めに傾斜して表現されており、それぞれ着想、構図等その構成の軌を一にする。そして、モチーフが同様であれば、軽微な差異は印象に残らない。
また、本件商標と引用商標1及び引用商標2についてみても、いずれも(黒ではなく)白を基調にしている点、及び、本件商標は、「小さい白抜きの鎖線」ではなく「小さい縫い取り様の模様」が施されている点が相違するのみであり、「需要者に与える印象、記憶、連想等」の観点からは、軽微な差でしかない。引用商標1及び引用商標2は、いずれも円図形に「M」様の図形を白抜きにしてなり、その点で、背景色のない本件商標と異なる。しかしながら、引用商標1及び2は、白抜きで表されていることで、「M」様の図形部分が強調され、かつ、背景の円はありふれた図形であるから、この円があることで、本件商標と別異の商標と認識されるわけではない。
したがって、本件商標と引用商標は、「M」様の図形部分に、若干線の太さや図形の傾きに若干相違点があるとしても、取引者、需要者をして、上記両商標の共通する構成より印象を同じくし又は近似したものとして捉えることも決して少なくないものといえる。
(2)取引の実情
申立人の販売する商品(靴類の他、ウインドブレーカー、Tシャツ、靴下等(甲46?48)は、本件商標の指定商品の殆どと抵触しており、その需要者及び取引者の範囲は一致する。
また、申立人のシューズは、そのベロ部分とつま先横に引用商標がワンポイントマークとして使用されており(甲51)、かかる表示は一般の傾向ともいえるものであり(甲52?54)、商標がワンポイントマークとして小さく表示されるといった取引の実情に鑑みれば、本件商標と引用商標との小さな違いは看過されて、それぞれの商標を付した商品の出所を混同したり、または、申立人の新しいシリーズ商品ではないかと誤認、混同するおそれは大きい。
(3)小括
本件商標と引用商標とを取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、それぞれの商標は、欧文字の「M」をモチーフとし、この「M」様の図形が白く右に斜めに傾斜して表現されている点で構成の軌を一にし、細部において相違する点があるとしても、それらは軽微な差でしかないから、両商標を時と所を異にして離隔的に観察した場合には、外観において彼此相紛れるおそれのある類似の商標である。特に、本件商標の指定商品である、靴や被服類については、ワンポイントマークとして使用されることも多く、かかる取引の実情についても勘案されるべきである。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから、その登録は取り消されるべきである。
2 商標法第4条第1項第15号について
(1)引用商標の周知性
申立人の前身は、1970年代に、オーダーメードのハイキングブーツを製造し(甲23)、1980年代当初にメレル・ブーツ・カンパニーが誕生し、同社の商品は、北米にとどまらず、世界各国に普及し、1992年(平成4年)には、我が国での発売が開始された。その後、申立人は、1997年以降も、MERRELL商標を使用し、MERRELLブランドを付した商品は、現在では160か国で販売されており(甲25)、30年以上の販売実績を誇っている。我が国においても、本格的に販売が開始されてから既に17年が経過した(甲24)。申立人の商品は、創業以来の耐久性や履き心地の良さによって、日本市場にも広く受け入れられ、高い周知性を獲得している。
(2)市場一般の認識
上記のとおり、申立人の商品は、市場において広く認識されているものである。また、我が国市場における申立人の周知性は圧倒的であり、靴では珍しく、申立人商品のミニチュアまで発売されている(甲28)。このミニチュアの宣伝文言にも、申立人商品について「世界屈指のアウトドアブランド『メレル』のシューズ」と紹介されている。申立人の商品は、一般市場で高い評価を得ており、周知度も高い(甲29)。
(3)販売実績及び宣伝広告活動
引用商標を付した商品は、2012年度ないし2014年度において、毎年約16万足ないし20万足、約11億円ないし13億円であり、申立人は、1998年(平成10年)から、丸紅株式会社と国内総代理店契約を締結し、販売業務はその系列会社である丸紅フットウェアが行っている。申立人の商品は、インターネット販売のほか、直営店(6店舗、甲35)及び販売店(652店舗、甲36)により販売されている。
また、申立人は、引用商標を広く喧伝すべく、キャンペーン、展示会におけるポスターの掲示等、宣伝広告活動を行っている(甲37、38)。さらに、雑誌広告等も積極的におこなっている(甲39?43)。
したがって、申立人の販売活動及び宣伝活動において引用商標が常に使用された結果、引用商標は、業界はもとより、一般の需要者にも周知な商標となっている。
(4)本件商標の商標法第4条第1項第15号該当性について
本件商標と引用商標とは、上記1のとおり、外観において類似する。また、引用商標は、申立人の商品に永年使用された結果、本件商標の登録出願時において周知となっており、申立人が現に販売している商品(アウトドアシューズやスニーカーといった靴類の他、ウインドブレーカー、Tシャツ、靴下、ショートパンツ等)と、本件商標の指定商品とは抵触するから需要者の範囲も一致する。そうすると、需要者の通常の注意力及び商標がワンポイントマークとして多用される取引の実情に鑑みると、本件商標をその指定商品に使用した場合には、申立人の使用する商標を想起・連想し、恰も申立人又はその関連会社が取り扱う商品またはそのシリーズ商品であると錯覚して、商品の出所について混同を生ずるおそれがある。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、その登録は取り消されるべきである。

