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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない X03
管理番号 1305152 
審判番号 取消2014-300883 
総通号数 190 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2015-10-30 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2014-10-31 
確定日 2015-08-26 
事件の表示 上記当事者間の登録第5084105号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5084105号商標(以下「本件商標」という。)は、「プラセンドクター」の片仮名及び「PLACEN DOCTOR」の欧文字を2段に横書きしてなるものであり、平成19年3月6日に登録出願、第3類「化粧品,せっけん類,香料類」、第29類「プラセンタを主原料とするカプセル状・粉状・粒状・顆粒状・錠剤状・液体状・ゼリー状・固形状の加工食品」及び第32類「プラセンタを配合してなる清涼飲料,その他の清涼飲料,果実飲料,飲料用野菜ジュース,乳清飲料」を指定商品として、同年10月19日に設定登録されたものである。
そして、本件審判の請求の登録は、同26年11月19日にされている。

第2 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、審判請求書、審判事件弁駁書及び口頭審理陳述要領書において、その理由を要旨以下のとおり述べ、その証拠方法として、甲第1号証ないし甲第7号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 請求の理由
被請求人が本件商標をその指定商品について、ここ3年間日本国内において継続使用している事実はない。
しかも、本件商標については専用使用権及び通常使用権の設定登録もなされていない。
したがって、商標法第50条第1項の規定に基づき、その登録は、取り消されるべきである。
2 審判事件弁駁書における主張
(1)本件商標の通常使用権について
被請求人から提出された審判事件答弁書には、株式会社旭健康研究所(以下「旭健康研究所」という。)が通常使用権者である旨の証明はなく、本件商標の登録原簿に通常使用権の設定登録もないので、信用することができない。
(2)「ゴールドコロイド(ジェル状美容液)」について
ア 被請求人は、乙第1号証の1ないし乙第6号証の2を提出し、本件商標が旭健康研究所により使用されていた旨を主張しているが、その商品が掲載されているチラシ(乙第1号証の2)は、いつ作成(印刷)され、いつ商取引に提供されたものか不明である。使用説明書(1)(乙第1号証の1)に「6.(2)資料の作成(撮影):平成21年7月」とあるが、本件審判の請求の登録日(平成26年11月17日)から遡ること3年(以下「要証期間」という。)(審決注:審判事件弁駁書においては「17日」と記載されているが、これは「19日」の誤記と認められる。このため、要証期間も本件審判の請求の登録日が平成26年11月19日の場合の期間をいうこととする。)以外の日付である。日付すらもないチラシは、本件審判の請求の登録日以後でも、容易に作成(カラー印刷)できる性質のものであり、信憑性がない。
イ 被請求人は乙第2号証の2(商品写真)を提出して、これが乙第1号証の2に係るチラシに掲載されている商品「プラセンEXゴールドコロイド」である旨を説明しているが、その写真に示された透明容器(瓶)や包装箱はいつのものか、その製作日が不明である。
ウ 乙第1号証の2に係るチラシに掲載されている商品と乙第2号証の2に係る写真の商品とが、たとえ同じ「プラセンEXゴールドコロイド」であると仮定しても、その商取引の実情を示す資料として提出されたカムトラインセラピー宛の納品書(控)(乙第3号証の2)及びヴェルティージュ宛の納品書(控)(乙第5号証の2)には、単に「ゴールドコロイド」と記載されているにすぎず、商品としての表示が合致していないので、これが本件商標を使用した商品であるか否かは不明である。
エ 被請求人は、カムトラインセラピーの証明書(乙第4号証の2)及びヴェルティージュの証明書(乙第6号証の2)を追加提出しているが、これらの証明書は何れも本件審判の請求の登録日以後に作成されていることとも相挨って、客観的に信用できるものではない。
オ 念のために言えば、乙第4号証の2の証明書と乙第6号証の2の証明書には、「商品『プラセンドクター(Placen Dr)EX100』(ゴールドコロイド<ジェル状美容液>)」と記載されており、乙第1号証の2(チラシ)と乙第2号証の3及び4(商品写真)にそれぞれ「プラセンEXゴールドコロイド」とある表示とは合致しない。
カ 被請求人は、本件商標の使用者を通常使用権者の旭健康研究所であると主張しているが、上記カムトラインセラピー宛の納品書(控)(乙第3号証の2)及びヴェルティージュ宛の納品書(控)(乙第5号証の2)は、株式会社旭図書(以下、「被請求人」というほか、適宜、「商標権者」や「旭図書」という場合がある。)のものである。また、カムトラインセラピーの証明書(乙第4号証の2)及びヴェルティージュの証明書(乙第6号証の2)も、名宛人に旭図書が加わっており、被請求人の主張には首尾一貫性がない。
(3)「UVカットベース(化粧下地)」について
ア 被請求人は、乙第7号証の1ないし乙第12号証の2を提出し、本件商標が旭健康研究所によって使用されていた旨を主張しているが、その商品を紹介したチラシ(乙第7号証の2)に「平成23年6月3日」とある日付は、要証期間外の日付である。同じチラシに「(株)旭図書、旭健康研究所」とあるが、本件審判の請求の登録日以後でも容易に作成(カラー印刷)できる性質のものであり、信憑性はない。
イ 上記商品の詳しい内容を示すパンフレット(乙第8号証の2)は、いつ作成(印刷)されたものか不明である。その作成日としては、使用説明書(8)(乙第8号証の1)に、「6.(2)資料の作成(撮影):平成23年」と記載されているが、これは乙第7号証の2のチラシにある日付に都合良く対応させたにすぎず、その年だけの記載程度では信用することができない。
