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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない X09
管理番号 1304153 
審判番号 取消2014-300089 
総通号数 189 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2015-09-25 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2014-02-10 
確定日 2015-08-07 
事件の表示 上記当事者間の登録第2091250号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第2091250号商標(以下「本件商標」という。)は、「AQUAMAP」の欧文字をゴシック体で表してなり、昭和61年4月4日に登録出願、第11類に属する商標原簿記載のとおりの商品を指定商品として、同63年11月30日に設定登録され、その後、2回にわたり商標権の存続期間の更新登録がされ、さらに、指定商品については、平成20年11月19日に、第7類「起動器,交流電動機及び直流電動機(陸上の乗物用の交流電動機及び直流電動機(その部品を除く。)を除く。),交流発電機,直流発電機,家庭用食器洗浄機,家庭用電気式ワックス磨き機,家庭用電気洗濯機,家庭用電気掃除機,電気ミキサー,電機ブラシ」、第8類「電気かみそり及び電気バリカン」、第9類「配電用又は制御用の機械器具,回転変流機,調相機,電池,電気磁気測定器,電線及びケーブル,電気アイロン,電気式ヘアカーラー,電気ブザー,電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品,磁心,抵抗線,電極」、第10類「家庭用電気マッサージ器」、第11類「電球類及び照明用器具,家庭用電熱用品類」、第12類「陸上の乗物用の交流電動機又は直流電動機(その部品を除く。)」、第17類「電気絶縁材料」及び第21類「電気式歯ブラシ」とする指定商品の書換登録がされ、現に有効に存続しているものである。
そして、本件審判の請求の登録日は、平成26年2月27日である。
第2 請求人の主張
請求人は、本件商標は、商標法第50条第1項の規定により、本件商標の指定商品中、第9類「電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品」についての登録を取り消す、審判費用は、被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証を提出した。
1 請求の理由
請求人の独自調査によれば、本件商標が、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者の何れかによって、取消請求に係る指定商品の何れについても、継続して3年以上日本国内において使用されていないことは明らかであり、その不使用について正当な理由も存在しないため、商標法第50条の規定によって取り消されるべきである。
2 答弁に対する弁駁
(1)取消請求に係る指定商品についての使用立証がない点について
被請求人は、本件商標自体が使用されたことについては立証するものの、使用する商品が本件の取消請求に係る指定商品であることについては一切立証していない。また、証拠をみても実際に本件の取消請求に係る指定商品(「電気通信機械器具」及び「電子応用機械器具及びその部品」に使用しているものではないので、被請求人が提出した答弁書には理由がない。
(2)取消請求に係る指定商品についての使用していない点について
請求人は、自発的に被請求人の使用に係る商品が取消請求に係る指定商品に該当するものであるかを検討した。その結果、以下の理由により、該当しないものであるとするべきである。
被請求人が提出した証拠(乙1ないし乙6)は、本件商標を「水道管路図面情報管理システム」に使用していることを示すものである。このシステムは、乙第3号証の「AQUAMAP操作説明書」の4頁の説明によると、AQUAMAPはパソコンと地図情報ソフトウェアを結合したシステムである。
まず、このシステムが、請求に係る指定商品中の「電気通信機械器具」に該当しないことは、答弁の理由において被請求人が自ら証明対象から除外しているように明らかである。
また、このシステムは、請求に係る指定商品中の「電子応用機械器具及びその部品」にも該当しない。
乙第4号証の103頁に、「日立配管管理ソフトであるAQUAMAP」と説明されているように、「電子応用機械器具及びその部品」として被請求人が証明しようとする商品は、「電子計算機用プログラム」であることが類推される。
