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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W44 審判 全部申立て 登録を維持 W44 審判 全部申立て 登録を維持 W44 審判 全部申立て 登録を維持 W44 審判 全部申立て 登録を維持 W44 |
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管理番号 | 1304204 |
異議申立番号 | 異議2015-900073 |
総通号数 | 189 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2015-09-25 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2015-02-27 |
確定日 | 2015-07-24 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第5724169号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第5724169号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第5724169号商標(以下「本件商標」という。)は,「くれないケアセンター」の文字を標準文字で表してなり,平成26年9月5日に登録出願,第44類「介護,介護に関するコンサルティング,介護に関する指導,介護に関する情報の提供,介護に関する相談,介護に関する取次ぎ,介護用医療器具の貸与」を指定役務として,同年11月7日に登録査定,同年12月5日に設定登録されたものである。 第2 引用商標 登録異議申立人(以下「申立人」という。)の引用する登録第5287080号商標(以下「引用商標」という。)は,「くれない」の平仮名を標準文字で表してなり,平成21年7月8日に登録出願,第44類「高齢者及び障がい者の養護・介護施設の提供,高齢者及び障がい者の養護又は介護」を指定役務として,同年12月11日に設定登録され,現に有効に存続しているものである。 第3 登録異議の申立ての理由 1 本件商標について 本件商標は,「くれない」と「ケアセンター」を結合し,「くれないケアセンター」の文字を標準文字で表してなる。そして,「くれない」が紅色などを意味する「紅」の読み仮名として,また,「ケアセンター」が高齢者などに対する治療やリハビリを行うための施設として理解される。このうち,後者の「ケアセンター」については,一般的な高齢者のデイケアを初めとして,幼児や病弱者,障害者への看護・介護に関する役務全般に広く使用されている事実が見受けられ,介護に関する指定役務との関係においては単なる役務の提供場所を表しているにすぎず,役務の出所識別機能は認めらない(甲2,甲3)。 したがって,本件商標は,構成前半の「くれない」が役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものであり,この部分から生じる称呼及び観念をもって取引に供されるものである。 2 引用商標の著名性について (1)申立人事業の内容・規模について 申立人は,平成8年7月7日から現在に至るまでの間,18年間以上にわたって大阪市内で特別養護老人ホームを営んできた。その事業内容は多岐にわたり,入所者への介護だけでなく,通所者への介護,高齢者への在宅介護,身体障害者のデイサービスに及ぶまで,総合的な介護福祉事業を展開している(甲4)。 また,入居者は開所当時から常時ほぼ満員の状態が続いており,延べ利用者数は27,387人,これに短期入所者も合わせると,30,853人を数える。平均利用者数は,82人の定員に対して75.03人,短期入所の利用者についても,10人の定員に対して9.50人である(甲5の1)。これに応じて,例年の介護保険収入は4億円程度にまで上っている(甲5の2)。 (2)引用商標について 申立人は開所当時から現在に至るまで引用商標を継続的に使用し続けてきた。ウェブサイトやパンフレットでの使用に加え(甲4,甲6),平成10年以降は毎年二回,1月と9月に複数の有名紙において折り込み広告も行っている。具体的には,大阪市東住吉区全域,並びに,同市阿倍野区及び同市平野区の一部地域に配布される朝日新聞,毎日新聞,産経新聞,読売新聞に甲第7号証に示すような定期刊行物を折り込んでいる。また,本刊行物は入居者の家族や介護関係者への送付・配布も行っており,直近の「平成27年1月号」を例にとると,総発行部数は112,100部,その費用として808,306円を支出している(甲8)。 さらに,申立人は様々な情報誌や会報などで積極的な宣伝活動を行ってきた。