また、乙第7号証の2に係るチラシも、例えば、商品の特売日、催事日、その他の日付を限定するチラシであればともかく、単に商品を説明するだけのチラシの肩部に「平成23年6月3日」と日付を大きく印刷してあることの方が不自然であって、むしろ、乙第8号証の2に係るパンフレットのように、日付の印刷されていない方が通例である。
ウ 乙第8号証の2に係るパンフレットのカラーコピーは、株式会社ジェー・ビー・エフ宛の証明願(乙第9号証の2)に納品書と併せて添付されており、その株式会社ジェー・ビー・エフが「弊社(株式会社旭図書)が2013年4月12日に印刷を依頼しました製造番号5130412008808の印刷物は、添付の印刷物であること」に間違いないとしている。
しかしながら、該証明願にある「製造番号5130412008808」と、その証明願に添付の納品書にある「製造番号5130412008808」とが、たとえ合致するとしても、その製造番号の印刷物が上記乙第8号証の2に係るパンフレットであるか否かは不明であり、その「納品書」の商品内容を見ても、これが乙第8号証の2に係るパンフレットの印刷であると認めることはできない。
エ しかも、乙第9号証の2の証明願に添付の「納品書」には、「作成日:2014年12月11日、注文日:2013年04月12日」という記載があるが、その作成日(2014年12月11日)が納品書の作成日、つまり印刷物の納品日であるとすれば、その印刷物とされた乙第8号証の2に係るパンフレットの印刷日(作成日)は、該注文日(2013年4月12日)から丁度1年6ヶ月経過したことになり、本件審判の請求の登録日以後であって、乙第8号証の2に係るパンフレットの作成日であるという「平成23年」と明らかに矛盾する。
オ 被請求人は、乙第10号証の2ないし4(商品写真)を提出して、これが乙第8号証の2に係るパンフレットに掲載されている商品(UVカットベース)である旨を主張しているが、その写真に示された容器(チューブ)や包装箱はいつのものか、その製作日は不明である。
カ 乙第8号証の2に係るパンフレットに掲載されている商品と、乙第10号証の2ないし4に係る写真の商品とが、たとえ、同じ「p1acen Dr EX 100」のUVカットベースであると仮定しても、その商取引の実情を示す資料として提出された中村宛の納品書(控)(乙第11号証の2)には、ただ単に「PIacenEX」のUVカットベースと記載されているにすぎないから、本件商標を使用した商品であるか否かは不明である。
キ 被請求人は、中村の証明書(乙第12号証の2)を追加提出しているが、本件審判の請求登録日以後に作成されていることとも相挨って、客観的に信用することができない。
ク さらに、被請求人は、本件商標の使用者を通常使用権者の旭健康研究所であると主張する一方、チラシ(乙第7号証の2)や証明願(乙第9号証の2)、その証明願に添付の納品書、中村宛の納品書(控)(乙第11号証の2)は、旭図書のものであり、その中村の証明書(乙第12号証の2)も名宛人に旭図書を加えており、一貫しておらず、本件商標の使用を事後的に繕っているといわざるを得ない。
(4)総括
ア 乙第1号証の2に係るチラシには「プラセンEXゴールドコロイド」という商品が「業界初」であると記載されており、そのチラシの作成日を、被請求人は、使用説明書(1)(乙第1号証の1)において、「平成21年7月」であると説明している。これに対して、岡山市に所在するカムトラインセラピーが商品「プラセンドクター(Placen Dr)EX100」を、東京に所在する被請求人から納品された日付は2013年(平成25年)3月1日になっている(乙第3号証の2及び乙第4号証の2)。また、観音寺市に所在するヴェルティージュが同じく商品「プラセンドクター(P1acenDr)EX100」を、被請求人から納品された日付は2014年(平成26年)7月20日になっている(乙第5号証の2及び乙第6号証の2)。
すなわち、乙第1号証の2のチラシに記載された「プラセンEXゴールドコロイド」と、乙第3号証の2及び乙第5号証の2に各々記載の「ゴールドコロイド」と、乙第4号証の2及び乙第6号証の2に各々記載の「プラセンドクター(P1acen Dr)EX100」とが、すべて同じ商品であると仮定していえば、その商品は平成21年7月に業界初として紹介(発売)されてから、カムトラインセラピーが30g入り1個の納品を受けた日(2013年3月1日)までに、約3年8ヶ月経過しており、同じくヴェルティージュが30g入り3個の納品を受けた日(2014年7月20日)までに丁度5年経過している。業界初として紹介(発売)されてから5年経過するも、その納品受領者は僅か2名、納品個数は僅か4個であるにすぎない。
イ 乙第7号証の2に係るチラシには「プラセンドクターUVカットベース(化粧下地)」が「新商品」であると記載されており、そのチラシの作成日を被請求人は使用説明書(7)(乙第7号証の1)において、「平成23年6月」であると説明している。さらに、その商品の内容を詳しく説明したパンフレット(乙第8号証の2)にも、「新発売」との記載がある。これに対して、行田市に居住する中村が商品「『プラセンドクター(P1acen Dr)EX100』(P1acen EX UVカットベース)」を、被請求人から納品された日付は「2014年(平成26年)3月28日」になっている(乙第11号証の2及び乙第12号証の2)。
すなわち、乙第7号証の2のチラシに記載された「プラセンドクターUVカットベース(化粧下地)」と、乙第8号証の2のパンフレットに記載された「P1acen. Dr EX100 UVカットベース」と、乙第11号証の2の納品書に記載された「P1acenEX UVカットベース」と、乙第12号証の2の証明書に記載された「プラセンドクター(PIacen Dr)EX100」(P1acen EX UVカットベース<化粧下地>)とが、すべて同じ商品であると仮定していえば、その商品は平成23年6月3日に新商品として新発売されてから、中村が30g入り5本の納品を受けた日(2014年3月28日)までに、約2年3ヶ月経過している。新商品として発売されてから約2年3ヶ月経過するも、その納品受領者はただ1人、納品本数は僅か5本であるにとどまる。
ウ さらにいえば、請求人は、件外商標登録第4743991号(甲第1号証)と件外商標登録第5045197号(甲第2号証)を所有しており、これらを侵害している旭健康研究所へ、その侵害行為の中止を求めて目下警告中にあり、その交信を繰り返している。