ここで「電子計算機用プログラム」とは、ダウンロード可能なソフトウェアを指し、ダウンロードが不可能なコンピュータシステムは包含しない。すなわち、「電子計算機用プログラム」が商標法上の商品足り得るためには、当該プログラムが流通し商取引の対象となる必要があるが、電子計算機用プログラムが流通するのは、ダウンロード等により顧客にプログラムそのものが送信され、顧客がハードディスクに記録し、継続して管理・支配できる場合のみである。このように、電子計算機用プログラムのような電子情報材が商品となり得るためにはダウンロード可能であることが必要となることは明確である。
以上の事実は平成12年10月採択のニース協定の国際分類の改訂により、「ダウンロード可能なプログラム」、「ダウンロード可能な電子出版物」が商品分類第9類「電子応用機械器具等」に含まれる商品の例示として追加されたことから上記のことは明らかであると思料する。
以上を踏まえ、本件商標が使用されているところの水道管路図面情報管理を提供するシステムについて検討したところ、プログラムがダウンロード可能ではないため、「電子応用機械器具及びその部品」には該当しないものであるというべきである。
3 口頭審理における陳述
(1)被請求人のシステムが、商品「電子計算機」には該当しない点について
被請求人は、新たに、水道管路図面情報管理システムへの本件商標の使用は取消請求に係る指定商品「電子応用機械器具及びその部品」に含まれる「電子計算機」に該当すると主張しているが、該「電子計算機」は汎用コンピュータであり、本件商標にかかる役務を提供するにあたり便宜的に使用しているにすぎないから、それ自体が本件商標によって識別されるべき「商品」ということはできない。
(2)被請求人のシステムが、商品「電子計算機用プログラム」に該当しない点について
被請求人は、水道管路図面情報管理システムへの本件商標の使用は、取消請求に係る指定商品「電子応用機械器具及びその部品」に含まれる「電子計算機用プログラム」に該当すると主張しているが、弁駁書で述べたとおり、電子計算機用プログラムが商標法上の商品と認められるためにはダウンロード可能である等、独立して商取引の対象となるものでなければならなず、依然としてこの点が立証されていない。
(3)乙第10号証及び乙第11号証は、水道管路図面情報システムに係る見積書及び注文書であり、水道管路図面情報管理システムの販売実績を示しているが、依然として水道管路図面情報管理システムが「電子計算機」及び「電子計算機用プログラム」に該当することを立証するものではない。
また、乙第12号証及び乙第13号証は、水道管路図面情報システムに係るシステム納入契約であり、当該契約書のタイトルは「物品売買契約書」となっているが、契約書の内容は、水道管路図面情報システムの更新サービスに係る契約書である。これは、当該契約書内の品名の欄に、「平成24年度マッピングシステム(AQUAMAP)更新」と記載されていることからも明らかである。通常、システムの更新とは、顧客に対するサービスであり、更新そのものが商品として販売されるものではないから、これらの使用証拠に関しても、水道管路図面情報管理システムが「電子計算機」および「電子計算機用プログラム」に該当することを立証するものではない。
4 平成26年11月26日付上申書に対する弁駁
乙第14号証は、被請求人が摂津市水道部に対して納入した「水道管路図面情報管理システム」の納入品明細表と、当該システム全体の構成を図示したシステム構成図からなり、当該納入品明細表から明らかなとおり、水道管路図面情報管理システムには、サーバコンピュータの他、液晶ディスプレイ、バックアップディスク、UPS等のハードウェア、およびサーバインストールDVD-ROM、ウイルスバスタービジネスセキュリティー、Office Professiona1等のソフトウェアが構成機器として含まれる。当該納入品明細表およびシステム構成図には、これらの構成機器のうちサーバとして使用される汎用コンピュータに対して「AQUAMAP サーバ」の表示が付されており、被請求人は、この表示をもって本件商標が「電子計算機」について使用されていると主張しているが、被請求人の水道管路図面情報管理システム自体は、商標法上区分第42類の役務の範ちゅうに属する「電子計算機用プログラムの設計・作成及び保守」で保護すべき役務にあたるものである。すなわち、乙第2号証によると、当該水道管路図面情報管理システムは、「パソコンと地図処理ソフトウェアを結合したシステム」であり、「上水道管路図面と情報の管理運用」を行うものであるが、当該システムは、「変化するお客さまのニーズに対して、柔軟で幅広いソフトウェアのエンハンスが可能」であり、「局所的な修正機能やイレギュラーデータの抽出機能、または属性データと図形データを連動した修正機能などの機能が充実しており、データベースの鮮度、健全性を保持する」ための更新機能が充実している。このことより、このシステムは顧客毎にカスタマイズされ、「水道管路図面情報管理」を行えるようにしたものであり、このように顧客別に個別のプログラム設計や更新を含むコンサルティングが必要なシステムに関しては、商品というよりも、水道管路図面情報管理サービスあるいは顧客用に電子計算機用プログラムを設計、保守するサービスを提供するものであり、商標法上区分第42類の役務で保護すべき役務にあたる。