たとえば,平成12年から欠かさず「NTTタウンページ(大阪市南部版)」で引用商標を目立たせて表示しているし(甲9の1),平成18年から隔年で大阪市発行の情報誌「福祉・医療マップ」に,平成21・22年度版から毎号で「くらしの便利帳」にも広告を掲載している(甲9の2,3)。また,平成18年から隔年で申立人所在の地域マップにも広告を掲載している(甲9の4)。その他,申立人施設の設立五周年,十周年の記念事業として,講演会やイベントなど実施も行ってきた(甲9の5,6)。 また,申立人の経営する施設には,世界最高齢の人物である大川ミサヲ氏が入居している。これに伴い,引用商標は多数のメディアで頻繁に取り上げられている(甲10)。 (3)小括 以上より,申立人の長年にわたる大規模かつ多角的な福祉事業経営に加え,多方面における引用商標の宣伝活動,また,数多くのメディア取材における引用商標の表示の結果,引用商標は福祉業界において非常に有名で目立った存在となっている。このため,本件商標の出願時及び審査時には,少なくとも大阪府を中心とする隣接県の範囲において,引用商標が需要者の間で周知となっていたことは明らかである。 3 商標法第4条第1項第10号の該当性について 上記2のとおり,引用商標は,本件商標の出願時及び審査時において需要者の間で広く知られていた。そして,本件商標は「くれない」を要部とするものであり,引用商標に類似していること,また,本件商標が引用商標と同じ介護関係の役務に使用されるものである。 したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第10号に該当する。 4 商標法第4条第1項第15号の該当性について 前記2のとおり,引用商標は開所当初より大々的かつ継続的に使用されてきた。本件商標は,「くれない」を要部とするものであり,引用商標の「くれない」と外観,称呼及び観念のいずれにおいても紛らわしく,両商標は酷似している。かかる状況において,本件商標がその指定役務に使用された場合には,申立人が当該役務の出所であると需要者が混同することは明白である。 仮に,直接的な混同のおそれ(狭義の混同)がないと判断されるとしても,引用商標は介護福祉業界において名が知れていることから,本件商標がその指定役務に使用された場合には,少なくとも申立人との間に緊密な営業上の関係を持つか,あるいは,申立人が属するめぐむ福祉会グループの業務に係る役務であると誤信される事態は避けられず,ひいては,需要者の利益を損なうこととなる。 さらには,申立人が長年にわたり大切に育ててきた引用商標に化体する業務上の信用が希釈されるものであって,このような本件商標の登録は決して認められるべきものではない。 この点,本件商標が「くれない+(地域名)」を上段,「ケアセンター」を下段とする二段書きの態様で,あるいは,「くれない」を上段,地域名を中段,「ケアセンター」を下段とする三段書きの態様で現に使用されており(甲12),「くれない」の文字部分を際立たせていることからも,引用商標との混同を防止する必要がある。 以上より,本件商標と引用商標とは全体として似通った印象を与えるものであり,需要者が出所を混同するほどに相紛らわしいことは明らかである。 また,実際に出所混同を来し,書類が申立人のところへ誤送信された事実もあることから,本件商標は紛れもなく「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」に該当する。 したがって,本件商標は引用商標と類似の関係にあり,現実に使用される場面において,需要者に混同を生じさせるおそれがあるので,商標法第4条第1項第15号に該当する。 5 商標法第4条第1項第11号の該当性について 申立人の保有する引用商標(甲13)は,「くれない」を標準文字により表してなり,「紅色」などの意味合いを看取させるものである。本件商標は,その構成中,指定役務との関係において,後半の「ケアセンター」が役務の提供場所の表示に該当し,前半の「くれない」が出所識別標識として認識される。つまり,本件商標は「クレナイ」と称呼され,「紅色」などの意味合いを看取させるものであって,明らかに引用商標と類似する(甲14)。この点,本件商標が一連一体として理解,認識されることはない。 また,本件商標にかかる指定役務中の「介護,介護に関するコンサルティング,介護に関する指導,介護に関する情報の提供,介護に関する相談,介護に関する取次ぎ」は,引用商標の指定役務「高齢者及び障がい者の養護・介護施設の提供,高齢者及び障がい者の養護又は介護」と抵触している。 6 むすび 以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第10号,第11号及び第15号に違反してされたものであるから,取り消されるべきである。 