すなわち、旭健康研究所はその商品のリーフレット(甲第3号証)から明白なように、乙第2号証の2や乙第4号証の2、乙第6号証の2、乙第8号証の2、乙第10号証の2及び乙第12号証の2に各々記載された「PIacen Dr EX100」と相紛らわしい「Dr.P1acen EX100」という別な標章を使用した各種化粧品を販売しているが、請求人との交信過程において、「当社商品の販売先は、主としてエステサロンであり、独立系の店舗のほとんどに本件商標を付した商品(甲第2号証に記載されている商品の意味)に関するDMを送っていたことは従前お知らせしたとおりです。その中で、当社から商品を購入した数社は、インターネットを介して商品を販売しています。しかし、インターネットを積極的に利用した販売方法は当社の営業方針に沿うものでないため、当社はその停止を求めておりました。エステサロンの営業に支障を来すおそれがあるためです。」と主張している。
エ このように主張している旭健康研究所の営業方針に鑑みると、乙第4号証の2に示された「カムトラインセラピー」や乙第6号証の2に示された「ヴェルティージュ」は、独立系の店舗(エステサロン)として、旭図書(乙第3号証の2及び乙第5号証の2の納品書(控)参照)から商品「プラセンドクター(P1acen Dr)EX100」(ゴールドコロイド<ジェル状美容液>)を購入したものと考えられ、また、乙第12号証の2に示された「中村」も、独立系の店舗(エステサロン)を営む者として、同じく旭図書(乙第11号証の2の納品書(控)参照)から商品「プラセンドクター(PIacen Dr)EX100」(P1acen EX UVカットベース<化粧下地>)を購入したものと考えられるが、未だホームページを開設していない様子の旭健康研究所又は同じく旭図書へ、どのようにして商品を注文したのか疑問である。
それにもまして、その前に旭健康研究所又は旭図書(何れも東京に所在)は、どのようにして岡山市に所在する上記カムトラインセラピーや観音寺市に所在するヴェルティージュ、行田市に居住する中村を見つけ出し、これらへどのようにして商品の紹介や案内、説明などを行ったか疑問であるといわざるを得ない。これらの疑問を解消する証拠資料は、全然提出されていないのである。
オ 被請求人は、「ゴールドコロイド」について、日付の不明なチラシ(乙第1号証の2)や商品(写真)(乙第2証の2)と、本件審判の請求の登録日以後に作成した証明書(乙第4号証の2及び乙第6号証の2)とを、同じ商品に係るものとして関連づけるために、納品書(控)(乙第3号証の2及び乙第5号証の2)を提出している。また、被請求人は、「UVカットベース」についても、日付の不確かなチラシ(乙第7号証の2)やパンフレット(乙第8号証の2)及び商品(写真)(乙第10号証の2)と、本件審判の請求の登録日以後に作成した証明書(乙第12号証の2)とを、同じ商品に係るものとして関連づけるために、納品書(控)(乙第11号証の2)を提出している。
しかしながら、乙第2号証の2に示された写真の商品「ゴールドコロイド」が、その業界初という平成21年7月から5年経過した2014年(平成26年)7月20日までの間に、販売された合計個数は僅か4個であり、また、乙第10号証の2に示された写真の商品「UVカットベース」が、その新商品として発売(紹介)された平成23年6月から約2年3ヶ月経過した2014年(平成26年)3月28日までの間に、販売された合計本数は僅か5本にすぎない。この程度の販売数量にとどまる商品について、乙第3号証の2と乙第5号証の2及び乙第11号証の2に係る納品書(控)が作成され、残存していること自体甚だ疑わしく、事後的に繕った控え書であるといわざるを得ない。
しかも、その乙第3号証の2と乙第5号証の2に係る納品書(控)には、ただ単に「ゴールドコロイド」と記載されているにすぎず、また、乙第11号証の2に係る納品書(控)には、「P1acenEX UVカットベース」と記載されているにとどまる。この点、乙第4号証の2と乙第6号証の2及び乙第12号証の2に係る証明書に各々記載された商品「プラセンドクター(Placen Dr)EX100」の表示は、旭健康研究所が別途販売している各種商品に共通の標章「Dr.P1acen EXI00」(甲第3号証の1及び2に係るリーフレットの表裏を参照)と相紛らわしい表示であるため、上記納品書(控)の記載程度では甲第3号証のリーフレットに示された商品と明確に識別することができない。
カ さらにいえば、請求人は上記件外商標登録第4743991号と件外商標登録第5045197号の侵害問題に関する旭健康研究所との交信過程において、その旭健康研究所から仕入れた商品を楽天の仮想店舗「SPACE(スペース)」に展示し、いわゆるネット通販している件外有限会社エアー美容室(甲第4号証参照)から、第三者を介して購入したことがあり、その時の宅配便にて届いた商品の梱包箱とこれに貼付された送り状の写しを甲第5号証として提出する。甲第3号証の1及び2に係る商品のリーフレットは、注文した商品と一緒に甲第5号証の梱包箱に入っていたが、納品書や請求書は入っていなかった。このような事実に徴しても、乙第3号証の2と乙第5号証の2及び乙第11号証の2に係る納品書(控)の存在は信用することができない。
キ 本件商標の構成態様(標章)は「PLACEN DOCTOR」という欧文字と、その上段に「プラセンドクター」と横書きした片仮名からなるところ、乙第1号証の1ないし乙第12号証の2の全体を通覧するも「PLACEN DOCTOR」という欧文字を表示したものは皆無である。
この点、乙第2号証の2ないし4と乙第10号証の2ないし4に係る写真の商品には、「P1acen Dr」という欧文字が表示されているが、その接尾語「Dr」は略字であり、片仮名と一緒に使用されていなければ、「ドライブ」という称呼を生じる余地もあるため、「PLACEN DOCTOR」という欧文字と類似するといえども、同一の標章であるということはできない。
「プラセンドクター」という片仮名は、日付の不明なチラシ(乙第1号証の2)や、要証期間よりも昔のチラシ(乙第7号証の2)に表示されているにとどまる。乙第3号証の2と乙第5号証の2及び乙第11号証の2に係る納品書(控)に、上記構成態様(標章)の本件商標が表示されていないことはすでに述べたとおりである。そして、本件審判の請求の登録日以後に作成された証明書(乙第4号証の2、乙第6号証の2及び乙第12号証の2)だけに、各々「プラセンドクター(P1acen Dr)EX100」と記入されているのである。そのため、通常使用権者の旭健康研究所が商標の使用者であると主張しながら、別会社である被請求人(旭図書)の納品書(控)や証明願(乙第9号証の2)を提出したり、両社が名宛人となっている証明書(乙第4号証の2、乙第6号証の2及び乙第12号証の2)を提出したりしていることとも相挨って、本件商標が使用されていると認めることはできない。
