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審決分類 審判 判定 その他 属さない(申立て成立) 039
管理番号 1304229 
判定請求番号 判定2015-600012 
総通号数 189 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標判定公報 
発行日 2015-09-25 
種別 判定 
判定請求日 2015-04-15 
確定日 2015-08-03 
事件の表示 上記当事者間の登録第3104821号商標の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 役務「再生可能エネルギーに関するコンサルティング」に使用するイ号標章は、登録第3104821号商標の商標権の効力の範囲に属しない。
理由 第1 本件商標
本件登録第3104821号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成4年6月11日に登録出願、第39類「電気の供給」を指定役務として、同7年12月26日に設定登録され、その後、同18年4月11日に商標権の存続期間の更新登録がされ、現に有効に存続しているものである。

第2 イ号標章
請求人が役務「再生可能エネルギーに関するコンサルティング」(以下「請求人使用役務」という。)について使用する標章(以下「イ号標章」という。)は、別掲2のとおりの構成からなるものである。

第3 請求人の主張
請求人は、結論同旨の判定を求め、その理由を要旨以下のとおり述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第16号証を提出した。
1 判定請求の必要性
請求人は、主として請求人使用役務に使用するイ号標章の使用者であって、被請求人から、イ号標章を使用していること(甲3)について、平成27年3月5日付けでイ号標章の使用中止、さらに請求人商号の変更まで要求する、第二照会書を受領した(甲4)。
そこで、請求人は、イ号標章の使用につき本件商標に係る商標権の効力範囲に属しないことを確認すべく、本件判定を求めるものである。
2 イ号標章の説明
請求人は、再生可能エネルギーの組合せによる「産業創出」と新たな都市・コミュニティーの創生を目指して平成26年7月4日に設立し、当初、イ号標章の図形に欧文字「energia」を組合わせた標章を使用していた。
ところが、請求人は、平成26年12月11日付けで上記標章の使用が本件商標権を侵害する旨の照会書を受領し(甲5)、被請求人と無用な法的紛争を避けるため、欧文字「energia」に代え会社名の略称である片仮名「エナジア」をあてたイ号標章に変更し、平成27年1月26日から使用を開始し、現在に至っている。
3 イ号標章が本件商標権の効力の範囲に属しないとする説明
(1)本件商標について
本件商標は、語頭「E」を大きく表示し、これに欧文字「nerGia」を左から右に横書きした欧文字と、該「E」から2本の帯を捻じりながら下方に延伸させ、その帯の交差部分を中心として円弧状の輪を配した図形とからなるものである。
(2)イ号標章について
これに対し、イ号標章は、片仮名「エナジア」と、その左側に5つの色違いで同形の四角形を各々隣接するもの同士が互いに一部重なり合うよう略「く」の字状に配し、且つこれら四角形上に全体として筆書き風に右向き円弧状の略「E」を表してなる図形とからなるものである。
(3)商標の類否判断について
本件商標に関し、被請求人は、平成19年11月9日に防護標章登録出願し、同23年2月25日に第3104821号防護第1号として設定登録を受け(甲6)、その審査及び審判の中で本件商標に係る取引の実情を多数の証拠により明らかにしている。
そこで、本件商標の類否判断においても、上記防護標章登録出願に係る審査、審判等を参酌し、本件商標に係る取引実情を明らかにした上で、商標の類否を決すべきである。
ア 取引の実情について
本件商標の指定役務「電気の供給」に係る分野(以下「電気の供給分野」という。)において、被請求人は、平成3年1月にCI(コーポレート・アイデンティティー)宣言し、キーコンセプトを「エネルギア」と決定して以降、現在に至るまで、20年以上も本件商標を「エネルギア」とのみ称呼し、他の称呼で使用した事実は一切ない。