次に、被請求人が主張している「サーバ」が商品としての「電子計算機」に該当するかについては、当該水道管路図面情報管理システムの中で使用される汎用コンピュータに本件商標を付していたとしても、商品「電子計算機」への本件商標の使用には該当しないことは明らかである。当該汎用コンピュータは市場で独立して商取引の対象となっているわけではないため、商標法上の商品に該当しない。
また、納品書の商品目録中の「AQUAMAP サーバ」等の記載は商標的な使用態様ではない。

第3 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を答弁書、口頭審理陳述書((追加)を含む。)及び上申書において要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第14号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 答弁の理由
被請求人は、本件審判の請求の登録日前3年の間に我が国において、その請求に係る指定商品中、第9類「電子応用機械器具及びその部品」について使用している。
(1)本件商標の使用事実と使用年月日
ア 乙第1号証は、商標権者が2013年7月に印刷し、現在も使用中の「水環境ソリューションICT総合カタログ」であり、開いた頁の左側上部に「管路図面管理システム」が掲載されている事実がある。
この商標の使用は、商標法第2条第3項第8号に該当する使用である。
イ 乙第2号証は、商標権者の「AQUAMAP 水道管路図面情報管理システム」の「システム概要説明書」である。
この資料には、年月日が記載されていないが、後述する乙第3号証に記載されている顧客への受注前の提案書として使用されたものの最新版であり、その他の顧客へも使用しているものである。
この商標の使用は、商標法第2条第3項第8号に該当する使用である。
ウ 乙第3号証は、商標権者が大分県佐伯市に納入した「水道管路図面情報管理システム」であり、本件商標を当該システムの名として使用している事実が確認できる。
そして、納入品明細表において、担当者がサインした日付が2014年2月17日及び2014年2月18日と記載されている事実がある。
さらに「AQUAMAP操作説明書」、「AQUAMAP(台帳管理システム)操作説明書」、「AQUAMAP住所検索操作説明書」、「AQUAMAPデータインポート(モバイル)操作説明書」、「AQUAMAP(保守マニュアル)操作説明書」を見ると「AQUAMAP」について詳細内容が確認できる。
これらの「AQUAMAP」商標の使用は、商標法第2条第3項第2号及び同第8号に該当する使用である。
エ 乙第4号証は、商標権者が平成24年3月に経済産業省商務情報局情報経済課へ提出した報告書であり、その103頁に日立配管管理ソフトとして「AQUAMAP」の記載がある。
この商標の使用は、商標法第2条第3項第2号及び同8号に該当する使用である。
オ 乙第5号証は、商標権者が2011年6月16日に公表した「社会・産業システム事業戦略」であり、18頁に本件商標の記載がある。
この商標の使用は、商標法第2条第3項第2号及び同第8号に該当する使用である。
カ 乙第6号証は、商標権者の当時社内カンパニー(スライド頁の右下に「Hitachi,Ltd.2012.All rights reserved.」の表示が確認できる。)であった情報制御システム社が顧客向けに2012年2月に発行した「インテリジェントウォータ構想の紹介」資料であり、スライド番号7に「5.水道GISシステム(AQUAMAP)」が記載されている事実がある。
この商標の使用は、商標法第2条第3項第8号に該当する使用である。
2 口頭審理における陳述
(1)商標権者が、本件商標を商品「電子計算機」及び「電子計算機用プログラム」について使用している事実について