3 口頭審理陳述要領書における主張
(1)本件の背景について
被請求人は請求人の行った本件取消審判と2件目の取消審判の請求や、請求人の行っている商標登録第4743991号(ドクタープラセン/Dr.PLACEN)(甲第1号証)と同第5045197号(ドクタープラセン/Dr.PLACEN)(甲第2号証)に権原する旭健康研究所への商標権侵害警告を、被請求人への攻撃と非難している様子であるが、その原因は被請求人自身の行為にある。
被請求人は顧客情報の開示を行えないと主張する理由付けのために、請求人と旭健康研究所との該警告を引用しているが、その商標権侵害警告は、本件審判と直接関係のない別個な問題である
(2)旭図書(被請求人)と旭健康研究所との関係について
旭健康研究所と旭図書の代表取締役が同一人であることをもって、旭健康研究所を旭図書の完全子会社であると認めることはできない。両者は、別個独立の株式会社であり、互いの合意(通常使用権許諾契約)もないのであって、乙第13号証に添付の「同族会社等の判定に関する明細書」は、両社の代表取締役が共通であることや両社が緊密な親子関係にあることを証明するものではない。
旭図書が、商品である化粧品との関係上、旭健康研究所の表示を販売広告上利用し、いわば伝票処理だけを行っている印象であるが、本件商標を使用した商品の取引書類や、その商品の取引が実際に行われたことを示す証拠の提出はない。
(3)パンフレットに住所・連絡先・注文方法等の記載がないこと並びに配布先等の開示について
旭図書と旭健康研究所を同一視することはできない。答弁書において、本件商標が通常使用権者である旭健康研究所により使用されていると、被請求人が主張していることとも矛盾する。
また、被請求人は商品の販売法を説明しているが、全国に一体幾つの営業所があり、何人の営業担当社員をかかえている会社であるか全く不明である。被請求人の顧客・取引先やパンフレットの配布先、その他の顧客情報の開示を行えないということは、本件商標の使用事実を証明しないということにほかならないのであって、本件商標の取消しはやむを得ないことである。
(4)パンフレットの作成日について
被請求人は、「日付の記載のある他の書類を、ダイレクトメールの場合には同封し、訪問の場合は同時に手渡しするため、カタログ・パンフレットに重ねて日付を記入する必要はありませんでした。」と説明するが、ここでいうダイレクトメールと同封又は直かに手渡しする「日付の記載のある他の書類」とは、どのような書類のことか、また、どの乙号証のことか不明である。
(5)化粧品に「薬事法上の名称(販売名)」の記載は必須であること
薬事法の規定(第14条など)やその「化粧品等の適正広告ガイドライン基本編」を参照するも、薬事法上の名称(販売名)として商品(化粧品)に自己か所有している登録商標(商品商標)の使用を許されないことはない。
本件商標が被請求人の所有であり、薬事法上の名称(販売名)として支障なく使用できる筈であるにも拘らず、被請求人は、その化粧品のゴールドコロイド及びUVカットベースに冠する名称(販売名)として、「プラセンEX」の承認を受けたものと推測されるから、本件商標を表示(使用)していないことは明白である。
被請求人が挙げた乙第2号証の3及び4に係る商品(ゴールドコロイド)の写真と、乙第10号証の3及び4に係る商品(UVカットベース)の写真だけでなく、これらの納品書(乙第3号証の2、乙第5号証の2、乙第9号証の2及び乙第11号証の2)にも、本件商標の表示(使用)はないのである。
同じ商品について同じ表示を統一して使用せずに、いわばバラバラの異なる表示をしておきながら、「ゴールドコロイド」は「プラセンEX ゴールドコロイド」の略称であって、「プラセンドクター(Placen Dr)EX100」(ゴールドコロイド<ジェル状美容液>)と同一であると主張したり、「UVカットベース」は「プラセンEX UVカットベース」の略称であって、「プラセンドクター(PLACEN Dr)EX100」(Placen EX UVカットベース<化粧下地>)と同一であると主張したりすることはできない。
(6)要証期間内に商品製造の事実があることについて
被請求人は乙第2号証の2ないし4に係る商品の包装箱仕様書(校正済みの検印あり)写し及び受け払い台帳写しであるとして、乙第15号証の1及び2を追加提出しているが、その「容器用データ」と記載された乙第15号証の1は、これに検印された日付(平成21年6月29日)は要証期間外の古いものである。しかも、商品の容器として実際に使用されたか否か不明である。
また、商品の容器や包装は、未だ実際に商品を収容又は包むために使用されていない限り、商標法第2条第3項に規定された「商品の包装」ということはできない。
さらに、被請求人は、「受け払い台帳写(第15号証の2)の販売名『プラセンEX ゴールドコロイド』とは(5)で述べたようにジェル状美容液『プラセンドクター/P1acen Dr/プラセンEXコールドコロイド』のことであり、そのバッチNo.HAZFは乙第2号証の4に示した商品底面のHAZFの文字と一致します。」と説明しているが、その「商品底面」が、紙製包装箱の底面を意味するならば、その包装箱底面には、バッチNo.HAZFの文字があるが、そのバッチNo.HAZFの文字は、乙第15号証の1における展開状態(印刷用)の包装箱仕様書に全然表示されていない。その包装箱仕様書と乙第15号証の2に係る受け払い台帳とは合致しないため、乙第15号証の1及び2によって、本件商標がその商品の取引上、実際に使用されていた事実を証明することはできない。
(7)「納品の事実を証明する証明書」により使用の事実を証明したことについて
被請求人は「商標権者ら」の商品販売法の特徴を説明しているが、甲第3号証に係る商標(ドクタープラセン/Dr.Placen)を使用した商品(化粧品)については、甲第4号証及び甲第5号証からも確認できるように、旭健康研究所は、ネット通販している全国各地の小売業者に商品を卸売しているのである。
この点、被請求人は乙第16号証の1ないし19を追加しているが、これらに基く本件商標の使用状態や商品取引の事実の説明は一切行っていない。