例えば、被請求人作成の「2003エネルギア環境報告書ダイジェスト版」(甲7)、「会社案内・CRSの取り組み2014-2015」(甲8)、2015年2月発行「エネルギアグループ知的財産報告書」の「商標への取り組み」(甲9)等において、被請求人はキーコンセプトとして本件商標の欧文字「EnerGia」と同じ綴りの「ENERGIA」(全て大文字表示)の上段に、その読みを示すよう小さく片仮名「エネルギア」を併記し、該欧文字が「エネルギア」と称呼するものであることを需要者、取引者に知らしめている。
もとより被請求人が本件商標を「エネルギア」とのみ称呼している事実は、上記防護標章登録出願の審査、審判における被請求人の主張及び証拠から裏付けることができる(甲10ないし甲12)。
すなわち、特許庁審判官が被請求人の主張及び証拠より、電気の供給分野の需要者、取引者が本件商標から被請求人の出所を認識すると判断したのは、結局、該分野の需要者等が本件商標を「エネルギア」と称呼し、この称呼から「キーコンセプト」を想起した上で、被請求人を認識すると考えたからに他ならないのである。
してみれば、電気の供給分野では、需要者、取引者は本件商標を「エネルギア」とのみ称呼しているのが取引の実情と言えるのである。
イ 外観について
本件商標は、図形と文字からなる結合商標であり、欧文字の語頭「E」を起点として2本の帯が下方に捻じりながら延伸したものであるのに対し、イ号標章の図形は5つの四角形を略くの字状に配したもので、本件商標の2本の帯を基調としたものとは全く異なる。また、文字についても両標章は欧文字か片仮名かの違いがある。
したがって、本件商標とイ号標章とは、外観上、異なるものであることは明らかである。
ウ 観念について
本件商標の構成中、「EnerGia」の欧文字がスペイン語(甲13)、ポルトガル語(甲14)、イタリア語(甲15)、ポーランド語(甲16)等のヨーロッパの主要な言語で「エネルギー」を意味する語であるので、全体として本件商標は「エネルギー」の観念をもつものである。
これに対し、イ号標章の構成中、「エナジア」の片仮名は特定の意味をもたないため、全体としてイ号標章は造語である。
したがって、本件商標とイ号標章は、観念上、全く異なるものである。
エ 称呼について
本件商標は、上記したとおり、この種電気の供給分野の取引実情を参酌すれば、その構成中、「EnerGia」の欧文字から「エネルギア」の称呼のみが生じると考えるのが相当である。
一方、イ号標章は、その構成中、「エナジア」の片仮名に照応して「エナジア」の称呼が生じるものである。
してみれば、本件商標は「エネルギア」と5音、イ号標章は「エナジア」と4音からなり、両者は、構成音数に差異があり、しかも共通音は語頭と末尾の2音しかなく、それぞれの称呼を一連に称呼した場合において、称呼全体の語調、語感が相違したものである。
したがって、本件商標とイ号標章は称呼上、異なるものである。
オ 小括
以上のとおり、本件商標とイ号標章とは、外観、観念及び称呼の何れにおいても異なるものである。
してみれば、本件商標とイ号標章とは、その役務の類否を検討するまでもなく、類似するものではないことは明らかである。
4 結び
以上、本件商標とイ号標章とは非類似であるから、請求人がその役務「再生可能エネルギーに関するコンサルティング」にイ号標章を使用しても、本件商標権の効力に属さないものである。
よって、請求の趣旨のとおりの判定を求める。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、請求人が請求人使用役務に使用するイ号標章は、本件商標の商標権の効力の範囲に属する、との判定を求め、その理由を要旨以下のとおり述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第18号証を提出した。
1 請求人主張の「判定請求の必要性」の検討
請求人は、イ号標章と同一又は類似する商標を、請求人使用役務と同一又は類似する役務を含む役務を指定して商標出願し、現在も特許庁に係属しているものである。
それにも拘らず、上述の如く本判定請求の対象を限定し、もはや判定請求書の補正による対象の拡張や変更もできない以上、紛争の一回的実効的解決の要請のもと本判定請求を実効あらしめるためには、請求人は、出願商標を秘匿するのではなく、出願商標を取り下げ、または、出願商標から請求人使用役務以外の一切の指定役務を削除しなければ、請求人が主張するが如き本判定請求の必要性を何ら見いだせないところである。