ア 乙第1号証は、被請求人が発行する「水環境ソリューションICT総合カタログ」であり、カタログとは一般に「商品目録」のことをいい、その企業が製造・販売する商品を紹介するものである。そして、このカタログの8頁目に本件商標が「管路図面管理システム」について使用している事実が確認できる。この「管路図面管理システム」は、本件商標が記載された右側に具体的な「設備管理システム」の構成が説明されている。さらに、乙第1号証の最終頁にこのカタログが印刷された年月として「2013.7」と表示されている。この表示は、2013年7月のことである。以上、乙第1号証全体をみれば、本件商標が「水の浄化に関するシステム」の構成機器等に使用している事実が確認することができ、この乙第1号証が商品ではなく役務についてのみ使用しているものであるということはできない。
なお、当該カタログの具体的な使用状況については、乙第7号証のとおり2012年12月17日に発注し、2013年7月に2000部が印刷・発行され、2013年7月29日に印刷会社より、その請求書を受領した。その後、乙第8号証のとおり、2013年8月より全国の営業支社への配布を開始し、主に国内で上下水道事業を行っている公共事業体等の顧客を対象に広く頒布されているものである。
イ 乙第2号証は、「AQUAMAP(水道管路図面情報管理システム)」のシステム概要について詳細に説明している。
(ア)1頁「システムの概要」として「はじめに」の欄の5行目において、「そこで注目を集めているのが、コンピュータによる上水道管路図面と情報の管理運用です。日立ではこのようなニーズにお応えして、パソコンと実績のある地図処理ソフトウェアを結合し、使い勝手の良いシステムを開発しました。」と記載されているのが確認できる。
(イ)2頁「弊社の特徴」として、「自社によるシステム技術開発」の欄の4行目において、「弊社では、GIS(地理情報システム)のコアエンジン及び業務用アプリケーションソフトウェアを自社にて開発しており、変化するお客様のニーズに対して、柔軟で幅広いソフトウェアのエンハンスが可能です」と記載されている。
(ウ)5頁「入力図面(基図)の作成」として、システムの構築の流れが記載されている。これは、「電子計算機用プログラム」を作成するための手順であることは自明の理である。
(エ)6頁には、「電子計算機用プログラム」である「データベースの構造」について説明されている。
(オ)7頁「機能概要」では、「AQUAMAP(水道管路図面情報管理システム)」全体の「電子計算機用プログラム」の機能について説明されている。
(カ)8頁では、「AQUAMAP(水道管路図面情報管理システム)」全体の「システム構成」が説明されており、「電子応用機械器具」の範ちゅうに属する「パーソナルコンピュータ」、「液晶ディスプレイ」、「カラースキャナ」、「カラープリンタ」等の説明が記載されている。
乙第2号証の全体をみれば、本件商標が「水道管路図面情報管理システム」の電子計算機用プログラム及びその構成機器等について使用している事実が確認することができ、この乙第2号証が商品ではなく役務についてのみ使用しているものであるということはできない。
なお、当該システム概要説明書の具体的な使用状況については、初めて作成された1999年4月より現在に至るまで、国内で上下水道事業を行っている公共事業体等の顧客を対象に、当該システムの構成や機能等を詳細に説明する際にその都度配布し使用されているものである。
ウ 乙第3号証は、佐伯市上下水道部に納めた「水道管路図面情報管理システム検収図」であり、「AQUAMAP(水道管路図面情報管理システム)」に関する「ハードウェア仕様書」、「AQUAMAP操作説明書」等である。 そして、2頁目の「納入品明細表」を確認すれば、「ハードウェア」及び「ソフトウェア」をシステム一式の商品として納入した取引の事実が確認でき、これらが貸与品であるという表記はどこにもなく、またそのような事実は一切ない。また、3頁以降には、「DVD-ROM、CD-ROM」等の記載が確認でき、この「DVD-ROM、CD-ROM」についても取引の一般常識として、商品の販売であることは明らかである。
さらに、「水道管路図面情報管理システムAQUAMAP操作説明書」において、その「ハードウェア」及び「ソフトウェア」が確認できる。
特に、このAQUAMAP操作説明書の4頁には「AQUAMAPは、パソコンと地図情報ソフトウェアを結合することで、コンパクトで拡張性のあるシステムを実現しています。AQUAMAPでは、日常業務の中で特に使用頻度の高い図面の検索機能を重点的に使いやすく設計してあり、どなたにも簡単に操作できます。」との説明書きがあり、「AQUAMAP」がコンピュータハードウェアとソフトウェアから成るシステムであることが明確に記載されている。
以上、乙第3号証全体をみれば、本件商標が「水道管路図面情報管理システム」の電子計算機用プログラム及びその構成機器等について使用している事実が確認することができることから、この乙第3号証は、その商品についての使用である証拠といえるが、役務について使用しているものであるということはできない。