(8)「プラセンドクター」及び「PLACEN Dr」が本件商標と社会通念上同一であること
ア 本件商標は、「PLACEN DOCTOR」という横書きの欧文字(大文字)と、その上段に横書き並列された「プラセンドクター」という字音表示の片仮名からなり、その「PLACEN」の欧文字が一定の意味・観念を有さない造語である点で、乙第17号証の1ないし7に記載の商標とは異なり、同列に考えることはできない。
イ 「Dr.」という略語は、医者や博士の意味を表示するものとして使用される場合、例えば、「Dr.GENERAL/ドクタージェネラル」というように、接頭側に配置されることが一般的であり、その場合には、たとえ字音表示が無くても、「ドクター」という称呼が自然に生じる。
ところが、本件商標の構成態様では、接尾側に位置する欧文字の「DOCTOR」を、簡略化しない全体の英単語として表示した場合、その字音表示である「ドクター」という片仮名が無くても、必らずや「ドクター」という1つの決まった称呼を生じると考えられるが、その接尾側の欧文字「DOCTOR」をその「Dr」という略語(ピリオドの無い状態)に置換してしまって、「PLACEN Dr」と表示した場合には、その接頭側の欧文字「PLACEN」は上記したように造語であって、総合医の意味・観念を生じ得る「Dr.GENERAL/ドクタージェネラル」という文字の組合せパターンと異なるため、その「Dr」という略語(ピリオドの無い状態)から「ドクター」という1つに決まった称呼を生じるとは限らない。例えば、「プラセンディーアール」や「プラセンドライブ」、「プラセンドラム」というような異なる複数の称呼を生じ得る余地がある。さらにいえば、需要者・取引者が時と所を異にして離隔観察した場合には、「Dr」という略語の存在位置を錯覚して、「ドクタープラセン」という称呼を生じるおそれすらある。
ウ そのため、ただ単に「PLACEN Dr」という欧文字だけを表示した構成態様では、本件商標とは字形が変ってしまっており、外観も異なるので、本件商標の使用であると認めることはできない。この点、ただ単に「プラセンドクター」という片仮名だけを表示した構成態様は、本件商標と字形及び称呼が同一として、本件商標の使用といえるかもしれないが、その片仮名「プラセンドクター」だけが表示されている乙第1号証の2(チラシ)には日付の記載がなく、頒布時期が不明である。また、乙第7号証の2(チラシ)も頒布時期が不明であり、要証期間外の古いチラシであるため、本件商標の使用事実を証明したことにはならない。
エ なお、乙第4号証の2と乙第6号証の2及び乙第12号証の2に係る証明書の表示態様は、何れも「プラセンドクター」という片仮名だけの単独でなく、その接尾側に「(Placen Dr)EX100」という欧文字などが一連に横書きされているため、本件商標と外観上著しく異なり、やはり、本件商標の使用であると認めることはできない。
(9)まとめ
請求人は、旭健康研究所への商標権侵害警告を行っているが、同社から平成27年3月26日付け「商標変更に関するご連絡」の書簡(甲第7号証の7)を受領した。
この書簡に同封されて来た「商標変更のお知らせとお願い(案)」という同社取引先各位への予定文によれば、旭健康研究所は従前使用してきた「Dr.Placen(ドクタープラセン)」の商標と、「PLACEN DOCTOR(プラセンドクター)」の商標(本件商標)を、平成27年4月16日をもって、新ブランド(PlacenLumineux/プラセンルミヌウ)にて提供することとしたので、お知らせする旨が表明されている。

第3 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、審判事件答弁書及び口頭審理陳述要領書において、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第17号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 審判事件答弁書における主張
本件商標は、その指定商品中「化粧品」について、通常使用権者である旭健康研究所によって使用されている。その事実を「ゴールドコロイド(ジェル状美容液)」及び「UVカットベース(化粧下地)」を例として、以下のとおり、立証する。
(1)「ゴールドコロイド(ジェル状美容液)」について
乙第1号証の1ないし2の新商品紹介のチラシによれば「プラセンドクター/P1acen Dr/プラセンEXゴールドコロイド」は、ジェル状美容液(化粧品)であることが明らかである。
商品の実際は、そのチラシ左上部分に掲載されており、そこに表示される商標「P1acen Dr」、販売元「株式会社旭健康研究所」(通常使用権者)、その他の表示は、乙第2号証の1ないし4の商品写真で明らかになっている。
さらに、商品「プラセンドクター/P1acen Dr/プラセンEXゴールドコロイド」の取引の実情を示すものとして、納品書(写)と納品の事実を証明する証明書2組を提出する。乙第3号証の1ないし乙第4号証の2は、平成25年3月1日付け、乙第5号証の1ないし乙第6号証の2は、平成26年7月20日付けであり、いずれも要証期間内の商取引に当たる。
(2)「UVカットベース(化粧下地)」について
乙第7号証の1及び2は、新商品紹介のチラシ、乙第8号証の1及び2は、より詳しい商品内容を示すパンフレットであり、これらのパンフレットによれば、「プラセンドクターUVカットベース(化粧下地)」は、平成23年春に発売され、その商品内容は、日焼け止め効果のある化粧下地(化粧品)であることが明らかである。
乙第8号証の2のパンフレットは、何度か追加印刷を繰り返して今日まで使用されており、乙第9号証の1ないし2は、印刷会社(株式会社ジェー・ビー・エフ)の証明書であり、旭図書(商標権者)が平成25年4月12日に乙第8号証の2のパンフレットの追加印刷を依頼したことを証明する。
乙第10号証の1ないし4は、「プラセンドククーUVカットベース(化粧下地)」の商品写真であり、商標「P1acen Dr」、販売元「株式会社旭健康研究所」、その他の表示が表されており、それと同じ商品は、乙第8号証の2のパンフレットにも記載されている。
さらに、平成26年3月28日付けの納品書(写)(乙第11号証の1及び2)と納品の事実を証明する証明書(乙第12号証の1及び2)によって、当該商品の取引の実情を示す。これらも、要証期間内の商取引に当たる。