第4 当審の判断
1 商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、別掲1のとおりの構成からなるものであるところ、その構成は、欧文字の「M」をモチーフにして図案化したといえるものの、その周囲を縫い取り状の模様で表してなることに特徴を有するものであり、そもそも商品の規格、品番を表すための記号、符号として商取引上、類型的に使用される欧文字一文字については、それ自体で自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないことをも踏まえると、この態様からは欧文字の「M」を直ちに想起させるというよりは、その有する外観の印象をもって認識、把握されるものであり、特定の称呼及び観念を生じないとみるのが相当である。
他方、引用商標1及び引用商標2は、別掲2のとおりの構成であるところ、黒塗りの円図形内に白抜きで、欧文字の「M」をモチーフにして図案化した遠近感のある特殊な態様の図形を配してなるものであって、その全体としての外観上の印象をもって把握され、ここからは、特定の称呼及び観念は生じないとみるのが相当である。
また、引用商標3は、別掲3のとおりの構成であるところ、これは、欧文字の「M」をモチーフにして図案化した遠近感のある特殊な態様の図形を配してなるものであって、その外観上の印象をもって把握され、ここからは、特定の称呼及び観念は生じないとみるのが相当である。
そこで、本件商標と引用商標とを比較するに、その外観は、両者共に、欧文字の「M」をモチーフにした図形であるとしても、本件商標は、周囲を縫い取り状の模様で表してなり、また、左右の山形部分は、その傾きの程度及び方向を違えており、左右のバランスを欠く不安定な構成となっているものである。
これに対して、引用商標の「M」をモチーフにした部分は、周囲を直線で表し、左の縦線を高くかつ太く、右の縦線を低くかつ細く表すことにより、左部分から右部分にかけて遠近法により「M」を図案化したという、安定した印象を呈する構成のものである。
してみれば、本件商標と引用商標とは、「M」をモチーフにした図形において上記した外観の構成上の差異を有することで、明らかに態様の異なるものとして、印象、記憶されるとみるのが相当であり、さらに、本件商標と引用商標1及び引用商標2とは、円図形内に描かれているか否かにおいて顕著な差異があることから、本件商標と引用商標とを時と処を異にして接しても、外観上、彼此紛れることはないというべきである。
そうすると、本件商標と引用商標とは、共に特定の称呼及び観念を生じるものではなく、その外観において、紛れるおそれはないから、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当しない。
なお、本件商標と引用商標とがワンポイントマークとして小さく表示されることがあるとしても、上記したように、両者は、その外観上の差異により彼此混同するとはいえないから、この点をいう申立人の主張は採用することはできない。
2 商標法第4条第1項第15号について
(1)引用商標の周知性について
申立人の前身は、オーダーメードのブーツの製造業者であり、1980年代当初にメレル・ブーツ・カンパニーが誕生し、同社の商品は、世界各国に普及し、1992年(平成4年)には我が国での販売が開始された。その後、1997年に申立人はこれを買収し、それ以降もMERRELL商標が使用されている(甲23)。「MERRELLブランド」を付した商品は、30年以上の販売実績を有し、現在では160か国で販売され(甲25)、我が国においても、17年の販売実績を有し(甲24)、申立人の商品は、インターネット販売の他、直営店(6店舗)及び販売店(652店舗)により販売されている(甲35、36)。また、申立人は、「MERRELLブランド」に係る宣伝活動を行い、キャンペーンポスターや雑誌等においてその商品が広告されている(甲37?43)。
しかしながら、「MERRELLブランド」を付した申立人の業務に係る「靴」等の商品及びその広告媒体において、そのほとんどは、「MERRELL」の文字とともに(近接して)引用商標1及び引用商標2が使用されているものである。
そして、引用商標1及び引用商標2のみが独立して使用されているものは甲第26号証(枝番号を含む。)以外には、見当たらない。
そうすると、引用商標1及び引用商標2が、それのみで「靴類」について使用された結果、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国において申立人の業務に係る商品を表すものとして、取引者、需要者の間で広く認識されて著名になっていたと認めることはできないというのが相当である。
また、本件商標と引用商標とは,上記1のとおり、非類似の商標であるから、明らかに相紛れるおそれのない別異の商標というべきである。
したがって、商標権者が本件商標をその指定商品について使用しても、これに接する取引者、需要者に引用商標を連想又は想起させるとはいえないものであって、その商品が申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、その出所について混同を生じさせるおそれはないものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
3 まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に違反して登録されたものではないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録は維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲
別掲1 本件商標


別掲2 引用商標1及び引用商標2




別掲3 引用商標3




異議決定日 2015-08-27 
出願番号 商願2014-57464(T2014-57464) 
審決分類 T 1 651・ 261- Y (Y25)
T 1 651・ 271- Y (Y25)
最終処分 維持  
前審関与審査官 吉岡 めぐみ 
特許庁審判長 酒井 福造
特許庁審判官 堀内 仁子
田中 亨子
登録日 2014-11-07 
登録番号 商標登録第5716285号(T5716285) 
権利者 美津濃株式会社
商標の称呼 エム 
代理人 小林 彰治 
代理人 春田まり子 
代理人 稲葉 良幸 
代理人 田中 克郎 
代理人 宮川 美津子 

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