第4 当審の判断 1 引用商標の周知性について (1)申立人の提出した証拠及びその主張について ア 申立人は,平成8年7月7日に特別養護老人ホームの施設を大阪市東住吉区に設立し,その施設名を「特別養護老人ホームくれない」とした。定員は,特別養護老人ホーム80名,短期入所事業12名,高齢者デイサービス15名及び身体障害者デイサービス15名である。事業概要は,指定介護老人福祉施設サービス,指定短期入所生活保護(ショートステイ),指定通所介護(高齢者デイサービス・身体障害者デイサービス)及び高齢者在宅介護支援相談などである。施設の建物上部には「特養 くれない」の表示がされている(甲6)。 イ ウェブサイト及びパンフレットについて 甲第4号証は,申立人のウェブサイトであり,これには,「くれない」の文字が表示されている。 甲第6号証は,申立人のパンフレット(平成8年7月,平成11年4月,平成17年4月等)であり,これには,「くれない」の文字が表示されている。 ウ 定期刊行物について 甲第7号証は,申立人の発行する「特別養護老人ホーム くれない」(1999年,第3号),「くれない通信」及び「めぐむ・くれない通信」(平成11年,第4号:平成12年?平成26年,第5号?第37号)を題号とする定期刊行物である。 なお,平成26年9月15発行第36号「めぐむ・くれない通信」については,同日に,朝日新聞,毎日新聞,産経新聞及び読売新聞の折り込み広告として,大阪市東住吉区,同市平野区,同市阿倍野区に,合計111,000部配布していることが認められる(甲7,甲8)が,本件商標の登録出願日前におけるこの定期刊行物についての配布状況については不明である。 エ NTTタウンページ,大阪市くらしの便利帳などについて 甲第9号証の1は,2014年2月の「(NTT西日本 職業別)タウンページ」(大阪市南部版 阿倍野区,住吉区,東住吉区,平野区)であり,「特別養護老人ホーム くれない」の表示及び電話番号の表示が他の一般の表示と比較して大きな文字で表示されている。 甲第9号証の2は,「大阪市くらしの便利帳」(平成26年度版/東住吉区」であり,「社会福祉法人めぐむ福祉会 総合介護福祉施設 特別養護老人ホーム」などの表示とともに「くれない」の文字を表示した広告が掲載されている。 その他,甲第9号証の4においても,申立人は,「特別養護老人ホーム くれない」を表示した広告をしている。甲第9号証の5,6は,申立人の主催する記念事業に係る案内チラシであり,「特別養護老人ホーム くれない」を表示している。 オ その他 甲第10号証は,世界最高齢者であった大川ミサヲ氏(以下「大川氏」に関する新聞記事等であるが,これには,大川氏の生活の場所などとして申立人の施設「特別養護老人ホームくれない」が記載されている。 (2)判断 以上によれば,申立人は,平成8年7月から「特別養護老人ホーム」施設を大阪市東住吉区に開設し,主として東住吉区を中心とした大阪市南部で介護福祉事業を行っており,施設の開所以来「くれない」の文字からなる引用商標を使用していることは認められるとしても,提出された証拠からは,本件商標の登録出願日以前にインターネットにおける広告をしている事実の立証はなく,また,パンフレットの発行はあったとしてもその発行部数,配布の状況を把握できない。さらに,くれない通信等の定期刊行物の発行,配布についても,本件商標の登録出願前の発行部数,配布の状況を把握できないし,仮に折り込みチラシによる広告が大阪市南部(東住吉区,平野区及び阿倍野区)に限定されているとすれば,その配布の範囲はさほど広範囲とはいえない。加えて,NTT西日本の職業別タウンページにおける広告も大阪市南部版であり,くらしの便利帳における広告も東住吉区又は大阪市に限定されたものである。 そして,大川氏の長寿関連記事の報道によっては,同氏の生活の場所などとして申立人の施設が紹介されているにすぎず,引用商標の周知性獲得にさほどの影響はないものである。 したがって,引用商標は,本件商標の登録出願時及び査定時において,申立人の業務に係る役務を表示する商標として,需要者間に広く認識されていたものということはできない。 2 商標法第4条第1項第11号該当性について 本件商標は,「くれないケアセンター」の文字を標準文字で表してなるところ,その構成中の「くれない」の文字は「紅色」の意味を有し,「ケア」の文字は「介護,世話,手入れ」の意味を有し,「センター」の文字は「中央,中心,その分野の中心となる機関・施設」の意味を有する(いずれも「広辞苑第6版」)ものとして,いずれも広く知られている語であって,その文字構成は,3つの語からなるとしても,該「くれないケアセンター」の文字は,同じ書体,同じ大きさ,同じ間隔で,まとまりよく表された結合商標として看取されるものであって,その構成全体は,一種の造語というべきものである。 