(3)小括
以上のとおり、本件商標は、その指定商品中「化粧品」について、要証期間内に商取引が行われたことが明白である。
2 口頭審理陳述要領書における主張
(1)本件の背景について
被請求人と請求人は、商標「Dr.プラセン」の使用を巡り、昨年秋より請求人所有の登録第4743991号商標「ドクタープラセン/Dr.プラセン」(甲第1号証)及び登録第5045197号商標「ドククープラセン/Dr.プラセン」(甲第2号証)の商標権侵害に当たるか否かについて交信中である。被請求人が商標権侵害行為を行っていないにも拘らず、昨年秋、請求人は突然被請求人の取引先4社に警告書を送付し、商標権侵害を主張した。その後、被請求人に対して警告書を送付した請求人は、商標「プラセンドククー/PLACEN Dr」を登録出願した上で本件審判を請求した。さらに、平成27年2月10日には、本件商標に2件目の取消審判も請求している。
本件商標「プラセンドクター/PLACEN DOCTOR」は、争いの焦点である商標「ドククープラセン/Dr.プラセン」とは、前後を逆にした構成で、非類似のものであって、商標登録を許された本件商標を使用することには、何ら問題はないにも拘らず、本件審判及び2件目の取消審判を請求した請求人の目的は、請求人が商標権侵害者と目する被請求人への攻撃以外の何ものでもない。
(2)旭図書と旭健康研究所との関係について
請求人は、本件商標の商標権者である旭図書と使用者である旭健康研究所の関係が不明であるとして、通常使用権の許諾の有無について疑義を呈しているが、旭健康研究所が旭図書と同一人を代表取締役とする完全子会社であることは商標権者の報告書(乙第13号証)添付の旭健康研究所の確定申告書・別表2(株主欄)により明らかである。
両社は、ほぼ一心同体の関係にあり、本件商標を付した商品の販売開始から現在に至るまで本件商標の使用について互いに了解しており、殊更に文書を取り交わす必要がなかったものである。両社が緊密な親子関係にあることを示すだけでも、通常使用権の存在(暗黙の了解)は十分に推測し得ると考えるが、念のため、商標権者の報告書(乙第13号証)により両社間に通常使用権許諾の事実があることを明らかにする。
(3)パンフレットに住所・連絡先・注文方法等の記載がないこと及び配布先等の開示について
旭図書は旭健康研究所と共に本件商標「プラセンドクター/PLACEN DOCTOR」を使用した商品の販売(営業活動)を行ってきたところ、商品の販売法には、以下のとおりの特徴がある。
ア 販売先(卸先)をエステサロンに特化する。
イ ダイレクトメール(DM)を送付するほか、直接訪問し、信頼関係を築く。
ウ DMに同封又は訪問時に持参の注文書等により商標権者らの連絡先・注文方法を知らせる。
エ 商品は、エステサロンに販売するほか、エステサロンを通してその顧客に販売して貰う(エステサロンの顧客に商標権者らが直接商品を販売することはない。)。
オ 商品の品質の高さに鑑み、価格帯を高めに設定する。
このような販売法によって、信頼関係を築くことができた特定のエステサロンに商品を提供するところ、エステサロンは、自身でも商標権者らの商品を使用するが、商標権者らの卸先として自身の顧客に商品を販売する。パンフレット・カタログは、主にその際の商品説明資料として用いられる。エステサロンの顧客らは、ネット販売等で発売元から直接、より安く商品を購入しようとするのが一般的であるが、パンフレット・カタログに住所・連絡先・注文方法の詳細等を記載しなければ直接購入を不可能にすることができるのであって、このように卸先(エステサロン)を守り、「ここでしか入手できない商品」という希少感・特別感・高級感を維持する、というエステサロンヘの意思表示を行っているのである。同じ理由から、商標権者らは、敢えてホームページ作成による直接販売も行っていない。また、エステサロンからの注文は、訪問時に直接口頭又は電話・FAX・メールなどでも受けている。
(4)パンフレットの作成日について
商標権者らは、前記(3)に述べたような商品の販売法を採用しているため、原則としてカタログ・パンフレットは、ダイレクトメールで送るか又は顧客訪問時に手渡ししている。日付の記載のある他の書類を、ダイレクトメールの場合は同封し、訪問の場合は同時に手渡しするため、カタログ・パンフレットに重ねて日付を記入する必要はないので、全く不自然ではない。
(5)化粧品に「薬事法上の名称(販売名)」の記載は必須であること
乙第2号証の3ないし4の商品の裏面(写真)の「プラセンEX ゴールドコロイド」、乙第10号証の3ないし4の商品の裏面(写真)の「プラセンEX UVカットベース」の文字は、薬事法の規定により当該商品の製造・販売の承認を受ける際の「薬事法上の名称(以下「販売名」という。)」であって、商品にこれを記載することが義務付けられているものである(乙第15号証の1及び2)。商標(商品の正面等に記載のもの)とは別に、販売名の記載があることは、何ら不自然ではないばかりか、むしろ、当該商品が薬事法の規定に則り正当に製造・販売されていることの証である。実際の商取引において、当該商品を指し示す名称として用いられるのは、商標ばかりとは限らず、販売名やその略称も、頻繁に使用される名称である。
したがって、「プラセンEX ゴールドコロイド」、あるいは、その略称の「ゴールドコロイド」とは、乙第1号証の1ないし乙第6号証の2により、商標の使用の事実を立証したジェル状美容液「プラセンドクター/Placen Dr/プラセンEXゴールドコロイド」のことである。同じく「プラセンEX UVカットベース」、あるいは、その略称の「UVカットベース」とは、乙第7号証の1ないし乙第12号証の2により、商標の使用の事実を立証した化粧下地「プラセンドクター/Placen Dr/UVカットベース」のことである。
(6)要証期間内に商品製造の事実があることについて
乙第15号証の1及び2は、ジェル状美容液「プラセンドクター/Placen Dr/プラセンEXゴールドコロイド」(商品写真:乙第2号証の2ないし4)に関する製造元の包装箱仕様書(校正済み検印あり)(写)及び受け払い台帳(写)である。乙第15号証の1は、包装箱仕様書(校正済み検印あり)(写)であって、そこに示された包装箱(展開図)の形状や記載内容が乙第2号証の2ないし4の商品写真と一致する。また、受け払い台帳(写)(乙第15号証の2)の販売名「プラセンEXゴールドコロイド」とは、前記(5)で述べたようにジェル状美容液「プラセンドクター/Placen Dr/プラセンEXゴールドコロイド」のことであり、そのバッチNo.HAZFは、乙第2号証の4に示した商品の底面のHAZFの文字と一致する。