2 請求人主張の「イ号標章の説明」の検討
請求人は、平成26年12月11日付け被請求人による第一照会書(甲5)の受領後に、「欧文字『energia』に代え会社名の略称である片仮名文字『エナジア』をあてたイ号標章に変更し、平成27年1月26日から使用を開始し、現在に至っている。」と述べ、イ号標章の使用開始時期と使用継続を述べているところである。
ところが、本判定請求において、イ号標章の使用開始時期は何ら証明されていないばかりか、イ号標章の使用についても何ら証明されていないところであり、イ号標章の使用の実態は不明であって、イ号標章に商標法で保護する業務上の信用の蓄積は限りなく少ないと言わざるを得ないところである。
3 請求人主張の「イ号標章が本件商標権の効力範囲に属しないとする説明」の検討
(1)考慮される取引状況の再考
氷山・しょうざん事件最高裁判決及びこれを引いた小僧寿し事件最高裁判決で指摘する商標の類否判断において考慮すべき取引状況とは、「その指定商品全般についての一般的、恒常的なそれを指すものであって、単に該商標が現在使用されている商品についてのみの特殊的、限定的なそれを指すものではないことは明らかであり、所論引用の判例(氷山・しょうざん事件最高裁判決)もこれを前提とするものと解される。」(最高裁判所昭和47年(行ツ)第33号昭和49年4月25日第一小法廷判決亀甲紋章事件最高裁判決)ところである。
かかる亀甲紋章事件最高裁判決では、亀甲紋章の出願商標も引用商標もある程度有名な商標であったため両者を間違うはずがないとの主張の事実につき、特殊的、限定的な取引状況にすぎず商標の類否判断において考慮すべき取引状況ではないとして、主張の事実を排除したものである。
請求人が引く氷山・しょうざん事件最高裁判決及び小僧寿し事件最高裁判決も、亀甲紋章事件最高裁判決で述べるように、商標の類否判断において一般的、恒常的な取引状況を考慮しなければならないのは言うまでもない。
本件商標は、被請求人により現実に使用されている商標であって、請求人が指摘するように、被請求人がCI(コーポレート・アイデンティティー)まで定めて本件商標の使用統一に努めてきたばかりでなく、「各種の雑誌、新聞、テレビ、インターネット等の媒体を通じ、宣伝広告に努めてきた結果、請求人の業務に係る役務を表示するものとして、電気の供給区域内の取引者、需要者間は勿論のこと、供給区域外の取引者、需要者間にも広く認識されているものである」(甲12)から、商標の使用者である被請求人が、特定の1つの「エネルギア」の称呼をもって取引者、需要者に訴求を図るのが当然であって、被請求人がそのような使用統一に努めず「エネルギア」以外の他の自然的称呼をもって本件商標を使用した事実の如き、異例な事実が一切ないという特殊的、限定的な取引状況を考慮すべきではない。
一般に、複数の自然的称呼を生じる商標の場合、それが商標の使用者により現実に使用されるときには、必ず特定の1つの称呼をもって使用されるのが当然であって、商標の使用者が、ある時期や取引者、需要者に対して「○○○○」の称呼を使用し、他の時期や取引者、需要者に対して「△△△△」の他の称呼をもって使用するが如きは、極めて異例な事実と言うべきである。
商標の類否判断において考慮すべき取引状況として、商標の使用者による特定の1つの称呼の現実の使用を理由に、他に生ずる自然的称呼を考慮しないというのであれば、現実に使用されることのない不使用商標の場合、複数の自然的称呼を考慮して類否判断するのに対し、現実に使用される商標や周知著名商標の場合、他に生ずる自然的称呼を考慮しないこととなり、現実に使用されている商標や周知著名商標の類似範囲を一方的に制限する解釈となって、一般的出所の混同を防止し、現実の使用に係る商標を保護せんとする商標法の趣旨に反することは明らかである。
そのような解釈が不合理であるから、亀甲紋章事件最高裁判決では、特定の1つの称呼の使用の如き、特殊的、限定的な取引状況を考慮すべきではなく、商標の類否判断において一般的、恒常的な取引状況を考慮しなければならないと述べているところである。