エ 乙第4号証は、「経済産業省商務情報局情報経済課」に納めた報告書であり、その103頁に「日立配管管理ソフトであるAQUAMAP」の記載について、審判長殿は、この記載について商標の使用とは認められないと言及しているが、確かに、文章中に記述的に表示されており商標的使用とは云えないと考えられるが、これは、「配管管理システム」のソフトウェアの説明であり、「AQUAMAP」が「電子計算機用プログラム」であるとの補完説明資料である。
オ 乙第5号証は、2011年6月16日に社外発表された被請求人の社会・産業システム事業戦略を説明する資料であり、その中のトータルソリューションの提供例として「AQUAMAP」を紹介したものである。
カ 乙第6号証は、2012年2月に作成されて以降、被請求人が注力すべき事業として推し進めている“インテリジェントウォータ構想”を紹介する際に使用する資料であり、その中において「水道GlS(地理情報システム)システム(AQUAMAP)」を説明したものである。
(2)本件商標は、上述のとおり国内で上下水道事業を行っている公共事業体等が運用する大きなシステムに対して現在使用されているものである。したがって、大容量のハードウェアに直接組み込まれたプログラムの名称でもある。そして、本件商標は、それらに加えて周辺機器までを含めたシステム自体の名称でもあるとともに電子計算機用プログラムの名称でもある。
この事実については、乙号証全体を確認すれば一目瞭然である。
(3)本件商標は、サービスマーク登録制度が導入される6年前に商標登録出願され、昭和63年11月30日に設定登録されたものである。
そして、サービスマーク登録制度が導入される以前は、第9類「電子応用機械器具」に属する「電子計算機用プログラム」は、「ハードウェアに組み込まれた電子計算機用プログラム」が主として存在していたものである。これについて、サービスマーク登録制度導入後においても「ハードウェアに組み込まれた電子計算機用プログラム」は、第9類の商品であることに変わりはない。
請求人は、第9類に属する「電子計算機用プログラム」とは「ダウンロード可能な電子計算機用プログラム」に限ると主張しているが、この請求人の主張は、全く失当であるというしかない。
具体的に「ダウンロード可能な電子計算機用プログラム」が何故、第9類の商品であるかは、ニース協定に関する専門家委員会及び作業部会において、これが商品に属するか、役務に属するかの議論を経て第9類に属する商品であると決定されたものである。
そして、ニース国際分類の類別表注釈では、第9類の商品について、この類には、「記録媒体又は頒布方法の如何に拘わらず、全てのコンピュータプログラム及びソフトウェア、すなわち、磁気媒体に記録されたソフトウェア又はコンピュータネットワークからダウンロードされるソフトウェア」が、特に、これらの商品を含まれると明記されている。
つまり、電子計算機が導入された初期のころは、パッケージソフトでなくハードに組み込まれたプログラムが商品として存在していたものであるが、次にパッケージ化されたアプリケーションソフト等が流通し、近年では、「ダウンロード可能な電子計算機用プログラム」が増えつつある。したがって、「ダウンロード可能な電子計算機用プログラム」のみが第9類の「電子計算機用プログラム」であるとの請求人の主張は、全く見当違いであるというしかない。
(4)被請求人は、1986年9月に本製品の開発を発表して、1988年11月30日に商標権が設定登録されて以来、乙第9号証にあるとおり1989年に初号機を山形県東根市の水道課に納入したことを皮切りに、20年以上の長期に亘り善意で本件商標をその指定商品について使用してきているものであり、上述したとおり乙号証全体から考察すれば、本件商標「AQUAMAP」が第9類の商品である「電子応用機械器具及びその部品」に含まれる「電子計算機」及び「電子計算機用プログラム」の使用と認められない理由は全く無い。
さらに、電子計算機用プログラムや電子計算機等を大きなシステムとして取扱う業界にとって、本件商標の使用がその商品の使用であると認められない場合は、何をもって使用を証明すべきか不明であり、公共・社会インフラを支える業界で同様のシステムを販売する企業にとっては、商標の使用のあり方について多大な影響を与えるものとなる。また、少しでも疑わしき部分があれば、すべて否定するということは、善意でその商標を使用している日本の商標権者にとっては権利の安定性の面で大変に大きな不安材料となり、権利取得後も安心して商標を使用することができなくなるため、到底納得できないものである。
3 口頭審理陳述要領書の追加主張
(1)乙第10号証は、乙第3号証の佐伯市水道部へ納品した「水道管路図面情報管理システム」に関する取引書類である。具体的には、被請求人が日立グループの総合特約店である大分市所在の柳井電機工業株式会社(以下「柳井電機工業」という。)宛てに発行した「御見積書」であり、柳井電機工業は、佐伯市に該商品を納入した中間業者である。