これらを総合すれば、乙第2号証の2ないし4として写真を提出した商品(ジェル状美容液「プラセンドクター/Placen Dr/プラセンEXゴールドコロイド」)の617個がバッチNo.HAZFの下、2013年3月21日に製造入庫し、同年同月25日に旭図書(商標権者)に出荷されたことが明らかであって、2009年7月ないし2015年4月までの受け払い台帳の入庫数(出庫数)の合計は5,050個にのぼる。
(7)「納品の事実を証明する証明書」により使用の事実を証明したことについて
商品の取引の実情を示すものとして納品の事実を証明する証明書(乙第4号証の2、乙第6号証の2、乙第12号証の2)を提出したが、念のため、顧客の中から協力を依頼できる方々を選んで証明書の発行をお願いした。請求人は、例えば「プラセンEXゴールドコロイド」について、発売から5年経過するも、その納品受領者は僅か2名、納品個数は僅か4個であると主張しているが、仮に1回しかない商取引だとしても商標の使用の事実に変わりはなく、被請求人は、既に提出済の証拠により要証期間中の本件商標の使用の事実を十分に立証したとは考えるが、新たに乙第16号証の1ないし19として取引の記録を追加提出する。
(8)「プラセンドククー」及び「PLACEN Dr」が登録商標と社会通念上同一であること
本件商標「プラセンドクター/PLACEN DOCTOR」から生じる称呼は、「プラセンドククー」のみであり、特段の観念はない。このような二段書きの商標は、上段又は下段のみで使用されたとしても、社会通念上同一であることは明らかである。そして、乙第1号証の2及び乙第7号証の2に本件商標の片仮名部分「プラセンドククー」の使用があることは、請求人も認めた事実である。また、「PLACEN Dr」の「Dr」が英単語の「Doctor」にあたり「ドクター」と称呼される語であることは、日本人の平均的な英語力をもってすれば容易に理解できるところであり、「Dr」が「ドクター」と称呼されることを示す証拠は多数ある(乙第17号証の1ないし7)。

第4 当審の判断
1 被請求人が提出した乙各号証によれば、以下の事実が認められる。
(1)乙第13号証は、被請求人の代表取締役が審判長に宛てた平成27年5月12日付けの報告書であるところ、その項番の2には、「当社は、昭和56年に株式会社旭教育研究所を設立し、学習教材の販売業務をこの子会社に行わせていました。」と、また、項番の3には、「当社では、平成10年頃からは、教育図書の販売網を使って、プラセンタエキスを配合した化粧品を販売するようになりました。そして、この化粧品販売が軌道に乗ったため、子会社旭教育研究所の商号を現在の株式会社旭健康研究所に変更しています。なお、私は、・・・設立後一貫して株式会社旭図書と株式会社旭教育研究所の代表取締役に就任しています。」と記載されている。
また、同報告書には、旭健康研究所の平成23年9月1日から同24年8月31日まで、同24年9月1日から同25年8月31日まで、同25年9月1日から同26年8月31日までの3年度の「同族会社等の判定に関する明細書(写)」が添付されているところ、いずれの年度の明細書にも、「判定基準となる株主(社員)及び同族関係者」の欄には、旭図書の住所及び名称と「議決権の数」として「48,000」と、旭健康研究所の住所及び名称と「議決権の数」として「0」と記載されているとともに、「上位3順位の議決権の数」として「48,000」と、「議決権の数による判定」として「100%」と記載されている。
(2)乙第2号証の1は、「商標の使用に係る商品名」を「ゴールドコロイド(ジェル状美容液)」(以下、その商品を「本件使用商品1」という。)とする登録商標の使用説明書(2)である。
そして、乙第2号証の2は、本件使用商品1の商品の包装箱及び容器の正面の写真であるところ、包装箱及び容器の正面には、上部に「Placen Dr」の欧文字(以下「本件使用商標」という。)及び「EX100」の欧文字、下部に上部の文字より小さな「GOLD COLLOID」の欧文字及び「ゴールドコロイド」の片仮名が表示されており、乙第2号証の3は、本件使用商品1の包装箱及び容器の背面の写真であるところ、包装箱及び容器の背面には、上部に「プラセンEXゴールドコロイド」、「30g」及び「<ジェル状美容液>」の文字、下部に「発売元」として「旭健康研究所」と記載されているものであり、また、乙第2号証の4は、本件使用商品1の包装箱及び容器の底面の写真であるところ、包装箱の底面には、「HAZF」と記載されている。
さらに、乙第3号証の2は、旭図書からカムトラインセラピー宛の2013年(平成25年)3月1日付けの納品書(控)であるところ、右上部には旭図書の名称及び住所、左上部には「岡山県岡山市北区○○」の住所及び「カムトラインセラピー 様」の名称が記載され、下部の表における「品番・品名」の欄には「ゴールドコロイド」と記載されており、また、乙第4号証の2は、「カムトラインセラピー」の代表者から旭図書及び旭健康研究所宛の書面であるところ、「私は、貴社に注文した商品『プラセンドクター(Placen Dr EX100)』(ゴールドコロイド<ジェル状美容液>)30g入1個を2013年3月1日に納品を受けました。上記の事実に相違ないことを証明いたします。」と記載されている。
加えて、乙第5号証の2は、旭図書からヴェルティージュ宛の2014年(平成26年)7月20日付けの納品書(控)であるところ、右上部には旭図書の名称及び住所、左上部には「香川県観音寺市南町○○」の住所及び「ヴェルティージュ 様」の名称が記載され、下部の表における「品番・品名」の欄には「ゴールドコロイド」と記載されており、また、乙第6号証の2は、「ヴェルティージュ」の代表者から旭図書及び旭健康研究所宛の書面であるところ、「私は、貴社に注文した商品『プラセンドクター(Placen Dr EX100)』(ゴールドコロイド<ジェル状美容液>)30g入3個を2014年7月20日に納品を受けました。上記の事実に相違ないことを証明いたします。」と記載されている。
(3)乙第10号証の1は、「商標の使用に係る商品名」を「UVカットベース(化粧下地)」(以下、その商品を「本件使用商品2」という。)とする登録商標の使用説明書(10)である。