このことは、商標法第4条第1項第11号の商標審査基準において、「(イ)例えば、『紅梅』のような文字については、『ベニウメ』と振り仮名した場合であっても、なお『コウバイ』の自然の称呼をも生ずるものとする。」として類否判断するとしているのは、たとえ振り仮名を付し「ベニウメ」の特定の1つの称呼を使用するにしても、「コウバイ」の称呼をも生ずるとして類否判断するのは、「紅梅」の漢文字より「コウバイ」の自然的称呼を生ずる場合も少なくないという複数の自然的称呼を生じる商標の一般的、恒常的な取引状況を考慮している証左である。
同様に、「(ロ)例えば、『白梅』における『ハクバイ』及び『シラウメ』のように2以上の自然の称呼を有する文字商標は、その一方を振り仮名として付した場合であっても、他の一方の自然の称呼をも生ずるものとする。」として類否判断するとしているのも、振り仮名した場合であればその振り仮名の特定の1つの称呼を使用するにしても、複数の自然的称呼を生じる商標の一般的、恒常的な取引状況を考慮し、他に生ずる自然的称呼を考慮している証左に他ならないところである。
このように、取引者、需要者に対し、特定の1つの称呼の訴求を図っていたとしても、そのような特殊的、限定的な取引状況を考慮すべきではなく、複数の自然的称呼を生じる商標の場合、他に生ずる自然的称呼を考慮すべきとするのが、商標の類否判断において考慮すべき一般的、恒常的な取引状況に他ならないところである。
これを本件商標について見れば、取引者、需要者に対し、被請求人が本件商標の「EnerGia」の欧文字より特定の1つの「エネルギア」の称呼の訴求を図っていたとしても、なお「エナジア」と自然に称呼する取引者、需要者も少なくないことから、他に生ずる「エナジア」の称呼を考慮すべきとするのが、商標の類否判断において考慮すべき一般的、恒常的な取引状況に他ならず、上述の各最高裁判決や商標審査基準も、これに合致するものである。また同様に、請求人の主張する甲第7号証ないし甲第11号証に記載の事実をもって、本件商標が「商標を『エネルギア』とのみ称呼し、他の称呼で使用した事実は一切ない。」として防護標章登録を受けたとしてもなお、本件商標より「エネルギア」の自然的称呼の他に「エナジア」の自然的称呼は勿論、さらに「エネルジア」「エナーギア」「エナージア」の称呼を生ずる余地があるとして、これらの称呼を「(651)【称呼(参考情報)】」として、商標公報に記載していることも、これに合致するものである(甲6)。
(2)外観、称呼及び観念の再考
ア 外観について
本件商標は、左に欧文字「E」を捻りながら延伸させ延伸の中間部に円弧状の輪を配した図形を配し、右に「EnerGia」の欧文字を配した構成からなるのに対し、イ号標章は、左に各色5個の四角形を弧状にずらし重ねた図形を配し、右に「エナジア」の片仮名を配した構成からなるものである。
本件商標とイ号標章は、左の図形と右の文字に、外形的にみて、全体が不可分一体となって1個の統一的な外観、称呼や観念を形成しているとは特に認められないことから、常に一体として観察されなければならないものではなく、図形と文字の構成部分を分離して観察することは何ら妨げられないと言うべきである。
このため、本件商標もイ号標章も右の文字部分を要部として抽出し、商標の類否判断ができることは明らかである。
しかして、本件商標とイ号標章は、右の要部において、「EnerGia」の欧文字と「エナジア」の片仮名の外観上の差異を有するが、以下においては、まず、文字部分より生ずる称呼と観念に関し本件商標のそれらを検討し、次に、本件商標のそれらとイ号標章のそれらを対比して検討する。
イ 称呼について
本件商標の「EnerGia」の欧文字は、一般的な辞書等に掲載されていない特定の意味合いを有しない造語と考えられることから、この欧文字よりいかなる自然的称呼を生じるかは定かではない。
この点、請求人は、本件商標の欧文字と綴りを同じくする「energia」の欧文字につき、スペイン語、ポルトガル語、イタリア語、ポーランド語では、「エネルギー」の意味合いを有すると主張しているが、我が国の需要者、取引者が直ちにこれら外国語と認識し理解できるのであれば、それぞれの理解に相応し、スペイン語と理解するのであれば「エネルシア」と同語の発音で称呼し(甲13)、ポルトガル語と理解するのであれば「エネルジア」と同語の発音で称呼し(甲14)、イタリア語と理解するのであれば「エネルージア」と同語の発音で称呼し(甲15)、ポーランド語と理解するのであれば「エネルギヤ」と同語の発音で称呼するところである(甲16)。