(2)乙第11号証は、乙第10号証「御見積書」を確認した柳井電機工業が被請求人に対して発注した「水道管路図面情報管理システム」の機器購入のための注文書である。乙第10号証と乙第11号証の関係は、「見積No.1334-7782テ1」で確認することができる。
(3)乙第12号証は、平成24年7月6日に関西日立株式会社(以下「関西日立」という。)が摂津市と交わした「マッピングシステム(AQUAMAP)」の「物品売買契約書」である。なお、乙第13号証により関西日立が被請求人の完全子会社であることが確認できる。
4 上申書による証拠の提出
乙第12号証「物品売買契約書」の補足資料として、摂津市水道部へ実際に納品した物品を記載した「納品明細書」と「ハードウェア仕様書」でシステム構成全体の示された図を乙第14号証として提出した。

第4 当審の判断
1 本件商標の使用について、被請求人の提出に係る証拠によれば、以下の事実が認められる。
(1)乙第1号証は、「水環境ソリューションICT総合カタログ」と題するカタログであり、開いた左肩には「管路計画・維持管理の効率化」の項に「管路図面管理システム(AQUAMAP)」など3つのシステムがあり、各システムの概要が図解入りで紹介されている。表紙の右肩には「HITACHI」の表示があり、また、閉じた最終頁にあたる中央には商標権者の名称と全国の支社が表示され、右裾には小さく「2013.7」の記載がある。
該カタログは、商標権者が扱う水事業に係る製品やシステムの開発・納入をまとめたカタログとみられるものの、「AQUAMAP」を名称とする管路図面管理システムは、GIS(施設+地図DB)を中心に断水区域表示機能、管網解析機能、施設台帳表示機能、集計機能及び履歴機能を相互に関連し合う構成であることが認められる。しかしながら、該システムが商品としての紹介であるか、役務として使用するものの紹介であるかは確認できない。
(2)乙第2号証は、その表紙に「AQUAMAP」「-水道管路図面情報管理システム-」と題するシステム概要説明書(写し)であり、右肩には「HITACHI」、下段には商標権者の名称が記載されている。そして、2葉目の目次には、「システム概要」、「AQUAMAPの特長」、「ハードウェア構成図」などの項目があり、3葉目から9葉目にわたって各項目の説明がされている。10葉目(8ページ)の「システム構成」の項には、ハードウェア構成例として、商品画像とともに「A3カラースキャナ」、「液晶ディスプレイ」、「パーソナルコンピュータ(サーバ)」、「A3カラーページプリンタ」、「AOカラープロッタ」、「パーソナルコンピュータ(クライアント)」など機器が紹介されている。
しかしながら、該説明書には、作成日に関する記載がなく、また、被請求人は、顧客への受注前の提案書として使用されたものと主張するのみで、どのように使用したのか具体的な使用状況に関する立証はない。また、サーバやスキャナなどの構成機器に本件商標の使用はない。したがって、表紙に表示された「AQUAMAP」の商標が商品に使用したものか役務としての表示か確認することができない。
(3)乙第3号証は、注文主を佐伯市上下水道部とする「水道管路図面情報管理システム検収図」(写し)であり、これにハードウェア仕様書、AQUAMAP操作説明書などが添付されている。
該検収図の最下段には作成印、照査印、検査印欄があり、マスキングされている。
2葉目の納入品明細表には、「ハードウェア仕様書」、「AQUAMAP操作説明書」などの記載があり、最下段の「DATE」の欄には「2014-02-17」及び「2014-02-18」の記載がある。
添付された各種操作説明書の表紙には、中央に「AQUAMAP」の記載がある。
しかしながら、該納入品明細表には、「2014-02-17」及び「2014-02-18」が日付けとみられるものの、これらが納入日であるとわかる記載がない。
(4)乙第4号証は、商標権者が経済産業省に提出した「平成22年度インフラ・システム輸出促進調査等委託事業(グローバル市場におけるスマートコミュニティ等の事業可能性調査)報告書」と題する報告書(写し)であり、その5葉目(103ページ)には「日立配管管理ソフトであるAQUAMAP」の記述がある。
しかしながら、該「AQUAMAP」の記述をもって、商品「日立配管管理ソフト」に本件商標として使用されていると認めることができず、また、上記報告書は、経済産業省に提出された報告書であって、本件商標を業として使用したとは認められない。
(5)乙第5号証は、表紙右肩に「HITACHI」の表示がある「社会・産業システム事業戦略」と題する資料(写し)であり、18葉目「3-5 成長戦略(1)社会システム事業4」の「東南アジア」の項に「モルディブ水運営事業」に「AQUAMAP」の記載がある。