そうすると,本件商標は,その構成文字に相応して「クレナイケアセンター」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものである。 一方,引用商標は,「くれない」の文字を標準文字で表してなるところ,該文字は「紅色」の意味を有する語として広く知られていることからすれば,その構成文字に相応して「クレナイ」の称呼を生じ,「紅色」の観念を生じるものである。 そこで,本件商標と引用商標の類否について検討するに,外観においては,両者は,ともに「くれない」の文字を有する点において共通するが,「ケアセンター」の文字の有無に差異を有するから,外観上十分に区別することができるものである。 そして,称呼については,本件商標から生じる「クレナイケアセンター」の称呼と引用商標から生じる「クレナイ」の称呼とは,ともに「クレナイ」の音を共通にするが,「ケアセンター」の音の有無に差異を有するから,称呼上十分に聴別することができるものである。 さらに,観念においては,本件商標が観念を生じないから,本件商標と引用商標とは,観念上比較することができず,類似するものということができない。 してみれば,本件商標と引用商標とは,外観,称呼及び観念のいずれの点においても類似するものではないから,互いに非類似の商標というべきものである。 なお,申立人は,「本件商標は,その構成中の『ケアセンター』の文字部分が一般的な高齢者のデイケアを初めとして,幼児や病弱者,障害者への看護・介護に関する役務全般に広く使用されている事実が見受けられ,介護に関する指定役務との関係においては単なる役務の提供場所を表しているにすぎず,役務の出所識別機能とは認めらないから,構成前半の『くれない』が役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものであり,この部分から生じる称呼及び観念をもって取引に供されるものである。」旨を主張する。 しかしながら,申立人が「ケアセンター」の文字の使用事実の証拠として提出している甲第2号証及び甲第3号証は,「ケアセンター」の文字を含む商標の審査事例や登録出願例が挙げられているものであって,該文字が取引の場において具体的に役務の提供場所を表すものとして広く使用され認識されている事実とはいえないものである。 よって,申立人の上記主張は採用できない。 したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当しない。 3 商標法第4条第1項第10号及び同第15号該当性について 上記1及び2のとおり,本件商標は,引用商標とは非類似の商標であって,別異のものというべきものである。そして,引用商標は,その周知性が認められないものであるから,商標権者が本件商標をその指定役務について使用しても,これに接する取引者,需要者において,その役務が申立人あるいは申立人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように役務の出所について混同を生じさせるおそれはないものである。 したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第10号及び同第15号に該当しない。 4 まとめ 以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第10号,同第11号及び同第15号に違反してされたものでないから,同法第43条の3第4項の規定により,その登録を維持すべきものである。 よって,結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2015-07-14 |
出願番号 | 商願2014-75359(T2014-75359) |
審決分類 |
T
1
651・
262-
Y
(W44)
T 1 651・ 263- Y (W44) T 1 651・ 271- Y (W44) T 1 651・ 261- Y (W44) T 1 651・ 25- Y (W44) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 榎本 政実 |
特許庁審判長 |
金子 尚人 |
特許庁審判官 |
井出 英一郎 田中 亨子 |
登録日 | 2014-12-05 |
登録番号 | 商標登録第5724169号(T5724169) |
権利者 | 株式会社Tondo |
商標の称呼 | クレナイケアセンター、クレナイ、ケアセンター |
代理人 | 華山 浩伸 |
代理人 | 石上 和輝 |
代理人 | 田中 景子 |
代理人 | 種村 一幸 |
代理人 | 片岸 寿文 |
代理人 | 山田 威一郎 |
代理人 | 松井 宏記 |