このように、請求人の主張する我が国の需要者、取引者の外国語の認識によれば、本件商標の「EnerGia」の欧文字より、「エネルシア」、「エネルジア」、「エネルージア」及び「エネルギヤ」のそれぞれの外国語に相応する自然的称呼を生ずるところである。
本件商標の欧文字は「energia」の綴りであるが、この欧文字につき、我が国の需要者、取引者が、なじみのないスペイン語、ポルトガル語、イタリア語、ポーランド語と直ちに理解するよりは、特定の意味合いを有しない造語と理解し、この欧文字の称呼に際しては、綴りが異なるも近似する外来語「energie」(エネルギー)になぞらえて、ドイツ語風に「エネルギア」と自然に称呼する他は、綴りが異なるも近似する英語「energy」(エナジー)になぞらえて、英語風に「エナジア」と自然に称呼する場合も決して少なくないと言うべきである。
そして、英語「energy」は、初等中等教育で習う平易な英語であって(乙8)、我が国における英語の普及度を考慮すると、本件商標の「EnerGia」の欧文字を英語「energy」になぞらえて英語風に「エナジア」と自然に称呼する取引者、需要者はむしろ多いと言うべきである。
このように、本件商標の如く、複数の自然的称呼を生じる商標の場合、英語の普及度を考慮し、他に生ずる「エナジア」の称呼も考慮すべきとするのが、商標の類否判断において考慮すべき一般的、恒常的な取引状況に他ならず、上述の各最高裁判決や商標審査基準もそれに合致するものである。
そして、何より、欧文字「energia」の綴りより、「エナジア」の自然的称呼も生じることを請求人が否定できないことは、乙第5号証の請求人使用商標の如く、上段に「energia」の欧文字を配し、下段の右下に小さく読み仮名の「エナジア」の片仮名を配した請求人使用商標をもって、「エナジア」の片仮名を標準文字にて書してなる使用の事実からも明らかである。
また、欧文字「energia」の綴りに読み仮名として「エナジア」の片仮名を併記して商標出願し商標登録を受けている商標採択例もまた(乙9ないし乙13)、被請求人以外の者によって「energia」の欧文字の綴りを「エナジア」の自然的称呼をもって使用されている取引実情であって、欧文字「energia」の綴りより「エナジア」の自然的称呼も生じる証左に他ならないところである。
さらに、欧文字「energia」の綴りに読み仮名として「エナジア」の片仮名を併記して使用している一般使用例もまた(乙14、乙15)、被請求人以外の者によって「energia」の欧文字の綴りを「エナジア」の自然的称呼をもって使用されている取引実情であって、欧文字「energia」の綴りより「エナジア」の自然的称呼も生じる証左に他ならないところである。
以上のように、英語の普及度(乙8)の他、被請求人以外の者によって「energia」の欧文字の綴りの使用実態(乙5、乙9ないし乙15)こそが、一般的、恒常的な取引状況であって、そのような商標の類否判断において考慮すべき取引状況を考慮すると、本件商標より、「エネルギア」の自然的称呼の他、「エナジア」の自然的称呼も生ずる以上、他に生ずる「エナジア」の称呼も考慮すべきとするのが、商標の類否判断において考慮すべき一般的、恒常的な取引状況に他ならず、上述の各最高裁判決や商標審査基準もそれに合致するものである。
ウ 観念について
本件商標の「EnerGia」の欧文字は、一般的な辞書等に掲載されていない特定の意味合いを有しない造語と考えられることから、この欧文字より具体的に如何なる意味合いが生じるか定かではない。
この点、請求人は、本件商標の欧文字と綴りを同じくする「energia」の欧文字につき、スペイン語、ポルトガル語、イタリア語、ポーランド語のヨーロッパの主要な言語で「エネルギー」の意味合いを有する語であると主張しているが、これら外国語がヨーロッパの主要な言語である理由は何ら明らかにされていない。
むしろ、この欧文字を我が国の需要者、取引者が、なじみのないスペイン語、ポルトガル語、イタリア語、ポーランド語と直ちに理解するよりは、特定の意味合いを有しない造語と理解し、外来語「energie」や英語「energy」になぞらえて、せいぜい「エネルギー」の意味合いをなんとなく暗示させるに止まり、需要者、取引者が具体的な意味合いを想起することはないと言うべきである。
(3)外観、称呼及び観念の検討(小括)
本件商標とイ号標章の右の文字部分は、ともに造語よりなるものであって、観念上比較することのできないものの、本件商標とイ号標章は、「エナジア」の共通の称呼をもって商取引に資されるおそれのある全体として類似する商標であることは明らかである。