しかしながら、該資料には、水運営事業に関する具体的な説明がなく、使用に関する立証もない。
(6)乙第6号証は、表紙の右肩に「HITACHI」の表示がある「インテリジェントウォータ構想の紹介」と題する資料(写し)であり、その下方には、「2012年2月」及び「情報制御システム社 社会制御システム設計部」の記載がある。
その4葉目には「5.水道GISシステム(AQUAMAP)」の項があり、システムの目的などが紹介されているものの、構成する機器などの説明がない。
該説明書においても、使用に関する具体的な説明がなく、該事業が商品としての紹介か貸与としての紹介か不明であり、したがって、該「AQUAMAP」の商標が商品としての表示か役務としての表示か確認することができない。
(7)乙第7号証は、2012年12月17日に商標権者が日立インターメディックス株式会社に発注した注文書(写し)であり、品名の欄に「水環境ソリューション総合カタログ」、「数量」の欄に「2,000」、納期の欄に「7月26日」の記載がある。2葉目は、2013年7月29日に日立インターメディックス株式会社が商標権者に宛てた請求書(写し)であり、「水環境ソリューションICT総合カタログ」(乙1)の注文書(写し)と認められるものであり、品名の欄に「水環境ソリューション総合カタログ」、「数量」の欄に「2,000」の記載がある。
そうとすると、「水環境ソリューションICT総合カタログ」(乙1)の最終頁に表示された「2013.7」から、該カタログは、商標権者が2013年7月に作成したものであると推認することができる。
(8)乙第8号証は、「水環境ソリューションICT総合カタログ作成のご案内」と題する2013年8月5日付けの配付資料(写し)である。宛先を全国の営業支社とするものであるが、配布者、配布先及び問合せ先などはマスキングされ確認することができない。
(9)乙第9号証は、「日立グループの上下水道への取り組みと、インテリジェントウォーター構想」と題する「2010.6日立評論」(写し)であり、その2葉目の図1には、「上下水道監視制御システムの変遷 日立グループの1980年代から現在までの主な監視制御システム製品,制御・シミュレーション技術,広域情報監視システムを示す。」と記載された上部には、「市場 ・ 行政動向」、「監視制御システム」、「制御 ・ シミュレーション技術」、「広域情報監視システム」とそれぞれの項目に横棒グラフが表示され、「広域情報監視システム」の項には、「WS版AQUAMAP」と書かれた横棒グラフが1983年から1993年の後半まで伸び、該横棒グラフは、「PC版AQUAMAP・四次元GIS」と表示が変わり、1993後半から2009年まで伸びている。そして、該図1の注意欄には「略語説明・・・WS(Workstation),・・・AQUAMAP(上下水道向け地理情報システム)」と記載されている。3葉目には、「給水台帳や下水台帳などの,管路維持情報の高度化への要求に対しては,管路情報システム『AQUAMAP』を開発し,1989年に山形県東根市に納入した。」との記載がある。
しかして、上記「管路情報システム『AQUAMAP』」の表示からは、商品に本件商標として使用されていると認めることができず、したがって、該「AQUAMAP」の欧文字が商品としての表示か役務としての表示か確認することができない。さらに、要証期間における使用の立証がない。
(10)乙第10号証は、2013年10月に商標権者の九州支社大分営業所から柳井電気工業株式会社に宛てた「No.1334-7782テ1」とする「見積書」(写し)である。
その「品名及び仕様」の欄には「佐伯市上下水道部殿向 水道管路図面情報管理システム 機器更新」、数量欄には「一式」、金額欄には「¥5,189,000」の記載がある。2葉目には「システム価格」の表中に「ハードウエア価格、ソフトウエア価格、SEサポート費」のそれぞれの仕切り価格(円)が記載され、合計欄には「¥5,189,000」の記載がある。なお、上記見積書には、本件商標が表示されていない。
(11)乙第11号証は、注文日を2013年10月30日付けとする柳井電気工業株式会社から商標権者の九州支社大分営業所に宛てた「注文書」であり、発注先の欄には「佐伯市役所」、納期欄には「2014/02/23」、品名又は工事内訳欄には「H25佐伯市マッピングシステム機器更新【備考】支払条件:御社売上計上後2ヶ月後現金振込 再FAX見積もりNo.1334-7782テ1」の記載がある。なお、上記注文書には、本件商標が表示されていない。
(12)乙第12号証は、平成24年7月6日に摂津市と関西日立との間で締結された「物品売買契約書」(写し)である。