そして、乙第10号証の2は、本件使用商品2の包装箱及びチューブ容器の正面の写真であるところ、包装箱及びチューブ容器の正面には、上部に本件使用商標及び「EX100」の欧文字、下部に上部の文字より小さな「UV CUT BASE」の欧文字及び「UVカットベース」の文字が表示されており、乙第10号証の3は、本件使用商品2の包装箱及びチューブ容器の背面の写真であるところ、包装箱及びチューブ容器の背面には、上部に「プラセンEX」、「UVカットベース」、「<化粧下地>」及び「30g」の文字、下部に「発売元」として「旭健康研究所」と記載されているものであり、また、乙第10号証の4は、本件使用商品2の包装箱の底面及びチューブ容器の最下部の写真であるところ、商品の包装箱の底面及びチューブ容器の最下部には、「27G」と記載されている。
さらに、乙第11号証の2は、旭図書から中村宛の2014年(平成26年)3月28日付けの納品書(控)であるところ、右上部には旭図書の名称及び住所、左上部には「埼玉県行田市長野○○」の住所及び「中村○○ 様」の名称が記載され、下部の表における「品番・品名」の欄には「PlacenEX UVカットベース」と記載されており、また、乙第12号証の2は、「中村」から旭図書及び旭健康研究所宛の書面であるところ、「私は、貴社に注文した商品『プラセンドクター(Placen Dr)EX100』(Placen EX UVカットベース<化粧下地>)30g入5本を2014年3月28日に納品を受けました。上記の事実に相違ないことを証明いたします。」と記載されている。
(4)乙第16号証の1ないし19は、「FAX特別価格ご注文・資料請求用紙」、旭図書から顧客宛ての「納品書(控)」及びヤマトファイナンシャル株式会社から旭図書宛の「ご精算書」であるところ、そのうちの「納品書(控)」は、その日付が「2012年2月29日」から「2014年9月8日」の間であって、乙第3号証の2や乙第5号証の2と同様に、下部の表における「品番・品名」の欄には「ゴールドコロイド」と記載されているか、又は、乙第11号証の2と同様に、下部の表における「品番・品名」の欄には「PlacenEX UVカットベース」と記載されている。
2 上記1において認定した事実によれば、以下のとおり、認めることができる。
(1)上記1(1)によれば、旭健康研究所は、少なくとも、平成23年9月1日から同26年8月31日の間は、商標権者の旭図書と代表取締役を共通にする同社の100%の子会社であると認めることができるのであって、しかも、上記1(2)及び(3)によれば、包装に「発売元」として「旭健康研究所」と記載されている商品について、旭図書の名称による納品書を顧客に配布しているといえることを勘案するならば、商標権者である旭図書は、旭健康研究所に対して、本件商標の通常使用権について黙示の許諾を与えていたと認められる。
(2)上記1(2)によれば、包装箱及び容器の正面に本件使用商標が表示され、「発売元」として旭健康研究所が記載された本件使用商品1は、少なくとも、商標権者である旭図書が、平成25年3月1日に岡山県岡山市の「カムトラインセラピー」に、また、平成26年7月20日に香川県観音寺市の「ヴェルティージュ」に、譲渡又は引渡しを行ったことが認められる。
そして、平成25年3月1日と平成26年7月20日は、双方とも、要証期間内に当たるものである。
また、本件使用商品1である「ジェル状美容液」は、本件審判請求に係る指定商品中の「化粧品」の範ちゅうに含まれる商品である。
(3)上記1(3)によれば、包装箱及びチューブ容器の正面に本件使用商標が表示され、「発売元」として旭健康研究所が記載された本件使用商品2は、少なくとも、商標権者である旭図書が、平成26年3月28日に埼玉県行田市の「中村」に、譲渡又は引渡しを行ったことが認められる。
そして、平成26年3月28日は、要証期間内に当たるものである。
また、本件使用商品2である「化粧下地」は、本件審判請求に係る指定商品中の「化粧品」の範ちゅうに含まれる商品である。
(4)本件商標は、「プラセンドクター」の片仮名及び「PLACEN DOCTOR」の欧文字を2段に横書きしてなるところ、文字と文字間に間隔が空いていることから、「PLACEN」の語と「DOCTOR」の語からなるものと容易に認識、把握し得るものであり、その全体をもって「プラセンドクター」と称呼されるものといえる。
他方、本件使用商標は、「Placen Dr」の欧文字を横書きしてなるものであるところ、その構成中の「Dr」の文字部分が「Doctor」(ドクター)の語の略語として親しまれているものであるから、取引者、需要者をして、本件商標と同様に「プラセンドクター」と称呼され、本件商標と同様に「Placen」の語と「Doctor」の語からなるものとして認識、把握されるものといえる。
そうすると、本件商標と本件使用商標は、「PLACEN(Placen)」と「DOCTOR(Doctor)」の語からなると認識、把握される観念において異なるところがないものであって、「プラセンドクター」の同一の称呼を生じるものであるから、本件商標と本件使用商標とは、社会通念上同一の商標ということができる。
3 むすび
以上のとおりであるから、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者又は通常使用権者が本件審判請求に係る指定商品中の「化粧品」の範ちゅうに含まれる「ジェル状美容液」及び「化粧下地」について、本件商標と社会通念上同一の商標の使用をしていたことを証明したと認め得るところである。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すことができない。
よって、結論のとおり審決する。
審決日 2015-07-17 
出願番号 商願2007-19098(T2007-19098) 
審決分類 T 1 31・ 1- Y (X03)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴木 斎 
特許庁審判長 大森 健司
特許庁審判官 林 栄二
中束 としえ
登録日 2007-10-19 
登録番号 商標登録第5084105号(T5084105) 
商標の称呼 プラセンドクター、プラセン、ドクター 
代理人 特許業務法人山田特許事務所 
代理人 山下 賢二 
代理人 山下 綾 

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