(4)役務の類否の検討
請求人が、イ号標章を使用していると称する請求人使用役務に関し、それを証する証拠が、請求人提出の甲第3号証の他、例えば、イ号標章が表示された会社案内、イ号標章が表示されたコンサルティングの調査報告書などの取引書類、イ号標章が表示された事業設備の写真などが、請求人より何ら提出されておらず、請求人使用役務の内容及び範囲が全く判然としない以上、この役務の類否の判断に当たって考慮すべき、役務の提供の手段、目的又は場所、提供に関連する物品、需要者の範囲なども判然としないところである。
請求人の、定款記載の会社の目的及び「事業内容」(乙3、甲3)の記載から合理的に解釈すると、請求人使用役務は、「再生可能エネルギーによる電気の供給に関するコンサルティング」の役務を意図したものと解されるところである。
まず、請求人の「再生可能エネルギーによる電気の供給に関するコンサルティング」の役務は、助言し指導する役務であり、再生可能エネルギーにより発生させた電気の供給を受ける者に対し、独立した役務として電気の供給に関する助言や指導を行う役務である。
これに対し、本件商標の指定役務「電気の供給」の役務は、発生させた電気を供給する役務であり、電気の供給を受ける者に対し、独立した役務として電気を供給する他、必要に応じ付随的役務として電気の供給に関する助言や指導を行うことを包含する役務である。
このように、請求人の役務と本件商標の指定役務は、電気の供給を受ける者を需要者とする役務として共通し、再生可能エネルギーにより発生させた電気に限定される点、また、電気の供給に関する助言や指導を独立役務又は付随的役務として行うかの点において差異を有するところである。
ここで、取引の実情を考慮すると、被請求人は、永年に亘り、発生させた電気を取引者ないし需要者に供給してきているところ(甲9ないし甲12、乙17、乙18)、その電気には、再生可能エネルギーである水力発電及び太陽光発電により発電されたものが含まれるところあって(乙18)、また、被請求人は、個人の需要者に対しては、「上手な電気の使い方の提案」を行い、法人の需要者に対しては「エネルギーの効率的利用拡大に向けた提案」という助言や指導を行っているところである(乙17)。
このように、「再生可能エネルギーによる電気の供給に関するコンサルティング」の役務と「電気の供給」の役務は、被請求人により一体として提供されている役務であるから、両役務の取引者ないし需要者に同一の営業主の提供に係る役務と誤認されるおそれがあることは明らかである。
特に、本件商標が、「その指定役務『電気の供給』について、永年使用され、その間、各種の雑誌、新聞、テレビ、インターネット等の媒体を通じ、宣伝広告に努めてきた結果、請求人の業務に係る役務を表示するものとして電気の供給区域内の取引者、需要者間は勿論のこと、供給区域外の取引者、需要者間にも広く認識されている」こと(甲12)を考慮すると、請求人がイ号標章を請求人使用役務ないし「再生可能エネルギーによる電気の供給に関するコンサルティング」に使用すると、本件商標とイ号標章が類似することとも相まって、取引者ないし需要者に被請求人や被請求人のグループ企業と同一の営業主の提供に係る役務と誤認する場合も少なくないと言うべきである。
しかして、請求人の請求人使用役務と本件商標の指定役務「電気の供給」が類似する役務であることは明らかである。
4 総括
以上総括するに、本件商標とイ号標章の要部の右の文字部分は、「エナジア」の共通の称呼をもって商取引に資されるおそれのある全体として類似する商標であって、イ号標章が、本件商標の「電気の供給」の指定役務と類似の役務に使用するものであるから、請求人が請求人使用役務に使用するイ号標章は、本件商標権の効力範囲に属することは明らかである。

第5 当審の判断
1 本件商標について
本件商標は、別掲1のとおり、「EnerGia」の欧文字(「E」の文字のみ他の文字より大きく表されている)を横書きに書し、「E」の文字の左側と下側から濃淡の相違する2本の帯状の線が捻られながら左下方に延びるように表され、その帯状の線の中間に円弧の図形を配した構成からなるところ、語頭の「E」の文字は、その左下方から延びた図形と一体のものとして看取されるものであり、文字部分と図形部分とは密接に関連しているものといえ、本件商標は構成全体で把握、認識されるものといえる。