その「品名」の欄には「平成24年度マッピングシステム(AQUAMAP)更新」、「規格」の欄には「別紙仕様書のとおり」、「契約金額」の欄には「金11,235,000円」、「納入期限」の欄には「平成24年9月28日」の記載がある。なお、上記規格に係る仕様書の添付はない。
(13)乙第13号証は、関西日立株式会社のウェブサイトの会社概要(写し)であり(紙打ち出し日付は、2014年11月7日)、「株主」の欄には「株式会社日立製作所(全額出資)」、事業内容欄には「日立製作所及び日立関連会社の製造または販売する物品の販売、修理及び工事設計施工」の記載がある。
そうとすると、本件取消の請求に係る商品に使用する本件商標について、商標権者は、関西日立に対し、その使用を許諾しているものと推認できるから、関西日立は、本件商標の通常使用権者と認めることができる。
(14)乙第14号証は、注文主を「摂津市水道部」とする商標権者の「納入品明細表」(写し)であり、「用途」の欄を「水道管路図面情報管理システム」、欄外に「Hitachi.Ltd./Tokyo Japan」の記載がある。
2葉目(2/7)の「名称(用途)」の欄には、「Aquamapサーバ」、「液晶ディスプレイ」、「バックアップディスク」、「UPS」の記載がある。
さらに、7/7は、「ハードウェア仕様書」であり、システム構成図には、機器の図と共にそれぞれの機器の名称が表示されているが、四角く囲った枠内に「AQUAMAPサーバ」、「UPS」、「ディスプレイ」と記載されている。
また、中央上段には、「今回日立納入機器はサーバ機と付設のディスプレイ、USPのみであり、その他は既設品、もしくは顧客殿手配となります。」の記載がある。
これから、関西日立は、摂津市水道部に対し、「AQUAMAP」と称するマッピングシステムを構成する「サーバ」、「液晶ディスプレイ」、「バックアップディスク」、「UPS」を納入期限である平成24年9月28日までに納品したと推認ができるものである。
2 前記1で認定した事実から、以下のとおり判断する。
商標権者は、2013年7月に作成した「水環境ソリューションICT総合カタログ」(乙1)を翌8月には全国の営業支社に配布したことにより、商標権者の水事業に係る製品やシステムの開発について該カタログが使用されたものと推認し得るものである。
該カタログには、「AQUAMAP」と表記された管路図面管理システムが紹介され、管路図面管理システムが、「サーバ」、「液晶ディスプレイ」、「バックアップディスク」、「UPS」などの機器などのハードウェアからなるシステム構成であって、該システム名に使用された「AQUAMAP」の表示は、本件商標と社会通念上同一の商標といえるものである。
そして、平成24年7月6日に摂津市と本件商標に係る通常使用権者である関西日立との間で締結された「平成24年度マッピングシステム(AQUAMAP)更新」に係る「物品売買契約書」に基づき、納入期限である平成24年9月28日前の同月25日には、摂津市水道部に「サーバ」、「液晶ディスプレイ」、「バックアップディスク」及び「USP」が納入されたと推認できるものである。
上記した「サーバ」及び「ディスプレイ」などは、本件審判請求に係る指定商品中第9類「電子応用機械器具及びその部品」の範ちゅうに属する商品と認められる。
3 むすび
以上のとおり、被請求人は、通常使用権者が本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、本件審判の請求に係る指定商品中、第9類「電子応用機械器具及びその部品」について本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用していたことを証明したものというべきである。
したがって、本件商標の登録は、商標権者によって、取消請求に係る指定商品について使用されていたものというべきであるから、商標法第50条の規定により、取り消すことはできないものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2015-03-06 
結審通知日 2015-03-11 
審決日 2015-03-31 
出願番号 商願昭61-34082 
審決分類 T 1 32・ 1- Y (X09)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 関根 文昭
特許庁審判官 手塚 義明
前山 るり子
登録日 1988-11-30 
登録番号 商標登録第2091250号(T2091250) 
商標の称呼 アクアマップ 
代理人 ポレール特許業務法人 
代理人 矢口 太郎 

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