そして、本件商標からは、その構成文字に相応して、「エネルギア」及び「エナジア」の称呼が生じるものということができる。
また、観念については、本件商標の綴りが、スペイン語、ポルトガル語、イタリア語及びポーランド語の辞書に載録(甲13ないし16)されているものであったとしても、我が国に馴染みのない言語であることから、特定の意味合いを生じない造語と理解され、特定の観念を生じないものといえるが、本件商標は、指定役務「電力の供給」との関係においては、被請求人の業務に係る役務を表示するものとして、著名な商標であるから、「中国電力株式会社の提供する電力の供給」としての観念を生じるものといえる。
2 イ号標章について
イ号標章は、請求人の提出に係る甲第3号証に示された請求人のウェブサイトからは、「再生可能エネルギーに関する発電・発熱・管理システムにおよび再生可能エネルギー機器の開発・製造・販売ならびにコンサルタント業務」等の事業内容の広告に付された標章であって、別掲2のとおり、色の違う、角の丸い、5個の四角形を「く」の時に配置し、その右方に、「エナジア」の片仮名を配した構成からなるところ、図形部分と文字部分とを、常に一体として、把握、看取される事情もないことから、各構成部分が、自他役務の識別標識として機能を果たすものといえる。
そうとすると、イ号標章からは、「エナジア」の文字に相応して、「エナジア」の称呼が生じ、該文字は、辞書等に載録のない語であるから特定の意味を有しない造語といえるものであり、特定の観念を生じるものではない。
3 本件商標とイ号標章との類否について
本件商標は、別掲1のとおりの構成からなるのに対し、イ号標章は、別掲2のとおりの構成からなるものであるから、構成全体の外観において、明確に区別できるものである。
次に、称呼についてみるに、本件商標とイ号標章とは、いずれも「エナジア」の称呼を共通にする場合があるが、本件商標から生じる「エネルギア」の称呼とイ号標章から生じる「エナジア」の称呼とは、その音数及び音構成を明らかに異にするものであるから、明確に聴別できるものである。
さらに、本件商標からは、その指定役務「電力の供給」との関係において、「中国電力株式会社の提供する電力の供給」の観念を生じるのに対し、イ号標章からは、観念が生じないものであるから、観念上、比較することができず、類似するとはいえないものである。
そして、イ号標章を使用する請求人役務中「再生可能エネルギーに関するコンサルティング」は、第39類「再生可能エネルギーによる電気の供給に関するコンサルティング」を含む役務といえるものであるから、本件商標の指定役務「電気の供給」と類似の役務である。
以上よりすると、本件商標の指定役務と請求人の使用役務である「再生可能エネルギーに関するコンサルティング」とが類似する役務であるとしても、本件商標とイ号標章とは、「エナジア」の称呼が同一である場合があるものの、外観上明確に相違するものであること、観念においても類似するとはいえないものであるから、本件商標とイ号標章は、相紛れることのない非類似の商標といえる。
また、本件商標から「エネルギア」の称呼が生じるときは、イ号標章の「エナジア」の称呼とは明確に区別できるものであるから、本件商標とイ号標章とは、称呼、外観及び観念のいずれにおいても相紛れることのない非類似の商標といえる。
4 まとめ
したがって、本件商標とイ号標章とは、類似する商標ということはできないから、役務「再生可能エネルギーに関するコンサルティング」に使用するイ号標章は、本件商標の商標権の効力の範囲に属しないものである。
よって、結論のとおり判定する。
別掲 別掲
1 本件商標(登録第3104821号)


2 イ号標章(色彩については、甲第3号証参照。)

判定日 2015-07-24 
出願番号 商願平4-124287 
審決分類 T 1 2・ 9- ZA (039)
最終処分 成立 
前審関与審査官 前山 るり子 
特許庁審判長 金子 尚人
特許庁審判官 大井手 正雄
田中 亨子
登録日 1995-12-26 
登録番号 商標登録第3104821号(T3104821) 
商標の称呼 エネルギア 
代理人 小椋 崇吉 
代理人 大竹 正悟 
代理人 原田 雅章 
代理人 金沢 彩子 
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